洪水の垂直避難とは?水平避難との違い・判断基準・正しい方法・注意点を徹底解説【2026年最新版】
「垂直避難」という言葉を聞いたことがありますか?
「逃げる時間がない」「外がすでに浸水している」
そんな切迫した状況で命を守るための行動が「垂直避難」です。
しかし「垂直避難とは何か」「どのタイミングで選択すべきか」「どうやって正しく実施するか」「どんな限界があるか」を正確に理解している方は多くありません。
近年、日本では「線状降水帯」「ゲリラ豪雨」「記録的大雨」による洪水が頻発しています。
2024年9月の能登豪雨では「逃げ遅れた方が建物ごと濁流に流される」という痛ましい事例が報告されました。
2019年台風19号(令和元年東日本台風)でも「洪水発生直前まで避難しなかった」「垂直避難が間に合わなかった」というケースが被害の拡大につながりました。
「垂直避難」は「洪水から命を守る最後の手段」です。しかし「最後の手段」であるからこそ「正しく・迷わず・素早く実施する」ための知識が不可欠です。
この記事では垂直避難について、内閣府・国土交通省・消防庁・東京消防庁・気象庁の公的資料をもとに、あらゆる角度から徹底解説します。
- 垂直避難とは何か(定義・目的)
- 水平避難(横避難)との違い
- 垂直避難を選択すべき状況・判断基準
- 垂直避難の正しい手順とやり方
- 垂直避難に適した建物・適さない建物
- 垂直避難の限界と注意点
- 垂直避難中に必要な物・持っていくべきもの
- 垂直避難中の過ごし方と外部への連絡方法
- 垂直避難後の安全確認と帰宅のタイミング
- 垂直避難に備えた平時の準備
【情報の出典について】
本記事は内閣府「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月改定)」・国土交通省「水害発生時の避難行動について」・同「水害から身を守る(カワナビ)」・消防庁「防災マニュアル」・東京消防庁「水害に備えよう」・気象庁「防災気象情報」・大阪市「避難の方法(河川氾濫・内水氾濫)」等の公的資料をもとに作成しています。防災ベース編集部が内容をわかりやすく解説しました。体に危険を感じた場合は直ちに119番・110番に連絡してください。
垂直避難とは何か:定義と目的
垂直避難(たて避難)とは「洪水・津波・高潮などの水害が発生した際に、横方向(水平方向)に逃げることが困難または危険な状況において、現在いる建物の上層階(2階以上)に移動することで命を守る避難行動」のことです。
英語では「Vertical Evacuation」と表現します。
内閣府の「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月改定)」では、洪水時の避難行動として「立退き避難(水平避難)」と並ぶ選択肢として「屋内安全確保(垂直避難を含む)」が位置づけられています。
垂直避難の目的は「浸水した・または浸水が切迫した環境において、水面より高い位置に身を置くことで溺水・流水による死亡リスクを回避する」ことです。
水は「高いところには流れていかない」という単純な物理の原則を活用した避難方法です。
垂直避難が注目されるようになった背景
日本で「垂直避難」という概念が防災の文脈で広く認識されるようになったのは、2011年東日本大震災・大津波以降です。
津波から逃げる際に「海抜の高い場所まで逃げられない状況」での垂直避難の有効性が確認されました。
その後、洪水・内水氾濫の文脈でも「立退き避難が間に合わない・外が危険な状況での代替手段」として垂直避難が防災計画に組み込まれるようになりました。
近年の「線状降水帯・ゲリラ豪雨による急激な洪水」の増加に伴い、「避難の意思決定から洪水発生まで時間がない」ケースが増え、垂直避難の重要性はさらに高まっています。
水平避難(立退き避難)との違い
垂直避難を正しく理解するために「水平避難(立退き避難)との違い」を明確にすることが重要です。
| 比較項目 | 水平避難(立退き避難) | 垂直避難(屋内安全確保) |
|---|---|---|
| 移動方向 | 横方向(自宅から離れた安全な場所へ) | 縦方向(同じ建物の上の階へ) |
| 避難先 | 指定緊急避難場所・親戚・ホテル等 | 現在いる建物の2階以上 |
| 実施タイミング | 洪水発生前・浸水が始まる前(推奨) | 外への移動が危険・困難になった場合(緊急手段) |
| 内閣府の位置づけ | 原則として推奨される避難方法 | 立退き避難が危険・困難な場合の代替手段 |
| メリット | 安全な場所に移動できる・支援を受けやすい | 移動リスクがない・素早く実施できる |
| デメリット・リスク | 移動中の転倒・流水リスク・渋滞リスク | 建物が倒壊・流失した場合に逃げ場がない・孤立するリスク |
内閣府のガイドラインでは「立退き避難(水平避難)が原則」とされています。垂直避難はあくまで「水平避難が危険・不可能な状況での緊急的な代替手段」です。
「垂直避難があるから水平避難しなくていい」という誤解は非常に危険です。
垂直避難を選択すべき状況:判断基準
「垂直避難を選ぶべき状況はどんなときか」を正確に理解しておくことが、いざというときの迅速な判断につながります。内閣府・国土交通省・消防庁の資料をもとに整理します。
垂直避難を選択すべき状況①:すでに外が浸水していて歩行が危険な場合
外の道路がひざ以上(30cm以上)の浸水・流水状態になっている場合は、屋外での移動が非常に危険です。
国土交通省の資料では「浸水深30〜50cm(ひざ〜腰)で歩行が非常に困難・転倒リスクが高い」とされています。
流速がある場合は「浸水深10〜20cm程度でも転倒・流される」危険があります。このような状況では「屋外への立退き避難を中止して垂直避難に切り替える」判断をしてください。
垂直避難を選択すべき状況②:避難場所まで安全に移動できる時間がない場合
急激な洪水(堤防の決壊・線状降水帯による急激な水位上昇等)が発生して「安全な避難場所まで到達する前に浸水が始まる」と判断される場合です。
「避難しようとしたが、外に出た瞬間に危険を感じた」という場合も、すぐに建物に戻って垂直避難に切り替えてください。
垂直避難を選択すべき状況③:夜間・視界が悪い状況で外が危険な場合
夜間・嵐の中・停電で周囲が見えない状況での屋外避難は「通常よりはるかに危険」です。国土交通省は「明るいうちに・雨が強くなる前に避難を開始することを推奨」しています。
夜間や嵐のピーク時に「今から外に出て避難するのは危険」と判断される場合は、垂直避難を選択して夜明け・状況が落ち着くまで待機することも選択肢のひとつです。
垂直避難を選択すべき状況④:車椅子利用者・乳幼児・高齢者がいて移動が困難な場合
体が不自由な方・乳幼児・高齢者がいる家庭では「屋外移動自体のリスク」が高くなります。
これらの方が同行している場合は「早めの水平避難(警戒レベル3段階での避難)」が最優先ですが、間に合わなかった場合は垂直避難を選択してください。
市区町村の「避難行動要支援者名簿」に登録しておくと、地域の支援者から避難支援を受けられる場合があります。
垂直避難を選択すべき状況⑤:内閣府の「警戒レベル5:緊急安全確保」が発令された場合
内閣府の避難情報ガイドラインでは「警戒レベル5:緊急安全確保」は「すでに災害が発生・切迫している状況」で発令される情報です。
この情報が発令された場合は「外への立退き避難は極めて危険な状態」であることを意味します。警戒レベル5が発令された場合は「今いる建物の2階以上に移動する垂直避難」を即座に実施してください。
🚨 「警戒レベル5になってから逃げる」は手遅れ
警戒レベル5(緊急安全確保)は「すでに災害が発生・切迫している」状況での発令です。
この段階で初めて避難を考えても「外への立退き避難は困難・危険」な状態になっています。
内閣府のガイドラインは「警戒レベル4:避難指示」の段階で危険な場所にいる全員が避難することを求めています。
「警戒レベル4で水平避難・それが間に合わない場合は垂直避難」というのが正しい行動の流れです。
垂直避難の正しい手順とやり方
垂直避難を「正しく・迅速に・安全に」実施するための手順を解説します。この手順をあらかじめ家族で共有しておくことが重要です。
ステップ1:「垂直避難」の意思決定をする
まず「今から垂直避難する」という意思決定を素早く行います。この判断が「早いほど安全に垂直避難できる」です。
「もう少し様子を見よう」という迷いが、垂直避難の準備時間を奪います。以下のどれかに当てはまる場合は「今すぐ垂直避難する」と判断してください。
- 外が膝以上の浸水・流れがある
- 警戒レベル5(緊急安全確保)が発令された
- 外に出ようとしたが危険を感じて戻ってきた
- 川の堤防が決壊したという情報を得た
- 建物の周囲に急激に浸水が広がっている
ステップ2:非常用持ち出し品をまとめて持つ
垂直避難の際は「上の階に移動しながら」以下のものを持っていきます。時間が限られている場合は「命に関わるもの」を最優先にしてください。
- 最優先で持つもの:スマートフォン(フル充電・または充電中)・モバイルバッテリー・充電ケーブル・現金・常備薬・処方薬
- 時間があれば持つもの:飲料水(ペットボトル)・非常食・懐中電灯・ヘッドライト・防寒着・毛布・重要書類(防水袋に入れたもの)
- 余裕があれば持つもの:着替え・携帯ラジオ・ウェットティッシュ・携帯トイレ
「防水バッグ・防水ジップロック袋」にスマートフォン・重要書類を入れておくと「万一浸水が追いついてきた場合」にも守ることができます。
ステップ3:建物の上層階(2階以上)に移動する
垂直避難する階は「できる限り高い階」が原則です。ハザードマップで確認した「想定浸水深」より高い場所に移動することが目標です。
- 想定浸水深が1m未満の地域:2階以上に移動すれば一般的に浸水を避けられる
- 想定浸水深が1〜3mの地域:2階では不十分な場合がある。3階以上・または屋上が望ましい
- 想定浸水深が3m以上の地域:鉄筋コンクリート造の建物の3階以上・またはその地域で最も高い頑丈な建物に移動することが望ましい
自宅が2階建て以下の木造住宅で、想定浸水深が2m以上の地域にある場合は「自宅での垂直避難だけでは不十分な可能性」があります(後述)。
ステップ4:窓・ドアを閉める
上層階に移動した後は「窓・ドアを閉める」ことが重要です。洪水水が上昇してきた場合に「水圧で窓が割れることを防ぐ」効果があります。
また「屋外の冷気・雨・風から体を守る」ためにも窓・ドアを閉めてください。ただし「ガスのにおいがする場合は換気のために窓を開ける」など状況に応じて判断してください。
ステップ5:電気・ガスの安全確認をする
上層階に移動した後は、以下の安全確認を行ってください。
- 1階が浸水している・または浸水しそうな場合は「1階のブレーカーを落とす(OFF)」。感電・漏電火災のリスクを低減できる
- ガスのにおいがする場合は「ガスの元栓を閉める」。元栓がある場所に安全に行ける場合のみ実施する
- 電気・ガスの危険が確認された場合は「電力会社(東電なら0120-995-007等)・ガス会社」に電話で報告する
ステップ6:外部に状況を連絡する
垂直避難を開始したら「外部の人間(家族・自治体・消防・警察)に現在地と状況を伝える」ことが非常に重要です。
孤立した状態で誰にも知られていないと「救助が来ない」という最悪の事態になりかねません。
- 119番(消防)または110番(警察)に電話する:電話できる状況であれば「○○市○○町○○番地・□階に○名が孤立しています」と現在地・人数・状況を報告する
- 家族・知人に連絡する:スマートフォンで家族・知人に現在地と状況を伝える
- NTT災害用伝言ダイヤル「171」を使う:回線が混雑している場合は「171」に電話して伝言を残す。安否を確認したい人が「171」に電話して伝言を聞ける
- SNS・メッセージアプリで発信する:Twitter(X)・LINEで「○○市○○にいる・垂直避難中・救助を求めている」と発信することで救助要請になることがある
ステップ7:救助信号を出す(救助が必要な場合)
救助が必要な場合は「外部に自分の存在を知らせる」行動をとってください。
- 窓から「タオル・衣類・布」などを振って救助隊・ヘリコプターに位置を知らせる
- ヘッドライト・懐中電灯を窓から光らせて存在を知らせる(特に夜間)
- 笛(防災ホイッスル)を吹く。声より遠くまで届き・疲れにくい
- ガラスに「HELP」「助けて」「○名孤立」と書いて窓に貼り付ける
垂直避難に適した建物・適さない建物
「どんな建物でも垂直避難が有効か」というと、そうではありません。
建物の構造・階数・位置によって垂直避難の有効性は大きく異なります。この点が「垂直避難の最大の注意点」です。
垂直避難に適した建物
- 鉄筋コンクリート造(RC造)の建物:洪水の水圧・流木等の衝撃に対する強度が高い。垂直避難に最も適した構造
- 鉄骨造(S造)の建物:RC造より強度はやや劣るが、木造よりは流失・倒壊リスクが低い
- 3階以上ある建物:想定浸水深より高い階に移動できる可能性が高い
- 地盤がしっかりした場所に建つ建物:地盤沈下・液状化リスクが低い場所に建つ建物
垂直避難に適さない建物・注意が必要な建物
- 木造の平屋・2階建て住宅(想定浸水深が2m以上の地域):木造建物は「洪水の水圧・流速・流木等の衝撃」による倒壊・流失リスクがある。「建物ごと流された」という被害事例がある
- 老朽化した建物・耐震性が低い建物:構造的に脆弱な建物は、洪水の水圧や地盤の軟化によって倒壊するリスクがある
- 浸水深が想定される高さより低い建物:2階建て建物なのに想定浸水深が4mという地域では、上の階に逃げても浸水に追いつかれるリスクがある
- 斜面・川岸に近い位置に建つ建物:洪水流・土石流の直撃を受けやすい位置にある建物では、垂直避難も安全とはいえない
垂直避難の限界と注意点
垂直避難は「命を守る重要な手段」ですが、万能ではありません。垂直避難の限界と注意点を正直に理解しておくことが、真の防災につながります。
限界①:木造建物は「建物ごと流失」するリスクがある
2024年9月の能登豪雨では「2階に垂直避難していたにもかかわらず、木造建物が濁流に流された」という事例が複数報告されました(石川県・ピースウィンズ・ジャパン、2024年)。
また過去の洪水でも「1階が完全に水没した木造家屋が流失し、2階に避難していた住民が流された」という被害記録があります。
木造の平屋・2階建て住宅での垂直避難は「鉄筋コンクリート造の建物と比較して安全性が格段に低い」という現実があります。
特に「ハザードマップで想定浸水深が2m以上」「河川氾濫の直撃を受ける可能性がある」「急激な流水が想定される」地域に木造住宅がある方は、垂直避難だけに頼らず「早めの水平避難を最優先」にしてください。
限界②:長期の孤立・救助待ちになる可能性がある
垂直避難中は「外部への移動が困難な孤立状態」になります。洪水が数時間〜数日続く場合は「食料・飲料水・トイレ・暖房」が問題になります。
垂直避難する可能性がある家庭は「上層階に最低3日分の飲料水・食料・携帯トイレを保管しておく」ことが重要です。
限界③:上層階に移動できる体力・手段がない場合がある
足腰の弱い高齢者・車椅子利用者・重症の怪我人がいる場合「上の階に自力で移動する」ことが困難なケースがあります。
事前に「車椅子利用者を2階に移動させる方法(担架・特殊車椅子等)」を家族・支援者と話し合っておくことが重要です。
限界④:停電による暗闇・低体温症のリスク
洪水時は「停電が発生する」ことが多いです。停電した建物の上層階で夜間を過ごす場合は「低体温症・暗闇によるパニック」のリスクがあります。
上層階への備蓄として「ヘッドライト・懐中電灯・毛布・カイロ・防寒着」を保管しておくことが重要です。
⚠ 垂直避難は「最後の手段」——水平避難が大原則
この記事を通して最も重要なメッセージをもう一度お伝えします。
垂直避難は「水平避難(安全な場所への立退き避難)が困難・危険な状況での緊急代替手段」です。
内閣府のガイドラインでも「立退き避難が原則」と明記されています。
「垂直避難があれば大丈夫」「2階に逃げればいい」という考え方で警戒レベル4(避難指示)を無視することは、命を危険にさらす可能性があります。
「警戒レベル4が出たら速やかに水平避難する。それが間に合わない場合・外が危険な場合は垂直避難する」という優先順位を必ず守ってください。
垂直避難中に必要な物・上層階への備蓄リスト
垂直避難は「準備できる時間が少ない」ことが多いです。「いざとなったら2階に持っていく」ではなく「普段から2階・上層階に備蓄しておく」ことが理想的です。
上層階にあらかじめ備蓄しておきたいもの
- 飲料水(1人1日3L×3日分以上):2Lペットボトルを箱ごと上層階に保管しておく。断水時の生命維持に直結する
- 非常食(3日分以上):缶詰・アルファ米・カロリーメイト等の加熱不要・長期保存可能な食品
- 携帯トイレ(1人最低10〜20枚):洪水時はトイレの使用が危険になることがある。上層階で使用できる携帯トイレが必須
- ヘッドライト・懐中電灯(予備電池・予備バッテリー付き):停電時の夜間対策
- 毛布・防寒着・カイロ:停電時の低体温症対策
- 大容量モバイルバッテリー(ソーラー充電対応):スマートフォンへの充電・外部連絡の維持
- 防災ラジオ(手回し充電・ソーラー対応):停電時でも気象情報・避難情報を受信できる
- 救助信号用品:防災ホイッスル・反射板・蛍光テープ・マーカーペン(HELP等を書くため)
- 応急手当用品:絆創膏・消毒薬・包帯・ハサミ・常備薬
- 重要書類のコピー・防水袋:通帳・保険証書・マイナンバーカードのコピーを防水ジップロック袋に入れて保管
垂直避難中の過ごし方と安全確認
垂直避難を開始した後の「正しい過ごし方」を解説します。垂直避難中は「冷静に・安全に・情報を収集しながら」救助を待つことが基本です。
スマートフォンのバッテリーを節約する
垂直避難中はスマートフォンが「外部との唯一の連絡手段」になることが多いです。以下のバッテリー節約方法を実践してください。
- 画面の輝度を最低限に下げる
- 使用していないアプリ・Wi-Fi・Bluetoothをオフにする
- 機内モードにして定期的にオフにして確認する(常時接続を避ける)
- モバイルバッテリーで充電しながら使用する
情報収集を続ける
垂直避難中も「洪水の状況・救助の状況・避難情報」を継続的に収集してください。
- NHKラジオ(防災ラジオ)で気象情報・洪水情報を確認する
- 気象庁「キキクル」・市区町村の防災アプリで浸水状況を確認する
- 消防・自治体のSNSで救助・支援情報を確認する
低体温症を防ぐ
洪水・台風時は「大雨・強風・停電」による急激な気温低下が起きることがあります。特に「濡れた体のまま風に当たる」状態は低体温症のリスクが高まります。
垂直避難中は「濡れた衣類を着替える・毛布・防寒着で体を温める」ことを優先してください。
熱いお茶・スープ(保温ポットに入れておいたもの・カセットコンロで調理したもの)を飲むことも体を温める効果があります。
垂直避難後の安全確認と帰宅のタイミング
垂直避難後、洪水が収まっても「すぐに1階・外に出ることは危険」な場合があります。以下のすべての条件を満たしてから、1階・外への移動を検討してください。
- 市区町村から「避難指示の解除」または「帰宅が可能」というアナウンスが出た
- 外の浸水が完全に引いている(または安全に歩ける水位になっている)
- ガスのにおい・電気系統の異常がない
- 建物の外観に倒壊リスクがある損傷がない
「水が引いたように見えても、地面が不安定・マンホール蓋が外れている・感電リスクがある電線が落ちている」という危険が残っていることがあります。
「自治体・消防のアナウンスを待ってから行動する」ことが安全です。
垂直避難に備えた平時の準備:今日からできること
垂直避難の効果を最大限に発揮するために「平時からの準備」が不可欠です。以下の項目を今日から実践してください。
ハザードマップで自宅の垂直避難リスクを確認する
まず「自宅の想定浸水深」と「建物の構造」を照らし合わせてください。国土交通省のハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)で確認できます。
- 想定浸水深が1m未満で木造2階建て → 2階への垂直避難でひとまず安全な可能性が高い
- 想定浸水深が1〜3mで木造2階建て → 2階では不十分な可能性がある。早めの水平避難を最優先にする
- 想定浸水深が3m以上で木造住宅 → 垂直避難だけでは危険。早めの水平避難が命を守る唯一の確実な方法
- RC造の3階以上の建物 → 想定浸水深に応じた上層階への垂直避難が有効
家族で垂直避難の「役割分担・荷物リスト・連絡方法」を決めておく
「垂直避難が必要になったとき」を想定した家族での役割分担を決めておいてください。
- 「誰が食料・水を運ぶか」「誰がスマートフォン・充電器を持つか」「誰が高齢者・子どもを連れていくか」
- 「2階のどの部屋を垂直避難の拠点とするか」(できるだけ高い・建物の中央部・窓から外に救助信号を出せる部屋)
- 「119番・家族への連絡は誰が行うか」
上層階への備蓄を今すぐ始める
「洪水がいつ来るかわからない」からこそ「今から上層階に備蓄しておく」ことが重要です。以下のものから順番に揃えることをおすすめします。
- 飲料水(2Lペットボトル×家族人数×3日分)
- 大容量モバイルバッテリー(ソーラー充電対応)
- ヘッドライト(電池式・予備電池付き)
- 携帯トイレ(家族人数×10枚以上)
- 防災ラジオ(手回し充電・ソーラー対応)
- 毛布・防寒着
- 非常食(3日分以上)
自宅に「垂直避難できる建物かどうか」が不安な場合は専門家に相談する
「自宅の構造・耐水性・耐震性」に不安がある場合は「建築士・ハウスメーカー・工務店」に相談することをおすすめします。
「自宅が洪水に対してどの程度の強度があるか」「補強できる部分があるか」を専門家に診断してもらうことが、最も確実な情報収集方法です。
市区町村によっては「木造住宅の耐震診断・耐水化診断への補助制度」を設けているところもあります。
市区町村の建築・防災担当窓口に問い合わせてみてください。
垂直避難に関する「よくある疑問」Q&A
Q:マンションの高層階に住んでいます。洪水時は垂直避難で安全ですか?
A:鉄筋コンクリート造のマンションに住んでいる場合、洪水に対する建物の耐久性は木造よりはるかに高いです。
ただし「マンション1階のエントランス・エレベーターが浸水して使用不能になる」可能性があります。また「マンション周辺の地盤が液状化することで建物が傾く・沈む」リスクもゼロではありません。
ハザードマップで想定浸水深を確認し、それより高い階にいることを確認してください。エレベーターが使えなくなることを想定して「階段で移動できる体力・準備」も確認しておいてください。
Q:地下室がある家です。洪水が来たらどうすればいいですか?
A:地下室は「洪水時に最も危険な場所のひとつ」です。
地下室は浸水が急激に進み「短時間で満水になる」ことがあります。水圧でドアが開かなくなることもあります。
洪水の危険が迫っている場合は「地下室には入らない・または地下室から直ちに脱出して上の階に移動する」ことが絶対的な原則です。
地下駐車場・地下倉庫への移動も同様に危険です。
Q:垂直避難中にトイレはどうすればいいですか?
A:洪水時はトイレの下水管に問題が生じることがあります。
1階が浸水している場合は「排水管からの逆流」のリスクがあるため、1階のトイレは使用しないことが無難です。
上層階のトイレは「下水管の状態が確認できれば使用可能」ですが、断水時は流せないという問題があります。
最も確実な解決策は「携帯トイレを上層階に備蓄しておく」ことです。
携帯トイレは「袋の中に凝固剤が入っており、用を足した後に凝固して捨てられる」仕組みで、1枚100〜200円程度から入手できます。
Q:垂直避難をやめて外に逃げたほうがいいタイミングはありますか?
A:垂直避難中に「建物の傾き・異常な軋み音・ガスのにおいの強まり」などが感じられる場合は「建物に危険が迫っている」サインの可能性があります。
外の浸水が「歩行可能なレベル(くるぶし以下)」まで下がっている場合は、より安全な場所(鉄筋コンクリートの建物)への移動を検討してください。
消防・救助隊が来て「移動を指示された場合」は必ず従ってください。「外の状況が不明・浸水が続いている状況」での屋外移動は非常に危険です。
消防・自治体の判断・指示を最優先にしてください。
垂直避難の知識を防災計画に組み込むことが命を守る
「垂直避難」は洪水から命を守る重要な知識です。しかし繰り返しになりますが「垂直避難は最後の手段」です。理想的な洪水時の行動順序は以下の通りです。
- 平時にハザードマップを確認して、自宅の洪水リスクと垂直避難の有効性を理解しておく
- 警戒レベル2〜3の段階で「避難の準備・止水対策・荷物の準備」を完了させる
- 警戒レベル3(高齢者等避難)の発令で、要配慮者がいる家庭は水平避難を開始する
- 警戒レベル4(避難指示)の発令で、危険な場所にいる全員が水平避難を開始する
- 水平避難が困難・危険な状況になった場合に限り、垂直避難に切り替える
- 垂直避難中は外部への連絡を維持しながら救助を待つ
「垂直避難の知識を持つ」ことと「垂直避難に頼る防災計画を立てる」ことは別物です。最も安全な防災計画は「垂直避難が必要にならないよう、早めに水平避難する」ことです。
垂直避難の知識は「万一のときの命綱」として持ちつつ、まず「早めの水平避難」を家族の行動計画の中心に据えてください。
今後も「洪水・水害から命と暮らしを守るための正確な情報」をお届けします。


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