熱中症の飲み物【2026年版】おすすめ・NGな飲み物・正しい飲み方・経口補水液の作り方を完全解説
【この記事の要約】
熱中症の予防・応急処置において飲み物の選び方は非常に重要です。水分補給に最適な飲み物は①経口補水液(OS-1等)、②スポーツドリンク(イオン飲料)、③塩分入りの水(水+塩飴・塩タブレット)、④麦茶+塩分補給の組み合わせです。熱中症予防の通常時は麦茶・水でも十分ですが、大量発汗時・熱中症症状が出た場合は必ず塩分(ナトリウム)を同時に補給する必要があります。水だけを大量補給すると血中ナトリウム濃度が低下(低ナトリウム血症)し、頭痛・吐き気・けいれん・意識障害を引き起こすリスクがあります。NGな飲み物はアルコール(利尿作用で脱水を促進)・過剰なカフェイン飲料(利尿作用)・砂糖過多の清涼飲料水(浸透圧性利尿で脱水を悪化させる)です。経口補水液は水1Lに砂糖40g・食塩3gで自作でき、市販品がない緊急時に役立ちます。飲むタイミングはのどが渇く前に定期的に(活動中は20〜30分に1回・コップ1杯200ml程度)が基本です。
暑い季節に熱中症を予防するため、どんな飲み物をどのように飲めばよいかを正確に知ることは、命を守るための重要な知識です。
水を飲んでいれば大丈夫と思っていませんか。
実は水だけを大量補給することが、かえって熱中症を悪化させるケースがあります。
また熱中症の症状が出た後に飲むべき飲み物は、日常的な予防時とは異なります。
この記事では、熱中症の予防・応急処置に適した飲み物・NGな飲み物・正しい飲み方・経口補水液の自作レシピ・場面別・対象者別の飲み物選びを詳しく解説します。
【この記事の信頼性について】
本記事は環境省・厚生労働省・日本救急医学会・日本スポーツ協会の公式データ・ガイドラインをもとに作成しています。熱中症の診断・治療については必ず医師・医療機関にご相談ください。意識障害・けいれん・呼びかけへの無反応がある場合は即座に119番通報してください。
なぜ飲み物の選び方が熱中症に直結するのか
熱中症が発生するメカニズムを理解すると、なぜ飲み物の種類・量・タイミングが重要なのかが明確になります。
熱中症と体液の関係
人体は体温が上昇すると汗をかき、その蒸発による気化熱で体温を下げます。
健康な成人は1時間あたり最大1〜2Lの汗をかく能力を持っています。
汗には水分だけでなく、塩分(ナトリウム・塩化物)が含まれています。
1Lの汗には約1〜2gの塩分が含まれており、大量発汗では水分と塩分の両方が失われます。
体重の約1%に相当する水分が失われると(体重60kgの人なら約600ml)、体温調節能力が低下し始めます。
体重の2%(約1.2L)の水分喪失では運動能力・認知機能の低下が始まります。
体重の3〜4%(約1.8〜2.4L)の水分喪失では熱中症症状が顕著に現れます。
つまり大量発汗の状態では、短時間で危険な脱水状態に近づく可能性があります。
水だけでは不十分な理由:低ナトリウム血症のリスク
脱水を補うために水だけを大量補給すると、血中のナトリウム濃度が希釈されます。
これを低ナトリウム血症(水中毒)と呼びます。
血中ナトリウム濃度が低下すると、細胞外から細胞内に水が移動し、脳細胞が浮腫(むくみ)を起こします。
その結果、頭痛・吐き気・けいれん・意識障害が起きます。
これらはまさに熱中症の症状と重なります。
つまり水だけを飲み続けることが、熱中症の一症状(筋肉のこむら返り・頭痛)を悪化させるという逆説的な事態が起きます。
大量発汗時の水分補給には、必ず塩分(ナトリウム)の補給を組み合わせる必要があります。
飲むタイミングの重要性:のどが渇いてからでは遅い
口渇感(のどが渇いた感覚)を感じる段階では、すでに体内の水分量が体重の約1%以上低下しています。
水分量が1%低下した段階で体温調節能力の低下が始まっているため、口渇感が現れてから飲み始めるのでは対応が遅いです。
さらに高齢者は加齢により口渇感を感じる閾値が上がっており、体内が危険な脱水状態でものどが渇いたと感じにくくなっています。
のどが渇く前に定期的に飲む習慣が、熱中症予防の最も基本的なポイントです。
熱中症の予防・対処に適した飲み物ランキング
熱中症の予防・応急処置に適した飲み物を、その特性とともに解説します。
第1位:経口補水液(ORS・OS-1等)
経口補水液(Oral Rehydration Solution:ORS)は、熱中症症状が出た場合・中程度以上の脱水状態の応急処置において最も適した飲み物です。
経口補水液の特徴
- スポーツドリンクより塩分濃度が高い(ナトリウム濃度約50mEq/L)
- 水分・塩分・糖分のバランスが脱水状態の体への吸収に最適化されている
- 腸管での吸収速度が通常の水よりも速い(腸の共輸送体を活用したナトリウム・グルコース共輸送)
- 市販品(OS-1・アクアソリタ等)は医療機関でも使用されている
いつ飲むべきか
- 熱中症のⅠ〜Ⅱ度の症状(めまい・頭痛・吐き気・倦怠感)が出たとき
- 下痢・嘔吐・発熱後の脱水回復時
- 長時間の屋外活動・運動後に大量発汗した場合の回復時
注意点
経口補水液は塩分濃度が高いため、健康な日常状態で大量に飲み続けることは推奨されません。
腎臓・心臓疾患がある方・塩分制限が必要な方は、経口補水液の使用前に主治医に相談してください。
経口補水液はあくまでも脱水状態・熱中症症状が出た際の応急処置用として位置づけ、夏の間は常備しておくことを強く推奨します。
第2位:スポーツドリンク(イオン飲料)
スポーツドリンク(アクエリアス・ポカリスエット・グリーンダカラ等)は、熱中症予防・スポーツ時・屋外作業時の水分補給に適した飲み物です。
スポーツドリンクの特徴
- 水分・塩分・糖分(エネルギー)を同時に補給できる
- 適度な糖分が水分・塩分の腸管吸収を促進する
- 経口補水液より塩分濃度は低い(ナトリウム濃度約20〜30mEq/L)が、日常的な水分補給としての飲みやすさがある
- 体液に近い浸透圧(等張〜低張)のものが多く、吸収されやすい
スポーツドリンクと経口補水液の使い分け
| 状況 | 推奨する飲み物 | 理由 |
|---|---|---|
| 熱中症予防(日常・運動時) | スポーツドリンク・麦茶+塩分 | 継続的に飲みやすい。過剰な塩分摂取を防げる |
| 大量発汗後の回復 | スポーツドリンク・経口補水液 | 塩分・水分を同時に補給できる |
| 熱中症症状が出た(Ⅰ〜Ⅱ度) | 経口補水液を優先。なければスポーツドリンク | 経口補水液は塩分濃度が高く脱水回復に最適 |
| 嘔吐がある・水が飲みにくい | 少量ずつ経口補水液。飲めない場合は医療機関へ | 一度に飲ませると嘔吐が悪化するため少量ずつ |
スポーツドリンクの注意点
製品によっては糖分濃度が高く(10%以上)、大量に飲むとカロリー過剰になることがあります。
糖分濃度が高すぎるスポーツドリンクは、腸管での吸収時に浸透圧性利尿が起きて逆に脱水を促進するリスクがあります。
糖分濃度が8%以下のものを選ぶ・または水で薄めて飲むことで、吸収効率を高めることができます。
第3位:麦茶(カフェインなし・塩分補給を別途行う)
麦茶はカフェインを含まないため、利尿作用が少なく水分補給に適した飲み物です。
ミネラル(カリウム・ナトリウム・マグネシウム等)を微量含んでいますが、熱中症予防に必要な量の塩分補給としては不十分です。
麦茶を水分補給に使う場合の推奨方法
- 麦茶と合わせて塩飴・塩タブレットを摂取し、塩分も補給する
- 屋外活動・スポーツ中はスポーツドリンクと交互に飲む
- 冷たい麦茶は飲みやすく、高温時の水分補給習慣づけに適している
第4位:水+塩分補給の組み合わせ
水は最も基本的な水分補給源です。
ただし大量発汗時には水だけでは低ナトリウム血症のリスクがあるため、必ず塩分補給を組み合わせてください。
水と組み合わせる塩分補給の方法
- 塩飴・塩タブレット(1粒に食塩約0.5〜1g程度を含む製品が多い)を水と一緒に摂取する
- 梅干し(1粒に食塩約1〜2g含む)を食事や間食で摂取しながら水を飲む
- みそ汁・スープなどの塩分を含む食事と水分を合わせて摂取する
- 自作の塩水(水500mlに食塩0.5g・砂糖20g程度)を作って飲む
熱中症に適さない飲み物:NGな飲み物とその理由
熱中症の予防・応急処置において避けるべき飲み物とその理由を解説します。
知らずに摂取することで脱水が悪化・熱中症が重症化するリスクがあります。
NG飲み物①:アルコール飲料全般
アルコールは利尿作用(尿量を増加させる作用)を持ちます。
アルコールを摂取すると脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(ADH)の産生が抑制され、尿量が増加します。
飲んだ量よりも多くの水分が尿として排出されるため、アルコール飲料は熱中症時の水分補給には全くなりません。
むしろ脱水を悪化させます。
アルコールと熱中症の危険な関係は以下の通りです。
- 就寝前の飲酒→就寝中も利尿が続く→翌朝起床時に脱水状態→熱中症リスクが高い状態で日中の活動を開始する
- アルコールには体温調節機能を乱す作用もある(飲酒後は体温変化への適応が低下する)
- 飲酒後の体温上昇感(ほてり)は皮膚血管の拡張によるものであり、深部体温の調節は乱れている
熱中症の応急処置時に本人がアルコールを求めても、絶対に与えてはいけません。
飲酒後の翌日は意識的に水分補給を強化してください。
NG飲み物②:カフェインを過剰に含む飲み物
コーヒー・エナジードリンク・濃い緑茶・濃い紅茶などのカフェインを多く含む飲み物は、利尿作用を持ちます。
カフェインは腎臓での水分再吸収を抑制し、尿量を増加させます。
ただし適量(コーヒー1〜2杯程度)のカフェイン摂取は水分補給として許容できるという研究結果もあります。
問題になるのは、コーヒーやエナジードリンクを大量に飲み、他の水分補給を怠るケースです。
特にエナジードリンクはカフェインに加えて高糖分・利尿成分を含むものが多く、熱中症の水分補給としては不適切です。
カフェイン飲料を飲む場合の注意点は以下の通りです。
- コーヒー・緑茶を飲む際は、合わせてコップ1杯の水またはスポーツドリンクも飲む習慣をつける
- エナジードリンクは熱中症予防・応急処置の飲み物として使用しない
- 屋外活動中・運動中のカフェイン飲料単独での水分補給は避ける
NG飲み物③:糖分過多の清涼飲料水・コーラ
市販の清涼飲料水(コーラ・サイダー・フルーツジュース等)の多くは糖分濃度が10〜13%程度と非常に高いです。
糖分濃度が高い飲み物を大量摂取すると、腸管内の浸透圧が高くなりすぎます。
その結果、腸管から体内に水分が吸収される代わりに、体から腸管内に水分が引き出される浸透圧性利尿が起きます。
これにより飲んでいるのにかえって脱水が悪化するという事態が起きます。
かつてスポーツドリンクとして清涼飲料水を飲み続けた子どもが、過剰な糖分摂取とともに脱水症状を来たすケース(ペットボトル症候群)が問題になりました。
水分補給に使う飲み物は糖分濃度8%以下のものを選ぶことが推奨されます。
NG飲み物④:冷たすぎる飲み物の一気飲み
氷水・冷凍ドリンクなどの非常に冷たい飲み物を一気に大量飲みすることは、胃痙攣・腹痛・嘔吐を引き起こすリスクがあります。
嘔吐が起きると水分と塩分が失われ、脱水がさらに悪化します。
冷たい飲み物は体を冷やす効果がありますが、一気飲みは避け、こまめに少量ずつ飲んでください。
経口補水液の自作レシピ
市販の経口補水液(OS-1等)は薬局・コンビニで購入できますが、緊急時・備蓄として自作することもできます。
WHO・日本救急医学会推奨の経口補水液レシピ
【自作経口補水液の材料(1L分)】
・水(沸騰後冷ましたもの・またはミネラルウォーター):1L
・砂糖(上白糖・グラニュー糖):40g(大さじ約4杯強)
・食塩:3g(小さじ約0.5杯)
作り方:すべての材料を混ぜ、完全に溶かす。冷蔵保存で24時間以内に使い切る。
砂糖を加える理由は腸管でのナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT1)を活性化させ、水分と塩分の吸収効率を高めるためです。
単純な塩水より砂糖を加えた経口補水液の方が、腸管での吸収が速くなります。
梅干し版の簡易経口補水液の作り方は以下の通りです。
【梅干しを使った簡易版】
・水:500ml
・梅干し:1個(種を除いて果肉を混ぜる)
・砂糖:10〜20g(お好みで)
・食塩:0.5〜1g(梅干しの塩分量に応じて調整)
梅干しの塩分量は製品によって異なります。減塩梅干し(食塩約5〜8%)と通常の梅干し(食塩約15〜20%)で塩分量が大きく変わるため、追加食塩量を調整してください。
自作経口補水液の注意点
- 作り置きは衛生上24時間以内に使い切ること
- 砂糖の量が多すぎると浸透圧性利尿が起きる可能性があるため、分量を守ること
- 塩分量が多すぎると高ナトリウム血症のリスクがあるため、分量を守ること
- 乳幼児への自作経口補水液の使用は、小児科医に確認してから行うことが推奨される
- Ⅲ度(重症・意識障害)では飲ませてはいけない。即座に119番通報すること
正しい水分補給の量・タイミング・温度
飲み物の種類と同様に、量・タイミング・温度も熱中症予防において重要なポイントです。
水分補給の適切な量
熱中症予防のための1日の水分補給目安量は以下の通りです。
| 状況 | 1日の水分補給目安量(飲料から) | 備考 |
|---|---|---|
| 安静・室内作業(冷房あり) | 約1〜1.2L | 食事からの水分(約1L)を合わせると合計約2L |
| 屋外活動・軽い運動 | 約1.5〜2L | 発汗量に応じて増やす |
| 激しい運動・屋外重労働 | 約2〜3L以上 | 発汗量が多い日は体重減少を確認しながら補給量を調整する |
| 高齢者(安静時) | 約1.2〜1.5L | 口渇感が低下しているため、意識的に時間を決めて飲む習慣が必要 |
水分補給の適切なタイミング
以下のタイミングでの水分補給を習慣化してください。
- 起床直後:就寝中の発汗で失われた水分を補給する。コップ1杯(200ml)を就寝前・起床後それぞれに飲む
- 外出・運動前:出発の30分前にコップ1〜2杯(200〜400ml)を補給する。出発前の補給が活動中の脱水進行を遅らせる
- 活動中(定期的に):20〜30分に1回・コップ1杯(200ml程度)を目安に。のどが渇く前に飲む
- 活動後:活動終了後も引き続き水分補給を行う。活動後も発汗・体温上昇が続くことがある
- 入浴前後:入浴前後にコップ1杯ずつ飲む。入浴中も発汗により脱水が進む
- 就寝前:就寝中の発汗・起床後の脱水を防ぐためにコップ1杯飲む
水分補給の適切な温度
水分補給に適した飲み物の温度は5〜15℃程度(冷たすぎない冷たさ)が推奨されます。
冷たい飲み物の方が飲みやすく、体内に入った際に体温をわずかに下げる効果も期待できます。
ただし非常に冷たい飲み物(0℃近い氷水など)の一気飲みは胃痙攣・腹痛のリスクがあります。
高温時でも少しずつゆっくり飲む習慣を保つことが重要です。
高齢者・乳幼児では冷たい飲み物が胃腸に負担をかける場合があります。
常温に近い飲み物(10〜20℃程度)の方が適する場合もあります。
場面別の飲み物の選び方
熱中症対策における飲み物の選び方は、場面・状況によって異なります。
日常生活(在宅・通常の外出時)
日常生活での水分補給は麦茶・水に塩飴・塩タブレットを合わせる組み合わせで十分な場合が多いです。
室温28℃以下でエアコンを使用している室内では発汗量が少ないため、多量の塩分補給は必要ありません。
ただしWBGT28℃以上(厳重警戒水準)の日・熱中症警戒アラートが発令されている日は、スポーツドリンクを活用した積極的な水分塩分補給が推奨されます。
屋外作業・農作業・建設作業時
屋外での重労働中は大量発汗が起きるため、水だけの水分補給では不十分です。
厚生労働省は職場での熱中症予防として、スポーツドリンク・経口補水液・塩飴を用いた塩分補給を義務づけています。
作業中は以下の水分補給を実践してください。
- 15〜20分に1回・コップ1杯(200ml程度)のスポーツドリンクまたは塩分入りの水を飲む
- 1時間あたり500ml〜1L程度を目安に補給する
- 塩飴・塩タブレットを携帯し、作業中に定期的に摂取する
- 作業前後に体重を計測し、1kg以上の体重減少がある場合は脱水が進んでいるサイン。追加の水分補給を行う
スポーツ・運動中
日本スポーツ協会は運動中の熱中症予防として以下の水分補給指針を設けています。
- 運動前:500ml程度を運動開始30分前に補給する
- 運動中:20〜30分ごとに200〜250mlをこまめに補給する
- 運動後:体重1kgの減少に対して1L以上の水分を補給する目安にする
- 運動強度が高い・1時間以上の運動ではスポーツドリンクを使用して塩分・糖分も補給する
- WBGT28℃以上の環境では水分補給の頻度・量を増やす
熱中症の症状が出た場合の応急処置
熱中症のⅠ〜Ⅱ度の症状(めまい・頭痛・吐き気・倦怠感)が出た場合は、経口補水液を優先してください。
市販の経口補水液がない場合は、スポーツドリンクで代用します。
飲み方は一度に大量に飲まず、50〜100mlを5〜10分おきに少量ずつ飲ませてください。
嘔吐が繰り返される・水が全く飲めない場合は自己対処の限界を超えています。
医療機関で点滴(静脈内輸液)治療を受けてください。
意識障害・けいれんがある場合(Ⅲ度)は飲ませてはいけません。即座に119番通報してください。
対象者別の飲み物選びの注意点
高齢者:自発的な水分補給を促す工夫が必要
高齢者は加齢により口渇感が低下しており、体内が脱水状態でものどが渇いたと感じにくくなっています。
さらに頻尿を嫌って意識的に水分を控える高齢者が多いことも、熱中症リスクを高めます。
高齢者の水分補給を支援するためのポイントは以下の通りです。
- 時計・タイマーを活用して1時間に1回・コップ1杯(200ml)を飲む時間を設ける
- 飲みやすい温度・味の飲み物を準備する(冷たすぎない麦茶・薄めのスポーツドリンク等)
- 飲み物をすぐ手の届く場所に置いておく(席を立つのが億劫な場合に飲まないことがある)
- 食事のたびに汁物・水分を必ず摂る習慣をつける(みそ汁・スープは水分と塩分を同時に補給できる)
- 利尿薬・降圧薬などを服用中の場合は、主治医に夏季の水分補給量の目安を確認する
- 家族が電話・訪問時に水分をちゃんと飲んでいるか確認する
乳幼児:保護者がこまめに与える
乳幼児は自分からのどが渇いたと伝えることが難しいため、保護者が定期的に水分を与えることが不可欠です。
乳幼児の水分補給における飲み物の選び方は以下の通りです。
- 母乳・ミルク(乳児):通常の授乳頻度を維持しつつ、暑い日は授乳回数を増やす
- 水・麦茶(離乳食開始後):ベースの水分補給として適切
- スポーツドリンクは乳幼児に過剰な糖分・ナトリウムを摂取させるリスクがある。薄めて使用するか、使用前に小児科医に相談する
- 経口補水液(乳幼児向け製品):中等度の脱水症状が出た場合の応急処置に使用する。通常の飲み物として常飲することは推奨しない
- 果汁・清涼飲料水:糖分が多く適切ではない。熱中症の水分補給には使用しない
妊婦・授乳中の方
妊婦は基礎体温が高く・循環血液量が増加しているため、熱中症リスクが通常より高い状態にあります。
授乳中は母乳産生のために通常より多くの水分が必要です。
妊婦・授乳中の方の水分補給として推奨される飲み物は水・麦茶・ノンカフェイン飲料です。
大量のカフェイン飲料は胎児への影響・母乳への移行が懸念されるため控えてください。
スポーツドリンク・経口補水液の使用は適量であれば問題ありませんが、心配な場合は産婦人科医に確認してください。
持病のある方(心疾患・腎疾患・糖尿病)
心疾患・慢性心不全の方は水分摂取量の制限が必要な場合があります。
多量の水分摂取が心臓への負担増大・浮腫悪化につながる可能性があります。
腎疾患・慢性腎臓病の方は体液量の調節機能が低下しており、電解質(ナトリウム・カリウム等)の管理が必要です。
経口補水液・スポーツドリンクには塩分・カリウムが含まれるため、主治医の指示なく大量摂取することは避けてください。
糖尿病の方はスポーツドリンクの糖分が血糖値を上昇させる可能性があります。
糖分無添加のスポーツドリンク・経口補水液の使用または麦茶+塩分補給の組み合わせが比較的適している場合があります。
いずれの場合も夏前に主治医に熱中症予防のための水分補給方法を確認しておくことを強く推奨します。
飲み物に関するよくある疑問:Q&A
Q. コーヒーは熱中症の水分補給になりますか?
適量(1日2〜3杯程度)であれば水分補給として一定の効果があるという研究結果があります。
ただし大量のカフェインには利尿作用があるため、コーヒーだけで水分補給を完結させることは推奨されません。
コーヒーを飲む際はコップ1杯の水・麦茶も合わせて飲む習慣をつけてください。
Q. 塩飴・塩タブレットはどのくらい食べればよいですか?
塩飴・塩タブレットの塩分含量は製品によって異なりますが、1粒あたり食塩0.3〜1g程度の製品が多いです。
スポーツ・屋外作業中の目安は1時間あたり0.5〜1g程度の食塩補給です。
ただし塩分の過剰摂取(健康な成人で1日8g以上)は高血圧・腎臓への負担増大のリスクがあります。
通常の食事から1日6〜8g程度の塩分を摂取していることを考慮し、活動量・発汗量に応じた適量の補給を心がけてください。
高血圧・腎疾患がある方は塩飴の使用前に主治医に確認してください。
Q. スポーツドリンクを水で薄めて飲んでもよいですか?
市販のスポーツドリンクを2倍程度に薄めて飲むことは、糖分濃度を下げて腸管吸収を改善するために有効な方法です。
特に糖分濃度が高いスポーツドリンク(成分表示で糖質10g/100ml以上)は薄めることで腸管吸収が改善されます。
ただし薄めることで塩分濃度も低下するため、大量発汗時は別途塩飴・塩タブレットで塩分を補うか、薄めない方が適切な場合もあります。
Q. 麦茶と緑茶、水分補給に向いているのはどちらですか?
熱中症の水分補給としては麦茶の方が適しています。
麦茶はカフェインを含まないため利尿作用がなく、純粋な水分補給になります。
緑茶にはカフェインが含まれており(茶葉・濃さによって異なるが、100mlあたり約15〜30mg程度)、大量摂取では利尿作用が現れます。
ただし薄めの緑茶・ほうじ茶であれば利尿作用は少なく、水分補給として問題ないとされています。
Q. 熱中症の後、翌日以降の水分補給で注意することはありますか?
熱中症のⅡ度以上の症状があった翌日以降は、脱水が完全に回復するまで通常より多めの水分補給を継続してください。
目安として尿の色が薄い黄色(麦わら色)になるまで水分補給を続けます。
翌日も強い倦怠感・食欲不振が続く場合は、経口補水液での水分塩分補給を継続するとともに医療機関を受診してください。
熱中症対策のための飲み物の備蓄
熱中症対策の観点から、夏前に飲み物の備蓄を準備しておくことを推奨します。
特に停電・避難生活など、通常の購入が困難な状況では飲み物の備蓄が命を守ります。
推奨する備蓄飲料
- 経口補水液(OS-1等):1人あたり3〜5本(500ml)。熱中症症状が出た際の応急処置用として常備する。長期保存可能な粉末タイプも存在する
- スポーツドリンク(ペットボトル・粉末):1人あたり3〜7日分。粉末タイプは長期保存・携帯に便利
- 塩飴・塩タブレット:1〜2袋。水と組み合わせた塩分補給に使える
- 飲料水(ペットボトル):1人1日3L以上・3〜7日分。熱中症予防には通常の飲料水備蓄以上の量が必要
保管時の注意点
- 高温・直射日光の当たる場所への保管は避ける。車のトランク・日当たりのよい棚などは不可
- 賞味期限を定期的に確認し、ローリングストック(古いものから使って新しいものを補充する)を実践する
- 断水時・停電時でも使える未開封ペットボトルをベースに備蓄する
まとめ:熱中症の飲み物選びの5原則
熱中症の飲み物選び・水分補給について、最も重要な5原則を整理します。
- のどが渇く前に飲む:口渇感が現れる段階では既に体温調節能力の低下が始まっている。時計を見て定期的に補給する習慣をつける
- 大量発汗時は水だけでなく塩分も補給する:水だけを大量補給すると低ナトリウム血症のリスクがある。スポーツドリンク・経口補水液・塩飴を組み合わせる
- 熱中症症状が出たら経口補水液を優先する:経口補水液は脱水回復に最適化された飲み物。市販品を常備し、症状出現時に即座に使える体制を整える
- アルコール・過剰なカフェイン・高糖分清涼飲料水はNG:これらは脱水を悪化させるため、熱中症予防・応急処置の飲み物として使用しない
- Ⅲ度(意識障害・けいれん)では飲ませない:意識障害がある場合は誤嚥・窒息のリスクがある。即座に119番通報し体を冷やすことを優先する
熱中症を防ぐための水分補給は特別なことではありません。
正しい飲み物を選び・のどが渇く前に定期的に飲むという、シンプルな習慣の継続が最大の予防策です。
今年の夏から、飲み物の選び方と飲むタイミングを見直してください。


