熱中症になったらどうする?応急処置・救急車の基準・回復期間・病院受診まで徹底解説
【この記事の要約】
熱中症になったとき、最初の対処が回復の速さと重症化の防止を大きく左右します。熱中症の応急処置の基本は4つです。①涼しい場所に移動する、②衣服を緩めて体を冷やす、③水分と塩分を補給する、④安静を保つ——この4ステップを素早く行うことが重要です。体を冷やす際は首・わきの下・太ももの付け根(鼠径部)の3か所に保冷剤や氷を当てることが最も効果的です。これらの部位には太い血管が通っており体温を効率よく下げられます。意識がない・けいれんしている・呼びかけに反応しない・体が非常に熱く汗をかいていない状態が見られる場合は直ちに119番に電話してください。応急処置をしながら救急車を待つことが命を守ります。軽症(Ⅰ度)であれば適切な対処で30分〜数時間で症状が改善することが多いですが、中等症(Ⅱ度)以上は医療機関の受診が必要です。熱中症後は数日間、体の回復期間として激しい活動を控えることが再発防止に重要です。本記事では熱中症になったときの応急処置の手順・救急車を呼ぶ判断基準・体の冷やし方・水分補給の正しい方法・病院受診の基準・回復期間の注意点まで詳しく解説します。
熱中症は早期に適切な対処をすれば回復できますが、対処が遅れると命に関わる重篤な状態に進行します。
熱中症になったとき、または周囲の人が熱中症の症状を示したとき、何をすれば良いか正確に知っておくことが重要です。
この記事では熱中症になったときに取るべき行動を、医学的な根拠に基づいて順を追って解説します。
【この記事の信頼性について】
本記事は日本救急医学会・環境省・厚生労働省・消防庁の熱中症に関する公式情報・ガイドラインをもとに作成しています。熱中症の重症度分類(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)は日本救急医学会の公式分類に準拠しています。症状が重い場合・不安な場合は必ず医療機関を受診してください。
まず確認:今の症状はどの重症度か
熱中症になったとき、最初にすべきことは症状の重症度を素早く判断することです。
重症度によって対処法が大きく異なります。
日本救急医学会の分類ではⅠ度(軽症)・Ⅱ度(中等症)・Ⅲ度(重症)の3段階に分けられています。
| 重症度 | 主な症状 | 緊急度 | 対処 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | めまい・立ちくらみ・筋肉のこむら返り・大量発汗・手足のしびれ・気分が悪い | 緊急性は低いが油断は禁物 | 涼しい場所で安静・冷却・水分塩分補給 |
| Ⅱ度(中等症) | 強い頭痛・嘔吐・吐き気・倦怠感・虚脱感・力が入らない・判断力の低下・体温上昇(38〜39℃) | 医療機関受診が必要 | 応急処置後に速やかに医療機関へ |
| Ⅲ度(重症) | 意識障害・けいれん・高体温(40℃以上)・皮膚が熱くて乾燥している・ろれつが回らない・真っすぐ歩けない | 命に関わる緊急事態 | 直ちに119番・救急搬送 |
⚠️ 以下の症状が1つでもあれば今すぐ119番に電話してください
・意識がない・呼びかけても反応しない
・けいれんが起きている
・体が非常に熱いのに汗をかいていない
・ろれつが回らない・言動がおかしい
・真っすぐ歩けない・体を支えられない
・自力で水を飲めない
熱中症になったときの応急処置:4つの基本ステップ
Ⅰ度〜Ⅱ度の熱中症に対する応急処置の基本手順を解説します。
4つのステップをできるだけ素早く・同時進行で行うことが重要です。
ステップ1:涼しい場所に移動する
最初にすべきことは体を高温環境から引き離すことです。
エアコンが効いた建物の中・または日陰の風通しの良い場所に素早く移動します。
自力で歩けない場合は周囲の人が介助して移動させます。
屋外であれば木陰・建物の影・テントなど直射日光が当たらない涼しい場所を選びます。
エアコンの効いたコンビニエンスストア・ショッピングモール・公共施設も有効です。
ステップ2:衣服を緩めて体を冷やす
涼しい場所に移動したらすぐに衣服を緩めます。
ネクタイ・ボタン・ベルト・下着の締め付けを外して体の熱の放散を助けます。
濡れた衣服がある場合は乾いた衣服に交換することが望ましいです。
次に体を積極的に冷やします。
体を冷やす最も効果的な方法は以下の3か所への冷却です。
- 首(頸部):頸動脈が通っており、ここを冷やすと冷えた血液が全身を循環して効率よく体温を下げられる
- わきの下(腋窩):腋窩動脈が通っている。腕を軽く上げた状態で保冷剤・氷嚢を当てる
- 太ももの付け根(鼠径部):大腿動脈が通っており体幹部の冷却に最も効果的な部位の一つ
これら3か所は太い血管(動脈)が皮膚に近い部分を通っているため、体温を下げる効率が非常に高いです。
保冷剤はタオルに包んでから当てることで皮膚への過度な刺激を防げます。
体を冷やす具体的な方法
状況に応じた体の冷やし方を紹介します。
| 冷却方法 | 効果 | 特に適した状況 |
|---|---|---|
| 保冷剤・氷嚢を首・わき・鼠径部に当てる | 非常に高い。太い血管を直接冷却できる | 最優先。保冷剤・氷がある全ての状況 |
| 冷たい濡れタオルを体に当てる | 高い。蒸発冷却の効果がある | 氷がない場合・顔・腕・体幹への広範囲冷却 |
| うちわ・扇風機で風を当てる | 中程度。濡れタオルと組み合わせると蒸発冷却の効果が倍増する | 全ての状況で補助的に使用 |
| 冷水シャワー・水をかける | 高い。体全体を一気に冷却できる | シャワー設備がある場合・水が確保できる屋外 |
| 冷房の冷気を体に直接当てる | 中程度。冷房が効いた室内では効果的 | 冷房のある室内に移動できた場合 |
| 冷たい飲み物を飲む | 体内からの冷却に補助的に有効 | 意識があり自力で飲める場合に水分補給と兼ねて行う |
ステップ3:水分と塩分を補給する
意識があり自分で飲める状態であれば水分と塩分の補給を行います。
意識がない・嘔吐している場合は絶対に口から飲ませないでください。
誤嚥(気管に入ること)・窒息の危険があります。
水分補給の優先順位は以下の通りです。
- 経口補水液(OS-1など):水分と電解質(ナトリウム・カリウム等)を適切な比率で含む。熱中症・脱水症状の回復に最も適した飲料
- スポーツドリンク:経口補水液より塩分・電解質は少ないが水だけよりは適切な補給ができる。入手しやすい状況では有効な選択肢
- 塩水(0.1〜0.2%程度):水1リットルに食塩1〜2gを溶かしたもの。経口補水液がない場合の代替として使える
- 水+塩飴・梅干し:水と塩分源を別々に摂取する方法。塩分補給ができるため水だけよりも適切
⚠️ 注意:水だけを大量に飲ませるのは危険です
発汗で失われたナトリウムを補給せずに水だけを大量に飲むと、血中のナトリウム濃度が低下して低ナトリウム血症(水中毒)を引き起こすリスクがあります。必ず塩分(電解質)と一緒に補給してください。
一度に大量に飲むのではなく、少量をゆっくりと飲ませることが重要です。
急に大量に飲むと嘔吐を誘発することがあります。
目安として1回100〜200ml程度を15〜20分おきに少しずつ補給します。
ステップ4:安静を保ち経過を観察する
涼しい場所で横になって安静を保ちます。
脚を少し高くする(仰向けで脚を心臓より高い位置に上げる)と脳への血流が維持されやすくなります。
嘔吐している・嘔吐しそうな場合は横向きに寝かせて気道を確保します。
応急処置を行いながら症状の変化を継続的に観察します。
症状が改善しない・悪化している場合は医療機関の受診・または119番への連絡を検討してください。
一人で熱中症になったとき:自分でできる対処法
一人でいる状況で自分が熱中症の症状を感じた場合の対処法を解説します。
周囲に誰もいない状況での熱中症は特に注意が必要です。
症状を感じたら即座に行動する
めまい・立ちくらみ・体がだるいといった最初の症状を感じたら、すぐに行動を起こすことが重要です。
症状が軽いうちに対処することで重症化を防げます。
- その場での活動・運動を即座に止める:走っている・作業しているなら直ちに止めて休む
- 日陰・涼しい場所に移動する:自力で歩ける間に涼しい場所に移動する。動けなくなってからでは困難になる
- 横になれる場所を確保する:ベンチ・芝生・店内など横になれる場所を探す
- 水分と塩分を補給する:持っているスポーツドリンク・経口補水液・水と塩飴などを補給する
- スマートフォンで助けを呼ぶ準備をする:症状が悪化した場合にすぐ119番に電話できるよう、スマートフォンをすぐ操作できる状態にしておく
一人でいるときに特に注意すべきサイン
以下のサインが現れた場合、自力での対処が困難になるため迷わず助けを呼んでください。
- 頭痛が急激に強くなった
- 吐き気・嘔吐が起きた
- 体の力が急激に抜けてきた
- 視界が暗くなってきた・ぼやけてきた
- 意識がぼんやりしてきた
これらのサインは意識を失う前兆であることがあります。
このような状態では119番への電話を最優先にしてください。
周囲の人が熱中症になったとき:倒れた人への対応
周囲の人が熱中症で倒れた・意識がおかしいという状況での対応を解説します。
倒れた人を発見したらまず意識を確認する
倒れている人を発見したら、まず肩を軽くたたきながら呼びかけて意識を確認します。
反応がない場合は直ちに119番に電話します。
反応はあるが意識がぼんやりしている場合も119番への連絡を検討してください。
複数人いる場合の役割分担
周囲に複数人いる場合は役割を分担して同時進行で対処します。
- 1人目:119番に電話して状況を伝える・救急車をガイドする
- 2人目:涼しい場所への移動を介助する・体を冷やす応急処置を行う
- 3人目以上いる場合:冷たい水・保冷剤・氷を調達する・近くの店舗・施設に助けを求める
応急処置中に確認すべき状態変化
応急処置を行いながら以下の点を継続的に観察します。
- 意識状態(呼びかけへの反応・目の動き)
- 体温の変化(体が熱くなっていないか)
- 発汗の有無(汗が出ているか・止まっていないか)
- 呼吸の状態(浅い・速いなどの変化)
- 嘔吐の有無(嘔吐した場合は横向きに姿勢を変える)
救急車を呼ぶ判断基準:迷ったら呼ぶ
熱中症で救急車を呼ぶかどうか判断に迷うケースがあります。
基本的な考え方は、迷ったら呼ぶです。
呼んで問題なかった場合のリスクより、呼ばずに悪化した場合のリスクの方がはるかに大きいです。
今すぐ119番に電話すべき状況(Ⅲ度相当)
- 意識がない・呼びかけても反応しない
- けいれんが起きている
- 体が非常に熱いのに汗をかいていない(高体温なのに無汗)
- ろれつが回らない・言動がおかしい・混乱している
- 真っすぐ歩けない・立てない
- 自力で水分を飲めない
- 応急処置を行っても症状が改善しない・急速に悪化している
医療機関への受診が必要な状況(Ⅱ度相当)
- 強い頭痛・嘔吐・吐き気が続いている
- 体に力が入らない・立てない状態
- 体温が38℃以上ある
- 30分以上応急処置を行っても症状が改善しない
- 高齢者・乳幼児・持病のある人が症状を示している場合
119番に電話する際に伝えること
119番に電話したとき、オペレーターに以下の情報を伝えます。
- 現在地(住所・目標となる建物名・交差点名)
- 症状の状態(意識の有無・体温・嘔吐の有無など)
- 患者の年齢・性別
- 熱中症が疑われること
- 呼びかけ人の連絡先
救急車が到着するまでの間も応急処置(体の冷却)を継続することが非常に重要です。
救急隊員が到着したら上記の情報と応急処置の内容を伝えてください。
絶対にやってはいけない行動
熱中症の応急処置において特に避けなければならない行動があります。
-
意識がない人・嘔吐している人に飲み物を飲ませる
気管に飲み物が入って誤嚥性肺炎・窒息を引き起こす危険があります。意識が確認できない状態での経口補給は絶対に行わないでください。 -
アルコールを与える
アルコールには利尿作用があり、脱水をさらに悪化させます。熱中症時のアルコール摂取は厳禁です。 -
体を急激に冷やしすぎる
体温を急激に下げすぎると体が震えを起こして反射的に体温が上昇することがあります。体が震え始めたら冷却を一時中断してください。 -
症状が軽くなったからといってすぐに炎天下に戻る
一度熱中症になった体は体温調節機能が低下した状態が続いています。症状が改善しても同日中の炎天下での活動再開は危険です。 -
一人で安静にさせて様子を見続ける
熱中症は急速に悪化することがあります。定期的に意識・状態を確認し、悪化のサインを見逃さないことが重要です。 -
自己判断で解熱剤・鎮痛剤を服用させる
熱中症による体温上昇は感染症による発熱とメカニズムが異なります。解熱剤は熱中症には効果がなく、状態の変化に気づくのが遅れるリスクがあります。
熱中症後の回復期間:再発防止のための注意点
熱中症から回復した後も一定期間は体の機能が低下した状態が続きます。
この回復期間の過ごし方が再発防止と完全な回復に重要です。
回復期間の目安
| 重症度 | 回復期間の目安 | 回復期間中の注意点 |
|---|---|---|
| Ⅰ度(軽症) | 数時間〜1日程度で症状が改善することが多い | 当日中の激しい活動・炎天下への外出を避ける |
| Ⅱ度(中等症) | 数日〜1週間程度の休養が必要なことが多い | 医療機関でのフォローアップ。仕事・運動は医師の判断に従う |
| Ⅲ度(重症) | 数週間〜数か月、場合によっては後遺症が残ることがある | 入院・専門医による継続的な治療が必要 |
回復期間中に気をつけること
- 水分・塩分・ミネラルの補給を続ける:症状が落ち着いた後も脱水・ミネラル不足が続いていることがある。経口補水液・スポーツドリンク・食事での補給を継続する
- 十分な休息を取る:体が疲弊している状態での無理な活動再開は再発・悪化のリスクが高い。症状が改善しても最低1日は安静にする
- 食事を整える:食欲がなくても栄養補給は回復に必要。消化の良い食品から少量ずつ食べ始める
- 睡眠を十分に取る:回復ホルモン(成長ホルモン)は睡眠中に分泌される。涼しい環境でしっかりと眠ることが回復を促進する
- 同日・翌日の炎天下への外出を避ける:一度熱中症になった体は体温調節機能が低下しており、短時間で再発するリスクが高い
- 運動・激しい作業の再開は慎重に:軽症でも2〜3日は激しい運動・重労働を避ける。中等症以上は医師の判断を仰ぐ
回復後に医療機関を受診すべきタイミング
応急処置後に一時的に症状が改善しても、以下の場合は改めて医療機関を受診することが必要です。
- 翌日以降も倦怠感・頭痛・食欲不振が続いている
- 尿量が極端に少ない・尿の色が非常に濃い茶色(脱水・筋肉崩壊の可能性)
- 回復後に体温が再び上昇した
- 手足のむくみ・呼吸の苦しさが出た(臓器障害の可能性)
重症熱中症(Ⅲ度)では肝臓・腎臓・筋肉などへのダメージ(多臓器不全)が後日判明することがあります。
退院後も医師の指示に従って定期的な経過観察を受けることが重要です。
重症度別の受診すべき診療科
熱中症の症状で医療機関を受診する際、どの診療科に行けばよいかを状況別に整理します。
- 救急外来・救急病院:意識障害・けいれん・高体温など重症の症状がある場合。119番を呼ぶと自動的に適切な病院に搬送される
- 内科・総合内科:症状が落ち着いているが翌日以降も体調が優れない場合。かかりつけ医がいる場合はまずそちらに相談
- 小児科:乳幼児・子どもの熱中症の場合
- 救急安心センター(#7119):受診すべきか・救急車を呼ぶべきか迷った場合に電話で相談できる(全国の主要都市で運営)
子ども・高齢者が熱中症になったとき:特別な注意点
乳幼児・子どもが熱中症になったとき
乳幼児・子どもの熱中症は大人よりも症状の進行が速い場合があります。
以下の点に特に注意してください。
- 乳幼児は自分でのどの渇きを訴えられないため周囲の大人が積極的に水分を与える
- 乳幼児への水分補給は母乳・ミルク・乳幼児用電解質飲料を使用する。スポーツドリンク・経口補水液の使用については小児科医に相談する
- 子どもの体温は大人より上昇しやすいため冷却は素早く行う
- 症状が軽くても乳幼児の場合は小児科を受診することを強くすすめる
高齢者が熱中症になったとき
高齢者は体温調節機能が低下しており、熱中症の症状が出にくい一方で重症化しやすいです。
以下の点に注意してください。
- 高齢者は暑さ・のどの渇きを感じにくいため、本人が大丈夫と言っていても客観的な症状確認が必要
- 持病(高血圧・糖尿病・心疾患・腎疾患)や服薬中の薬が体温調節・脱水に影響している場合があるため受診時に必ず伝える
- 高齢者の熱中症は症状が曖昧なため、夏の体調不良は熱中症の可能性を常に考慮する
- Ⅰ度相当の症状でも高齢者の場合は医療機関受診を検討する
熱中症の再発を防ぐために
一度熱中症になった人は再発リスクが高くなります。
回復後に同じ状況に身を置かないよう、以下の点を見直してください。
- なぜ熱中症になったかを振り返る:水分補給をしていなかった・エアコンを使っていなかった・無理な運動をしたなど原因を明確にする
- 生活習慣を改善する:こまめな水分補給・適切なエアコン使用・帽子や日傘の活用を徹底する
- 体の暑熱順化を進める:徐々に暑さに体を慣らすことで熱中症への抵抗力が高まる。回復後、涼しい時間帯の軽い運動から始める
- 熱中症警戒アラートの日は屋外活動を控える:環境省・気象庁の熱中症警戒アラートが発令された日は特に注意が必要
熱中症になったとき、最も大切なのは素早い判断と行動です。
涼しい場所への移動・体の冷却・水分塩分補給という基本の応急処置を迷わず行うことが回復への第一歩です。
重症のサインが見られたら応急処置と同時に119番に電話することをためらわないでください。
熱中症は適切な対処をすれば多くの場合は回復できる病態です。
正しい知識を身につけて自分自身と周囲の大切な人の命を守ってください。


