熱中症の予防と対策【2026年版】原因・症状・応急処置・高齢者・子ども別の注意点を完全解説
【この記事の要約】
熱中症は毎年全国で10万人超の救急搬送・1,000人超の死者を出す気象災害です。主な原因は高温・高湿度・輻射熱による体温調節機能の破綻であり、脱水状態・睡眠不足・飲酒・暑さへの未順化がリスクを高めます。症状は重症度によって3段階(Ⅰ度:めまい・筋肉のこむら返り、Ⅱ度:頭痛・吐き気・判断力低下、Ⅲ度:意識障害・けいれん・高体温)に分類されます。予防の基本は①こまめな水分・塩分補給(のどが渇く前に飲む)、②エアコンで室温28℃以下を維持する、③暑さ指数(WBGT)31℃以上の日は屋外活動を控える、④熱中症警戒アラートを毎朝確認する、⑤暑さへの順化(暑熱順化)を6月から段階的に進める——の5つです。熱中症が発生した場合、意識がある(Ⅰ〜Ⅱ度)なら涼しい場所への移動・水分塩分補給・体を冷やすの3ステップで対応します。意識がない・呼びかけに反応しない(Ⅲ度)場合は即座に119番通報し、救急隊到着まで体を全力で冷やし続けてください。
熱中症は地震・台風と並ぶ日本の主要な気象災害です。
しかし多くの方が熱中症を個人の体調管理の問題と捉え、具体的な予防法・対処法を正確に知らないまま夏を迎えています。
正しい予防策を実践するだけで、熱中症による救急搬送・死亡の大部分は防ぐことができます。
この記事では、熱中症の原因・メカニズム・症状・重症度別の対処法・対象別の予防策・日常的な備えを体系的に解説します。
【この記事の信頼性について】
本記事は環境省・気象庁・厚生労働省・消防庁・日本スポーツ協会・日本救急医学会の公式データ・ガイドラインをもとに作成しています。熱中症の診断・治療については必ず医師・医療機関にご相談ください。症状が重篤な場合(意識障害・呼びかけへの無反応)は即座に119番通報してください。
熱中症の現状:日本における被害の規模
熱中症が毎年どれほどの被害をもたらしているかを数字で把握することが、対策の出発点です。
救急搬送・死亡者数の実態
消防庁のデータによると、熱中症による年間救急搬送者数は2018年に95,137人、2024年には約105,000人超と過去最多水準を更新し続けています。
厚生労働省の人口動態統計では、熱中症による年間死亡者数は2018年に1,581人、直近でも毎年1,000人前後を記録しています。
大規模な台風災害の年間死者数が多くても数十〜百人規模であることと比較すると、熱中症の被害がいかに甚大かが分かります。
熱中症が起きやすい場所・時間帯
熱中症が発生する場所は屋外だけではありません。
消防庁・厚生労働省のデータをもとにした発生場所の内訳は以下の通りです。
- 住居(自宅屋内):約40〜50%。エアコンを使わない・使えない屋内での発生が最多
- 道路・屋外:約20〜25%。炎天下の移動・屋外作業中の発生
- 仕事場(工場・農作業場等):約10〜15%。屋外・半屋外での労働中の発生
- 学校・運動施設:約5〜10%。部活動・体育授業中の発生
- その他(店舗・交通機関等):残り
最も多い発生場所が自宅屋内であるという事実は、熱中症対策が屋外活動時だけではなく在宅時にも必要であることを示しています。
熱中症死亡者に占める高齢者の割合
熱中症による死亡者の約90%以上が65歳以上の高齢者です。
さらに熱中症死亡場所の約50〜60%が自宅屋内です。
独居高齢者がエアコンをつけない自宅屋内で気づかれないまま重症化するパターンが、熱中症死亡の最多パターンです。
熱中症の原因とメカニズム
熱中症が発生する仕組みを正しく理解することで、どの予防策が効果的かが見えてきます。
体温調節のメカニズム
人体は体温が上昇すると主に2つの方法で体温を下げようとします。
1つ目は皮膚血管の拡張による熱放散です。体の深部の血液を皮膚表面近くの血管に集め、皮膚表面から外気に熱を逃がします。
2つ目は発汗による気化熱冷却です。汗が皮膚表面で蒸発する際に気化熱として体の熱を奪い、体温を下げます。
この2つのメカニズムが限界を超えたとき、体温調節が破綻して熱中症が発生します。
体温調節が破綻する条件
体温調節機能が破綻する主な条件は以下の通りです。
- 高温・高湿度:気温が高いと体温と外気の温度差が縮まり皮膚からの熱放散が減少する。湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ気化熱冷却が機能しなくなる
- 強い輻射熱:直射日光・アスファルト・コンクリートからの強い輻射熱により、皮膚表面への熱入力が過大になる
- 脱水状態:発汗による体液・塩分の損失が補充されないと、発汗量が低下して体温調節が機能しにくくなる
- 暑さへの未順化(未馴化):梅雨明け直後・旅行先での急激な高温環境への移行など、体が暑さに慣れていない状態では体温調節能力が低下している
熱中症リスクを高める個人的要因
環境要因に加えて、以下の個人的要因が熱中症リスクを高めます。
- 高齢(加齢により発汗機能・体温調節能力が低下する)
- 乳幼児(体重当たりの体表面積が大きく外気温の影響を受けやすい。自分で体調不良を伝えられない)
- 肥満(体重に対して体表面積が相対的に小さく、熱放散が非効率になりやすい)
- 糖尿病・心疾患・腎疾患・高血圧などの持病(体温調節機能・水分調節機能に影響を与える)
- 利尿薬・抗ヒスタミン薬・向精神薬などの服薬(発汗や体温調節に影響する薬剤がある)
- 睡眠不足・疲労の蓄積(体温調節機能・体力が低下している状態)
- 飲酒(利尿作用による脱水・体温調節機能の乱れ)
- 前日からの脱水(水分補給が不足している状態で高温環境に入る)
熱中症の症状と重症度分類
日本救急医学会の分類では、熱中症はⅠ度(軽症)・Ⅱ度(中等症)・Ⅲ度(重症)の3段階に分けられます。
重症度によって対処法が大きく異なるため、症状から重症度を見極めることが重要です。
Ⅰ度(軽症)の症状
Ⅰ度の熱中症は、体温調節機能が限界に近づきつつある段階です。
- めまい・立ちくらみ(一時的に血圧が低下することで起こる)
- 筋肉のこむら返り(ふくらはぎ・腹筋などの痛みを伴うけいれん。塩分の損失が主な原因)
- 大量の発汗(体が体温を下げようとしている状態)
- 気分の不快感・体のだるさ
- 手足のしびれ・気分の悪さ
Ⅰ度の段階で適切な対処を行えば、多くの場合は数十分以内に回復します。
この段階での対処の遅れがⅡ度・Ⅲ度への進行を招くため、初期症状を見落とさないことが重要です。
Ⅱ度(中等症)の症状
Ⅱ度は体温調節機能が大きく乱れ、全身症状が現れる段階です。
- 頭痛(持続的な頭の痛み)
- 吐き気・嘔吐
- 強い倦怠感・虚脱感(体の力が抜けるような感覚)
- 集中力・判断力の低下(会話はできるが、おかしな言動が増える)
- 皮膚が赤くなり熱を持つ(体温上昇の兆候)
Ⅱ度では水分を自分で飲めない場合・症状が30分以上改善しない場合は医療機関への搬送が必要です。
Ⅲ度(重症)の症状
Ⅲ度は生命の危機に直結する最重症段階です。
以下のいずれかの症状があれば即座に119番通報してください。
- 意識障害(呼びかけへの無反応・ぼーっとして返答がない)
- けいれん(体が震える・強直する)
- 高体温(深部体温40℃以上。皮膚が灼熱状態)
- まっすぐ歩けない・立てない(小脳・神経機能への影響)
- 体に触ると熱く、発汗が止まっている(汗腺機能の破綻)
Ⅲ度の熱中症(熱射病)は、適切な治療が数十分以内に開始されなければ死亡・重大な後遺症のリスクが急激に高まります。
熱中症の予防:基本の5原則
熱中症を予防するための基本原則を解説します。
特別な道具・費用をかけなくても実践できるものが中心です。
予防原則①:正しい水分・塩分補給
水分補給は熱中症予防の最も基本的かつ効果的な対策です。
しかし多くの方が水分補給のタイミング・量・飲み物の種類を誤っています。
水分補給の正しいタイミング
のどが渇いたと感じる段階では、すでに体内の水分量が約1%以上低下しています。
水分量が1〜2%低下するだけで体温調節能力が低下することが知られており、のどが渇いてから飲むのでは遅いです。
のどが渇く前に定期的に飲む習慣をつけることが重要です。
水分補給の目安量
- 安静時:1〜1.5時間に1回・コップ1杯(200ml程度)
- 屋外活動・運動中:20〜30分に1回・コップ1杯(200〜250ml程度)
- 1日の総補給目安:成人で1日1.2L(食事から補う水分を含めると2L程度)
飲み物の選び方
- 水・麦茶:日常的な水分補給に適する。ただし発汗による塩分損失が多い場合は塩分の補給も必要
- スポーツドリンク(イオン飲料):水と塩分・糖分を同時に補給できる。運動中・屋外作業中に適する
- 経口補水液(OS-1等):スポーツドリンクより塩分濃度が高く、中程度の脱水・熱中症初期対応に適する。健常時に大量に飲む必要はなく、熱中症症状が出た際の緊急対応用として常備するとよい
- アルコール飲料:利尿作用により脱水を促進するため、水分補給にはならない。飲酒後の水分補給は必ず水・スポーツドリンクで行う
- コーヒー・緑茶(カフェイン入り飲料):適量であれば水分補給として問題ないが、大量摂取は利尿作用を促進するため過度に頼らない
塩分補給の重要性
大量に発汗すると、水分と同時に塩分(ナトリウム)が失われます。
水だけを大量補給すると血液中のナトリウム濃度が希釈され、低ナトリウム血症(水中毒)を引き起こす可能性があります。
発汗量が多い日・屋外活動・スポーツ時には、水分補給と合わせて塩飴・塩タブレット・スポーツドリンクで塩分を補給してください。
予防原則②:室内環境の適切な温度・湿度管理
熱中症死亡の最多発生場所が自宅屋内であることを踏まえ、室内環境の管理が最重要の予防策の一つです。
室温の目標値
環境省は室温28℃以下・湿度70%以下を熱中症予防の目安として推奨しています。
特に高齢者・乳幼児のいる室内は、体温調節能力が低いことを考慮して25〜26℃以下を目標にすることを推奨します。
エアコンを積極的に使う
高齢者はエアコンの使用をためらいがちです。
その理由として、寒いと感じる・電気代が心配・昔は使わなくても大丈夫だったという意識が挙げられます。
しかし現代の日本の夏は、昭和期と比較して平均気温が1〜2℃以上高く、熱帯夜の日数も大幅に増えています。
電気代より命を優先するという意識を家族全員で確認し、高齢者が遠慮なくエアコンを使える環境を作ることが重要です。
就寝中も熱帯夜(夜間最低気温25℃以上)ではエアコンをタイマーなしで継続稼働させてください。
室温計・湿度計の設置
室内でもWBGTが危険水準に達することがあります。
エアコンをつけていても設定温度が低すぎて効いていない・フィルターが詰まって性能が落ちているケースがあります。
1,000〜3,000円程度の温湿度計を居室に設置し、室温・湿度を定期的に目視確認する習慣をつけてください。
窓・カーテンによる輻射熱のカット
窓からの直射日光・輻射熱は室温を急速に上昇させます。
遮熱カーテン・遮光カーテン・すだれ・よしずを活用することで、エアコンの負荷を軽減しながら室温上昇を抑制できます。
すだれ・よしずは窓の外側に設置することで輻射熱を外側でカットできるため、室内側のカーテンより遮熱効果が高い場合があります。
予防原則③:暑さ指数(WBGT)と熱中症警戒アラートの活用
熱中症予防において、その日の暑熱リスクを客観的な数値で把握することが有効です。
毎朝のWBGT確認習慣
環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)または気象アプリで、毎朝起床後にその日のWBGT予測値と熱中症警戒アラートの発令状況を確認してください。
WBGTの数値別行動指針の概要は以下の通りです。
- WBGT25〜28℃未満(警戒):外出時は炎天下を避け、こまめな水分補給を行う
- WBGT28〜31℃未満(厳重警戒):屋外での激しい活動を控える。高齢者・乳幼児は特に注意
- WBGT31℃以上(危険):屋外での運動・作業は原則中止。外出を最小限にする
- WBGT33℃以上(熱中症警戒アラート水準):不要不急の外出を控える。独居高齢者への安否確認を行う
- WBGT35℃以上(特別警戒アラート水準):外出を全面中止。エアコンまたはクーリングシェルターで涼む
気象アプリの通知設定で熱中症警戒アラートのプッシュ通知をオンにしておくと、発令時に自動で通知を受け取ることができます。
予防原則④:暑熱順化(暑さへの体の慣らし)
暑熱順化とは、体が暑い環境に段階的に慣れることで体温調節能力が向上する生理的適応のことです。
暑熱順化が不十分な状態で急激な高温環境に入ることが、梅雨明け直後の熱中症多発の主要原因の一つです。
暑熱順化で起きる体の変化
- 発汗開始の体温閾値が下がり、より低い体温で発汗が始まるようになる
- 発汗量が増加する
- 汗の塩分濃度が低下し、塩分の損失が減少する
- 皮膚血流量が増加し、熱放散が効率化される
- 心拍数・体温の上昇が抑えられる
暑熱順化の進め方
完全な暑熱順化には通常2週間程度かかります。
段階的に暑熱環境への暴露時間を増やすことで安全に順化を進めます。
- 6月初旬〜中旬:日中の屋外ウォーキングを1日20〜30分から開始する(WBGT25℃以下の時間帯に行う)
- 6月中旬〜下旬:ウォーキング時間を1日30〜60分に徐々に延ばす
- 7月初旬:日中のより暑い時間帯への短時間暴露を加える
この段階的な慣らしにより、梅雨明けの急激な高温に体が対応しやすくなります。
ただし体調不良・発熱・前日の睡眠不足・飲酒翌日には暑熱順化の運動を中止してください。
予防原則⑤:服装・外出時間の工夫
屋外での熱中症予防において、服装と行動時間帯の工夫は直接的な効果があります。
服装の選び方
- 素材:綿・麻・吸汗速乾ポリエステルなど通気性・吸湿性が高い素材を選ぶ。化学繊維でも吸汗速乾タイプは熱がこもりにくい
- 色:白・淡色系の服は太陽光を反射し、黒・濃色系より輻射熱の吸収が少ない
- 形:ゆったりした着丈で通気性を確保する。タイトな服装は体熱の放散を妨げる
- 帽子:日射を遮り頭部・顔面の温度上昇を防ぐ。つば広の帽子・通気性のあるハット・サンバイザーが有効
- 日傘:直射日光を遮るとともに輻射熱の入力を減らす効果がある。UVカット機能付きの遮熱タイプが特に有効
- 冷却グッズ:冷却ネッククーラー・冷却タオル・冷感スプレーなど
外出時間帯の選択
1日の中でWBGT(暑さ指数)が最も高くなるのは、最高気温が現れる14〜16時頃です。
熱中症リスクが特に高い時間帯は10〜16時です。
買い物・通院・外出は早朝(8時台まで)または夕方(17時以降)に集中させることで、高WBGT時間帯の屋外滞在を最小限にできます。
対象者別:熱中症予防の重点ポイント
熱中症リスクは年齢・生活環境・活動内容によって異なります。
対象者別の重点ポイントを解説します。
高齢者の熱中症予防
高齢者は加齢による体温調節能力の低下・体液量の減少・口渇感の低下(のどが渇いても感知しにくい)・エアコン使用への抵抗感などが重なり、熱中症の最大ハイリスクグループです。
高齢者本人が取り組むべきポイントは以下の通りです。
- のどが渇かなくても、時計を見て1〜1.5時間おきに水分を飲む習慣をつける
- 起床直後・就寝前に必ずコップ1杯(200ml)の水を飲む
- 室内でも室温計を確認し、28℃を超えたらエアコンを稼働させる
- 体重を毎朝計測する習慣をつける。前日より0.5kg以上減少した場合は脱水が進んでいる可能性があり、水分補給を強化する
- 利尿薬・降圧薬などを服用中の場合は、主治医に夏季の水分補給量・熱中症リスクについて事前に相談しておく
高齢者の家族・地域が取り組むポイントは以下の通りです。
- WBGT28℃以上(厳重警戒水準)の日は電話で安否確認を行う
- WBGT31℃以上(危険水準)の日は訪問し、室温・エアコン稼働状況・水分補給状況を直接確認する
- エアコンが故障している・設置されていない場合はクーリングシェルターへの移動を支援する
- 熱中症警戒アラート発令日の連絡ルールを夏前に家族内で決めておく
乳幼児・子どもの熱中症予防
乳幼児・子どもは体重当たりの体表面積が大きく、外気温の影響を成人より強く受けます。
また体液量が相対的に少なく、脱水が進みやすい特性もあります。
- WBGT31℃以上(危険水準)の日の屋外での遊び・活動は中止する
- 30〜40分に1回の水分補給を保護者がリードして行う(乳幼児は自分から水分不足を訴えられない)
- ベビーカーへの長時間乗車を避ける(地表に近い位置は大人の目線より気温・輻射熱が高い場合がある)
- チャイルドシートでの車内放置は短時間でも絶対に避ける(外気温35℃の駐車中の車内は30分で50℃を超えることがある)
- 子どもが着替えられる程度の体調変化(顔の赤み・元気のなさ・水分を欲しがらない)にも敏感に気づく
- 学校・保育所のWBGT対応方針を夏前に確認し、WBGT31℃以上での屋外活動中止基準が設けられているか確認する
屋外で仕事をする方の熱中症予防
農業・建設業・土木・清掃業・警備業など屋外作業が多い職種では、熱中症リスクが特に高くなります。
- 作業場所・作業時間帯のWBGTを事前に確認し、WBGT28℃以上での作業強度・時間を調整する計画を立てる
- WBGT31℃以上(危険水準)では原則として屋外の重作業・中程度作業を中止または大幅に制限する
- 作業中は10〜15分に1回の水分補給(1回200ml程度)・日陰での休憩を義務化する
- 2人以上での作業を原則とし、相互の体調確認を定期的に行う
- 冷却ベスト・吸汗速乾素材の作業服・遮熱帽子を着用する
- 梅雨明け直後・熱波の初日などは特に警戒を強める(暑熱順化が不十分な状態で高WBGT環境に入るリスクが高い)
- 事業者は労働安全衛生法に基づくWBGT基準の作業管理・緊急時の応急処置体制を整備する義務がある
スポーツをする方の熱中症予防
部活動・スポーツクラブ・マラソン・フルマラソン・トライアスロン等の競技者・一般スポーツ愛好者向けのポイントです。
- 日本スポーツ協会のWBGT指針に基づき、WBGT31℃以上での屋外運動は原則禁止とする
- WBGT28〜31℃(厳重警戒)では激しい運動・持久走を中止し、強度を落とした運動に切り替える
- 練習・競技前・中・後の体重を計測し、体重1kgの減少あたり1L以上の水分補給を行う目安にする
- 早朝・夕方の時間帯に練習を移行する。日中(10〜16時)の屋外練習・試合は最小限にする
- 競技会・大会の主催者は、WBGT計測装置を会場に設置し、WBGT基準値を超えた場合の競技中断・中止の判断基準を事前に設ける
熱中症が発生したときの応急処置
熱中症が疑われる人を発見したときの対処法を重症度別に解説します。
まず重症度を見極める
熱中症が疑われる人を発見したら、まず以下の確認を行います。
- 呼びかけに反応するか(名前を呼ぶ・肩を軽くたたく)
- 自分で歩けるか
- 水が飲めるか(飲み込める状態か)
- けいれんはあるか
呼びかけに反応しない・けいれんがある場合はⅢ度(重症)の可能性が高く、即座に119番通報してください。
Ⅰ〜Ⅱ度(意識がある)への応急処置
意識があり自分で会話できる場合の対処手順は以下の通りです。
- 涼しい場所に移動させる:エアコンの効いた室内・日陰・クーリングシェルターに移動させる。本人が動けない場合は日陰に移動させエアコンを稼働させる
- 衣服をゆるめる:体から熱が逃げやすくするために、首元・ベルト・ボタンをゆるめる。体を締め付けるものを外す
- 体を冷やす:保冷剤・氷・冷たいタオルを首・脇の下・鼠径部(太ももの付け根)に当てる。これらの部位には太い動脈(頸動脈・腋窩動脈・大腿動脈)が走っており、効率よく体温を下げられる
- 風を当てる:うちわ・扇風機・ハンディファンで体に風を当てる。体に水をスプレーしてから扇風機で風を当てると、気化熱でより効率よく体表温度を下げられる
- 水分・塩分を補給する:水が飲める状態であれば、スポーツドリンク・経口補水液・塩水(水1Lに塩小さじ1/3程度)を少しずつ飲ませる。一度に大量に飲ませると嘔吐する可能性があるため、少量ずつ与える
以上の対処を行い、30分以内に症状が回復しない場合や水が飲めない場合は医療機関への受診・搬送を検討してください。
Ⅲ度(意識障害・けいれんがある)への対応
意識がない・呼びかけに反応しない・けいれんがある場合は即座に119番通報してください。
通報後、救急隊が到着するまで以下を継続します。
- 呼吸がある場合は回復体位(横向きに寝かせる)で気道を確保する。舌根沈下・嘔吐による窒息を防ぐ
- 首・脇の下・鼠径部に保冷剤を当て、体を全力で冷やし続ける
- 水を無理に飲ませない(意識障害がある場合は誤嚥・窒息のリスクがある)
- 呼吸が停止している・脈がない場合は胸骨圧迫(心肺蘇生法)を開始し、AEDが近くにあれば使用する
Ⅲ度の熱中症(熱射病)は、救急医療による迅速な体温冷却・輸液治療が不可欠です。
自己判断による対処には限界があるため、119番通報を最優先にしてください。
クーリングシェルターの活用
2024年の気候変動適応法改正により、市区町村がクーリングシェルター(指定暑熱避難施設)を指定・公表することが義務づけられました。
熱中症特別警戒アラートが発令された場合は、クーリングシェルターの開放も義務化されています。
クーリングシェルターが活用できる状況は以下の通りです。
- 自宅のエアコンが故障している・設置されていない
- 停電でエアコンが使えない
- 外出中に熱中症の初期症状(めまい・頭痛・気分の悪さ)を感じた
- 独居高齢者が体調不良を感じているが病院に行くほどでもない
最寄りのクーリングシェルターの場所は、市区町村の公式Webサイトまたは環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)で確認できます。
夏前に自宅・職場・学校から徒歩10〜15分以内のクーリングシェルターの場所と開放時間を事前に確認しておくことを強く推奨します。
夏前の防災準備:熱中症対策チェックリスト
毎年5〜6月に実施しておきたい熱中症対策の準備事項をまとめます。
自宅・住環境の準備
- エアコンのフィルター清掃・試運転を実施し、正常稼働を確認する(夏のピーク時は修理が混み合うため早期対処が重要)
- 室温計・湿度計を居室に設置する(目安:1,000〜3,000円程度)
- 遮熱カーテン・遮光カーテン・すだれ・よしずを窓に設置する
- 飲料水・スポーツドリンク・経口補水液・塩飴・塩タブレットを備蓄する(1人1日3L以上・3〜7日分)
- 保冷剤を複数個冷凍庫にストックしておく
情報収集の準備
- 環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)をブックマークし、毎朝確認する習慣をつける
- 気象アプリの通知設定で熱中症警戒アラートのプッシュ通知をオンにする
- 居住地の市区町村の防災メール登録・公式SNSフォローを行う
- 最寄りのクーリングシェルターの場所・開放条件を確認し、家族内で共有する
家族・地域内の準備
- 高齢者・乳幼児のいる家庭は、熱中症警戒アラート発令時の連絡ルールを家族内で決めておく
- 独居高齢者の家族・近隣住民との見守り体制を整える
- 服薬中の高齢者家族は、主治医に夏季の水分補給量・熱中症リスクを事前に相談する
- 家族全員で熱中症の症状・応急処置の手順を確認しておく
まとめ:熱中症を防ぐために今日からできること
熱中症は正しい知識と行動で防げる気象災害です。
複雑な準備は必要なく、毎日の水分補給・室温管理・WBGTの確認という基本行動の継続が最大の予防策です。
今日から始めるべき5つのアクションを改めて確認します。
- のどが渇く前に水分を飲む習慣をつける(1〜1.5時間に1回・コップ1杯)
- 室温計を居室に設置し、28℃を超えたらエアコンをつける
- 環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)を毎朝確認する習慣をつける
- エアコンのフィルター清掃・試運転を今すぐ実施する
- 最寄りのクーリングシェルターの場所を確認し、家族と共有する
気候変動の進行により、日本の夏はさらに過酷になることが確実視されています。
熱中症対策を地震・水害と同じ防災行動の一つとして位置づけ、今から継続的に取り組むことが命を守る最も重要な準備です。


