熱中症Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度の意味と違い【2026年版】症状・対処法・119番通報の判断基準を完全解説

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熱中症Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度の意味と違い【2026年版】症状・対処法・119番通報の判断基準を完全解説

【この記事の要約】
熱中症のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度は日本救急医学会が定める重症度分類です。Ⅰ度(軽症)はめまい・立ちくらみ・筋肉のこむら返り・大量発汗・気分の不快感が主な症状であり、現場での応急処置(涼しい場所への移動・体の冷却・水分塩分補給)で対応できます。Ⅱ度(中等症)は頭痛・吐き気・嘔吐・強い倦怠感・判断力の低下が加わる段階であり、水が飲めない・30分以上改善しない場合は医療機関への搬送が必要です。Ⅲ度(重症・熱射病)は意識障害・けいれん・深部体温40℃以上・発汗停止・多臓器障害が起きる生命の危機であり、即座に119番通報が必要です。3段階の最大の違いは「現場での応急処置で回復できるか(Ⅰ度)」「医療機関が必要か(Ⅱ度)」「救急医療が不可欠か(Ⅲ度)」です。Ⅰ度の初期症状を見逃してⅡ度・Ⅲ度に悪化させないことが熱中症対策の最重要ポイントです。また従来使われていた日射病・熱射病・熱けいれん・熱疲労といった名称は現在のⅠ〜Ⅲ度分類に統合されています。

熱中症のニュースや救急医療の現場で、Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度という言葉を耳にする機会が増えています。

しかしそれぞれが何を意味するのか・どの段階で病院に行くべきなのか・119番通報が必要なのはどの段階からなのかを正確に理解している方は多くありません。

この分類を理解することで、自分や家族が熱中症になったとき・倒れている人を発見したときに適切な判断・行動ができるようになります。

この記事では、熱中症のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の意味・違い・各段階の症状・対処法・重症化を防ぐポイントを体系的に解説します。

【この記事の信頼性について】
本記事は日本救急医学会・環境省・厚生労働省・消防庁の公式データ・ガイドラインをもとに作成しています。熱中症の診断・治療については必ず医師・医療機関にご相談ください。意識障害・けいれん・呼びかけへの無反応がある場合は即座に119番通報してください。本記事は医療的な診断を行うものではありません。

目次

なぜⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度という分類が作られたのか

かつて熱中症は症状の種類によって日射病・熱射病・熱けいれん・熱疲労などの名称で呼ばれていました。

しかしこれらの名称は発生メカニズムや環境条件を重視した分類であり、現場で対処する際に「今どのくらい危険なのか」「病院に行くべきか」「119番通報すべきか」という判断には使いにくいという問題がありました。

そこで日本救急医学会は2000年代以降、熱中症を重症度(軽い〜重い)に基づいてⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分類する新しい基準を整備しました。

この分類は現在、救急医療・学校・スポーツ・職場・行政など幅広い場面で採用されています。

Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度という数字が大きくなるほど重症度が高く、対処の緊急度も上がります。

旧来の名称とⅠ〜Ⅲ度分類の対応関係

旧来の名称と現在のⅠ〜Ⅲ度分類の対応関係を把握しておくことで、古い資料・情報を読むときの混乱を防げます。

旧来の名称 現在のⅠ〜Ⅲ度分類での位置付け 主な特徴
熱けいれん(Heat Cramps) 主にⅠ度(軽症) 塩分喪失によるふくらはぎ・腹筋などのけいれん。意識は正常
熱失神(Heat Syncope) 主にⅠ度(軽症) 皮膚血管拡張による脳血流低下・一時的な意識消失。短時間で回復する
熱疲労(Heat Exhaustion) 主にⅡ度(中等症) 脱水・塩分喪失による全身症状。頭痛・吐き気・倦怠感。体温は40℃未満
日射病 Ⅰ〜Ⅱ度に相当することが多い 直射日光を受けることで起きる熱中症。重症度はⅠ〜Ⅱ度に相当する場合が多い
熱射病(Heat Stroke) Ⅲ度(重症) 深部体温40℃以上・意識障害・発汗停止。多臓器障害を伴う最重症型

現在の救急医療・ガイドラインではⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度という重症度分類を使うことが標準です。

ただし熱射病という言葉はⅢ度の同義語として今も広く使われています。

Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度の違い:一目でわかる比較

3段階の違いを最初に俯瞰で把握しておくことで、以降の詳細解説の理解が深まります。

項目 Ⅰ度(軽症) Ⅱ度(中等症) Ⅲ度(重症)
別称 熱けいれん・熱失神に相当 熱疲労に相当 熱射病
意識 正常 正常〜やや低下(言動がおかしくなる) 障害あり(呼びかけに反応しない場合も)
体温 正常〜軽度上昇 上昇(38℃程度になることあり) 40℃以上(深部体温)
発汗 大量の発汗あり 発汗あり(多量) 停止していることが多い
主な症状 めまい・こむら返り・気分不快 頭痛・吐き気・嘔吐・強い倦怠感・判断力低下 意識障害・けいれん・多臓器障害
水が飲めるか 飲める 飲める〜飲めないケースもある 飲ませてはいけない(誤嚥リスク)
対処の基本 現場での応急処置で対応可能 応急処置+医療機関への搬送を検討 即座に119番通報・体を全力で冷やす
119番通報 通常は不要 水が飲めない・30分以上改善しない場合は検討 即座に通報

Ⅰ度(軽症):詳細解説

Ⅰ度は体温調節機能が限界に近づきつつある段階です。

体はまだ体温を調節しようと全力で対応していますが、その負担が限界に差し掛かっています。

この段階での適切な対処が、Ⅱ度・Ⅲ度への悪化を防ぐ最大のチャンスです。

Ⅰ度の主な症状:4つのサイン

① めまい・立ちくらみ

体温調節のために皮膚血管が急速に拡張すると、皮膚近くに血液が集まります。

脳への血液供給が一時的に低下することで、めまい・立ちくらみが起きます。

炎天下での長時間の立位・急な立ち上がりの後に起きやすいです。

転倒のリスクがあるため、めまいを感じたらその場にしゃがむことが重要です。

② 筋肉のこむら返り(熱けいれん)

大量発汗による塩分(ナトリウム)の喪失が主な原因です。

ふくらはぎ・腹筋・前腕などに痛みを伴う不随意なけいれんとして現れます。

水だけを大量補給すると血中ナトリウムがさらに希釈され、こむら返りが悪化することがあります。

スポーツドリンク・経口補水液などの塩分を含む飲料が必要なのはこのためです。

③ 大量の発汗

体が体温を下げようとしている正常な体温調節反応です。

ただし大量発汗が続くことで脱水・塩分喪失が進行し、Ⅱ度・Ⅲ度への移行を招きます。

大量に汗をかいているときは水分塩分補給のタイミングです。

発汗が突然止まる(発汗停止)はⅢ度(重症)の緊急サインです。

④ 気分の不快感・体のだるさ・手足のしびれ

はっきりとした痛みよりも漠然とした体の不快感・だるさが熱中症の最初のサインであることが多いです。

いつもより体が重い・なんとなく気持ちが悪い・手足に軽いしびれを感じるといった変化を軽視しないことが重要です。

Ⅰ度の対処法:現場での3ステップ応急処置

Ⅰ度の症状が現れたら、即座に以下の3ステップを実施してください。

STEP1:涼しい場所に移動する

エアコンの効いた室内・日陰・クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)に移動します。

自力で動けない場合は周囲の人に助けを求めて移動させます。

移動後は横になり(足をやや高くすると脳への血流が改善する)、安静を保ちます。

STEP2:体を冷やす

保冷剤・氷・冷たいタオルを首(頸動脈)・脇の下(腋窩動脈)・鼠径部(大腿動脈)に当てます。

これらの部位には太い動脈が走っており、冷やすことで効率よく体温を下げられます。

うちわ・扇風機・ハンディファンで体に風を当てます。

体に水をスプレーしてから風を当てると、気化熱でより効率よく体表温度を下げられます。

STEP3:水分・塩分を補給する

スポーツドリンク・経口補水液・塩水(水500mlに食塩0.5g程度)を少しずつ飲みます。

一度に大量に飲むと嘔吐のリスクがあるため、少量ずつゆっくりと飲んでください。

塩飴・塩タブレットを水と合わせて摂取することも有効です。

Ⅰ度の経過観察:いつ医療機関に行くべきか

Ⅰ度の応急処置を30分継続し、以下のいずれかが当てはまる場合は医療機関への受診を検討してください。

  • 症状が改善しない・悪化する
  • 頭痛・吐き気・判断力の低下(Ⅱ度の症状)が現れた
  • 水分補給が十分にできない
  • 高齢者・乳幼児・妊婦・持病のある方が症状を訴えている

Ⅱ度(中等症):詳細解説

Ⅱ度は体温調節機能が大きく乱れ、全身症状が現れる段階です。

Ⅰ度の対処が不十分だった場合・または初めからⅡ度で発症する場合があります。

Ⅱ度では自力での対処が困難になり始め、医療機関での治療が必要になるケースが増えます。

Ⅱ度の主な症状:5つのサイン

① 頭痛

頭全体が締め付けられるような痛み(脱水による脳血流の変化)またはズキズキと拍動する痛み(体温上昇による脳血管拡張)として現れます。

脱水による血液の粘度上昇・低ナトリウム血症による脳細胞の浮腫・体温上昇による脳血管の拡張が複合的に作用して起きます。

熱中症の頭痛に市販の解熱鎮痛薬(特にNSAIDs:イブプロフェン・アスピリン・ロキソプロフェン)を使用することは原則として推奨されません。

脱水状態での腎臓への負担増大・熱中症の根本原因への無対応というリスクがあります。

頭痛への対処は薬ではなく、涼しい場所・体の冷却・水分塩分補給が基本です。

② 吐き気・嘔吐

消化管への血流低下・低ナトリウム血症・体温上昇による脳の嘔吐中枢への刺激が原因です。

嘔吐がある状態では水分の吸収が困難になり、脱水が悪化しやすくなります。

嘔吐が繰り返される・全く水が飲めない状態では、医療機関での点滴(輸液)治療が必要です。

③ 強い倦怠感・虚脱感

体全体の力が抜けるような感覚として現れます。

脱水による循環血液量の低下・全身の血流不足・体温上昇による代謝障害が原因です。

自力で立てない・歩けないほどの虚脱感がある場合は、周囲の人が対処する必要があります。

④ 判断力・集中力の低下

会話はできるが言動がいつもとおかしい・質問への返答がかみ合わない・同じことを繰り返すといった変化として現れます。

重要なのは、本人は自分の判断力が低下していることに気づかないことが多いことです。

周囲の人が異変に気づき、本人に代わって対処の判断を行うことが重要です。

この症状が見られた段階では、Ⅲ度への移行が近い可能性を考え、医療機関への搬送を積極的に検討してください。

⑤ 皮膚の紅潮・熱感・体温上昇

体温調節のための皮膚血管拡張により顔・体が赤くなり、皮膚に熱感が生じます。

わきの下で体温計を測定すると38℃程度になっていることがあります。

皮膚が赤く熱いにもかかわらず発汗が少ない・または止まっている場合はⅢ度への移行が疑われます。

この場合は即座に体を冷やすとともに119番通報を検討してください。

Ⅱ度の対処法:応急処置+医療機関への搬送判断

Ⅱ度の対処はⅠ度の3ステップ(涼しい場所への移動・体の冷却・水分塩分補給)を継続しながら、以下を追加します。

  • 衣服をゆるめる(首元・ベルト・ボタン)。体から熱が逃げやすくする
  • 横になり安静を保つ(動くことで体熱産生が増加する)
  • 本人の様子・症状の変化を継続的に観察する
  • 30分以上たっても改善しない・悪化する場合は医療機関への搬送を判断する
  • 吐き気が強くて水が飲めない場合は医療機関への搬送が必要(点滴による輸液が必要)

Ⅱ度で絶対に避けるべき行動

  • 症状が少し落ち着いたからといって再び屋外・高温環境に出ること
  • 水だけを一度に大量補給すること(低ナトリウム血症を悪化させる可能性がある)
  • 嘔吐がある状態で無理に飲ませること(誤嚥のリスクがある)
  • 市販の解熱鎮痛薬(NSAIDs)を服用すること(脱水状態での腎臓への負担増大リスク)
  • 本人が大丈夫と言っているからと安静を怠ること(判断力低下により本人は正常に自己評価できない)

Ⅲ度(重症・熱射病):詳細解説

Ⅲ度は生命の危機に直結する最重症段階です。

深部体温が40℃以上に達し、体温調節システムが完全に破綻した状態です。

Ⅲ度の疑いがある場合は即座に119番通報し、救急隊到着まで体を全力で冷やし続けることが唯一の正しい対処です。

Ⅲ度の主な症状:5つの緊急サイン

① 意識障害

呼びかけに反応しない・目を開けない・ぼーっとして会話ができない・場所や時間が分からないといった状態が意識障害です。

深部体温が39〜40℃を超えると脳細胞の機能障害が始まります。

軽度の意識障害(ぼーっとしている・言動がおかしい)の段階でも119番通報を行うことが強く推奨されます。

意識障害は急速に悪化する可能性があり、適切な救急医療なしに回復することはありません。

② けいれん

脳細胞への障害・低ナトリウム血症による脳の異常興奮によって起きます。

全身の筋肉が強直する・震える・ガクガクする形で現れます。

けいれん中に口の中に物を入れる行為は窒息・歯の損傷・介助者の怪我のリスクがあるため絶対に行ってはいけません。

けいれん中は体の周囲の危険物を除け、体を固定しようとせず、119番通報・体の冷却を継続してください。

③ 深部体温40℃以上

深部体温(直腸温・食道温)が40℃以上になると全身の細胞・タンパク質・酵素が急速に障害を受けます。

41〜42℃以上では脳細胞・肝細胞・腎細胞が壊死するリスクが急激に高まります。

わきの下で測定して40℃以上または皮膚が灼熱状態・意識障害がある場合は即座に119番通報してください。

④ 発汗の停止

大量発汗が続いた後に突然汗が止まり、皮膚が乾燥・灼熱状態になることがあります。

これは体内の水分枯渇または汗腺細胞の機能不全により、最も重要な体温冷却手段が失われた状態です。

発汗が止まると体温は急速に上昇し続け、多臓器障害が加速します。

発汗停止は体温調節放棄の緊急サインです。

⑤ 多臓器障害

Ⅲ度(熱射病)では以下の多臓器障害が同時進行します。

  • 脳・中枢神経系:脳細胞の壊死・脳浮腫。意識障害・けいれん・小脳障害(まっすぐ歩けない)として現れる。重篤例では恒久的な脳障害・認知機能低下が残る場合がある
  • 腎臓:腎臓への血流低下・横紋筋融解症(筋細胞の崩壊)によるミオグロビンの腎臓沈着で急性腎障害が起きる。重篤例では透析が必要になる
  • 肝臓:高体温・血流低下による肝細胞障害。血液凝固因子の産生低下により出血傾向が生じる
  • 血液凝固系(DIC):全身の細小血管内で血液が凝固し始め、同時に出血傾向が起きる致命的な合併症
  • 心臓・循環器系:脱水による循環血液量の著しい低下・心臓への過大な負荷。不整脈・心不全のリスクが高まる

Ⅲ度の対処法:119番通報と体の冷却を同時に

Ⅲ度が疑われる状況での対処手順は以下の通りです。

  1. 即座に119番通報する
  2. 通報しながら(または通報直後から)体を全力で冷やし始める。首・脇の下・鼠径部に保冷剤を当てる。体に水をかけて扇風機・うちわで風を当てる(蒸散冷却法)
  3. 呼吸がある場合は回復体位(横向きに寝かせる)で気道を確保する。嘔吐による窒息を防ぐ
  4. 意識障害がある場合は水を飲ませない(誤嚥・窒息のリスク)
  5. 呼吸が停止・脈がない場合は胸骨圧迫(心肺蘇生法)を開始する。AEDが近くにあれば使用する
  6. 119番通報時の指令員の指示に従い、救急隊到着まで電話を切らない

Ⅲ度(熱射病)の治療において、深部体温を40℃以下に下げるまでの時間が生死を分ける最大の要因です。

救急隊到着まで体を冷やし続けることは、医療行為と同じくらい重要な救命処置です。

Ⅲ度の2つの型:古典型熱射病と労作型熱射病

Ⅲ度(熱射病)はさらに古典型と労作型に分けられます。

この2つの型は発症メカニズム・リスクが高い対象者・対処上の注意点が異なります。

項目 古典型熱射病(非労作性) 労作型熱射病
主な対象者 高齢者・乳幼児・慢性疾患を持つ方 若年者・アスリート・屋外作業者
主な発症環境 エアコンのない高温の室内。激しい運動なしでも発症する 高温環境での激しい運動・重労働中
発症のスピード ゆっくりで気づかれにくい(数時間〜1日かけて進行) 急激に発症する(数十分で重症化することも)
発汗状態 発汗停止が多い(皮膚が乾燥・熱い) 発汗が継続していることもある
主な合併症 多臓器障害・DIC 横紋筋融解症・急性腎障害・DIC
死亡率 高い(発見が遅れやすいため) 適切な冷却が速やかに行われれば古典型より低い傾向

古典型熱射病は自宅屋内で独居高齢者が誰にも気づかれないまま進行するパターンが最も多いです。

高齢者の家族・近隣住民による定期的な安否確認が命を救う可能性があります。

Ⅰ度からⅢ度への移行:重症化のプロセス

熱中症は必ずしもⅠ度→Ⅱ度→Ⅲ度の順に段階を追って悪化するわけではありません。

環境条件・体質・対処のタイミングによっては、Ⅱ度を経ずに急速にⅢ度に移行することがあります。

しかし多くのケースでは、以下のプロセスで悪化が進みます。

悪化のプロセス

  1. 体への熱入力が冷却能力を上回る(Ⅰ度の始まり):高温・高湿度・強い輻射熱・激しい運動が重なり、発汗・皮膚血管拡張だけでは体温を維持できなくなる。めまい・大量発汗が起きる
  2. 脱水・塩分喪失が進行(Ⅰ度→Ⅱ度へ):大量発汗が続き、体液量・血中ナトリウム濃度が低下する。体温調節の2つのメカニズム(発汗・皮膚血管拡張)が同時に機能低下する悪循環に入る。頭痛・吐き気・倦怠感が現れる
  3. 体温の制御不能な上昇(Ⅱ度→Ⅲ度へ):脱水・塩分喪失が極限に達し、体温が上昇し続ける。38〜40℃を超えると脳・臓器への影響が出始める。意識障害・けいれんが起きる
  4. 体温調節システムの完全破綻(Ⅲ度):深部体温40℃以上・発汗停止・多臓器障害が進行する。救急医療なしには回復不可能

悪化を速める条件

以下の条件が重なると、Ⅰ度からⅢ度への移行が速くなります。

  • 前日からの脱水状態(水分補給不足・飲酒翌日)で高温環境に入る
  • 暑熱順化が不十分(梅雨明け直後・旅行先での急激な高温環境への移行)
  • 高齢者・乳幼児(体温調節能力が低い)
  • Ⅰ度の症状が出ても活動を続けること(特に競技・仕事などで休めない状況)
  • WBGT(暑さ指数)が極めて高い日(WBGT33℃以上・熱中症警戒アラート発令水準)
  • 水分補給をしないまま炎天下に長時間いること

重症度判定の実践的チェックポイント

現場で熱中症が疑われる人を発見したとき・または自分の症状を確認するときに使える重症度判定のポイントをまとめます。

3つの確認で重症度を判断する

熱中症が疑われる状況では、以下の3つを素早く確認してください。

確認① 意識はあるか

  • 名前を呼ぶ・肩を軽く叩く
  • 反応がない・呼びかけに応じない → 即座に119番通報(Ⅲ度の疑い)
  • 反応はあるが返答がおかしい・ぼーっとしている → Ⅱ〜Ⅲ度の境界の疑い。119番通報を検討
  • 正常に会話できる → Ⅰ〜Ⅱ度の疑い。応急処置を開始

確認② 水が飲めるか

  • 自力で飲み込める → 応急処置(水分塩分補給)を開始しながら経過観察
  • 嘔吐して飲めない・飲み込めない → 医療機関への搬送が必要(Ⅱ度以上)
  • 意識障害があり飲ませられない → 飲ませてはいけない。119番通報(Ⅲ度)

確認③ けいれん・体温40℃以上・発汗停止の有無

  • けいれんがある → 即座に119番通報(Ⅲ度)
  • 体温40℃以上 → 即座に119番通報(Ⅲ度)
  • 皮膚が灼熱状態で乾燥(発汗停止) → 即座に119番通報(Ⅲ度)

対象者別:Ⅰ〜Ⅲ度の見分け方の注意点

高齢者:Ⅰ度・Ⅱ度のサインが現れにくい

高齢者は加齢により口渇感・暑さを感じる感度が低下しています。

めまいや頭痛(Ⅰ〜Ⅱ度のサイン)を自覚しないまま意識障害(Ⅲ度)まで進行するケースがあります。

WBGT28℃以上(厳重警戒水準)の日・熱中症警戒アラート発令日は、高齢者の家族・介護者が以下のサインを観察してください。

  • いつもより反応が遅い・返答がかみ合わない
  • 顔が赤く皮膚が熱い
  • 室温が高い(28℃以上)のにエアコンをつけていない
  • 水分を飲んでいない・食欲がない
  • ぐったりして動きたがらない

乳幼児:自分で症状を伝えられない

乳幼児はめまい・頭痛・気分の悪さを言葉で伝えることができません。

以下の外見的サインを熱中症の間接的なサインとして観察してください。

  • 顔が赤く熱い・ぐったりしている(Ⅱ度以上の疑い)
  • 泣き止まない・グズる(乳児)
  • 水分を欲しがらない・飲もうとしない
  • 目がうつろ・焦点が定まらない(Ⅲ度の疑い)
  • おむつが長時間濡れていない(脱水が進んでいるサイン)

運動中の若年者・アスリート:急速な重症化に注意

若年者・アスリートは労作型熱射病(Ⅲ度)が比較的急速に発症することがあります。

以下のサインを練習・競技中に観察してください。

  • ふらついている・まっすぐ走れない(Ⅱ〜Ⅲ度の疑い)
  • 動作がいつもとおかしい・集中できていない様子
  • 呼びかけへの反応が遅い・表情がおかしい
  • 突然倒れる(Ⅲ度の疑い)

Ⅰ度〜Ⅲ度の進行を防ぐ:日常的な予防の重要性

Ⅰ度からⅢ度への悪化を防ぐには、そもそもⅠ度の症状が出ないよう予防することが最も効果的です。

毎朝のWBGT確認と熱中症警戒アラートのチェック

その日の熱中症リスクを事前に把握することで、行動計画を立てることができます。

環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)または気象アプリで、毎朝WBGTと熱中症警戒アラートの発令状況を確認してください。

  • WBGT25〜28℃(警戒):外出時は炎天下を避け、こまめな水分補給を行う
  • WBGT28〜31℃(厳重警戒):屋外の激しい活動を控える。高齢者・乳幼児は特に注意
  • WBGT31℃以上(危険):屋外での運動・作業は原則中止。外出を最小限にする
  • WBGT33℃以上(熱中症警戒アラート水準):不要不急の外出を控える。高齢者の安否確認を強化する
  • WBGT35℃以上(特別警戒アラート水準):外出を全面中止。エアコンまたはクーリングシェルターで涼む

水分補給習慣:のどが渇く前に飲む

脱水はⅠ度からⅢ度への悪化を加速する最大の要因です。

のどが渇いたと感じる段階では既に体重の1%以上の水分が失われており、体温調節能力の低下が始まっています。

のどが渇く前に定期的に補給することが脱水予防の基本です。

活動中は20〜30分に1回・コップ1杯(200ml程度)を目安に補給してください。

室内環境の管理:自宅屋内での古典型熱射病を防ぐ

古典型熱射病(Ⅲ度)の最多発生場所は自宅屋内です。

居室に温湿度計を設置し、室温28℃を超えたらためらわずにエアコンをつける習慣を全員が持つことが最も重要な予防策の一つです。

エアコンの電気代より命を優先するという意識を家族全員で共有してください。

まとめ:Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度で変わる対処の原則

熱中症のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の分類は、対処の緊急度・方法を判断するための実践的な基準です。

3段階の対処原則を最後に整理します。

重症度 見分けるポイント 対処の原則
Ⅰ度(軽症) 意識正常・水が飲める・けいれんなし・体温ほぼ正常 涼しい場所に移動→体を冷やす→スポーツドリンク・経口補水液で水分塩分補給。30分で改善しない場合は医療機関へ
Ⅱ度(中等症) 頭痛・吐き気・判断力低下・強い倦怠感・体温上昇 Ⅰ度の対処を継続。水が飲めない・30分以上改善しない場合は医療機関へ搬送する
Ⅲ度(重症) 意識障害・けいれん・体温40℃以上・発汗停止のいずれか一つでもある 即座に119番通報。救急隊到着まで体を全力で冷やし続ける。水は飲ませない

熱中症はⅠ度の初期サインを見逃さなければ、多くの場合は現場での応急処置で回復できます。

Ⅰ度のサインを軽視して活動を続けることが、Ⅲ度への最大のリスクです。

この3段階の分類と対処法を家族全員が理解し、夏の日常生活・屋外活動・高齢者の見守りに活かしてください。

Image by Pixabay,Unsplash,Freepik,写真AC

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この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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