【この記事の要約】熱中症警戒アラートは、都道府県内いずれかの地点で当日または翌日の暑さ指数(WBGT)が33℃以上と予測される場合に発表されます。2024年に新設された熱中症特別警戒アラートは、都道府県内すべての地点でWBGTが35℃以上と予測される場合に発表される、より重い警戒レベルです。発表は原則、前日17時頃(翌日分)と当日5時頃(当日分)の1日2回、対象期間は例年4月下旬〜10月上旬です。この記事では、この基準がどう決まっているのか、都道府県単位の発表と実際の暑さのズレ、労働安全衛生法や学校現場での独自基準との関係まで、数字を軸に整理します。
「熱中症警戒アラートが出た」と聞いても、それが具体的にどんな数字を根拠にしているのか、私は長らく知りませんでした。
「暑いから出るんだろう」という感覚的な理解のままでは、アラートが出ていない日でも危険な暑さになる場合があることに気づけません。基準を数字で知っておくことが、実際の防災行動につながります。
この記事では、熱中症警戒アラートと熱中症特別警戒アラートの発表基準を、発表タイミング・発表単位・現場ごとの独自基準との違いまで含めて具体的に解説します。
【この記事の信頼性について】本記事は環境省・気象庁の公式発表資料をもとに作成しています。最新の発表基準・運用状況は環境省「熱中症予防情報サイト」で必ずご確認ください。医療的な判断が必要な場合は自己判断せず医師・医療機関にご相談ください。
熱中症警戒アラートの発表基準:WBGT33℃以上
熱中症警戒アラートは、環境省と気象庁が共同で発表する情報で、発表基準は「暑さ指数(WBGT)」という指標に基づいています。
| 区分 | 発表基準 | 新設時期 |
|---|---|---|
| 熱中症警戒アラート | 都道府県内いずれかの地点で、当日または翌日のWBGTが33℃以上と予測される場合 | 2021年(本運用) |
| 熱中症特別警戒アラート | 都道府県内すべての地点で、当日または翌日のWBGTが35℃以上と予測される場合 | 2024年 |
WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature、湿球黒球温度)は、気温だけでなく湿度・輻射熱(日射・地面からの照り返し)の3要素を組み合わせて算出される指標です。同じ気温でも湿度が高い日はWBGTが上がりやすく、実際の体感の暑さ・熱中症リスクをより正確に反映するとされています。
WBGTの目安は、環境省の基準で「危険(31℃以上)」「厳重警戒(28〜31℃)」「警戒(25〜28℃)」「注意(25℃未満)」の4段階に分けられています。熱中症警戒アラートの基準である33℃は、この最上位区分「危険」をさらに超える数値です。
「都道府県内いずれか」と「すべて」の違い
2つのアラートの基準を比べると、決定的な違いは対象範囲の広さです。
- 熱中症警戒アラート:都道府県内の観測地点の1か所でも33℃以上が予測されれば発表
- 熱中症特別警戒アラート:都道府県内のすべての地点で35℃以上が予測されて初めて発表
この設計により、熱中症警戒アラートは比較的発表されやすく、特別警戒アラートは都道府県全域が広範囲かつ深刻な高温に見舞われる、稀な状況でのみ発表される仕組みになっています。特別警戒アラートは2024年の運用開始から、対象を絞った稀な発表にとどまっており、「めったに出ないからこそ重く受け止めるべき情報」という位置づけです。
発表タイミングは1日2回、期間は例年4月下旬〜10月上旬
アラートの発表は、原則として以下の2つのタイミングで行われます。
| 発表タイミング | 対象 |
|---|---|
| 前日 17時頃 | 翌日分の予測に基づく発表 |
| 当日 5時頃 | 当日分の予測に基づく発表(前日発表からの更新) |
運用期間は例年4月下旬から10月上旬頃までです。この期間以外は制度上アラートの対象外となりますが、5月や10月でも高温になる年は増えており、制度の対象期間と実際の暑さが一致しない可能性がある点には注意が必要です。
発表単位は都道府県、実際の暑さは市区町村単位で差がある
熱中症警戒アラートは都道府県単位で発表されます。しかし実際のWBGTは、環境省が全国約840地点に設置した観測・推計地点ごとに算出されており、同じ都道府県内でも地域差があります。
例えば、内陸部と沿岸部、盆地と平野部では日中のWBGTが数℃単位で異なることは珍しくありません。都道府県単位でアラートが発表されていなくても、自分が住む市区町村のWBGT実況値だけが基準を超えているケースもあり得ます。環境省の熱中症予防情報サイトでは、地点別のWBGT実況・予測値を確認できるため、都道府県単位の発表だけでなく、居住地に近い地点の数値を個別に確認することが推奨されています。
職場・学校には別の基準がある
熱中症警戒アラートとは別に、特定の現場では独自の数値基準が設けられています。
労働現場:労働安全衛生規則の熱中症対策義務化
2025年6月の労働安全衛生規則改正により、事業者にはWBGT28℃以上(または気温31℃以上)が予想される作業において、熱中症の自覚症状がある作業者を把握できる体制の整備や、重篤化を防ぐための報告・対応体制の構築が義務付けられました。熱中症警戒アラートの基準(33℃)よりも低いWBGT28℃の段階で、既に対策が求められる仕組みです。
学校現場:日本スポーツ協会の運動指針
学校の部活動や体育の現場では、日本スポーツ協会が示す「熱中症予防運動指針」が広く使われています。この指針ではWBGT31℃以上を「運動は原則中止」、28〜31℃を「厳重警戒(激しい運動は中止)」としており、熱中症警戒アラートの基準に近い、あるいはそれより厳しい水準で運動の可否が判断されます。
このように、熱中症警戒アラートはあくまで社会全体への注意喚起であり、労働現場・学校現場ではそれぞれ独自の、より早い段階で作動する基準が並行して運用されています。
アラートの確認方法
熱中症警戒アラートは、以下の方法で確認できます。
- 環境省「熱中症予防情報サイト」(公式サイト)
- 気象庁の防災情報ページ
- Yahoo!防災速報・NHKニュース防災アプリなどの防災系アプリのプッシュ通知
- テレビ・ラジオの気象情報
アラート発表時にはスマートフォンへのプッシュ通知が届くよう、防災アプリの通知設定を有効にしておくと、発表を見逃しにくくなります。
関連する熱中症情報とあわせて確認する
熱中症警戒アラートの基準そのものを理解したら、あわせて確認しておきたいのが、暑さ指数(WBGT)という指標そのものの仕組みと、実際に熱中症が起きたときの症状・対処法です。
WBGTの算出方法をさらに詳しく知る
この記事ではWBGTの基準値を中心に解説しましたが、WBGTがどのような計算式で算出されるのか、気温とどう違うのかをより詳しく知りたい方は、以下の記事にまとめています。
→ 暑さ指数(WBGT)とは何か【2026年版】計算式・気温との違い・熱中症リスクの見方・防災活用法
熱中症そのものの症状・応急処置を知る
アラートが発表された際に、実際に熱中症の症状が出た場合どう対処すればよいかは、以下の記事で原因・症状・応急処置を対象別に解説しています。
→ 熱中症の予防と対策【2026年版】原因・症状・応急処置・高齢者・子ども別の注意点を完全解説
重症度の判断基準(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)
アラートの基準とは別に、実際に体調が悪くなった際、どの段階で119番通報すべきかの判断基準も重要です。重症度の分類ごとの症状・対処法をまとめた記事です。
→ 熱中症Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度の意味と違い【2026年版】症状・対処法・119番通報の判断基準を完全解説
厚労省・環境省のガイドライン改正
労働安全衛生規則の改正など、国のガイドラインがどう変わってきたかを俯瞰的にまとめた記事もあわせてご確認ください。
→ 【2026年版】熱中症ガイドライン:厚労省・環境省の改正ポイントと職場・日常の対策を徹底解説
水分補給だけでは防げない理由
熱中症警戒アラートが出た日の対策というと「水を飲む」ことばかりが強調されがちですが、水分補給だけでは不十分なケースがあります。汗で失われる塩分・電解質の補給、エアコンによる室温管理、休憩のタイミングなど、複数の対策を組み合わせる必要がある点を解説した記事です。
屋外で作業する日や、運動する日は、水と一緒に塩分タブレットを持っておくと確実です。汗をかいた分の塩分は、水だけでは戻りません。
→ 熱中症は水分補給だけじゃ足りない|本当に必要な対策を解説します
酷暑日という言葉も押さえておく
近年、気温40℃を超える「酷暑日」という言葉も使われるようになりました。酷暑日そのものの定義や、災害としての熱中症リスクを整理した記事です。
→ 酷暑日とは何か・災害としての熱中症リスクと防災対策【2026年版】気温40℃超の夏を生き抜く方法
アラートの基準値が変わってきた経緯
熱中症警戒アラートの前身にあたる制度として、気象庁は2013年から「高温注意情報」(最高気温35℃以上が予想される場合に発表)を運用していました。2021年に環境省・気象庁が共同で熱中症警戒アラートの本運用を開始した背景には、気温だけでなく湿度・輻射熱を含めたWBGTのほうが、熱中症リスクをより正確に反映できるという知見の蓄積があります。
その後、2018年の記録的猛暑や、毎年のように更新される熱中症による救急搬送者数の増加を受けて、2024年には都道府県内すべての地点が35℃を超える極端な状況に対応する熱中症特別警戒アラートが新設されました。基準値そのものが段階的に整備されてきた経緯を知っておくと、今後さらに制度が見直される可能性があることも理解しやすくなります。
よくある質問
Q. WBGT33℃とは、気温で言うと何度くらいですか?
A. WBGTは気温・湿度・輻射熱を組み合わせた指標のため、気温だけでは単純に換算できません。目安として、湿度が高い日は気温33℃前後でもWBGTが33℃に達することがあり、逆に乾燥した晴天時は気温がより高くてもWBGTが基準を下回ることがあります。気温ではなくWBGTの実況値そのものを確認することが重要です。
Q. アラートが出ていない日は熱中症の心配がないということですか?
A. いいえ。アラートは都道府県単位の発表のため、地域や時間帯によってはアラート未発表でも局地的にWBGTが高くなる場合があります。またWBGT28℃前後でも熱中症は発生するため、アラートの有無だけでなく、こまめな水分補給や室温管理を日常的に行うことが重要です。
Q. 特別警戒アラートはどのくらいの頻度で発表されますか?
A. 都道府県内のすべての地点でWBGT35℃以上という厳しい条件のため、2024年の運用開始以降、対象を絞った限られた発表にとどまっています。発表実績の詳細は環境省・気象庁の公式発表で確認できます。
Q. 労働安全衛生規則の基準とアラートの基準はどちらを優先すべきですか?
A. 職場では労働安全衛生規則の基準(WBGT28℃以上での体制整備義務)が法的な義務として優先されます。熱中症警戒アラート(33℃)はこれとは別の、社会全体向けの注意喚起情報として併用するのが基本的な考え方です。
あわせて読みたい:プレクーリングとは?作業前に深部体温を下げる熱中症対策と正しいやり方
まとめ
熱中症警戒アラートはWBGT33℃、特別警戒アラートはWBGT35℃(都道府県内すべての地点)が発表の基準です。発表は1日2回、都道府県単位で行われますが、実際のWBGTは市区町村単位で差があり、労働現場・学校現場にはさらに低い基準(WBGT28℃前後)が別途設けられています。
アラートの有無だけで判断するのではなく、居住地に近い地点のWBGT実況値を確認する習慣をつけることが、熱中症を避ける確実な方法です。
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