災害時のエコノミークラス症候群を徹底解説|原因・症状・予防法と対策グッズまで
地震が起きて、やっと助かった命。
しかし、その後の避難生活で命を落とす人がいます。
その原因のひとつが、「エコノミークラス症候群」です。
2016年の熊本地震では、建物の倒壊などによる「直接死」の4倍もの人が、避難後の体調悪化などによる「災害関連死」で亡くなりました。
その中に、エコノミークラス症候群による死亡が含まれていました。
地震発生からわずか4日後、車中泊をしていた50代の女性が突然倒れ、エコノミークラス症候群で亡くなったのです。
この記事では、災害時のエコノミークラス症候群について徹底的に解説します。
原因・症状・予防ストレッチから、今すぐ備えられる対策グッズまでを網羅しています。
防災の専門サイトとして、正確な情報を丁寧にお伝えします。
ぜひ最後まで読んで、大切な命を守る知識を身につけてください。
エコノミークラス症候群とは何か
エコノミークラス症候群の正式名称は、「深部静脈血栓症(DVT)」および「肺血栓塞栓症(PE)」です。
長時間同じ姿勢でいると、足の静脈の中に血の塊(血栓)ができます。
その血栓が血流に乗って肺まで移動すると、肺の血管を詰まらせてしまいます。
これが「肺血栓塞栓症」です。
最悪の場合、突然死に至ることがあります。
名前に「エコノミークラス」とつくのは、飛行機のエコノミークラスの狭い座席で長時間座っていた乗客が発症したことから広まったためです。
しかし現在では、飛行機の中だけで起きる病気ではありません。
車の中でも、避難所でも、自宅の中でも発症します。
とりわけ災害時の避難生活は、エコノミークラス症候群が非常に起きやすい環境です。
なぜ災害時に発症しやすいのか
災害時の避難生活には、エコノミークラス症候群を引き起こす要因が重なっています。
なぜ発症しやすいのか、その理由をひとつずつ見ていきましょう。
理由① 長時間同じ姿勢でいる
避難所では、床に座ったまま過ごす時間が長くなります。
車中泊の場合は、シートに座ったまま一夜を明かすことになります。
足を動かせない状態が続くと、ふくらはぎの筋肉が収縮しなくなります。
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど、血液を全身に送り返す重要な働きをしています。
筋肉が動かないと、足の血流が著しく低下します。
その結果、静脈の中に血栓ができやすくなるのです。
理由② 水分が不足する
災害時は、安全な飲料水の確保が難しくなります。
さらに、もう一つの問題があります。
避難所のトイレが使えない、または非常に混雑していることから、「トイレに行く回数を減らしたい」という心理で水分を控える人が多いのです。
水分が不足すると、血液がドロドロになります。
血液が濃くなるほど、血栓ができやすくなります。
理由③ 衣類が体を締め付ける
避難する際、急いで着込んだ衣類がきつく足を締め付けることがあります。
タイトなジーンズやレギンスは、血行を悪化させる原因になります。
特に足の付け根(鼠径部)の締め付けは危険です。
理由④ 寒さで血管が収縮する
冬の災害では、気温の低下も大きなリスクです。
寒いと血管が収縮し、血流が悪くなります。
北海道や東北など、寒冷地での冬季災害では特に注意が必要です。
理由⑤ ストレスと精神的緊張
災害後の極度のストレスは、血液を凝固しやすくする方向に働きます。
精神的な緊張が続くと、自律神経のバランスが乱れます。
その結果、血栓が形成されやすくなることが知られています。
発症しやすい人の特徴
エコノミークラス症候群は、誰でも発症する可能性があります。
ただし、以下に当てはまる人は特にリスクが高いとされています。
- 65歳以上の高齢者
- 肥満の方(BMI30以上)
- 妊娠中・産後の女性
- 過去に血栓症を経験したことがある方
- がんの治療中の方
- 心疾患・心不全のある方
- 経口避妊薬(ピル)を服用している女性
- 下肢静脈瘤のある方
- 脱水状態にある方
- 長時間の移動・安静を強いられている方
特に高齢者と基礎疾患のある方は、周囲が意識的にサポートすることが重要です。
エコノミークラス症候群の主な症状
エコノミークラス症候群の症状は、段階によって異なります。
早期発見のために、以下の症状を覚えておきましょう。
足に現れる症状(深部静脈血栓症)
- 足がむくんでいる(特に片足だけ)
- ふくらはぎや太ももが痛い・重い
- 足が赤くなっている・熱をもっている
- 足の皮膚が硬くなっている感じがある
肺に血栓が詰まったときの症状(肺血栓塞栓症)
- 突然の激しい胸の痛み
- 息苦しさ・呼吸困難
- 突然の咳・血を吐く
- 動悸・心拍数の急増
- めまい・失神・意識を失う
- 血圧の急激な低下
肺血栓塞栓症の症状が出た場合、一刻も早く救急車を呼んでください。
歩かせることで血栓が移動し、症状が悪化する危険があります。
動かさずに、その場で安静にして救助を待ちましょう。
エコノミークラス症候群の予防法【今すぐできる行動】
エコノミークラス症候群は、正しい知識と行動で予防できます。
避難生活の中で、以下の行動を意識してください。
予防法① 定期的に足を動かす
最も効果的な予防法は、足を動かし続けることです。
少なくとも1時間に1回は立ち上がり、軽く歩きましょう。
立ち上がれない場合は、座ったままでもできる運動を行います。
【座ったままできる足の運動】
- 足首を上下に動かす(つま先を上げ下げ)を10〜20回繰り返す
- 足首をゆっくり左右に回す(各10回)
- かかとを上げ下げする(20回)
- 足の指をグーパーと開閉する(10回)
- 膝を胸に引き寄せるように抱える(左右それぞれ10秒)
これらの運動は、ふくらはぎの筋肉を効率的に動かします。
血液が心臓へ戻るポンプ作用が活性化し、血栓の形成を防ぎます。
予防法② 水分をこまめに補給する
1日に1.5〜2リットルの水分摂取を目標にしましょう。
トイレを我慢するために水分を控えるのは、非常に危険です。
水分不足は血液をドロドロにし、血栓のリスクを大幅に高めます。
経口補水液は、水分と電解質を効率よく補給できるため特におすすめです。
アルコールとコーヒーは利尿作用があるため、大量摂取は避けましょう。
予防法③ 足を締め付けない服装にする
タイトなジーンズや締め付けの強いズボンは避けましょう。
ゆったりとしたスウェットパンツや、伸縮性のある衣類が理想です。
ただし、「着圧ソックス(弾性ストッキング)」は別です。
医療用・予防用の着圧ソックスは、適切な圧力で足の血行を促進します。
エコノミークラス症候群の予防に非常に効果的なアイテムとして、医療機関でも推奨されています。
予防法④ 体を温める
寒さは血管を収縮させ、血栓リスクを高めます。
毛布や防寒具で体を温めましょう。
特に足元の保温が重要です。
使い捨てカイロや靴下の重ね履きも効果的です。
予防法⑤ ふくらはぎのマッサージをする
自分で、または周囲の人に行ってもらいましょう。
ふくらはぎを足首から膝に向けて、下から上へやさしく揉み上げます。
血液が心臓に向かって流れる方向を意識することがポイントです。
痛みを感じる場合は無理に行わないでください。
血栓がすでにある場合、マッサージで悪化することがあります。
予防法⑥ 同じ姿勢を長く続けない
座る・立つ・横になるを、こまめに切り替えましょう。
足を伸ばしたり、足の位置を変えたりするだけでも効果があります。
クッションや座布団を使って、足を少し高くする姿勢も有効です。
車中泊時の特別な注意点
熊本地震では、余震を恐れた多くの人が車の中で寝泊まりしました。
避難者の4割が車中泊を経験したと言われています。
車中泊は、エコノミークラス症候群のリスクが特に高い環境です。
理由は明確です。
車のシートは狭く、足を伸ばせません。
膝が曲がったまま長時間過ごすことで、膝の裏の血管が圧迫されます。
血液が足に溜まりやすくなり、血栓が形成されやすくなります。
車中泊をする場合は、以下のことを必ず実践してください。
- 1〜2時間ごとに車の外に出て歩く
- できるだけシートを倒して足を伸ばして寝る
- 足元にクッションや荷物を置いて足を高くする
- 締め付けのない服装にする
- 窓に目隠しを設置して十分な睡眠をとる
- 定期的に水分を補給する
エンジンをかけたまま寝ることは、一酸化炭素中毒の危険もあるため絶対に避けてください。
エコノミークラス症候群の対策グッズ【防災備品として備えよう】
エコノミークラス症候群の予防には、事前にグッズを備えておくことが非常に重要です。
以下のアイテムを防災リュックに入れておきましょう。
① 着圧ソックス(弾性ストッキング)
エコノミークラス症候群の予防に最も効果的なグッズです。
足の静脈に適切な圧力をかけ、血流を促進します。
医療用・航空機用のものが市販されており、薬局やAmazonで購入できます。
膝下タイプと太ももまであるタイプがありますが、避難生活では着脱しやすい膝下タイプが使いやすくおすすめです。
男女兼用・サイズ展開が豊富なものを選びましょう。
防災リュックに1〜2足入れておくと安心です。
② 着圧レギンス・着圧タイツ
女性には、着圧レギンスや着圧タイツも選択肢になります。
ズボンとしても着用できるため、避難生活では特に使いやすいアイテムです。
下半身全体を圧迫することで、足全体の血行を促進します。
ゆったりとした上着と組み合わせて、快適に過ごせます。
③ 携帯用水筒・折りたたみボトル
水分補給は、エコノミークラス症候群予防の根幹です。
常に自分の手元に水分を持っておけるよう、携帯用水筒を備えましょう。
折りたたみ式のシリコンボトルは、コンパクトに収納できて防災リュックに最適です。
保温・保冷機能付きのステンレスボトルは、災害時の寒暖差にも対応できます。
④ 経口補水液・粉末タイプ
災害時の脱水対策に、経口補水液は非常に重要です。
水と電解質(ナトリウム・カリウム)を効率よく補給できます。
パウチタイプの液体よりも、粉末タイプのほうがかさばらず、防災リュックに多く入れられます。
OS-1(大塚製薬)などのブランドが代表的です。
消費期限を定期的に確認し、ローリングストックで備えましょう。
⑤ エアマット・インフレータブルマット
避難所の固い床での就寝は、体への負担が非常に大きくなります。
固い床に長時間座ったり横になったりすると、血行が悪化します。
エアマット(空気を入れて膨らませるマット)を使うことで、床からの圧力を分散できます。
コンパクトに収納できるタイプを選びましょう。
自動膨張式(インフレータブル)のものは、口で吹く必要がなく便利です。
⑥ 寝袋(シュラフ)
寝袋は体全体を包み、保温性を高めます。
寒さによる血管収縮を防ぎ、エコノミークラス症候群の予防にも役立ちます。
災害時の避難生活では、コンパクトに収納できる封筒型が使いやすいです。
避難所でも邪魔にならないサイズを選びましょう。
気温に合わせて、対応温度(快適温度)の表示を確認して選んでください。
⑦ クッション・低反発クッション
座り続ける状況では、クッションが非常に重要な役割を果たします。
固い床や狭いシートに座るとき、適切なクッションがあるだけで血行が改善します。
足の下に置いて足を高くすることで、足への血液の滞留を防ぐ効果もあります。
コンパクトに折りたためるタイプや、空気で膨らませるタイプが防災向きです。
⑧ 足つぼマット・青竹踏み
足の裏を刺激することで、血行を促進できます。
足つぼマットや青竹踏みは、座ったまま足の裏を動かすことができる便利なアイテムです。
避難所でも場所を取らず、立ち上がれない高齢者や体の不自由な方にも活用しやすいです。
折りたたみできる薄型の足つぼマットを選ぶと収納に困りません。
⑨ サンシェード・目隠しシェード(車中泊用)
車中泊では、睡眠の質を高めることも重要です。
外から光が入ってくると、睡眠が浅くなります。
睡眠不足は体の回復力を下げ、体調不良のリスクを高めます。
フロントガラスや窓用のサンシェードがあると、プライバシーを守りながら休めます。
車種に合ったサイズを事前に確認して購入しておきましょう。
⑩ 毛布・アルミ保温ブランケット
保温は、エコノミークラス症候群予防の基本です。
特に、軽量で暖かいアルミ保温ブランケット(サバイバルシート)は防災の必需品です。
コンパクトにたためてかさばらず、体温を効率的に保持します。
足先・膝・腰を集中的に温めることで、血行を維持できます。
⑪ 使い捨てカイロ
冬の災害時には、使い捨てカイロが活躍します。
足の裏・ふくらはぎ・腰など、冷えやすい部位に貼ることで血行を促進します。
靴用カイロは、車中泊や避難所での足の保温に特に役立ちます。
まとめ買いして防災リュックに入れておきましょう。
ただし、低温やけどに注意し、肌に直接触れないようにしてください。
⑫ 着替え・ゆったりとした衣類
スウェットパンツなど、足を締め付けない衣類を防災リュックに入れておきましょう。
伸縮性のある素材で、動きやすいものを選びます。
長時間着用しても圧迫感がないことが重要です。
特に下半身の衣類は、血行への影響が大きいためこだわって選びましょう。
⑬ 折りたたみ椅子・アウトドアチェア
避難所では、床に直接座ることが多くなります。
床に近い姿勢は、膝が曲がりやすく血行が悪くなります。
コンパクトな折りたたみ椅子があると、適切な高さで座ることができます。
椅子に座ったほうが足を動かしやすくなり、運動もしやすくなります。
軽量で収納しやすいアウトドアチェアを1脚備えておくことをおすすめします。
⑭ 携帯トイレ
避難所でトイレに行くことを我慢しなくて済むように、携帯トイレを備えておきましょう。
「トイレに行きたくないから水を飲まない」という状況を防ぐために非常に有効です。
汚物を固める凝固剤タイプが使いやすいです。
1人あたり最低3〜5個は備えておくと安心です。
発症してしまったときの対処法
エコノミークラス症候群の症状が疑われる場合、正しい対応が命を救います。
足に症状(むくみ・痛み・熱感)が出たとき
- 足をマッサージしない(血栓が移動する危険がある)
- 無理に歩かせない
- 足を少し高くした状態で安静にする
- できるだけ早く医師に診てもらう
- 避難所のスタッフや医療チームに申し出る
肺の症状(胸痛・息切れ・意識障害)が出たとき
- すぐに119番に電話する
- 患者を歩かせない・動かさない
- その場に寝かせて安静を保つ
- 呼吸が止まったら心肺蘇生を開始する
肺血栓塞栓症は、発症から数分〜数十分で死亡することもある緊急疾患です。
少しでも疑わしい症状があれば、ためらわずに救急要請してください。
熊本地震での教訓:事例から学ぶ重要性
2016年の熊本地震では、エコノミークラス症候群の恐ろしさが広く知られることになりました。
地震発生後4日目の2016年4月18日、車中泊をしていた50代の女性が車を降りた直後に突然倒れました。
病院に搬送されましたが、急性肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)で亡くなりました。
この事例が、熊本地震における最初のエコノミークラス症候群による死亡例です。
特に注目すべきは、地震発生後4〜7日の時期に発症が急増するという点です。
地震直後ではなく、数日間にわたる避難生活の疲弊が引き金になるのです。
「生き残ったのに、避難生活で命を落とす」という悲劇を繰り返さないために、事前の知識と備えが不可欠です。
熊本地震では、一般の学校体育館などが避難所として使われました。
多くの避難者が床に座ったまま、または車の中で長時間過ごしていました。
この経験を踏まえ、現在は多くの自治体が避難所での定期的な体操を推奨しています。
避難所スタッフや支援者が知っておくべきこと
避難所を運営する立場の方や、被災者を支援する方にも、エコノミークラス症候群の知識が必要です。
- 避難所での定期的な体操・運動の時間を設ける
- 長時間座りっぱなしになっている人に声をかけて動くよう促す
- 高齢者や基礎疾患のある人を重点的にサポートする
- トイレ環境を改善し、水分を控える状況をなくす
- 医療チームと連携し、症状のある人をすぐに受診させる体制を整える
- 避難所内に体操の手順を掲示し、誰でも実践できるようにする
集団での体操は、孤立を防ぐコミュニティ効果もあります。
声かけと体操の習慣化が、多くの命を救います。
今日から始められる防災準備チェックリスト
この記事を読んだ今日から、以下の準備を始めましょう。
- 着圧ソックスを購入し、防災リュックに入れる
- 経口補水液(粉末タイプ)を最低3日分備蓄する
- 携帯用水筒を防災リュックに入れる
- エアマットや折りたたみ座布団を用意する
- アルミ保温ブランケットを防災リュックに入れる
- 携帯トイレを最低5個備蓄する
- 使い捨てカイロを防災リュックに入れる(冬季)
- 足の体操の手順を家族全員で覚える
- 車中泊になった場合の対応を家族で話し合っておく
防災の準備は、今日この瞬間に始めることが最も重要です。
「いつか準備しよう」と思っているうちに、災害はやってきます。
「備えていた人」と「備えていなかった人」では、結果が大きく変わります。
まとめ:エコノミークラス症候群は予防できる
エコノミークラス症候群は、正しい知識と行動によって予防できる病気です。
特に災害時の避難生活では、発症リスクが一気に高まります。
以下の5つのポイントを覚えておいてください。
- 足を定期的に動かす(1時間に1回は立ち上がる・足首を動かす)
- 水分をこまめに補給する(1日1.5〜2リットル目安)
- 着圧ソックスを着用する(防災リュックに常備)
- 体を温める(特に足元の保温)
- 症状が出たらすぐに医療機関へ(胸痛・呼吸困難は119番)
そして、これらのことを支えるグッズを事前に備えておくことが、命を守る最大の投資です。
大切な家族を、そして自分を守るために、今すぐ行動を起こしてください。



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