防災心理学とは?正常性バイアス・リスク認知・行動変容・メタ認知まで防災の専門家がわかりやすく解説

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防災心理学とは?正常性バイアス・リスク認知・行動変容・メタ認知まで専門家の知見でわかりやすく解説

「防災心理学という言葉をよく聞くけれど、どんな学問なの?」

「正常性バイアスはわかった。でも実際の防災にどう活かせばいいの?」

「なぜ避難勧告が出ても逃げない人がいるのか、心理学的に説明できる?」

「防災意識を高めるために、自分や家族にできることはある?」

こうした疑問を持つ方に向けて、この記事を書いています。

日本では近年も大きな自然災害が相次いでいます。

2024年1月の能登半島地震・同年8月の南海トラフ地震臨時情報・頻発する水害や土砂災害など「災害と隣り合わせの生活」が続いています。

こうした中「なぜ人は危険な状況でも避難しないのか・なぜ備蓄が進まないのか・どうすれば防災行動を促せるのか」という問いに科学的に答えようとする学問が「防災心理学」です。

この記事では「防災心理学の定義・災害心理学との違い・主要な概念(正常性バイアス・多数派同調バイアス・リスク認知・認知的不協和・メタ認知)・行動変容アプローチ・防災教育への応用・日常の防災に活かす実践方法」を、近畿大学准教授・島崎敢氏(防災科学技術研究所特別研究員を歴任)のインタビュー・砂防学会誌「防災のための心理学」・北海道大学「災害のリスク認知と対処行動」・土木学会誌・総務省資料・日本赤十字社・防災心理学入門(書籍)などの専門的情報をもとに徹底解説します。

【この記事の信頼性について】
本記事は近畿大学生物理工学部・島崎敢准教授(防災科学技術研究所特別研究員歴任、博士(人間科学)、心理学による災害リスク軽減専門)へのNTTフィールドテクノのインタビュー記事・砂防学会誌「防災のための心理学」(公益社団法人砂防学会)・北海道大学「災害のリスク認知と対処行動」・Wikipedia「災害心理学」・日本赤十字社「正常性バイアス・同調性バイアス」・総務省「災害時の心理と行動」・telemail.jp「いざという時に身を守る、心理学を応用した防災教育とは?」・防災心理学情報サイト(bo-sai.co.jp)・Note「正常性バイアスに支配される私たち」をもとに作成しています。防災ベース編集部が専門家の研究知見と実践的防災情報を組み合わせて解説しました。

目次

防災心理学とは:定義と位置づけ

「防災心理学(ぼうさいしんりがく)」は「応用心理学」の一分野である「災害心理学(さいがいしんりがく)」と深く関連した実践的な学問です。

「災害心理学が災害に対する人間の心理と行動全般を研究する学問」であるのに対し「防災心理学は特に防災・減災という目的のために心理学の知見を応用することに焦点を当てた分野」です。

両者の違いは微妙ですが「防災心理学は・より実践的・応用的な側面が強調された呼称」として使われることが多い傾向があります。

近畿大学の島崎敢准教授は防災心理学の目的をこのように説明しています。

「実証的な防災心理学を応用して、危ない行動をやめてもらう、安全な行動を増やしてもらうことを目的に研究を続けています」
(近畿大学生物理工学部 島崎敢准教授)

「つまり防災心理学は・頭の中の知識を増やすためだけの学問ではなく・実際に人の行動を変え・被害を減らすための科学」です。

「人間の心理・認知・行動のメカニズムを理解することで・より効果的な防災啓発・防災教育・地域防災の設計につなげる」という実践的な目的があります。

防災心理学が注目される背景

「防災心理学が近年急速に注目されるようになった理由」は複数あります。

「日本では耐震工事・防潮堤建設・ハザードマップ整備など・工学的・物理的な防災対策は世界最高水準にある」という事実があります。

島崎准教授は「日本は建築など、防災の工学的対策は世界でも群を抜いている。そうした中、私は心理学や人間工学の視点から災害のリスク軽減にアプローチしている。今まであまりスポットライトが当たってこなかった領域」と述べています。

「工学的対策が進んでも・逃げ遅れ・備蓄不足・避難指示無視などの人的要因による被害はなくならない」という現実があります。

「この人的要因に正面から向き合うのが防災心理学の役割」です。

「2025年1月には南海トラフ地震の30年以内発生率が80%程度に引き上げられた」という最新情報もあります。

「来るべき大規模災害に備えて・工学的な対策だけでなく・一人ひとりの心理と行動を変えることが急務」という社会的な認識が高まっています。

正常性バイアス:防災心理学の最重要概念

「防災心理学を語るうえで・最初に理解すべき最重要概念」が「正常性バイアス(せいじょうせいバイアス)」です。

「この概念を正しく理解しているかどうかが・緊急時の行動速度に直結する」という観点から、防災の専門家が必ず取り上げる知識です。

正常性バイアスとは何か

「正常性バイアス(正常化の偏見)とは・予期しない異常な事態に直面したとき・『大したことではない』『自分は大丈夫』と思い込もうとする心理機能」のことです。

日本赤十字社は「正常性バイアスは異常なことが起こった時に『大したことじゃない』と落ち着こうとする心の安定機能のようなもの」と説明しています。

鹿児島大学の研究者は「人間は考えたくないものは考えない・自分だけは大丈夫という思考に陥りやすい傾向がある」と解説しています。

「正常性バイアスは日常生活では心の安定に役立つ機能」です。

「しかし緊急事態・特に津波・火災・水害などの場面では・適切な行動を阻む致命的な心理的障害になる」という二面性があります。

島崎准教授は「むしろパニックにならないことが問題です。被災しても自分だけは大丈夫だと思い込んだり、周りの人が落ち着いているのを見て安心したりすることがよくあります。これが正常性バイアスです」と述べています。

正常性バイアスが引き起こす具体的な問題

総務省「災害時の心理と行動」資料によると「正常性バイアスは・物事を普通の範囲内で理解しようとする心理から生まれる」と説明されています。

  • 「火災報知機が鳴っても『誤作動だろう』と思い留まる」
  • 「津波警報が発令されても『ここまでは来ないだろう』と高台に逃げない」
  • 「大雨特別警報が出ても『うちは大丈夫だろう』と避難を先延ばしにする」
  • 「大地震が発生しても『まだ揺れ続けるかもしれないが・とりあえず大丈夫』と自宅に留まる」

「東日本大震災では津波警報が発令されていたにもかかわらず・迅速に避難できなかった人が多数いた」という事実は「正常性バイアスの恐ろしさ」を端的に示しています。

正常性バイアスへの対処方法

「正常性バイアスは人間の本能に近い心理機能であり・完全に取り除くことはできない」という前提を理解することが重要です。

島崎准教授は「皆さんにはぜひ率先避難者になってほしい。誰かが逃げるために走り出せば、みんなも後を追って逃げ出します」と述べています。

  • 「空振り」を怖れない考え方を持つ:島崎准教授は「空振りではなく素振り」という表現で説明している。「逃げて何もなかった・それは空振りではなく本番に備えた素振り」という考え方が初動を早める
  • 「おかしい」と思った時点で逃げるルールを決める:「揺れを感じた・警報が鳴った・水が増えてきた」という具体的なトリガーを事前に決めておくことで行動が速くなる
  • 避難経路の事前確認:北海道大学の研究によると「事前に避難経路を探した経験があると、避難に要する時間が短くなるほか、避難時の不安や恐怖が低減する」という効果がある
  • 率先して逃げる意識を持つ:「周囲の様子を見ずに自分が最初に行動することで・周囲の同調性バイアスを解除する効果がある」

多数派同調バイアス:集団心理が避難を遅らせる

「防災心理学で正常性バイアスと並んで重要な概念」が「多数派同調バイアス(多数派同調性バイアス・同調性バイアス)」です。

日本赤十字社は「同調性バイアスとは周囲の人と同じ行動を取ろうとする心理的傾向」と定義しています。

多数派同調バイアスの危険なメカニズム

防災心理学のサイト(bo-sai.co.jp)はロールプレイ実験を引用して「多数派同調バイアスの恐ろしいメカニズム」を具体的に示しています。

「実験の設定:被験者はほかのサクラの参加者とともに部屋に入り・部屋に煙が充満し始める状況を設定した」というものです。

「結果:サクラが全員落ち着いているように見せると・被験者の70〜75%が・煙が充満する部屋から逃げずにそのまま留まった」という驚くべきデータがあります。

「つまり・周囲が落ち着いているという情報だけで・明らかに危険な状況でも逃げないという選択をしてしまう」ということです。

「この実験が示すのは・周囲全員が正常性バイアスに陥っている場合・多数派同調バイアスによってその誤判断が集団に固定される」という危険なメカニズムです。

「周囲が逃げないから自分も逃げない→ 周囲も自分が逃げないから逃げない」という負のスパイラルが「集団全体の逃げ遅れ」を生み出します。

多数派同調バイアスへの対処

「多数派同調バイアスに対抗する最も有効な方法は・自分自身で判断する基準を持つこと」です。

「周りが動かなくても・自分が率先して逃げる勇気」を持つことが大切です。

「島崎准教授が言う『率先避難者になる』という意識」が多数派同調バイアスを打ち破る鍵になります。

「実際・防災無線から流れる避難指示には応じなかった人が・近所の知り合いの説得に応じて避難した事例は多数報告されている」(土木学会誌より)という知見も同様のメカニズムを示しています。

リスク認知:なぜ人は「自分は大丈夫」と思うのか

「防災心理学の中核的な研究テーマ」のひとつが「リスク認知(りすくにんち)」です。

北海道大学の研究者はリスク認知を「何らかの被害に遭う可能性の度合いに対する・素人としての主観的な判断」と定義しています。

「専門家による客観的なリスク評価と・一般市民のリスク認知(主観的なリスク判断)の間には大きなギャップがある」ということが研究で明らかになっています。

自然災害に対するリスク認知が低い理由

砂防学会誌「防災のための心理学」によると「人々のリスク認知が・自然災害に対して低くなりやすい理由」が心理学的に説明されています。

「現実場面では、住宅の耐震補強が進まない・避難勧告が出ても避難する人が少ないことに表れている」と論文は述べています。

「自分が生きているうちには大地震は来ないだろう・避難するほどのことはないだろう、というように甘くみてしまう」という傾向が広く見られます。

「このようなリスク認知の低さは・居住年数が長くなるほど・避難勧告をうけての避難率が低くなる・という多くの災害調査の結果」でも裏付けられています。

「長く住んでいる地域ほど・過去に被害がなかった経験が積み重なり・リスクを低く見積もりやすくなる」という傾向があります。

「認知的不協和」がリスク認知を歪める

「防災心理学においてリスク認知の低さを説明する重要な理論」が「認知的不協和(にんちてきふきょうわ)」です。

砂防学会誌の解説によると「認知とは人々の考えを・不協和とはそれらに矛盾のある状態を指す。このように考えに矛盾のある状態は人間にとって不快なので・それを解消しようとする」という心理メカニズムです。

「洪水危険区域に住んでいる→ 危険な場所に住むべきではない」という矛盾を解消するために、人は次の2つの方法を取りえます。

  • 行動を変える(引っ越す・すぐ避難する):合理的な解決策だが「引っ越しは簡単にできない・避難が面倒」という障壁がある
  • 認知を変える(リスクを低く見積もる):「去年も大丈夫だったから今年も大丈夫だろう・うちは流れの筋から外れているだろう」という思い込みを作る。これが認知的不協和による「リスク認知の歪み」

「行動を変えることができない場合・人は自ら進んでリスク認知を低くしてしまう」という現象が「長年住んでいる危険区域の住民が避難しにくい心理的原因」のひとつです。

砂防学会誌は「ハザードマップで危険を伝えたから住民は防災行動をとるわけではない・という現実を、この理論は示している」と指摘しています。

メタ認知:防災行動の最適解に近づく思考法

「防災心理学の実践的な応用において・近年特に注目されている概念」が「メタ認知(めたにんち)」です。

島崎准教授は「心理学で自分の思考や認知活動などを客観的に捉え・調整する能力を『メタ認知』と呼ぶ。防災や災害リスクに関して、このメタ認知はとても重要」と強調しています。

防災におけるメタ認知の意味

「防災における『メタ認知』とは・自分が何を理解していて何を理解していないか・何ができて何ができないかを客観的に考えること」です。

島崎准教授はメタ認知を「今なすべきこと」を行動に移すための鍵と説明しています。

「防災にはすべての人に共通した最適解はない。住んでいる場所や家族構成などで状況はまったく異なる。だからこそ各個人が冷静に状況を把握し、最善と思える行動を取ることが求められる」という指摘は、メタ認知の重要性を端的に示しています。

メタ認知を活用した防災の実践

「メタ認知を防災に活かすための具体的な問いかけ」として以下が有効です。

  • 「自分は何を知っているか・何を知らないか」を確認する:「自宅のハザードマップ上の危険度は知っているか・避難先はどこか知っているか・家族の連絡手段は決まっているか」という具体的な問いで知識のギャップを把握する
  • 「自分は何ができて・何ができないか」を把握する:「一人で逃げられるか・高齢の家族を連れて逃げられるか・どのルートで避難できるか」という実際の行動能力を把握する
  • 「自分の心理バイアスを認識する」:「自分は正常性バイアスを持っている・自分はリスクを過小評価しやすい」という自己認識が適切な行動につながる
  • 「今なすべきことは何か」を具体的に決める:「今日中にやること・今週中にやること・今月中にやること」に落とし込む

「行動変容」アプローチ:防災心理学の実践

「防災心理学の最終目標は・人の実際の行動を変えること」です。

「頭でわかっていても行動しない・という人の心理的特性を踏まえた・効果的な行動変容アプローチ」について、島崎准教授の研究を中心に解説します。

「叱る」より「褒める」アプローチの有効性

「人間の行動を変えるには・大きく分類して『叱る』か『褒める』か2つの方法以外ない」と島崎准教授は述べています。

「今は叱る方法・つまり規制・禁止するやり方が主流だが・これにはデメリットがある」という指摘があります。

「叱るアプローチのデメリット」は以下の通りです。

  • 「叱られた人はその状況だけを学習する。例えば・ある場所で速度超過違反でつかまると・次にその違反者は取り締まられた場所だけに対応すればよいと考える」
  • 「叱ることには正しい情報が含まれていない。叱られた行動はやめるが・次に何をすればよいかが理解できず・行動をやめるという消極的な解決策になる」

「一方・褒めることにはどの行動が正解なのかが含まれているので・『もっとやろう』という積極性が生まれる」という効果があります。

「島崎准教授は通園バスの安全対策の好事例を取材・冊子にまとめ・褒めることで安全対策が広がるという実証的な研究を行っている」という具体的な取り組みがあります。

「楽しむ」アプローチの効果

「防災=怖い・考えたくない」というネガティブなイメージが「防災行動を妨げる心理的障壁のひとつ」であることが研究で明らかになっています。

島崎准教授は「この怖いというイメージを払拭することが大切」と述べ「楽しみながら防災意識を高める研究」に取り組んでいます。

「具体的な取り組み例として・家具固定をテーマにしたゲームを学生たちと共同開発した」という研究があります。

「地震発生までの限られた時間内に家具を固定していくゲームを多くの学生に体験させると・約半数が家に帰って実際に家具固定に取り組んだという結果が出た」という実証データが示されています。

「『楽しむ』『褒める』という今まであまりないアプローチが・自発的な行動を促すという点で災害リスクの軽減に有効」という知見は「防災教育の設計に重要な示唆を与える」ものです。

「行動が変われば考え方が変わる」

砂防学会誌の論文は「防災行動変容における重要な理論的ポイント」として「考え方が変われば・行動が変わる・のではなく・行動が変われば・考え方が変わる」という逆転の発想を示しています。

「説明会や講演会で防災意識を高めることも確かに大事なのだが・現実にはなかなか行動に結びつかない」という防災啓発の限界が指摘されています。

「小さな行動を起こすこと・例えば家具を1本固定してみる・非常食を1食買ってみる・避難経路を1回歩いてみる」という「実際の行動体験が・防災への意識と意欲を高める」という効果が期待できます。

防災教育への応用:心理学的アプローチで命を守る

「防災心理学の知見を最も直接的に社会に活かせる場」のひとつが「防災教育」です。

「単に危険を教えるだけでなく・心理学の理論に基づいた効果的な防災教育の設計」が求められています。

「対処可能性の認識」を高めることの重要性

「危険ばかりを伝えて怖がらせるだけでは・かえって行動できなくなる場合もある」という研究知見があります。

「自分でできるという対処可能性の認識をいかに高めながら防災力を高めていけるかが大切」という指摘があります。

「恐怖だけを煽る防災情報は・人々に無力感を与え・防災行動を妨げる逆効果をもたらす可能性がある」ということです。

「対処可能性の認識」とは「自分はこういう行動を取れば身を守ることができる」という「具体的な行動への自信」のことです。

「ただ怖い・危ない・備えよという情報提供ではなく・こうすれば守れる・こう行動すれば安全という具体的な行動の提示が防災教育の核心」です。

小学生向け防災教育の実践例

「心理学を応用した防災教育の具体的な事例」として「小学生向けの防災教育」があります。

「地震が起きた直後だけでなく・家に帰るまでの行動の流れを具体的にイメージできるようにすることがポイント」という研究知見があります。

「登下校の時に地震が起きる可能性もあるので・小学生でも自分で考えて身を守る行動が取れなければならない」という考え方のもと「動画教材で考え・家に帰ってから保護者の方と話し合ってもらうことで理解度が高まり・対処可能性の認識も高くなる」という効果が報告されています。

「防災強みカルタ」:ポジティブ心理学の応用

「人間の思考や行動を前向きに捉える『ポジティブ心理学』の知見を活かした防災教育の事例」として「防災強みカルタ」があります。

「自分の強みを防災に活かす方法を学ぶことで・行動変容を促す」という設計思想のカルタです。

「防災を『弱点の克服』ではなく『強みの活用』として捉えるアプローチ」は「ポジティブな感情を生み出し・防災への関与を高める効果がある」と研究者は述べています。

緊急時の認知特性:なぜ平常時の判断力が使えなくなるのか

「防災心理学において非常に重要な知識」が「緊急時の認知特性」です。

「平常時では当たり前の判断能力が・緊急時には期待できない」ということを理解しておくことが必要です。

緊急時に起こる認知の変化

総務省「災害時の心理と行動」資料によると「緊急時の認知特性」として以下の4つが挙げられています。

  • 情報処理範囲が狭くなる:「通常時に複数の情報を並行処理できる脳が・緊急時には1点集中モードになり・見落としや勘違いが増える」
  • 注意集中による見落としや勘違いが起こる:「ひとつのことに注意が集中することで・周囲の重要な情報を見落とす可能性が高まる」
  • 熟慮的思考が困難になる:「じっくり考えて判断するという思考が難しくなり・直感的・反射的な行動に頼りやすくなる」
  • 大災害時には家族のことが気になる:「家族と連絡を取る・家族を迎えに行く、という行動を優先し・自身の安全確保が後回しになる」

「こうした認知特性があるため・緊急時に初めて行動の判断をしようとしても・適切な行動が取れない可能性が高い」ということです。

北海道大学の研究者は「平常時では当たり前の判断能力が緊急時には期待できないことを十分知っておく必要がある」と強調しています。

緊急時の認知特性への対処法

「緊急時の認知特性への最も有効な対処法は・事前に行動をルール化・習慣化しておくこと」です。

北海道大学の研究者は「揺れを感じたら机の下にもぐるとか・消火器の使い方などの訓練を1年に1度はやっておくべき」と述べています。

「事前に避難経路を探した経験があると・避難に要する時間が短くなるほか・避難時の不安や恐怖が低減し・実際にかかった時間を適切に認知できるようになる」という研究結果があります。

「つまり・平常時にどれだけ具体的に行動を体験・練習しているかが・緊急時の行動の質と速度を決める」ということです。

防災心理学の知見を日常に活かす:実践ガイド

「防災心理学の知見を理解したうえで・日常生活の中で実践できる防災行動」をまとめます。

「島崎准教授が言うように・防災はリスクを下げる取り組みなのでちっとも怖くない」という考え方で取り組むことが大切です。

自分の心理バイアスを認識する

「まず・自分自身が正常性バイアス・多数派同調バイアス・楽観性バイアスを持っていることを認識する」ことがスタートです。

「これらのバイアスは人間の本能に近い機能であり・持っていることは弱さではなく・人間の標準的な心理特性」です。

「バイアスの存在を知ることで・実際の緊急時に『今自分は正常性バイアスが働いているかもしれない』とメタ認知できる」ようになります。

「小さな行動」から始める

「防災心理学の知見によると・大きな意識改革より・小さな具体的な行動の積み重ねが・防災意識と行動を変える」ということがわかっています。

  • 今日できる行動:「自宅のハザードマップを確認する(5分)・非常用袋の場所を確認する(2分)・家族の連絡方法を確認する(5分)」など小さな行動から始める
  • 今週できる行動:「最寄りの避難場所まで歩いてみる・非常食を1食分買い足す・家具転倒防止器具を1か所取り付ける」
  • 今月できる行動:「家族全員で防災会議を開く・非常用持ち出し袋の中身を点検する・ローリングストック(食べながら備える)を始める」

「楽しみながら」防災に取り組む

「島崎准教授の研究が示すように・防災を楽しいものにすることが・継続的な防災行動につながる」という知見があります。

  • 「家族で防災ゲームに取り組む:72時間サバイバルゲーム・備蓄品チェックリストの達成ゲームなど」
  • 「防災をテーマにした親子の話し合いを習慣にする:毎月1日を防災の日として家族で話し合う」
  • 「防災備蓄のローリングストックをゲーム感覚で楽しむ:備蓄食を使ったキャンプ料理・アウトドア料理を楽しむ」
  • 「地域の防災訓練に家族で参加する:参加後においしいものを食べるなど楽しいイベントとセットにする」

地域のつながりを防災に活かす

土木学会誌の研究によると「防災無線から流れる避難指示には応じなかった人が・近所の知り合いの説得に応じて避難した事例は多数報告されている」という知見があります。

「被災者から体験談を聞いていて災害をイメージできたことが・迅速な避難を促した例も多い」という事実もあります。

「つまり・地域のつながり・顔の見える関係が・多数派同調バイアスをプラスの方向に活用できる」ということです。

「隣近所の人と日頃からコミュニケーションを取ること・自治会の防災活動に参加すること・近所の高齢者の安否を確認する習慣を持つこと」が防災心理学的に有効な対策になります。

よくある疑問:Q&A

Q:防災心理学と災害心理学はどう違いますか?

「防災心理学と災害心理学は・ほぼ同義で使われることも多いが・厳密には焦点が異なる」という見解があります。

「災害心理学が災害に対する人間の心理と行動全般(発災前・発災時・発災後)を研究する幅広い学問」であるのに対し「防災心理学は特に防災・減災・人々の安全行動を促進するための実践的応用に重点を置く」という違いがあります。

「どちらも応用心理学の一分野であり・共通の概念(正常性バイアス・リスク認知等)を扱う」ため「実際の使用場面では同じ意味で用いられることが多い」です。

Q:防災心理学を学ぶにはどうすればよいですか?

「防災心理学を体系的に学ぶ方法」はいくつかあります。

  • 書籍で学ぶ:「防災心理学入門(エッセイ集)」(ValueBooks)など防災心理学の入門書が出版されている
  • 大学・大学院で学ぶ:「光華女子大学の災害心理学専攻・東北福祉大学の災害・防災心理学科目」など正規課程で学べる大学がある
  • 防災士の資格を取得する:「防災士の資格取得講座では防災心理学を含む防災の基礎知識を体系的に学べる」
  • オンライン講座・セミナーを活用する:「国立研究開発法人防災科学技術研究所・各都道府県の防災センターが開催する一般向けセミナーを活用する」

Q:防災心理学の知識を地域の防災活動に活かすには?

「防災心理学の知見を地域の防災活動に活かすための具体的なアプローチ」があります。

「『怖がらせる』ではなく『できる・楽しい』を前面に出した啓発活動の設計」が有効です。

「住民が自分ごととして感じられるよう・自分の地域の具体的なリスク情報(ハザードマップ・過去の被害記録)を示す」ことが「リスク認知を高める」効果があります。

「地域の被災経験者に体験談を語ってもらう場を設ける」ことが「土木学会誌が示す通り・臨場感のある体験談が直感的な避難意欲を高める」という効果につながります。

まとめ:防災心理学を知ることが「自分を守る力」になる

「防災心理学とは・人間の心理と行動のメカニズムを理解し・防災・減災のために応用する実践的な学問」です。

この記事で解説した「防災心理学の主要な概念と実践ポイント」をまとめます。

  • 正常性バイアス:「危険でも大丈夫と思い込む心理」。「率先して逃げる・空振りを恐れない・逃げるルールを事前に決める」ことで対抗できる
  • 多数派同調バイアス:「周囲が逃げないから自分も逃げないという集団心理」。「自分が率先避難者になる意識」を持つことが重要
  • リスク認知と認知的不協和:「住み続けることでリスクを低く見積もりやすくなる心理」。「メタ認知で自分の認知の歪みを客観視する」ことが大切
  • メタ認知:「自分の思考・認知・行動能力を客観的に把握する能力」。「防災における自分の理解のギャップと行動すべきことを明確にする」
  • 行動変容アプローチ:「叱るより褒める・怖がらせるより楽しむ」ことが「継続的な防災行動を生む」という実証的な知見がある
  • 緊急時の認知特性:「平常時の判断力は緊急時には使えない」。「事前の体験・訓練・ルール化が緊急時の行動を決める」

「防災は怖いものではなく・リスクを下げる前向きな取り組み」です。

「防災心理学の知識を持って・楽しみながら・家族や地域と一緒に・できることから始める」ことが「いざという時に自分と大切な人の命を守る力」になります。

防災ベースでは今後も「防災に役立つ心理学・科学の最新知見」をわかりやすくお届けします。

Image by Pixabay,Unsplash,Freepik,写真AC

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この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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