渇水とは?取水制限と給水制限の違い|蛇口の水が減るのはどの段階かを防災士が解説

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【この記事の要約】
渇水のニュースで出てくる「取水制限」と「給水制限」は、別のものです。取水制限は川から水を取る量を減らすこと。給水制限は、家庭の蛇口に届く量を減らすことです。取水制限が始まっても、多くの場合は蛇口の水は変わりません。ここを取り違えると、慌てなくていい場面で慌て、備えるべき場面で動けなくなります。この記事では、国土交通省の定義に沿って両者を整理します。そのうえで、制限の段階が上がると生活に何が起きるかを順番に見ていきます。減圧給水、時間給水という言葉の意味も説明します。最後に、いつ備え始めればよいかの判断基準を書きました。地震による断水とは、必要な行動が違います。

渇水のニュースは、地震や台風と比べて、伝わり方が独特です。

ある日突然「第三次取水制限」と言われます。そして多くの人が、こう思います。

「それで、水は出るのか、出ないのか」。

私は防災士として、災害時の水について書いてきました。その中で、渇水はいちばん誤解されやすい災害だと感じています。

理由は単純です。言葉が難しいからです。

取水制限、給水制限、減圧給水、時間給水、貯水率、確保貯留量。どれも日常では使いません。

そしてニュースは、これらを説明せずに使います。

この記事では、言葉の意味を国土交通省の定義で確認しながら、生活に何が起きるかを順番に見ていきます。

目次

結論|取水制限と給水制限は、まったく別のものです

先に答えを書きます。ここだけ覚えて帰っていただいても構いません。

取水制限 給水制限
何を減らすか 川から取る水の量 家庭に届く水の量
蛇口への影響 多くの場合、変わらない 直接、影響する
慌てる必要 まだない ここからが本番

国土交通省関東地方整備局は、それぞれをこう定義しています。

取水制限とは「川からの取水量を制限することです。例えば取水制限10%とは、普段の取水量から10%だけ取水量を減らすことです」。

給水制限とは「水道水の給水量を制限することです。例えば給水制限10%とは普段、一般の家庭や事業所に給水している量から10%だけ給水量を減らすことです」。
(国土交通省関東地方整備局「渇水に関する用語と基礎知識」より)

なぜ、取水制限では蛇口が変わらないのか

ここが分かると、全体の見通しがよくなります。

水は、川から取ったあと、いくつもの段階を経て蛇口に届きます。その途中に、余裕があるからです。

浄水場には水が溜まっています。配水池にも溜まっています。そして水道事業者は、川以外の水源も持っていることがあります。

だから「川から取る量を20%減らせ」と言われても、しばらくは家庭への供給を保てます。

つまり取水制限は、蛇口に届く前の段階で、水の減りを遅らせる仕組みです。

では、いつ慌てるべきなのか

給水制限という言葉が出たときです。

これは水道事業者、つまり市町村が決めます。取水制限を決める主体とは違います。

だから、順番はこうなります。

一、渇水が進む。ダムの貯水率が下がる。

二、取水制限が始まる。第一次、第二次と段階が上がる。この間、蛇口は普通です。

三、それでも足りなくなる。ここで初めて給水制限に進みます。

備え始めるのは、二の段階です。三になってからでは、店の水は売り切れています。

渇水は、ゆっくり進みます

地震や台風と決定的に違う点があります。

予告のある災害です

地震は、前触れなく来ます。台風でも、数日前です。

渇水は、数週間から数か月かけて進みます。

ダムの貯水率は毎日公表されています。下がっていく様子を、誰でも見られます。

これは、防災の観点ではきわめて恵まれた状況です。備える時間が、たっぷりあります。

しかし、だからこそ後回しになります

ここが渇水の難しさです。

「まだ大丈夫」が続きます。そして本当に困る段階になったとき、全員が同時に動きます。

地震のあと、水が店から消えるのと同じことが起きます。違うのは、渇水では「そうなると分かっていたのに」という点だけです。

2026年8月、実際に何が起きているか

言葉の説明だけでは、実感が湧きません。いま進行している事例で見てください。

吉野川水系・早明浦ダム

四国の水がめと呼ばれるダムです。

時点 貯水率
2026年8月27日0時 23.6%
前日(8月26日0時) 25.6%
ダム管理開始以降の平均 80.6%

平均の3分の1を下回っています。そして1日で2.0ポイント下がっています。

この水系では、2026年8月28日9時から第四次取水制限が実施されます。

愛知県の二つの用水

同じ時期、愛知県でも節水対策が進んでいます。

用水(ダム) 開始 削減率 貯水率
愛知用水(牧尾ダム) 8月26日0時・第2回 農業20%/水道10%/工業20% 36.4%
豊川用水(宇連・大島ダム) 8月21日9時・第1回 農業5%/水道5%/工業5% 29.6%

ここで注目していただきたいのは、用途によって削減率が違うことです。

削減率が用途で違う理由

愛知用水を見てください。農業用水と工業用水は20%、水道用水は10%です。

つまり、生活用水は最後まで守られます。

これは意図的な設計です。飲み水と、トイレと、風呂。ここを削ると、命と健康に直結します。

だから先に削られるのは、田んぼの水と、工場の水です。

言い換えれば、水道用水の削減率が上がってきたら、事態は深刻です。ニュースを見るときは、ここを確認してください。

貯水率の見方|数字だけでは判断できません

ニュースで最もよく出るのが貯水率です。しかし、この数字は単独では意味を持ちません。

まず、定義を確認します

貯水率とは「ダムに貯めることができる貯水容量に対して、現在の貯水量の比率で示されます」。
(国土交通省関東地方整備局「渇水に関する用語と基礎知識」より)

単純な割り算です。問題は、この分母が一定ではないことです。

ダムには「季節ごとの持ち場」があります

ここが分かりにくい部分です。

ダムは、水を貯めるだけの施設ではありません。洪水を受け止める役割も持っています。

だから梅雨や台風の時期には、あえて水位を下げて空きを作ります。大雨が来たときに受け止める余地が必要だからです。

逆に、雨の少ない時期には多めに貯めます。

つまり「貯められる量」そのものが、季節によって変わります。

ダムの役割についてはダムの防災における役割とは?洪水調節の仕組みと緊急放流時の行動にまとめました。

だから、見るべきは三つです

一、平年と比べてどうか。同じ50%でも、平年が80%なら深刻、平年が45%なら平常です。

二、下がる速さ。早明浦ダムの例では、1日で2.0ポイント下がっていました。この速度なら、残りが何日分かが計算できます。

三、今後の雨の予報。まとまった雨が一度あれば、貯水率は一気に戻ります。

三つ目が、渇水を分かりにくくしています。

数か月かけて下がった貯水率が、台風一つで回復することがあります。だから「危ないと言われたのに何も起きなかった」という経験が積み重なります。

そして次の渇水で、備えが遅れます。

制限の段階が上がると、何が起きるか

取水制限の次数は、水系ごとに基準が決められています。全国共通の数字ではありません。

川の大きさ、ダムの容量、雨の降り方。条件が違うので、基準も違います。

ですから「第三次だから何%」と一律には言えません。お住まいの水系の発表を確認してください。

それでも、進み方の型は共通です

段階 起きること 家庭への影響
節水の呼びかけ 広報や報道で協力を求める なし
取水制限(初期) 農業・工業から削減が始まる ほぼなし
取水制限(進行) 次数が上がり、削減率が増える まだ出る。備えを始める段階
減圧給水 送る水圧を下げる 出が悪くなる
時間給水 給水する時間帯を限る 出ない時間ができる
運搬給水 給水車での配給 並んで受け取る生活

減圧給水とは何か

減圧給水とは「水道水を給水する圧力を下げて水の出る量を少なくすることです」。
(国土交通省関東地方整備局「渇水に関する用語と基礎知識」より)

蛇口をひねれば水は出ます。ただし、勢いが弱くなります。

これは地味ですが、生活の細部に効いてきます。

洗濯機は、給水に時間がかかります。普段より長く回ることになります。

シャワーの勢いが落ちます。体を洗う時間が延び、結果として使う水は増えかねません。

そして、いちばん影響が出やすいのがマンションの上の階です。

マンションの高層階で、先に出なくなります

これは知っておいてください。

水圧が下がると、高いところまで水を押し上げる力が足りなくなります。

同じ建物の中でも、1階では普通に出て、最上階では細くしか出ない。そういう差が生まれます。

ポンプで汲み上げている建物なら、ポンプが補ってくれる場合もあります。ただし、それも元の水圧次第です。

マンションの水まわりの弱点はマンションの断水は停電で起きるにまとめました。

時間給水とは何か

時間給水とは「普段は24時間毎日水道水は給水されていますが、その給水する時間を制限することです」。
(国土交通省関東地方整備局「渇水に関する用語と基礎知識」より)

ここからは、生活の設計を変える必要があります。

たとえば「夜10時から朝6時まで断水」といった形になります。

すると、こうなります。

夜中にトイレを流せません。これがいちばん影響が大きい。

朝の支度の時間が、給水再開に左右されます。

出る時間帯に、汲み置きをする生活になります。

時間給水になったら、まずやること

三つです。

一、浴槽に水を張る。出ている時間に必ず溜めてください。トイレを流す水になります。

二、飲用の水を、別に確保する。浴槽の水は飲めません。

三、給水の時間帯を家族全員が知っておく。「あと1時間で止まる」が分かれば、動き方が変わります。

渇水の断水と、地震の断水は違います

このサイトでは断水について何本も書いてきました。しかし、渇水の場合は前提が違います。

地震・災害の断水 渇水の給水制限
始まり方 突然 予告される
水の状態 まったく出ない 出るが、量や時間が限られる
下水 止まっていることがある 使える
期間 数日〜数週間 数週間〜数か月
買い物 店も被災している 店は普通に開いている

いちばん大きな違いは、下水です

地震のあとは、排水管が壊れている可能性があります。だからトイレを流してはいけません。流すと、下の階や地面に汚水があふれます。

渇水では、そこは無事です。水さえあれば、流して構いません。

これは大きな違いです。渇水では、携帯トイレを大量に用意する必要はありません。浴槽に水を溜めておけば、流せます。

断水そのものへの対応は断水したらどうする?発生直後から復旧までの行動にまとめました。

そして、店は開いています

ここも活かしてください。

地震では、店が被災し、物流も止まります。渇水では、そのどちらも起きません。

つまり「早く動けば、普通に買える」ということです。

問題は、全員が同じ日に動くことです。だから、一段階早く動く人だけが、落ち着いて準備できます。

いつ備え始めるか|判断の基準を決めておく

渇水でいちばん難しいのは、この判断です。

早すぎると無駄になり、遅すぎると買えません。

私が基準にしているのは、二つです

一、水道用水の削減率が動いたとき。

前に書いたとおり、生活用水は最後まで守られます。そこに手がついたということは、余裕がなくなってきた合図です。

二、貯水率が平年の半分を割ったとき。

絶対値ではなく、平年との比較です。平年80%のところが40%を割ったら、動きます。

どちらか一方でも当てはまれば、私は買い物に行きます。

「取水制限」の報道だけでは、動きません

これは断っておきます。

第一次取水制限は、比較的よくあることです。そのたびに買い出しをしていたら、家が水だらけになります。

取水制限は、あくまで状況を知らせる情報として受け取ってください。

そして、そこから貯水率と削減率の推移を見始める。これが正しい使い方です。

備えるものは、地震のときとは変わります

渇水の備えは、量より配分です。

飲む水は、思ったほど要りません

意外に思われるかもしれません。

給水制限は、多くの場合削減であって、ゼロではありません。時間給水になっても、出る時間帯があります。

だから数日間まったく水がない、という状況は起きにくいのです。

2リットルのペットボトルを数本。まずはそれで足ります。

むしろ要るのは、水を「溜める」ものです

もの 役割
浴槽(すでにある) 最大の貯水槽。トイレ用
ポリタンク・給水袋 出る時間に汲んでおく
ふた付きのバケツ 掃除・洗濯の予洗い用
ペットボトル(空も可) 飲用の小分け

「水がない」のではなく「出る時間が限られる」のが渇水です。だから、出るときに受け止める道具が要ります。

折りたためる給水袋なら、使わないときに場所を取りません。普段はしまっておけます。

容器の扱いは給水車・給水所の使い方|容器は10リットル以下、水は3日で使い切るにまとめました。

水を使わずに済ませる道具

ここが、渇水対策の本体です。

もの 減らせる水
ラップ 皿を洗う水
紙皿・紙コップ 同上
ウェットティッシュ 手洗いの一部
ドライシャンプー 洗髪の頻度
無洗米 米を研ぐ水

どれも100円ショップやスーパーで買えます。合計しても、たいした金額になりません。

とくに無洗米は、渇水と相性がいいと考えています。普段の食事のまま、研ぎ水がまるごと不要になります。味も普通の米と大きく変わりません。

普段の米を無洗米に替えておくだけで、渇水のときに何もしなくて済みます。備蓄ではなく、置き換えです。

やってはいけないこと

買い占める

これがいちばんよくありません。

渇水は、店が被災していません。物流も止まっていません。つまり、供給に問題はありません。

にもかかわらず棚が空になるのは、買い占めが起きるからです。

そして棚が空になると、本当に必要な人が買えなくなります。持病があって水が要る方、乳児がいる家庭、高齢の方。

早めに、適量を買う。これが結果的にいちばん賢い方法です。

浴槽の水を飲む

繰り返します。浴槽に張った水は、飲用にはできません。

トイレを流す、床を拭く、といった生活用水としてなら十分に使えます。

飲用と生活用は、必ず分けてください。

井戸水を、確認せずに飲む

渇水になると、井戸を思い出す方がいます。

しかし、飲用に適しているかどうかは検査しないと分かりません。見た目や匂いでは判断できません。

生活用水として使うのは構いません。飲用にするかどうかは、水質検査の結果に従ってください。

「自分の地域は関係ない」と決めつける

水道の水は、必ずしも近くの川から来ているとは限りません。

遠くのダムから、長い管を通って届いていることがあります。

だから「うちの近くの川は流れているから大丈夫」とは言えません。自分の水がどこから来ているかは、水道局のサイトで確認できます。

農業と工業への影響も、生活に返ってきます

ここは見落とされがちです。

先に削られるのは、田んぼの水です

愛知用水の例では、農業用水が20%削減されていました。

これはその年の収穫に影響します。米や野菜の値段は、少し遅れて動きます。

つまり渇水の影響は、制限が解除されたあとに、食費という形で表れます。

工業用水が止まると、品薄が起きます

工場は、大量の水を使います。

削減が続けば、生産を落とすことになります。結果として、特定の製品が手に入りにくくなります。

これも、渇水そのものが終わってから効いてきます。

だから渇水は「水が出る・出ない」だけの問題ではありません。数か月にわたって、暮らしの周辺に影響が残ります。

自分の水が、どこから来ているかを調べる

これが、渇水対策でいちばん実用的な一手です。そして、ほとんどの人がやっていません。

なぜ、これが効くのか

渇水のニュースは、全国の話として流れてきます。「西日本で渇水」「東海で節水」。

しかし、あなたに関係があるのは自分の水がどこから来ているか、その一点だけです。

同じ県の中でも、地域によって水源は違います。隣町が取水制限でも、自分の町は無関係ということが普通に起きます。

逆もあります。自分の県のニュースになっていなくても、遠いダムの水を使っていることがあります。

調べ方は、三つあります

一、水道局のサイトを見る。「水源」「浄水場」といった項目に書かれています。多くの自治体が公開しています。

二、水道料金の検針票や広報紙を見る。水源の説明が載っていることがあります。

三、水道局に電話で聞く。確実です。「うちの地区の水源はどこですか」と聞けば教えてくれます。

一度調べれば、以後ずっと使えます。5分の手間です。

調べたら、そのダムを一つ覚えてください

ダムの貯水率は、毎日公表されています。

国土交通省、水資源機構、各都道府県。それぞれが自分の管理するダムの数字を出しています。

ニュースを追う必要はありません。夏に一度か二度、自分のダムの数字を見るだけで十分です。

そして平年値と比べる。それだけで、備えるべきかどうかが判断できます。

渇水が起きやすい年には、特徴があります

予測はできません。ただし、注意しておくべき兆候はあります。

冬の少雪

これは意外に知られていません。

山に積もった雪は、春に溶けて川に流れます。つまり雪は、天然のダムです。

雪が少ない冬のあとは、春から初夏にかけて川の水量が伸びません。

そこに梅雨の雨が少なければ、夏を迎える前に貯水率が下がります。

空梅雨

梅雨は、日本のダムにとって最大の補給期間です。

ここで降らないと、夏を越せません。

梅雨明けが早い年、梅雨の雨量が少ない年。この年の夏は、渇水を意識しておく価値があります。

台風が来ない年

これは複雑な話です。

台風は災害をもたらします。しかし同時に、ダムに水を運ぶ役割も果たしています。

台風が日本に近づかない年は、災害は減りますが、水は減ります。

だから「今年は台風が来なくて良かった」という年の秋には、貯水率を確認しておくとよいと考えています。

渇水と猛暑は、重なります

そして、これがいちばん厄介です。

雨が降らない年は、晴れの日が続く年です。つまり気温が上がります。

渇水と猛暑が同時に来ると、水を節約したい気持ちと、水分を取らなければいけない事情が、正面からぶつかります。

ここでの答えは一つです。飲む水は減らさない。減らすのは、洗う水と流す水です。

熱中症の危険が高い日には、節水よりも体調が優先です。ここを取り違えないでください。

家族の状況で、優先が変わります

小さなお子さんがいる家庭

ミルクを作る水が要ります。ここは削れません。

時間給水になる前に、飲用の水を多めに確保してください。粉ミルクに使う水は、製品の指示に従ってください。

そして、おむつの替えが増える可能性を考えてください。手を洗う水が限られると、おしりふきの消費が増えます。

高齢のご家族がいる家庭

水分を控えてしまうことが、いちばんの危険です。

「水が貴重だから」と飲む量を減らす。これは脱水につながります。

渇水は夏に起きやすい。つまり熱中症の季節と重なります。

飲む水だけは、絶対に節約の対象にしないでください。減らすのは、洗う水と流す水です。

持病がある方

人工透析を受けている方にとって、水は治療そのものに関わります。

また、水分摂取量に指示がある方もいます。

こうした個別の判断については、必ず主治医にご相談ください。この記事は一般的な備えの話であって、治療の指示ではありません。

ペットがいる家庭

ペットの飲み水も、削れません。人の分と合わせて確保してください。

そして、トイレシートの予備を増やしておくと、洗う手間が減ります。

節水は、どこから手をつけるか

詳しくは別の記事にまとめますが、優先順位だけ書いておきます。

東京都水道局の「令和3年度 一般家庭水使用目的別実態調査」では、家庭で使う水の内訳は風呂がおよそ4割で最も多く、次いでトイレが約2割と報告されています。洗濯と炊事が、それぞれ1割台で続きます。

使う場所 量の多さ 渇水で減らしやすいか
風呂・シャワー 最も多い 減らせるが、ゼロにはできない
トイレ 2番目 浴槽の水で丸ごと置き換えられる
洗濯 3番目 まとめ洗いで減らせる
炊事 4番目 工夫の余地が大きい
洗面・手洗い 少ない 量は少ないが回数が多い

飲用は、この表に入っていません。減らす対象ではないからです。

最初に手をつけるのは、トイレです

量がいちばん多いのは風呂です。それでも、私が最初にすすめるのはトイレです。

理由は、置き換えが効くからです。

風呂は、減らすことはできても、なくすことはできません。体は洗う必要があります。

一方トイレは、浴槽に張った水で丸ごと代用できます。水道から使う量を、ここだけはゼロに近づけられます。

量が2番目でも、削減できる割合がいちばん大きい。だからここから始めます。

ただし注意があります。タンクにペットボトルを入れる方法は、おすすめしません。

流す水が足りず、詰まりの原因になることがあります。メーカーが想定していない使い方です。

バケツで直接流すほうが、確実です。

渇水が終わったあとに、やること

ここも書いておきます。

汲み置きの水は、処分してください

長く置いた水は、飲用には向きません。

掃除や庭の水やりに使って、入れ替えてください。

備えたものを、しまい込まない

渇水が終わると、安心して片づけてしまいます。

しかし渇水は、同じ水系で繰り返し起きます。

ポリタンクも、ラップも、無洗米も、普段使うか、取り出しやすい場所に置いておいてください。

自分の水源を、覚えておく

今回の渇水で、自分の水がどのダムから来ているかを調べたはずです。

それを覚えておいてください。次からは、そのダムの貯水率だけを見ればよくなります。

ニュースで全国の話を聞くより、自分の水系を一つ追うほうが、はるかに実用的です。

よくある質問

Q. 取水制限が出たら、すぐ水を買うべきですか

第一次の段階では、まだ必要ありません。

ただし、そこから貯水率と削減率を見始めてください。水道用水の削減率が動いたら、そのときに買います。

Q. どのくらいの水を用意すればいいですか

地震の備えほどは要りません。渇水では完全にゼロにはならないからです。

飲用として2リットル×数本。そのうえで、汲み置きの容器を用意するほうが実用的です。

Q. 減圧給水と時間給水、どちらが先ですか

減圧給水が先です。水圧を下げても足りない場合に、時間給水へ進みます。

Q. 時間給水になったら、トイレはどうしますか

浴槽に張った水をバケツで流してください。

渇水では下水道が生きています。地震のときと違って、流して構いません。

Q. マンションですが、何か違いはありますか

高い階ほど、先に出が悪くなります。水圧が下がるためです。

出る時間帯に汲み置きをしておく必要が、戸建てより高くなります。

Q. 給水車は来ますか

時間給水でも足りない段階になれば、運搬給水が行われることがあります。

ただし、そこまで進む前に雨で回復する場合がほとんどです。過度に心配する必要はありません。

Q. 井戸があります。使えますか

生活用水としてなら使えます。飲用にするかどうかは、水質検査の結果によります。

見た目や匂いでは判断できません。

Q. 節水すると、水道料金は下がりますか

使用量が減れば、料金は下がります。

ただし、渇水が長引くと料金体系そのものが見直される場合もあります。自治体の発表を確認してください。

Q. なぜ農業用水から先に削るのですか

生活用水を最後まで守るためです。

飲み水と衛生に直結する水を削ると、命と健康に影響します。だから順番が決められています。

Q. 貯水率が0%になったら、どうなりますか

貯水率は「利水のために使える水」の割合です。0%でも、ダムに水がまったくないわけではありません。

ただし、そこからは供給を絞る以外の手段がなくなります。

Q. 雨が降れば、すぐ解除されますか

まとまった雨が降れば、貯水率は短期間で回復します。

ただし、解除の判断は水系ごとの協議会が行います。雨が降った翌日に解除されるとは限りません。

Q. この記事の情報はいつ時点のものですか

2026年8月27日時点で公表されていた情報をもとに書いています。貯水率や制限の状況は日々変わります。

最新の状況は、国土交通省の渇水情報や、お住まいの自治体・水道局の発表をご確認ください。

まとめ

渇水でいちばん大事なのは、言葉を取り違えないことです。

取水制限は、川から取る水を減らすこと。多くの場合、蛇口は変わりません。

給水制限は、家庭に届く水を減らすこと。ここからが生活への影響です。

そして進み方には順番があります。減圧給水で水圧が下がり、次に時間給水で出ない時間ができます。

備え始めるタイミングは、二つの合図で判断してください。

一、水道用水の削減率が動いたとき。生活用水は最後まで守られる決まりなので、ここに手がついたら深刻です。

二、貯水率が平年の半分を割ったとき。絶対値ではなく、平年との比較で見ます。

用意するものは、地震のときとは違います。大量の飲料水より、水を溜める容器と、水を使わずに済ませる道具です。

浴槽、ポリタンク、ラップ、紙皿、無洗米。これで、使う水はかなり減らせます。

そして渇水には、他の災害にない利点があります。予告されることです。

ダムの貯水率は毎日公表されています。店も物流も無事です。早く動けば、落ち着いて準備できます。

今日できることを、ひとつだけ書きます。

自分の家の水が、どのダムから来ているかを調べてください。水道局のサイトに書いてあります。

それが分かれば、次からはそのダムの数字だけを見ればよくなります。全国のニュースを追う必要がなくなります。

断水全般への備えは断水対策おすすめ完全ガイドにまとめました。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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