【この記事の要約】
被災したあと、最初にやるべきことは片付けではありません。写真を撮ることです。片付けてしまうと被害を証明できず、保険金も支援金も受け取れなくなる恐れがあります。そのうえで、時期ごとにやることが決まっています。数日以内に罹災証明書の申請、1か月以内に保険の請求と支援金の申請、その後に住まいの再建です。被災者生活再建支援制度では、住宅が全壊して建て直す場合、基礎支援金100万円と加算支援金200万円で最大300万円が支給されます。ただし申請には期限があり、基礎支援金は13か月、加算支援金は37か月です。この記事では、被災直後から生活再建までの流れを時系列で整理します。
結論:片付ける前に、必ず写真を撮ってください
先に、最も重要なことをお伝えします。
被災した家を見たとき、多くの方はすぐ片付けたくなります。散乱した家具、濡れた床、割れたガラス。一刻も早く元の暮らしに戻りたいという気持ちは当然のものです。
しかし、その前に写真を撮ってください。
なぜ写真が必要なのか
理由は2つあります。
ひとつは、保険金の請求に必要だからです。損害保険会社は被害の状況を確認したうえで支払額を決めます。片付けたあとでは、どの程度の被害だったかを示せません。
もうひとつは、罹災証明書のためです。市区町村の職員が被害を確認しますが、調査までに時間がかかることがあります。その間に片付けてしまえば、実際より軽い判定になる可能性があります。
罹災証明書の判定は、支援金の額を直接左右します。金額にすれば数十万円から数百万円の差になりえます。
どう撮ればよいか
難しく考える必要はありません。次を意識してください。
- 建物の外観を四方向から撮る
- 浸水した場合は、水位の跡が分かるように撮る
- メジャーや身近な物を当てて、高さや大きさが分かるようにする
- 部屋ごとに全体と細部の両方を撮る
- 壊れた家財も個別に撮る
- 表札や住所が分かるものも撮っておく
枚数は多いほうがよいと考えてください。あとから足りないと気づいても、撮り直せません。片付けたあとでは、二度と同じ状況を再現できないのです。
迷ったら撮る。この判断で構いません。撮りすぎて困ることはありません。
撮影のあとは、データを複数の場所に保存してください。スマートフォンが壊れれば、証拠も失われます。
被災後の流れを時系列で見る
全体像を最初に示しておきます。何がいつ必要になるかが分かっていれば、慌てずに進められます。
| 時期 | 主にやること |
|---|---|
| 当日〜3日 | 安全の確保、写真撮影、安否連絡、避難先の決定 |
| 3日〜1週間 | 罹災証明書の申請、片付けの開始、災害ごみの搬出 |
| 1週間〜1か月 | 保険の請求、支援金の申請、支払いの猶予手続き |
| 1か月〜数か月 | 住まいの修理・再建、仮設住宅の入居、公費解体の申請 |
| 数か月以降 | 加算支援金の申請、ローンの見直し、生活の立て直し |
この順番には意味があります。証拠を残し、公的な証明を取り、それをもとに支援を受ける。この流れを崩すと、手続きが進まなくなります。
フェーズ1:当日から3日
この時期に最優先すべきは、安全の確保です。手続きはすべて後回しで構いません。
建物に入る前の確認
被災した建物には、目に見えない危険があります。
- 建物が傾いていないか
- 壁や柱に大きなひび割れがないか
- ガス臭くないか
- 電線が垂れ下がっていないか
- 天井や壁が崩れかけていないか
少しでも危険を感じたら、入らないでください。財産より命が優先です。
地震の場合は、応急危険度判定という制度があります。建物に赤・黄・緑の紙が貼られます。赤は危険、黄は要注意という意味です。判定を待ってから入るのが安全です。
地震に固有の注意点は地震で被災した後にやること|赤い紙の意味と、余震のなかで安全に片付ける方法で詳しく扱っています。
ライフラインの確認
電気、ガス、水道の状態を確認してください。
特に注意したいのがガスです。においがしたら、火を使わず、換気して、すぐに事業者へ連絡してください。
電気については、通電火災という危険があります。停電が復旧したときに、傷んだ配線や倒れた電化製品から出火する事故です。避難する際は、ブレーカーを落としてから離れてください。
詳しくは停電復旧後にやること|通電火災を防ぐブレーカー操作の順番と家電の戻し方で解説しています。
安否の連絡
家族や親戚に、無事を伝えてください。
電話はつながりにくくなります。災害用伝言ダイヤル171や、各社の災害用伝言板を使ってください。
使い方は171の使い方を完全解説|災害用伝言ダイヤルで家族の安否を確認する方法にまとめています。
避難先を決める
自宅で過ごせるのか、避難所へ行くのか。この判断が必要になります。
建物が安全で、水と食料があるなら、在宅避難という選択肢もあります。判断の基準は【災害時】避難所へ行くべきか自宅に残るべきか?正しい判断基準と在宅避難・避難所避難の全知識2026年版で整理しています。
フェーズ2:3日から1週間
手続きが始まる時期です。同時に、片付けにも着手します。
罹災証明書を申請する
これが、被災後の手続きの起点になります。
罹災証明書とは、住まいの被害の程度を市区町村が証明する書類です。支援金、税の減免、仮設住宅の入居、災害援護資金の貸付。ほとんどの支援がこの書類を前提としています。
被害の程度は6つに分かれます
判定は、住宅がどれだけ損害を受けたかの割合で決まります。
| 区分 | 損害割合 |
|---|---|
| 全壊 | 50%以上 |
| 大規模半壊 | 40%以上50%未満 |
| 中規模半壊 | 30%以上40%未満 |
| 半壊 | 20%以上30%未満 |
| 準半壊 | 10%以上20%未満 |
| 準半壊に至らない(一部損壊) | 10%未満 |
この区分によって、受けられる支援が変わります。だから写真が重要なのです。
申請の手順、必要なもの、そして判定に納得できないときの再調査の頼み方は罹災証明書の申請方法|判定6区分と、納得できないときの再調査の頼み方で詳しく解説しています。
たとえば大規模半壊と中規模半壊では、基礎支援金の有無が分かれます。わずかな判定の差が、50万円の違いになります。
応急危険度判定とは別のものです
混同されやすい点です。
応急危険度判定は、建物に入っても安全かを短時間で判断するものです。二次災害を防ぐことが目的で、支援とは関係ありません。
罹災証明書は、支援を受けるための被害の認定です。別の制度であり、赤い紙が貼られたからといって自動的に全壊と認定されるわけではありません。
片付けと災害ごみ
写真を撮り終えたら、片付けを始められます。
災害で出たごみは、通常のごみとは扱いが異なります。多くの自治体が仮置き場を設け、分別のルールを示します。自治体の案内を確認してから運んでください。
作業の際は、必ず手袋、長靴、マスクを着用してください。破片で怪我をする、粉じんを吸い込むといった危険があります。
分別の仕方と仮置き場の使い方は災害ごみの出し方|仮置き場の使い方と、分別が復旧を早める理由にまとめました。
装備と消毒剤の使い分けは被災後の片付けと消毒|順番を守らないと効かない理由と薬剤の使い分けをご覧ください。
フェーズ3:1週間から1か月
金銭に関わる手続きの時期です。ここを逃すと、受けられるはずの支援を失います。
保険の請求
火災保険や地震保険に加入していれば、まず保険会社へ連絡してください。
火災保険は、火事だけでなく風水害も対象になっている場合があります。契約内容を確認してください。地震による被害は、地震保険でなければ補償されません。
詳しくは地震保険とは?補償内容・保険料・加入の判断基準を徹底解説をご覧ください。
被災者生活再建支援金
公的な支援の中心となる制度です。金額を整理します。
| 区分 | 支給額 |
|---|---|
| 基礎支援金(全壊・解体・長期避難) | 100万円 |
| 基礎支援金(大規模半壊) | 50万円 |
| 加算支援金(建設・購入) | 200万円 |
| 加算支援金(補修) | 100万円 |
| 加算支援金(賃借) | 50万円 |
全壊した住宅を建て直す場合、100万円と200万円で合計300万円が上限になります。
注意点が2つあります。
ひとつは、単身世帯では金額が4分の3になることです。全壊して建て直す場合、75万円と150万円で225万円となります。
もうひとつは、中規模半壊は基礎支援金の対象外だという点です。加算支援金のみが支給されます。
申請には期限があります
これを知らずに逃す方がいます。
| 支援金 | 申請期限 |
|---|---|
| 基礎支援金 | 災害発生日から13か月以内 |
| 加算支援金 | 災害発生日から37か月以内 |
期限は延長される場合もありますが、あてにしないでください。早めに動くことをおすすめします。
支払いの猶予を相談する
収入が途絶えたり、支出が増えたりする時期です。
被災した場合、次のような支払いについて猶予や減免の相談ができます。
- 電気・ガス・水道などの公共料金
- 国民健康保険料、国民年金保険料
- 所得税、住民税、固定資産税
- 携帯電話の料金
- 住宅ローンの返済
いずれも、申し出なければ適用されません。黙っていると通常どおり請求されます。
罹災証明書を持って、それぞれの窓口に相談してください。
フェーズ4:1か月から数か月
住まいをどうするかを決める時期です。
選択肢を整理する
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 自宅を補修して住む | 応急修理制度が使える場合がある |
| 建て直す | 加算支援金200万円の対象 |
| 賃貸に移る | 加算支援金50万円の対象 |
| 応急仮設住宅に入る | 建設型と、民間賃貸を借り上げる型がある |
この判断は、家族の状況や資金によって変わります。焦って決める必要はありませんが、期限のある制度もあるため、情報だけは早く集めてください。
仮設住宅と応急修理は原則としてどちらか一方しか選べません。判断の基準は応急仮設住宅と住宅の応急修理|原則どちらか一方、選び方の判断基準で詳しく整理しています。
公費解体という制度
大きな災害では、自治体が費用を負担して被災家屋を解体する制度が設けられることがあります。
対象や条件は災害ごとに決まります。自分で業者に頼んで解体したあとでは対象外になることもあるため、先に自治体へ確認してください。
住宅ローンが残っている場合
家を失っても、ローンは残ります。これが二重ローンの問題です。
この場合、自然災害債務整理ガイドラインという仕組みがあります。一定の条件を満たせば、ローンの減額や免除を受けられる可能性があります。
この手続きは、自己破産とは異なり、信用情報に登録されません。専門家の支援も無料で受けられます。
該当しそうであれば、金融機関または弁護士会に相談してください。
制度の中身は災害で住宅ローンが残ったら|信用情報に載らない被災ローン減免制度で解説しています。
期限のある手続きをまとめます
被災後に見落とされやすいのが、期限です。主なものを整理します。
| 手続き | 期限の目安 |
|---|---|
| 罹災証明書の申請 | 災害発生から数か月以内(自治体が定める) |
| 被害認定への再調査の依頼 | 証明書の交付後、なるべく早く |
| 基礎支援金の申請 | 13か月以内 |
| 加算支援金の申請 | 37か月以内 |
| 保険金の請求権 | 一般に3年 |
| 災害弔慰金の申請 | 自治体が定める |
罹災証明書の申請期限は自治体によって異なります。まず窓口で確認してください。
判定に納得できないとき
罹災証明書の判定に不服がある場合、再調査を依頼できます。
一次調査は外観のみで判断されることがあります。二次調査では、室内に立ち入って詳しく確認します。
判定が一段階変わるだけで、支援金の額が大きく変わることがあります。実際の被害と食い違うと感じたら、遠慮せずに申し出てください。
使える支援制度の一覧
支援金以外にも、いくつもの制度があります。知られていないものが多いため、まとめて挙げます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 災害弔慰金 | 災害で家族を亡くした遺族に支給される |
| 災害障害見舞金 | 災害で重い障害が残った場合に支給される |
| 災害援護資金 | 生活の再建に必要な資金の貸付 |
| 住宅の応急修理制度 | 自治体が業者に依頼し、最低限の修理を行う |
| 応急仮設住宅 | 建設型と、民間賃貸を借り上げる型がある |
| 生活福祉資金の特例貸付 | 当面の生活費の貸付 |
| 義援金 | 寄せられた寄付を被災者へ配分する |
| 税の減免・猶予 | 所得税、住民税、固定資産税など |
これらは災害の規模や自治体によって、適用の可否が変わります。
災害弔慰金、災害障害見舞金、災害援護資金の金額と要件は災害弔慰金・障害見舞金・援護資金|金額と、申請しないと受け取れない理由にまとめました。
なお、報道でよく聞く激甚災害の指定は、個人への給付を決めるものではありません。仕組みは激甚災害とは?指定されても個人に給付はない|本激と局激の違いも解説で整理しています。
応急修理制度には注意点があります
自宅に住み続けるために、最低限の修理を公費で行う制度です。屋根、外壁、床、トイレなど、生活に不可欠な部分が対象になります。
ただし、原則として応急仮設住宅との併用はできません。どちらを選ぶかを決める必要があります。
また、自分で先に修理を発注してしまうと対象外になることがあります。必ず先に自治体へ確認してください。
義援金と支援金は別のものです
混同されやすい点です。
支援金は法律にもとづく公的な給付で、金額や条件が定まっています。義援金は寄付を集めて配分するもので、金額はその都度決まります。
どちらも受け取れます。片方を受けたからもう片方が減る、ということはありません。
情報はどこで得るか
制度は数が多く、内容も変わります。次の経路を使ってください。
- 市区町村の窓口(被災者支援の相談窓口が設けられます)
- 自治体の広報紙・公式サイト
- 避難所に掲示される案内
- 社会福祉協議会
- 弁護士会の無料相談
最初の窓口が最も確実です。まとめて相談できるよう、罹災証明書と本人確認書類を持って行ってください。
被災後に増える詐欺と便乗商法
残念ながら、災害のあとには必ず現れます。
典型的な手口
- 公的機関を名乗って個人情報や現金を求める
- 「今すぐ修理しないと危険」と不安をあおって高額な契約を結ばせる
- 「保険金で無料になる」と持ちかける
- 義援金と称して寄付を求める
- 解体や片付けを法外な価格で請け負う
共通しているのは、急がせることです。「今日中に決めてください」と言われたら、いったん断ってください。
身を守る方法
次の3つを守れば、大半は防げます。
- その場で契約しない。必ず持ち帰って検討する
- 複数の業者から見積もりを取る
- 不審に思ったら消費生活センターに相談する
公的機関が現金を要求することはありません。この一点を覚えておくだけでも、多くの被害を防げます。
特に多いのが、台風のあとの屋根修理をめぐるトラブルです。手口と対処は台風で被災した後にやること|屋根に登らない理由と修理業者トラブルの防ぎ方にまとめました。
手口の詳細は震災詐欺の手口と対策|義援金詐欺・修理詐欺から身を守る方法で解説しています。
被災前に準備しておけること
ここまで読んで、手続きの多さに驚かれたかもしれません。
実は、被災する前にやっておけることがあります。どれも数分で終わります。
1. 家の中を撮影しておく
最も効果が大きい準備です。
平常時の家の様子を、部屋ごとに撮影しておいてください。被災後の写真と比べれば、何がどれだけ失われたかが一目で分かります。
家財の損害を保険で請求する際にも役立ちます。高価な家電や家具は、個別に撮っておくとより確実です。
2. 保険証券の内容を確認する
火災保険が風水害を対象にしているか。地震保険に入っているか。補償の上限はいくらか。
被災してから調べるより、今のほうがはるかに簡単です。証券は写真に撮ってデータでも保管しておいてください。
3. 重要書類をまとめておく
手続きには本人確認書類が必要になります。次のものを、すぐ持ち出せる場所にまとめてください。
- 本人確認書類の写し
- 保険証券の写し
- 預金通帳の口座番号を控えたもの
- 住宅の登記事項証明書や賃貸契約書の写し
- 持病の薬の情報
原本を持ち出せない場合に備え、写真を撮ってデータで保管しておく方法もあります。
4. 家族で役割を決めておく
被災後は、やることが一度に押し寄せます。
誰が写真を撮るか、誰が役所へ行くか、誰が子どもを見るか。あらかじめ決めておけば、混乱が減ります。
手続きを進めるときのコツ
実務的な助言をいくつか挙げます。
記録を残す
いつ、どこの窓口で、誰に、何を相談したか。ノートに書いておいてください。
被災後は複数の窓口を回ることになります。担当者が変わるたびに一から説明するのは大きな負担です。記録があれば、その手間が減ります。
また、言った言わないの行き違いを防ぐ効果もあります。
コピーを取っておく
提出する書類は、必ず控えを残してください。
再提出を求められることがあります。また、別の手続きで同じ書類が必要になることも珍しくありません。
一度で終わらせようとしない
被災後の手続きは、数か月にわたります。
一日で全部を済ませるのは不可能です。優先順位をつけ、期限の近いものから片付けてください。
体力にも限りがあります。疲れているときの判断は誤りやすくなります。
分からなければ聞く
制度は複雑で、専門家でも全体を把握するのは難しいものです。
市区町村の相談窓口、社会福祉協議会、弁護士会の無料相談。使える窓口はいくつもあります。
「こんなことを聞いてよいのか」と遠慮する必要はありません。窓口は、そのために設けられています。
心と体の負担を軽く見ないでください
手続きの話ばかりしてきましたが、これが最も大切かもしれません。
疲れは遅れて出ます
被災直後は、緊張状態が続きます。多くの方が「意外と大丈夫だった」と感じます。
しかし、数週間から数か月してから、疲れや不調が現れることがあります。眠れない、食事が喉を通らない、以前は気にならなかったことに苛立つ。こうした変化は珍しくありません。
これは異常なことではありません。大きな出来事のあとに起きる、自然な反応です。
無理をしない
片付けも手続きも、一気に終わらせようとしないでください。
被災後の作業は、体力的にも精神的にも重いものです。休みを入れ、人に頼ってください。
災害後の心理については災害心理学とは?正常性バイアス・PTSD・避難行動・サイコロジカルファーストエイドまで徹底解説【防災ベース】で詳しく扱っています。
相談先があります
自治体の保健センター、こころの健康相談窓口、災害派遣精神医療チームなど、支援の仕組みがあります。
「まだ大丈夫」と思っているうちに相談するほうが、回復は早くなります。
私が北海道で見てきたこと
私は札幌に住んでいます。2018年の胆振東部地震では、全道が停電するブラックアウトを経験しました。
手続きを知らない方が多い
あのとき知人から相談を受けて感じたのは、制度を知らない方が非常に多いということでした。
罹災証明書という言葉を初めて聞いた、という方もいました。支援金に期限があることも、ほとんど知られていませんでした。
備えの情報は広く共有されています。しかし、被災したあとの手続きについては、事前に知る機会がほとんどありません。
知っておくのは今です
被災してから調べるのでは、遅い場面があります。
特に写真の撮影は、片付ける前でなければ間に合いません。この一点だけでも、事前に知っているかどうかで結果が変わります。
この記事を、被災していない今のうちに読んでいただきたいと考えています。
誰にでも起こりうることです
日本に住む以上、災害と無関係でいられる地域はありません。
そして被災は、備えの有無だけで決まるものではありません。運の要素も大きく働きます。
だからこそ、公的な支援の仕組みがあります。遠慮せず、堂々と使ってください。それは権利です。
「うちは大したことない」と思わないでください
相談を受けていて多いのが、この反応です。
「もっとひどい人がいるから」と、申請をためらう方がいます。気持ちは理解できます。しかし、支援は他人と比べて決まるものではありません。
被害の程度に応じた制度が用意されています。一部損壊であっても、使える支援があります。
まずは罹災証明書を申請し、窓口で相談してください。判断するのは、そのあとで構いません。
備えは被災後にも効きます
防災というと、被災を防ぐことだと考えられがちです。
しかし本当に重要なのは、被災したあとに立ち直れるかどうかです。備蓄も、保険も、写真も、そのためにあります。
この視点を持つと、備えの意味が変わってきます。生き延びるためだけでなく、生活を取り戻すための準備でもあるのです。
よくある質問
Q. 被災したら、まず何をすべきですか
A. 写真を撮ってください。片付けてしまうと被害を証明できず、保険金や支援金の額が下がる恐れがあります。建物の外観を四方向から、浸水なら水位の跡が分かるように、部屋ごとに全体と細部を撮ってください。
Q. 罹災証明書とは何ですか
A. 住まいの被害の程度を市区町村が証明する書類です。支援金、税の減免、仮設住宅の入居、貸付など、ほとんどの支援がこの書類を前提としています。被災後の手続きの起点になります。
Q. 被害の程度はどう分かれますか
A. 損害割合により6区分です。全壊が50%以上、大規模半壊が40%以上50%未満、中規模半壊が30%以上40%未満、半壊が20%以上30%未満、準半壊が10%以上20%未満、それ未満が一部損壊です。
Q. 応急危険度判定と罹災証明書は同じですか
A. 別のものです。応急危険度判定は建物に入って安全かを短時間で判断するもので、二次災害の防止が目的です。罹災証明書は支援を受けるための被害認定です。赤い紙が貼られても、自動的に全壊と認定されるわけではありません。
Q. 支援金はいくら受け取れますか
A. 全壊した住宅を建て直す場合、基礎支援金100万円と加算支援金200万円で最大300万円です。補修なら加算100万円、賃借なら50万円となります。単身世帯は4分の3になり、全壊・建て直しで225万円です。
Q. 支援金の申請に期限はありますか
A. あります。基礎支援金は災害発生日から13か月以内、加算支援金は37か月以内です。延長される場合もありますが、あてにせず早めに手続きしてください。
Q. 判定に納得できない場合はどうしますか
A. 再調査を依頼できます。一次調査は外観のみで判断されることがあり、二次調査では室内に立ち入って詳しく確認します。判定が一段階変わるだけで支援金の額が大きく変わるため、実際の被害と食い違うと感じたら申し出てください。
Q. 住宅ローンが残っているのに家を失いました
A. 自然災害債務整理ガイドラインという仕組みがあります。一定の条件を満たせば、ローンの減額や免除を受けられる可能性があります。自己破産と異なり信用情報に登録されず、専門家の支援も無料で受けられます。金融機関か弁護士会に相談してください。
Q. 公共料金や税金の支払いはどうなりますか
A. 猶予や減免の相談ができます。公共料金、国民健康保険料、国民年金保険料、所得税、住民税、固定資産税、携帯電話料金などが対象です。ただし申し出なければ適用されません。罹災証明書を持って窓口に相談してください。
Q. 被災する前にやっておけることはありますか
A. 家の中を部屋ごとに撮影しておいてください。被災後の写真と比べれば、失われたものが一目で分かります。あわせて保険証券の内容を確認し、本人確認書類や通帳の情報をまとめておくと、手続きが格段に楽になります。
Q. 手続きが多すぎて混乱しそうです
A. 記録を残してください。いつ、どこの窓口で、誰に、何を相談したかをノートに書いておきます。被災後は複数の窓口を回るため、記録があると説明の手間が大きく減ります。提出書類のコピーも必ず残してください。
Q. 義援金と支援金は違うのですか
A. 別のものです。支援金は法律にもとづく公的な給付で、金額や条件が定まっています。義援金は寄付を集めて配分するもので、金額はその都度決まります。どちらも受け取れ、片方を受けたからもう片方が減ることはありません。
Q. 応急修理制度を使いたいのですが
A. 先に自治体へ確認してください。自分で修理を発注してしまうと対象外になることがあります。また、原則として応急仮設住宅との併用はできないため、どちらを選ぶかを決める必要があります。
Q. 修理業者から契約を急かされています
A. その場で契約しないでください。急がせるのは典型的な手口です。必ず持ち帰って検討し、複数の業者から見積もりを取ってください。不審に感じたら消費生活センターに相談してください。
Q. 被災してから体調がすぐれません
A. 数週間から数か月してから不調が現れるのは珍しくありません。大きな出来事のあとに起きる自然な反応です。自治体の保健センターやこころの健康相談窓口があります。「まだ大丈夫」と思ううちに相談するほうが回復は早くなります。
まとめ
被災後にやることについて、要点を整理します。
- 片付ける前に必ず写真を撮る。証拠がなければ支援を受けられない
- 建物に入る前に安全を確認する。危険を感じたら入らない
- 避難時はブレーカーを落とす。通電火災を防ぐため
- 罹災証明書の申請が、すべての手続きの起点になる
- 被害認定は損害割合で6区分。全壊は50%以上
- 応急危険度判定と罹災証明書は別の制度
- 支援金は全壊・建て直しで最大300万円
- 単身世帯は4分の3。中規模半壊は基礎支援金の対象外
- 申請期限は基礎13か月、加算37か月
- 判定に納得できなければ再調査を依頼できる
- 公共料金や税金は猶予・減免を相談できる。申し出が必要
- ローンが残る場合は自然災害債務整理ガイドライン
- 契約を急がせる業者には応じない
- 心身の不調は遅れて出る。早めに相談する
被災後の手続きは、複雑で数も多いものです。しかし、順番が決まっています。写真を撮り、罹災証明書を取り、それをもとに支援を受ける。この流れさえ押さえておけば、迷わずに進められます。
そして、支援を受けることに遠慮は要りません。制度は、そのために作られています。
今日できることをひとつ挙げます。ご自宅の保険証券を確認してください。火災保険が風水害を対象にしているか、地震保険に入っているか。被災してから調べるより、今のほうがはるかに簡単です。


