雪国の備蓄は閉じ込められる前提で|大雪で止まるのは物流と灯油、半分で補充する習慣

雪国の備蓄は閉じ込められる前提で

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【この記事の要約】
大雪の備蓄は、地震の備蓄と考え方が違います。地震は「家が壊れて外へ逃げる」前提ですが、大雪は「家から出られなくなる」前提です。道路が止まり、物流が止まり、店の棚から商品が消えます。2018年2月の福井の大雪では、国道8号で約1,500台が立ち往生し、スーパーやコンビニから食料が消えました。ですから備蓄の中心は、①数日間、家の中で暮らせる食料と水、②停電しても使える暖房と燃料、③薬と日用品の3つです。そしてもう一つ、灯油と車の燃料を「半分で補充」する習慣。大雪は数日前から予報が出ます。予報を見て買い足すのが、雪国の備蓄のいちばん現実的な形です。

こんにちは。防災ベーシックのたにです。札幌で防災士として活動しています。

防災の備蓄というと、多くの記事が「地震に備えて3日分」を基準にしています。それ自体は正しいのですが、雪国で暮らしていると、少し違和感があります。

地震の備えは、家が壊れて避難所へ向かう場面を想定しています。一方、大雪で困るのは、家が無事なまま外に出られなくなる場面です。必要なものも、量も、変わってきます。

目次

結論|大雪の備蓄は「閉じ込められる前提」で考える

一、数日間、家の中で暮らせる食料と水
二、停電しても使える暖房と、その燃料
三、切らすと困る薬と日用品
そして灯油と車の燃料は、半分を切ったら補充する。大雪の予報が出たら、それを満タンにする。

地震と違って、大雪は予報が出ます。

数日前から「強い寒気が来る」「大雪のおそれ」という情報が出ます。その時点で動けば、店に物がある状態で買えます。雪国の備蓄は、「ずっと置いておく量」と「予報を見て足す量」の2段構えで考えるのが現実的です。

大雪で、何が止まるのか

まず、大雪の日に暮らしがどう崩れるかを整理しておきます。

止まるもの 起きること
道路 除雪が追いつかず、車が出せない。立ち往生が起きる
物流 トラックが来ない。店の棚が空になり、数日戻らない
電気 雪の重みや倒木で電線が切れ、停電する
灯油の配達 配達車が回れず、タンクの補充が止まる
ガソリンスタンド 燃料が届かない、停電で給油機が止まる
病院・薬局 通院できない。処方薬を受け取れない
ごみの収集 数日止まる。家の中にごみがたまる

この表の中で、雪国の人が最も困るのは「灯油の配達」です。

北海道や東北の家庭の多くは、屋外のホームタンクに灯油を配達してもらう形で暖房を使っています。大雪で配達が止まり、タンクが空になれば、暖房が止まります。寒さの中で暖房が止まるのは、命に関わる事態です。

店の棚が空になるのは、なぜか

大雪で物流が止まると、店への入荷が途絶えます。同時に、予報を見た人が一斉に買いに来ます。

その結果、パン、牛乳、カップ麺、水、電池といった品が、真っ先に消えます。2018年2月の福井の大雪では、国道8号で約1,500台の車が立ち往生し、県内のスーパーやコンビニから食料が消えたことが報じられました。

この状態は、雪がやんでもすぐには戻りません。道路が開き、トラックが動き、店に並ぶまで、数日かかります。

地震の備蓄と、何が違うのか

地震の備え 大雪の備え
想定する場面 家が壊れ、避難所へ移る 家は無事で、外に出られない
予測 できない。突然起きる 数日前から予報が出る
持ち出し袋 重要 優先度は下がる
家に置く備蓄 重要 最も重要
暖房と燃料 季節による 必須。これが切れると命に関わる
調理 火を使わない食品が中心 家のコンロが使えることが多い(停電時を除く)

「家のコンロが使える」ことが多いのは、大雪の備蓄の利点です。

地震ではガスが止まることがありますが、大雪では多くの場合ガスは使えます。ですから、ふだん家で食べている乾物や米、冷凍食品が、そのまま備蓄として働きます。特別な非常食を大量にそろえる必要はありません。

備蓄①|食料と水

基本は「ふだんの食べ物を少し多めに」

大雪の備蓄でいちばん効くのは、ローリングストックです。ふだん食べているものを少し多めに買い、古いものから使い、使った分を足す。この方法です。

分類 置いておくもの 理由
主食 米、乾麺、パスタ、餅 長く置けて、家のコンロで調理できます
おかず 缶詰、レトルト食品、乾物 常温で置けます
冷凍食品 ふだん食べているもの 停電したら先に食べます。冷凍庫は開けなければしばらく保ちます
火を使わない食品 パン、クラッカー、ナッツ、チーズ 停電でコンロも使えないときのため
飲み物 水、お茶、スープの素 温かい飲み物は、体を温める手段になります

停電して電気のコンロ(IH)が使えない家庭では、カセットコンロとボンベを用意しておいてください。ガスコンロの家でも、停電で点火装置が動かないことがあります。

何日分を置くか

国が勧める家庭の備蓄は3日分以上、可能なら1週間分です。

雪国では、1週間分を目安にすることを勧めます。大雪は、一度降れば数日続くことがあり、その後の物流の回復にも時間がかかるからです。

ただし、1週間分を特別に買い込む必要はありません。ふだんの食べ物を、いつもより少し多めに回しておけば、多くの家庭で1週間分くらいは自然にそろいます。

水の考え方

大雪では断水はあまり起きません。ただし、次の場合は水が止まります。

水が止まる場面 対策
水道管の凍結 寒い夜は水抜き。前夜にやかんへ水をくむ
停電でポンプが止まる マンションや井戸の家。ペットボトルの水を備える
地域の配水が止まる 浴槽に水を残しておく

水道管の凍結については水道管の凍結はマイナス4度から|熱湯で解かすと割れる、破裂したら元栓を先に閉めるにまとめました。

備蓄②|暖房と燃料

雪国の備蓄で、最も優先すべきものです。食べ物は数日なくても生きられますが、暖房が止まった家で冬を越すことはできません。

停電すると、多くの暖房が止まる

暖房 停電時
FF式ストーブ(北海道で主流) 止まります。給排気に電気を使います
石油ファンヒーター 止まります
エアコン、電気ストーブ 止まります
電気を使わない石油ストーブ 使えます
カセットガスストーブ 使えます
薪ストーブ 使えます(送風機のないもの)

雪国の家の多くは、停電すると暖房がすべて止まります。

2018年の北海道胆振東部地震のブラックアウトは9月でしたが、もし真冬だったら、と考えた方は多いと思います。電気を使わない暖房を1台持っておくことが、雪国の備蓄の要になります。

使い方と注意は石油ストーブの死亡事故は5年で47件|給油前に消す、灯油とガソリンを分ける、停電で使える1台に書きました。

灯油は「半分で補充」

習慣 理由
ホームタンクが半分を切ったら配達を頼む 大雪で配達が止まっても、数日は持ちます
大雪の予報が出たら、満タンに 予報は数日前から出ます
ポリタンク1〜2つを予備に 停電時の石油ストーブ用。ただし越冬させない量で
ホームタンクまわりの除雪 配達員がタンクまでたどり着けるように

最後の行は、雪国ならではの注意です。

配達車が来ても、ホームタンクまでの道が雪で埋まっていれば、給油できません。大雪のあとは、タンクへの通り道と、給油口のまわりの雪をどけておいてください。

カセットボンベは多めに

カセットコンロとカセットガスストーブは、同じボンベを使えることが多いので、備蓄が共通にできます。

ただしボンベは、寒い場所では火力が落ちます。ガスが気化しにくくなるためです。寒冷地用のボンベを選ぶか、使う前に室内に置いて温めておくと、火がつきやすくなります。

備蓄③|薬と日用品

もの 考え方
処方薬 1週間分以上の余裕を。冬の前に、かかりつけ医に相談してください
常備薬 解熱剤、胃腸薬、湿布など
電池・モバイルバッテリー 停電時の明かりと情報の手段
トイレットペーパー・ティッシュ 店から先に消える品です
おむつ・生理用品・ミルク 家族に必要な人がいれば、多めに
ペットの餌 忘れがちです。1週間分を
現金 停電でキャッシュレス決済が止まります

処方薬は、とくに注意してください。

大雪で通院できない日が続くと、薬が切れます。血圧や糖尿病の薬、心臓の薬を飲んでいる方は、冬の前に少し余裕を持って処方してもらえないか、医師に相談しておくと安心です。薬の問題は冬の血圧は寒さで上がる|家庭135/85と、災害で薬が切れる問題でも触れました。

大雪の予報が出たら、やること

雪国の備蓄は、この「予報を見て動く」が本番です。

いつ やること
1〜2週間前 早期天候情報で、強い寒気の見込みを知る
3〜4日前 灯油の配達を頼む。車の燃料を満タンに
2〜3日前 食料と日用品を買い足す。店が混む前に
前日 処方薬の残りを確認。スマホと電池を満充電に。除雪道具を玄関に
当日 外出を控える。無理に車を出さない

「店が混む前に」が大切です。

大雪の前日になると、同じことを考える人で店が混みます。2〜3日前なら、棚にまだ物があります。寒波の予測の見方は寒波は2週間前から予告されています|早期天候情報の見方と、4段階での備え方にまとめています。

閉じ込められた数日を、どう過ごすか

備蓄があっても、家から出られない日が続くと、心と体に負担がかかります。

気をつけること 理由と対策
除雪で無理をしない 閉じ込められると、雪をどけようと焦ります。心臓に負担がかかり、倒れる方がいます
体を動かす 家にこもると動かなくなります。室内で軽く体を動かしてください
水分をとる 冬は渇きを感じにくく、脱水が進みます
近所と声をかけ合う 一人暮らしの高齢の方が、孤立していないか
換気 石油ストーブを使うなら、1時間に1〜2回

冬のかくれ脱水は、見落とされやすい問題です。寒いと水を飲まなくなり、暖房で空気が乾き、気づかないうちに体の水分が減ります。詳しくは冬のかくれ脱水は尿の色で気づく|不感蒸泄900mLと、トイレを我慢する危険に書きました。

一人暮らしの高齢の方がいたら

大雪の日、いちばん困るのは、一人で暮らす高齢の方です。

玄関前の雪をどけられず外に出られない、灯油が切れても配達を頼めない、薬が切れても病院へ行けない。そうした状況が、誰にも気づかれずに続くことがあります。

近所に一人暮らしの高齢の方がいれば、大雪の翌日に一声かけてください。
「灯油はありますか」「薬は足りていますか」。それだけで、防げる事故があります。

雪国の家に置いておきたいもの一覧

分類 もの
暖房 電気を使わない石油ストーブ(またはカセットガスストーブ)、灯油のポリタンク、湯たんぽ
食料 米・乾麺・缶詰・レトルトを1週間分(ふだんの食べ物で回す)、火を使わない食品
調理 カセットコンロ、カセットボンベ(寒冷地用が望ましい)
水 ペットボトルの飲み水、やかん(前夜にくむ用)
明かり・情報 ランタン、懐中電灯、電池、モバイルバッテリー、電池式ラジオ
除雪 スコップ、スノーダンプ。玄関の内側に置く
体を守る 毛布、寝袋、帽子、手袋、重ね着できる衣類
薬・衛生 処方薬の余裕分、常備薬、トイレットペーパー、携帯トイレ
その他 現金、ペットの餌、一酸化炭素警報器

「スコップを玄関の内側に置く」は、雪国の知恵です。

外に置いたスコップは、大雪の朝には雪に埋もれています。玄関の扉が雪で開かないとき、内側にスコップがなければ、外に出る手段がありません。

閉じ込められた数日の、食事の組み立て方

備蓄があっても、どう食べていくかを決めていないと、先に楽なものから減っていきます。パンやカップ麺を初日に食べ、数日後に調理が要るものばかり残る、ということが起きます。

状況 先に食べるもの 後に回すもの
電気が使える 冷蔵庫の生鮮品、冷凍食品 缶詰、レトルト、乾物
停電した直後 冷蔵庫の中身。傷みやすいものから 冷凍庫の中身(開けなければしばらく保ちます)
停電が長引く 冷凍庫の中身を、融けたものから 火を使わない食品は、最後の備えとして残す

基本は「傷みやすいものから食べる」です。保存のきく缶詰やレトルトは、いちばん後に回します。

冷蔵庫と冷凍庫を、停電時にどう扱うか

停電したら、冷蔵庫と冷凍庫はできるだけ開けないでください。

扉を開けるたびに冷気が逃げます。何を出すかを決めてから、一度に取り出すようにします。満杯に近い冷凍庫ほど、中の物どうしが冷やし合うので、長く保ちます。

雪国の冬は、外が天然の冷蔵庫になります。
停電が長引いたら、傷みやすい食品を、ふたのできる箱に入れてベランダや玄関の外に置く方法があります。
ただし動物に荒らされないよう、しっかりふたをしてください。また、日が当たる場所は避けます。

雪を飲み水にしてはいけません

水がなくなったとき、「雪を解かせば飲める」と考える方がいます。

積もった雪には、大気中のちりや排気ガスの成分が含まれています。そのまま飲むのは勧められません。トイレを流す水や、掃除の水としてなら使えます。飲み水は、ペットボトルで備えてください。

家族に合わせて、足すもの

家族 足すもの 理由
乳幼児 粉ミルクか液体ミルク、おむつ、おしりふき 店から先に消えます。1週間分以上を
高齢の家族 処方薬、やわらかい食品、入れ歯の洗浄剤 通院できない日が続きます
持病のある人 薬、医療機器の電源(予備バッテリー) 停電が命に関わることがあります。医師と相談を
ペット 餌、トイレ用品 ペット用品は、人の物より後回しにされがちです
一人暮らし 連絡手段の予備(モバイルバッテリー) 異変を知らせる相手とつながっておくため

電気を使う医療機器を使っている方は、冬の前に必ず確認してください。

在宅酸素や吸引器など、停電が直接、命の問題になる機器があります。予備のバッテリーがどれだけ持つか、停電したらどこへ連絡するか。これは医療機関や機器の会社と、事前に決めておくことです。

大雪と停電が重なったとき

雪国でいちばん厳しいのは、大雪と停電が同時に起きる場面です。

雪の重みで電線が切れる、倒木が電線にかかる。大雪は停電を引き起こし、しかも除雪が進まないために復旧作業も遅れます。

順番 やること
1 電気を使わない暖房に切り替える。換気の時刻を決める
2 家族を1部屋に集める。窓に段ボールや毛布を当てる
3 水道管の凍結に備えて、水を抜くか、水をくんでおく
4 冷蔵庫を開けず、食べる順番を決める
5 スマートフォンの電池を節約し、決まった時刻にだけ情報を見る
6 夜は湯たんぽを用意して、ストーブを消して眠る

冬の停電全般については停電対策【冬編】|低体温症を防ぐ準備・グッズ・行動マニュアルに詳しくまとめています。

車にも、小さな備蓄を

雪国では、家と同じくらい車の中の備えが大切です。通勤や買い物の途中で立ち往生することがあるからです。

もの 理由
折りたたみスコップ マフラーのまわりの雪をどけられます。一酸化炭素中毒を防ぐ道具です
毛布 エンジンを切っても暖が取れます
飲み物と簡単な食べ物 立ち往生が長引いたときのため
携帯トイレ 車外に出られない状況で必要になります

詳しくは大雪の立ち往生で危ないのは寒さより一酸化炭素|22分で1000ppm、マフラーを掘るに書きました。

札幌で暮らして、実感していること

札幌では、大雪でJRや地下鉄以外の交通が止まることがあります。バスが来ない、タクシーがつかまらない、車が出せない。そういう日は、家から出ないのがいちばんです。

そして大雪が数日続くと、近所のスーパーの棚が目に見えて寂しくなります。パンと牛乳、卵がまず消えます。

私の家では、冬の間は米と乾麺、缶詰を少し多めに置いています。特別な非常食ではなく、ふだん食べているものです。それを古い順に食べ、減ったら足す。大雪の予報が出たら、灯油と車の燃料を満タンにする。やっていることは、それくらいです。

それでも、この習慣があるだけで、大雪の数日に慌てることはなくなりました。雪国の備蓄は、特別な準備ではなく、冬の暮らし方そのものだと思っています。

集合住宅と一戸建てで、備えが変わる点

一戸建て マンション・アパート
除雪 玄関前、車庫、ホームタンクまで自分で 共用部は管理会社。自分の車の除雪は自分で
停電時の水 水道直結なら出ることが多い ポンプが止まり、水が出なくなることがある
暖房の選択肢 石油ストーブを置きやすい 規約で石油ストーブを禁じている建物がある
灯油の保管 物置などに置ける 置き場所が限られる
閉じ込められ方 玄関の扉が雪で開かなくなる エレベーターが止まると、上の階は出入りが大変

マンションにお住まいの方は、停電時の水と暖房を、とくに確認してください。

石油ストーブが使えない建物なら、カセットガスストーブか、湯たんぽと寝袋で暖を取る方法を考えておきます。停電でポンプが止まれば水も出なくなるので、ペットボトルの水は多めに必要です。

冬の前に、確認しておくこと

時期 確認すること
10月 電気を使わない暖房が動くか試運転する。去年の灯油を処分する
10月 処方薬の余裕分について、かかりつけ医に相談する
11月 カセットボンベ、電池、モバイルバッテリーの数を確かめる
11月 スコップとスノーダンプを玄関の内側に出しておく
12月まで ふだんの食べ物を、少し多めに回し始める

雪が降り始めてからでは、店が混み、灯油の配達も予約が詰まります。秋のうちに整えておくと、冬の間は予報を見て足すだけで済みます。

玄関が雪で開かなくなったら

大雪の朝、玄関の扉が開かない。雪国では珍しくない光景です。

順番 やること
1 扉を少しずつ押し、すき間を作る。無理に押すと扉や蝶番が壊れます
2 すき間から、玄関の内側に置いたスコップで雪を崩す
3 開かなければ、別の出入口(勝手口、掃き出し窓)を試す
4 それでも出られず、急ぎの用があるなら、近所や家族に連絡する

出入口が1か所しかない家は、とくに注意が要ります。

玄関がふさがれると、火災などのときに逃げ道がなくなります。大雪の日は、玄関だけでなく、もう一か所の出入口のまわりも雪をどけておくことを勧めます。

給排気口の確認も、同じタイミングで

玄関の雪をどけたら、家のまわりを一周してください。

給湯器やFF式ストーブの給排気口が雪でふさがれていると、一酸化炭素が室内に戻ることがあります。屋根から落ちた雪や、吹きだまりで埋まりやすい場所です。除雪の最後に、必ず見て回ってください。

備蓄は「量」より「回し方」

ここまで、いろいろなものを挙げてきました。全部をそろえようとすると、手が止まると思います。

ですから、最後に優先順位を示します。

優先 備え 理由
1 電気を使わない暖房と燃料 これが切れると命に関わります
2 灯油と車の燃料の「半分で補充」 お金をかけずに、今日から始められます
3 処方薬の余裕 切れると、代わりが手に入りません
4 ふだんの食べ物を少し多めに ローリングストックで自然にそろいます
5 明かりと電池、モバイルバッテリー 停電時の情報と安心のため

2番目の「半分で補充」は、お金もかからず、今日から始められます。

灯油のタンクと車のメーターを、「半分」を目安に見る。それだけで、大雪の予報が出たときに慌てずに済みます。

情報の取り方も、備えのうちです

大雪で閉じ込められたとき、何を見て判断するかを決めておくと、落ち着いて過ごせます。

知りたいこと 見るもの
いつまで降るか 気象庁の天気予報と、大雪に関する気象情報
停電の復旧見込み 電力会社の停電情報のページ
道路が開いたか 自治体や道路管理者の除雪情報
ごみの収集 自治体の案内。止まっている間は家で保管します
店の営業 店のウェブサイトや、近所の人の情報

停電中は、スマートフォンの電池が情報の命綱です。画面を暗くし、見る時刻を決めて、ずっと眺め続けないようにしてください。電池式のラジオがあれば、スマートフォンの電池を温存できます。

大雪警報の基準は、地域によって大きく違います。札幌と東京では、同じ「大雪警報」でも積雪の量がまったく異なります。詳しくは大雪警報の基準は市町村で違う|札幌は12時間40センチ、三重県津市は10センチに書きました。

よくある質問

Q. 雪が少ない地域でも、同じ備えが要りますか

量は少なくてよいですが、考え方は同じです。

むしろ雪の少ない地域ほど、大雪のときの混乱は大きくなります。除雪の体制が薄く、車の冬用タイヤも普及しておらず、店に物を運ぶ手段がすぐに止まるからです。年に一度あるかないかの大雪でも、その数日は雪国と同じ状況になります。

Q. 非常食は買わなくてもよいのですか

大雪に限れば、ふだんの食べ物で足ります。

ただし、地震への備えとしての非常食は別に考えてください。地震では家が壊れ、ガスも止まり、調理できないことがあります。大雪の備えと地震の備えは、重なる部分と重ならない部分があるということです。

Q. 灯油をたくさん買いだめしておけば安心ですか

越冬させないでください。灯油は1年たつと劣化し、不完全燃焼の原因になります。

ですから「たくさん置く」より「切らさない」を目指してください。ホームタンクが半分を切ったら頼む。予報が出たら満タンにする。この習慣のほうが、買いだめより確実です。

Q. 停電が長引いたら、避難所へ行くべきですか

家で暖を取れなくなったら、移動を考えてください。

電気を使わない暖房がない、灯油が尽きた、家の中の温度が下がり続ける。こうなったら、暖房のある避難所や親戚の家へ移るほうが安全です。ただし大雪の中の移動そのものが危険なので、明るいうちに、雪がやんでいる時間に動いてください。

屋内でも凍死は起きています。凍死は屋内で起きています|年間1000人前後、北海道より南の県で増えているにまとめました。

Q. 大雪の予報が出たら、何を最初に買えばよいですか

灯油と、車の燃料です。食料より先に考えてください。

食料は、家にあるもので数日はしのげます。ですが暖房の燃料が切れると、寒さはすぐに命に関わります。そして灯油の配達やガソリンスタンドは、大雪の前日に一気に混みます。

燃料を確保してから、牛乳やパンなど、日持ちしない食品を足す。この順番が現実的です。

Q. 一人暮らしで、備蓄を置く場所がありません

量より「切らさない」を意識してください。

一人分なら、米や乾麺を一袋多めに、缶詰を数個多めに置くだけで、数日分になります。大切なのは、暖房の燃料と、連絡手段を切らさないことです。

そして、大雪の日に連絡を取り合う相手を一人決めておくと安心です。家族でも、近所の人でも構いません。

Q. 大雪で閉じ込められたら、どのくらいで解消しますか

地域と雪の量によって大きく違います。

雪国の市街地なら、主要な道路は1〜2日で除雪されることが多いですが、生活道路や住宅地はさらに後回しになります。ふだん雪の少ない地域では、除雪の体制そのものが薄く、もっと時間がかかることがあります。

ですから1週間を目安に備えておけば、多くの場面に対応できます。

Q. 大雪の備えと、地震の備えは、別々にそろえるべきですか

重なる部分は共通にし、足りない部分だけ足してください。

水、明かり、電池、薬、カセットコンロは、どちらの災害にも使えます。一方で、地震には持ち出し袋と火を使わない食品、大雪には電気を使わない暖房と燃料が、それぞれ固有に必要です。

雪国で暮らすなら、冬の間は両方を満たす状態を目指してください。冬に地震が起きれば、両方が同時に必要になります。

そして冬の地震は、雪国にとって最も厳しい組み合わせです。家が壊れて外に出れば寒さにさらされ、避難所も暖房が足りない。だからこそ、冬の間は「家で数日暮らせる」状態を保っておくことが、どちらの災害にも効く備えになります。

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停電しても使える暖房はどれか|エアコンもファンヒーターも止まります。換気なしは一酸化炭素中毒
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まとめ

要点 内容
考え方 大雪は「家から出られなくなる」前提。地震とは違います
最優先 停電しても使える暖房と、その燃料
食料 ふだんの食べ物を1週間分、ローリングストックで
燃料の習慣 灯油も車も「半分で補充」。予報が出たら満タンに
予報が出たら 2〜3日前に買い足す。処方薬の残りを確認
雪国の知恵 スコップは玄関の内側に。ホームタンクまでの道を除雪
近所 大雪の翌日に、一人暮らしの高齢の方へ一声を

雪国の暮らしは、もともと冬に備えることが前提になっています。雪囲い、冬タイヤ、灯油の配達。その延長に、備蓄があります。

特別なことを始める必要はありません。ふだんの買い物を少し多めにし、燃料を切らさない。それだけで、大雪の数日を家の中で乗り切れます。

今日できることは、灯油のタンクと車のメーターを見て、半分を切っていないか確かめることです。それが、この冬の備えの第一歩になります。半分を切っていたら、今週のうちに補充してください。冬が来る前の、いちばん簡単な備えです。

【出典】
内閣府 防災情報のページ(家庭の備蓄の目安)/気象庁(早期天候情報、大雪に関する情報)/報道各社(2018年2月の福井の大雪での立ち往生と店舗の品薄)
処方薬の余裕分については、必ずかかりつけの医師にご相談ください。暖房機器の使い方は、各製品の取扱説明書に従ってください。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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