冬のかくれ脱水は尿の色で気づく|不感蒸泄900mLと、トイレを我慢する危険

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【この記事の要約】
脱水は夏だけのものではありません。冬にも起こります。しかも気づきにくいため「かくれ脱水」と呼ばれます。理由は4つあります。①汗をかかなくても、皮膚と呼気から水分が出ていきます。これを不感蒸泄といい、健康な成人で1日およそ900ミリリットルとされています。暖房で乾燥した部屋では、さらに増えます。②寒いと血管が縮み、尿が増えます。寒冷利尿と呼ばれる反応です。③寒いと、のどの渇きを感じにくくなります。汗をかかないので、身体が「足りている」と勘違いします。④トイレが近くなるのを嫌って、自分から水を控えてしまいます。これが高齢の方と避難所で、いちばん多く起きます。そして災害時には、この④が深刻になります。避難所のトイレが使いにくいと、水を飲まなくなる。血液が濃くなり、血栓ができやすくなります。過去の震災で問題になった、エコノミークラス症候群の入口がここです。対策は「渇く前に、少しずつ、温かいものを」です。

冬になると、水を飲む量が減ります。

意識していなくても、減ります。

私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。冬の防災の話をするとき、暖房や雪の話に比べて、水の話はほとんど出ません。

ですが避難所で最初に問題になるのは、たいてい水とトイレです。

目次

結論|冬こそ、渇く前に飲んでください

先に、いちばん大事なことを書きます。

冬の脱水は、のどの渇きでは気づけません。寒さで渇きを感じる働きそのものが鈍るからです。
ですから「飲みたくなったら飲む」では遅くなります。時間を決めて、少しずつ飲んでください。
そして災害時にいちばん危ないのは、トイレを我慢するために水を控えることです。

熱中症の対策で「のどが渇く前に飲む」と言われます。

冬も、まったく同じです。むしろ冬のほうが、渇きの合図が来ません。

冬に脱水が起きる、4つの理由

①汗をかかなくても、水は出ていきます

不感蒸泄という言葉があります。

汗以外に、皮膚や粘膜、呼気から自然に失われる水分のことです。

健康な成人で、1日およそ900ミリリットルとされています。報告によっては700ミリリットルから1リットルという幅で示されます。

これは、じっとしていても失われる量です。

どこから 状況
皮膚から 乾いた空気ほど、多く奪われます
呼気から 吐く息は水蒸気を含んでいます
粘膜から のどや鼻から

冬は空気が乾いています。そこへ暖房が加わります。

湿度が下がるほど、皮膚と呼気からの水分は多く出ていきます。つまり冬の室内は、不感蒸泄が増える環境です。

寒い日に、吐く息が白く見えます。あれは、失われている水分が見えている状態です。

②寒いと、尿が増えます

寒冷利尿と呼ばれる反応があります。

寒さで手足の血管が縮むと、身体の中心を流れる血液の量が増えます。

身体はそれを「水分が多い」と受け取り、尿として出そうとします。

冬にトイレが近くなるのは、気のせいではありません。実際に、水分が出ていっています。

③のどの渇きを、感じにくくなります

ここが、いちばんの落とし穴です。

夏は汗をかきます。汗をかけば、身体は「減った」と分かります。

冬は汗をかきません。ですから身体は、減っていることに気づきません。

実際には不感蒸泄と寒冷利尿で失われているのに、渇きの合図だけが来ないのです。

④自分から、控えてしまいます

そして最後が、行動の問題です。

よくある理由 誰に多いか
トイレが近くなるのが嫌 高齢の方に多く見られます
夜中に起きたくない 就寝前に控えます
冷たいものを飲みたくない 身体を冷やしたくない
トイレまで行くのが寒い・遠い 避難所ではこれが決定的になります
介助を頼むのが申し訳ない 介助が必要な方

「トイレを我慢するために飲まない」という選択が、いちばん危険です。

かくれ脱水のサイン

のどの渇き以外の合図を、知っておいてください。

サイン 見方
尿の色が濃い いちばん分かりやすい目安です
尿の回数が減った いつもより明らかに少ない
口のなかが乾く 舌が乾いている、話しにくい
手の甲をつまむと、戻りが遅い 皮膚の張りが落ちています
頭が重い、だるい はっきりしない不調として出ます
便秘ぎみ 腸の水分も減っています
唇や皮膚が荒れる 乾燥と重なります

尿の色を、いちばん上に置きました。

数字を測らなくても、毎回見られるからです。濃い黄色や、色が濃くなってきたら、水分が足りていない可能性があります。

ただし薬やビタミン剤で色が変わることもあります。あくまで目安として使ってください。

脱水が進むと、何が起きるのか

ここは、少し踏み込んで書きます。

水分が減ると、血液が濃くなります。

濃くなった血液は、流れにくくなります。そして固まりやすくなります。

起きうること 説明
血栓ができやすくなる 血のかたまりが血管を詰まらせます
脳梗塞・心筋梗塞 血栓が脳や心臓の血管を塞ぐ場合です
エコノミークラス症候群 足でできた血栓が肺へ飛ぶもの。避難所や車中泊で問題になりました
立ちくらみ 血液量が減るためです
便秘 腸内の水分が減ります
体温を保ちにくくなる 血のめぐりが悪くなります

冬は、もともと脳梗塞や心筋梗塞が増える季節です。

そこに脱水が重なります。ヒートショックと同じで、冬に条件がそろってしまうのです。

入浴中の急変についてはヒートショックは脱衣所で始まる|浴槽の死者5,824人と39〜41度の上限に書きました。入浴で汗をかいたあとの水分補給も、この話とつながります。

災害のときが、いちばん危ない

ここからが、防災の話です。

トイレが使えないと、人は水を飲まなくなります

これは、過去の災害でくり返し起きています。

避難所のトイレが汚い。数が足りない。行列ができる。夜は暗くて遠い。断水していれば、そもそも流せません。

その結果、多くの方が「トイレに行かなくて済むように、水を飲まない」という行動をとります。

そして足を動かさずに、狭い場所で長時間過ごします。

水を飲まない。動かない。この2つがそろうと、足に血栓ができやすくなります。
その血栓が肺へ飛ぶのが、エコノミークラス症候群です。車中泊で問題になったのも、同じ理由です。

ですから「トイレの備え」は、脱水対策そのものです。

携帯トイレを備えるのは、不便を減らすためだけではありません。水を飲める状態を保つためです。

冬の避難所は、条件が重なります

条件 影響
暖房で空気が乾く 不感蒸泄が増えます
寒くて動きたくない 血のめぐりが悪くなります
トイレが遠い・寒い 水を控える理由になります
温かい飲み物がない 冷たい水は飲む気になりません
断水している 飲む水そのものが限られます
感染症が流行する 発熱や下痢で、さらに水分を失います

冬の避難所で何を優先するかは冬の避難所は床が最優先|2024年能登で起きた寒さと感染症を防ぐ3手当てに整理しました。

断水したときは、飲む水を最優先に

断水すると、水の使い道を選ばなければなりません。

優先順位は、飲む水が最上位です。

洗う水、流す水は、代わりの手段があります。飲む水には、代わりがありません。

この考え方は渇水の節水は何から減らすか|減らすのは洗う水と流す水だけ。飲む水は減らしませんに書きました。

どうやって飲むか

量について

ここは慎重に書きます。

「1日に何リットル飲むべきか」を、私は指定できません。

体格、活動量、季節、持病によって変わるからです。とくに心臓や腎臓の病気で水分の制限を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。

そのうえで、一般に言われている考え方を書きます。

考え方 内容
一度にたくさん飲まない 吸収できず、尿として出ていきます
回数を分ける コップ1杯を、日に何度も
時間を決める 渇きに頼らず、習慣で飲みます
尿の色で確認する 濃ければ足りていない可能性

飲むタイミングを、決めてしまう

渇きの合図があてにならない以上、時間で決めるのが確実です。

タイミング 理由
起きたとき 寝ているあいだに、いちばん失っています
食事のとき 忘れにくい
入浴の前と後 入浴では汗をかきます
寝る前 控えたくなりますが、少量は飲んでください
外の作業の前後 雪かきは汗をかきます
暖房のきいた部屋にいるとき 乾燥しています

「寝る前」を控える方が非常に多いのですが、ここは考えどころです。

就寝中は何時間も飲めません。そのあいだも不感蒸泄は続きます。

夜中のトイレが心配なら、量を少なくしてでも飲んでください。コップ半分でも違います。

何を飲むか

飲み物 評価
水・白湯 基本です。温かいほうが飲みやすい
麦茶・ほうじ茶 カフェインが少ないものが向きます
経口補水液 発熱や下痢で失ったときに。日常的な水代わりではありません
スープ・味噌汁 水分と塩分を一緒にとれます
コーヒー・緑茶 利尿作用があります。これだけに頼らない
アルコール 水分補給になりません。むしろ失います

お酒は、水分補給にはなりません。

利尿作用があるため、飲んだ量より多く出ていくことがあります。

そして寒い場所では、血管がひらいて体温も逃げます。冬の屋外や車中では、とくに避けてください。

温かいものにする工夫

冬は、冷たい水が飲みにくくなります。

白湯にするだけで、飲む量が変わります。

そして温かい飲み物には、身体を温める効果もあります。脱水対策と防寒を、同時にできます。

停電で湯が沸かせない場合に備えて、カセットコンロを用意しておくと、この両方を確保できます。

カセットボンベは寒いと使えなくなることがあります。その理由と対処はカセットボンベが寒いと使えない理由と対処法|湯せんは危険、正しい温め方に書きました。

とくに気をつけたい方

対象 理由
高齢の方 渇きを感じにくく、身体の水分量そのものも少なくなります
小さなお子さん 体重に対する水分の出入りが大きい
介助が必要な方 自分でトイレに行けないと、遠慮して控えます
利尿薬を飲んでいる方 主治医の指示に従ってください
糖尿病のある方 尿量が増えることがあります
発熱・下痢・嘔吐がある方 急速に失います。受診の判断も必要です

「介助が必要な方」を、あえて入れました。

ご本人が遠慮されるためです。「迷惑をかけたくない」という理由で、水を飲まなくなります。

避難所でも、在宅でも起こります。周りから声をかけてください。

高齢のご家族については高齢の家族は寒さを感じにくい|冬の災害で先に守る首・頭・手・足の4か所もあわせてご覧ください。

エコノミークラス症候群を、もう少し詳しく

災害のたびに、この言葉が出てきます。

正式には深部静脈血栓症といいます。足の深いところにある静脈で、血のかたまりができる状態です。

どうやって起きるのか

順 起きること
1 長時間、同じ姿勢で座り続ける
2 ふくらはぎの筋肉が動かず、血が足にたまる
3 水分不足で、血液が濃くなっている
4 足の静脈で血のかたまりができる
5 立ち上がった拍子に、それが肺へ飛ぶ

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれます。

歩くたびに筋肉が縮み、足の血を心臓へ押し戻しているからです。

座りっぱなしだと、このポンプが止まります。そこへ脱水が重なると、条件がそろいます。

車中泊で問題になった理由

過去の地震で、車中泊をした方に多く発生しました。

理由は、条件が全部そろうからです。

  • 座席で足を伸ばせない
  • トイレが近くにないので、水を控える
  • 寒くて外に出たくない
  • 何日も同じ姿勢で過ごす

冬の車中泊は、とくに条件が悪くなります。寒さで動きたくないからです。

防ぐには

やること ひとこと
水を飲む そのためにトイレを確保する
足首を回す、つま先を上下させる 座ったままできます
1時間に一度は立って歩く 数歩でも違います
ふくらはぎをもむ 強くもみすぎないでください
足を伸ばせる姿勢を作る 荷物を移して、足元を空けます
締めつける服装を避ける 血流を妨げます

「足首を回す」だけでも意味があります。

車から出られない状況でも、これはできます。思い出したときに10回、と決めておいてください。

トイレの備えが、脱水対策になります

この記事で、いちばん伝えたい部分です。

水分補給の話をすると、たいてい「何を飲むか」で終わります。

ですが災害時に人が水を飲まなくなる理由は、飲み物の問題ではありません。出す場所がないからです。

備え 目安
携帯トイレ 1人1日5回 × 7日=35回分
凝固剤・防臭袋 においは生活の質を左右します
目隠しできるもの 使いにくさは、我慢につながります
照明 夜のトイレをためらわないために

35回分という数字は、多く感じられると思います。

ですが断水したトイレは、1回で使えなくなります。そして「使えないトイレ」があるだけで、人は水を控え始めます。

乾燥そのものへの対策

不感蒸泄は、部屋が乾くほど増えます。

ですから加湿も、脱水対策の一部です。

方法 ひとこと
加湿器を使う 電気が使えるときの基本です
洗濯物を室内に干す 停電中でもできます
濡れタオルを掛ける 手軽です
やかんで湯を沸かす 暖房と加湿を同時に
加湿しすぎない 結露とカビのもとになります

加湿のしすぎには注意してください。

窓に結露が出るようなら、湿度が高すぎます。結露はカビにつながり、別の健康問題になります。

結露の仕組みと対処は結露は拭いても解決しません|原因は水分量と冷たい面、カビを止める3手順に書きました。

まず、今日できること

読んで終わりにならないよう、最初の一歩を書いておきます。

今日やること かかる時間
次にトイレへ行ったとき、尿の色を見る 0分
起きたらコップ1杯、と決める 0分
手の届く場所に水筒を置く 1分
温湿度計を1つ注文する 3分
携帯トイレの残数を数える 5分

いちばん上から始めてください。今日から、費用もかかりません。

そしてご家族がいる方は、ひと言だけ聞いてみてください。「今日、水どれくらい飲んだ?」

たいてい、答えられません。答えられないこと自体が、この記事の要点です。

湿度は、40〜60パーセントを目安に

不感蒸泄を減らすには、部屋の乾燥を抑えるのが有効です。

目安として示されることが多いのは、湿度40〜60パーセントです。

湿度 状態
40パーセント未満 乾燥。不感蒸泄が増え、のどや肌も荒れます
40〜60パーセント 目安とされる範囲です
60パーセント超 結露とカビが出やすくなります

温度計と一緒に、湿度計も置いてください。

多くの温湿度計は、両方を1台で表示します。千円台で買えます。

そして暖房を入れると、湿度は下がります。暖かい空気は、より多くの水蒸気を含めるからです。同じ水分量でも、暖めると湿度の数字は下がります。

ですから暖房を強くするほど、部屋は乾きます。加湿とセットで考えてください。

備えとして、何を置いておくか

もの 役割
保存水(1人1日3リットル × 7日) 飲む水。最優先です
カセットコンロとボンベ 湯を作る。冬はこれが要ります
携帯トイレ(1人1日5回 × 7日) 飲める状態を保つための備えです
経口補水液 胃腸炎や発熱のとき
粉末のスープ・味噌汁 水分と塩分、そして温かさ
魔法瓶(保温ボトル) 一度沸かせば、長く温かいまま持てます
紙コップ 洗う水を使わずに済みます

魔法瓶を入れました。

停電中、湯を沸かせる機会は限られます。一度に沸かして保温しておけば、燃料を節約できます。

そして温かい飲み物は、体温を保つことにも役立ちます。脱水と防寒を同時に扱えます。

ローリングストックで回す

保存水を買って置いておくだけでは、期限が切れます。

ふだん飲む水を少し多めに買い、古いものから使う。これがローリングストックです。

飲む習慣ができれば、備蓄も自然に回ります。冬の脱水対策と備蓄は、同じ行動でまかなえます。

「夏の熱中症」と、どう違うのか

脱水と聞くと、多くの方は熱中症を思い浮かべます。

失われるものは同じですが、気づき方がまったく違います。

夏(熱中症) 冬(かくれ脱水)
失う経路 大量の発汗 不感蒸泄と寒冷利尿
気づきやすさ 汗で分かる ほとんど分かりません
のどの渇き 強く感じます 感じにくくなります
進み方 数時間で急に 数日かけて、じわじわと
症状の出方 めまい、けいれん だるい、頭が重い、便秘
怖い結果 熱中症による重症化 血栓。脳梗塞や心筋梗塞

「数日かけて、じわじわと」が、冬の特徴です。

急に倒れるわけではありません。少しずつ足りない状態が続き、あるとき別の形で表面化します。

ですから「今日は飲まなかったな」で終わらせないでください。それが1週間続くと、状態が変わります。

夏の対策が、そのまま使えます

幸い、やることは夏と同じです。

渇く前に飲む。時間で区切る。一度に大量に飲まない。

夏に身についた習慣を、冬もやめないでください。やめてしまうのが、いちばんの問題です。

冬の感染症で、一気に失います

冬は、胃腸炎やインフルエンザが流行する季節です。

これらは、短時間で大量の水分を奪います。

症状 失われるもの
嘔吐 水分と、胃液に含まれる電解質
下痢 短時間で大量に失います
発熱 汗と、呼吸の増加によって
食欲の低下 食事から得ていた水分が入りません

見落とされるのが「食事から得ていた水分」です。

私たちは、飲み物だけで水分をとっているわけではありません。ご飯にも味噌汁にも、水分が含まれています。

食欲がなくなると、その分がまるごと失われます。

避難所では、流行しやすくなります

大勢が同じ空間で過ごすため、感染が広がりやすい環境です。

そして手を洗う水が限られています。

断水しているところに感染性の胃腸炎が入ると、水分を失う人が増え、水は足りず、トイレは足りないという状態になります。

経口補水液を備蓄に入れておく理由は、ここにあります。

ただし症状が強い場合、水分がとれない場合は、医療機関を受診してください。とくに小さなお子さんと高齢の方は、進行が早いことがあります。

雪かきは、汗をかきます

冬に汗をかかない、というのは正確ではありません。

雪かきは、かなりの運動量があります。

そして厚着をしているため、熱がこもって汗をかきます。

問題 内容
汗をかいた自覚がない 寒いので、汗として感じません
汗冷えする 濡れた下着が、身体を冷やし続けます
水を持って出ない 「冬だから」と用意しません
作業を中断しない 飲む機会そのものがありません

雪かきの前後に、コップ1杯ずつ飲んでください。

そして肌に触れる下着に、綿を選ばないでください。綿は汗を含んだまま乾きません。

これは凍傷の予防とも重なる話です。詳しくはしもやけと凍傷は別物|こすらず37〜39度のぬるま湯で15〜30分に書きました。

高齢のご家族がいる方へ

この記事で、いちばん心配なのはここです。

高齢の方は、脱水の条件をいくつも同時に持っています。

条件 内容
身体の水分量そのものが少ない 余裕が小さいということです
のどの渇きを感じにくい 合図が来ません
トイレを避けて控える 意識的に飲みません
薬を飲んでいることが多い 利尿薬などの影響
寒さも感じにくい 環境の悪さに気づけません

声のかけ方

「水を飲んで」と言っても、たいてい飲みません。

私が勧めているのは、飲む場面を作ることです。

  • お茶の時間を決める
  • 自分も一緒に飲む
  • 手の届く場所に、水筒を置いておく
  • 温かいものを出す
  • スープや味噌汁を1品足す

「一緒に飲む」が、いちばん効きます。

指示ではなく、習慣になるからです。

トイレを近づける

そして、根本の対策はこちらです。

トイレが遠い、寒い、行きにくい。この3つを減らしてください。

トイレに小さな暖房を置く。夜間の照明をつけておく。それだけで、水を控える理由がひとつ減ります。

寒いトイレは、ヒートショックの場所でもあります。ここを暖めることには、二重の意味があります。

私が、この記事を書いた理由

冬の防災というと、寒さと雪の話になります。

水の話は、まず出てきません。

ですが私は、避難所の記事を書くたびに同じ構図に行き当たりました。

トイレが足りない。だから水を飲まない。だから血が濃くなる。だから倒れる。

この連鎖は、冬にとくに強く働きます。寒くて動かず、乾燥していて、トイレが遠いからです。

そして対策は、水を用意することだけではありません。

携帯トイレを備えること。トイレを暖めること。「出す側」を整えることが、飲むことにつながります。

この順番は、あまり語られません。ですから記事にしました。

よくある質問

Q. 冬でも経口補水液を備えるべきですか?

備える価値はあります。ただし日常的に水代わりに飲むものではありません。

経口補水液は、発熱・下痢・嘔吐などで水分と塩分を大きく失ったときに使うものです。

冬の避難所では、感染性の胃腸炎が流行することがあります。そのときに役立ちます。

使い方に迷う場合は、薬剤師や医師にご相談ください。

Q. トイレが心配で、夜は飲みたくありません

お気持ちは分かります。

ですが、まったく飲まないのは勧められません。

量を減らす、就寝の少し前に済ませる、といった調整をしてください。コップ半分でも、何も飲まないよりは良いはずです。

夜間のトイレが頻繁で困っている場合は、別の原因があることもあります。気になるようなら、医師にご相談ください。

Q. 白湯とお茶、どちらがいいですか?

飲みやすいほうで構いません。

ただしコーヒーや緑茶には利尿作用があります。それだけで水分をまかなうのは避けてください。

麦茶やほうじ茶は、カフェインが少ないとされています。

Q. 断水したとき、水はどれくらい要りますか?

備蓄の目安としてよく示されるのは、1人1日3リットルです。

これは飲む水と、調理に使う水を含めた量です。

冬でもこの量は変えないでください。「冬は汗をかかないから少なくていい」という考え方は、この記事で書いてきたとおり成り立ちません。

Q. 停電で湯が沸かせません

常温の水でも構いません。飲まないより、はるかに良いです。

そのうえで、湯を作る手段があると生活が変わります。カセットコンロとボンベは、冬の停電で最も役に立つ備えのひとつです。

湯たんぽ代わりにもなり、温かい食事も作れます。

Q. 子どもの脱水は、どう見分けますか?

大人より進みやすいとされています。体重に対する水分の出入りが大きいためです。

見るのは次の点です。

  • おむつが濡れる回数が減った
  • 唇や舌が乾いている
  • 泣いても涙が少ない
  • 元気がない、機嫌が悪い
  • 目がくぼんで見える

嘔吐や下痢が続く場合、水分がとれない場合は、早めに小児科を受診してください。子どもの脱水は進行が早いことがあります。

Q. スポーツドリンクでもいいですか?

水分補給としては使えます。

ただし糖分が多いものがあります。日常的に大量に飲むものではありません。

また、経口補水液とスポーツドリンクは別のものです。経口補水液は、失われた水分と電解質を補うために配合が調整されています。

使い分けに迷う場合は、薬剤師にご相談ください。

Q. お風呂上がりに飲んだほうがいいですか?

はい。入浴では汗をかいています。

そして入浴の前にも飲んでおくと、入浴中の血圧低下に対しても余裕ができます。

冬は「湯冷めするから」と控える方がいますが、温かいものを飲めば問題ありません。

Q. 備蓄の水は、冬でも同じ量ですか?

同じです。1人1日3リットルが目安です。

「冬は汗をかかないから少なくていい」は、この記事で書いたとおり成り立ちません。不感蒸泄と寒冷利尿で失われています。

むしろ冬は、湯を作るための水も必要になります。温かい飲み物と食事のためです。

Q. 停電中、ペットボトルの水が冷たくて飲めません

常温に戻すだけでも、だいぶ違います。

暖房のきいた部屋に移す。衣類でくるんでおく。湯たんぽの近くに置く。

カセットコンロがあれば、少量ずつ温められます。冬の停電では、コンロがあるかないかで生活の質が変わります。

まとめ|渇く前に、少しずつ、温かいものを

要点 内容
冬にも脱水は起きる 気づきにくいので「かくれ脱水」と呼ばれます
理由① 不感蒸泄。成人で1日およそ900ミリリットル
理由② 寒冷利尿。寒さで尿が増えます
理由③ 寒いと、のどの渇きを感じにくくなります
理由④ トイレを避けるため、自分から控えてしまいます
サイン 尿の色が濃い、回数が減った、口が乾く
怖いこと 血液が濃くなり、血栓ができやすくなります
災害時 トイレを我慢して水を控える。これが最大の危険
対策 時間を決めて、少しずつ、温かいものを
備え 携帯トイレは、水を飲める状態を保つための備えでもあります

この記事でいちばんお伝えしたかったのは、最後の一行です。

携帯トイレを備えることは、不便を減らすためだけの話ではありません。

トイレが確保できていれば、人は水を飲めます。飲めれば、血栓のリスクが下がります。

この冬、水と一緒に、トイレの備えも見直してみてください。

【出典】
医療機関・製薬会社等の公開情報(不感蒸泄の量、寒冷利尿、かくれ脱水の考え方)
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。1日に必要な水分量は、体格・活動量・持病によって異なります。とくに心臓や腎臓の病気で水分制限を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。発熱や下痢が続く場合、症状が改善しない場合は医療機関にご相談ください。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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