【この記事の要約】
しもやけと凍傷は、名前が似ていますが別のものです。しもやけは血のめぐりが悪くなって起きる炎症で、気温5度前後、氷点下でなくても起こります。いっぽう凍傷は、組織そのものが凍る物理的な損傷です。目安としてマイナス7度以下の冷気に3時間以上さらされると起こるとされています。この記事でいちばんお伝えしたいのは、やってはいけない処置です。こすってはいけません。熱い湯もいけません。たき火やストーブで直接あぶるのも、電気毛布もいけません。正しい方法は、37〜39度のぬるま湯につけて15〜30分かけて温めることです。「介助する人がさわって気持ちよいと感じる温度」が目安になります。そしてもう一つ。一度温めたあとに再び凍らせるのが、いちばん組織を壊します。救助まで時間がかかる状況では、温めない判断が正しいこともあります。災害では、雪かき・車の立ち往生・停電した家のなかで起こります。
雪国に住んでいると、しもやけは身近です。
私も子どものころ、毎年手をかゆくしていました。
ですが凍傷となると、別の話になります。
私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。そして冬の災害の記事を書くたびに、この二つが混同されているのを見てきました。
混同したまま処置をすると、悪化させます。
結論|こすらない、熱い湯を使わない、あぶらない
先に、いちばん大事なことを書きます。
凍傷を疑ったら、やってはいけないことが先です。
こすらない。雪でこするのは論外です。熱い湯を使わない。たき火やストーブの前であぶらない。電気毛布や電気座布団を使わない。水ぶくれをつぶさない。
正しいのは37〜39度のぬるま湯に、15〜30分かけてつけることです。
「冷えたから温める」という発想が、そのまま事故になります。
凍った組織は、感覚がありません。熱さを感じないまま、やけどを重ねてしまいます。
しもやけと凍傷は、何が違うのか
| しもやけ(凍瘡) | 凍傷 | |
|---|---|---|
| 正体 | 血のめぐりが悪くなって起きる炎症 | 組織が凍る物理的な破壊 |
| 起きる温度 | 5度前後。氷点下でなくても起こります | 目安はマイナス7度以下 |
| 時間 | くり返し冷やされることで進みます | 3時間以上さらされるのが目安 |
| 症状 | 赤く腫れる、かゆい、痛がゆい | 感覚がなくなる、白くなる、水ぶくれ |
| 治り方 | 暖かくなれば治ることが多い | 重いと組織が壊死し、手術が必要になります |
| 受診 | くり返す場合は皮膚科へ | 疑ったら、できるだけ早く医療機関へ |
いちばん大事な違いは、感覚があるかどうかです。
しもやけは、かゆい。痛がゆい。つまり感じています。
凍傷は、感覚がなくなります。「痛くないから軽い」ではありません。逆です。
しもやけは、氷点下でなくても起こります
ここが誤解されます。
しもやけが起きやすいのは、5度前後です。
そして、1日の気温差が10度以上あるときに増えるとされています。
ですから真冬より、初冬と早春に多くなります。「そこまで寒くない時期」に出るのは、このためです。
濡れた手袋、汗をかいた靴下。水分があると、さらに起きやすくなります。
凍傷は、組織が凍っています
凍傷では、細胞のなかや周りの水分が凍ります。
氷の結晶が、細胞を物理的に壊します。
さらに、血管のなかでも問題が起きます。血が固まって流れなくなり、その先の組織へ酸素が届かなくなります。
つまり凍った瞬間の損傷と、血流が止まったことによる損傷が、重なります。
凍傷の深さ
深さによって、見え方が変わります。
| 深さ | 見た目 | ひとこと |
|---|---|---|
| 浅い | 感覚のない白い斑点 | まだ表面だけの段階です |
| やや深い | 水ぶくれと腫れ | 真皮まで達しています |
| より深い | 青白く、冷たい。水ぶくれが出る | 水ぶくれの中身が透明なら、血が混じるより軽い |
| 最も重い | 黒く変色、または灰色で軟らかい | 組織が壊死した状態です |
「水ぶくれの中身の色」は、覚えておく価値があります。
透明であれば、血が混じっている場合より損傷は軽いとされています。
ただしこれは深さの見当をつけるためのもので、診断ではありません。水ぶくれが出ている時点で、医療機関を受診してください。
最初の見た目では、深さは分かりません
ここも重要です。
凍傷は、温めたあとに本当の深さが分かります。
凍っているあいだは、どこも白く硬く見えます。血流が戻ってから、生きている組織と死んだ組織の差が出てきます。
ですから現場で「軽い」と判断しないでください。
どこがなりやすいか
| 部位 | 理由 |
|---|---|
| 手の指・足の指 | 心臓から遠く、血流が最後に回ります |
| 耳 | 薄く、露出しており、帽子で隠れないことが多い |
| 鼻・頬 | 常に外気にさらされます |
| あご | マフラーからはみ出しやすい部分です |
耳がいちばん忘れられます。
ニット帽をかぶっていても、耳が出ていることがあります。耳まで覆う形か、耳あてが要ります。
そして本人は気づきません。感覚がなくなるからです。周りの人が、白くなっていないか見てください。
やってはいけないこと
ここが、この記事のいちばん重要な部分です。
| やってはいけないこと | なぜ |
|---|---|
| こする(雪でこするなど) | 凍った組織は壊れやすく、摩擦で損傷が広がります |
| たき火・ストーブの前であぶる | 感覚がないため、やけどを重ねます |
| 電気毛布・電気座布団を使う | 同じ理由です。温度の調節ができません |
| 熱い湯につける | 急激すぎる加温は組織を痛めます |
| 水ぶくれをつぶす | 感染のもとになります |
| 締めつける | 血流をさらに悪くします |
| 温めたあとに、また冷やす | 再び凍らせるのが、最も組織を壊します |
「雪でこする」は、いまでも言い伝えとして残っています。
これは、してはいけません。凍った組織に摩擦を加える行為そのものです。
「再凍結させない」が、判断を左右します
ここは、覚えて帰っていただきたい点です。
一度温めた組織が、もう一度凍る。これが最も深い損傷を作ります。
ですから「温めたあと、また寒い場所へ戻る」状況では、あえて温めないという判断があります。
山で遭難した人が、足を温めずに自力で歩いて下山するという話があります。あれは、凍ったまま歩いたほうが、温めて歩けなくなるより良いという判断です。
災害時に置き換えると、こうなります。
暖かい場所へ移動できる見込みがあるなら、温める。その見込みがなく、再び冷える環境に戻るなら、温めずに保護だけして搬送を待つ。
正しい応急処置
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 暖かい場所へ移す。濡れた衣類・手袋・靴下を外す |
| 2 | 締めつけるもの(指輪・時計・きつい靴)を外す |
| 3 | 37〜39度のぬるま湯につける。介助者がさわって気持ちよい温度が目安 |
| 4 | 15〜30分かける。完全に温まるまで待つ |
| 5 | 清潔な布でそっと包む。指の間には布をはさむ |
| 6 | できるだけ早く医療機関へ |
温度計がなければ、「自分の手を入れて気持ちよい温度」でかまいません。
これは覚えやすく、間違いにくい目安です。熱いと感じたら、その時点で高すぎます。
温まってくると、強い痛みが出ます
これは知っておいてください。
血流が戻る過程で、激しい痛みが出ることがあります。
痛みに驚いて、途中でやめてしまう方がいます。ですが中途半端に終えるのが、いちばんよくありません。
痛みは、感覚が戻っている証拠でもあります。
指輪と靴を、早く外してください
温まると、腫れます。
腫れてからでは、指輪は外れません。そして指輪が血流を止めます。
足の場合は、きつい靴やスキーブーツが同じことをします。順番として、締めつけを外すのが先です。
災害では、こういう場面で起きます
| 場面 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 雪かき・雪下ろし | 手袋が濡れます。濡れた手は急速に冷えます |
| 車の立ち往生 | 燃料が尽きれば暖房が止まります。長時間動けません |
| 停電した家のなか | 暖房が止まり、屋内でも危険な温度になります |
| 避難所の床 | 床は冷たく、足元から体温を奪われます |
| 屋外での復旧作業 | 長時間、手先を使う作業が続きます |
| 徒歩での避難 | 濡れた靴のまま歩き続けることになります |
「濡れる」が共通しています。
水は空気より、はるかに速く熱を奪います。濡れた手袋は、していないより悪い場合すらあります。
雪かきをするときは、替えの手袋を必ず用意してください。濡れたら替える。これだけで大きく違います。
車の立ち往生への備えは大雪で危ないのは雪より「動けなくなること」|立ち往生を防ぐ車内の3点にまとめました。
予防|濡らさない、締めつけない、動かす
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 濡らさない | 防水の手袋。濡れたらすぐ替える。替えを持つ |
| 締めつけない | きつい靴、きつい手袋は血流を止めます |
| 動かす | 指を握って開く。足の指を動かす。血を回します |
| 重ねる | 薄手を何枚か重ねるほうが、厚手1枚より暖かい |
| 耳・鼻・頬を覆う | 忘れられる部位です |
| 食べる | 熱を作るには燃料が要ります |
| アルコールを避ける | 血管がひらいて、熱が逃げます |
| 禁煙する | 喫煙は末梢の血流を悪くするとされています |
「締めつけない」は見落とされます。
暖かくしようとして、靴下を何枚も重ねる方がいます。靴がきつくなれば逆効果です。足の血流が止まります。
厚い靴下を履くなら、それに合う大きさの靴が要ります。
お酒で温まる、は間違いです
寒いときに酒を飲むと、身体が温かく感じます。
あれは、皮膚の血管がひらいて、体の中心の熱が表面へ出てきているだけです。
実際には、熱を捨てています。そして判断力も落ちます。
吹雪のなかや、車の立ち往生では、命に関わります。
受診の目安
ここは慎重に書きます。
私は医師ではありませんので、診断や治療の判断はできません。
そのうえで、一般に言われていることを書きます。
| 状態 | 考え方 |
|---|---|
| 感覚がない、白くなっている | 凍傷が疑われます。受診してください |
| 水ぶくれができた | 受診してください |
| 温めても感覚が戻らない | 受診してください |
| 色が黒や灰色に変わった | すぐに受診してください |
| しもやけがくり返す | 皮膚科へ。他の病気が隠れていることもあります |
| 糖尿病など持病がある | 血流の問題が重なります。早めに相談してください |
「温めても感覚が戻らない」は、はっきりした受診の合図です。
迷ったら受診してください。凍傷は、初期の見た目で深さが判断できません。
いちばん怖いのは、本人が気づかないことです
凍傷の厄介なところを、もう一度書きます。
進むほど、感覚がなくなります。
痛ければ、人は手を止めます。暖かい場所へ戻ります。ですが感覚がなくなると、その合図が来ません。
雪かきを続けてしまう。作業をやめない。そして家に戻ってから、指が白いことに気づきます。
だから、周りの人が見ます
| 見る場所 | 何を見るか |
|---|---|
| 指先 | 白くなっていないか。硬くなっていないか |
| 耳 | 本人からは見えません。周りが見てください |
| 鼻の頭・頬 | 白い斑点が出ていないか |
| くちびる | 色が変わっていないか |
耳は、本人には絶対に見えません。
作業を一緒にしている人が、声をかけるしかありません。「耳、白くなってるよ」の一言です。
一人で作業しないという原則
雪国では、除雪も雪下ろしも一人でやりがちです。
ですが、凍傷も転落も、一人だと発見が遅れます。
誰かに見てもらう。あるいは、時間を決めて連絡を入れる。この程度でも違います。
高齢のご家族が一人で作業される場合は、作業前と作業後に電話をする約束にしておくと、異変に早く気づけます。
しもやけの手当て
凍傷の話が続いたので、しもやけのほうも書いておきます。
こちらは、命に関わるものではありません。ただ、かゆみは相当につらいものです。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 濡れをとる | まず、濡れた手袋や靴下を外して乾かします |
| ゆっくり温める | ぬるま湯につけて、じんわり血を回します |
| やさしく動かす | 指を握って開く。マッサージは強くしない |
| 保湿する | 乾燥は悪化のもとです |
| かきむしらない | 傷から感染することがあります |
| くり返すなら受診 | 皮膚科で塗り薬が出ることがあります |
「濡れをとる」が最初です。
しもやけは、冷やされることをくり返して起きます。濡れたままだと、その状態が続きます。
しもやけをくり返す方へ
毎年なる、という方がいます。
共通しているのは、血のめぐりの条件です。
| 見直す点 | ひとこと |
|---|---|
| 靴がきつくないか | 厚い靴下を履くなら、大きめの靴が要ります |
| 汗で蒸れていないか | 汗も「濡れ」です。替えの靴下を持ちます |
| 手袋が薄すぎないか | 作業用の薄手は、長時間には向きません |
| 1日の気温差が大きい時期か | 初冬と早春に多くなります |
| 喫煙していないか | 末梢の血流に影響するとされています |
そして、くり返す場合は一度、皮膚科にご相談ください。
別の病気が背景にあることもあります。ここは私が判断できる領域ではありません。
雪かきの前後で、確認すること
雪かきは、凍傷が起きるいちばん身近な場面です。
| いつ | やること |
|---|---|
| 出る前 | 替えの手袋を用意する。耳まで覆う帽子をかぶる |
| 出る前 | 軽く身体を動かしておく |
| 作業中 | 手袋が濡れたら替える。我慢しない |
| 作業中 | 30分に一度は屋内に戻る |
| 作業後 | 手・耳・鼻の色を見る。白くなっていないか |
| 作業後 | 濡れた衣類をすぐ脱ぐ |
「30分に一度戻る」は、面倒に感じられると思います。
ですが雪かきは、事故が多い作業です。凍傷だけでなく、心臓への負担や転落もあります。
雪下ろしの事故については雪下ろしで死なないための7つの鉄則|死者の9割が65歳以上、一人で屋根に登らないに書きました。
手袋の選び方
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 防水であること | 濡れが最大の敵です |
| きつくないこと | 締めつけは血流を止めます |
| 中に薄手をもう一枚 | 外側を外しても、素手にならずに済みます |
| 替えがあること | 1組では足りません |
| 手首が覆われること | 袖口からの雪の侵入を防ぎます |
「替えがある」がいちばん重要です。
高価な手袋を1組買うより、ふつうの手袋を2組持つほうが有効です。
車で動けなくなったとき、足を守る
大雪の立ち往生では、足先から冷えます。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 靴のひもをゆるめる | 締めつけを外し、血を回します |
| 足の指を動かし続ける | じっとしているのがいちばん危ない |
| 濡れた靴下を替える | 車に替えを積んでおいてください |
| 毛布やシートで足を包む | 座席に座ったままでもできます |
| マフラーの雪を除く | 暖房を使うなら、一酸化炭素中毒を防ぐのが先です |
暖房を使う前に、必ずマフラーの周りの雪をどけてください。
凍傷を防ごうとして、一酸化炭素中毒になっては元も子もありません。この順番だけは動かせません。
詳しくは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒に|マフラー除雪で濃度はほぼ0になるをご覧ください。
避難所では、床から冷えます
体育館の床は、想像以上に冷たいものです。
そして人は、足元から体温を奪われます。
| 対策 | 効果 |
|---|---|
| 床に直接寝ない | 段ボール、マット、なんでも一枚はさむ |
| 厚手の靴下を替えで持つ | 濡れたら替えられます |
| スリッパを持ち込む | 床に素足をつけずに済みます |
| 足首を覆う | くるぶしは冷えやすい部位です |
段ボール一枚で、体感はかなり変わります。
冬の避難所で何を優先するかは冬の避難所は床が最優先|2024年能登で起きた寒さと感染症を防ぐ3手当てに整理しました。
子どもの雪遊びで、気をつけること
子どもは、自分から「冷たい」と言いません。
楽しいので、我慢します。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 時間を決めて呼び戻す | 本人の申告を待たない |
| 手袋と靴下の替えを持たせる | 必ず濡らして帰ってきます |
| 耳まで覆う帽子 | 耳は忘れられます |
| 帰ったら手足を見る | 色が白くなっていないか確認します |
| 長靴のなかを確認 | 汗で濡れていることがあります |
「時間を決めて呼び戻す」が、いちばん確実です。
30分なら30分と決めて、一度戻す。そのときに手袋を替えれば、続けて遊べます。
「まだ大丈夫」と思ってしまう理由
凍傷が進むまで作業を続けてしまうのには、理由があります。
寒さは、少しずつ慣れてしまうからです。
外に出た直後は「寒い」と感じます。ところが10分もすると、その感覚が薄れます。
身体が慣れたわけではありません。感じ方が鈍っただけです。
そして手足の血管は、さきほどから細くなり続けています。
時間で区切るしかありません
感覚があてにならない以上、時計で判断するしかありません。
30分作業したら戻る。寒いと感じるかどうかで決めない。
これは熱中症の対策と同じ構造です。のどが渇く前に飲む、と言われるのと同じ理由です。
備えておくもの
凍傷を防ぐために家に置いておくものは、特別なものではありません。
| もの | 置き場所 | ひとこと |
|---|---|---|
| 替えの手袋 | 玄関 | これが最重要です。2組以上 |
| 替えの靴下 | 玄関と車 | 汗と雪、どちらでも濡れます |
| 耳まで覆う帽子 | 玄関 | 耳あてつきでも構いません |
| ネックウォーマー | 玄関と車 | 鼻まで上げられるもの |
| 使い捨てカイロ | 車と持ち出し袋 | 予防に使う。凍傷の患部には当てません |
| 毛布・アルミシート | 車 | 立ち往生に備えます |
| 温度計 | 屋内 | 室温を数字で見るため |
「玄関に替えの手袋」を、いちばん上に置きました。
雪かきの途中で家に戻り、わざわざ探すことはしません。その場になければ、濡れた手袋のまま続けます。
置き場所まで決めておくことに、意味があります。
風があると、条件は一気に悪くなります
気温だけを見て判断すると、危険を見誤ります。
風は、身体のまわりにできた暖かい空気の層を吹き飛ばします。
同じ気温でも、風が強いほど熱を奪われる速さが上がります。これが体感温度の正体です。
| 条件 | 起きること |
|---|---|
| 風速1メートルにつき | 体感温度はおよそ1度下がるといわれます |
| 風速10メートルなら | 気温0度でも、体感はマイナス10度前後 |
| 吹雪のなか | 風に加えて濡れが重なります |
| 地吹雪 | 晴れていても、積もった雪が舞い上がって同じ状態になります |
「今日は0度だから大丈夫」は成り立ちません。
風速10メートルの日は、マイナス10度の日として支度してください。
地吹雪については地吹雪は晴れていても起きる|積もった雪が舞い上がる3条件と吹きだまりに書きました。
顔をおおうことの意味
鼻と頬が凍傷になりやすいのは、常に風を受けるからです。
ネックウォーマーを鼻まで上げるだけで、条件が変わります。
ただし呼気で濡れるという問題があります。濡れたまま風を受けると、かえって冷えます。
長時間の作業では、替えを用意するか、通気のある素材を選んでください。
屋内でも起こります
凍傷というと、吹雪の山を思い浮かべる方が多いと思います。
ですが、停電した家のなかでも起こりえます。
北海道では、真冬に暖房が止まれば室温は氷点下まで下がります。屋内でも凍傷の条件はそろいます。
実際、屋内での凍死は年間1000人前後で推移しており、その多くは北海道より南の県です。この点は凍死は屋内で起きています|年間1000人前後、北海道より南の県で増えているに書きました。
「家のなかだから安全」ではありません。暖房が止まった家は、風がないだけの屋外です。
重ね方の考え方
装備の話も、少しだけ書いておきます。
| 層 | 役割 | 選び方 |
|---|---|---|
| 肌に触れる層 | 汗を肌から離す | 綿は避ける。濡れたら乾きません |
| 中間の層 | 空気をためて保温する | フリースや薄手のダウン |
| 外側の層 | 風と水を防ぐ | 防風・防水のあるもの |
いちばんの落とし穴は、肌に触れる層に綿を選ぶことです。
綿は汗を吸って、そのまま持ち続けます。濡れた綿は、身体を冷やし続けます。
雪かきのような、汗をかく作業ではとくに重要です。「汗冷え」は、外の寒さと同じくらい危険です。
私が、この記事を書いた理由
札幌に住んでいると、凍傷は遠い話ではありません。
それでも、正しい処置を知っている人は多くありません。
「雪でこする」という言い伝えは、いまも聞きます。ストーブの前で手をあぶる光景も、ふつうに見ます。
どちらも、悪化させる行為です。
そして凍傷は、災害のときに増えます。停電で暖房が止まり、雪かきが続き、車が動けなくなる。そういう場面がそろうからです。
覚えていただきたいのは、たった2つです。
こすらない。あぶらない。この2つを知っているだけで、いちばん多い間違いを避けられます。
よくある質問
Q. しもやけと凍傷を、どう見分ければいいですか?
感覚があるかどうかで見てください。
かゆい、痛がゆい、赤く腫れている。これはしもやけの特徴です。
感覚がない、白い、硬い。これは凍傷を疑う所見です。
ただし境目は連続的です。迷うなら、凍傷として扱ってください。そのほうが安全です。
Q. なぜ雪でこすってはいけないのですか?
凍った組織は、壊れやすくなっているからです。
細胞のなかに氷の結晶がある状態で摩擦を加えると、結晶が周りの組織をさらに傷つけます。
「摩擦で温める」という発想が、そもそも合っていません。
Q. カイロを直接あてても大丈夫ですか?
直接あてないでください。
凍傷の部位は感覚がありません。熱さが分からないまま、低温やけどを起こします。
カイロは予防に使うものです。すでに凍傷を疑う場合は、ぬるま湯を使ってください。
そして予防で使う場合も、肌に直接貼らないでください。衣類の上からです。
Q. 温めたあと、また外に出なければなりません
その場合は、温めない判断があります。
一度温めた組織が再び凍ると、損傷が最も大きくなるためです。
暖かい場所にとどまれる見込みがあるなら温める。戻らなければならないなら、保護して搬送を優先する。この順で考えてください。
Q. 子どもがしもやけになります。防げますか?
基本は同じです。濡らさないことと、締めつけないことです。
子どもは、手袋を濡らしても言いません。雪遊びのあとは、必ず確認してください。
そして長靴のなかは蒸れます。汗で濡れた靴下は、外の雪と同じ働きをします。替えの靴下を持たせてください。
くり返す場合は、皮膚科にご相談ください。
Q. 高齢の家族が心配です
感覚が鈍くなっている点に注意してください。
年齢を重ねると、寒さも痛みも感じにくくなります。本人の申告を待っていると遅れます。
雪かきのあとに、手や耳の色を周りが見る。これを習慣にしてください。
高齢のご家族の防寒については高齢の家族は寒さを感じにくい|冬の災害で先に守る首・頭・手・足の4か所に書きました。
Q. 凍傷と低体温症は、同時に起きますか?
起こります。そして低体温症のほうが優先されます。
凍傷は手足など末端の問題です。低体温症は、身体の中心の温度が下がる全身の問題です。
両方が疑われるときは、まず全身を温めることが優先されます。命に関わるのは低体温症のほうだからです。
低体温症については低体温症とは?深部体温35度以下で起きること|凍死は熱中症の2倍、屋内が3倍に整理しました。
Q. 温めるのに、湯がない場合はどうしますか?
災害時には、湯を用意できないことがあります。
その場合は、人の体温を使ってください。
手の指なら、自分のわきの下にはさむ。足の指なら、介助する人のわきや腹に当てる。
体温はおよそ36〜37度で、ちょうど適した温度帯です。熱すぎることがありません。
ただし介助する人が冷えてしまっては本末転倒です。複数人で交代してください。
Q. マイナス7度以下でなければ、凍傷になりませんか?
目安であって、絶対の基準ではありません。
マイナス7度以下に3時間以上、というのは一般的に言われている条件です。
ですが濡れていれば、もっと高い気温でも起こりえます。風が強ければ、条件はさらに厳しくなります。
気温の数字だけで安心しないでください。
Q. 手袋を外して作業したいのですが
細かい作業では、どうしても外したくなります。
その場合は、時間を区切ってください。
数分で戻す。そして戻したら、指を動かして血を回す。
薄手の手袋を中に一枚入れておけば、外側だけ外して作業できます。素手になる時間をゼロにするのが理想です。
Q. 凍傷の跡は残りますか?
深さによります。
浅いものであれば、跡を残さず治ることもあります。深いものでは、後遺症が残ることがあります。
ただしこれは医師が判断することで、私が申し上げられる範囲を超えます。
治療の見通しについては、受診先の医師にお尋ねください。
まとめ|こすらない、あぶらない、ぬるま湯で待つ
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| しもやけ | 血行不良による炎症。5度前後、氷点下でなくても起こる |
| 凍傷 | 組織が凍る損傷。目安はマイナス7度以下・3時間以上 |
| 見分け | かゆい・痛い=しもやけ/感覚がない・白い=凍傷を疑う |
| やってはいけない | こする/あぶる/熱い湯/電気毛布/水ぶくれをつぶす |
| 正しい処置 | 37〜39度のぬるま湯に15〜30分 |
| 最悪の行為 | 温めたあと、また凍らせること |
| 先に外すもの | 指輪・時計・きつい靴。腫れる前に |
| 予防 | 濡らさない/締めつけない/動かす/耳を覆う |
| 災害時 | 雪かき、車の立ち往生、停電した屋内 |
| 受診 | 感覚が戻らない、水ぶくれが出た時点で医療機関へ |
この冬、雪かきに出るときは替えの手袋をひとつ、玄関に置いてください。
濡れたら替える。それだけで、多くは防げます。
【出典】
MSDマニュアル家庭版「凍傷」(復温の温度37〜39度、所要15〜30分、やってはいけない処置、重症度の見分け方)
医療機関等の公開情報(しもやけと凍傷の違い、発生の目安となる温度と時間)
本記事は一般的な情報の提供を目的としています。診断や治療の判断は行えません。凍傷が疑われる場合や、症状が続く場合は医療機関にご相談ください。





