雪解けの季節は危ない|融雪洪水・地すべり・落雪・全層雪崩、雪の上の雨がいちばん怖い

雪解けの季節は危ない

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【この記事の要約】
雪国の災害は、雪が降っているときだけでは終わりません。春先に雪が解けるとき、もう一度危ない時期がやってきます。雪解け水で川があふれる(融雪洪水)、山の斜面が動く(地すべり・土砂災害)、屋根の雪がまとめて落ちる(落雪)、地面ごと滑り落ちる雪崩(全層雪崩)。とくに危ないのは、気温が急に上がった日と、雪の上に雨が降った日です。雪は一気に解け、大量の水が地面にしみ込み、川に流れ込みます。気象庁は、この危険があるときに「融雪注意報」を出します。春先に守ることは3つです。一、暖かい日と雨の日は、斜面や川に近づかない。二、屋根の下を歩かない。三、融雪注意報が出たら、土砂災害と洪水の情報を確かめる。

こんにちは。防災ベーシック編集部です。

札幌の3月は、雪解けの季節です。道路の雪が解けてぬかるみ、屋根からは雪がどさっと落ち、側溝には雪解け水が音を立てて流れます。

春が来たと感じる、うれしい時期でもあります。ですが雪国の防災では、この時期を「もう一つの危ない季節」と考えます。積もった雪が、水に変わるからです。

この記事では、雪解けの時期に起きる災害と、その見分け方、身の守り方をまとめます。

目次

結論|危ないのは「急に暖かい日」と「雪の上に降る雨」

一、気温が急に上がった日や、雪の上に雨が降った日は、斜面・がけ・川に近づかない
二、屋根の雪が解け始めたら、軒下を歩かない。車を停めない
三、融雪注意報が出たら、土砂災害と洪水の情報をあわせて確かめる
雪解けの災害は、雪が少なくなってきたころ、油断した時期に起きます。

「雪の上に雨が降る日」が、いちばん危ない条件です。

暖かい雨は、雪を一気に解かします。雨の水と、解けた雪の水が合わさって、短い時間に大量の水になります。ふだんの雨なら問題にならない量でも、雪解けの時期には川があふれ、斜面が崩れることがあります。

雪は、巨大な「水のたくわえ」

雪解けの災害を理解するには、積もった雪が、どれだけの水を含んでいるかを知るのが近道です。

雪の状態 1メートル積もったときの水の量(目安)
降ったばかりの新雪 雨にして50〜150ミリ分ほど
しまった雪 雨にして200〜300ミリ分ほど
春先のざらめ雪 雨にして400〜500ミリ分ほど

春先の雪が1メートル残っているところは、400ミリを超える雨が地面に降るのと同じ量の水を抱えていることになります。

400ミリの雨というと、大雨の災害が起きる規模です。それが、気温の上がった数日のうちに、少しずつ、あるいは一気に解け出す。雪解けの時期に水の災害が起きるのは、この量のためです。

雪解けの時期に起きる4つの災害

災害 何が起きるか 起きやすい場所
① 融雪洪水・浸水 雪解け水で川の水位が上がる。側溝があふれ、道路や低い土地が水につかる 川沿い、低い土地、排水の悪い場所
② 地すべり・土砂災害 雪解け水が地面にしみ込み、斜面が動く、崩れる 山沿い、がけの近く、地すべり地帯
③ 屋根からの落雪 屋根の雪がまとめて滑り落ち、下にいる人や車を直撃する 軒下、建物の間の通路、駐車場
④ 全層雪崩 地面の上から雪全体が滑り落ちる 山の斜面、とくに木の少ない急な斜面

① 融雪洪水・浸水

雪解け水は、時間をかけて川に流れ込み、川の水位を押し上げます。

そこに雨が加わると、ふだんの雨より少ない量でも、川があふれることがあります。また、市街地では側溝や排水口が雪や氷でふさがれていて、解けた水が流れずに道路にたまることがよくあります。

雪国の春のぬかるみや水たまりは、ありふれた光景です。ですが、低い土地の家では、床下に水が入ることもあります。

② 地すべり・土砂災害

雪解けの時期は、地すべりが多くなる時期として知られています。

雪解け水は、雨と違って、何日にもわたって少しずつ地面にしみ込み続けます。地面の中の水が増えると、斜面を支える力が弱まり、ゆっくりと、あるいはある日突然、斜面が動き出します。

地すべりは、広い範囲の土地が、そのまま滑るように動く現象です。家や道路、田畑が、土地ごと動いてしまいます。雪の多い地域の山沿いには、地すべりの起きやすい場所が多くあります。

③ 屋根からの落雪

雪解けの時期に、身近でいちばん多い事故がこれです。

気温が上がると、屋根に積もった雪の底が解けて、屋根と雪の間に水の層ができます。すると雪全体が滑りやすくなり、ある瞬間に、まとめて一気に落ちてきます。

落ちてくる雪は、しまって重くなった春の雪です。数百キロから、ときにはトンの単位になります。人に当たれば、命に関わります。

④ 全層雪崩

春先の雪崩は、地面の上から雪全体が滑り落ちる「全層雪崩」が多くなります。

気温が上がり、雪の底と地面の間に解けた水がたまることで、雪全体が地面から離れて滑り出します。大量の重い雪が一気に流れ落ちるため、破壊力が大きいのが特徴です。

雪崩の型と危ない斜面の見分け方は雪崩は時速200キロで逃げ切れない|危ない斜面の条件と、埋まった人を助ける15分に詳しく書きました。

融雪注意報を知っておく

気象庁は、雪が解けることで洪水や浸水、土砂災害が起きるおそれがあるときに、「融雪注意報」を出します。

項目 内容
意味 雪解けによって、洪水・浸水・土砂災害のおそれがある
判断のもと 積雪があり、雨の量、雪の解ける量、気温、風速などが基準に達すると予想されるとき
地域による違い 基準は地域ごとに違います。雪の少ない地域には基準がないところもあります

融雪注意報は、目立たない情報です。ですが、雪国の春に出たら、土砂災害と洪水の危険が高まっている合図です。

融雪注意報が出たら、あわせて「土砂災害警戒情報」と「キキクル(危険度分布)」を確かめてください。
雪解けの水は、雨と同じように地面にしみ込みます。土砂災害の危険度は、雨だけでなく雪解け水も含めて判断されます。

キキクルの見方はキキクルとは?気象庁の危険度分布の見方|紫と黒の違いと、避難を始める色にまとめています。

地すべり・土砂災害の前ぶれ

雪解けの時期の土砂災害には、前ぶれが現れることがあります。

前ぶれ 意味すること
地面にひび割れができる 斜面が動き始めている可能性
斜面から水が噴き出す、湧き水が急に増える・濁る 地面の中の水が増えている
家の戸が開きにくくなる、壁にひびが入る 土地ごと家が動いている可能性(地すべり)
木が傾く、電柱が傾く 地面が動いている
地鳴りがする、小石が落ちてくる 崩れる直前のことがあります

「家の戸が開きにくくなった」は、地すべりの特徴的な前ぶれです。

地すべりはゆっくり動くことが多いため、家が少しずつゆがみ、建具が合わなくなります。雪解けの時期にこうした変化に気づいたら、市町村に相談してください。ただし、前ぶれがないまま起きることもあります。前ぶれを待たずに、危ない場所に近づかないことが大切です。

土砂災害の警戒区域の調べ方は土砂災害警戒区域とは?イエローゾーンとレッドゾーンの違いと5分でできる調べ方で説明しています。

屋根の落雪から身を守る

守ること 理由
軒下を歩かない 落雪は予告なく起きます。建物の壁から離れて歩く
屋根の下に車を停めない 落雪で車がへこむ、窓が割れる
子どもを軒下で遊ばせない 雪山に登って遊ぶ子どもが、落雪に埋まる事故があります
建物の間の細い通路に注意 両側の屋根から落ちてくることがあります
玄関の上を確かめる 出入りするときに、上に雪が張り出していないか

暖かい日の昼すぎは、とくに落雪に注意してください。
日差しと気温で、屋根の雪の底が解け、いちばん落ちやすくなる時間帯です。

子どもの事故に気をつける

雪解けの時期には、屋根から落ちた雪や、除雪で積み上げた雪の山が、家のまわりにできます。子どもにとっては格好の遊び場です。

ですが、その雪山の上に、さらに屋根から雪が落ちてくることがあります。子どもが埋まり、発見が遅れる事故も起きています。軒下の雪山では遊ばせないよう、家族で話しておいてください。

融雪洪水と浸水への備え

備え 内容
側溝と排水口の雪を取り除く 雪や氷でふさがると、解けた水が流れずにあふれます
家のまわりの雪をどける 建物の土台のまわりに雪が残ると、解けた水が床下に入りやすくなります
川の近くでは、水位の情報を確かめる 雪解けの時期は、晴れていても川の水位が上がることがあります
低い土地の家 雨の予報が出たら、浸水に備える

側溝の雪を取り除くのは、地域全体で取り組むと効果が大きい作業です。一軒だけ流れても、下流がふさがっていれば水はあふれます。町内会で春先に一斉に行う地域もあります。

川の近くでの注意

雪解けの時期の川は、見た目以上に危険です。

危険 理由
水が冷たい 雪解け水は0度に近い冷たさ。落ちると短時間で体が動かなくなります
水量が多く、流れが速い 晴れていても、上流の雪解けで増水しています
川岸の雪が張り出している 川岸だと思って踏むと、下が空洞で川に落ちる
川の氷が薄い 冬に凍っていた川の氷が、春には薄くなって割れます

川岸の雪の張り出しは、雪国の春に特有の危険です。川に向かって雪がひさしのように張り出し、その下はもう川の上です。子どもが川岸で遊んで落ちる事故が起きています。

雪解けの時期の道路と運転

雪解けの季節は、道路の状態が一日のうちに大きく変わります。

時間帯 道路の状態 気をつけること
朝 前の日に解けた水が、夜のうちに凍っている つるつるの路面。スピードを落とす
昼 雪が解けてぬかるみ、水たまりができる 水はねで歩行者に泥をかけないように
夕方 気温が下がり、ぬかるみがまた凍り始める わだちで車が取られやすい

雪解けの朝は、真冬より滑りやすいことがあります。

昼に解けた水が夜に凍ると、表面がなめらかな氷の膜になります。見た目はただ濡れているだけに見えるのに、じつは凍っている。ブラックアイスバーンと同じ状態です。詳しくはブラックアイスバーンとは?黒く濡れて見える氷|JAF実測で制動距離は約1.8倍に書きました。

道路の穴に注意

雪解けの時期には、道路に穴(ポットホール)ができやすくなります。

冬の間、アスファルトのすき間に入った水が凍ったり解けたりを繰り返し、舗装が割れてはがれるためです。水たまりの下に穴が隠れていることもあります。水たまりに勢いよく入ると、タイヤやホイールを傷めることがあるので、速度を落としてください。

雪解けと家の被害

被害 何が起きるか 対策
すが漏り 屋根の雪が解けた水が、軒先で凍ってせき止められ、屋根の中に入り込む つららや氷の塊を早めに取る。断熱を見直す
床下への浸水 家のまわりの雪解け水が、土台から入る 家のまわりの雪を早めにどける
雨どいの破損 雪の重みや、落雪で雨どいが壊れる 春に点検する
カーポート・物置の破損 重い春の雪で、骨組みが曲がる 湿った雪が積もったら早めに下ろす

すが漏りは、雪国の春に多い雨漏りです。天井にしみが出てきたら、すが漏りを疑ってください。仕組みと対策はつららは断熱不足のサイン|真下から突くと危険、すが漏りを防ぐ3手順にまとめています。

雪が消えたあとに、見つかるもの

雪が解けると、冬の間に雪の下に隠れていたものが出てきます。

見つかるもの 確かめること
雪の重みで壊れた物 フェンス、植木、物置。写真を撮り、保険の対象か確かめる
家の基礎や外壁の傷み 落雪や除雪機で傷ついていないか
地面のひび割れ・陥没 地すべりや、地下の配管の破損の可能性。市町村や水道局に相談
水道メーターのまわりの漏れ 冬の凍結で配管にひびが入っていないか。メーターで確かめる

雪が消えたら、家のまわりを一周してください。冬の間に起きた被害は、雪が解けて初めて分かることが多いのです。

水道管の凍結による漏水の確かめ方は水道管の凍結はマイナス4度から|熱湯で解かすと割れる、破裂したら元栓を先に閉めるに書きました。

春先の天気は変わりやすい

雪解けの時期は、天気が大きく揺れる季節でもあります。

現象 起きること
急な気温の上昇 一気に雪が解け、融雪洪水や落雪、全層雪崩が起きやすくなる
雪の上に降る雨 雪解けを急に進め、大量の水を生む
寒の戻り 一度解けかけた雪や水が、また凍る。路面が危険に
春の嵐(発達した低気圧) 強い風と雨。雪解けと重なると被害が大きくなる

「急に暖かくなる」と「雨が降る」が重なる日は、雪解けの災害がいちばん起きやすい条件です。天気予報で、気温が平年より大きく上がる、雪の上に雨が降るという予報が出たら、斜面と川と軒下に近づかない日だと考えてください。

札幌の雪解けの季節に思うこと

札幌では、3月に入ると、道路の雪山が少しずつ小さくなっていきます。雪解け水で側溝が勢いよく流れ、屋根からは雪がどさっと落ちる音が聞こえます。

この季節、私がいちばん気をつけているのは、軒下です。冬の間は屋根の雪も安定していますが、暖かくなると、予告なしにまとめて落ちてきます。歩道を歩くときも、建物からは少し離れて歩くようにしています。

冬が終わりかけて、気がゆるむ時期に、雪国の最後の事故が起きます。
春が来たと感じたら、軒下と川に気をつける季節が来たと考えてください。

雪解けの時期に、山や川へ行く方へ

春の山菜採り、雪解けの渓流釣り、残雪の山歩き。春先に山や川へ出かける方は、雪解けの危険をとくに意識してください。

場面 危険 対策
山菜採り 斜面の雪の下が空洞になっていて、踏み抜く。全層雪崩 雪の残る急斜面の下に入らない
渓流釣り 雪解けで増水し、流れが速い。水が冷たい 水量が多い日は川に入らない。救命胴衣を着る
残雪の山歩き 雪の下を沢が流れていて、踏み抜く(スノーブリッジ) 沢の上の雪を歩かない
林道の運転 雪解けで路肩が緩み、崩れる。落石 通行止めの情報を確かめる

雪の下を沢が流れている場所は、春の山でいちばん気づきにくい危険です。

雪は表面から見ると一面の白ですが、その下では雪解け水が沢となって流れ、雪を下から削っています。見た目は平らな雪原でも、踏むと抜けて、冷たい沢に落ちることがあります。沢の近くでは、雪の上を歩かないようにしてください。

雪解けの時期に見直す、家の防災

冬が終わる時期は、家の防災を冬から春へ切り替えるよい機会です。

見直すこと 内容
持ち出し袋の衣替え 冬用の防寒具を減らし、春夏に必要な物に入れ替える
灯油の処分 使い残した灯油は、越冬させずに使い切るか処分する
家のまわりの点検 雪で壊れた所、雨どい、外壁、屋根を確かめる
水道の漏水確認 冬の凍結で傷んだ配管がないか、メーターで確かめる
雨の季節への備え 春から夏は大雨の季節。排水口の掃除、ハザードマップの確認

使い残した灯油は、翌年まで持ち越さないでください。1年たった灯油は変質し、ストーブの不完全燃焼や故障の原因になります。詳しくは去年の灯油は使わないでください|変質のサインと、1年で処分すべき理由に書きました。

持ち出し袋の季節ごとの見直しは、防災用品点検の日は年4回|3月・6月・9月・12月の1日に見る5つにまとめています。3月1日の点検の日が、ちょうど雪解けの時期と重なります。

地域で取り組む雪解けの備え

雪解けの災害は、一軒の家だけでは防げないものが多くあります。

地域でやること 効果
側溝と排水路の一斉清掃 解けた水がスムーズに流れ、道路や家への浸水を防ぐ
高齢者世帯の軒下の見回り 落雪の危険がある場所を、声をかけ合って確かめる
危ない斜面や川岸の情報共有 子どもが近づかないよう、地域で見守る
地すべりの前ぶれの報告 地面のひびや湧き水の変化に気づいたら、市町村へ

地すべりの前ぶれは、ふだんその土地をよく知っている人ほど気づけます。「いつもと違う」という感覚が、早い避難につながります。気づいたことを地域で共有し、市町村に伝えてください。

雪解けの災害が起きやすい日を、予報で見分ける

雪解けの災害は、天気予報の数字から、ある程度は前もって分かります。

予報に出る言葉・数字 意味 とる行動
最高気温が平年より大きく高い 雪解けが一気に進む 軒下と斜面に近づかない
雪の地域で、雨の予報 雪の上に雨が降る。最も危ない組み合わせ 川と斜面から離れる。土砂災害の情報を確かめる
融雪注意報 雪解けによる洪水・土砂災害のおそれ キキクルと土砂災害警戒情報を確かめる
南風が強まる 暖かい空気が入り、雪解けを進める 落雪に注意

「雪の地域で雨」という予報を見たら、それが雪解けの災害への合図です。雨そのものの量が少なくても、雪解けと重なることで大量の水になります。

そして暖かい南風も、雪解けを急に進めます。春先に発達した低気圧が日本海を通ると、南から暖かい風が吹き込み、気温が一気に上がることがあります。このときは雪解けと強風と雨が重なり、雪崩や落雪、融雪洪水が同時に起きやすくなります。

雪解けの季節の、子どもの安全

雪解けの時期は、子どもにとって危ないものが増える季節です。雪山、ぬかるみ、増水した川。どれも遊び場に見えます。

場所 危険 伝えること
軒下の雪山 屋根から雪が落ちて埋まる 「屋根の下の雪山では遊ばない」
川岸・用水路 張り出した雪を踏み抜いて落ちる。水は冷たく流れが速い 「春の川には近づかない」
道路わきの雪山 車から見えにくく、飛び出すとはねられる 「雪山の陰から道路に出ない」
凍った水たまり 氷が薄く、割れて水に落ちる 「氷の上に乗らない」

「道路わきの雪山の陰」は、雪国の春に多い交通事故の原因です。雪山で子どもの姿が隠れ、車の運転手から見えません。子どもには「雪山の陰から飛び出さない」、運転する人には「雪山の近くは速度を落とす」を、それぞれ伝えてください。

雪解けの季節の始まりに、一度だけ家族で話しておくと効果があります。「屋根の下」「春の川」「雪山の陰」。この3つを覚えておくだけで、雪解けの季節の子どもの事故は大きく減らせます。

冬から春へ、防災の切り替えの流れ

雪国の防災は、季節ごとに危険が入れ替わります。雪解けの時期は、冬の危険と春の危険が重なる、ちょうど境目です。

時期 主な危険 備え
12月〜2月(真冬) 大雪、雪下ろしの事故、立ち往生、停電、凍結 暖房、燃料、除雪の体制
3月〜4月(雪解け) 融雪洪水、地すべり、落雪、全層雪崩 軒下と斜面と川に近づかない。側溝の清掃
5月〜(春から夏へ) 大雨、台風、熱中症 ハザードマップの確認、排水口の掃除、暑さへの備え

雪解けの時期は、冬の備えを片づけながら、春夏の備えを始める時期でもあります。灯油を使い切り、持ち出し袋を衣替えし、ハザードマップを見直す。季節の変わり目を、防災の見直しの日にしてください。

よくある質問

Q. 雪解けの時期は、何月ごろですか

地域によって違います。平地では2月から3月、北海道や山沿いでは3月から5月ごろが雪解けの時期です。

山に残った雪は、平地の雪がなくなったあとも解け続けます。そのため、平地ではもう春なのに、山から流れてくる川が増水していることがあります。

Q. 晴れているのに、川の水が多いのはなぜですか

上流の山で、雪が解けているからです。

晴れて気温が上がるほど、山の雪はよく解けます。その水が、時間をかけて下流に届きます。だから雪解けの時期は、晴れた日に川の水が増えるという、ふだんと逆のことが起きるのです。

Q. 屋根の雪が落ちそうなとき、自分で落としてもよいですか

地上から、長い柄の道具で落とせる範囲にとどめてください。春の雪は重く、屋根の上は滑りやすくなっています。

屋根に上がっての作業は、雪解けの時期はとくに危険です。雪ごと滑り落ちる事故が起きやすくなります。雪下ろしの安全は雪下ろしの事故は年100人以上|死者の8割が高齢者、守るのは命綱・2人以上・はしごの固定に書きました。

Q. 地すべりの危険がある土地かどうか、どう調べればよいですか

市町村のハザードマップと、土砂災害警戒区域の情報で調べられます。

国土交通省の「重ねるハザードマップ」でも、住所を入れれば土砂災害の危険のある区域を確かめられます。雪国の山沿いに住んでいる方は、一度確かめておいてください。

Q. 融雪注意報が出たら、避難が必要ですか

融雪注意報だけで、すぐに避難が必要になるわけではありません。注意報は「災害が起きるおそれがある」という段階です。

ただし、斜面の近くやがけの下、川沿いの低い土地に住んでいる方は、注意報をきっかけに情報を確かめ、土砂災害警戒情報や避難情報が出たら、ためらわずに避難してください。雪解けの時期の土砂災害は、雨が降っていない日にも起きることがあります。

Q. 雪が少ない年でも、雪解けの災害は起きますか

雪が少なければ、雪解けの水も少ないので、危険は小さくなる傾向があります。

ただし、少ない雪でも、急な気温の上昇と雨が重なれば、局地的に災害は起きます。また、平地の雪が少なくても、山には雪が残っていることがあります。その山の雪が解けて、川の下流に影響することもあります。

Q. 屋根の雪が一度に落ちないようにする方法はありますか

雪止め金具を屋根に取り付けると、雪が一度に滑り落ちるのを防げます。

ただし、雪止めは雪を屋根に留めるものなので、屋根にかかる重さは残ります。雪止めがあっても、軒下が完全に安全になるわけではありません。取り付けや交換は、屋根の業者に相談してください。

Q. 雪解けの時期に、車で気をつけることは何ですか

朝の凍結、道路の穴、雪山の陰からの飛び出しの3つです。

雪解けの朝は、前日に解けた水が凍って、見た目は濡れているだけの路面が、じつは凍っていることがあります。昼はぬかるみと水たまり、その下に道路の穴が隠れていることもあります。そして道路わきに残った雪山の陰から、人や車が急に出てくることがあります。春先も、冬と同じくらい慎重に運転してください。

Q. 冬用タイヤは、いつ交換すればよいですか

地域の雪解けの状況を見て、急がずに判断してください。

春先には寒の戻りで、急に雪が降ることがあります。平地の雪が消えても、峠や山沿いの道では雪や凍結が残っています。早く交換しすぎて、春の雪で立ち往生することもあるので、出かける先の路面の状況も考えて決めてください。

Q. 地すべりが起きたら、どう逃げればよいですか

地すべりの動く方向に対して、横の方向へ逃げてください。斜面の下の方向へ逃げると、動いてくる土地に追いかけられます。

そして、前ぶれに気づいた時点で、動き出す前に避難することがいちばんです。地面のひび、湧き水の変化、家の戸が開きにくい。こうした変化に気づいたら、市町村に連絡し、指示を待たずに安全な場所へ移ってください。地すべりは、いったん大きく動き出すと止められません。

Q. 雪解け水で床下が浸水したら、どうすればよいですか

水が引いたら、床下を乾かし、消毒してください。湿ったままにすると、カビや木材の腐れの原因になります。

床下の換気口を開け、送風機などで風を通します。被害の写真を撮っておくと、保険や市町村の支援の手続きに使えます。床下の浸水が繰り返し起きる家は、家のまわりの排水や、雪をどける場所を見直すと改善することがあります。

まとめ

要点 内容
雪は水のたくわえ 春の雪1メートルは、雨400ミリを超える水を抱えていることがある
危ない日 気温が急に上がった日、雪の上に雨が降った日
4つの災害 融雪洪水・浸水、地すべり・土砂災害、屋根の落雪、全層雪崩
情報 融雪注意報が出たら、土砂災害警戒情報とキキクルも確かめる
地すべりの前ぶれ 地面のひび、湧き水の変化、戸が開きにくくなる
落雪 軒下を歩かない、車を停めない。暖かい日の昼すぎは要注意
川 雪解け水は冷たく流れが速い。川岸の雪の張り出しに注意

雪解けは、春の訪れを告げる季節です。その喜びの中に、雪国の最後の危険が隠れています。

暖かい日と雨の日は、斜面と川と軒下に近づかない。それだけで、雪解けの季節の事故の多くは避けられます。

今年の春、雪が解け始めたら、家族で「屋根の下」「春の川」「雪山の陰」の3つを確かめ合ってください。そして雪の地域に雨の予報が出た日は、斜面と川から離れる日にする。それが、雪国の冬を最後まで無事に終えるための、いちばん確かな方法です。長い冬を越えたあとの、最後のひと踏ん張りだと思って、春の訪れを安全に迎えてください。雪国の冬は、雪がすっかり消えるまで終わりません。最後まで、軒下と川と斜面に気を配ってください。それが、雪国で暮らす私たちの春の約束です。

【出典】
気象庁(融雪注意報の意味と発表の考え方、土砂災害警戒情報、キキクル)/国土交通省(地すべりの前ぶれ、重ねるハザードマップ)
雪の中の水の量は、雪の状態によって大きく変わります。本文の数字は目安です。土砂災害の危険を感じたら、前ぶれを待たずに安全な場所へ移り、市町村の避難情報に従ってください。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

防災ベーシック編集部です。公的機関の情報をもとに、防災・備蓄・災害対策の基本をわかりやすくお伝えします。

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