土砂災害警戒区域とは?イエローゾーンとレッドゾーンの違いと5分でできる調べ方を解説【2026年最新】

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【この記事の要約】
土砂災害警戒区域は、土砂災害防止法にもとづいて都道府県が指定する区域です。通称イエローゾーンと呼ばれます。さらに危険度が高い範囲は土砂災害特別警戒区域、通称レッドゾーンに指定され、こちらには建築や開発の規制がかかります。全国の指定数は、令和七年度末の時点で警戒区域がおよそ七十万か所、特別警戒区域がおよそ六十一万か所にのぼります。この記事では、二つの区域の違い、指定される範囲がどう決まるのか、五分でできる調べ方、不動産を借りたり買ったりするときの確認方法、そして「イエローゾーンは安全側」という誤解について整理しました。

結論からお伝えします。イエローゾーンは、安全という意味ではありません。

ここを誤解している方が、とても多いのです。色が薄いから危険も薄い、と受け取ってしまう。しかし実際には、イエローゾーンは「命に危害が及ぶおそれがある範囲」です。危険がないと判断された場所ではありません。

私は防災士として、住まいの安全について相談を受けることがあります。そこでいちばん多い誤解が、これです。「うちは黄色だから、まだ大丈夫ですよね」という言葉を、何度も聞きました。

違います。色の違いは、危険の有無ではなく、建物が壊れるかどうかの違いです。そして避難が必要かどうかで言えば、どちらも必要です。この記事では、そこを整理していきます。

目次

土砂災害警戒区域とは何か

土砂災害警戒区域は、土砂災害防止法という法律にもとづいて指定される区域です。この法律が制定されたのは、二〇〇〇年のことです。

きっかけは、一九九九年六月に広島市や呉市で発生した豪雨災害でした。住宅地のすぐ背後で土石流やがけ崩れが多発し、多くの方が亡くなっています。危険な場所を、あらかじめ住民に知らせておくべきだ。その反省から生まれた仕組みです。

二つの区域があります

土砂災害警戒区域 土砂災害特別警戒区域
通称 イエローゾーン レッドゾーン
意味 住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある区域 建築物に損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域
行われること 危険の周知、警戒避難体制の整備、ハザードマップへの掲載 左記に加えて、開発行為の許可制、建築物の構造規制、移転等の勧告
建てられるか 制限なし 構造を強化すれば可能。建築確認で審査される

表を見ていただくと、違いがはっきりします。イエローは「人が危ない」、レッドは「建物も壊れる」。これが境目です。

言い換えると、レッドゾーンは、建物の中にいても助からない可能性がある範囲だということになります。イエローゾーンは、建物は残るかもしれないが、人は危ない範囲です。

ですから、どちらも避難が必要です。「黄色だから在宅で様子を見る」という判断は、この定義に照らすと成り立ちません。

全国にどれだけあるのか

数字を挙げておきます。令和七年度末の時点で、土砂災害警戒区域はおよそ七十万か所、土砂災害特別警戒区域はおよそ六十一万か所が指定されています。

七十万という数字に驚かれるかもしれません。日本の国土の多くが山地であり、その裾野に人が住んでいます。危険な場所に住んでいる人は、例外ではなく、かなりの数にのぼります。特別な立地の話ではない、ということです。

そして、警戒区域のうち相当な割合が特別警戒区域にも指定されています。イエローの中に、レッドがあるという関係です。

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三つの種類があります

土砂災害は、現象によって三つに分けられます。指定される区域も、それぞれ別に設定されます。

現象 どんな場所が対象か
急傾斜地の崩壊(がけ崩れ) 傾斜度30度以上、高さ5メートル以上の斜面とその周辺
土石流 渓流と、その下流の勾配のある区域
地すべり 地すべりが起きている、または起きるおそれのある区域とその下流側

自分の家が指定されている場合、どの現象で指定されているかを確認してください。備え方が変わるからです。

がけ崩れなら、斜面に面した部屋で寝ないという対策が効きます。土石流なら、渓流から横方向へ逃げる必要があります。地すべりなら、ふだんから地面や擁壁の変化を見ておくことが有効です。それぞれがけ崩れ土石流地すべりの記事にまとめました。

範囲は、どう決まるのか

線の引き方には、根拠があります。感覚で決めているわけではありません。

がけ崩れの場合。傾斜度三十度以上、高さ五メートル以上の斜面が対象です。そして、斜面の下端からがけの高さの二倍にあたる距離、上端からは水平距離で十メートルの範囲が指定されます。

ここで注意していただきたいのは、がけの上も指定されるという点です。上に住んでいる人は、下の斜面が崩れたときに地面ごと落ちます。眺めのよい高台が、実は危険な位置にあるということが起こります。水害には強い立地であっても、土砂災害には弱い。災害の種類によって、安全な場所は入れ替わります。

土石流の場合。渓流の出口から下流に向かって、一定の勾配がある範囲が指定されます。土石流は谷を流れ下り、扇状に広がって堆積します。その広がる範囲が対象です。

地すべりの場合。動いている地塊そのものに加えて、その下流側にも範囲が設定されます。押し出された土砂が届く可能性があるためです。

指定は、危険を新しくつくるものではありません

ここで、指定に対する受け止め方についても触れておきます。

区域に指定されると、不動産の取引に影響が出るのではないか。地域の印象が悪くなるのではないか。こうした心配から、指定に消極的な声が上がることがあります。

気持ちは理解できます。ただ、指定は、危険を新しくつくり出すものではありません。もともとそこにあった危険を、地図の上に書き込む作業です。

指定がなくても、斜面は同じ角度で立っていますし、渓流は同じ場所を流れています。変わるのは、住んでいる人がそれを知っているかどうかだけです。

そして、知っていれば行動が変わります。雨の夜に、逃げるかどうかを決められます。その差が、生死を分けます。これが、この制度が犠牲の上に生まれた理由でもあります。

五分でできる調べ方

ここからが実用編です。難しくありません。

方法一、都道府県のマップを見る

各都道府県が、土砂災害警戒区域の地図を公開しています。「県名 土砂災害警戒区域 マップ」で検索すれば見つかります。

住所を入力すると、地図の上に色が表示されます。黄色がイエローゾーン、赤がレッドゾーンです。自宅が色のついた範囲に入っているかどうかが、その場で分かります。多くのサイトでは、区域をクリックすると指定の番号や現象の種類も表示されます。そこまで見ておくと、後の備えが具体的になります。

方法二、重ねるハザードマップを使う

国土交通省が運営している地図です。土砂災害だけでなく、洪水、津波、高潮の想定も同じ画面に重ねて表示できます。

引っ越し先を検討しているときや、複数の災害をまとめて確認したいときには、こちらが便利です。地図の読み方はハザードマップの見方・読み方を徹底解説にまとめました。

方法三、市町村の紙のハザードマップ

役所の窓口で受け取れます。多くの市町村では、公式サイトからも見ることができます。転入したときに配られることもあります。紙の地図には、避難所の位置や連絡先が一緒に載っているという利点があります。停電で画面が見られないときにも使えます。

調べるときの三つのコツ

一、自宅だけで終わらせない。勤務先、子どもの学校、通学路、親の家。この四つも確認してください。人は一日のうち、自宅にいない時間のほうが長いこともあります。

二、避難所そのものを調べる。指定避難所が土砂災害警戒区域の中にある例は、実際に存在します。その場合、土砂災害のときはその避難所を使わないという判断が必要です。これは、意外と見落とされる確認項目です。

三、経路を見る。自宅も避難所も安全でも、その間の道が危険な区域を通っていれば意味がありません。地図の上で線を引いて、色にかからないルートを探してください。

とくに山間部では、避難所へ向かう道が谷沿いを通っていることがあります。その道こそが、土石流の通り道です。雨のなかを歩いて避難するより、頑丈な建物の二階にとどまるほうが安全な場合もあります。経路を確認するというのは、こうした判断の材料を得るための作業でもあります。

そして、遠回りでも安全な道があるなら、それを家族で共有してください。最短経路が、最善の経路とは限りません。

似た名前の区域が、いくつもあります

調べていると、別の名前の区域に出会うことがあります。混乱しやすいので、整理しておきます。

区域の名前 根拠となる法律 目的
土砂災害警戒区域・特別警戒区域 土砂災害防止法 危険を知らせ、逃げるため
急傾斜地崩壊危険区域 急傾斜地法 崩壊を防ぐ工事と、助長する行為の規制
地すべり防止区域 地すべり等防止法 地すべりを防ぐ工事と行為の規制
砂防指定地 砂防法 砂防設備の設置と、土地の行為制限

覚え方は単純です。土砂災害警戒区域だけが「逃げるための指定」で、ほかの三つは「工事と規制のための指定」です。

だから、目的が違います。工事のための区域に指定されているからといって、避難の対象になるわけではありません。逆に、工事が行われている場所でも、土砂災害警戒区域に指定されていることがあります。

もうひとつ、古い資料で見かける言葉があります。土砂災害危険箇所です。これは、土砂災害防止法ができる前に行われていた調査による箇所を指します。全国で区域の指定が進んだ現在は、土砂災害警戒区域を見るのが基本になっています。古い地図を持っている方は、最新のものに更新してください。

なぜ、危険な場所に人が住んでいるのか

七十万か所という数字を見ると、ひとつの疑問が浮かびます。なぜ、そんなに多くの人が危険な場所に住んでいるのか。

答えは、日本の地形にあります。

国土の多くが山地です。平らな土地は限られています。そして、その限られた平地の多くは、山から流れ出した土砂が積もってできたものです。

渓流の出口には、扇形に広がった土地ができます。扇状地と呼ばれるこの地形は、水が得られ、土が肥え、日当たりもよい。人が住むには適しています。

しかし、その土地は過去に土石流が運んできた土砂でできています。つまり、扇状地に住むということは、過去に土石流が届いた場所に住むということです。

同じことは、地すべり地形にも言えます。地すべりでできた平坦地は、山間部では貴重な平地です。集落や棚田が、その上に築かれている例は少なくありません。

人が住みやすい場所と、土砂が届く場所が重なっている。これが、日本で土砂災害が繰り返される構造的な理由です。

ですから、この記事は「危険な場所から出ていきましょう」という話ではありません。そこに住み続けることを前提に、知ったうえで備えるという話です。

施設を運営している方へ

個人の住まいだけでなく、施設にも関わる制度があります。

土砂災害警戒区域の中にある要配慮者利用施設、つまり高齢者施設、障害者施設、保育所、幼稚園、学校、病院などについては、避難確保計画の作成と、それにもとづく避難訓練の実施が法律で義務づけられています。

これは、形式を整えるための書類ではありません。過去の災害では、こうした施設で入所者が犠牲になる事例が繰り返し起きています。理由は明確で、自力で避難することが難しい方が多く、移動に時間がかかるからです。

ですから、該当する施設では、避難を始める判断を一般の家庭より早い段階に置く必要があります。レベル4土砂災害危険警報を待っていては間に合いません。大雨警報の段階、あるいはその前から動きはじめる想定が求められます。

ご家族が施設に入居している方は、その施設が区域内にあるか、避難確保計画があるかを一度尋ねてみてください。利用者の家族が関心を持っていることは、施設側にとっても意味のある圧力になります。

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指定は、どうやって決まるのか

区域の指定には、手順があります。

まず、都道府県が基礎調査を行います。地形、地質、それに土地の利用状況を調べ、危険がおよぶ範囲を割り出していきます。

次に、その結果が公表されます。そして、関係する市町村の意見を聞いたうえで、都道府県知事が正式に指定します。

ここで知っておいていただきたいことがあります。基礎調査は、一度きりではありません。おおむね五年ごとに実施され、必要があれば区域が見直されます。

つまり、以前調べたときは色がついていなかった場所が、いま指定されていることがあります。造成や工事で地形が変われば、条件も変わります。調査の精度が上がって、範囲が見直されることもあります。数年に一度は確認し直してください。

レッドゾーンにかかる規制

特別警戒区域には、法律にもとづく規制がかかります。具体的に見ていきます。

特定の開発行為には許可が必要です。住宅や高齢者施設などを新たに建てるための開発を行う場合、都道府県知事の許可を受けなければなりません。

建築物の構造が規制されます。想定される土砂の力に耐えられる構造にすることが求められ、建築確認の際に審査されます。壁を厚くする、防護壁を設けるといった対応が必要になります。

移転の勧告が行われることがあります。著しい損壊が生じるおそれのある建築物の所有者に対して、移転などの措置が勧告される場合があります。あわせて、移転を支援する制度を設けている自治体もあります。

ここで、誤解を解いておきます。レッドゾーンに指定されても、住めなくなるわけではありません。条件を満たせば建てられますし、既存の建物に住み続けることもできます。指定は退去命令ではなく、条件つきで住むための線引きです。

家を借りる、買うときの確認

不動産取引では、法律による守りがあります。

土砂災害警戒区域や特別警戒区域に該当する物件については、宅地建物取引業者に重要事項として説明する義務があります。賃貸でも売買でも同じです。

ただし、注意点があります。説明を受けるのは、契約の直前です。その段階では、もう心は決まっています。他の物件と比べる余裕もありません。

ですから、私はいつもこうお伝えしています。探しはじめの段階で、自分で調べてください。候補の住所が分かった時点で、地図を開く。それだけで、選択肢を持ったまま判断できます。

あわせて、次の点も見ておくと安心です。

過去の空中写真と見比べる。国土地理院のサイトで、造成される前の地形が確認できます。谷を埋めた土地なのか、山を削った土地なのかが読み取れます。

擁壁の状態を見る。ふくらみ、ひび割れ、水抜き穴の詰まり。内見のときに、建物だけでなく敷地の周りも見てください。

雨の日に行ってみる。手間はかかりますが、水の流れ方は雨の日にしか分かりません。

指定されていたら、何をするか

自宅が区域内だと分かったとき、やることを整理します。

一、どの現象で指定されているかを確認する。がけ崩れ、土石流、地すべり。備え方が変わります。

二、避難先と経路を決める。危険な区域の外にある場所を選びます。複数持っておいてください。

三、避難のスイッチを決める。「レベル4土砂災害危険警報が出たら」「危険度分布が紫になったら」。条件で決めると迷いません。判断の仕方はレベル4土砂災害危険警報とは?大雨警報との違いと避難の判断にまとめました。

四、寝る場所を見直す。がけ崩れの区域なら、斜面と反対側の二階を寝室にする。これは費用ゼロでできる、効果の高い対策です。

五、火災保険を確認する。土砂災害による建物被害は、水災補償の対象になることが一般的です。契約によっては水災を外している場合があるため、証券を一度見てください。

六、地域で共有する。同じ区域の中には、ほかの家もあります。誰が避難に時間がかかるかを把握しておくと、いざというときに動けます。

この六つ目は、見落とされがちですが効果が大きいものです。土砂災害は、一軒だけを襲うことはまれです。同じ斜面の下にある家は、まとめて危険な範囲に入っています。ということは、避難の判断も一緒にできるということです。

誰か一人が動きはじめると、周りも動きます。逆に、誰も動かないと、全員が様子を見ます。最初に動く人になることが、地域全体の安全につながる場面があります。

地図の色を、行動に変える

調べて終わり、では意味がありません。色を見た後にやることを、順番にまとめます。

一、家族全員で同じ地図を見る

調べた人だけが知っている状態は、危険です。雨の夜に、家族の判断が割れます。

地図を開いて、自宅の位置を指さす。それだけで、話が具体的になります。子どもがいるなら、一緒に見てください。学校の位置、通学路も一緒に確認します。

二、その場で一つだけ決める

地図を見た直後は、行動に移りやすいタイミングです。ここで、何か一つ決めてしまってください。

寝室を斜面の反対側に移す。避難先を決める。持ち出し袋を玄関に置く。知った日に、何かを一つ動かす。これが、いちばん確実な進め方だと思っています。

三、避難の合図を紙に書く

「レベル4土砂災害危険警報が出たら、全員で避難する」。これを紙に書いて、冷蔵庫に貼ってください。

頭の中にあるだけでは、当日に揺らぎます。紙に書いてあると、迷ったときに戻る場所ができます。

四、写真を撮っておく

自宅の周りの斜面や擁壁を、写真に撮っておいてください。日付が記録されます。

そして、季節の変わり目にもう一度撮る。ひび割れが広がっていないか、湧き水が増えていないか。比べることで、変化が見えます。地すべりや擁壁の異変は、こうして見つかります。

五、数年に一度、調べ直す

基礎調査は、おおむね五年ごとに行われます。区域が追加されることも、範囲が変わることもあります。一度調べたから終わり、にはしないでください。

よくある質問

イエローゾーンなら避難しなくてよいですか

いいえ。イエローゾーンは、住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある区域です。建物が耐えられる可能性があるというだけで、そこにいる人が無事でいられる保証はありません。レベル4土砂災害危険警報が出たら、イエローでもレッドでも避難してください。

区域に入っていなければ安全ですか

絶対の安全ではありません。指定は、一定の基準にもとづく調査の結果です。想定を超える規模の災害が起きれば、区域の外にも被害が及ぶことがあります。また、まだ調査が行われていない場所や、造成で地形が変わった場所もあります。周囲に斜面や渓流があるなら、区域外でも警戒してください。

指定されると土地の価値が下がりませんか

取引において影響が出る可能性は否定できません。ただ、指定は危険を新たにつくり出すものではなく、もともとあった危険を明らかにするものです。指定がなくても、危険は同じだけそこにあります。そして、知らないまま住み続けるほうが、はるかに大きな損失につながります。

賃貸でも関係ありますか

あります。建物の損害は所有者の問題ですが、そこで暮らす人の安全は別です。該当する物件であれば、契約前の重要事項説明で伝えられます。入居後は、避難先と経路を確認しておいてください。

区域の指定は変わりますか

変わります。基礎調査はおおむね五年ごとに実施され、必要に応じて区域が見直されます。以前は色がついていなかった場所が、いま指定されていることがあります。数年に一度は確認し直すことをおすすめします。

レッドゾーンの家に住み続けてよいのですか

住めます。指定は退去を命じるものではありません。ただし、著しい損壊のおそれがある建築物については、移転等の勧告が行われる場合があります。自治体によっては、移転や補強に対する支援制度があります。お住まいの市町村に確認してみてください。

調べたら区域内でした。引っ越すべきでしょうか

そこまで申し上げるつもりはありません。日本の多くの地域が、何らかの災害リスクを抱えています。大事なのは、知ったうえで住むことです。避難のスイッチを決め、寝る部屋を変え、経路を確認する。それだけで、結果は大きく変わります。

マンションでも関係ありますか

あります。鉄筋コンクリートの建物は木造より頑丈ですが、低層階に土砂が入る可能性と、一階部分がふさがれて出入りできなくなる可能性があります。電気設備が地下や一階にあれば、停電と断水も起こります。上の階にお住まいでも、孤立への備えは必要です。断水時の対応はマンションの断水対策にまとめました。

区域内に指定されている土地に、新しく家を建てられますか

イエローゾーンであれば、建築上の制限はありません。レッドゾーンであれば、想定される土砂の力に耐える構造にすることが求められ、建築確認で審査されます。建てられないわけではなく、条件がつくということです。ただし、構造を強化すれば費用は上がります。土地の価格が周辺より安い場合、その差額が構造の費用で相殺されることもあります。総額で比べてください。

基礎調査の結果は、指定される前に見られますか

見られます。基礎調査の結果は、指定に先立って公表されます。つまり、正式な指定より前の段階で、危険な範囲が分かることがあります。都道府県のサイトで公表されているので、自分の地域が調査済みかどうかを含めて確認してみてください。まだ調査が行われていない地域があることも、あわせて知っておく価値があります。

急傾斜地崩壊危険区域とは違うものですか

違います。急傾斜地崩壊危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律にもとづく指定で、崩壊を防ぐ工事を行い、崩壊を助長する行為を規制するための区域です。土砂災害警戒区域が「逃げるための指定」であるのに対し、こちらは「工事と規制のための指定」です。目的が違うため、両方を確認する意味があります。

まとめ

土砂災害警戒区域について、整理します。

土砂災害防止法にもとづき、都道府県が指定します。通称イエローゾーンで、住民の生命または身体に危害が生じるおそれがある区域です。さらに危険度が高い範囲が特別警戒区域、通称レッドゾーンで、建築物に損壊が生じ、著しい危害が生じるおそれがある区域です。

令和七年度末の時点で、警戒区域はおよそ七十万か所、特別警戒区域はおよそ六十一万か所が指定されています。

いちばん大事なことを、もう一度書きます。イエローゾーンは、安全側という意味ではありません。色の違いは、建物が壊れるかどうかの違いです。人が危ないという点では、どちらも同じです。避難は、どちらでも必要です。

指定は、がけ崩れ、土石流、地すべりの三つの現象ごとに設定されます。自分の家がどの現象で指定されているかを確認してください。備え方が変わります。がけ崩れでは、がけの上も指定の対象になります。

調べ方は簡単です。都道府県のマップ、国土交通省の重ねるハザードマップ、市町村の紙のハザードマップ。五分あれば終わります。そして、自宅だけでなく、勤務先、通学路、そして避難所そのものを確認してください。

不動産取引では重要事項として説明されますが、それは契約の直前です。探しはじめの段階で自分で調べておくほうが、選択肢を持ったまま判断できます。

最後にひとつ。土砂災害で亡くなる方の多くは、自分の家が危険な区域にあることを知らないまま被災しています。知っているかどうかだけで、その夜の行動が変わります。五分です。今日のうちに、地図を開いてみてください。

最後に、この制度についての私の見方を書かせてください。

土砂災害警戒区域という仕組みは、一九九九年の広島の災害という、大きな犠牲の上に生まれたものです。それまで、危険な場所は「知っている人だけが知っている」情報でした。地元の古老が「あの谷は昔から荒れる」と語り継ぐ。それが唯一の伝達手段だった時代があります。

いまは違います。誰でも、無料で、五分あれば、自分の家の危険度を知ることができます。これは、防災の歴史のなかでかなり大きな前進です。

ところが、その情報を実際に見ている人は、まだ多くありません。せっかく地図が公開されていても、開かれなければ意味がありません。制度は完成しているのに、最後の一歩だけが残っている。それが現状だと感じています。

その一歩は、誰かが代わりに踏むことはできません。行政が指定し、地図を公開するところまでは済んでいます。そこから先、自分の住所を入力するという動作だけは、自分でやるしかありません。

もし色がついていなければ、それは良い知らせです。もし色がついていたら、この記事の後半に書いたことを一つずつ進めてください。どちらの結果でも、知らないままでいるよりは、はるかに良い状態になります。

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この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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