【この記事の要約】
結論から言います。雪崩は、逃げ切れません。表層雪崩の速さは時速100〜200キロ。新幹線並みです。気づいてから走っても間に合いません。だから対策は「遭ったときにどうするか」ではなく、「起きる場所と条件に近づかないこと」に尽きます。危ないのは傾斜30〜45度で、木がまばらな斜面。スキー場の中級コース程度の傾斜です。そして時期によって型が変わります。厳冬期は表層雪崩、春先は全層雪崩。前者は前ぶれがほとんどなく突然起きます。埋まった場合、生存率が大きく下がるのは最初の15〜30分。助けるのは救助隊ではなく、その場にいる人です。この記事では、条件の見分け方と、万一のときの行動をまとめました。
結論|雪崩は避けるしかありません
先に、この記事でいちばん大事なことを書きます。
速さが、人間とは違いすぎます
表層雪崩は時速100〜200キロで流れ下ります。全層雪崩でも時速40〜80キロです。
人が全力で走る速さは、時速30キロ程度。気づいてから逃げるという発想が成り立ちません。
だから、雪崩対策は「近づかない」がすべてです。他の災害と違い、その場での行動でどうにかなる余地がほとんどありません。
危ない条件は三つです
一、傾斜が30度から45度。これが最も起きやすい角度です。
二、木がまばら、または生えていない斜面。雪を止めるものがありません。
三、短時間に大量の雪が降った直後、または気温が急に上がったとき。
三つ揃ったら、その斜面には入らないでください
登山、バックカントリー、そして斜面の下を通る道路も同じです。
雪国では、雪崩の危険がある区間で道路が通行止めになります。迂回が面倒でも、規制には従ってください。
二つの型を、見分けてください
雪崩には性質の違う二種類があります。時期が違います。
| 表層雪崩 | 全層雪崩 | |
|---|---|---|
| 時期 | 厳冬期(1〜2月) | 春先(3〜4月) |
| 何が滑るか | 古い雪の上に積もった新雪だけ | 地表から全部 |
| 速さ | 時速100〜200キロ | 時速40〜80キロ |
| きっかけ | 短時間の大雪、強風 | 気温上昇、雨 |
| 前ぶれ | ほとんどありません | 雪しわ、雪の割れ目が出ることがあります |
| 規模 | 大きくなりやすい | 重く、破壊力が大きい |
厳冬期に怖いのは、表層雪崩です
古い雪の表面が硬く締まっているところに、新しい雪が降り積もる。この境目が滑り面になります。
怖いのは、前ぶれがほとんどないことです。見た目には何の変化もありません。
そして、大雪の直後から数日が最も危険です。降っている最中だけでなく、やんだあとも続きます。
春先に怖いのは、全層雪崩です
気温が上がり、雪と地面の間に水が入る。そこを滑って、積もった雪が丸ごと動きます。
速さは表層雪崩より遅いものの、重さがまるで違います。建物を押しつぶす力があります。
こちらは前ぶれが出ることがあります。斜面の雪に、しわのような筋や、横に走る割れ目が見えたら危険な兆候です。
なぜ、その斜面で起きるのか
仕組みを知っておくと、危険な場所が自分で見分けられるようになります。
雪は「層」で積もっています
ここが、雪崩を理解する出発点です。
ひと冬のあいだ、雪は何度にも分けて降ります。降るたびに新しい層ができ、その間に境目ができます。
そして、層と層のあいだに「弱い層」ができることがあります。この弱層が、雪崩の滑り面になります。
弱層はどうやってできるのか
いくつかの条件で生まれます。
一、晴れて放射冷却が起きたとき。雪の表面に霜のような結晶ができます。その上に新雪が積もると、霜の層が滑り面になります。
二、あられや氷の粒が降ったとき。粒がベアリングのように働きます。
三、強風で雪が吹き寄せられたとき。吹きだまりは局所的に厚く、不安定になります。
だから、天気の履歴が効いてきます
いま降っている雪だけを見ていても、危険度は分かりません。
「晴れた日のあとに大雪が降った」という並びが、最も危険な組み合わせとされています。
これは大雨のあとの土砂災害と同じ考え方です。過去数日の積み重ねが結果を決めます。
傾斜30〜45度が危ない理由
理由は単純な力学です。
これより緩いと、雪は滑り出す力が足りません。そして、これより急だと、雪がそもそも大量に積もりません。少しずつ落ちてしまうからです。
つまり、「たくさん積もれて、かつ滑り出せる」角度が30〜45度です。
この角度は、スキー場の中級から上級コース程度にあたります。滑って気持ちのいい斜面は、雪崩が起きやすい斜面でもあります。
木の有無が分かれ目になります
斜面に木が密に生えていると、雪を押さえる働きをします。
逆に、木がまばら、あるいは草地の斜面は危険です。止めるものがありません。
そして、過去に雪崩が起きた斜面は、木が育っていないことがあります。つまり、木のない斜面は「以前も起きた場所」である可能性があります。
雪崩が起きやすい地形の見方
現地で判断するときの目安です。
| 地形 | 危険度 | 理由 |
|---|---|---|
| 沢地形・谷 | 高い | 雪が集まり、流れ下る通り道になります |
| 風下側の斜面 | 高い | 吹きだまりができ、不安定な雪が厚く積もります |
| 凸型の斜面 | 高い | 雪に引っ張られる力がかかります |
| 木のない斜面 | 高い | 止めるものがありません |
| 尾根上 | 比較的低い | 雪が溜まりにくい |
| 密な樹林帯 | 比較的低い | 木が雪を支えます |
雪庇に近づかないでください
尾根の風下側に、雪がひさしのように張り出したものを雪庇と呼びます。
見た目には地面が続いているように見えます。けれど下は空洞です。踏み抜いて滑落する事故が起きています。
そして、雪庇が崩れることが雪崩のきっかけになります。尾根を歩くときは、風下側から十分に離れてください。
前ぶれとして現れるもの
出れば確実に危険ですが、出ないこともあります。過信は禁物です。
| 現象 | 何を示すか |
|---|---|
| 雪しわ | 斜面の雪がゆっくり動いています(全層雪崩) |
| クラック(割れ目) | 雪が切れ始めています |
| スノーボール | 雪玉が斜面を転がり落ちている状態 |
| 斜面から小さな雪の塊が落ちる | 不安定になっています |
| 木が斜面下向きに傾く | 雪が動いた跡 |
| 「ボスッ」という沈む音 | 弱い層が崩れる音。危険信号です |
「前ぶれがないから安全」とは考えないでください
ここを強調しておきます。
表層雪崩は、前ぶれなしに起きます。だから、前ぶれの有無で判断してはいけません。
判断すべきは、地形と気象条件です。前ぶれは「出たら確実に危ない」という一方向の目安にすぎません。
埋まった人がいたら
ここからは、実際に起きてしまった場合の話です。
埋まった人にとって、時間がすべてです
雪に埋まった場合、最初の15分から30分が生存率の分かれ目とされています。
窒息と低体温が同時に進みます。時間が経つほど、急速に助かる見込みが下がります。
だから、救助隊を待っていては間に合いません
山間部に救助隊が到着するまで、多くの場合1時間以上かかります。その時点では、手遅れになっていることが多い。
助けられるのは、その場にいる人だけです。これが雪崩の厳しいところです。
やることの順番
一、119番通報。同時に、周囲に大声で助けを呼んでください。
二、最後に見えた位置を覚える。そこから下流側を探します。
三、二次雪崩に注意する。同じ斜面で続けて起きることがあります。見張りを立ててください。
四、掘る。顔と胸を最優先で出します。呼吸ができれば時間が稼げます。
掘るときの注意
スコップの刃を強く振り下ろさないでください。埋まっている人を傷つけます。
そして、掘り出したあとは保温を最優先に。濡れた衣類を替え、体を包んでください。低体温が進んでいます。
意識があっても、必ず医療機関で診てもらってください。あとから症状が出ることがあります。
過去の雪崩災害が示していること
実際に何が起きてきたのかを整理しておきます。
被害の型は、大きく三つです
一、山に入った人が巻き込まれる。登山、バックカントリースキー、スノーボード。近年の死者はこの型が中心です。
二、集落や道路が直撃される。件数は減りましたが、起きると被害が大きくなります。
三、屋根からの落雪や、除雪中の小規模な崩落。日常のなかで起きる型です。
近年は、山での事故が中心になっています
理由は二つあると考えています。
一つは、集落を守る対策が進んだこと。雪崩防止柵、スノーシェッド、防護林の整備が各地で行われています。
もう一つは、山に入る人が増えたこと。装備が手に入りやすくなり、バックカントリーへの参加者が増えました。
共通しているのは「そこに入った」ことです
山での雪崩事故を見ていくと、危険な条件が揃った斜面に人が入っていたという点が共通します。
大雪の直後、風の強かった翌日、気温が急に上がった日。あとから振り返れば、条件は出ていたことが多い。
だから、技術や装備より先に、判断の問題だと私は考えています。
「行かない」判断がいちばん難しい
ここは、正直に書いておきます。
遠くから時間をかけて来た。天気は晴れている。仲間も乗り気だ。この状況で「やめよう」と言うのは、とても難しい。
だから、行く前に条件を決めておくことです。「積雪が◯センチ以上増えていたら入らない」「雪崩注意報が出ていたら中止」。
これは、大雨の避難判断で「レベル4が出たら動く」と決めておくのと同じ考え方です。その場の気分で決めない仕組みを作ります。
雪崩から集落を守る仕組み
ここは雪国にお住まいの方向けの話です。
四つの対策があります
| 設備 | 何をするか |
|---|---|
| 雪崩予防柵 | 斜面の上部に設置し、雪が動き出すのを防ぎます |
| 雪崩防護柵 | 流れてきた雪を受け止めます |
| スノーシェッド | 道路をトンネル状に覆い、雪を上を通します |
| 防護林 | 木の力で雪を止めます。時間はかかります |
自分の地域の危険箇所を調べてください
市町村が雪崩危険箇所を把握しています。ハザードマップに記載されていることが多い。
土砂災害警戒区域と同じように、自宅がかかっているかを一度確認してください。
調べ方はハザードマップと同じです。ハザードマップの色は3つだけ覚えるにまとめました。
指定されていたら、避難のタイミングを決めておく
雪崩には、大雨のような明確な警戒レベルがありません。
だから、市町村からの呼びかけがあれば従う。そして、前ぶれに気づいたら自分の判断で動く。
とくに、大雪のあとに急に気温が上がった日は注意してください。全層雪崩の条件です。
山に入る人が持つべきもの
ここはバックカントリーや冬山登山をする方向けの装備の話です。
三点セットと呼ばれるもの
| 装備 | 役割 |
|---|---|
| ビーコン | 電波で埋没者の位置を知らせる・探す |
| プローブ(ゾンデ棒) | 雪に刺して埋没者を特定する |
| スコップ | 掘り出す。素手では不可能です |
持っているだけでは意味がありません
ここが大事な点です。
ビーコンは、使い方を練習していないと機能しません。埋没者を探す操作は、慌てた状況では思い出せません。
そして、全員が持っていなければ意味がありません。一人でも持っていない人がいれば、その人は探せません。
講習会が各地で開かれています。装備を買う前に、まず講習を受けてください。
単独では入らないでください
雪崩に埋まった場合、自力で脱出できることはほとんどありません。
雪は固まると、コンクリートのように動けなくなります。掘り出してくれる人がいなければ、装備は役に立ちません。
暮らしのなかの雪崩
雪崩は、山に入らない方にも関わりがあります。
道路の通行止めには従ってください
山間部の道路には、雪崩の危険がある区間があります。
そこでは、気象条件によって通行止めになります。迂回が長くても、規制を破らないでください。
集落の裏山にも注意が要ります
過去には、集落を雪崩が直撃した災害が起きています。
自宅の裏に急な斜面があるなら、市町村の雪崩危険箇所の指定を確認してください。土砂災害警戒区域と同じように、指定されている場所があります。
屋根からの落雪も、小さな雪崩です
規模は違いますが、原理は同じです。
気温が上がった日、屋根の雪が一気に滑り落ちます。下敷きになる事故が毎年起きています。
屋根の下は通らない。これは雪国の基本です。詳しくは屋根の雪対策は3方式から選ぶにまとめました。
雪崩の情報を、どこで見るか
山に入る前に確認できる情報を、整理しておきます。
公的な情報
| 情報 | 出どころ | 使いどころ |
|---|---|---|
| 雪崩注意報 | 気象台と都道府県 | 市町村単位。出ていたら入らない判断の材料 |
| 大雪警報・注意報 | 気象庁 | 直近の降雪量を知る |
| 積雪の深さ・降雪量 | 気象庁のアメダス | 「何日で何センチ増えたか」が重要 |
| 気温の推移 | 気象庁 | 急な上昇は全層雪崩の条件 |
| 各地の雪崩情報サイト | 民間・山岳団体 | 斜面単位の評価が出ることがあります |
見るべきなのは「増え方」です
積雪の絶対値ではありません。
短期間にどれだけ増えたか。ここが表層雪崩の危険度に直結します。
目安として、24時間で30センチ以上の降雪があった直後は危険とされています。そして、その状態は数日続きます。
気温の急上昇にも注意してください
とくに春先です。前日より大きく気温が上がった日、雨が降った日は全層雪崩の条件になります。
雪が緩み、地面との間に水が入ります。暖かい日は、山では危険な日です。
誤解されやすいこと
雪崩について、よく聞く言い方を整理します。
一、「新雪はふわふわだから危なくない」
これは逆です。新雪こそが表層雪崩の主役です。
古い雪の上に降り積もった新雪が、境目から丸ごと滑ります。降った直後がいちばん危ない。
二、「一度雪崩が起きた場所は、もう安全」
そうとは限りません。
同じ斜面で、続けて起きることがあります。救助に入った人が二次雪崩に巻き込まれる事故が報告されています。
救助のときは、必ず見張りを立ててください。
三、「小さい雪崩なら大丈夫」
規模が小さくても、埋まってしまえば窒息します。
そして、雪は止まった瞬間に固まります。膝までの深さでも、自力では抜け出せないことがあります。
四、「音を立てると雪崩が起きる」
これは俗説です。声や音の振動で雪崩が起きることは、通常ありません。
実際のきっかけは、人が斜面に加える荷重です。歩く、滑る、立ち止まる。これが弱層を壊します。
つまり、危ないのは音ではなく、そこに入ること自体です。
子どもと雪遊びをするときに
山に行かない家庭にも、関わる場面があります。
斜面の下で遊ばせないでください
ちょっとした斜面でも、積もった雪が崩れれば子どもは埋まります。
とくに、除雪した雪を積み上げた山です。子どもが穴を掘って中に入る遊びをすることがあります。
雪の山に横穴を掘るのは、非常に危険です。崩れれば脱出できません。実際に事故が起きています。
屋根の下も避けてください
気温が上がった日、屋根の雪が滑り落ちます。
子どもの背丈では、落雪に埋まると気づかれにくい。建物のそばで遊ばせないでください。
スキー場のコース外に出るということ
近年の事故で最も多い型なので、独立して書きます。
ロープの外は、管理されていません
スキー場のコースは、雪の状態を評価したうえで開放されています。圧雪され、危険な斜面は閉鎖されます。
ロープや標識の外は、その評価が行われていない領域です。同じ山でも、意味がまったく違います。
「みんなが行っているから」は根拠になりません
ここは強く書いておきます。
トレース(先行者の跡)があると、安全に見えます。けれど、そのトレースは今日のものとは限りません。そして、通れたことは安全だったことの証明にはなりません。
雪崩は、何人も通ったあとの一人で起きることがあります。荷重が積み重なって弱層が限界に達するためです。
捜索と費用の問題
コース外での遭難は、捜索が難航します。どこにいるか分からないためです。
そして、民間の救助隊が出動した場合、費用が請求されます。ヘリコプターを使えば高額になります。
山岳保険に入っていない場合、その負担は家族に行きます。
入るなら、条件を満たしてください
入ること自体を禁止するつもりはありません。ただし、条件があります。
一、単独で入らない。埋まったら自力では出られません。
二、全員が装備を持ち、使い方を練習している。一人でも欠けたら成立しません。
三、その日の雪の状態を確認している。直近の降雪、風、気温。
四、行き先と帰宅予定を、家に残る人に伝えている。
五、山岳保険に入っている。
この五つが揃わないなら、その日は入らないでください。
家族が山に行く日に、できること
ここは、家族を山へ送り出す側の話です。
三つを聞いておいてください
一、どこの山に、どのルートで入るか。山名だけでなく、入山口と予定ルートです。
二、誰と行くか。何人か。
三、何時に下山する予定か。そして、連絡が取れなくなったら何時の時点で通報するか。
この三つを決めておくと、捜索が始まるまでの時間が大きく縮まります。雪崩は時間との勝負です。
登山届は、家族のためのものでもあります
登山届(登山計画書)は、多くの山域で提出が求められています。条例で義務づけている地域もあります。
これは形式的な手続きではありません。遭難したときに、どこを探せばよいかを示す唯一の手がかりになります。
提出したことと、その控えの場所を家族にも伝えておいてください。
「行くな」ではなく「条件を決めよう」
頭ごなしに止めるのは、難しいと思います。
だから、やめる条件を一緒に決めておくほうが現実的です。「雪崩注意報が出たら中止」「24時間で30センチ以上降ったら入らない」。
これは家庭の避難判断と同じ考え方です。その場の判断に委ねない仕組みを、先に作っておきます。
そして、帰ってきたら何も言わないでください
無事に帰ったとき、心配した気持ちを責める形で出すと、次から行き先を言わなくなります。
情報を共有してもらい続けることのほうが、長い目で見て安全につながります。
よくある質問
Q. 雪崩注意報は、どこで見られますか
都道府県と気象台が共同で発表しています。気象庁のウェブサイトと、各自治体の防災情報で確認できます。
ただし、注意報は市町村単位です。個別の斜面の危険までは示しません。最終的な判断は、現地の地形と条件を見て行う必要があります。
Q. 雪崩に流されたら、何かできることはありますか
確実な方法はありません。そのうえで、言われていることを書きます。
口と鼻の前に手で空間を作る。雪が止まる直前にできれば、呼吸できる隙間が残ります。
そして、泳ぐように手足を動かして、雪の表面に近づこうとする。
ただし、これらができる保証はありません。だからこそ、入らない判断が最優先になります。
Q. スキー場のコース内なら安全ですか
管理されたコース内は、雪崩の危険を評価したうえで開放されています。比較的安全です。
危険なのは、コース外(バックカントリー)です。ロープをくぐって出るのは、管理の外に出るということです。
コース外での事故は、救助費用が請求されることがあります。そして、捜索そのものが難航します。
Q. 雪崩が起きやすい時間帯はありますか
型によって違います。
表層雪崩は、大雪が降っている最中と、その直後に集中します。時間帯というより、気象の履歴で決まります。
全層雪崩は、日中から午後にかけて多いとされています。気温が上がり、雪が緩む時間だからです。
春先に山へ入るなら、早朝に行動して午後には下りるのが基本になります。
Q. 雪崩注意報が出ていなければ安全ですか
安全とは言えません。
注意報は市町村単位で出されます。個別の斜面の状態までは評価していません。
逆に、注意報が出ていなくても、局所的な吹きだまりや弱層が危険な状態ということはあります。
これは大雨のキキクルと同じで、公的情報は判断の入り口であって、最終判断ではありません。
Q. 雪崩に埋まった人を犬が探すと聞きました
雪崩救助犬が各地で訓練されています。においで埋没者を探します。
ただし、現場に到着するまでに時間がかかります。15〜30分という生存率の壁には、多くの場合間に合いません。
だから、犬や救助隊を前提にした計画は成り立ちません。その場にいる仲間が掘り出せるかどうかが、結果を決めます。
Q. 車で走行中に雪崩に遭ったら
まず、雪崩の危険がある区間では止まらないでください。写真を撮るために停車するのは危険です。
万一巻き込まれた場合、車内にとどまるほうが安全なことがあります。車体が空間を保つためです。
そして、エンジンを切ってください。排気口が雪で塞がれると一酸化炭素中毒になります。これは立ち往生と同じ危険です。
詳しくは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒ににまとめました。
Q. 雪崩の被害に保険は使えますか
建物の被害であれば、火災保険の雪災補償が対象になることがあります。
ただし、契約内容によります。そして、経年劣化は対象外です。
登山中の遭難については、山岳保険という別の商品があります。捜索費用が補償されるものがあり、バックカントリーに入るなら検討する価値があります。
火災保険の見直しは火災保険の見直し方にまとめました。
雪崩が「災害」として扱われる意味
最後に、制度の面にも触れておきます。
雪崩は、災害対策基本法の対象です
雪崩による被害は、公的な災害として扱われます。個人の遭難とは別に、集落や道路が被害を受けた場合です。
被害が一定の規模になれば、罹災証明の発行や、各種の支援制度の対象になります。
被害を受けたら、写真を撮ってください
これは片づける前にやってください。
罹災証明の申請と、保険の請求に必要になります。雪が解けてしまえば、被害の状況を証明できません。
撮るのは、建物の外観を四方から、被害箇所を近くから、そして雪の高さが分かる位置から。
危険な斜面を見つけたら、市町村へ
雪しわやクラックに気づいた場合です。
市町村の防災担当に連絡してください。危険箇所として把握されていない斜面であれば、その情報が役に立ちます。
そして、通学路や通勤路にかかる場合は、とくに早めに伝えてください。通行の制限が検討されます。
雪崩は、備える時間がある災害です
最後に、この点を書いておきます。
地震のように突然ではありません。雪が積もり、条件が揃うまでには時間があります。
その間に、危険箇所を知り、行く場所を選び、条件を決めておくことができます。
雪崩そのものからは逃げられません。けれど、遭わないようにすることはできます。そこに時間を使ってください。
Q. 表層雪崩と全層雪崩、どちらが危険ですか
性質が違うので、単純に比べることはできません。
表層雪崩は、速さと予測の難しさが危険です。時速100〜200キロで、前ぶれがほとんどありません。人が巻き込まれる事故は、この型が中心です。
全層雪崩は、重さと破壊力が危険です。地表から丸ごと動くため、建物や道路への被害が大きくなります。
つまり、人にとっては表層雪崩、建物にとっては全層雪崩が脅威になりやすい、という整理ができます。
Q. 雪崩の音は聞こえますか
大規模なものでは、地鳴りのような音や、風圧を感じることがあると言われます。
ただし、音に気づいてから動いても間に合いません。時速100キロを超える現象です。
そして、表層雪崩は静かに始まることもあります。音を判断材料にしないでください。
Q. 雪崩のあと、その場所はいつまで危険ですか
同じ斜面で続けて起きることがあります。一度で終わるとは限りません。
とくに、上部にまだ不安定な雪が残っている場合は、二次雪崩の危険が続きます。
救助活動をするときは、必ず上を見張る人を立ててください。救助者が巻き込まれる事故が繰り返し起きています。
Q. 除雪作業中に雪崩に遭うことはありますか
あります。規模の小さい崩落が、除雪中の事故につながることがあります。
危ないのは、屋根から下ろした雪が高く積み上がった状態です。その山が崩れて、作業していた人が埋まる事故が起きています。
そして、雪の壁を垂直に掘り進める作業も危険です。上部が張り出したまま残ると、突然崩れます。
対策は雪下ろしと同じで、一人で作業しないことに尽きます。埋まっても、気づいてくれる人がいなければ助かりません。詳しくは雪下ろしで死なないための7つの鉄則にまとめました。
まとめ|近づかないことが唯一の対策です
最後に、あらためて整理します。
この記事の要点
一、雪崩は逃げ切れません。時速100〜200キロです。
二、危ないのは傾斜30〜45度で、木がまばらな斜面。
三、厳冬期は表層雪崩、春先は全層雪崩。前者に前ぶれはありません。
四、埋まったら最初の15〜30分が分かれ目。助けるのはその場にいる人です。
五、装備は講習とセットで。持っているだけでは機能しません。
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雪による災害の全体像は雪害とは?読み方は「せつがい」に、大雪そのものは大雪で危ないのは「動けなくなること」にまとめました。
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