雪下ろしで死なないための7つの鉄則|死者の9割が65歳以上、一人で屋根に登らない

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【この記事の要約】
除雪作業中の事故は、多雪の年には年間100人以上の死者が出るほど深刻です。総務省消防庁の集計では、亡くなった方の9割超が65歳以上の高齢者でした。しかもその多くが、屋根の雪下ろし作業中に発生しています。この記事では、事故が起きる原因、絶対に守るべき安全対策、そして「そもそも自分でやらない」という選択肢まで、防災士としての視点で解説します。

【この記事の信頼性について】この記事は、北海道在住で防災士資格を持つ私が、国土交通省・総務省消防庁・内閣府などの公的資料をもとに執筆しています。作業の可否は住宅の構造や積雪状況によって異なります。判断に迷う場合は、自治体や専門業者にご相談ください。

結論から先に言うと、雪下ろしは「一人でやらない」ことが最大の安全対策です。

装備や手順も重要ですが、統計を見ると、事故の多くは単独作業中に起きています。誰かが見ていれば助かった、という事例が少なくありません。

私は北海道で暮らしてきて、雪と向き合う生活の大変さを実感しています。だからこそ、この記事では精神論ではなく、具体的に何をすべきかをお伝えします。

目次

除雪作業中の事故はどれくらい起きているのか

まず、事故の実態を数字で確認します。

豪雪地帯では、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故が数多く発生しています。多雪の年には、年間1,000件以上の事故が起き、100人以上が亡くなる年もあります。

令和2年11月からの大雪では、雪による死者が3年ぶりに100人を超えて110人となりました。このうち、屋根の雪下ろしなど除雪作業中の死者が95人と、大半を占めています。

犠牲者の9割超が高齢者

総務省消防庁の集計によると、ある年の統計では、雪の影響で亡くなった97人のうち、除雪中の事故が74人で最多でした。そしてその9割超が65歳以上の高齢者です。

この偏りには理由があります。地方の豪雪地帯では高齢化が進み、雪下ろしを担う人が高齢者しかいない家庭が増えているためです。

加えて、加齢とともにバランス感覚や筋力が低下することも影響しています。若いころと同じ感覚で作業してしまい、体がついてこないという状況が起こります。長年やってきた経験があるからこそ、危険を過小評価しやすい面もあります。

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なぜ雪下ろしで事故が起きるのか

事故のパターンは、大きく4つに分けられます。

事故のパターン 内容
屋根からの転落 足を滑らせて地面へ落下。最も多い
はしごからの転落 昇降時、はしごがずれて転倒
落雪に巻き込まれる 屋根から落ちた雪の下敷きになる
除雪機による事故 詰まり除去中に巻き込まれる

いずれも、ほんの一瞬の判断の甘さから起きています。「今日は少しだけ」「すぐ終わるから」という気持ちが、事故につながっています。

特に注意したいのが、単独作業中の転落です。転落そのものでは軽傷で済んでも、雪に埋まったまま身動きが取れず、低体温症で亡くなるケースが報告されています。誰かがそばにいれば助かった事例が、決して少なくありません。

屋根の上は想像以上に滑る

雪下ろしを始めると、屋根の表面が現れてきます。この露出した屋根材が、実は非常に危険です。

金属屋根は水分を含むと極端に滑りやすくなります。雪の上を歩いているつもりが、いつのまにか屋根材の上に足を置いていた。この瞬間に転落する事例が多く報告されています。

作業に集中していると、足元の変化に気づきにくくなります。雪をかき出すことに意識が向き、自分がどこに立っているかの確認がおろそかになりがちです。

絶対に守るべき安全対策

国土交通省は「雪下ろし安全10箇条」を公表しています。そのなかでも特に重要なものを、私の視点で整理します。

1. 必ず2人以上で作業する

これが何よりも最優先です。転落しても、すぐに発見されれば助かる可能性が高まります。

雪に埋まった状態で誰にも気づかれなければ、低体温症や窒息に至ります。作業そのものより、発見の遅れが命を分けています。

2. 命綱とヘルメットを装着する

命綱は、屋根の反対側にある丈夫な構造物に固定します。ヘルメットは、転落時の頭部保護と、落雪から身を守るために必要です。

「短時間だから」という理由で装備を省略するのは、最も危険な判断のひとつです。

3. はしごは必ず固定する

はしごの転倒による事故は非常に多く発生しています。上部を屋根や樋にロープで縛り、下部が滑らないよう固定してください。

はしごを登り降りする瞬間が、作業全体で最も危険なタイミングです。特に、道具を持ったまま昇降すると両手がふさがり、体勢を崩しやすくなります。道具はロープで引き上げるようにしてください。

4. 晴れた日の日中に行う

吹雪の日や、暗くなってからの作業は避けてください。視界が悪いと、屋根の端がどこか分からなくなります。

気温が上がった日は雪が緩んで滑りやすくなるため、これも注意が必要です。逆に冷え込んだ朝は、屋根の表面が凍っていることがあります。

雪下ろしの前に周辺を片付ける

屋根に上る前の準備で、事故のリスクは大きく下がります。

まず、屋根から雪を落とす場所を確保します。落下地点に物置、車、灯油タンク、室外機などがあれば、あらかじめ移動させるか養生してください。

次に、はしごを立てる場所の足元を固めます。柔らかい雪の上にはしごを立てると、荷重で沈み込んで不安定になります。踏み固めるか、板を敷いて安定させてください。

脱出経路を作っておく

万が一、屋根から転落したときのことも想定しておきます。落下地点に雪が積もっていれば、衝撃はいくらか和らぎます。

逆に、アスファルトやコンクリートがむき出しの場所は、転落時の被害が大きくなります。落ちる可能性がある側の状態も、事前に見ておいてください。

作業前に確認すること

屋根に上る前に、いくつか確認しておきたいことがあります。

まず、周囲に電線が通っていないか。雪下ろし中に電線に触れると感電の危険があります。

次に、下に人がいないか。落とした雪が通行人や家族に当たる事故も起きています。作業前に声をかけ、立ち入らないようにしてもらってください。

さらに、屋根の雪の状態も見ておきます。表面が凍っている場合は、非常に滑りやすくなっています。

「まだ大丈夫」が事故につながる

事故の背景を見ていくと、共通する心理があります。

「今日は少しだけだから」「毎年やっているから」「すぐ終わるから」。こうした慣れと油断が、装備の省略や単独作業につながっています。

雪下ろしは、何十回無事に終えても、たった一度の転落で命を失う作業です。経験があることは、安全を保証してくれません。むしろ慣れているほど、手順を省きやすくなります。

去年と同じ条件とは限らない

同じ家、同じ屋根でも、その年の雪質や気温は毎年違います。

湿った雪の年は重く滑りやすく、寒さが厳しい年は屋根が凍結します。「去年はこうだった」という感覚を、そのまま今年に当てはめないでください。

事故が起きたときの対応

万が一、転落や埋没が起きた場合の対応も知っておいてください。

まず119番通報です。雪に埋まっている場合、時間との勝負になります。自力で掘り出そうとして時間を浪費するより、通報を優先してください。

そのうえで、顔の周りの雪を取り除き、気道を確保します。呼吸ができる状態を作ることが最優先です。

雪に埋まった人を見つけたら

頭部と胸部を先に掘り出し、呼吸を確保します。全身を掘り出そうとすると時間がかかりすぎます。

意識がない場合は、救急隊が到着するまで心肺蘇生を続けてください。低体温状態では、見た目より回復の可能性が残っていることがあります。

雪下ろしと保険の関係

雪下ろし中の事故に、保険は使えるのでしょうか。

個人が自宅で作業していて負傷した場合、傷害保険や医療保険の対象になることがあります。ただし契約内容によるため、加入している保険の補償範囲を確認しておいてください。

また、落とした雪が隣家を傷つけた場合や、通行人にけがをさせた場合は、個人賠償責任保険が適用される可能性があります。火災保険の特約として付帯している場合が多いので、こちらもあわせて確認しておくと安心です。

雪による建物被害の補償

屋根の雪の重みで建物が損傷した場合、火災保険の「雪災補償」が使えることがあります。

雪国にお住まいの方は、契約に雪災補償が含まれているかを確認しておいてください。含まれていない場合は、追加を検討する価値があります。

雪下ろしをしないという選択肢

ここが最も伝えたい部分です。

雪下ろしは、必ずしも自分でやらなければならない作業ではありません。むしろ、高齢の方や作業に不安がある方は、やらない選択を積極的に検討すべきだと私は考えています。

業者への依頼

多くの豪雪地帯では、除雪業者や便利屋が雪下ろしを請け負っています。費用はかかりますが、命には代えられません。

繁忙期は予約が取りにくくなるため、雪が積もる前に問い合わせておくとスムーズです。

自治体の支援制度

高齢者世帯や障害のある方の世帯を対象に、除雪費用を補助する制度を設けている自治体があります。

社会福祉協議会が窓口になっている場合も多く、ボランティアによる除雪支援を実施している地域もあります。お住まいの自治体に確認してみてください。

必要な装備をそろえる

雪下ろしを自分で行う場合、装備が安全を左右します。最低限そろえたいものを挙げます。

装備 役割 選び方のポイント
命綱・安全帯 転落時に体を支える フルハーネス型が望ましい
ヘルメット 頭部の保護 あご紐付きを必ず着用
滑りにくい長靴 足元の確保 スパイク付きが有効
命綱固定用アンカー 綱の支点 屋根に恒久設置できるものが安全
スノーダンプ・雪切り 雪を運ぶ・切る 軽量で扱いやすいもの

装備はホームセンターやインターネット通販で購入できます。年に数回しか使わないものですが、命を守る道具として考えれば決して高い買い物ではありません。

スパイク付きの靴は本当に効くのか

屋根の上では、雪と屋根材の境目で滑りが起こります。スパイク付きの長靴は、雪面での踏ん張りを助けてくれます。

ただし、金属屋根の上ではスパイクがかえって滑る場合もあります。装備を過信せず、あくまで補助と考えてください。

雪下ろしが必要な住宅・不要な住宅

すべての住宅で雪下ろしが必要なわけではありません。

住宅のタイプ 雪下ろしの必要性
一般的な勾配屋根の住宅 積雪量に応じて必要
落雪式屋根の住宅 基本的に不要(落雪先の確保は必要)
融雪式屋根の住宅 不要(装置の稼働確認が必要)
耐雪住宅 設計積雪量までは不要
陸屋根(平らな屋根) 雪が残りやすく必要になりやすい

ご自宅がどのタイプか分からない場合は、施工した工務店や住宅メーカーに確認してください。不要な作業でリスクを負う必要はありません。

雪の重さを知っておく

雪の重さは、種類によって大きく変わります。

雪の種類 1立方メートルあたりの重さ
新雪 約50〜150キログラム
しまり雪 約150〜500キログラム
ざらめ雪 約300〜500キログラム

湿った重い雪が屋根に1メートル積もると、屋根全体では相当な荷重になります。この重さが、建物への負担と落雪の危険につながります。

雨のあとは特に危険

積もった雪に雨が降ると、雪が水分を含んで一気に重くなります。同じ積雪量でも、重さが数倍になることがあります。

気温が上がる予報や雨の予報が出たときは、その前に雪下ろしを済ませておくのが理想です。

作業の手順

屋根に上がってからの手順にも、安全のためのコツがあります。

まず、屋根の端から離れた場所から作業を始めます。いきなり端に立つのは危険です。

次に、雪を一度に大量に落とさないこと。落とす方向を決め、少しずつ下ろしていきます。大量の雪が一気に落ちると、その反動で足元が崩れることがあります。

そして、屋根材が見えるまで下ろしきらないことです。10センチほど雪を残すことで、屋根材の上を歩く危険を避けられます。

落とした雪の処理も考える

下ろした雪が窓や玄関をふさぐと、避難経路が絶たれます。落とす場所をあらかじめ決めておいてください。

また、隣家との距離が近い場合は、雪が隣の敷地に入らないよう配慮が必要です。トラブルの原因になります。

やってはいけないこと

事故につながりやすい行動を挙げておきます。

一人での作業、命綱なしでの屋根上作業、飲酒後の作業、体調不良時の作業。これらはいずれも、事故の典型的な背景として繰り返し報告されています。

また「隣の家がやっているから自分も」と焦って始めるのも危険です。住宅の構造や積雪量は家ごとに違います。

除雪機による事故にも注意する

屋根の雪下ろしだけでなく、地上での除雪機作業でも重大な事故が起きています。

最も多いのが、雪詰まりを取り除こうとして手を巻き込まれる事故です。エンジンを止めずに手を入れたことで、指や腕を失う事例が報告されています。

詰まりを取り除くときは、必ずエンジンを完全に停止させ、回転部分が止まったことを確認してから作業してください。付属の除雪棒を使い、直接手を入れないことが鉄則です。

後進時の事故

除雪機を後退させる際に、転倒して機体と壁の間に挟まれる事故も起きています。

後ろを確認しながら、無理のない速度で操作してください。デッドマンクラッチ(手を離すと停止する機構)が正常に作動するかも、シーズン前に点検しておきましょう。

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屋根の雪と住宅の関係

そもそも、なぜ雪下ろしが必要なのでしょうか。

住宅は、その地域の想定積雪量に応じた強度で設計されています。想定を超える雪が積もると、屋根や柱に過大な負担がかかり、最悪の場合は倒壊に至ります。

一方で、無雪化屋根や融雪装置を備えた住宅では、雪下ろしの必要性が下がります。住宅の仕様によって判断が変わる点を知っておいてください。

建築時期による違い

豪雪地帯では、建築基準法により地域ごとの積雪荷重が定められています。古い住宅では、現在の基準を満たしていない場合があります。

ご自宅がどの程度の積雪に耐えられるか分からない場合は、建築士や施工業者に確認しておくと安心です。

雪下ろしの時期をどう判断するか

「いつやるべきか」は、多くの方が悩む点です。

判断材料は、積雪の深さ、雪質(湿っているか乾いているか)、今後の天気予報の3つです。特に、雨や気温上昇の予報が出たときは前倒しを検討してください。

自治体によっては、雪下ろしの目安を広報やウェブサイトで案内しています。地域の情報も参考にしてください。

ためすぎないことが安全につながる

雪をためすぎると、一度の作業量が増え、作業時間も長くなります。疲労は判断力を鈍らせ、事故の確率を高めます。

こまめに少しずつ下ろすほうが、結果的に安全です。一度に片付けようとしないでください。

単独作業を避けるための工夫

「2人以上で」と言われても、家族が離れて暮らしていたり、日中は誰もいなかったりする家庭は多いはずです。

そうした場合でも、単独作業のリスクを下げる方法があります。

  • 作業前に家族や近所の方へ「これから雪下ろしをする」と連絡する
  • 作業予定時間を伝え、終わったら再度連絡する約束をしておく
  • 携帯電話を必ず身につけて作業する(ポケットではなく首から下げる)
  • 近所同士で声をかけ合い、同じ時間帯に作業する

連絡が途絶えたら異変に気づいてもらえる。この仕組みがあるだけで、発見までの時間が大きく変わります。

携帯電話は肌身離さず

転落した際、上着のポケットに入れた携帯電話は、衝撃で飛び出してしまうことがあります。

ストラップで首から下げる、または内ポケットに入れるなど、体から離れない工夫をしておいてください。助けを呼べるかどうかが生死を分けます。

雪下ろしの負担を減らす住宅の工夫

長期的には、雪下ろしそのものを減らす方法もあります。

方式 仕組み 特徴
落雪式屋根 急勾配で雪を自然に落とす 落雪スペースが必要
融雪式屋根 熱で雪を溶かす ランニングコストがかかる
耐雪式住宅 雪を載せたまま耐える構造 建築コストが高い

新築やリフォームを検討している方は、こうした選択肢も視野に入れてみてください。初期費用はかかりますが、毎年の作業負担と事故リスクを大きく減らせます。

屋根の断熱を見直す

室内の熱が屋根に伝わると、接した雪が解けて再凍結し、氷の層ができます。この氷が、すが漏りやつららの原因になります。

断熱をしっかり施すことで、屋根の雪が解けにくくなり、こうしたトラブルを減らせます。

体調管理も安全対策のひとつ

雪下ろしは、想像以上に体力を消耗する重労働です。

作業中は汗をかきますが、寒さで喉の渇きを感じにくく、脱水に気づきにくくなります。こまめな水分補給を心がけてください。

また、寒い屋外での重労働は、心臓に大きな負担をかけます。高血圧や心疾患のある方は、作業前に医師に相談することをおすすめします。

休憩を挟む

疲れてくると、足元への注意が散漫になります。30分から1時間ごとに休憩を取り、体を温めてください。

「あと少しで終わる」という場面こそ、事故が起きやすいタイミングです。

屋根の雪下ろし以外の除雪も危険

事故は屋根の上だけで起きるわけではありません。

場所 主な危険
玄関前・通路 凍結路面での転倒、腰の負傷
カーポート・物置の屋根 強度不足による踏み抜き・崩落
用水路・側溝の近く 雪で境目が見えず転落・溺水
屋根の下 落雪の直撃、つららの落下

特に用水路への転落は、雪国で毎年発生している死亡事故のパターンです。雪で覆われると水路の位置が分からなくなるため、慣れた道でも注意が必要です。

カーポートの雪下ろしは慎重に

カーポートやテラス屋根は、住宅本体ほどの強度がありません。人が乗ることを想定していない構造です。

上に乗って作業するのは避け、地上から棒などを使って雪を落としてください。

つららにも危険がある

軒先にできた大きなつららは、落下すると重大な事故につながります。

特に、玄関の上や人の通り道にできたつららは、早めに除去してください。除去する際は、真下に立たず、横方向から棒で突き落とすようにします。

つららは、屋根の雪が解けて再び凍ることで成長します。断熱不足で屋根から熱が逃げている住宅ほど、大きなつららができやすい傾向があります。

地域で助け合う仕組み

雪国では、地域ぐるみで除雪に取り組む動きが広がっています。

集落の共同作業、消防団による支援、大学生や企業のボランティアによる除雪隊など、形はさまざまです。一人で抱え込まず、こうした仕組みを活用することも選択肢に入れてください。

また、雪かきボランティアを受け入れている自治体もあります。社会福祉協議会が窓口になっていることが多いので、確認してみるとよいでしょう。

高齢の家族が心配な場合

離れて暮らす親が、一人で雪下ろしをしていないか心配という声をよく聞きます。

本人は「まだできる」と言うことが多く、説得は簡単ではありません。ただ、統計が示すとおり、犠牲者の9割超は65歳以上です。年齢を重ねるほど、バランス感覚や筋力は確実に低下します。

正面から止めるより、代わりの手段を具体的に用意するほうが受け入れられやすいと感じています。業者の連絡先を調べておく、自治体の支援制度を申し込んでおく、費用を子世代が負担すると伝える。こうした具体策があれば、本人も引き下がりやすくなります。

帰省のタイミングを活用する

年末年始に帰省する際、一緒に雪下ろしを済ませておくという方法もあります。

その場で作業を手伝うだけでなく、装備の点検や業者への相談も同時に済ませておくと、シーズン中の不安が減ります。

雪下ろしに関する相談窓口

判断に迷ったときの相談先を挙げておきます。

相談先 相談できる内容
市町村の担当課 除雪支援制度、補助金の有無
社会福祉協議会 ボランティアによる除雪支援
地域包括支援センター 高齢者世帯の生活支援全般
建築士・工務店 住宅の耐雪性能、屋根の状態

制度の有無や条件は自治体ごとに異なります。雪が本格化する前に、一度問い合わせておくことをおすすめします。

シーズン前に済ませておきたいこと

雪が積もってから慌てないために、秋のうちにやっておきたい準備があります。

  • 命綱・ヘルメット・長靴など装備の点検と買い替え
  • はしごの状態確認(変形やぐらつきがないか)
  • 除雪機の試運転と整備
  • 業者への事前問い合わせ・予約
  • 自治体の支援制度の申請
  • 火災保険の雪災補償の確認

特に業者の予約は、雪が降り始めてからでは間に合わないことがあります。10月から11月のうちに動いておくと安心です。

よくある質問

Q. 雪下ろしは何人で行うのが理想ですか?

A. 最低2人、可能であれば3人が理想です。屋根で作業する人、地上で見守る人、そして雪を運ぶ人という役割分担ができます。見守り役は、作業者から目を離さないことが重要です。

Q. 雪下ろしはどのくらい積もったらやるべきですか?

A. 住宅の構造や地域によって異なりますが、目安として1メートル前後を超えたら検討する地域が多いようです。ただし湿った雪は重いため、積雪量だけでなく重さでも判断が必要です。建築士や自治体に相談するのが確実です。

Q. 命綱はどこに固定すればいいですか?

A. 屋根の反対側にある丈夫な構造物、またはアンカーに固定します。樋や不安定なものに固定すると、荷重に耐えられず危険です。

Q. 業者に頼むといくらかかりますか?

A. 住宅の規模や積雪量によりますが、数万円が一般的な目安です。地域や業者によって差があるため、複数社に見積もりを取ることをおすすめします。

Q. 一人暮らしの高齢者ですが、どうすればいいですか?

A. 自分で作業することは避けてください。自治体の除雪支援制度や社会福祉協議会のボランティア、地域の見守り活動を活用する方法があります。まずは役所の窓口にご相談ください。

Q. 雪下ろし中に事故が起きたら誰の責任になりますか?

A. 状況により異なります。業者に依頼していた場合は業者の労災、自分で作業していた場合は自己責任となることが多いです。作業前に保険の適用範囲を確認しておくと安心です。

Q. 屋根の雪を全部下ろしきったほうがいいですか?

A. 下ろしきらないほうが安全です。10センチほど雪を残しておくことで、露出した屋根材の上を歩く危険を避けられます。屋根材が見えると急に滑りやすくなります。

Q. 雪下ろしに適した時間帯はありますか?

A. 晴れた日の日中がおすすめです。視界が確保でき、体も動きやすくなります。早朝は路面や屋根が凍っていることが多く、夕方以降は暗くなって屋根の端が見えにくくなります。

Q. 隣家に雪が入ってしまった場合はどうすればいいですか?

A. まず謝罪し、可能であれば速やかに片付けてください。雪の落とし方をめぐる近隣トラブルは雪国では珍しくありません。作業前に一声かけておくと、後の問題を防げます。

Q. 賃貸住宅の場合、雪下ろしは誰がやるのですか?

A. 契約内容によります。管理会社や大家が手配するケースもあれば、入居者の負担とされているケースもあります。入居時の契約書を確認するか、管理会社に問い合わせてください。

この記事の要点

長くなりましたので、特に守っていただきたい点をまとめます。

  • 一人で作業しない。発見の遅れが命を分けています
  • 命綱とヘルメットを必ず装着する。短時間でも省略しない
  • はしごは上下とも固定する。昇降時が最も危険
  • 屋根材が見えるまで下ろさない。10センチ残す
  • 雨や気温上昇の前に済ませる。濡れた雪は重く危険
  • 迷ったら業者や自治体に頼る。無理をしない判断も対策のうち

この6点を意識するだけで、事故の確率は大きく下がります。

あわせて読みたい:屋根の雪下ろしと落雪事故の対策|住宅所有者が冬前にやるべきこと

まとめ

除雪作業中の事故は、多雪の年には年間100人以上の命を奪う深刻な問題です。犠牲者の9割超が65歳以上の高齢者という偏りがあります。

最も重要な対策は「一人でやらない」ことです。命綱、ヘルメット、はしごの固定といった装備も欠かせません。

そして、無理をしないこと。業者への依頼や自治体の支援制度を使うのは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、自分の体力と技量を冷静に見極められることのほうが、はるかに価値のある判断です。

雪が本格化する前の秋のうちに、装備の点検、業者への問い合わせ、自治体の制度確認を済ませておいてください。準備の有無が、シーズン中の安全を大きく左右します。

雪国で暮らしていると、雪下ろしは避けて通れない作業のように感じられます。ですが、命を懸けてまでやるべき作業ではありません。装備を整え、誰かと一緒に行い、それでも不安なら人に任せる。この判断ができることが、本当の意味での備えだと私は考えています。

この記事が、安全な雪との付き合い方を考えるきっかけになれば嬉しいです。

そろえるもの|雪下ろしの装備

雪下ろしは、道具で危険を減らせる作業です。とくに、屋根に上がらずに済む道具を優先して選んでください。

もの 選ぶ基準 詳しく
ヘルメット 転落と落雪の両方に効きます。飛来・落下物用の国家検定合格品を 防災ヘルメットおすすめ10選
命綱とアンカー 屋根に上がるなら必須です。取り付け場所を、雪が積もる前に決めておく
滑りにくい靴 長靴の底の溝を確認してください。すり減っていれば買い替えを 防災用の靴の選び方
手袋 濡れると保温力が落ちます。替えを含めて複数用意する 防災用手袋の選び方
雪下ろし棒・スノーダンプ 屋根に上がらずに済む道具を優先してください。地上から届く範囲が広いほど安全です
携帯電話とホイッスル 一人で作業しないことが原則ですが、万一に備えて連絡手段を身につけておく 忘れがちな防災グッズ30選

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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