【この記事の要約】
低体温症は、深部体温によって3つの段階に分けられます。軽度は35〜32度、中等度は32〜28度、高度は28度以下です。ただし現場に体温計はありませんし、あってもわきの下では深部体温は測れません。ですから、見るべきは2つです。震えているかどうかと、意識がはっきりしているかどうか。軽度では体が震えて熱を作ろうとします。中等度になると、その震えが消えます。静かになるので回復したように見えますが、逆です。そして、この記事でもっとも伝えたいことがあります。急に温めてはいけません。体表を急速に温めると、縮んでいた手足の血管が広がり、そこに滞っていた冷たい血液が心臓へ戻ります。その結果、深部体温がさらに下がることがあります。これをアフタードロップといいます。血圧が急に下がるウォームショックという状態も知られています。さらに、手足を動かすこと自体が危険とされています。冷たく酸素の少ない血液が心臓に戻り、不整脈を引き起こすおそれがあるためです。つまり「良かれと思ってやること」が、状態を悪くし得ます。だから私たちがやるのは、これ以上冷やさないことと、救急を呼ぶことです。処置は医療者に任せてください。
前の記事で、低体温症には3つの段階があると書きました。
そして「どう温めるかは書きません」とも書きました。
その理由を、この記事で説明します。単に慎重ぶっているのではなく、はっきりした医学的な理由があるからです。
私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。医師ではありません。
ですから、この記事の目的は「自分で治す方法」を教えることではありません。むしろその逆です。
なぜ素人が手を出してはいけないのかを、理由とともに知っていただくこと。それが目的です。
理由が分からないまま「やめてください」と言われても、実際の場面では守れません。目の前で人が寒がっていれば、手が出ます。
だから、理由を書きます。知っていれば、手が止まります。
結論|見るのは2つ。そして、急に温めない
先に結論を書きます。
見分けるのは「震えているか」と「意識がはっきりしているか」の2つです。
そして、急いで温めようとしないでください。ゆっくり、これ以上冷やさないようにしながら、救急を待ってください。
なぜ「急に温めてはいけない」のか。後半で、その理由をくわしく書きます。
3つの段階
まず、全体を整理します。
| 段階 | 深部体温 | 震え | 意識 |
|---|---|---|---|
| 軽度 | 35〜32度 | あり | ある。ただし眠気や判断力の低下 |
| 中等度 | 32〜28度 | 消える | 混濁。目を覚まさなくなる |
| 高度 | 28度以下 | なし | 深い昏睡 |
軽度|35〜32度
体はまだ、自分で熱を作ろうとしています。
| 体に起きること | 説明 |
|---|---|
| 震え(戦慄) | 筋肉を細かく動かして、熱を作っています |
| 眠気 | 「休みたい」と言い出すことがあります |
| 呼吸・脈が速くなる | 体が活動を上げて対抗しています |
| 尿が増える | 血管が縮んで、体内の水分の配分が変わるためです |
| 手先が不器用になる | ボタンやファスナーが扱いにくくなります |
「尿が増える」は、意外に知られていません。
寒いとトイレが近くなるのは、多くの方が経験していると思います。あれは体温が下がり始めているサインでもあります。
寒い場所でトイレが近くなったら、その時点で体は熱を失い始めていると考えてください。
中等度|32〜28度
ここが、決定的な分岐点です。
| 体に起きること | 説明 |
|---|---|
| 震えが消える | 熱を作る仕組みが働かなくなりました |
| 意識の混濁 | 呼びかけても、容易に目を覚まさなくなります |
| 脈が遅くなる | 軽度では速かったものが、逆に遅くなります |
| 不整脈 | 心臓のリズムが乱れることがあります |
| 血圧の低下 | 体を維持する力が落ちています |
| 呼吸の回数が減る | 同じく、機能の低下です |
注目してほしいのは、軽度から中等度で「向きが変わる」ことです。
| 軽度 | 中等度 | |
|---|---|---|
| 震え | ある | 消える |
| 脈 | 速い | 遅い |
| 呼吸 | 速い | 減る |
体が「戦っている」状態から、「機能が落ちていく」状態へ切り替わります。
そして見た目には、暴れていた人が静かになったように映ります。これが、判断を誤らせます。
「落ち着いてきた」と受け取ってしまう。そこが分かれ目です。
高度|28度以下
深い昏睡状態になります。
筋肉は硬直し、脈が触れなくなることもあります。呼吸も、ごく浅くなります。
この段階は、医療機関でしか対応できません。加温した点滴や、体外循環を使った方法が必要になります。
なぜ、32度と28度が境目なのか
この2つの数字には、意味があります。体の働きが切り替わる点だからです。
32度|熱を作れなくなる点
震えは、体温を守る最後の手段です。
筋肉を細かく動かして熱を発生させる。これは、かなりのエネルギーを使います。
体温が32度あたりまで下がると、その仕組み自体が働かなくなります。
つまり32度は、「自力で回復できるか、できないか」の分かれ目です。
ここを超えると、外から手当てをしない限り、体温は下がり続けます。
28度|心臓が不安定になる点
28度以下では、深い昏睡状態になり、筋肉が硬直します。
そして心臓のリズムが、非常に不安定になることが知られています。わずかな刺激で、危険な不整脈が起きるおそれがあるとされています。
この記事で「手足を動かさないでください」と繰り返し書いているのは、まさにこの理由によります。
数字を覚える必要はありません
現場で深部体温は測れません。ですから、32度や28度という数字を覚えても、直接には使えません。
覚えていただきたいのは、「震えが消える」という現象が、自力で回復できなくなった合図だということです。
数字ではなく、目で見える変化のほうを覚えてください。
体温計がないときの、見分け方
実際の場面では、深部体温を測ることはできません。
ですから、見た目と反応で判断することになります。
①震えているか
| 状態 | 意味 | やること |
|---|---|---|
| 震えている | 軽度の可能性。体はまだ抵抗しています | これ以上冷やさない。暖かい場所へ |
| 震えが止まった | 中等度以上の可能性 | すぐに救急へ連絡 |
②呼びかけに答えるか
受け答えがはっきりしているか。これが2つ目です。
ろれつが回らない、話がかみ合わない、名前を聞いても答えない。こうした変化は、意識の混濁が始まっているサインです。
酔っているように見えることもあります。寒い場所での「酔ったような様子」は、疑ってください。
③動けるか
手先が不器用になる、つまずく、立てない。
ファスナーが上げられない、ボタンが留められないというのは、分かりやすい変化です。
これらが重なっていれば、迷わず救急に連絡してください。
なぜ、急に温めてはいけないのか
ここが、この記事の核心です。
寒がっている人がいれば、温めたくなります。それは自然な気持ちです。
しかし低体温症では、その「温める」が状態を悪くすることが知られています。
アフタードロップ
体は寒さを感じると、手足の血管を縮めて、中心部の温度を守ろうとします。
その結果、手足には冷たい血液が滞ります。
ここで、体の表面を急速に温めるとどうなるか。
縮んでいた血管が広がり、手足に滞っていた冷たい血液が、心臓のほうへ一気に戻ります。
その結果、深部体温がかえって下がることがあります。
この現象を「アフタードロップ」といいます。温めたつもりが、深部体温を下げてしまう。だから、体の表面を急速に温めることは避けるべきだとされています。
ウォームショック
もうひとつ知られているのが、ウォームショックです。
末梢の血管が急に広がることで、血圧が下がるという状態です。
これも、急速な加温によって起こり得るとされています。
手足を動かすことも、危険とされています
これは、私も調べて初めて知りました。
低体温の状態では、手足に滞った血液が、冷たく、酸素が少なく、カリウムの多い状態になっています。
その状態で手足を動かすと、その血液が心臓に戻り、心室細動などの不整脈を引き起こすおそれがあるとされています。
ですから、低体温症が疑われる人は、安静に保つことが重要だとされています。
「手足をさすって温める」は、良かれと思ってやりがちなことです。しかし低体温症が疑われる場合、それが危険につながる可能性が指摘されています。不用意に体を動かさず、救急の指示に従ってください。
医療現場では、どうするのか
中等度から高度の低体温症では、加温した輸液による中心部からの復温と、体幹を中心とした体表の加温が行われるとされています。
ポイントは「体幹を中心に」という部分です。手足からではありません。
手足を先に温めることが、まさにアフタードロップを招くからです。
そしてゆっくり、管理された形で温める。これが原則とされています。
現場でこれを再現することはできません。だから、救急に任せるのです。
では、私たちは何をするのか
ここまで「やってはいけない」を書いてきました。やることを整理します。
やること
| 順番 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 救急に連絡する | 判断に迷う時点で、その段階です |
| 2 | 濡れた衣服を脱がせる | 濡れは、熱をもっとも速く奪います |
| 3 | 風から守る | 風は体感温度を大きく下げます |
| 4 | 地面・床から離す | 接している面から、熱が逃げ続けます |
| 5 | 毛布などでくるむ | 断熱して、これ以上の放熱を防ぎます |
| 6 | 安静に保つ | 不用意に動かさない |
すべて「これ以上冷やさない」ための行動です。
地味に見えるかもしれませんが、これが現場でできる最善です。救急が到着するまでの時間を、この5つが支えます。
積極的に温めるのではなく、熱が逃げる経路をふさぐ。これが、現場でできることです。
やらないこと
| やらないこと | 理由 |
|---|---|
| 体表を急速に温める | アフタードロップ、ウォームショックのおそれ |
| 手足をさする、動かす | 不整脈を引き起こすおそれが指摘されています |
| 意識のはっきりしない人に飲ませる | のどに詰まらせる危険があります |
| アルコールを与える | 血管が広がり、かえって熱を逃がします |
| 熱いお湯に入れる | 急速な加温にあたります |
軽度の場合について、示されていること
軽度で、体温の調節がまだ働いている場合には、温めた毛布でくるみ、温かい飲みものを与えることで足りるとされています。
ただし、これは意識がはっきりしていて、自分で飲み込める場合に限った話です。
そして、判断に迷う状態であれば、それはもう自分で対応する段階ではありません。救急に連絡してください。
状況別に、判断の流れを整理します
実際の場面で迷わないよう、順番にしておきます。
寒い場所に、様子のおかしい人がいる
| 順番 | 確かめること | 次の行動 |
|---|---|---|
| 1 | 呼びかけに答えるか | 答えない・反応が鈍い → すぐ救急へ |
| 2 | 震えているか | 震えがない → すぐ救急へ |
| 3 | 濡れているか | 濡れていれば、衣服を脱がせる |
| 4 | 風・地面にさらされていないか | 風から守り、地面から離す |
| 5 | 毛布などはあるか | くるんで、これ以上の放熱を防ぐ |
1と2で「はい」なら、そこで救急に連絡してください。3から5は、救急を待つあいだにやることです。
自分が寒くて、様子がおかしいと感じたら
これは、いちばん難しい状況です。判断力が落ちるのが初期の症状だからです。
ですから、症状で判断しようとしないでください。代わりに、次のような「決めごと」で動いてください。
| 決めごと | 理由 |
|---|---|
| 濡れたら、その時点で着替える | 「まだ大丈夫」と思ったときには遅い |
| 眠くなったら、危険と考える | 休みたいのではなく、体温が下がっている可能性 |
| 手がうまく動かなくなったら、屋内へ | 分かりやすいサインです |
| 一人でいるときは、早めに切り上げる | 気づいてくれる人がいません |
「眠くなったら危険」を覚えておいてください。寒いところで眠気を感じたら、それは休憩のサインではありません。
救急がすぐに来られない場所にいる
山間部、離島、大雪で道路が塞がっている。こうした状況もあり得ます。
その場合でも、まず連絡してください。到着まで時間がかかるとしても、電話で指示を受けられます。
そして、そのあいだにやることは同じです。これ以上冷やさない。動かさない。急に温めない。
なぜ、この記事を書いたか
正直に書きます。
前の記事で「どう温めるかは書きません」と書いたとき、逃げているように読まれるかもしれないと思いました。
しかし調べていくうちに、その判断が正しかったと確認できました。
アフタードロップも、動かすことの危険も、知らなければ確実に誤ります。
寒がっている人がいたら、こすって温めたくなります。熱いお風呂に入れたくなります。それが親切だと思うからです。
けれど、それが状態を悪くし得る。
この記事で伝えたいのは、手順ではなく「知らないことの危うさ」です。
そして、その結論はきわめて単純です。迷ったら救急に連絡する。それだけです。
救急に、何を伝えるか
連絡したときに、落ち着いて伝えられるよう整理しておきます。
| 伝えること | なぜ必要か |
|---|---|
| 場所 | いちばん最初に。屋外なら目印も |
| 震えているかどうか | 段階を推定する、最も重要な情報です |
| 呼びかけへの反応 | 意識の状態が分かります |
| 濡れているか | 熱が奪われる速さが変わります |
| どのくらいの時間、寒い場所にいたか | 進行の程度の目安になります |
| 年齢と、持病があれば | 対応の判断材料になります |
| 飲酒の有無 | 低体温症が起こりやすい条件のひとつです |
「震えているかどうか」を必ず伝えてください。これは、電話越しでも状態を推定できる、数少ない手がかりです。
そして指示を受けたら、そのとおりにしてください。この記事に書いたことより、そのときの指示が優先されます。
山や海で起きる場合
低体温症は、災害の場面だけで起きるものではありません。日本救急医学会も、山岳遭難と水難事故を挙げています。
山では、天候の急変が引き金になります
標高が上がると、気温は下がります。そして風が強く、さえぎるものがありません。
そこに雨や霧が加わると、濡れと風と低温がそろいます。これは、低体温症が起きる典型的な条件です。
夏でも起こります。「季節が夏だから大丈夫」とは言えません。
水の中では、はるかに速く進みます
水は、空気よりずっと速く熱を運びます。
ですから水難事故では、短時間でも体温が大きく下がります。
水害で水につかった場合も同じです。季節を問わず、濡れた状態が続けば危険が高まります。
ただし、専門的な行動指針は別にあります
登山や水辺の活動における具体的な装備や行動については、それぞれの分野の専門的な指導を受けてください。
私が防災士として書けるのは、低体温症という状態そのものについてまでです。
凍傷は、別の問題です
混同されやすいので、分けて説明します。
| 低体温症 | 凍傷 | |
|---|---|---|
| 問題が起きる場所 | 体の中心部 | 手足・耳・鼻など、末端 |
| 命への危険 | 直接、命に関わります | 組織が損なわれます |
| 起きる仕組み | 深部体温が下がる | 末端の組織が凍る、または血流が失われる |
両方が同時に起きることもあります。
体は中心部を守るために手足の血流を減らすので、低体温症が進む状況では、手足が凍傷の危険にさらされます。
ただし優先すべきは、低体温症のほうです。命に関わるのは、中心部の温度だからです。
凍傷への対応についても、自己判断で処置せず、医師にご相談ください。こすったり、急に温めたりすることが、かえって組織を傷めることが知られています。
濡れることの危険を、もう一度
この記事で繰り返し出てくるのが「濡れ」です。理由を書いておきます。
水は、空気よりはるかに速く熱を運びます。
濡れた服を着ているということは、体の表面が常に冷たい水に触れている状態です。そして水が蒸発するときにも、熱が奪われます。
| 濡れる場面 | 気づきにくい理由 |
|---|---|
| 汗 | 動いている間は暑いので、濡れていることに気づきません |
| 雪が服の中で溶ける | 降っているときは冷たく感じません |
| 雨 | 気温が低くなくても、体温を奪います |
| 水につかった | 水害の場面。季節を問いません |
| 靴下が濡れる | 足元は見落とされます |
だから、着替えを持つことが最大の対策になります。
持ち出し袋にも、車にも、職場にも。乾いた着替えが1組あるかどうかで、その後がまったく変わります。
災害の場面で、この知識が要るとき
| 場面 | 起こり得ること |
|---|---|
| 冬の停電 | 暖房が止まり、室内でも体温が下がります |
| 車の立ち往生 | 燃料が尽きれば、暖房が止まります |
| 冬の避難所 | 床の冷えと、濡れた衣服 |
| 水害 | 季節を問わず、水は体温を奪います |
| 除雪作業のあと | 汗が冷えます |
| 救助を待っているとき | 助けが来るまでの時間が、いちばん危険です |
共通しているのは、すぐに医療にかかれない状況だということです。
だからこそ、「これ以上冷やさない」という原則が効いてきます。
毛布1枚、床の敷物1枚。それが、救急が来るまでの時間を支えます。
冬の停電への備えは停電対策【冬編】に、避難所での対策は冬の避難所は床が最優先に書きました。
子どもと高齢者は、進み方が違います
同じ環境にいても、体温の下がり方には差があります。
子ども
体の大きさに対して、表面積が大きいのが特徴です。
熱は体の表面から逃げていくので、体が小さいほど、割合として速く熱を失います。
そして小さな子どもは、自分の状態を言葉で伝えられません。「寒い」と言えないまま、進んでしまうことがあります。
| 見るところ | 説明 |
|---|---|
| いつもより静か | 元気がない、反応が鈍いのはサインになり得ます |
| ぐったりしている | 眠っているのか、意識が落ちているのか |
| 手足だけでなく、体幹が冷たい | お腹や背中に触れて確かめます |
| 濡れていないか | 雪遊びのあと、服の中が濡れていることがあります |
雪遊びのあとは、必ず着替えさせてください。遊んでいる間は本人も気づきませんが、服の中は濡れています。
高齢者
寒さを感じにくくなること、そして熱を作る力が落ちることが重なります。
日本救急医学会も、低体温症が起こりやすい状況として高齢者を挙げています。
やっかいなのは、本人に自覚がないまま進むことです。「寒くない」と言っていても、実際には体温が下がっていることがあります。
ですから、本人の感覚ではなく、室温を測ってください。
室温の基準は冬の室温はWHOが18度以上を勧告に書きました。
薬を飲んでいる場合
日本救急医学会は、低体温症の原因のひとつに体温調節能の低下を挙げており、その要因として病気や薬にも言及しています。
お薬と寒さへの影響については、必ずかかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。この記事で個別の判断はできません。
よくある質問
Q. わきの下で測って35度なら、軽度ですか?
そう判断することはできません。
低体温症の分類は深部体温によるもので、わきの下の温度とは測っている場所が違います。
一般に、わきの下の温度は深部体温より低く出ます。数値だけで段階を判断しないでください。
体温の数値について心配がある場合は、医療機関にご相談ください。
Q. 震えているなら、まだ大丈夫ということですか?
いいえ。震えている時点で、すでに体温は下がっています。
震えは「まだ体が抵抗できている」という意味であって、「問題がない」という意味ではありません。
震えている段階で対処すれば、悪化を防げる可能性があります。むしろ、その段階で動いてください。
Q. カイロを貼って温めるのはどうですか?
使い方の判断は、私にはできません。救急や医師の指示に従ってください。
一般的な注意として、低温やけどの危険があります。同じ場所に長時間あて続けると、皮膚が傷むことがあります。
とくに意識のはっきりしない方、感覚が鈍くなっている方は、熱さを訴えられません。
Q. 抱きしめて温めるのは、有効ですか?
体温で温める方法が紹介されることはありますが、その適否や方法についての判断は私にはできません。
この記事で書けるのは、急速な体表の加温には注意が必要とされていること、そして不用意に体を動かさないほうがよいとされていることまでです。
救急に連絡し、その指示に従ってください。
Q. 低体温症から回復したら、すぐに元どおりですか?
その判断も、医師によるものです。
低体温症は、心臓や腎臓など複数の臓器に影響が及ぶことが知られています。見た目に回復したように見えても、受診が必要かどうかは医師が判断します。
自己判断で「もう大丈夫」としないでください。
Q. 高齢の家族が「寒くない」と言います
加齢によって、寒さを感じにくくなることが知られています。
ですから、本人の感覚を尋ねても状態は分かりません。室温を測ってください。
室温の基準については冬の室温はWHOが18度以上を勧告に書きました。
Q. 低体温症になった人は、助からないのですか?
そんなことはありません。適切な医療を受ければ、回復する例が多くあることが知られています。
むしろ低体温症は、見た目の状態が悪くても、医療によって回復する可能性が残されていることがあります。
だからこそ、あきらめずに救急へつないでください。判断は医療者が行います。
Q. 毛布は、どのようにかければいいですか?
体を包むようにして、地面や床との間にも敷いてください。
上からかけるだけでは、接している面から熱が逃げ続けます。「掛ける」と「敷く」の両方が要ります。
ただし、体を持ち上げたり、大きく動かしたりするのは避けてください。救急の指示に従ってください。
Q. エマージェンシーシートは有効ですか?
体からの放熱を抑える目的で使われるものです。軽く、小さくたためるので、持ち出し袋や車に入れておけます。
ただし、これは「これ以上冷やさない」ための道具であって、積極的に温める道具ではありません。
詳しくはエマージェンシーシートおすすめ10選に書きました。
Q. 低体温症は、何度くらいの気温で起きますか?
気温だけでは決まりません。
濡れているか、風があるか、動けるか、食べているか、年齢や体調はどうか。これらの条件が重なって決まります。
実際、氷点下でなくても低体温症は起こります。春や秋の水難事故が、その例です。
「この気温なら安全」という線引きはできない、と考えてください。
Q. 温かい飲みものは、いつ与えていいですか?
意識がはっきりしていて、自分で飲み込める場合に限られます。
受け答えがあいまいな方、うとうとしている方には、のどに詰まらせる危険があるため与えないでください。
そしてアルコールは避けてください。血管が広がって、かえって熱を逃がします。
迷う場合は、救急に連絡して指示を仰いでください。
Q. 「軽度だから様子を見る」でいいですか?
軽度であっても、悪化する可能性があります。
とくに、寒い環境から離れられない状況では、進行を止められません。屋外、停電した家、立ち往生した車の中などです。
ですから「軽度だから大丈夫」ではなく、「軽度のうちに、寒い環境から離す」と考えてください。
そして、高齢の方や持病のある方の場合は、軽度に見えても医師にご相談ください。
まとめ|3つだけ覚えてください
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| 段階 | 軽度35〜32度/中等度32〜28度/高度28度以下 |
| 見分け方 | 震えの有無と、意識がはっきりしているか |
| 分岐点 | 震えが消えたら中等度以上。すぐ救急へ |
| アフタードロップ | 急に体表を温めると、深部体温がさらに下がることがあります |
| ウォームショック | 急な加温で血圧が下がることがあります |
| 安静 | 手足を動かすと、不整脈のおそれが指摘されています |
| やること | 救急に連絡。濡れた服を脱がせ、これ以上冷やさない |
覚えていただきたいのは、3つだけです。
ひとつ。震えが止まったら、悪化しています。
ふたつ。急いで温めないでください。こすらない、熱い湯に入れない、手足を動かさない。
みっつ。迷ったら救急に連絡してください。
この3つを知っているかどうかで、いざというときの行動が変わります。
そしてほとんどの場合、いちばん役に立つのは3つ目です。
低体温症は、専門家でなければ段階を正確に判断できません。そして、判断できないまま処置をすると危険です。
ですから、私たちの役割は「気づくこと」と「つなぐこと」に絞られます。
震えが止まった。呼びかけに答えない。それが分かれば、十分です。あとは救急に任せてください。
そして救急が来るまでのあいだ、これ以上冷やさないようにする。毛布1枚、床の敷物1枚が、その時間を支えます。
【この記事について】
低体温症の重症度分類と各段階の症状は、一般社団法人日本救急医学会の用語解説および公開されている医学的な解説をもとに整理しました。アフタードロップ、ウォームショック、安静保持の必要性についても、公開されている医療者向けの解説を参照しています。この記事は、応急処置の手順を指導するものではありません。低体温症への対応は、状態によって適切な方法が異なり、誤った処置は状態を悪化させるおそれがあります。低体温症が疑われる場合は、ためらわずに救急(119番)に連絡し、その指示に従ってください。診断・治療・受診の要否についての判断は、必ず医師にご相談ください。持病のある方や薬を服用中の方は、寒さへの備えについてもかかりつけの医師にご相談ください。





