低体温症とは?深部体温35度以下で起きること|凍死は熱中症の2倍、屋内が3倍

低体温症とは?深部体温35度以下で起きること|凍死は熱中症の2倍、屋内が3倍

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【この記事の要約】
低体温症とは、体の深部の温度が35度以下に下がった状態のことです。日本救急医学会は、事故や不慮の事態で起きるものを「偶発性低体温症」と呼んで区別しています。ここでいちばん知っておいてほしいのは、凍死は熱中症より多いということです。厚生労働省の人口動態統計をもとにした報告によれば、2017年に熱中症で亡くなった方が635人だったのに対し、低温にさらされたことによる死亡は1,371人。2倍を超えています。そして屋内での発生が、屋外の3倍以上と報告されています。山で遭難した人の話ではありません。家の中で起きています。重症度は3つに分かれます。軽度は35〜32度、中等度は32〜28度、高度は28度以下。この記事でもっとも重要な一点を先に書きます。「震えが止まったら、良くなったのではありません。悪化しています。」軽度では体が震えて熱を作ろうとしますが、中等度になると震えが消えます。震えが止まった時点で、すでに危険な段階です。応急の対応として広く示されているのは、濡れた衣服を脱がせ、これ以上体温を奪われないようにすることです。ただし、実際にどう温めるか、受診が必要かどうかの判断は、必ず医師や救急にご相談ください。誤った温め方は危険を伴います。

冬の防災というと、多くの人が雪を思い浮かべます。

大雪、除雪、立ち往生。たしかにどれも重要です。

私も、この夏に雪の記事を何本も書いてきました。

しかし、統計を見ると別の事実が浮かびます。

寒さそのもので亡くなる方が、熱中症で亡くなる方より多いのです。

私は札幌に住んでいます。この事実を知ったとき、正直に言って驚きました。

そして、もっと驚いたのはその多くが屋内で起きているということでした。

雪山でも、路上でもありません。ふつうの家の中です。この記事では、その事実と、気づくためのサインを整理します。

目次

結論|震えが止まったら、悪化しています

この記事でいちばん伝えたいことを、先に書きます。

寒い場所で、震えていた人の震えが止まった。
これは「落ち着いた」のではなく、「悪化した」というサインです。

体は、寒さを感じると筋肉を震わせて熱を作ります。震えているうちは、体がまだ抵抗できているということです。

ところが体温がさらに下がると、その震えが消えます。熱を作る機能が働かなくなるからです。

見た目には静かになるので、「落ち着いてきた」と誤解されます。ここが、この症状のいちばん恐ろしい点です。

震えが止まった時点で、迷わず救急へ連絡してください。

この一点だけでも、覚えて帰っていただければと思います。

低体温症とは何か

定義

体の深部の温度(深部体温)が35度以下に下がった状態を、低体温症といいます。

ここでいう深部体温とは、直腸や膀胱、食道など、体の中心部の温度のことです。

わきの下で測る体温とは違います。手足が冷たいことと、低体温症であることは別の話です。

「偶発性低体温症」という呼び方

日本救急医学会は、事故や不慮の事態によって起きる低体温を「偶発性低体温症」と呼んでいます。

これは、手術のときに意図的に体温を下げる「低体温麻酔」と区別するためです。

私たちが防災の文脈で扱うのは、こちらの偶発性のほうです。

なぜ起きるのか

日本救急医学会は、原因として次のものを挙げています。

原因 中身
寒冷環境 寒い場所にいること
熱喪失状態 濡れている、風にさらされているなど、熱が奪われる状態
熱産生の低下 栄養不足、疲労、動けない状態
体温調節能の低下 高齢、病気、薬、飲酒など

これらが単独で、あるいは重なって起こります。

注目してほしいのは、「寒冷環境」だけが原因ではないという点です。

それほど寒くない場所でも、濡れていれば、あるいは体温調節がうまくいかない状態なら、低体温症は起こります。

起こりやすいとされる状況

同じく日本救急医学会が挙げているのは、次のような場合です。

状況
山岳遭難
水難事故
泥酔
薬物中毒
脳血管障害
頭部外傷
幼少児
高齢者
路上生活者

山岳遭難と水難事故は、多くの人が想像するとおりです。

しかし泥酔、高齢者、幼少児が並んでいることに注目してください。これらは、日常のなかで起こり得る条件です。

体温が下がると、何が起きるのか

もう少しだけ、体の側の話を書きます。なぜ35度が境目なのかが見えてきます。

体は、37度前後を保とうとします

人の体は、深部の温度をほぼ一定に保つようにできています。

暑ければ汗をかいて冷やし、寒ければ震えて熱を作る。この調節が、常に働いています。

体温が下がるのは、失われる熱が、作られる熱を上回ったときです。

まず、手足を切り離します

寒さを感じると、体は手足への血流を減らします。

これは、中心部の温度を守るための働きです。手足が冷たくなるのは、その結果であって、異常ではありません。

ただし、この状態が続くと手足の側には別の問題が起きます。凍傷です。

次に、震えて熱を作ります

筋肉を細かく動かすことで、熱を発生させます。これが震えです。

ただし、この方法には限界があります。体力を消耗しますし、エネルギーが尽きれば続けられません。

だから疲れているとき、食べていないときは、低体温症になりやすくなります。

そして、震えが止まります

体温が下がり続けると、熱を作る仕組みそのものが働かなくなります。

ここから先は、自力では回復できません。外から手当てをするしかない段階です。

この流れを知っておくと、なぜ「震えの有無」が重要なサインなのかが分かると思います。

統計|凍死は、熱中症より多い

ここが、この記事のもうひとつの柱です。

数字を並べます

厚生労働省の人口動態統計をもとにした報告によると、次のようになります。

年 熱中症による死亡 低温にさらされたことによる死亡
2017年 635人 1,371人

2倍を超えています。

さらに長期で見ると、2001年から2014年の合計で、低温による死亡は13,204人、暑熱による死亡は8,789人と報告されています。

また2010年から2014年までは、低温による死者が毎年1,000人を超えていたとされています。

そして、屋内が多い

屋内での凍死が、屋外の3倍以上と報告されています。

これは、多くの人の想像と食い違うのではないでしょうか。

凍死という言葉から連想するのは、雪山や、路上で倒れている場面だと思います。

しかし実際には、家の中で亡くなっている方のほうが、はるかに多いのです。

なぜ熱中症ほど話題にならないのか

これは私の見方になりますが、いくつか理由が考えられます。

ひとつは、季節の集中度です。熱中症は真夏の短い期間に集中して発生し、連日報道されます。低体温症は冬のあいだ、じわじわと起こります。

もうひとつは、屋内で起きることです。屋外で倒れる人が多ければ目に見えますが、家の中のことは見えません。

そして、警戒を呼びかける仕組みの差もあります。熱中症には「熱中症警戒アラート」があり、暑さ指数という物差しもあります。寒さの側には、それに相当する日常的な指標がありません。

熱中症の情報の仕組みについては熱中症警戒アラートとは?に書きました。

3つの段階と、その症状

重症度は、深部体温によって3つに分けられます。

段階 深部体温 主な状態
軽度 35〜32度 震えがある。眠気、呼吸や脈が速くなる、尿が増える
中等度 32〜28度 震えが消える。意識がさらに混濁し、目を覚まさなくなる。脈が遅くなる、不整脈、血圧の低下
高度 28度以下 深い昏睡。筋肉が硬直する

軽度|まだ体が戦っています

震えは、体が熱を作ろうとしている証拠です。

この段階では、意識もある程度あります。ただし、眠気や判断力の低下が始まっています。

寒い場所で「眠い」と言い出したら、それは休みたいのではなく、体温が下がり始めているのかもしれません。

中等度|震えが消えます

ここが分岐点です。

震えが消えるということは、熱を作る仕組みが働かなくなったということです。

そして意識が混濁し、呼びかけても目を覚まさなくなります。脈は遅くなり、不整脈が出ることもあります。

「震えが止まって静かになった」は、回復ではありません。この段階で、迷わず救急に連絡してください。判断に迷ったときも、連絡してください。

高度|昏睡と筋肉の硬直

深い昏睡状態になり、脈が触れなくなることもあります。

この段階では、医療機関での特別な処置が必要になります。現場でできることは限られます。

応急の対応として、広く示されていること

ここは、慎重に書きます。

低体温症への対応は、やり方を誤ると危険を伴います。ですから、この記事では公的な資料や医療機関が広く示している原則にとどめ、それ以上の具体的な処置には踏み込みません。

最優先とされていること

最優先されるのは、濡れた衣服を脱がせ、これ以上体温が奪われないようにすることだとされています。

やること なぜ
濡れた衣服を脱がせる 濡れていると、熱が急速に奪われます
風から守る 風は体感温度を大きく下げます
暖かい場所へ移す これ以上冷やさないため
毛布などでくるむ 断熱して、熱の放散を防ぎます
地面から離す 床や地面に接していると、そこから熱が逃げます

共通しているのは「温める」より前に「これ以上冷やさない」ということです。

軽度の場合について示されていること

軽度の低体温症で、体温の調節がまだ働いている場合には、温めた毛布でくるみ、温かい飲みものを与えることで足りるとされています。

ただし、これは意識がはっきりしていて、自分で飲み込める場合の話です。

意識がはっきりしない人に、飲みものを飲ませないでください。のどに詰まらせる危険があります。そして、判断に迷う状態であれば、それはもう自分で対応する段階ではありません。救急に連絡してください。

中等度・高度の場合

医療機関での処置が必要です。

加温した点滴や、体外循環を用いた方法など、現場ではできない処置が行われます。

ですからここで大事なのは、いかに早く救急へつなぐかです。

私が書かないこと

「どのくらいの温度で温めるか」「どこを先に温めるか」「こすってよいのか」といった具体的な手技については、この記事では書きません。

理由は明確です。誤った方法は、状態を悪化させることがあるからです。

そして私は医師ではありません。防災士として整理できるのは「早く気づいて、早くつなぐ」というところまでです。

個別の判断は、必ず医師や救急隊にご相談ください。

なぜ、屋内で起きるのか

ここを掘り下げます。統計が示す、いちばん大事な部分だからです。

①暖房が届いていない部屋がある

家全体が暖かい家は、多くありません。

居間は暖かくても、廊下、脱衣所、トイレ、寝室は冷えています。その温度差のなかで、長時間過ごすことになります。

②高齢の方は、寒さを感じにくくなることがあります

加齢によって、温度の感じ方が鈍くなることが知られています。

本人は寒いと感じていないのに、体温は下がっている。この状態が起こり得ます。

だから「寒くない?」と聞いて「大丈夫」と返ってきても、それだけでは判断できません。

この点は高齢の家族は寒さを感じにくいに詳しく書きました。

③暖房費を気にして、我慢することがあります

これは、防災の記事があまり書かない部分です。

燃料費や電気代を気にして、暖房を控える。これは現実に起きています。

とくに一人暮らしの高齢の方の場合、「自分ひとりだから」と暖房を我慢することがあります。

④動けない状態が続くと、熱が作られません

体を動かすことは、熱を作ることです。

転倒して動けなくなった、体調が悪くて寝込んでいる。そういう状態が長く続くと、熱を作る力が落ちます。

そして床に接していると、そこから熱が逃げ続けます。

⑤停電すると、これが一気に起こります

災害の文脈では、ここがいちばん重要です。

暴風雪や大雪で停電すれば、暖房が止まります。そして冬の停電は、数時間で終わるとは限りません。

備えは停電対策【冬編】にまとめました。

気づくための、見るポイント

低体温症は、本人が気づけません。判断力が落ちるのが、初期の症状だからです。

ですから、周りの人が気づくしかありません。何を見ればよいかを整理します。

話し方

ろれつが回らない、言葉が出てこない、話がかみ合わない。

寒い場所にいる人にこうした変化があれば、体温が下がっている可能性を考えてください。酔っているように見えることもあります。

動き

手先が不器用になる。つまずく。動作が遅くなる。

体温が下がると、筋肉がうまく働かなくなります。ファスナーが上げられない、ボタンが留められないというのは、分かりやすいサインです。

言うこと

「眠い」「もう大丈夫」「ここで少し休む」

これらは、危険なサインになり得ます。判断力が落ちているために出てくる言葉だからです。

とくに「大丈夫」と言われたときこそ、本人の言葉ではなく状態を見てください。

そして、震え

状態 意味
震えている 体がまだ熱を作れています。ただし、すでに低体温が始まっています
震えが止まった 熱を作る力が落ちています。より危険な段階です

この2行だけは、覚えておいてください。この記事でいちばん実用的な部分だと思っています。

災害のときに、とくに気をつける場面

場面 危険の理由
冬の停電 暖房が止まり、室内でも体温が下がります
車の立ち往生 燃料が尽きれば暖房が止まります
冬の避難所 床が冷たい。ここが最優先の対策点です
雪や雨に濡れた状態 濡れは、熱を急速に奪います
屋外での作業中 除雪中に汗をかき、その汗で冷えることがあります
水害で水につかった 季節を問わず、水は体温を奪います

「除雪中に汗をかいて冷える」は、見落とされがちです。

作業中は暑いので、上着を脱ぎます。そして作業をやめた瞬間、汗が冷えます。

冬の避難所での対策は冬の避難所は床が最優先に書きました。

備えとして、家にあるとよいもの

特別なものは要りません。

もの 役割
毛布・寝袋 断熱。暖房が止まったときの最後の手段です
床に敷くもの 段ボールでも効果があります。床からの冷えを防ぐ
エマージェンシーシート 軽くて小さい。持ち出し袋に入ります
着替え 濡れたら着替える。これが最重要です
帽子・手袋・靴下 末端と頭から熱は逃げます
カセットコンロ 温かい飲みものを作る。ただし必ず換気してください

カセットコンロについて、ひとつ注意があります。

屋内で換気せずに燃焼するものを使うと、一酸化炭素中毒の危険があります。一酸化炭素は無色無臭で、気づけません。

寒いからと窓を閉め切ったまま使うのが、いちばん危険です。

寝袋の選び方は防災用寝袋の選び方、エマージェンシーシートはエマージェンシーシートおすすめ10選に書きました。

体温が奪われる4つの経路

なぜ寒い場所で体温が下がるのか。経路を知っておくと、対策が組み立てやすくなります。

経路 どういうことか 防ぎ方
伝導 冷たいものに触れて、直接熱が移る 床・地面から離れる。敷物を敷く
対流 風が、体のまわりの暖かい空気を奪う 風をさえぎる。風上に背を向ける
放射 体から赤外線として熱が出ていく 毛布やシートでくるむ
蒸発 濡れた水分が蒸発するとき、熱を持っていく 濡れたら着替える。汗をかいたら拭く

このうち、いちばん強力なのが「蒸発」です。

濡れた状態は、乾いた状態より格段に速く熱を奪います。だから、応急の対応で「濡れた衣服を脱がせる」が最優先とされているのです。

そして「伝導」も見落とされがちです。冷たい床や地面に直接座ったり寝たりしていると、そこから熱が逃げ続けます。

避難所で「床が最優先」と言われるのは、この経路をふさぐためです。毛布を体にかけるより、床に敷くほうが効くという場面があります。

汗が、いちばん危ない

冬の防災でとくに伝えたいのが、この点です。

除雪や、避難の移動では、汗をかきます。寒いのに、動けば暑くなります。

そして作業をやめた瞬間、その汗が蒸発して、一気に熱を奪います。

やること 理由
汗をかく前に、脱ぐ 暑くなってから脱ぐのでは、すでに濡れています
重ね着で調整する 1枚の厚着より、薄手を重ねるほうが調整できます
肌に触れる服を選ぶ 汗を吸って乾きにくい素材は、そのまま冷えます
着替えを持つ 濡れたら替える。これが確実です
休憩時に上着を着る 動きを止めたら、すぐに保温する

「暑くなったら脱ぐ」ではなく「暑くなる前に脱ぐ」。これが、冬の作業での基本になります。

北海道から見ていて、思うこと

北海道の家は、暖かいと言われます。実際、そのとおりです。

断熱がしっかりしていて、家全体を暖める設計になっています。本州の家より、室内は暖かいことが多いと思います。

ですが、だからこそ停電に弱いという面があります。

暖房が止まったとき、氷点下の外気に対して、家の中の温度は下がり続けます。断熱がよくても、熱を作るものがなければ冷えていきます。

そして2018年の胆振東部地震のとき、私たちは全道の停電を経験しました。あれが9月だったから、まだ耐えられました。

1月に同じことが起きていたら、まったく違う被害になっていたはずです。

私が冬の停電をしつこく書くのは、この想像があるからです。

そしてこの記事を書くにあたって統計を調べ直して、考えを改めた部分があります。

凍死は、災害のときだけの話ではありません。ふだんの冬に、家の中で、毎年千人以上が亡くなっている。

これは、防災の枠を超えた話かもしれません。けれど「寒さで人は死ぬ」という事実は、防災の側からも繰り返し伝える価値があると思っています。

家族と離れて暮らしている方へ

屋内での凍死が屋外の3倍以上という統計を踏まえると、いちばん実効性のある対策は、離れて暮らす家族への声かけかもしれません。

聞き方を変える

「寒くない?」と聞いても、答えは「大丈夫」です。

高齢になると寒さを感じにくくなることがあるので、本人の感覚を尋ねても、状態は分かりません。

ですから、聞き方を変えてください。

効きにくい聞き方 効きやすい聞き方
寒くない? いま部屋の温度計は何度?
暖房つけてる? 灯油はあと何日ぶんある?
体調はどう? 今日は何を食べた?
気をつけてね 寝るとき、どの部屋で寝てる?

数字で答えられる質問に変えると、状態が見えます。

そして部屋に温度計を置いてもらうことが、いちばん簡単な対策です。数百円で買えて、電池も要らないものがあります。

暖房を我慢していないか

これは、聞きにくいことだと思います。

ただ、燃料費を気にして暖房を控えるというのは、実際に起きています。とくに一人暮らしの場合、「自分ひとりだから」と考えがちです。

お金の話をするのが難しければ、灯油を送る、あるいは支払いを持つという方法もあります。「寒くないようにして」と言うより、確実です。

寝る場所

暖房のない部屋で寝ていないかを、一度確認してください。

就寝中は、長時間にわたって動きません。熱を作る量が減り、そのまま何時間も過ごすことになります。

寝具を厚くする、床からの冷えを断つ。この2つだけでも違います。

よくある質問

Q. わきの下で測った体温が35度なら、低体温症ですか?

低体温症の定義は、深部体温が35度以下であることです。わきの下で測る体温とは、測っている場所が違います。

一般的に、わきの下の温度は深部体温より低く出ます。ですから、わきの下の数値だけで判断することはできません。

体温の数値について心配がある場合は、医療機関にご相談ください。この記事で個別の判断はできません。

Q. 手足が冷たいのは、低体温症ですか?

手足の冷えと、低体温症は別のものです。

体は寒さを感じると、中心部の温度を守るために、手足への血流を減らします。手足が冷たくなるのは、その働きによるものです。

つまり手足の冷えは、体が正常に反応している状態でもあり得ます。

問題になるのは、その先で中心部の温度まで下がってきたときです。

Q. お酒を飲むと体が温まりませんか?

一時的に温かく感じますが、体温を守る面では逆に働きます。

アルコールには血管を広げる作用があり、皮膚の表面に血液が流れることで温かく感じます。しかし同時に、そこから熱が逃げていきます。

そして日本救急医学会も、低体温症が起こりやすい状況として「泥酔」を挙げています。

寒い日に飲んで外で眠ってしまう。これは、非常に危険な組み合わせです。

Q. 低体温症になった人を、こすって温めてもいいですか?

この判断は、私にはできません。医師や救急にご相談ください。

低体温症の状態によっては、体の動かし方や温め方が、状態に影響することが知られています。

ですから、自己判断で処置を行うより、まず救急に連絡して指示を仰ぐことをおすすめします。

そのあいだにできるのは、濡れた衣服を脱がせ、風から守り、毛布などでくるむことです。

Q. 室温は何度以上に保つべきですか?

具体的な数値は、この記事では書きません。

推奨される室温は、目的や立場によって示されている数値が異なります。検証していない数字を書くことは避けます。

言えるのは、暖房を我慢しないこと、とくに高齢の方が一人で過ごす部屋を冷やさないことです。

Q. 冬の登山やキャンプでは、何に気をつければいいですか?

濡れないことが最優先です。

汗、雨、雪。どれも体を濡らし、熱を奪います。

そして着替えを必ず持つこと。濡れた服を着続けることが、いちばん危険です。

ただし、山や自然のなかでの具体的な装備や行動については、それぞれの分野の専門的な指導を受けてください。

Q. 低体温症は、真冬にしか起きませんか?

いいえ。条件がそろえば、季節を問わず起こります。

とくに危険なのが、春や秋の水難事故です。水の中では、空気中より速く体温が奪われます。

また雨に濡れて風にあたるという状況も、気温がそれほど低くなくても体温を下げます。

水害で水につかった場合も同じです。季節に関係なく、濡れは危険です。

Q. 温かい飲みものは、何がよいですか?

意識がはっきりしていて、自分で飲み込める場合に限ります。

そのうえで、アルコールは避けてください。一時的に温かく感じますが、体温を守るうえでは逆に働きます。

具体的に何を飲むべきかについては、状況や本人の状態によります。迷う場合は、救急に連絡して指示を仰いでください。

Q. カイロを使ってもいいですか?

使い方の判断は、私にはできません。

ただし、一般的な注意として低温やけどの危険があります。同じ場所に長時間あて続けると、皮膚が傷むことがあります。

意識のはっきりしない方や、感覚が鈍くなっている方の場合は、熱さを訴えられないため、とくに注意が必要です。

使用にあたっては、製品の注意書きに従ってください。低体温症が疑われる方への使用については、救急や医師の指示に従ってください。

まとめ|覚えておくのは、ひとつです

要点 内容
定義 深部体温が35度以下。事故によるものは偶発性低体温症
段階 軽度35〜32度/中等度32〜28度/高度28度以下
最重要のサイン 震えが止まったら、悪化しています
統計 2017年 熱中症635人に対し、低温による死亡1,371人
発生場所 屋内が屋外の3倍以上
応急の原則 濡れた衣服を脱がせ、これ以上冷やさない
判断 迷ったら救急へ。個別の処置は医師の指示に従う

この記事から、ひとつだけ覚えて帰っていただけるなら、これです。

「震えが止まったら、良くなったのではない」

寒い場所にいる人が、震えなくなって静かになった。そのとき、迷わず救急に連絡してください。

そして、ご家族に高齢の方がいるなら、今年の冬は「寒くない?」だけでなく、部屋の温度そのものを見てあげてください。

本人が寒いと感じていないことが、あるからです。

熱中症には、警戒アラートがあります。暑さ指数という物差しもあります。毎年夏になれば、繰り返し注意が呼びかけられます。

寒さの側には、それに相当するものがありません。だからこそ、知っている人が伝えるしかないのだと思っています。

この冬、ご家族と一度だけ話してみてください。それだけで十分です。

【この記事について】
低体温症の定義・重症度の分類・原因および起こりやすい状況は、一般社団法人日本救急医学会の用語解説および公開されている医学的な解説をもとに整理しました。死亡者数は厚生労働省の人口動態統計をもとにした報告によるもので、年次によって数値は変動します。この記事は、低体温症という状態を知っていただくための一般的な解説です。診断や治療、応急処置の具体的な方法についての判断は行っていません。症状が疑われる場合、体調に不安がある場合、応急の対応に迷う場合は、ためらわずに救急(119番)に連絡し、医師の指示に従ってください。持病のある方や薬を服用中の方の寒さへの備えについても、かかりつけの医師にご相談ください。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

防災ベーシック編集部です。公的機関の情報をもとに、防災・備蓄・災害対策の基本をわかりやすくお伝えします。

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