熊本地震と災害関連死|直接死50人に対し関連死228人。震度7が二度と、車中泊が招いたものを防災士が解説

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【この記事の要約】
結論から言います。熊本地震で亡くなった方の約8割は、地震そのものでは亡くなっていません。直接死が50人。それに対して災害関連死は228人(2026年3月時点)です。一度は助かった命が、そのあとの避難生活で失われました。この地震は震度7を二度観測した、観測史上初の地震でもあります。4月14日の地震で家に戻った人が、4月16日の本震に遭いました。余震が怖くて建物に入れず、車中泊が広く行われ、エコノミークラス症候群が問題になりました。そして、その入口にあったのがトイレです。トイレを我慢するために水を飲まない。それが血栓につながります。この記事では、防げる死をどう防ぐかをまとめます。

目次

結論|備えるべきは、助かったあとです

地震の備えというと、家具の固定や備蓄を思い浮かべます。熊本地震が示したのは、その先の話です。

数字が、すべてを語っています

区分 人数
直接死(地震そのものによる死) 50人
災害関連死 228人

※2026年3月時点、熊本県・大分県の合計。認定は続いており、数値は変わります。

4倍以上です。建物の下敷きになって亡くなった方より、避難生活のなかで亡くなった方のほうが、はるかに多い。

そして、その多くは防げたはずのものです

災害関連死は、一度は助かった命です。

水を飲めていたら。眠れていたら。足を伸ばせていたら。トイレを我慢しなくてよかったら。失われずに済んだかもしれない命が、200人を超えて存在します。

これは、個人の備えで変えられる部分です。だから、この記事を書いています。

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何が起きたのか

事実を確認します。

震度7が、二度

日時 規模 震源
1回目 2016年4月14日 21時26分 M6.5・最大震度7 熊本県益城町
2回目(本震) 2016年4月16日 1時25分 M7.3・最大震度7 益城町、西原村

同じ一連の地震活動で、複数の観測点で震度7を観測したのは、震度計による観測が始まって以来はじめてのことでした。

そして、2回目のほうが規模が大きい。これが、この地震のいちばん残酷な部分です。

「もう終わった」と思わせました

4月14日の地震のあと、多くの人が避難しました。そして、翌日には自宅へ戻った方がいます。

片付けをするため。着替えを取るため。あるいは、避難所が狭く、家のほうが休めるため。どれも自然な判断です。

そこへ、4月16日の本震が来ました。1回目で傷んでいた建物が、2回目で倒壊しています。

だから、こう覚えてください

大きな地震のあとに、さらに大きな地震が来ることがあります。

気象庁は、あとになるまで「どれが本震か」を判断できません。最初の揺れが本震だとは限らないのです。

ですから、「大きいのが来たから、もう大丈夫」とは考えないでください。数日は、傷んだ建物に戻らない前提で動いてください。

震災ごとの死因の違いは過去の震災は何が人の命を奪ったかにまとめました。

災害関連死とは何か

言葉は聞いても、中身が分かりにくい制度です。

間接的に亡くなった場合に認定されます

建物の倒壊や津波で直接亡くなったのではなく、災害のあとの負担が原因で亡くなった場合を指します。

具体的には、こうしたものです。

一、避難生活での体調の悪化。寒さ、暑さ、不衛生、睡眠不足。

二、持病の悪化。薬が手に入らない、通院できない、ストレス。

三、避難の途中や、移動による負担。

四、医療が受けられなかったこと。病院が被災し、機能しなくなる場合があります。

五、精神的な負担。

認定されると、災害弔慰金の対象になります

ここは実務的な話です。災害関連死として認定されれば、遺族に災害弔慰金が支給されます。

ただし、自動的には認定されません。遺族が申請し、市町村の審査会で判断されます。

そして、認定されるかどうかは、審査によって分かれます。同じような事情でも、判断が異なることがあります。

手続きは災害弔慰金・障害見舞金・援護資金にまとめました。

認定には時間がかかります

数か月から、場合によっては年単位です。だから、災害から何年も経ってから数字が増えていきます。

熊本地震の関連死も、発生直後は数十人でした。それが、10年をかけて228人になっています。

なぜ、熊本でこれほど多かったのか

いくつもの条件が重なりました。

余震が、非常に多かった

震度7が二度あり、そのあとも強い揺れが長く続きました。建物の中で眠るのが怖い、という状況が長期化したのです。

これは、心理的に無理のない反応です。目の前で家が倒れるのを見た人が、屋内で眠れるはずがありません。

車中泊が、広く行われました

避難所も混雑し、そもそも建物に入りたくない。その結果、多くの人が車の中で寝泊まりしました。

駐車場が、そのまま避難所のようになった場所もあります。

そして、エコノミークラス症候群が起きました

車の座席は、足を伸ばせません。同じ姿勢で長時間過ごすと、足の静脈に血の塊ができます。

その塊が、立ち上がったときに流れ出し、肺の血管に詰まります。これが肺塞栓症で、命に関わります。

熊本地震では、この症状で搬送される方が相次ぎました。詳しい症状と予防は災害時のエコノミークラス症候群にまとめています。

すべては、トイレから始まります

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

連鎖の起点は、トイレです

関連死につながる流れを、たどってみます。

一、断水し、トイレが使えなくなる。あるいは、避難所のトイレが汚れ、並ぶ。

二、トイレに行きたくないので、水を飲まない。

三、体の水分が減り、血が濃くなる。

四、車中泊で足を動かさない。

五、血の塊ができる。

六、肺に詰まる。

この連鎖は、二段目で断てます。トイレの不安がなければ、水を控える理由がなくなります。

だから、携帯トイレは命の道具です

防災グッズの中で、携帯トイレは地味な存在です。ライトやラジオのほうが、災害らしく見えます。

けれど、関連死の入口をふさぐという意味で、これほど効く備えはありません。

目安は、1人1日5回。家族の人数分×日数です。4人家族で3日分なら60回分になります。

選び方は防災用携帯トイレの選び方にまとめました。

女性と高齢の方は、特に影響を受けます

避難所のトイレが屋外にある、暗い、鍵がかからない。こうした環境では、行くこと自体が負担になります。

そして、介助が必要な方は、遠慮して回数を減らそうとします。

「トイレを我慢する」は、単なる不便ではありません。脱水、膀胱炎、腎機能の悪化、そして血栓につながります。

車中泊を、安全にする方法

やめてください、とは申しません。現実的な選択肢だからです。

守るべきことは、五つです

やること 理由
足を伸ばせるようにする 座席を倒し、荷物で高さを作る。血流を保ちます
2〜3時間おきに歩く これが最も効きます
水をこまめに飲む 控えないでください
ふくらはぎを動かす 座ったままでも、つま先の上下運動を
締めつける服を避ける 血流を妨げます

弾性ストッキングがあれば、なお有効です。薬局で買えます。

一酸化炭素中毒にも注意してください

寒い時期にエンジンをかけたまま眠るのは、危険です。特に、雪が積もる地域では、マフラーが塞がれて排気ガスが車内に入ります。

色もにおいもないため、眠っているあいだに進行し、気づけません。

仕組みは災害時の一酸化炭素中毒とは?にまとめました。

平らな場所を選んでください

傾いた場所では、体に負担がかかり、眠りも浅くなります。そして、車が動く危険もあります。

また、建物や崖のそばは避けてください。余震で崩れる可能性があります。

関連死は、いつ起きているのか

時期によって、原因が変わります。

時間の経過で、危険の中身が移ります

時期 主な原因 備えでできること
発生直後〜数日 持病の悪化、医療の中断、寒さ 薬とお薬手帳、防寒具
1週間〜1か月 血栓、感染症、睡眠不足、脱水 携帯トイレ、水、マット、耳栓
1か月〜数か月 疲労の蓄積、栄養の偏り、環境の変化 食事の質、生活の場を整える
数か月以降 孤立、精神的な負担、生活再建の重圧 人とのつながり、相談先を知る

最初の数日は、薬です。そのあとは、水と睡眠。そして長期になれば、人とのつながりが効いてきます。

備えとして持ち出せるのは、前半の部分です。後半は、地域や制度に頼る部分になります。

最初の数日で、いちばん危ないのは持病です

血圧、心臓、糖尿病、透析、喘息。これらは、数日途切れるだけで命に関わります。

そして災害時は、病院そのものが被災していることがあります。停電し、断水し、職員も被災者です。

だから、薬は多めに持ち出せる形にしておいてください。そして、お薬手帳の写真を撮って、スマートフォンに入れておいてください。

これは、いま5分でできます。そして、確実に効きます。

長期になると、原因が変わります

数か月が過ぎると、体の問題から、生活と心の問題へ移っていきます。

仕事を失う、住まいが決まらない、人間関係が切れる。これらが積み重なると、体調にも影響します。

ここで効くのは、道具ではありません。相談できる相手と、制度を知っていることです。

被災後の手続きは被災した後にやることに、住宅ローンの負担を整理する仕組みは災害弔慰金・障害見舞金・援護資金にまとめました。

血栓を防ぐ、具体的な動き方

知識として知っていても、実際にどう動くかが分からないと使えません。

座ったままできること

一、つま先を上下に動かす。かかとを床につけたまま、つま先を上げ下げします。20回ほど。

二、かかとを上下に動かす。今度はつま先をつけたまま、かかとを上げ下げします。

三、足の指を、握って開く。

四、足首を回す。

これを1時間に一度やるだけで、血の流れがずいぶん変わります。

立ってできること

2〜3時間おきに、車から降りて歩いてください。数分で構いません。

そして、ふくらはぎを軽くもんでください。ここは「第二の心臓」と呼ばれ、血液を押し戻す役割を持っています。

水は、どれくらい飲めばよいか

目安として、1日1.5リットル以上。これは、飲み水としての量です。

ただし、心臓や腎臓の病気で水分の制限を受けている方は、主治医の指示を優先してください。この記事の目安より、そちらが先です。

そして、コーヒーやお茶だけで済ませないでください。利尿の作用があるため、水そのものを飲むほうが確実です。

危険な兆候

片方の足だけが腫れる。ふくらはぎが痛む。皮膚の色が変わる。これらは、血栓ができている可能性を示します。

そして、急に息苦しくなる、胸が痛む、失神する。これは、肺に詰まった可能性があります。

この段階では、すぐに救急車を呼んでください。様子を見る場面ではありません。

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子どもと、妊娠中の方への配慮

避難生活の負担は、人によって形が違います。

子どもは、体調を言葉にできません

食欲がない、機嫌が悪い、眠らない。これらが、体調不良の合図であることがあります。

そして、環境の変化に強く反応します。夜泣きが増える、赤ちゃん返りをする、といったことは珍しくありません。

これは異常ではなく、自然な反応です。叱らず、そばにいてあげてください。

そして、子どもが遊べる場所と時間を作ってください。それ自体が、回復につながります。

妊娠中の方は、血栓の危険が高まります

妊娠中は、もともと血が固まりやすい状態になっています。そこに車中泊や長時間の同じ姿勢が加わると、危険が上がります。

ですから、優先して横になれる場所を確保してください。遠慮する場面ではありません。

そして、水分を十分に取ってください。つわりで飲みにくい場合は、少量ずつ回数を分けてください。

言い出せない人ほど、危ない

これは、災害のたびに指摘されることです。

「もっと大変な人がいるから」と考えて、必要な支援を求めない方がいます。特に、まじめで責任感の強い方ほどそうなります。

だから、まわりから声をかけてください。「大丈夫ですか」ではなく、「水は飲めていますか」「眠れていますか」と、具体的に聞くほうが答えやすくなります。

避難所の環境を、どう考えるか

関連死を減らすには、避難所そのものの質が問われます。

三つが足りていませんでした

災害時の避難所で重要とされるのが、トイレ、食事、寝床の三つです。

トイレ。数が足りず、清潔に保てなければ、人は水を控えます。

食事。おにぎりとパンが続くと、栄養が偏ります。高齢の方や持病のある方には、深刻な問題です。

寝床。体育館の床で寝ると、体が冷え、ほこりを吸い、眠れません。

この三つを整えることが、関連死を減らす最も直接的な方法だと考えられています。

段ボールベッドが広がった理由

床から数十センチ上げるだけで、冷えとほこりを避けられ、立ち上がりも楽になります。

熊本地震以降、こうした資材の備蓄と、協定による調達が各地で進みました。過去の被害が、仕組みを変えた例です。

個人でできる備えもあります

一、マットか、厚手の敷物。床からの冷えを断ちます。

二、耳栓とアイマスク。避難所は明るく、音が絶えません。眠れることが体力を守ります。

三、常用薬とお薬手帳の写し。これがないと、治療が途切れます。

四、眼鏡や補聴器の予備。見えない、聞こえない状態は、判断力を奪います。

持ち出し袋の中身は非常持ち出し袋の中身にまとめました。

建物に、何が起きていたのか

関連死の話が中心の地震ですが、建物の被害からも学べることがあります。

二度の揺れが、建物を壊しました

1回目の地震で、多くの建物にひびが入り、接合部が緩みました。見た目には無事でも、内部は傷んでいます。

そこへ、より大きな2回目が来ました。1回目に耐えた建物が、2回目で倒れています。

つまり、耐震の基準は「一度の大きな揺れに耐える」ことを前提としているという事実が、はっきり示されました。

2000年基準の建物は、被害が小さかった

益城町の調査では、建築年による差が確認されています。

建築時期 基準 傾向
1981年5月以前 旧耐震基準 倒壊・大破が多く見られました
1981年6月〜2000年5月 新耐震基準 被害はあるが、旧基準より軽い傾向
2000年6月以降 現行の基準 倒壊は少なく、明確な差が出ました

木造住宅では、2000年の改正が大きな意味を持ちます。接合部の金物や、基礎の仕様が明確になったためです。

ですから、「新耐震だから安心」とは言い切れません。1981年と2000年、二つの境目があります。

自宅がどれに当たるかの調べ方と、補助金の受け方は耐震診断と補助金にまとめました。

だから、耐震補強は関連死の対策でもあります

意外に思われるかもしれません。けれど、つながっています。

家が無事なら、避難所へ行かずに済みます。車中泊もしなくて済みます。

在宅で過ごせれば、眠れて、トイレが使えて、薬も手元にあります。関連死の原因が、まとめて消えるのです。

建物を守ることは、そのまま健康を守ることでもあります。これが、熊本地震から取り出せる、もう一つの答えです。

地震のあとに、雨が来ました

もう一つ、重要な経緯があります。

揺れで緩んだ斜面が、雨で崩れました

この地震のあと、6月に大雨が降り、土砂災害が発生しています。

地震で山肌に亀裂が入り、地盤が緩んでいたところに、まとまった雨が降りました。その結果、地震では崩れなかった場所が崩れています。

地震のあとの雨は、警戒の基準を下げてください

これは、応用できる教訓です。

大きな地震のあと、その地域では通常より少ない雨で土砂災害が起きます。

ですから、「これくらいの雨なら大丈夫」という平時の感覚を捨ててください。気象庁も、地震後の地域については警戒基準を引き下げて運用することがあります。

逆のパターンも同じです。雨で緩んだ斜面に地震が来れば、大規模に崩れます。北海道胆振東部地震が、それでした。

その経緯は北海道胆振東部地震とは?に、土砂の動き方は土石流とは?にまとめています。

災害は、重なります

地震のあとに雨が来る。台風のあとに地震が来る。これらは、珍しいことではありません。

備えを考えるときも、一つの災害だけを想定しないでください。

たとえば、地震で窓が割れた家に台風が来れば、雨が吹き込みます。停電したまま真夏を迎えれば、熱中症の危険が加わります。

だから、備蓄は「どの災害でも使えるもの」から揃えるのが効率的です。水、携帯トイレ、明かり、電池、常用薬。この五つは、すべての災害で要ります。

在宅避難という選択

建物が無事なら、家にとどまる方法があります。

家にいられるなら、そのほうが休めます

避難所は、多くの人が集まる場所です。感染症も広がりやすく、眠りも浅くなります。

建物の安全が確認できているなら、自宅にとどまるほうが体への負担は小さくなります。

ただし、それには備蓄が要ります。水、食料、携帯トイレ、明かり。これらがあって、はじめて選べる方法です。

ただし、安全の確認が先です

応急危険度判定を受けてください。建物に赤・黄・緑の紙が貼られます。

赤は危険、黄は要注意です。自己判断で「まだ住める」と決めないでください。

熊本地震では、1回目で傷んだ建物が2回目で倒れました。見た目が無事でも、内部が傷んでいることがあります。

物資は、避難所でもらえます

誤解されがちですが、在宅避難をしていても、避難所で物資を受け取れるのが一般的です。

そのためにも、「自分がここにいる」ことを、避難所や自治体に伝えておいてください。把握されていないと、支援が届きません。

判断の基準は避難所へ行くべきか自宅に残るべきかにまとめました。

今日、10分でできること

この記事の内容を、行動に変えます。どれも、道具を買う必要がありません。

一、お薬手帳を、写真に撮ってください。スマートフォンに入れておけば、手帳を持ち出せなくても内容が分かります。1分で終わります。

二、常用薬の残りを数えてください。次の受診まで何日分あるか。少なければ、次回に相談してください。

三、携帯トイレの数を数えてください。家族の人数×日数×5回が目安です。足りなければ、今日注文してください。

四、車の座席を、一度倒してみてください。足を伸ばして眠れるか。荷物で高さを作れるか。実際にやってみると分かります。

五、家の建築年を確かめてください。1981年6月より前なら、耐震診断を検討する理由があります。

この五つで、関連死の主な原因のほとんどに手が届きます。

そして、家族と一度だけ話してください

話す内容は、二つで足ります。

一、大きな地震のあと、しばらく家に戻らないと決めておく。

二、避難生活になったら、水を我慢しないと約束する。

拍子抜けするほど単純です。けれど、この二つを知らなかったために亡くなった方が、200人を超えています。

よくある質問

Q. 災害関連死は、どうすれば認定されますか

遺族が市町村に申請します。そのうえで、審査会が個別に判断します。

用意するのは、死亡診断書、医療の記録、避難生活の状況が分かる資料です。いつ、どこに避難し、どのような環境だったかが判断材料になります。

認定されなかった場合、再度の申請や、不服の申し立てができることがあります。まず市町村の窓口に相談してください。

Q. 前震と本震は、見分けられますか

その場では、見分けられません。あとになって、規模の大きいほうを本震と呼ぶだけです。

気象庁も、「今後さらに大きな地震が起きる可能性がある」という言い方をします。断定できないためです。

ですから、行動としてはこうなります。大きな地震のあと、少なくとも1週間は、傷んだ建物に戻らない。

Q. 車中泊は、何日までなら大丈夫ですか

日数の基準はありません。危険なのは、姿勢と水分です。

足を伸ばせて、こまめに歩き、水を飲めているなら、数日でも耐えられます。逆に、狭い座席で1日過ごすだけでも危険です。

足のむくみ、痛み、片方だけ腫れる。これらは危険の合図です。そして息苦しさや胸の痛みが出たら、すぐに受診してください。

Q. 高齢の家族がいます。何を優先すべきですか

薬と、眠れる環境です。

持病の薬が途切れると、数日で状態が悪くなります。お薬手帳の写しを、いま持ち出し袋に入れてください。

そして、床に寝かせないでください。マットや簡易ベッドがあるかで、体力の減り方が変わります。

もうひとつ。本人は「大丈夫」と言います。遠慮して不調を訴えないことが多いので、こちらから確認してください。

Q. 熊本地震のあと、何が変わりましたか

避難所の環境が、防災の中心的な課題として扱われるようになりました。

段ボールベッドや簡易の間仕切り、トイレの確保について、あらかじめ協定を結んでおく自治体が増えています。

そして、車中泊を「してはいけないもの」ではなく「安全にする対象」として扱う考え方も広がりました。

Q. 避難所が満員でした。どうすればよいですか

まず、他の避難所を確認してください。近くの一か所だけを見て諦めないでください。

そのうえで、選択肢は三つです。

一、自宅が安全なら、在宅避難。ただし応急危険度判定を受けてからです。

二、親戚や知人の家へ。被災していない地域に頼れる先があるなら、有力な選択肢です。

三、車中泊。この記事で書いた注意を守れば、現実的な方法になります。

いずれの場合も、自治体に「どこにいるか」を伝えてください。把握されていないと、物資も情報も届きません。

Q. ペットがいて、避難所に入れません

自治体によって対応が違います。同行避難(一緒に避難所まで行く)と、同伴避難(同じ空間で過ごす)は別のものです。

多くの避難所は、建物の中では人とペットを分ける運用をしています。だから、ケージに慣らしておくことが要ります。

そして、フードと水は自分で用意してください。支援物資に含まれないことがほとんどです。

備え方はペットの災害避難にまとめました。

Q. 震度7が二度来るのは、また起きますか

起こりえます。熊本地震は、断層帯が連動して動いたと考えられています。

日本には多数の活断層があり、近くの断層が連続して動く可能性は否定できません。

だから、備えとしてはこうなります。一度の揺れに耐えればよい、とは考えないでください。

自宅の近くの断層は地震本部とは?で紹介した予測地図から調べられます。

Q. 避難所で、感染症が心配です

実際に、避難所での集団感染は各地で起きています。人が密集し、換気が難しく、手も洗いにくい環境だからです。

できることは、三つです。

一、マスクを持ち出し袋に入れておく。ほこりを吸わないためにも役立ちます。

二、アルコールの消毒液かウェットティッシュ。水が使えなくても手を清潔にできます。

三、体調が悪くなったら、すぐ申し出る。我慢して広げないことが、自分と周りを守ります。

そして、持病がある方や高齢の方は、可能なら在宅避難や親戚宅を検討してください。人の多い場所を避けられるなら、それに越したことはありません。

Q. 「関連死」という言葉に、抵抗があります

そう感じる方がいるのは、当然だと思います。地震で亡くなったことに変わりはないのに、区別されるように見えるからです。

ただ、この区分には意味があります。直接死は防ぎにくく、関連死は防げる余地が大きい。だから、分けて数えることで、対策の対象がはっきりします。

そして制度の上でも、認定されれば災害弔慰金の対象になります。区分は、遺族の不利益のためにあるのではありません。

過去の震災から学ぶ

同じ大地震でも、命の奪われ方は違います。自分の住む場所に近いものから読んでください。

まとめ

要点を並べます。

一、震度7が二度。観測史上はじめてのことでした。

二、直接死50人に対し、災害関連死228人。約8割が関連死です。

三、余震が続き、車中泊が広く行われました。

四、エコノミークラス症候群が起きました。足を伸ばし、歩き、水を飲んでください。

五、連鎖の起点は、トイレです。携帯トイレは、命を守る道具です。

六、避難所で要るのは、トイレ・食事・寝床の三つ。

七、大きな地震のあと、傷んだ建物に戻らないでください。

この地震が残したのは、「助かったあとにも、人は死ぬ」という事実です。

そして、そこには防げる部分が確かにあります。水を飲むこと。足を動かすこと。眠ること。薬を持つこと。

どれも、道具がなくてもできることです。知っているかどうかだけの違いです。

備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップにまとめています。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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