【この記事の要約】
雪でスタックしたとき、いちばんやってはいけないのがアクセルを踏み続けることです。タイヤが空転すると、その熱で雪が溶け、すぐに凍って氷になります。踏むほど脱出できなくなります。正しい順番は四つ。一、エンジンを止めてマフラーを掘る。二、タイヤの前後を掘る。三、ハンドルをまっすぐに戻す。四、2速でそっと発進する。マフラーの除雪を最初に置いたのは、脱出の前に一酸化炭素中毒で亡くなる事故が起きているからです。この記事では、脱出の手順、タイヤの下に敷くもの、AT車で気をつけること、そしてあきらめて救援を呼ぶ判断まで書きます。北海道に住む防災士として、実際に効く順番でまとめました。
雪道でタイヤが空転して、車が前にも後ろにも動かない。
これがスタックです。
私は札幌に住んでいます。冬になると、毎年どこかで見かけます。
そして、ほとんどの人が同じ間違いをします。アクセルを踏み込むのです。
気持ちは分かります。しかし、それが最悪の一手です。
脱出できなくなるだけではありません。踏み込むほど、状況は確実に悪化します。理由は、このあと説明します。
結論|脱出の順番は、この4つです
先に答えを書きます。
| 順 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | エンジンを止めて、マフラーを掘る | 一酸化炭素中毒を防ぐ。命に直結 |
| 2 | タイヤの前後の雪を掘る | 抵抗をなくす |
| 3 | ハンドルをまっすぐに戻す | 斜めだと前に進まない |
| 4 | 2速で、そっと発進する | 空転させないため |
1番を最初に置いた理由から説明します。
脱出より先に、命の話です
スタックした車は、雪に埋まりかけています。
そして暖房を使うため、エンジンをかけたままにします。この状態が危険です。
マフラーの出口が雪で塞がれると、排気ガスが逃げ場を失い、車内に入ってきます。
一酸化炭素は色も匂いもありません。気づかないうちに意識を失います。
脱出作業に集中している間に、車内で待っている家族が倒れる。この形の事故が、実際に起きています。
詳しくは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒に|マフラー除雪で濃度はほぼ0になるにまとめました。
なぜ空転させてはいけないのか
ここを理解すると、行動が変わります。
タイヤの熱で、雪が氷になります
空転するタイヤは、摩擦で熱を持ちます。接している雪が溶けます。
そしてアクセルを緩めた瞬間、溶けた水が凍ります。
雪の上にいたはずが、氷の上に変わっています。摩擦はさらに減り、もっと脱出しにくくなります。
穴が深くなります
空転するタイヤは、下の雪を後ろへ掻き出します。その分、車体が沈みます。
踏み続けるほど、タイヤは自分で穴を掘って、そこに落ちていきます。
最後には車の底が雪に乗り、タイヤが浮いて完全に動けなくなります。
車が壊れることもあります
これも知っておいてください。
AT車で長時間空転させると、変速機が高温になります。オイルが劣化し、故障につながることがあります。
そしてタイヤそのものが傷みます。ゴムが熱で溶け、表面が荒れます。
脱出できないうえに、修理代がかかる。これが空転の結末です。
掘る場所は、決まっています
やみくもに掘っても意味がありません。
優先順位
| 順 | 掘る場所 | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | マフラーの出口 | 一酸化炭素中毒を防ぐ |
| 2 | 駆動輪の前後 | 進行方向の抵抗をなくす |
| 3 | 車体の下 | 底が雪に乗っている場合 |
| 4 | 4輪すべての周り | 余裕があれば |
駆動輪がどれか、知っていますか
掘る場所を間違えないために、必要な知識です。
前輪駆動(FF)なら前のタイヤ。後輪駆動(FR)なら後ろ。四輪駆動(AWD)なら4輪すべてです。
分からなければ、4輪とも掘ってください。時間はかかりますが、確実です。
進みたい方向を、長めに掘る
前に出たいなら、タイヤの前を1メートルほど。
後ろに下がるなら、後ろを同じだけ。
タイヤのすぐ前だけ掘っても、すぐまた雪にぶつかります。助走の距離が要ります。
スコップがないときは
手で掘るしかありません。ただし素手は避けてください。凍傷の危険があります。
車のフロアマット、雪かき用の板、なければペットボトルを切ったものでも掘れます。
だから、スコップを積んでおいてください。これが最も確実な備えです。
「もう少しで抜けそう」が、いちばん危ない
あと少しで動きそうに見える瞬間があります。そこで踏み込みます。
そして、そこから抜けられなくなります。
タイヤが空回りを始めたら、その時点でアクセルを戻してください。3秒も回せば、路面は氷に変わります。
この判断ができるかどうかで、脱出にかかる時間が大きく変わります。
タイヤの下に敷くもの
掘っても動かないときは、摩擦を足します。
効くもの、効かないもの
| 敷くもの | 効き | 備考 |
|---|---|---|
| 市販の脱出ボード | 最も確実 | 専用品。積んでおく価値がある |
| 砂・砂利 | 高い | 凍結防止用の砂箱が路肩にあることも |
| 猫砂 | 高い | 車に積みやすい |
| フロアマット | 中 | 飛ぶので後方に人を立たせない |
| 段ボール | 中 | 濡れると弱い |
| 木の板・枝 | 中 | その場で調達できる |
| 毛布・タオル | 低い | 巻き込む危険あり |
敷き方にコツがあります
タイヤの真下ではなく、進みたい方向の側に差し込んでください。
タイヤが回転して乗り上げる位置に置きます。真下に押し込んでも、タイヤはその上で空転するだけです。
そしてできるだけ奥まで差し込む。浅いと、動き出した瞬間に後ろへ飛びます。
フロアマットを使うときの注意
手近で確実な方法ですが、危険もあります。
マットはタイヤに弾かれて、後方へ高速で飛びます。
後ろに人が立っていると、直撃します。作業する人は、必ずタイヤの後方から離れてください。
そしてマットは傷みます。使い捨てる覚悟で使ってください。
凍結防止用の砂箱
坂道やカーブに、黄色や緑の箱が置かれていることがあります。
中に砂や凍結防止剤が入っており、誰でも使えます。自治体や道路管理者が設置しているものです。
スタックしたとき、近くにこの箱がないか探してみてください。
発進のしかた
掘って、敷いた。ここからが本番です。
「そっと」が原則です
アクセルは、じわりと踏んでください。
回転が上がった瞬間に空転します。タイヤがゆっくり回るくらいの力が、いちばん摩擦を生みます。
2速で発進する
これは効きます。
1速はトルクが大きすぎて、タイヤが空転しやすい。2速なら力が抑えられ、じわりと動き出します。
AT車でも、「2」や「L」といったレンジ、あるいはスノーモードがあれば使ってください。
スノーモードは、まさにこのための機能です。発進時のトルクを抑えます。
ハンドルはまっすぐに
見落とされがちですが、重要です。
タイヤが斜めを向いていると、前に進む力が横に逃げます。
そして斜めのタイヤは、雪を横から押すことになります。抵抗が大きくなります。
脱出のときは、まずハンドルをまっすぐに戻す。
前後に揺する方法
ロッキングと呼ばれる方法です。
前に少し進んで、後ろに少し下がる。これを繰り返して、雪を踏み固めながら助走距離を作ります。
ただしAT車では慎重にしてください。
完全に止まる前にシフトを切り替えると、変速機に大きな負担がかかります。必ず停止してから、DとRを切り替えてください。
そして何度も繰り返さないこと。数回試して動かないなら、別の手段に切り替えます。
それでも動かないとき
押してもらう
人手があるなら、これが早い。
押す人は、車の真後ろに立たないでください。急に動き出したとき、逃げられません。
そしてタイヤの後方も避けてください。雪や敷いたものが飛んできます。
斜め後ろから押すのが安全です。
牽引してもらう
牽引ロープがあれば、他の車に引いてもらえます。
ただし、つなぐ場所を間違えないでください。
車には牽引フックが決められた位置にあります。多くの車では、前後のバンパーの一部が外れるようになっており、そこにフックをねじ込みます。
フックは車載工具と一緒に積まれていることが多いので、確認しておいてください。
適当な場所につなぐと、車体が破損します。
救援を呼ぶ
無理をしないでください。
JAFや任意保険のロードサービスに連絡します。保険にロードサービスが付いていることは多いので、契約内容を確認してください。
ただし大雪のときは、救援も渋滞に巻き込まれます。数時間待つ覚悟が要ります。
だから待つ間の装備が重要になります。
待っている間に、やること
ここが、防災としていちばん大事な部分です。
マフラーを、繰り返し確認する
一度掘っても、降り続く雪でまた埋まります。
30分に一度は確認してください。これは面倒でも、命に関わります。
不安があるなら、エンジンを切る。寒くても、そのほうが安全です。
窓を少し開ける
エンジンをかけ続けるなら、風上側の窓を数センチ開けてください。
空気が入れ替わり、一酸化炭素が溜まりにくくなります。
暖房は、間欠で使う
連続してかけ続ける必要はありません。
寒くなったら10分かけて、切る。これを繰り返せば、燃料も持ちます。
そして毛布や防寒具があれば、エンジンを切っていられる時間が延びます。
居場所を知らせる
スマートフォンの電池を温存してください。
連絡がついたら、できるだけ正確な位置を伝えます。キロポスト(高速道路の距離表示)、交差点名、目印になる建物。
そしてハザードランプを点けておく。後続車の追突を防ぎます。
チェーンを、その場で巻くという手
スタックしてから装着するのは大変ですが、有効な場面があります。
駆動輪が回っているのに進まない場合、チェーンで摩擦が生まれれば動きます。
ただしタイヤが雪に埋まっていると、巻けません。先に掘って、タイヤの周りに作業する空間を作る必要があります。
そして路上での作業は危険です。後続車から見えるよう、ハザードと三角表示板を出してください。
スタックには、いくつかの型があります
同じ「動けない」でも、原因が違えば対処も変わります。
| 型 | 状態 | 対処 |
|---|---|---|
| 空転型 | タイヤは回るが進まない | 摩擦を足す。掘る、敷く |
| 腹つかえ型 | 車の底が雪に乗り、タイヤが浮く | 車体の下を掘る。ジャッキも検討 |
| 落輪型 | 側溝や路肩に片輪が落ちた | 自力は難しい。救援を呼ぶ |
| 渋滞型 | 自分は動けるが前が詰まっている | 待つしかない。マフラーを確認 |
腹つかえ型は、掘る場所が違います
タイヤの周りをいくら掘っても動きません。車体の下の雪が、車を持ち上げているからです。
この状態では、タイヤが空回りするか、そもそも接地していません。
やることは車の下に潜り込まず、届く範囲で底の雪を掻き出すことです。前後から手を伸ばして掘ります。
車の下に体を入れないでください。雪が崩れたり、車が沈んだりする危険があります。
落輪型は、自力を諦めてください
片輪が側溝や路肩の穴に落ちた状態です。
アクセルを踏んでも、落ちた輪が空転するだけです。そして車体が傾いているため、無理に動かすと横転の危険があります。
すぐに救援を呼んでください。これは装備でどうにかなる状況ではありません。
渋滞型で、いちばん人が亡くなっています
ここは強調しておきます。
自分の車は動けるのに、前が詰まって進めない。これが大規模な立ち往生です。
数十台から数百台が、数時間から一晩、車の中で過ごすことになります。
そして雪は降り続けます。停まっている車のマフラーは、確実に埋まっていきます。
脱出できないから安全、ではありません。動けないときこそ、マフラーの確認が要ります。
大規模な立ち往生に巻き込まれたら
近年、高速道路や国道で繰り返し起きています。
最初にやること
一、エンジンを切るか、マフラーを掘る。これが最優先です。
二、燃料の残量を確認する。これで、暖房を使える時間が決まります。
三、家族や職場に連絡する。電池があるうちに済ませてください。
燃料の考え方
アイドリングでの燃料消費は、車種によって差があります。正確な数字は、自分の車で把握しておくのがいちばんです。
ただし原則は言えます。残量が半分を切ったら、暖房は間欠運転に切り替えてください。
そして冬に入る前から、燃料は半分を切ったら給油する習慣にしておく。これが最も効きます。
満タンなら選択肢が増えます。残り少なければ、最初から我慢するしかありません。
トイレの問題
現実的な話として、書いておきます。
数時間から一晩、車から出られません。そして周りは雪で、屋外は極寒です。
携帯トイレを積んでおいてください。とくに女性、お子さん、高齢の方がいる場合は必須です。
そして目隠しになるものがあると、車内で使えます。大きめのポンチョや、上着でも代用できます。
飲み物は、凍ります
見落とされがちな点です。
車内に置いたペットボトルは、エンジンを切れば凍ります。
凍った水は飲めません。だから、上着のポケットに入れて体温で守るという工夫が要ります。
そして凍った水は膨張して容器を割ります。車内が濡れる原因にもなります。
助ける側になったとき
雪国では、誰かがスタックしている場面によく出会います。
まず、自分が安全な場所に停める
助けようとして、自分もスタックする。これが最も多い失敗です。
そして後続車が来ないか確認してください。路上での作業は危険です。
押すときの立ち位置
真後ろに立たないでください。車が急に動いたとき、逃げられません。
そしてタイヤの後方も避けてください。雪、氷、敷いたマットが飛んできます。
斜め後ろから、車体の硬い部分を押します。バンパーの薄い部分やライトは、割れます。
牽引は、慎重に
安易に引くと、両方の車が傷みます。
牽引フックの位置を、双方で確認してください。そして急な力をかけないこと。
ロープがたるんだ状態から一気に引くと、ロープが切れて跳ね、周りの人に当たります。
自信がなければ、救援を呼ぶよう勧めるだけでも十分な助けです。
声をかけるだけでも意味があります
これは実感として書きます。
スタックした人は、焦っています。そして焦ると、アクセルを踏み込むという最悪の選択をします。
「マフラー埋まってないですか」と一声かける。それだけで、命が助かることがあります。
子どもや高齢の方が同乗しているとき
優先順位が変わります。
まず、体を冷やさないこと。子どもと高齢の方は、体温が下がりやすい。
毛布がなければ、上着を重ねる、新聞紙を服の間に入れる、体をくっつける。できることはあります。
そして脱水にも注意してください。寒いと水分を取らなくなりますが、暖房の効いた車内は乾燥します。
作業は、一人でやらない
掘る作業は、想像より重労働です。
雪かき中の心臓発作は、実際に起きています。寒い中での急な運動は、心臓に負担をかけます。
休みながら、複数人で交代してください。そして高齢の方には掘らせないでください。
雪が少ない地域こそ、危ない理由
この記事を読んでいる方の多くは、雪国にお住まいではないと思います。そして、雪国より危険です。
装備がありません
関東や西日本では、雪が数年に一度しか積もりません。
だからスタッドレスを持っていない車が、大半を占めます。スコップも、牽引ロープも積んでいません。
雪国では、全員が最低限の装備を持っています。その前提が成り立たない地域では、1台のスタックが道路全体を止めます。
経験がありません
これも大きい。
雪道で発進するとき、どのくらいアクセルを踏めばいいか。雪国の人は体で覚えていますが、そうでなければ分かりません。
そして焦って踏み込みます。結果、空転して氷を作ります。
除雪体制がありません
雪国には除雪車があり、優先順位が決まっています。降れば動きます。
雪の少ない地域では、除雪車の台数そのものが限られます。幹線道路の除雪だけで手一杯になります。
だから復旧に時間がかかります。数時間で終わるはずの立ち往生が、一晩になります。
坂が多い街は、とくに弱い
坂道でスタックすると、後続車がすべて止まります。そして坂の途中で止まった車は、再発進できません。
JAFのテストが示したとおり、勾配20%では何を履いていても途中からは登れません。
横浜、神戸、長崎のような坂の街では、数センチの雪でも交通が麻痺します。
年に一度の雪に、どこまで備えるか
現実的な線を書きます。
スタッドレスは、必須ではありません
年に一度しか降らない地域で、4本セットを買って保管するのは負担が大きい。そして保管中もゴムは劣化します。
それより「降ったら乗らない」という判断のほうが、安く確実です。
ただし、これだけは積んでください
| もの | 理由 |
|---|---|
| 折りたたみスコップ | マフラー除雪。これだけは代えがきかない |
| 防寒具・毛布 | エンジンを切って待てる |
| 軍手か防水手袋 | 素手では雪を掘れない |
3つで数千円です。そして年に一度も使わないかもしれません。
それでも、使う日が来たときに命に関わります。
タイヤチェーンという選択肢
スタッドレスより安く、場所も取りません。
ただし、装着の練習をしていないと使えません。
本番は、雪の路肩、暗がり、かじかむ手です。説明書を読みながら初挑戦、という状況にはなりません。
晴れた日に、自宅の駐車場で一度つけてみてください。10分で終わります。
出発前の判断が、すべてです
雪の予報が出たら、確認すること
一、その日に本当に行く必要があるか。
二、代わりの手段はないか。公共交通機関、日程の変更。
三、通る道に坂はあるか。坂を避ける経路があれば、そちらを選ぶ。
四、帰りの時間はどうか。行きは大丈夫でも、帰りは凍結します。
「行けるかどうか」ではありません
最後に、これを書いておきます。
スタックが本当に困るのは、自分が動けなくなることではありません。
道を塞いで、後続の全員を止めてしまうことです。
その中には、急いでいる人がいます。救急車が通れなくなることもあります。
そして除雪車が入れなくなり、復旧そのものが遅れます。
「行かない」という判断は、自分のためだけではありません。
電気自動車・ハイブリッド車の場合
増えているので、触れておきます。
マフラーがない車もあります
電気自動車には排気ガスが出ません。一酸化炭素中毒の心配がない、という点では有利です。
ハイブリッド車はエンジンが動く場面があるため、マフラーの確認は必要です。
ただし、暖房の考え方が変わります
電気自動車の暖房は、電力を大きく消費します。ガソリン車がエンジンの排熱を利用するのに対し、電気で熱を作るためです。
立ち往生では、残量の減り方がガソリン車と違うと考えてください。
シートヒーターやハンドルヒーターは、空間全体を温める暖房より消費が小さいとされています。使い分けると、電力を延ばせます。
冬は、航続距離が落ちます
バッテリーは低温で性能が下がります。そこに暖房の消費が加わります。
雪の予報が出ている日は、普段より多めに充電しておいてください。
そして充電スポットも、雪で使えなくなることがあります。余裕を持った計画が要ります。
どこでスタックしやすいか
場所には傾向があります。知っておけば避けられます。
| 場所 | なぜ起きるか |
|---|---|
| 坂道の途中 | 止まると再発進できない |
| 駐車場からの出口 | 除雪の雪が積まれている |
| わだちから外れた路肩 | 見た目より深い |
| 交差点の左折 | 雪の壁が残っている |
| 踏切 | 段差で腹がつかえる |
| 自宅の車庫前 | 除雪車が置いていった雪 |
いちばん多いのは、坂の途中です
JAFの登坂テストでも実証されています。勾配12%の圧雪路では、坂の途中から発進するとノーマルタイヤは登れませんでした。
勾配20%では、何を履いていても途中からは登れません。
つまり坂では、止まった時点で負けです。
だから坂に入る前に、前が詰まっていないか確認する。詰まりそうなら、手前で待つ。
自宅の車庫前が、意外に多い
これは雪国あるあるです。
除雪車が通ると、道路の雪を車庫の入口に置いていきます。硬く締まった雪の塊です。
朝、車を出そうとして乗り上げ、そのままスタックする。出勤前のいちばん急いでいる時間に起きます。
除雪車が入った日は、出発前に確認してください。
そもそもスタックしないために
一、深い雪に突っ込まない
「行けるだろう」が、いちばん危ない判断です。
タイヤの高さを超える雪には入らない。車の底が雪に乗ると、タイヤが浮いて何もできなくなります。
二、止まらずに走り抜ける
雪の深い区間では、一定の速度を保ってください。
途中で減速すると、そこから抜け出せなくなります。ただし速度を出しすぎると、今度は制御を失います。
止まらない程度の、ゆっくりした一定速度。
三、前の車と距離をあける
前が止まれば、自分も止まります。
坂道で車間を詰めると、前がスタックしたときに巻き込まれます。距離があれば、迂回や待機ができます。
四、そもそも出かけない
結局、これがいちばん確実です。
大雪警報や暴風雪警報が出ているときは、車を出さない。
大雪のときに何が起きるかは大雪で危ないのは雪より「動けなくなること」にまとめました。
積んでおくもの
スタックを前提にした装備です。
| もの | 優先 | 理由 |
|---|---|---|
| スコップ | 最優先 | マフラー除雪と脱出の両方に使う |
| 防寒具・毛布 | 最優先 | エンジンを切って待てる |
| 脱出ボードか猫砂 | 高い | 摩擦を作る |
| 牽引ロープ | 高い | 助けてもらうときに要る |
| 手袋(防水) | 高い | 素手では長く掘れない |
| 携帯トイレ | 中 | 車から出られない |
| 飲料水・食べ物 | 中 | 数時間から一晩 |
| モバイルバッテリー | 中 | 連絡手段を保つ |
| ブースターケーブル | 中 | バッテリー上がり |
上の2つがあれば、大半の状況を乗り切れます。
スコップは、車に積める大きさで
家庭用の大きな雪かきスコップは、車に積みにくい。
折りたたみ式か、柄が短いものを選んでください。アルミやプラスチックなら軽く、トランクに入れっぱなしにできます。
車に積む防災グッズの全体像は車に積む防災グッズ完全ガイドにまとめました。
よくある質問
Q. スタックしたら、まず何をしますか
エンジンを止めて、マフラーの周りを掘ってください。
脱出より先です。排気ガスが車内に逆流すると、一酸化炭素中毒になります。
Q. アクセルを踏み続けたらどうなりますか
タイヤの熱で雪が溶け、すぐ凍って氷になります。もっと滑るようになります。
そして穴が深くなり、車体が沈みます。AT車では変速機を痛めることもあります。
Q. 何速で発進すればいいですか
2速です。1速はトルクが大きすぎて空転します。
AT車なら「2」「L」レンジか、スノーモードを使ってください。
Q. タイヤの下に何を敷けばいいですか
砂・猫砂・市販の脱出ボードが確実です。フロアマットや段ボールでも代用できます。
ただしマットは後方へ高速で飛ぶので、人を立たせないでください。
Q. ハンドルは切ったほうがいいですか
まっすぐに戻してください。斜めだと前に進む力が横に逃げ、抵抗も増えます。
Q. 前後に揺すってもいいですか
ロッキングという方法で、有効です。
ただしAT車では、完全に停止してからシフトを切り替えてください。動いている途中で切り替えると、変速機を傷めます。
Q. 四輪駆動ならスタックしませんか
しにくいだけで、します。
車体の底が雪に乗ってタイヤが浮けば、駆動輪の数は関係ありません。
Q. どのくらい試して、あきらめるべきですか
数回試して動かなければ、方針を変えてください。
掘り直す、敷くものを足す、人を呼ぶ。同じことを繰り返すほど、状況は悪くなります。
Q. 救援はどのくらいで来ますか
平常時なら比較的早く来ますが、大雪のときは救援車も渋滞に巻き込まれます。
数時間待つ前提で、防寒と燃料を考えてください。
Q. エンジンは切ったほうがいいですか
マフラーの確認ができないなら、切ってください。
寒くても、一酸化炭素中毒より安全です。毛布や防寒具があれば、切っていられる時間が延びます。
Q. この記事の情報はいつ時点のものですか
2026年8月時点でまとめたものです。車種ごとの操作方法は、取扱説明書をご確認ください。
まとめ
雪でスタックしたときの順番は、四つです。
一、エンジンを止めて、マフラーを掘る。脱出より先です。排気ガスが車内に逆流すれば、一酸化炭素中毒になります。
二、タイヤの前後を、1メートルほど掘る。すぐ前だけでは、また雪にぶつかります。
三、ハンドルをまっすぐに戻す。斜めだと、前に進む力が横に逃げます。
四、2速で、じわりと発進する。アクセルを踏み込まないでください。
そして、いちばん重要なことを繰り返します。
空転させてはいけません。
タイヤの熱で雪が溶け、アクセルを緩めた瞬間に凍ります。雪の上にいたはずが、氷の上に変わります。
踏むほど、穴が深くなります。踏むほど、脱出できなくなります。
今日できることを、ひとつだけ書きます。
この冬が来る前に、車のトランクにスコップを1本入れてください。
折りたたみ式なら場所を取りません。そして、スタックしたときも、マフラーが埋まったときも、これ1本で対応できます。
使わずに冬が終わるのが、いちばんです。それでも、積んでおいてください。
路面の危険はブラックアイスバーンとは?黒く濡れて見える氷に、雪害の全体像は雪害とは?読み方は「せつがい」にまとめました。

