ブラックアイスバーンとは?黒く濡れて見える氷|JAF実測で制動距離は約1.8倍

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【この記事の要約】
ブラックアイスバーンは、アイスバーンの一種です。違いは「見えるかどうか」だけ。路面が黒く濡れて見えるため、乾いていると錯覚します。そして、いちばん危険なのはこの見えなさです。発生しやすいのは橋の上、トンネルの出口、日陰のカーブ、交差点の手前。気温が0度を下回っていなくても発生します。路面の温度は、気温より低くなるからです。JAFのテストでは、氷の路面でノーマルタイヤの制動距離はチェーン装着車の約1.8倍でした。勾配9%の氷の坂では、スタッドレスタイヤだけでは登れませんでした。この記事では、見分け方、走り方、滑り始めたときの操作、そしてそもそも走らない判断までを書きます。北海道に住む防災士として、実際に効いている対処を中心にまとめました。

冬の運転で、いちばん怖いのは何か。

私は札幌に住んでいます。雪そのものではありません。

降っている最中は、誰でも慎重になります。危ないのは、雪が見えないときです。

晴れた朝。路面は黒く、濡れているように見える。そこが凍っています。

これがブラックアイスバーンです。

厄介なのは、身構えていないことです。白く凍った路面なら、誰でも速度を落とします。黒い路面では、誰も落としません。

そして北海道だけの話ではありません。関東でも、九州でも、条件が揃えば発生します。むしろ雪の少ない地域のほうが、危険は大きい。

目次

結論|ブラックアイスバーンは「見えないアイスバーン」です

先に整理します。まったく別の現象ではありません。

アイスバーン ブラックアイスバーン
正体 凍った路面 凍った路面(同じ)
見た目 白っぽい、てかる 黒く濡れて見える
気づけるか 気づける 気づけない
危険度 高い より高い

滑りやすさそのものは、大きく変わりません。差は、運転者が身構えているかどうかです。

なぜ黒く見えるのか

氷が薄く、透明だからです。

厚く凍った氷は、内部に気泡が入って白く濁ります。しかし薄い氷は透明のまま張ります。

すると下のアスファルトの黒がそのまま透けます。そこに街灯や日光が反射して、濡れた路面に見えます。

厚さは1ミリに満たないこともあります。それでも、タイヤは滑ります。

アイスバーンには、4つの種類があります

ひとくくりにされがちですが、できかたが違います。できかたが違えば、現れる場所も違います。

種類 できかた 現れやすい場所
ブラックアイスバーン 薄い水の膜が凍る 橋の上、トンネル出口、日陰
ミラーバーン 雪が車に磨かれて鏡状になる 交差点、バス停、渋滞路
圧雪アイスバーン 踏み固められた雪が凍る 生活道路、駐車場
ザクザク路面の再凍結 日中溶けた雪が夜に凍る わだち、路肩

ミラーバーンは、交差点にできます

これは北海道でよく見る形です。

交差点では、車が発進と停止を繰り返します。タイヤが雪を磨き、鏡のようになります。

つまり「止まりたい場所ほど、滑る」という構造になっています。

信号が変わりそうだと気づいてブレーキを踏む。そこがいちばん滑る場所です。

だから交差点は、手前から速度を落としておくのが原則になります。近づいてから減速するのでは遅い。

0度を下回らなくても、路面は凍ります

ここを誤解している方が多い部分です。

気温と路面温度は、別ものです

天気予報の気温は、地上から約1.5メートルの高さで測ります。路面の温度ではありません。

晴れた夜は放射冷却が起きます。地面の熱が空へ逃げ、路面は気温より低くなります。

気温が3度でも、路面が0度を下回っていることがあります。

だから「橋の上」が危ない

橋は、地面から浮いています。下からも冷やされます。

地面に接している道路は、地中の熱で少し温められます。橋にはそれがありません。

結果として、橋の上だけが凍っているという状況が生まれます。手前まで普通に走れていたのに、橋に入った瞬間に滑る。

トンネルの出口も同じ理由です

トンネルの中は乾いていて、暖かい。出た瞬間に、外気と雪にさらされます。

そして出口付近は、トンネルから流れ出た水が凍っていることがあります。

トンネルを抜けたら、まず速度を落とす。これは覚えておく価値があります。

凍りやすい場所を、まとめます

場所 理由
橋の上・高架 下からも冷える
トンネルの出口 急に外気にさらされる
日陰のカーブ 日が当たらず溶けない
交差点の手前 磨かれてミラーバーンに
山の切り通し 両側が壁で日が入らない
川や海のそば 水蒸気が多く、霧が凍る
坂の下 冷気がたまる

共通するのは「日が当たらない」と「風が抜ける」です。

どれだけ止まれないのか|JAFの実測値

感覚ではなく、数字で見てください。

時速40キロからの急ブレーキ

JAFのユーザーテストは、時速40キロから急ブレーキ(ABS作動)という条件で行われました。3回の平均値です。

比較したのは6種類です。

装備
ノーマルタイヤ(夏タイヤ)
スタッドレスタイヤ
オールシーズンタイヤ
ノーマルタイヤ+チェーン
ノーマルタイヤ+オートソック
ノーマルタイヤ+スプレーチェーン

圧雪路と氷盤路で、結果が逆転します

圧雪路(踏み固められた雪)では、スタッドレスタイヤが最も短い距離で止まりました。

そしてノーマルタイヤは、その約1.7倍の距離が必要でした。

氷盤路(アイスバーン)では、順位が変わります。

最も短かったのはチェーン装着車です。金属のピンが氷に食い込むためです。次がスタッドレスタイヤでした。

そしてノーマルタイヤは、チェーンの約1.8倍の距離を要しました。

1.7倍・1.8倍が、何を意味するか

時速40キロで、前の車が急停止したとします。

スタッドレスなら止まれる距離で、ノーマルタイヤは止まれません。その差だけ、前の車に突っ込みます。

そしてこれは時速40キロの話です。速度が上がれば、制動距離は急激に伸びます。

坂は、止まるより登れません

同じJAFのテストで、雪道の登坂も検証されています。

2017年2月、北海道士別市の交通科学総合研究所。前輪駆動のコンパクトカーで、全長50メートルの坂を各3回。

勾配12%の圧雪路

発進位置 結果
平坦路から助走 ノーマルタイヤのみ失敗
坂の途中から発進 スタッドレス・チェーン・オートソックは成功
ノーマル・オールシーズン・スプレーチェーンは失敗

助走があれば登れても、途中で止まると登れなくなります。

これが、坂道での渋滞が危険な理由です。前の車が止まれば、自分も止まる。そして再発進できなくなります。

勾配20%の圧雪路

発進位置 結果
平坦路から助走 スタッドレスタイヤのみ成功。他はすべて失敗
坂の途中から発進 すべて失敗

勾配20%では、何を履いていても途中からは登れません。

そして、いちばん重要な結果

勾配9%の氷盤路。

装備 結果
スタッドレスタイヤのみ 失敗
スタッドレス+チェーン 成功

勾配9%は、そこまで急な坂ではありません。それでも氷の上では、スタッドレスだけでは登れませんでした。

これが、「スタッドレスを履いているから大丈夫」が成り立たない根拠です。

スタッドレスタイヤは、ノーマルタイヤより圧倒的に優れています。しかし、氷の坂には勝てません。

タイヤの交換時期についてはスタッドレスタイヤの交換時期は気温7度にまとめました。

滑らないための運転|3つだけです

細かい技術より、この3つが効きます。

一、急がつく操作をしない

急ブレーキ、急ハンドル、急加速。この3つが滑りの引き金です。

タイヤが路面をつかむ力には限界があります。急な操作は、その限界を一気に超えさせます。

ブレーキは、踏むのではなく「乗せる」感覚です。早めに、じわりと。

二、車間距離を「普段の倍」あける

制動距離が1.7〜1.8倍になるなら、車間も同じだけ必要です。

そして冬は、前の車のブレーキランプが見えにくい。雪や水しぶきで視界が悪くなるからです。

三、カーブの前に減速を終える

カーブの中でブレーキを踏むと、車は外へ飛びます。

減速は直線のうちに終える。カーブ中は一定速度で、ハンドルも一定に。

これは教習所で習う内容ですが、冬はこの原則が命に直結します。

滑り始めたら、どうするか

ここは知識として持っておいてください。とっさに正しく動くのは難しいですが、知らないと確実に間違えます。

基本は「ブレーキから足を離す」

意外に思われるかもしれません。

タイヤがロックした状態では、ハンドルが効きません。まず転がる状態に戻す必要があります。

ABSが付いている車なら、強く踏み続けるのが正解です。ABSが自動でロックを防ぎます。

ABSが作動するとペダルがガタガタと震えますが、これは正常です。驚いて足を離さないでください。

後輪が滑ったら、滑った方向へハンドルを切る

カウンターステアと呼ばれる操作です。

車の後ろが右に流れたら、ハンドルを右に。「行きたい方向」ではなく「車の後ろが向いた方向」です。

ただしこれは練習していないと、まずできません。

だから現実的な答えはこうです。滑らせないこと。速度を落として、そもそも限界に近づかないこと。

やってはいけないこと

パニックブレーキ。ABSがない車では、タイヤがロックして方向を変えられなくなります。

急なハンドル操作。立て直そうとして切りすぎ、逆方向へ振られます。

サイドブレーキ。後輪がロックし、スピンします。

見分ける方法|完全には見分けられません

正直に書きます。ブラックアイスバーンを、走る前に確実に見分ける方法はありません。

それでも、手がかりはあります。

疑うべき条件

条件 なぜ疑うか
気温が3度以下 路面は気温より低いことがある
前日に雪や雨が降った 溶けた水が夜に凍る
よく晴れた朝 放射冷却で路面が冷える
日の出直後 1日で最も路面温度が低い時間帯
周りの車が妙に遅い 先行者が滑りやすさに気づいている
水しぶきが上がらない 濡れて見えるのに飛沫がない=凍っている

最後の一つが、いちばん実用的です。

本当に濡れている路面なら、前の車のタイヤから水しぶきが上がります。濡れて見えるのに、まったく飛沫が立たない。そのとき、路面は凍っています。

外気温計は、目安として使えます

多くの車に外気温の表示があります。3度を切ったら、路面凍結を想定してください。

ただし外気温計は、走行中は実際より高めに出ることがあります。エンジンの熱を拾うためです。

信号待ちで下がった数字のほうが、実態に近い。

路面に凍結防止剤がまかれていたら

白い粒が路面にあれば、管理者が凍結を予想しているということです。

撒かれているから安全、ではありません。「ここは凍る場所だ」という表示だと受け取ってください。

そもそも、走らないという判断

ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。

技術で解決しようとしないでください

運転が上手ければ滑らない、ということはありません。タイヤと路面の摩擦がなければ、誰が運転しても止まりません。

JAFのテストが示したとおり、勾配9%の氷ではスタッドレスでも登れませんでした。これは技術の問題ではありません。

「行かない」で防げる事故が、いちばん多い

私が北海道で見ていて思うのは、移動をやめる判断が、いちばん確実だということです。

大雪や暴風雪の予報が出たら、不要不急の運転はやめる。

これは臆病ではありません。立ち往生すれば、除雪も救助も遅れます。自分だけの問題ではなくなります。

判断の目安

状況 判断
暴風雪警報が出ている 出発しない
大雪警報+夜間 出発しない
顕著な大雪に関する気象情報 短時間で状況が悪化する。中止を検討
気温3度以下+前夜に降雨 時間をずらす(日が高くなってから)
チェーン規制が出ている 規制区間を通らない経路を検討

大雪のときに何が起きるかは大雪で危ないのは雪より「動けなくなること」にまとめました。

それでも走るなら、車に入れておくもの

立ち往生を前提に考えてください。数時間から、長ければ一晩です。

もの 理由
スコップ マフラーの除雪に必須。命に直結
防寒具・毛布 エンジンを切る場面がある
携帯トイレ 車から出られない
飲料水・食べ物 数時間から一晩
モバイルバッテリー 連絡手段を保つ
解氷スプレー ドアやガラスの凍結
牽引ロープ 助けてもらうときに要る

いちばん上のスコップが、いちばん重要です。

雪でマフラーが塞がれると、排気ガスが車内に逆流して一酸化炭素中毒になります。

詳しくは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒に|マフラー除雪で濃度はほぼ0になるにまとめました。これは読んでおいてください。

歩く人にとっても、同じ路面です

車の話をしてきましたが、歩行者も同じ氷の上にいます。

危ないのは、車と同じ場所です

横断歩道の白線の上。塗料の上は雪が付きにくく、磨かれて滑ります。

建物の出入口。屋内から持ち込まれた雪が溶けて、凍ります。

マンホールや側溝の蓋。金属は冷えやすく、凍りやすい。

歩き方については雪道で滑るのは新雪ではなく磨かれた氷にまとめました。

車と歩行者が、同時に滑る場所

交差点です。

車はミラーバーンで止まれない。歩行者は白線の上で滑って転ぶ。この二つが同じ場所で起きます。

冬の交差点では、歩行者も車を信用しないでください。青信号でも、止まりきれない車が来ます。

同乗者にも、伝えておいてください

運転者だけが緊張していても、限界があります。

「凍っているかもしれないから、ゆっくり行く」と一言伝える。それだけで、遅いことへの不満が消えます。

急かされると、無理をします。同乗者の理解は、装備と同じくらい効きます。

地域によって、冬の路面は別物です

同じ「冬道」でも、条件がまったく違います。ここを知らないと、旅行や転勤で危険な目に遭います。

地域 路面の特徴 主な危険
北海道 低温が続き、雪が溶けない 圧雪とミラーバーン。地吹雪
東北・北陸 湿った雪。日中に溶けて夜に凍る 再凍結。わだち
関東・西日本 雪は少ないが、まれに積もる ノーマルタイヤのまま走る車。大渋滞
山間部・峠 平地と条件が急変する 麓は晴れ、峠は雪

北海道は「溶けない」ことが前提です

私が住んでいる札幌では、12月から3月まで、路面はほぼ雪と氷です。

気温が低いままなので、日中も溶けません。その代わり、状態が急変しにくい。

そして全員がスタッドレスを履いています。「誰も冬装備をしていない」という状況が起きません。

むしろ危ないのは、雪の少ない地域です

これは逆説的ですが、事実だと考えています。

関東や西日本では、雪が数年に一度しか積もりません。だからノーマルタイヤの車が大量に走っています。

そこに雪が降ると、坂を登れない車が道を塞ぎ、渋滞が発生し、そのまま立ち往生になります。

自分がスタッドレスを履いていても、前の車が動けなければ、自分も動けません。

東北・北陸の「再凍結」がいちばん読みにくい

気温が0度をまたぐ地域です。

日中は溶けて濡れた路面、夜は凍った路面。同じ道が、12時間で別物になります。

そして湿った雪は重く、わだちが深くなります。わだちの底に水が溜まり、そこが凍る。

ハンドルがわだちに取られて、思った方向に進めなくなります。

わだちの中での運転

これは実際によく困る場面なので、書いておきます。

わだちから出るときが、いちばん危ない

わだちは、両側に雪の壁があります。その壁を乗り越えるとき、タイヤが横から押されます。

勢いよく出ようとすると、反動で反対側へ飛び出します。

速度を落として、ゆっくり斜めに抜ける。これが基本です。

対向車とすれ違うとき

わだちが1本しかない狭い道では、どちらかが避けます。

避けるほうは、完全に停止してから路肩へ寄ってください。動きながら寄ると、わだちの壁でハンドルを取られます。

そして路肩の雪は、見た目より深いことがあります。踏み込むとスタックします。

雪の壁で、見えなくなるもの

冬の道路特有の危険です。

交差点の見通しが消えます

除雪した雪が路肩に積み上がると、人の背丈を超える壁になります。

すると交差点で、左右がまったく見えません。

止まって、鼻先を少しずつ出して確認する。これしかありません。一時停止線で止まっても、何も見えない場所があります。

子どもが見えません

雪の壁の陰から、子どもが飛び出してきます。

大人なら頭が見えることもありますが、子どもは完全に隠れます。

そして冬は厚着で動きが鈍く、フードで視野が狭い。車に気づきにくくなっています。

通学路では、徐行以上に速度を落としてください。

道路の幅も分かりません

雪で路肩の位置が分からなくなります。側溝に落輪する事故は、毎年起きています。

目印になるのは、スノーポール(矢羽根)です。道路脇に立つ赤白の棒で、これが道路の端を示しています。

北海道や東北では標準的に設置されていますが、雪の少ない地域では設置されていません。そこが危ない。

冬の運転で、装備より大事なこと

速度を落とすことが、すべての対策に勝ります

この記事でいろいろ書きましたが、効果がいちばん大きいのは減速です。

制動距離は速度の2乗に比例します。速度が半分になれば、止まるまでの距離は4分の1です。

どんなタイヤより、この効果が大きい。

そして、時間に余裕を持つこと

急ぐから、速度を出します。急ぐから、危険な判断をします。

冬は普段より15分早く出る。それだけで、無理をしなくて済みます。

雪国では、これが常識として共有されています。「冬は遅れて当たり前」という前提が、社会の側にあります。

雪の少ない地域では、この前提がありません。だから無理をして事故になります。

タイヤの空気圧を、冬は必ず確認してください

見落とされがちですが、効きます。

気温が下がると、空気圧は下がります

空気は冷えると縮みます。気温が10度下がると、空気圧はおよそ10キロパスカル下がるとされています。

夏に調整したまま冬を迎えると、指定値を大きく下回った状態で走ることになります。

空気圧が低いと、何が起きるか

接地面がゆがみ、タイヤ本来の性能が出ません。スタッドレスの溝が路面をつかめなくなります。

そして燃費が悪くなり、片減りします。

月に一度、ガソリンスタンドで見てもらってください。無料でできて、1分で終わります。

スタッドレスは、溝の深さも見てください

スタッドレスタイヤにはプラットフォームという目印があります。

溝が減ってこの目印が露出したら、冬用タイヤとしての性能は終わりです。夏タイヤとしてはまだ使えますが、雪と氷の上では効きません。

そしてゴムは年数でも硬くなります。溝が残っていても、製造から年数が経てば性能は落ちます。

交換の判断はスタッドレスタイヤの交換時期は気温7度にまとめました。

時間帯で、危険度が変わります

同じ道でも、通る時刻で条件がまったく違います。

時間帯 路面の状態 危険度
日の出前〜午前8時 1日で最も冷える。凍結のピーク 最も高い
午前10時〜午後2時 日が当たり、溶ける 比較的低い
日没後〜深夜 溶けた水が再び凍る 高い

いちばん危ないのは、朝の通勤時間です

放射冷却で路面が冷え切ったところに、交通量が集中します。

そして多くの人が「いつもの道」を走ります。いつもと同じ感覚で走ると、いつもと違う結果になります。

予定より15分早く出る。それだけで、余裕を持って減速できます。

夕方の再凍結も見落とされます

日中に溶けた雪が、路面に水として残ります。それが日没とともに凍ります。

「朝は凍っていたけど、昼は大丈夫だった」。その感覚のまま夕方に走ると、危険です。

とくにわだちの底に水が溜まり、そこが凍ります。

車種によっても、条件が変わります

四輪駆動でも、止まる性能は同じです

これは強調しておきます。

四輪駆動が効くのは「発進」と「登坂」です。止まる性能は、二輪駆動と変わりません。

ブレーキは4輪すべてに付いています。駆動輪の数は、制動距離に関係しません。

むしろ四輪駆動は発進が楽なぶん、速度が出やすい。そして同じように止まれない。

北海道では、四輪駆動車が自信を持って走って事故になる例を、たびたび耳にします。

車が重いほど、止まりにくい

大きなSUVやミニバンは、車重があります。動いているものを止めるには、その分の力が要ります。

雪道では、大きい車ほど余裕を持って減速する必要があります。

ABSがない古い車の場合

ポンピングブレーキという方法があります。ブレーキを小刻みに踏んで、ロックを防ぎます。

ただし、とっさにできる操作ではありません。ABSのない車で冬道を走るなら、速度をさらに落としてください。

凍結防止の道具は、何が効くのか

JAFのテストで比較された装備を、実用の観点で整理します。

装備 氷での効き 使いどころ
スタッドレスタイヤ 高い 冬の基本。これが前提
タイヤチェーン 最も高い 急な坂、規制区間
オールシーズンタイヤ 限定的 雪が少ない地域向け
オートソック(布製) 限定的 緊急用
スプレーチェーン 限定的 応急処置
ノーマルタイヤ 危険 冬道では使わない

スタッドレス+チェーンが最強です

JAFの登坂テストで、勾配9%の氷を登れたのはこの組み合わせだけでした。

チェーンは常時つけるものではありません。急な坂の手前で、必要なときだけ装着します。

だから、積んでおくことに意味があります。使わずに冬が終わっても構いません。

装着の練習を、雪の降る前にしてください

これは実務的な話です。

チェーンの装着は、初めてだと必ず手間取ります。そして本番は、吹雪の路肩、暗がり、素手がかじかむ状況です。

晴れた日に、自宅の駐車場で一度つけてみてください。10分で終わります。

よくある質問

Q. ブラックアイスバーンとアイスバーンは違うものですか

同じ「凍った路面」です。違いは見た目だけで、黒く濡れて見えるものをブラックアイスバーンと呼びます。

滑りやすさは大きく変わりませんが、気づけない分だけ危険です。

Q. 気温が何度以下だと凍りますか

路面温度が0度を下回れば凍ります。ただし気温は路面温度ではありません。

晴れた夜は放射冷却で路面が気温より下がるため、気温3度以下なら疑ってください。

Q. スタッドレスなら大丈夫ですか

大丈夫ではありません。JAFのテストでは、勾配9%の氷の坂を、スタッドレスだけでは登れませんでした。

ノーマルタイヤよりはるかに優れていますが、氷に対して万能ではありません。

Q. 四輪駆動なら止まれますか

止まる性能は変わりません。四輪駆動が効くのは発進と登坂です。

ブレーキは4輪にあるので、駆動方式は制動距離に関係しません。

Q. 制動距離はどのくらい伸びますか

JAFのテスト(時速40キロ・ABS作動)では、圧雪路でノーマルタイヤはスタッドレスの約1.7倍

氷盤路ではノーマルタイヤはチェーン装着車の約1.8倍でした。

Q. 滑り始めたら、まず何をしますか

ABS付きの車なら、ブレーキを強く踏み続けてください。ペダルが震えますが、正常な動作です。

そして行きたい方向を見る。視線の先にハンドルは向きます。

Q. どこがいちばん凍りますか

橋の上、トンネルの出口、日陰のカーブ、交差点の手前です。

共通するのは「日が当たらない」「風が抜ける」場所です。

Q. 濡れているのか凍っているのか、見分ける方法は

前の車から水しぶきが上がっているかを見てください。

濡れて見えるのに飛沫がまったく立たないなら、路面は凍っています。

Q. 凍結防止剤がまかれていれば安全ですか

安全の保証ではありません。「ここは凍る場所だ」という管理者からの表示だと受け取ってください。

Q. 何時ごろが危ないですか

日の出前から午前8時ごろがピークです。放射冷却で路面が最も冷えます。

日没後の再凍結も要注意です。

Q. この記事の情報はいつ時点のものですか

2026年8月時点で公表されていた情報をもとにしています。路面状況や規制は、その都度ご確認ください。

まとめ

ブラックアイスバーンは、アイスバーンの一種です。違いは、見えるかどうかだけ。

薄い氷が透明なまま張るため、下のアスファルトが透けて、濡れた路面に見えます。

そして気温が0度を下回らなくても凍ります。路面温度は気温より低くなるからです。気温3度以下なら疑ってください。

凍りやすいのは橋の上、トンネルの出口、日陰のカーブ、交差点の手前。日が当たらず、風が抜ける場所です。

そして、数字で押さえておいてください。

JAFのテストでは、氷の路面でノーマルタイヤの制動距離はチェーン装着車の約1.8倍。圧雪路ではスタッドレスの約1.7倍でした。

さらに勾配9%の氷の坂は、スタッドレスタイヤだけでは登れませんでした。

技術では解決できません。タイヤと路面の摩擦がなければ、誰が運転しても止まりません。

今日できることを、ひとつだけ書きます。

この冬、初めて凍結が予想される朝の前に、通勤路のどこが「橋の上」「トンネル出口」「日陰のカーブ」かを思い出してください。

その3か所だけ、手前で速度を落とす。それだけで、危険の大半は避けられます。

そして、暴風雪や大雪の予報が出たときは、行かないという判断をしてください。立ち往生は、自分だけの問題では終わりません。

冬の車の備えは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒にに、雪害の全体像は雪害とは?読み方は「せつがい」にまとめました。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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