車が冠水したらどうする?水深30センチで止まり、ドアは水圧で開かない|脱出の手順を防災士が解説

洪水で車は壊れる?浸水被害の仕組みと対策・保険・水没からの脱出方法を徹底解説【2026年最新版】

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【この記事の要約】
結論から言います。冠水した道路に、車で入らないでください。目安として、乗用車は水深30センチで走行が難しくなり、50センチを超えると浮き始めます。そして、いちばんの問題は車が壊れることではありません。ドアが開かなくなることです。JAFの検証では、水深60センチのとき、セダンの運転席ドアを外から開けるのに通常の5倍近い力が必要でした。ミニバンのスライドドアは、男性の力でも外から開きませんでした。外の水圧が、ドアを押さえつけるからです。だから、脱出は窓からになります。パワーウィンドウが動かなくなることを考えると、脱出用ハンマーを手の届く場所に置いておくことが、唯一確実な備えです。この記事では、水深ごとに何が起きるか、脱出の手順、そして浸水したあとの保険と修理までをまとめます。

目次

結論|壊れることより、出られないことが問題です

車の冠水で最初に考えるべきは、修理費ではありません。閉じ込められないことです。

やってはいけないこと

一、冠水した道路に入る。水深は外から分かりません。これがすべての始まりです。

二、止まった車の中で待つ。水位は上がり続けます。時間が経つほど、ドアは開かなくなります。

三、ドアを開けようとし続ける。外に水があるかぎり、力任せでは開きません。

四、水が引くのを待って、エンジンをかける。エンジンが壊れ、感電や火災の危険もあります。

やること

一、水位が上がる前に、窓を開ける。電気が生きているうちです。

二、シートベルトを外し、窓から出る。ドアではありません。

三、窓が開かないなら、ハンマーで割る。そのために、手の届く場所に置いておきます。

四、車を捨てて、高いところへ移動する。車は保険で戻りますが、命は戻りません。

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水深ごとに、何が起きるのか

数字と実際の現象をつないでおきます。

水深 起きること
10センチ ブレーキの効きが落ち始めます
20〜30センチ マフラーの出口が水面下に入ります
30センチ 走行が難しくなる目安。エンジン停止のおそれ
50センチ 車が浮き始め、流されることがあります
60センチ ドアが外から開かなくなります
それ以上 車内に水が入り、閉じ込められます

30センチというのは、大人のひざ下ほどです。道路の上では、それほど深く見えません。

ただし、この数字には条件があります

ここは正直に書いておきます。

JAFが行った冠水路の走行テストでは、水深30センチでも、時速10キロならフロントグリルから水は入りませんでした。

けれど、同じ30センチでも、時速30キロでは巻き上げる水の量が増え、エンジンルームに多量の水が入りました。

つまり、同じ水深でも、速度によって結果が変わります。

だから、「ゆっくりなら大丈夫」が危ないのです

この事実は、危険な誤解を生みます。

「ゆっくり走れば抜けられる」と考えて、進入する人がいます。そして、途中で深くなっていることに気づきます。

JAFのテストでは、水深60センチではフロントガラスの下端まで水をかぶりました。それでもすぐには止まらず、しばらく走れた。そして、登りのスロープに差しかかった31メートル地点でエンジンが止まりました。

ここが、いちばん怖いところです。入った直後は走れてしまう。だから、引き返す判断が遅れます。

そして、水深は外から分かりません

濁った水の下は見えません。路面が沈んでいるのか、マンホールのふたが外れているのかも分かりません。

浸水時の衝撃で、車体が一瞬浮いてハンドルを取られる現象も確認されています。

入らない。これが唯一の正解です。

ドアが開かない|これが最大の問題です

この記事でいちばん伝えたい部分です。

外の水が、ドアを押さえつけます

車の外に水があり、中にないとき、ドアの外側だけに水圧がかかります。

ドアの面積は広い。そこに水の重さが全面からかかるため、内側から押しても開きません。

JAFの検証で、数字が出ています

条件 結果
水深60センチ・セダン 運転席ドアを外から開けるのに、通常の5倍近い力が必要
水深60センチ・ミニバン 男性の力でも、外からスライドドアを開けられなかった

これは外からの結果です。車内から、水中で、体勢も悪い状態では、さらに難しくなります。

水位が同じになれば、開きます

理屈のうえでは、車内に水が入って内外の水位が同じになれば、水圧の差がなくなり、ドアは開きます。

けれど、これを待つのは最後の手段です。車内が水で満たされるまで待つということだからです。

そのときには、呼吸できる空間は天井付近のわずかな部分だけになります。落ち着いていられる人は多くありません。

だから、水位が上がる前に、窓から出てください。

脱出の手順

順番を決めておきます。とっさに考えることはできません。

一、すぐに窓を開ける

車が止まった、あるいは水に入ったと気づいた瞬間です。

パワーウィンドウは、電気が生きているうちなら動きます。ためらわず、先に開けてください。

水が入ってくるのが怖くて閉めたくなりますが、閉めた瞬間に出口がなくなります。

二、シートベルトを外す

あわてると、ここで手間取ります。

水に濡れたバックルは押しにくくなります。外れないときのために、シートベルトカッターがあると確実です。脱出ハンマーの多くに、この刃が付いています。

三、窓から出る

ドアではありません。窓です。

子どもがいるなら、先に外へ出してください。大人が先に出ると、戻れなくなることがあります。

チャイルドシートは、金具の位置を普段から確認しておいてください。暗い水中では探せません。

四、窓が開かないなら、割る

電気系統が水没すると、パワーウィンドウが動かなくなることがあります。

そのときは、脱出用ハンマーで側面の窓を割ります。

フロントガラスは割れません。合わせガラスといって、2枚のガラスのあいだに膜が入っているためです。割るのは、運転席や後部座席の側面の窓です。

割る位置は、窓の四隅です。中央より力が伝わります。

五、車から離れて、高いところへ

出たら、車につかまらないでください。流されます。

そして、水の中を歩いて移動しないでください。大人でも、水深50センチ・流れがあれば立っていられません。

近くの建物の2階、高い場所へ。それができないなら、車の屋根の上で救助を待つほうが安全な場合もあります。

脱出ハンマーを、どこに置くか

持っているだけでは、意味がありません。

グローブボックスは、間に合いません

これが、いちばん多い間違いです。

水中で、体を横に伸ばして、ふたを開けて、探す。この動作ができる状況ではありません。

置く場所は、三つです

一、運転席のドアポケット。座ったまま手が届きます。

二、シートの横、コンソールのそば。同じく手が届く範囲です。

三、サンバイザーに固定するタイプ。上を向けば取れます。

「座ったまま、片手で取れるか」を基準にしてください。

年に一度、確認してください

ばね式のハンマーは、使わないまま何年も置くと動かなくなることがあります。

車検のときなど、時期を決めて確認する習慣にしてください。そして、家族全員が場所を知っていること。運転していない人が脱出する場面もあります。

アンダーパスが、いちばん危ない

冠水による車の事故で、繰り返し起きている場所です。

周囲より低く、水が集まります

アンダーパスは、線路や道路の下をくぐるために掘り下げられた道です。

周囲より低いため、雨水が流れ込みます。そして、逃げ場がありません。排水ポンプが追いつかなければ、水はたまり続けます。

手前からは、深さが分かりません

ここが最大の問題です。

入口に立っても、いちばん深いところがどれだけ深いのかは見えません。手前が浅く見えても、底では1メートルを超えていることがあります。

そして、下り坂なので、入ってから引き返すのが難しい。

「通行止め」がなくても、入らないでください

冠水を検知して自動で通行止めにする設備がある場所もありますが、すべてに付いているわけではありません。

大雨のとき、アンダーパスは避けて通る。これを、あらかじめ決めておいてください。

自宅や職場の近くにアンダーパスがあるなら、迂回路を一度確認しておくと、当日に迷いません。

立体駐車場の地下も同じです

周囲より低い場所は、すべて同じ危険を持ちます。

地下駐車場に停めている方は、大雨の予報が出た時点で、車を上の階か別の場所に移してください。

浸水が始まってから取りに行くのは、非常に危険です。階段が水路になります。

台風・大雨・洪水のとき、車をどうすべきか迷う方は多いです。

「駐車場に置いたまま逃げて大丈夫?」「車で避難しようとしたら水に浸かってしまった」「少し水が入った程度なら大丈夫?」

このような疑問・不安を持つ方のために、この記事では洪水と車の関係を徹底的に解説します。実は車は見た目より「水に弱い」乗り物です。

浸水深わずか30cmで走行不能になる車種も多く、浸水深60〜70cmでは車体が浮いて流される危険があります。

洪水時の車の扱いを誤ると、愛車を失うだけでなく命を落とす危険もあります。

この記事では、以下の内容を国土交通省・損害保険協会・日本自動車連盟(JAF)の資料をもとに徹底解説します。

  • 洪水で車が壊れるメカニズム
  • 浸水深ごとの車への被害レベル
  • 洪水時に「車で逃げる」リスク
  • 水没した車からの脱出方法
  • 洪水から車を守る事前対策
  • 浸水した車の正しい対処法(絶対にやってはいけないこと)
  • 浸水車の保険請求・修理の知識
  • 浸水車を中古で購入するリスクと見分け方

【情報の出典について】
本記事は国土交通省「水害時における自動車の使用に関する情報」・一般社団法人日本自動車連盟(JAF)「水害時の注意事項」・損害保険協会「車両保険・水災補償に関する情報」・国土交通省「道路冠水時の注意」等の公的資料にもとづいています。防災ベース編集部が専門的な内容をわかりやすく解説しました。車種・年式・構造によって被害の程度は異なります。個別の判断は専門家にご相談ください。

洪水で車が壊れるメカニズム

車は精密な電子部品・エンジン・駆動系で構成されています。これらの部品の多くが「水に極めて弱い」という特性を持っています。洪水で車がどのように壊れるのかを、部位ごとに詳しく解説します。

エンジンへの浸水:最も深刻な被害

エンジンは車の心臓部です。エンジンに水が入ると「ウォーターハンマー現象」が起きることがあります。

ウォーターハンマー現象とは「エンジンシリンダー内に水が入り込み、圧縮できない水によってエンジン内部が破壊される現象」です。

水は気体(ガス)と違って圧縮できません。

ピストンが水を圧縮しようとした瞬間に、コンロッド(ピストンとクランクシャフトをつなぐ部品)が折れ曲がったり・シリンダーが破損したりします。

この被害を「エンジンの水没・焼き付き」と呼び、修理費用が数十万円〜エンジン交換が必要になるほどの深刻なダメージです。

エアインテーク(吸気口)の位置が重要

エンジンに水が入る主な経路は「エアインテーク(吸気口)」です。エアインテークは通常、エンジンルーム内の上部か前部にあります。

一般的な乗用車のエアインテーク位置は「地面から50〜70cm程度」のことが多いです。つまり、浸水深が50〜70cmに達するとエンジンへの水の侵入が始まります。

SUV・トラックはエアインテークが高い位置にあるため水没リスクが低いですが、それでも1m前後の浸水では危険です。

電気系統への浸水:現代の車が特に弱い

現代の自動車はコンピューター制御・電子部品が非常に多く使われています。

ECU(エンジンコントロールユニット)・ABS・パワーウィンドウ・エアバッグ・ナビゲーションシステムなど、主要な機能が電子制御されています。

これらの電子部品は「少量の水・湿気でも誤作動・故障」することがあります。

浸水した水が乾いた後でも、電子部品内部に残った水分・ミネラル成分が「電気ショート・腐食」を引き起こします。

見た目には問題なく見えても、数週間後に電気系統のトラブルが多発することがあります。

特に被害を受けやすい電気部品

  • ECU(エンジンコントロールユニット):車のコンピューター。水没すると車両全体が動かなくなる。交換費用は10〜30万円以上
  • オルタネーター(発電機):エンジン下部に設置されることが多く、浸水リスクが高い
  • スターターモーター:エンジン始動用の電気モーター。下部に設置されているため浸水しやすい
  • ABS・エアバッグシステム:浸水後に誤作動・機能喪失が起きることがある
  • ハイブリッド車・電気自動車のバッテリーシステム:高電圧バッテリーへの浸水は感電・火災のリスクがある

ブレーキシステムへの影響

浸水後のブレーキは、見た目では正常に見えても機能が著しく低下していることがあります。ブレーキパッド・ブレーキディスクに泥・土砂が付着・固着すると、制動力が大幅に落ちます。

また、ブレーキフルード(ブレーキ液)に水が混入すると「ベーパーロック現象(沸騰によるブレーキ失陥)」が起きるリスクがあります。

浸水後に車を動かして「ブレーキが効かない」という事故が実際に起きています。

マフラーへの浸水

マフラー(排気管)の出口は車両の後部下部にあります。浸水深が20〜30cmでもマフラーの出口が水面下に入ることがあります。

マフラーから水がエンジン内部に逆流すると、エンジンへの深刻なダメージにつながります。浅い水でも「止まらずに走り続ける」ことで水がエンジンに入るリスクがあります。

内装・シートへの浸水

車内に水が入ると「シート・フロアマット・内装材」がすべて水浸しになります。洪水の水は汚染水であるため、乾燥後も細菌・カビが繁殖します。

車内のカビ・悪臭は非常に取り除きにくく、内装の全交換が必要になることもあります。

エアコンのダクト内部にカビが繁殖すると、エアコン使用のたびにカビ胞子が車内に散布されるという深刻な問題も起きます。

浸水深ごとの車への被害レベル

JAF(日本自動車連盟)や国土交通省の資料をもとに、浸水深ごとの車への具体的な影響をまとめます。

浸水深 車への影響 走行の可否
〜10cm 通常走行ほぼ可能。ただし速度を上げると水しぶきがエンジンルームに入る危険がある 慎重に走行すれば可能
〜20cm マフラーが水面下に入る可能性。低速・高回転を維持することが重要。無理な走行で水がエンジンに入るリスク 慎重な走行が必要
〜30cm 多くの乗用車でマフラーが完全に水没。走行継続でエンジンに水が入る危険が高まる。急加速・急減速で水しぶきがエンジンに入りやすい 走行不能になり始める
〜50cm 多くの乗用車でエンジンルームが浸水。ウォーターハンマー現象のリスク。電気系統の浸水が始まる ほぼ走行不能
〜60〜70cm 車体が浮き始める。流れがあると横転・流される危険。ドアが水圧で開かなくなる 完全走行不能・生命の危険
1m以上 車体が完全に水没。車内に水が急速に流入。脱出が著しく困難になる 全損・脱出できなければ溺死の危険

🚨 「車体が浮く」ことへの警告
多くの方が「重い車が水に浮くはずがない」と思っています。
しかし、車は内部に多くの空洞を持つ構造で、想像以上に浮力があります。
JAFのテストでは「水深60cm・流速3m/秒程度の水流で乗用車が流される」という結果が報告されています。
浸水した道路を走行中に車が浮いて流されると、川・用水路に転落する危険があります。

洪水時に「車で逃げる」リスク

洪水時に「車で避難しよう」と考える方は多いです。しかし車での避難には、多くのリスクが伴います。

リスク①:浸水した道路の走行

洪水時の浸水した道路は、見た目より深く・流れが速いことがあります。特に夜間・濁水では道路の状態が見えにくく、どこに深い水溜まりがあるか分かりません。

排水溝・側溝の位置も水の中では見えず、タイヤが落ちて動けなくなるケースがあります。

リスク②:アンダーパス(立体交差の低い部分)への進入

アンダーパス(道路が低くなっている立体交差部分)は洪水時に極めて危険な場所です。内水氾濫・洪水の際にアンダーパスには大量の水が流れ込み、短時間で深い浸水になります。

「少し前まで通れた」という状況から急激に水位が上昇することがあります。国土交通省の統計では「アンダーパスでの水没による自動車の死亡事故」が毎年のように発生しています。

大雨・洪水時にはアンダーパスには絶対に進入しないことを徹底してください。

リスク③:渋滞による立ち往生

避難勧告・避難指示が出ると、多くの住民が一斉に車で避難しようとします。その結果、道路が渋滞して動けなくなることがあります。

渋滞中に水位が上昇して車を捨てて逃げなければならない状況になることがあります。その場合、渋滞した道路上での歩行避難は浸水・流れる車・その他の危険にさらされます。

リスク④:警戒レベルが高い状況での車での避難は危険

内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では「避難行動を判断するための警戒レベル」が定められています。

警戒レベル3(高齢者等避難)の段階での「徒歩または車での早期避難」は有効です。しかし警戒レベル4(避難指示)の段階で「すでに道路が浸水している場合」は車での移動が危険になります。

浸水が始まってから車で逃げようとすることの危険性を正しく認識してください。

洪水時に車を使ってよいタイミング

車での避難が有効なのは「浸水が始まる前」です。具体的には以下のタイミングが目安です。

  • 大雨警報・氾濫注意報の段階(警戒レベル2):まだ道路が乾いている段階での移動
  • 高齢者等避難(警戒レベル3)発令直後:早めの避難行動として車での移動は有効
  • 道路に水が見え始めたら徒歩に切り替える:少しでも浸水が見られたら車での走行は危険と判断する

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水没した車からの脱出方法

万が一、車が水没した場合の脱出方法を知っておくことが命を守ります。JAF・消防庁は「水没した車からの脱出方法」として以下を推奨しています。

脱出の4つのステップ

ステップ1:シートベルトを外す

車が水没し始めたら、最初にシートベルトを外します。パニック状態でシートベルトのバックルを操作するのは難しいため、冷静に・確実に外します。

シートベルトカッター付きの緊急脱出ツールを手の届く場所に置いておくと安心です。

ステップ2:窓を開ける(電動窓は浸水前に)

電動式のパワーウィンドウは、浸水が進むと電気系統が浸水して動かなくなります。

車が水に浸かり始めた段階で「すぐに電動窓を全開にする」ことが重要です。すでに電動窓が動かない場合は、次のステップ(ガラスを割る)に移ります。

ステップ3:ガラスを割る

窓が開かない場合は、緊急用ガラスハンマーでサイドガラスを割ります。割る位置は「ガラスの端(角)」です。

中央を叩いても割れにくいため、必ずガラスの角を叩いてください。ヘッドレストの金属部分でも割れることがありますが、専用のガラスハンマーの方が確実です。

⚠️ フロントガラスは割れにくい
フロントガラスは「合わせガラス」という特殊な構造で、素手・ハンマーで割ることは非常に困難です。
脱出はサイドガラス(側面の窓)またはリアガラスから行うのが原則です。
緊急脱出ツール(ガラスハンマー)は必ずサイドガラスの角に向けて使用してください。

ステップ4:水圧が均等になってからドアを開ける

車内に水が流入している間は、外の水圧が高くドアが開きません。車内の水位が外の水位と同じになった時点で、水圧が均等になりドアを開けやすくなります。

この「車内が水でほぼ満たされた状態」でドアを開けて脱出します。この方法は心理的に非常に難しいですが、窓からの脱出が難しい場合の最終手段です。

脱出後は水中をできるだけ水流に逆らわず、近くの壁・橋桁などにつかまりながら安全な場所を目指します。

緊急脱出ツールは必ず車内に常備する

以上の脱出方法を実行するために、車内には「緊急脱出ツール(ガラスハンマー+シートベルトカッター)」を必ず常備してください。

ステアリングコラム・サンバイザー・ドアポケットなど「すぐ手が届く場所」に固定しておくことが重要です。グローブボックスの中に入れると、浸水・パニック時に取り出せない場合があります。

洪水から車を守る事前対策

📎 あわせて読みたい関連記事

「車が浸水する前に何ができるか」という視点での事前対策を解説します。

対策①:気象情報・洪水情報を事前にチェックする

洪水による車の浸水被害の多くは「事前に気象情報を確認していれば防げた」ケースです。台風・大雨が予想される際は、以下の情報源を定期的に確認してください。

  • 気象庁の天気予報・大雨情報:48〜72時間前から台風の進路・降水量の予測が確認できる
  • 国土交通省の川の防災情報:全国の河川の水位・流量をリアルタイムで確認できる
  • ハザードマップポータルサイト:自宅・駐車場の洪水リスクを事前に確認する
  • 自治体の防災メール・プッシュ通知:避難情報・警戒レベルの発令をリアルタイムで受信する

対策②:駐車場の洪水リスクを把握する

自宅の駐車場・普段利用する駐車場が「洪水浸水想定区域」に含まれているかどうかを事前に確認してください。

ハザードマップで「浸水深0.5m以上」の地域にある駐車場は、台風・大雨時の浸水リスクが高いです。特に以下のような駐車場は洪水リスクが高いため要注意です。

  • 地下駐車場・機械式地下駐車場:浸水時に急激に水が流れ込み、車が全損するリスクが非常に高い
  • 川・水路の近くの低地にある駐車場:氾濫した水が最初に流れ込む場所になりやすい
  • アンダーパス付近の駐車場:アンダーパスに水が溜まると周辺駐車場も浸水しやすい
  • 傾斜地の下部にある駐車場:上流から流れてきた水が集まりやすい

対策③:台風・大雨前に車を高台・安全な場所に移動する

大雨・台風が予報されたら、浸水リスクの高い駐車場から「より高い場所・安全な場所」に車を移動させることが最も確実な対策です。移動先の候補として以下を検討してください。

  • 立体駐車場の上層階:地上から高い場所に駐車することで浸水を避けられる
  • 高台にある駐車場・広場:ハザードマップで「浸水想定なし」の地域にある高台
  • 友人・知人・親族の高台にある駐車場:事前に相談しておく

車の移動は「大雨が降り始める前」に完了させることが重要です。雨が降り始めてから移動しようとすると、視界の悪化・道路混雑・浸水の開始で危険な状況になります。

対策④:地下駐車場利用者は特に早めの行動を

地下駐車場を利用している方は「最も迅速な行動」が必要です。地下駐車場への浸水は急激で、気づいたときには出入口が水没していることがあります。

大雨注意報・氾濫注意報が発令された段階(警戒レベル2以上)で車を地上に移動させることを強くおすすめします。

マンション・ビルの管理組合・管理会社と事前に「大雨時の地下駐車場の対応ルール」を確認しておくことも重要です。

対策⑤:車両保険(水災補償)に加入しているか確認する

洪水・台風による車の浸水被害に備えるためには「車両保険の水災補償」への加入が重要です。詳しくは後述しますが、事前に保険の内容を確認しておくことが対策のひとつです。

浸水した車の正しい対処法:絶対にやってはいけないこと

車が浸水してしまった場合の正しい対処法と、やってはいけないことを解説します。誤った対処をすると、被害が拡大したり・保険が適用されなくなったりすることがあります。

絶対にやってはいけないこと①:浸水後にエンジンをかける

これは最も重要な「やってはいけないこと」です。水が引いた後、「とりあえずエンジンをかけてみよう」と試みる方が多いですが、これは厳禁です。

エンジン内部・吸気系に水が残っている状態でエンジンをかけると「ウォーターハンマー現象」が起きてエンジンを破壊します。

エンジンをかける前に必ず専門の整備士・JAFに点検を依頼してください。

絶対にやってはいけないこと②:電装品のスイッチを入れる

ライト・エアコン・パワーウィンドウ・カーナビなどの電装品のスイッチを入れてはいけません。電気系統に水が残っている状態でスイッチを入れると、ショート・火災のリスクがあります。

ハイブリッド車・電気自動車の場合は特に危険です。高電圧バッテリーへの浸水は感電・火災の原因になります。

ハイブリッド車・電気自動車が浸水した場合は、バッテリーに触れず・電源を入れず、直ちに販売店・メーカーに連絡してください。

絶対にやってはいけないこと③:車内の水を自分で排出しようとする

車内に入った水を自分でバケツ・スポンジで除去しようとする方がいますが、浸水後すぐの車内作業には感電・漏電のリスクがあります。

電気系統が乾燥する前に車内で金属部品・電気系統に触れることは危険です。車内の清掃は専門の業者に依頼することをおすすめします。

正しい対処①:バッテリーのマイナス端子を外す

車が浸水した場合、できるだけ早くバッテリーのマイナス端子を外すことで電気系統へのダメージを最小限にできます。

ただし、すでに電気系統が浸水している状態での端子の取り外しは感電リスクがあります。水位が下がり・車体が安全に近づける状態になってから行ってください。

ハイブリッド車・電気自動車は高電圧バッテリーがあるため、一般の方がバッテリー端子に触れることは危険です。必ず専門家に依頼してください。

正しい対処②:被害状況を写真・動画で記録する

清掃・修理を始める前に、浸水状況・被害状況を写真・動画で詳細に記録します。この記録が保険請求・修理見積もりの際に重要な証拠になります。記録すべき内容は以下の通りです。

  • 浸水深を示す車体の水位痕
  • エンジンルーム・車内・トランクの浸水状況
  • 電装品・ナビ・シートの状態
  • 車の外観全体(4方向から)
  • 駐車場・周辺道路の浸水状況(車だけでなく環境も記録)

正しい対処③:保険会社・JAFに早めに連絡する

被害状況を記録したら、できるだけ早く保険会社・JAFに連絡します。JAFは水害時の車のレッキング(レッカー移動)に対応しています。

浸水した車を自走させることは、エンジン・ブレーキへのさらなるダメージを与えるため、必ずレッカー移動で整備工場に運んでください。

浸水した車の保険請求・修理の知識

洪水による車の浸水被害は「車両保険(車両保険特約の水災補償)」の対象になる場合があります。ただし、すべての車両保険が水災を補償するわけではありません。

車両保険の種類と水災補償の関係

保険の種類 水災(洪水・浸水)の補償 注意点
一般型(総合型)車両保険 補償される(水災・洪水・浸水による損害が対象) 保険料は高めだが補償範囲が広い
エコノミー型(限定型)車両保険 補償されないことが多い(水災を対象外としているプランが多い) 保険料は安いが洪水・水災は対象外のことが多い。要確認
車両保険未加入 補償なし 修理費用はすべて自己負担になる

✅ 今すぐ確認:自分の車両保険は水災を補償しているか
台風・大雨シーズンが来る前に、加入中の車両保険の補償内容を確認してください。
確認方法:
1. 保険証券の「補償内容一覧」を確認する
2. 保険会社のコールセンターに「洪水・水災による車の損害が補償されるか」を確認する
3. 保険代理店に問い合わせる
エコノミー型(限定型)の場合は一般型への変更・水災特約の追加を検討してください。

保険請求の流れ

  1. 被害状況の記録(写真・動画):修理・清掃前に必ず記録する
  2. 保険会社への事故報告の連絡:早めに連絡する。多くの保険会社は24時間対応の事故受付窓口がある
  3. 保険会社の損害調査員による現場確認:大規模水害の場合は調査員が来るまで時間がかかることがある
  4. 修理見積もりの取得:保険会社指定の修理工場または自分で選んだ工場で見積もりを取る
  5. 保険金の支払い:査定額が確定次第、保険金が支払われる

浸水車が「全損」になるケース

浸水の程度が深刻な場合、修理費用が車両の時価を超えることがあります。

この場合「全損(ぜんそん)」と判定され、修理ではなく「車両の時価相当額が保険金として支払われる」ことになります。

エンジン・ECU・電装系統が全損になるような深い浸水では、修理費用が数十万円〜車両価格を超えることもあります。

自治体の罹災証明書・被災者支援制度の活用

洪水で車が全損・大きな損害を受けた場合、自治体から「罹災証明書」を取得することで各種支援制度の申請ができます。

被災者生活再建支援制度の申請・住宅ローンの猶予・各種行政支援の申請に罹災証明書が必要になる場合があります。

被害が確認できる段階で市区町村の窓口に申請してください。

水没した車を、そのまま置いておけない理由

被害の直後には見落とされがちですが、動かせなくなった車は、それ自体が復旧の妨げになります。

2026年8月の千葉県の豪雨では、千葉市内の路上におよそ2500台の車が残されました。緊急車両が通れなくなるため、8月14日に区間の指定が行われ、翌15日からレッカー車による撤去が進められています。状況は令和8年8月千葉豪雨の記録にまとめました。

自分の車が動かせなくなったら

一、エンジンをかけない。この記事で書いたとおりです。かけることで被害が広がります。

二、写真を撮る。水の跡の高さがわかるように撮ってください。レッカーで移動される前に、記録を残しておくことが大切です。

三、保険会社とレッカーの手配を、同時に進める。車両保険にはレッカー費用の補償がついていることがあります。自分で手配してしまう前に確認してください。

四、自治体の案内を確認する。大規模な災害では、自治体がレッカーの貸与や撤去の支援を行うことがあります。

自動車保険に入っていても、水没では出ないことがあります

ここは、必ず確認していただきたい点です。

自動車保険は、複数の補償をまとめた契約の総称です。対人賠償、対物賠償、人身傷害、そして車両保険。このうち自分の車の損害を補償するのは、車両保険だけです。

つまり「自動車保険には入っている」というだけでは、水没した自分の車の修理費は出ません。自賠責保険も、他人を死傷させた場合の補償ですので、自分の車の損害は対象外です。

火災保険や共済も含めた全体像は洪水の被害は保険で補償される?火災保険・車両保険・共済の水災補償と請求手順にまとめています。

車が使えないあいだの移動

見落とされやすい補償があります。車両保険には、代車費用やレンタカー費用の特約がついていることがあります。通勤や通院に車が必要な方は、修理の相談と一緒に確認してください。

被災後の手続きは、車だけでは終わりません

車の損害は、被災後にやることの一部です。罹災証明書の申請はこちら、手続き全体の順番は被災した後にやることの全体像にまとめました。

浸水車を中古で購入するリスクと見分け方

洪水被害の多かった年の翌年は「浸水車(水没車)が中古車市場に流れる」ことがあります。浸水車と知らずに購入すると、短期間で重大な故障が多発することがあります。

浸水車を購入するリスク

  • 電気系統の突然の故障:エンジンが突然止まる・電装品が誤作動するなどのトラブルが短期間で多発する
  • ブレーキの異常:ブレーキパッドへの泥・サビの付着で制動力が低下する
  • エアコンからのカビ臭:エアコンダクト内のカビが車内に散布される
  • 車体の腐食・サビ:フレーム・ボディの内部にサビが発生して耐久性が大幅に低下する
  • エンジンのパフォーマンス低下・突然のエンジン焼き付き

浸水車の見分け方

浸水車を見分けるポイントを以下にまとめます。ただし、悪質な業者は浸水車を徹底的に清掃・修復して見分けにくくすることがあります。中古車購入時は必ず第三者機関による車両状態確認を依頼してください。

自分でチェックできるポイント

  • 車内の水位痕(ウォーターライン)を確認する:ドアの内側・シートの下・トランク内部に水が浸かった痕(泥・変色)がある場合は要注意
  • シートレールのサビを確認する:シートを動かすレールが茶色くサビていたら浸水の可能性が高い
  • カーペット・フロアマットの状態を確認する:新品に交換されていても、カーペットの下にサビ・腐食・カビ臭が残ることがある
  • 電装品の動作確認をする:パワーウィンドウ・電動ミラー・エアコン・カーナビ・室内灯をすべて動作確認する
  • エンジンルームの配線を確認する:電気配線に白い粉(電食による腐食)や泥の跡がある場合は浸水の可能性がある
  • 燃料給油口の内側を確認する:給油口の内側に泥が入り込んでいる場合は浸水車の可能性がある

専門家・第三者機関によるチェック

  • 日本自動車査定協会(JAAI)の査定を利用する:浸水車・事故車のチェックを専門家が行う
  • 車歴情報サービス(カーチェック等)で車両の過去の修理歴・事故歴を確認する
  • 信頼できる整備工場でリフトアップして車体下部を確認する:車体下部の腐食・泥の付着状況を確認する

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洪水・水害に関する車の防災まとめ

この記事で解説した内容のポイントをまとめます。

  • 洪水で車は「浸水深30cmで走行不能・60cmで浮いて流される」ほど水に弱い
  • 現代の電子部品が多い車ほど、浸水による電気系統ダメージが深刻になる
  • 車での避難は「浸水が始まる前」のみ有効。浸水した道路での走行は命がけ
  • アンダーパスへの進入は大雨・洪水時には絶対に避ける
  • 水没した車から脱出するために「緊急脱出ツール(ガラスハンマー)」を車内に常備する
  • 浸水後は「エンジンをかけない・電装品のスイッチを入れない」が鉄則
  • 台風・大雨前に車を高い場所に移動させることが最善の対策
  • 車両保険の「水災補償」の有無を今すぐ確認する

洪水から車を守る最善策は「事前の情報収集と早めの行動」です。

台風・大雨シーズンの前に、自宅駐車場のハザードマップ確認・保険内容の見直し・緊急脱出ツールの車内常備を必ず行ってください。

防災ベースでは今後も洪水・水害から車・家・命を守るための防災情報をお届けしていきます。

浸水時の車内脱出アイテム

🛒 カテゴリ別・おすすめアイテム

車が水没した際の脱出に備えておきたいアイテムです。

🔨 Wovte 車用緊急脱出ハンマー

窓ガラスの破砕とシートベルトカットができる緊急脱出ツールです。運転席に常備しておくと安心です。

🔦 GENTOS 防水LEDライト

夜間・水中でも使える防水仕様のライトです。

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大雨・洪水の全体像

大雨と洪水の全体像は大雨・洪水の完全ガイドにまとめました。水は三方向から来ます。川からあふれる外水氾濫、排水が追いつかない内水氾濫、そして高潮。「川から離れているから安全」は成り立ちません。本流の水位で支流があふれるバックウォーター現象や、浸水3メートルで垂直避難が成り立たなくなる理由も扱っています。

保険は、見直せていますか

火災保険は2022年10月から最長5年に短縮され、更新の時期を迎える人が増えています。2024年10月には参考純率が全国平均で過去最大の13%引き上げとなり、水災料率は1等地から5等地の5区分に細分化されました。

確認すべきは三つ。水災補償を外していないか、家財の契約があるか、免責金額はいくらか。「保険に入っていたのに出なかった」の多くは、このどれかが原因です。手順は火災保険の見直し方にまとめました。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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