洪水で断水が起きる理由と対策完全ガイド|断水期間・安全な飲料水の確保・復旧までの正しい対応を徹底解説【2026年最新版】
「洪水なのに、なぜ水道が使えなくなるの?」「断水はいつまで続くの?」「飲料水はどこで手に入るの?」「水が出ても、そのまま飲んでいいの?」
洪水の後、こうした疑問・困惑を感じる方は少なくありません。「洪水(大量の水)が来たのに、なぜ水道が止まるのか」は、直感的にわかりにくい問題です。
しかし実際の洪水後には「断水」が高い確率で発生します。過去の大規模水害でも「洪水後の断水が数日〜数週間続いた」事例が多数報告されています。
洪水後の断水は「水が飲めない・料理できない・トイレが使えない・手洗いできない」という深刻な生活支障をもたらします。
さらに「水道の水が出ているのに飲んではいけない」という「濁り水・汚染水」の問題も発生します。洪水時の断水への正しい備えと対応を知ることが、命と健康を守るための重要な防災知識です。
この記事では以下の内容を、厚生労働省・国土交通省・水道技術研究センター・内閣府・日本水道協会の公的資料をもとに徹底解説します。
- 洪水後に断水が起きる理由(仕組みを詳しく解説)
- 洪水後の断水期間の目安
- 断水中の飲料水の確保方法(給水所・ペットボトル備蓄・浄水器等)
- 断水時のトイレ・衛生管理の対応
- 洪水後の「水が出ても飲んではいけない」問題と安全確認方法
- 水道復旧後にやるべきこと(配管の洗浄・水質確認)
- 洪水・断水に備えた平時の水の備蓄方法
- 行政の給水支援・応急給水の仕組み
【情報の出典について】
本記事は厚生労働省「水道の耐震化・災害対策」・厚生労働省「大規模災害時における水道の応急給水・応急復旧マニュアル」・水道技術研究センター「水災害時の水道対応」・日本水道協会「阪神・淡路大震災の教訓と水道復旧記録」・内閣府「防災白書」・国土交通省「洪水被害の記録」等の公的資料にもとづいています。防災ベース編集部が専門的な内容をわかりやすく解説しました。
洪水後に断水が起きる理由:5つのメカニズム
「洪水が来たのになぜ断水するのか」は、多くの方が抱く疑問です。洪水後の断水は1つの原因ではなく「複数のメカニズムが組み合わさって起きる」ものです。主要な5つの原因を解説します。
原因①:浄水場・取水施設の浸水・機能停止
水道水は「取水→浄水処理→配水」というプロセスで家庭に届きます。
この流れの出発点である「取水施設(河川・地下水からの取水ポンプ・取水堰)」や「浄水場(水を安全に処理する設備)」が洪水・浸水によって機能を停止することがあります。
浄水場が浸水すると「処理設備の電気系統・ポンプ・薬品注入設備」が水没・破損します。浄水処理ができなくなると、たとえ取水はできても「安全な飲料水として送り出せない」状態になります。
また、洪水で河川水が著しく濁った場合「通常の浄水処理では対応しきれないほど高濁度の原水」が取水されることがあります。
この場合、浄水場が正常でも「浄水処理能力の超過→取水停止→断水」という事態になります。
原因②:配水管・送水管の破損・破裂
洪水に伴う「地盤の軟化・地盤沈下・土砂崩れ・流木・車両の衝突」などにより、地中に埋設された水道管(配水管・送水管)が破損・破裂することがあります。
水道管が破損すると、そこから水が漏れ出し「配水圧が低下→水道が出なくなる」断水状態になります。
また、破損した管から汚染水・土砂が侵入することで「水道水の水質汚染」が起きることもあります。地中の水道管は目視では確認できないため、洪水後の配管破損の発見・修繕には時間がかかります。
原因③:停電による揚水ポンプの停止
水道水を配水するためのポンプ設備は「電力によって動く」ものが大半です。洪水・台風による停電が発生すると、水道施設のポンプが停止し「配水できない状態=断水」になることがあります。
大規模な停電では「発電機・蓄電池による非常用電源」も枯渇し、長期間の断水につながることがあります。
特に「高台に配水するための加圧ポンプ」が停止すると、高層マンション・高台住宅では先に断水が起きます。
原因④:意図的な「予防的断水措置」
洪水の危険が迫っている段階で、水道事業者が「被害を最小限に抑えるための予防的措置として意図的に断水する」ことがあります。
これは「浸水による設備破損・汚染水の混入を防ぐために、配水を事前に停止する」措置です。「まだ洪水が来ていないのに断水した」という状況は、この予防的断水措置によるものです。
予防的断水は「洪水後の水道復旧をより早くするための先手的な判断」ですが、住民には急な断水として伝わることがあります。
原因⑤:水質汚染を防ぐための断水措置
洪水後に「水道水の色・臭いが変化した」「水に濁りや異物が混入した」という報告が多く寄せられた場合、水道事業者が「安全確認が取れるまでの間、配水を停止する」判断をすることがあります。
これは「汚染された水を住民に届けないため」の安全措置です。水質検査の結果が確認されるまでの断水は「数日間」にわたることがあります。
洪水後の断水期間の目安
「断水はどのくらい続くのか」は、被害の規模・水道設備の状況・復旧要員の数によって大きく異なります。過去の水害事例と厚生労働省の記録をもとに目安を示します。
| 被害の種類・規模 | 断水期間の目安 | 主な事例 |
|---|---|---|
| 軽微な浸水・停電のみ | 数時間〜1〜2日 | 停電が復旧すれば水道も復旧するケース |
| 浄水場の軽微な浸水・配管の一部破損 | 2〜7日 | 2018年西日本豪雨(一部地域)・2019年台風19号(一部地域) |
| 浄水場の大規模浸水・広範囲の配管破損 | 1〜3週間 | 2015年関東・東北豪雨、2020年熊本豪雨(球磨川流域) |
| 浄水場の全壊・インフラの壊滅的被害 | 1ヶ月以上(場合によっては数ヶ月) | 東日本大震災に伴う洪水・津波被害地域 |
厚生労働省の過去の大規模水害対応記録では「浄水場の浸水被害がある場合、完全復旧まで平均10〜20日を要した」事例が複数あります。
「1〜2日で水道が復旧するだろう」という楽観的な見通しではなく「最低でも1週間、場合によっては数週間の断水」を想定した備えが必要です。
⚠ 断水期間の情報は自治体の公式情報で確認する
「いつ断水が解消されるか」の情報は、住んでいる市区町村・水道事業者の公式発表が最も正確です。
SNSのデマ・不確かな情報に惑わされないよう、市区町村の防災メール・公式ウェブサイト・NHKのニュースで最新情報を確認してください。
また「復旧の見通しが立っていない段階では、根拠のある断水終了日は公表されない」ことを理解しておいてください。
断水中の飲料水の確保方法
断水中に「安全な飲料水を確保する」方法を優先順位の高い順に解説します。
①自治体・水道事業者の応急給水所を利用する
大規模断水が発生した場合、水道事業者・市区町村は「応急給水所(給水ステーション)」を設置します。
応急給水所では「浄水済みの安全な飲料水」が無償または低価格で提供されます。
応急給水所の場所・開設時間は「市区町村の防災メール・公式ウェブサイト・防災行政無線・NHKラジオ」で告知されます。
給水所には容器(ポリタンク・ペットボトル・バケツ等)を持参してください。
応急給水所での給水量の目安
日本水道協会の「応急給水マニュアル」では「断水時に1人1日あたり最低3リットルの飲料水が必要」とされています。
これは「飲料水と最低限の調理用水」を合わせた量です。衛生面(手洗い・歯磨き・清拭等)を含めると「1人1日10〜15リットル以上」が理想的な確保量です。
給水所での給水量は「1人あたり1日10〜20リットルが上限」と定められていることが多いため、確認してください。
②事前に備蓄したペットボトル飲料水を使う
平時に備蓄した「市販のペットボトル飲料水(2L・500mL等)」が断水時の最も手軽で確実な飲料水源です。
厚生労働省・内閣府は「1人あたり最低3日分(9リットル以上)、できれば7日分(21リットル以上)の飲料水備蓄」を推奨しています。
4人家族であれば「7日分で84リットル(2Lペットボトル42本)」が目安です。「備蓄しているペットボトルの期限を定期的に確認・更新する(ローリングストック法)」ことが重要です。
③給水車による配給を待つ
応急給水所まで移動が困難な地域・高齢者・障害者がいる家庭には「給水車による巡回配給」が行われることがあります。
給水車の巡回スケジュールは自治体の公式情報で確認してください。
給水車が来た際は「できるだけ多くの容器に分けて受け取る」ことで、次回の巡回まで十分な水量を確保できます。
④井戸水・湧き水の利用:注意が必要
洪水後に「近くの井戸水・湧き水を飲もう」と考える方がいます。しかしこれは非常に危険です。洪水後の井戸水・湧き水は「洪水によって汚染されている可能性が極めて高い」状態です。
大腸菌・病原性大腸菌・レジオネラ菌・ノロウイルス・カンピロバクターなどの病原微生物に汚染されている可能性があります。
「見た目がきれいに見える」「臭いがない」という状態でも病原菌が存在することがあります。
保健所・水道事業者による「水質検査の結果が安全と確認されるまで」は、井戸水・湧き水を飲料・調理に使用することは避けてください。
⑤飲料水を作る:浄水器・煮沸
手元に水道水(水質不明・微生物汚染の懸念がある場合)または雨水がある場合、以下の方法で飲料水として使用できる可能性があります。
煮沸(ふっとう)処理
煮沸は「病原性微生物(細菌・ウイルス等)を死滅させる最も確実な方法」です。厚生労働省は「水を1分間以上沸騰させることで病原微生物を死滅させられる」としています。
高地(標高3,000m以上)では沸点が下がるため3分以上の沸騰が必要ですが、日本の一般的な居住環境では1分間の沸騰で十分です。
ただし煮沸は「病原微生物には有効」ですが「化学物質・重金属・農薬等の化学的汚染には効果がない」点に注意してください。
洪水後の水は「化学物質汚染(農薬・工場排水等)の可能性もある」ため、煮沸だけでは完全には安全とはいえません。
携帯浄水器・浄水タブレット
アウトドア・防災用の携帯浄水器(フィルター型・中空糸膜型等)は「細菌・原虫などの微生物除去」に有効です。
携帯浄水器は防災グッズとして事前に備蓄しておくことをおすすめします。
ただし「携帯浄水器の種類によって除去できる物質が異なる」ため、購入時に「除去対象物質」を確認してください。
ウイルス(ノロウイルス等)まで除去できる浄水器は「限られた高性能製品のみ」です。
浄水タブレット(次亜塩素酸ナトリウム系・ヨウ素系)も「細菌・ウイルスの殺菌」に有効ですが、用法・用量の厳守が必要です。
断水時のトイレ対応:最も重要な衛生問題
断水時に多くの方が最も困るのが「トイレ」です。飲料水の不足よりも「トイレが使えない問題」のほうが精神的・衛生的に深刻なケースが多いです。
断水中のトイレの使い方
水洗トイレは「水を流せれば使える」
断水中でも「バケツに溜めた水をトイレの便器に流す(バケツ法)」ことで水洗トイレを使用できます。一般的な水洗トイレを1回流すのに必要な水量は「約6〜13リットル」です。
ただし「下水道が機能している(配管が破損していない・下水処理場が動いている)」ことが前提です。
洪水後は「下水道も被害を受けている可能性がある」ため、不用意に大量の水を流すことで「下水が逆流する」リスクがあります。
「下水道が使えるかどうか」は自治体・水道事業者の情報で確認してください。
下水道が使えない場合:簡易トイレ・携帯トイレを使う
下水道が機能していない場合は「簡易トイレ・携帯トイレ」を使用します。携帯トイレとは「凝固剤と袋がセットになった、排泄物を固めて密封できる使い切りトイレ」です。
使用後は密封して「可燃ごみ(自治体の指示に従う)」として処分します。
内閣府・東京都は「1人あたり1日5回×最低7日分=35枚の携帯トイレを備蓄する」ことを推奨しています。4人家族であれば最低140枚の備蓄が目安です。
断水中のトイレに「水道水を使わない」ための工夫
断水中に「貴重な飲料水をトイレに使わない」ための工夫として以下が有効です。
- お風呂の残り湯をバケツに汲んでおいてトイレ用水として活用(断水前の最重要行動のひとつ)
- 雨水をバケツ・ポリタンクに溜めてトイレ用水として活用
- 携帯トイレを積極的に使用して水道水の消費を抑える
内水氾濫・高潮時の「トイレからの逆流問題」
内水氾濫(都市型水害)や高潮の場合、「下水道の水圧が上昇してトイレ・排水口から汚水が逆流する」という問題が発生します。
この逆流は「洪水後の断水」とは別の問題です。「下水逆流が懸念される状況では、トイレを使用しない」ことが重要です。
トイレの逆流対策には「専用の逆流防止プラグ・逆流防止弁」を事前に備蓄・設置することが有効です。
断水時の衛生管理:感染症を防ぐために
断水が長期化すると「手洗い・清潔な環境の維持」が困難になり、感染症リスクが高まります。洪水後の衛生管理で特に重要な点を解説します。
手洗いの代替手段を確保する
断水中に最も重要な衛生行動は「手洗い」です。
水が使えない場合でも「手のアルコール消毒(消毒用エタノール・アルコールジェル)」が有効な代替手段になります。
厚生労働省は「感染症予防のため、消毒用アルコールを常に携帯・使用すること」を洪水後の衛生管理の基本として推奨しています。
食事前・トイレ後・洪水の泥水に触れた後は必ずアルコール消毒を行ってください。
洪水後の泥水には「大腸菌・レジオネラ菌・ヘドロに含まれる有害物質」が含まれている可能性があります。
素手で泥水・浸水した物品に触れた後は特に念入りな消毒・手洗いが必要です。
食器洗いの代替手段
断水中に食器を洗う水が不足する場合の対応策は以下の通りです。
- 使い捨て食器・紙コップ・割り箸の活用:食器の洗浄が不要になる。断水時の備蓄品として有効
- ラップを活用する:皿・鍋にラップを張って使用することで食器の汚れを防ぎ、洗浄水を節約できる
- 少量の水で拭き洗い:食器洗いに必要な最低限の水で拭き取りを行い、残りをキッチンペーパーで吸わせる
洗濯・入浴の代替手段
断水中は「入浴・洗濯」もできなくなります。長期間の断水では「体を拭く・着替えを行う」ことで清潔を維持することが重要です。
- ウェットティッシュ(ノンアルコール・アルコール両タイプ):体を拭いて清潔を維持する
- ドライシャンプー:水なしで頭皮・髪を清潔に保つ
- 着替え(多めの下着・肌着の備蓄):着替えを頻繁に行うことで清潔を維持する
洪水後の「水道が出ても飲んではいけない」問題
洪水後に「水道の蛇口から水が出た」という場合でも「すぐに飲んでよい」とは限りません。これは洪水後の水道において最も注意が必要な問題のひとつです。
なぜ水道の水が出ても危険なのか
洪水後に「水道の蛇口から水が出ている」状態でも以下の問題が生じていることがあります。
- 管内への汚染水の侵入:洪水による水道管破損・低水圧状態の時に、管外の汚染水(泥水・下水)が管内に侵入している可能性がある
- 残留塩素の低下:洪水・停電による浄水処理の停止で、水道水中の残留塩素(殺菌効果)が低下している可能性がある
- 浄水場の水質トラブル:浄水処理が正常に行われていない状態の水が配水されている可能性がある
「水道水の安全宣言」が出るまで飲まない
洪水後は「水道事業者・市区町村から『水道水は安全に飲めます』という公式の安全宣言(飲料可能の通知)が出るまで」は、水道水を飲料・調理に使用しないことが基本原則です。
安全宣言が出るまでの期間は「水質検査の実施と結果確認」が必要なため、数日〜1週間以上かかることがあります。
「水が透明に見える・普通の臭いがする」という外見上の判断だけで安全を確認することはできません。
水道水の安全を自分で確認する方法(補助的な方法)
以下は「水道事業者の安全宣言を待ちながら、補助的に確認できる方法」です。
これらは「公式の水質検査の代替」にはなりません。
- 残留塩素の確認:市販の「残留塩素測定キット(プールの水質検査と同じもの)」で水道水の残留塩素を測定する。一般的に「0.1mg/L以上」あれば最低限の消毒効果があるとされる(水道法の基準)
- 外観・臭いの確認:水道水に明らかな濁り・異臭・異物が確認される場合は使用しない。外観が正常でも安全とはいえないことに注意
水道復旧後にやるべきこと:正しい「通水作業」と水質確認
断水が解消され「水道が復旧した」という情報が出た後にも、適切な手順が必要です。「復旧=すぐに飲んでいい」ではありません。
①水道の蛇口を開ける前に
水道復旧の通知が出た後、蛇口を開ける前に「水道事業者・市区町村から『飲料水として使用できる』という正式な安全宣言が出ているか」を必ず確認してください。
「断水は解消されました(水が出るようになりました)」という通知と「飲料水として安全です」という通知は別のものです。
②配管の洗い流し(フラッシング)を行う
水道が復旧した直後は「管内に溜まっていた空気・さびた水・汚れ」が最初に出てくることがあります。
水道事業者は「蛇口から水を5〜15分程度出し続けて管内の水を入れ替えてから使用するよう(フラッシング)」に指示することがあります。
フラッシングの方法は以下の通りです。
- 家の中で「最も外側の蛇口(メーターに近い場所の蛇口)」から順に開ける
- 最初は濁った水・さびた水・空気が混じった水が出ることがある。そのまま出し続ける
- 水が透明になり・安定して出るようになるまで(目安:3〜15分間)水を出し続ける
- その後、水道事業者の指示に従って「水が安全かどうかを確認してから」使用する
③給湯器・浄水器の確認
断水後の復旧時には「給湯器・浄水器・自動製氷機・食器洗い機等」の中に「断水中に空気が入っている・汚染水が入り込んでいる」可能性があります。
給湯器は「製造メーカーの指示に従ったリセット・確認作業」を行ってから使用してください。
浄水器のカートリッジは「断水後には新しいものと交換する」ことをおすすめします。自動製氷機は「断水後に最初に作られた氷は使用せず廃棄する」ことが衛生上の安全策です。
④洗濯機の初回使用時の注意
水道復旧後の初回の洗濯は「空回し(洗濯物を入れずに一度洗濯機を回す)」をしてから洗濯することを推奨します。これにより「洗濯機内の配管に残っていた汚れ・空気を排出」できます。
洪水・断水に備えた平時の水の備蓄方法
「洪水が来てから備える」では遅すぎます。平時の今から「断水に備えた水の備蓄」を行うことが最も効果的な洪水・断水対策です。
飲料水の備蓄の基本:必要量と保管方法
内閣府・厚生労働省が推奨する飲料水の備蓄量の目安は以下の通りです。
- 1人1日あたり:最低3リットル(飲料水・調理用水)
- 7日分の備蓄(推奨):1人あたり21リットル(2Lペットボトル約11本)
- 4人家族の場合(7日分):84リットル(2Lペットボトル約42本)
「7日分の備蓄は多すぎる」と感じるかもしれませんが、前述の通り「洪水後の水道復旧には1〜3週間かかることがある」ため、7日分でも不十分な場合があります。
ローリングストック法で備蓄水を管理する
備蓄したペットボトルの水には「賞味期限(未開封のペットボトル飲料水は一般的に2〜5年)」があります。賞味期限切れの水を大量に廃棄しないための方法が「ローリングストック法」です。
ローリングストック法とは「古いものから順番に日常的に消費しながら、消費した分だけ新しいものを補充する」備蓄管理の方法です。
「防災用として別に保管して期限切れになる」のではなく「日常の中で使い回しながら常に一定量を確保する」考え方です。
水道水の備蓄:ポリタンク・ウォーターバッグの活用
市販のペットボトル以外に「水道水を直接ポリタンク・ウォーターバッグに溜めて備蓄する」方法もあります。
水道水には残留塩素が含まれており、直射日光を避けた冷暗所での保管であれば「3日程度」は飲料水として使用できます。「洪水・大雨の前夜に浴槽に水を溜めておく」ことも有効な緊急対策です。
一般的な浴槽の容量は150〜200リットルであり「4人家族の1日分(生活用水を含む)」に相当する水量を確保できます。
断水に備えた「生活用水」の確保手段
飲料水とは別に「トイレ・掃除・体拭き等に使う生活用水」の確保も重要です。
- お風呂の残り湯:洪水・台風の前に浴槽を満杯にして保管。トイレ用水として活用(飲料・調理には使用しない)
- 大型ウォーターバッグ・ポリタンク(20〜40L):事前に水道水を入れて保管
- 雨水タンク:屋根からの雨水を溜める設備。平時から設置しておくと断水時に生活用水として活用できる
行政による応急給水支援の仕組み
大規模な断水が発生した際、行政はどのように飲料水の供給を行うのでしょうか。
水道事業者による応急給水の体制
断水が発生した場合、水道事業者は「日本水道協会の相互応援協定」に基づいて他の都道府県・市区町村の水道事業者に応援を要請できます。
日本水道協会の「大規模地震等非常時における水道相互応援協定」は「地震・洪水等の大規模災害時に、被害を受けた水道事業者を他の事業者が給水・復旧作業等で支援する」仕組みです。
この協定に基づいて「全国から給水車・復旧要員・資材」が被災地に集まります。
応急給水の3つの段階
厚生労働省の「大規模災害時における水道の応急給水マニュアル」では、応急給水を以下の3段階で実施することが定められています。
- 第1段階(発災直後〜3日間):病院・避難所・要配慮者施設への優先給水。1人1日3リットルを目標に給水車・給水所で供給
- 第2段階(4日目〜7日間):一般住宅・事業所への給水拡大。1人1日20リットルを目標に拡大
- 第3段階(8日目〜水道復旧まで):生活用水の供給。1人1日100リットル以上を目標に段階的に給水量を拡大
給水支援を受けるためにやること
洪水後に給水支援を受けるために住民がやるべきことは以下の通りです。
- 市区町村・水道事業者の公式情報(防災メール・ウェブサイト・NHKラジオ・防災行政無線)で給水所の場所・時間を確認する
- ポリタンク・ペットボトル・バケツ等の給水容器を持参して給水所に行く
- 移動が困難な場合は「給水車の巡回スケジュール」を確認する・または市区町村の福祉担当に「要配慮者への個別給水」を申請する
- 近隣住民との助け合い(移動困難な高齢者・障害者の代わりに給水所で水を受け取る等)を積極的に行う
洪水・断水への備えチェックリスト
平時の今すぐ確認・実践してほしい「洪水・断水への備えのチェックリスト」をまとめます。
【飲料水の備蓄】
- □ 1人あたり7日分(21リットル以上)の飲料水(ペットボトル)を備蓄しているか
- □ 賞味期限を確認し、ローリングストックで管理しているか
- □ ポリタンク・ウォーターバッグを備蓄しているか(生活用水の確保用)
【断水時のトイレ対応】
- □ 1人あたり35枚以上の携帯トイレ(簡易トイレ)を備蓄しているか
- □ 下水逆流対策(逆流防止プラグ等)を準備しているか
【衛生用品の備蓄】
- □ 消毒用アルコール(エタノール70%以上)を十分な量備蓄しているか
- □ ウェットティッシュ(アルコール・ノンアルコール両タイプ)を備蓄しているか
- □ ドライシャンプーを備蓄しているか
- □ 使い捨て食器・紙コップ・割り箸を備蓄しているか
【断水前の行動(台風・大雨の前夜)】
- □ 浴槽を満杯にして水を溜めておく(生活用水として活用)
- □ ポリタンク・ペットボトルに水道水を入れて保管する
- □ 飲料水の備蓄の場所を家族全員で確認しておく
【情報収集の準備】
- □ 市区町村の防災メール・防災アプリに登録しているか
- □ 地元の水道事業者の連絡先・公式ウェブサイトを把握しているか
- □ 手回し充電・ソーラー充電対応の防災ラジオを備蓄しているか
まとめ:洪水後の断水に備えるための知識と行動
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。
- 洪水後に断水が起きる理由:浄水場の浸水・配水管の破損・停電によるポンプ停止・予防的断水・水質汚染対策の5つのメカニズムがある
- 断水期間の目安:軽微な被害で1〜2日、浄水場の大規模被害では1〜3週間以上が目安。「数日で復旧する」という楽観は禁物
- 飲料水の確保:応急給水所・備蓄ペットボトル・給水車の優先順位で確保。洪水後の井戸水・湧き水は危険
- 断水時のトイレ対応:携帯トイレ(1人35枚以上備蓄)・バケツ法。下水逆流に注意
- 水道復旧後の注意:「断水解消」と「飲料可能」は別。水道事業者の公式安全宣言が出るまで飲まない。フラッシングを実施してから使う
- 平時の備蓄:1人7日分21リットル以上のペットボトル飲料水・携帯トイレ35枚以上・消毒用アルコール・ウェットティッシュ・使い捨て食器の備蓄が基本
「洪水が来たのに水道が使えない」という状況は、多くの方にとって想定外の困難です。しかし今回解説したように、洪水後の断水には明確な原因があります。
そして正しい知識と事前の備えがあれば、断水による被害・混乱を大幅に軽減できます。「洪水で断水が起きたとき、自分と家族はどう行動するか」を今日のうちに家族で話し合っておいてください。
今後も洪水・水害から命と暮らしを守るための最新情報をお届けします。

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