放射冷却とは?晴れた朝ほど冷える3つの条件と、凍結を防ぐ前夜の準備

放射冷却とは?晴れた朝ほど冷える3つの条件と、凍結を防ぐ前夜の準備

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【この記事の要約】
放射冷却とは、地面にたまった熱が赤外線として空へ逃げていき、地表付近が冷え込む現象のことです。強まる条件は3つあります。晴れていること、空気が乾いていること、風が弱いこと。雲は布団のような役割をして熱を跳ね返すので、曇りの夜は冷えません。水蒸気も同じ働きをするため、乾いた空気ほど冷えます。風があると空気がかき混ぜられて、これも冷え込みを弱めます。つまり、天気が良くて穏やかな夜ほど、翌朝は冷えるということです。ここに、この現象のいちばん厄介な点があります。危ないのは、荒れた日ではなく、晴れた日の翌朝なのです。大雪警報が出ている日は、誰もが警戒します。しかし雪がやんで晴れた翌朝は、油断します。そこで何が起きるか。路面の凍結、水道管の凍結、農作物の霜害、そして転倒事故です。雪の日より、その翌朝のほうが転倒は増えます。この記事では、放射冷却の仕組みと、前の晩にやっておくべきことを整理します。天気予報で「明日の朝は放射冷却で冷え込みます」と聞いたら、それは今夜のうちに準備しろ、という意味です。

天気予報で、毎年何度も耳にする言葉があります。

「明日の朝は、放射冷却の影響で冷え込むでしょう」

言葉としては知っている。けれど、それを聞いて何をすればいいのかは、あまり説明されません。

私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。北海道では、この現象が一年の半分近く関係します。

そして毎年、同じ場所で同じ事故が起きます。雪が降った日ではなく、その翌朝にです。

なぜそうなるのか。仕組みから書きます。

難しい話にはしません。覚えることは、たった3つの条件だけです。

目次

結論|「明日は放射冷却」と聞いたら、今夜やることがあります

先に結論を書きます。

放射冷却の予報を聞いたら、その日の夜のうちに準備してください。朝になってからでは、間に合いません。

今夜やること 防げること
水を細く出しておく 水道管の凍結・破裂
車のワイパーを立てる ゴムの凍りつきと破損
朝の靴を決めておく 転倒。いちばん多いけがです
家を出る時間を早める 急ぐと転びます。渋滞にも巻き込まれます
玄関前の水気をなくす 凍って滑ります

とくに水道管です。凍っただけなら困る程度ですが、破裂すると家の中が水浸しになります。そして修理には時間もお金もかかります。

これが、夜のうちにしかできない備えです。

どれも数分で終わります。そして、翌朝の被害を確実に減らします。費用もほとんどかかりません。

放射冷却とは何か

言葉を分解すると、意味が見えてきます。

「放射」は、熱が電磁波として出ていくこと。「冷却」は、冷えること。

つまり熱が電磁波として外へ出ていって、冷える現象です。

昼にためて、夜に放す

地面は、昼のあいだに太陽の熱を受けてあたたまります。

そして夜になると、その熱を赤外線という形で空へ放出します。

これは特別なことではありません。あらゆるものが、常に熱を放射しています。人の体も、建物も、地面もです。

昼は、受け取る熱のほうが多い。夜は、出ていく熱のほうが多い。だから夜は冷えます。

問題は、どれだけ逃げるか

放射冷却が話題になるのは、その逃げ方が極端なときです。

熱がどんどん逃げていくと、地面が急速に冷えます。そして地面に接している空気も、一緒に冷えます。

その結果、朝方に、その日いちばんの冷え込みになります。

気温がいちばん低くなるのは、日の出の直前ごろです。日が昇って地面があたたまり始めるまで、冷え続けるからです。

強まる条件は、3つあります

ここが実用的な部分です。この3つがそろった夜は、翌朝が危ない。

条件 なぜそうなるのか
①晴れている 雲がないと、熱がそのまま宇宙へ逃げます
②空気が乾いている 水蒸気が少ないと、熱を跳ね返すものがありません
③風が弱い 空気がかき混ぜられず、冷たい空気が地面近くにたまります

①晴れ|雲は布団の役目をします

雲があると、地面から出た赤外線を跳ね返します。

跳ね返された熱は、また地面に戻ってきます。だから、冷え込みが弱まります。

よく「雲は布団のようなもの」と説明されます。これは、かなり正確なたとえです。

逆に雲ひとつない夜は、布団をかけずに寝るのと同じです。熱がどんどん逃げていきます。

②乾燥|水蒸気も、雲と同じ働きをします

空気中の水蒸気は、雲と同じように赤外線を吸収します。

だから湿った空気の夜は、冷え込みが弱まります。

冬に空気が乾いている地域では、この効果が働きません。結果として、より冷えます。

これが、同じ気温でも冬の朝のほうが刺すように寒く感じる理由のひとつでもあります。

③無風|風は、冷えた空気を吹き飛ばします

地面が冷えると、地面に接した空気が冷えます。

ここで風が吹くと、その冷たい空気が上の暖かい空気と混ざります。

混ざれば、平均化されます。つまり、地面近くだけが極端に冷えることがなくなります。

逆に風がまったくない夜は、冷たい空気が地面近くに層になってたまります。そこがいちばん冷えます。

だから、危ないのは「晴れた翌朝」です

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

大雪の日は、誰でも警戒します。警報が出ます。ニュースが伝えます。予定を変えます。

ところが、雪がやんで晴れた翌朝は、警報が出ていません。

雪の降っている日 晴れた翌朝
見た目 明らかに危ない 穏やかで、安全に見える
警報 大雪警報が出ている 出ていないことが多い
人の意識 全員が警戒している 油断している
路面 雪。滑るが、予想できる 氷。見えないことがある
事故 起きる より多く起きます

雪より氷のほうが滑ります。そして氷は、見えません。

とくに危ないのがブラックアイスバーンです。路面が薄い氷の膜で覆われ、濡れているだけのように見える状態です。

詳しくはブラックアイスバーンの危険に書きました。

放射冷却が起こす、5つの問題

①路面の凍結

もっとも多く、もっとも身近な問題です。

日中に溶けた雪の水が、夜のうちに凍ります。雪がなくても、雨のあとや、洗車の水でも凍ります。

とくに凍りやすい場所があります。

場所 理由
橋の上 下からも冷えるので、路面より先に凍ります
トンネルの出入口 温度差が大きく、水が凍りやすい
日陰 日中も溶けず、氷が残り続けます
交差点の手前 ブレーキで踏み固められ、磨かれて滑ります
マンホールの上 金属は冷えやすい
横断歩道の白線 塗料の上は、もともと滑りやすい

「橋の上」は、とくに覚えておいてください。普通の道路は地面から熱をもらえますが、橋は空中にあるので下からも冷やされます。

②水道管の凍結

おおむね氷点下4度を下回ると、凍りやすくなるといわれています。

ただし、これは目安です。風の当たる場所、日陰、屋外の露出した配管は、それより高い気温でも凍ります。

やっかいなのは、凍ったあとに破裂することです。水は凍ると体積が増えるので、配管を内側から押し広げます。

そして気温が上がって氷が溶けたときに、割れた場所から水が噴き出します。

凍った配管に、熱湯をかけないでください。急な温度差で割れます。タオルを巻いた上から、ぬるま湯をゆっくりかけてください。いちばん安全なのは、自然に溶けるのを待つことです。破裂した場合は、まず水道の元栓を閉めて、水道業者や管理会社に連絡してください。

③霜と、農作物の被害

霜は、放射冷却でできます。

空気中の水蒸気が、冷えた地面や葉の表面で直接氷になったものです。

農作物にとって、これは深刻な問題になります。とくに春先、芽が出たあとの霜は大きな被害を出します。

気象庁は「霜注意報」を出しています。農業に関わる方にとっては、大雪警報と同じくらい重要な情報です。

④転倒

雪の季節にいちばん多いけがは、転倒です。

そして転倒がいちばん多いのは、雪の日ではなく、凍った朝です。

高齢の方が転倒して骨折すると、そこから生活が大きく変わってしまうことがあります。たかが転倒、では済みません。

⑤低温による体への影響

急に寒いところへ出ると、体に負担がかかります。

暖かい部屋から、氷点下の屋外へ。この温度差は、血圧の変動を招きます。

とくに朝は、そのまま除雪作業などの重労働に入ることが多い時間帯です。体が温まっていない状態で、寒いなか力を使う。これは負担が大きくなります。

持病のある方は、無理をなさらないでください。体調に不安があるとき、あるいは作業中に異変を感じたときは、必ず医師にご相談ください。

予報で、どこを見るか

放射冷却そのものは、警報や注意報の名前ではありません。解説のなかで使われる言葉です。

実際に見るのは、次のものです。

見るもの 分かること
翌朝の最低気温 いちばん重要です。氷点下なら凍結を想定する
低温注意報 水道管の凍結や、体への影響に注意
霜注意報 農作物の被害に注意
なだれ注意報 冷え込みのあと気温が上がると出やすい
今夜の天気 晴れ・風が弱い、なら放射冷却が強まります

いちばん簡単な見方をお伝えします。

「今夜は晴れ、風は弱い、明日の最低気温は氷点下」
この3つがそろっていたら、翌朝は路面が凍っていると考えて行動してください。放射冷却という言葉が予報に出てこなくても同じです。

気温は、地面の温度ではありません

ここは、意外に知られていない点です。

天気予報の気温は、地上から1.5メートルほどの高さで測られています。

放射冷却が強い夜は、地面に近いほど冷たい空気がたまります。

つまり気温が3度でも、地面の温度は0度以下ということが起こります。

「気温がプラスだから凍らない」は、成り立ちません。これは、覚えておいてください。

冷え込みやすい場所には、特徴があります

同じ市内でも、場所によって冷え方が違います。

場所 なぜ冷えるのか
盆地 冷たい空気は重いので、底にたまります
谷や窪地 同じ理由。周りより数度低くなることがあります
内陸 海から遠く、海の影響を受けません
郊外・農地 建物や舗装が少なく、熱がたまっていません
市街地の中心部 逆に、冷えにくい。建物や舗装が熱を持っています

冷たい空気が低い場所にたまる現象を、冷気湖と呼ぶことがあります。

盆地の底に、冷たい空気が湖のようにたまるからです。山の中腹より、盆地の底のほうが寒いということが実際に起こります。

ですから市の中心部の予報と、ご自宅のある場所の実際の気温は違うことがあります。とくに郊外や、周りより低い土地にお住まいの方は、予報より低めに見積もってください。

冬日・真冬日という言葉

冷え込みを表す言葉として、次のものが使われます。

言葉 意味
冬日 1日の最低気温が0度未満の日
真冬日 1日の最高気温が0度未満の日

真冬日は、一日じゅう氷点下ということです。

この日は、いったん凍ったものが、日中も溶けません。だから路面の氷は残り続けます。

放射冷却で朝に凍り、真冬日なら日中も溶けず、そのまま次の朝を迎える。こうして、氷は日ごとに厚くなっていきます。

今夜やっておくことの、具体的な中身

水道管

いちばん確実なのは、水を細く出し続けることです。

流れている水は凍りにくいためです。糸のように細くで構いません。

そのほか、屋外の露出した配管に保温材やタオルを巻く方法もあります。ホームセンターで専用のものが売られています。

長く家を空けるときは、水抜きが確実です。やり方は住宅によって違いますので、管理会社や住宅メーカーにご確認ください。

やること 理由
ワイパーを立てる ガラスに凍りつくと、ゴムが切れます
サイドブレーキを引かない 凍りついて解除できなくなることがあります
解氷スプレーを積んでおく お湯をかけるとガラスが割れます
ウォッシャー液を冬用にする 凍ると使えず、視界が確保できません

サイドブレーキについては、車種によって扱いが異なります。取扱説明書をご確認ください。

玄関まわり

夜のうちに、玄関前の水気をなくしておいてください。

雪が残っていれば、それが夜に凍ります。翌朝、自分の家の玄関で転ぶことになります。

そして階段と、その一段目には特に気をつけてください。転倒事故が集中する場所です。

なぜ「今季一番の冷え込み」は、荒天の翌日に来るのか

ニュースで「今季一番の冷え込み」と聞く日には、共通した流れがあります。

強い寒気が入って荒れた天気になり、その寒気が居座ったまま風がやんで晴れる。このときが、いちばん冷えます。

順番 起きること
1 冬型の気圧配置が強まり、寒気が流れ込む
2 日本海側では雪、太平洋側では強い風
3 冬型がゆるみ、風がやむ
4 晴れて、放射冷却が働く
5 翌朝、今季一番の冷え込みになる

寒気そのものと、放射冷却が重なるからです。もともと冷たい空気が入っているところに、さらに熱が逃げていきます。

ですから、大雪や強風のニュースを見た日は、その2日後の朝を意識してください。荒れているあいだより、おさまったあとのほうが気温は下がります。

この流れを知っていると、予報を見なくても見当がつくようになります。荒れた、そして晴れた。ならば明日の朝は冷える。それだけです。

冷え込んだ朝の、家の中の危険

放射冷却の話は、外の話だと思われがちです。しかし、家の中にも影響があります。

暖かい部屋と、寒い場所の温度差

冷え込んだ朝、家のなかには大きな温度差が生まれます。

場所 状態
暖房のある居間 20度前後
廊下 暖房がなく、冷えています
脱衣所 暖房がないことが多く、とくに冷えます
浴室 タイルや壁が冷えています
トイレ 同じく、冷えやすい場所です

この温度差が、体に負担をかけます。

暖かい場所から急に寒い場所へ移ると、体は熱を逃がさないよう血管を縮めます。その結果、血圧が上がります。

そして温かいお湯につかると、今度は血管が広がって血圧が下がります。短い時間のあいだに、大きく変動することになります。

これはヒートショックと呼ばれ、冬に注意が呼びかけられています。

一般的に呼びかけられている対策としては、脱衣所や浴室をあらかじめ暖めておくこと、湯温を上げすぎないこと、家族に声をかけてから入浴することなどがあります。ただし、ご自身の体調や持病に応じた判断については、必ず医師にご相談ください。この記事で個別の医学的な助言はできません。

結露と、窓まわり

冷え込んだ朝は、窓に結露が出ます。

室内の暖かく湿った空気が、冷たい窓ガラスに触れて水になるためです。

放置するとカビの原因になります。そして窓の下の床が濡れて傷みます。

冷え込みが強い日は、朝いちばんに窓の水滴を拭き取るだけで、だいぶ違います。

また、寒冷地では窓のサッシそのものが凍りつくことがあります。無理に開けようとすると壊れます。

朝、外に出る前にすること

ここは、具体的な手順として書きます。

①窓の外を見る

路面が黒く光っていたら、凍っている可能性があります。

濡れているように見えて、実は氷。これがブラックアイスバーンです。

とくに前日に雪や雨があって、その夜に晴れた場合は、そう考えて行動してください。

②時間に余裕をつくる

いつもより10分早く出る。これがいちばん効きます。

転倒の多くは、急いでいるときに起きます。間に合わないと思った瞬間に、歩き方が変わるからです。

車の場合も同じです。窓の霜を落とす時間、暖機の時間、ゆっくり走る時間。これらを見込んでおく必要があります。

③歩き方を変える

やり方 理由
歩幅を小さく 重心の移動を小さくすると、滑っても立て直せます
靴の裏全体で着地 かかとから着地すると、そこで滑ります
ゆっくり歩く 急な動きが、いちばん危ない
手をポケットから出す 転んだときに、手が出せません
荷物は片手に 両手がふさがると、受け身が取れません

ポケットに手を入れて歩くのは、とても危険です。転んだときに顔や頭を打ちます。

寒いなら、手袋をしてください。手袋があれば、手をポケットに入れずに済みます。

④車を出す場合

フロントガラスの霜を、完全に落としてから発進してください。

一部だけ拭いて、覗き穴のようにして走る。これは毎年見かけますが、非常に危険です。

そしてお湯をかけないでください。急な温度差でガラスが割れます。解氷スプレーを使うか、エアコンのデフロスターで時間をかけて溶かしてください。

発進したあとも、最初の交差点までは特にゆっくり走ってください。路面の状態は、走ってみないと分かりません。

子どもと、高齢の方の朝

冷え込んだ朝に、いちばん転びやすいのがこの2つの層です。

通学路

子どもは走ります。そして手をポケットに入れます。この2つが重なると、転んだときに顔から落ちます。

言葉で「走らないで」と伝えるより、手袋を持たせるほうが効きます。手が冷たくなければ、ポケットに入れる理由がなくなるからです。

そして家を出る時間を、いつもより早くしてあげてください。遅れそうだと思った瞬間に、子どもは走ります。

高齢の方

朝いちばんの外出を、できれば避けていただきたい時間帯です。

日が昇って気温が上がれば、路面の氷は溶けます。急ぎでない用事なら、数時間ずらすだけで危険は大きく下がります。

新聞を取りに行く、ゴミを出しに行く。この短い距離での転倒が、実際に多いのです。玄関前の数メートルこそ、前の晩に対策しておく場所です。

離れて暮らすご家族は、冷え込みの予報が出た日に一度連絡してみてください。「明日の朝は冷えるから、外に出るのは昼にしてね」と伝えるだけで違います。

農業に関わる方へ

放射冷却は、農作物に直接の被害をもたらします。

霜注意報は、そのための情報です。

時期 問題になること
春先 遅霜。芽が出たあとの霜は、被害が大きくなります
早霜。収穫前の作物に影響します
凍害。根や幹が凍って傷みます

晴れて風のない夜が、いちばん危ない。これは農業でも同じです。

対策の方法は作物や地域によって異なりますので、具体的なことは、地域の農業改良普及センターや農協にご相談ください。

ここで書けるのは、「放射冷却が強まる条件を知っておけば、霜注意報が出る前から予測できる」ということです。

北海道から見ていて、思うこと

札幌では、冬のあいだ路面はほぼずっと凍っています。

だから、みんな歩き方を変えます。歩幅を小さくして、靴の裏全体で着地して、ゆっくり歩く。

これは教わるものではなく、何度か転ぶうちに身につくものです。

そして毎年、転ぶのは冬の初めです。体がまだ冬の歩き方を思い出していないからです。

雪の少ない地域では、この「思い出す」機会が年に数回しかありません。だから、毎回が最初の一回になります。

ここが、雪の少ない地域で転倒が多い理由だと思っています。

技術で解決するのは難しい。ですから、靴と、時間の余裕で対応するのが現実的です。

滑りにくい靴を履く。そして、いつもより10分早く家を出る。急がなければ、たいていの転倒は防げます。

停電しているときの、冷え込んだ朝

これは、重ねて起きると危険な組み合わせです。

暴風雪で停電し、その翌朝が晴れて放射冷却で冷え込む。実際に起こりうる流れです。

暖房が止まった家のなかで、朝いちばんの冷え込みを迎えることになります。

やること 理由
部屋を一つに絞る 家じゅうを暖めることはできません
カーテンを閉める 窓から熱が逃げます。ここがいちばん大きい
床に敷物を敷く 床からの冷えを防ぎます。段ボールでも効果があります
重ね着をする 部屋を暖めるより、体を暖めるほうが確実です
水道の水を出しておく 暖房が止まると、家の中の配管も凍ります

最後の行を、忘れないでください。暖房が効いている家では室内の配管は凍りませんが、停電で暖房が止まれば、家のなかも氷点下に近づきます。

そして屋内で換気せずに燃焼するものを使わないでください。カセットコンロ、炭、屋外用のバーナー。一酸化炭素中毒の事故が実際に起きています。一酸化炭素は無色無臭で、気づけません。

よくある質問

Q. 放射冷却は、冬だけの現象ですか?

一年じゅう起きています。晴れて風の弱い夜なら、季節を問わず起こります。

ただし冬にとくに話題になるのは、もともとの気温が低いからです。同じだけ冷えても、夏なら問題になりませんが、冬は氷点下に達します。

春先や秋にも、農作物への霜の被害という形で問題になります。

Q. 曇りの日は、寒くないのですか?

朝の冷え込みは弱くなります。雲が熱を跳ね返すからです。

ただし日中の気温は上がりにくくなります。太陽の光も雲にさえぎられるからです。

ですから「曇りの日は一日じゅう寒いが、朝はそれほど冷えない」という形になります。晴れた日はその逆で、朝が極端に冷え、日中は上がります。

Q. 気温が氷点下でなければ、凍りませんか?

凍ることがあります。

予報の気温は、地上から1.5メートルほどの高さで測ったものです。放射冷却が強い夜は、地面付近のほうが冷えています。

気温が3度でも、路面が0度以下ということは起こります。特に橋の上と日陰では、そう考えて行動してください。

Q. 「今季一番の冷え込み」と聞いたら、何をすればいいですか?

水道管の対策を優先してください。

路面の凍結は、歩き方と靴と時間の余裕で対応できます。しかし水道管の破裂は、起きてしまうと生活そのものが止まります。

そして被害額も大きくなります。費用対効果でいえば、水道管がいちばんです。

Q. 放射冷却と、ヒートアイランドは関係ありますか?

反対の方向に働きます。

都市部は、建物や舗装が昼のあいだに熱をためます。その熱が夜に放出されるため、放射冷却による冷え込みが弱まります。

ですから同じ市でも、中心部より郊外のほうが冷えます。予報が市の中心部の値であれば、郊外にお住まいの方はそれより低いと考えてください。

Q. 洗濯物を外に干したままにすると、どうなりますか?

凍ります。

冬の北海道では、洗濯物が板のように凍ることがあります。無理に折り曲げると、繊維が傷みます。

また、凍った洗濯物は乾いていません。取り込んだあと、室内で溶けて濡れます。

Q. 冷え込む朝は、いつごろまで続きますか?

地域によりますが、朝の冷え込み自体は春先まで続きます。

むしろ春先のほうが、放射冷却は強まりやすい条件になります。冬型の気圧配置がゆるんで晴れる日が増え、空気も乾いているからです。

「もう春だから」と油断した3月の朝に、路面が凍っている。これは毎年起きています。気温が上がってきたと感じても、朝いちばんは別だと考えてください。

Q. 天気予報に「放射冷却」と出ていなければ、安心ですか?

いいえ。言葉が出ていなくても、条件がそろえば起こります。

放射冷却は、警報や注意報のように基準があって発表されるものではありません。解説のなかで使われる説明の言葉です。

ですから、言葉の有無ではなく「今夜は晴れか」「風は弱いか」「明日の最低気温は何度か」の3つで判断してください。この3つは、どの天気予報にも必ず載っています。

Q. 融雪剤をまいておけば、凍りませんか?

効果はありますが、範囲は限られます。

玄関前や階段など、狭い場所には有効です。ただし金属を錆びさせる性質があるので、車や自転車にかからないよう気をつけてください。植物にも影響が出ることがあります。

そしてまく量を増やせば効くというものでもありません。製品に書かれた使い方に従ってください。

まとめ|3つの条件と、1つの行動

要点 内容
放射冷却とは 地面の熱が赤外線として空へ逃げ、地表付近が冷える現象
強まる条件 晴れ・乾燥・無風
いちばん冷える時刻 日の出の直前ごろ
危ないのは 荒れた日ではなく、晴れた日の翌朝
起きること 路面凍結・水道管凍結・霜・転倒・体への負担
気温の注意 予報がプラスでも、地面は氷点下のことがあります

そして、行動はひとつに絞れます。

「今夜は晴れて風が弱く、明日の朝は冷える」と聞いたら、寝る前に準備する。

水を細く出す。ワイパーを立てる。明日の靴を出しておく。それだけで、翌朝の事故のほとんどは防げます。

放射冷却という言葉は、聞き流されがちです。しかしこれは「今夜のうちに動け」という合図です。

朝になってからでは、もう凍っています。

そして、この言葉が予報に出てこない日でも判断できるようになってください。今夜は晴れているか。風は弱いか。明日の最低気温は何度か。

この3つは、どの天気予報にも必ず載っています。専門的な知識がなくても、確認できることです。

【この記事について】
放射冷却の仕組みと条件、冬日・真冬日の定義は、気象庁および公開されている気象解説資料をもとに整理しました。水道管が凍る気温の目安として挙げた数値は、あくまで目安です。実際には配管の位置・材質・断熱の状況によって大きく変わります。ご自宅の凍結対策や水抜きの方法については、住宅メーカーや管理会社、地域の水道局にご確認ください。また、寒さによる体調の変化については、我慢せず医師にご相談ください。警報・注意報の基準は市町村ごとに定められており、気象庁の「警報・注意報発表基準一覧表」で確認できます。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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