【この記事の要約】
爆弾低気圧とは、24時間で中心の気圧が急激に下がった温帯低気圧のことです。世界気象機関の定義では、緯度に応じて基準が変わり、日本付近ではおおむね24時間に15〜20ヘクトパスカル以上下がったものが該当します。ここで大事なことがあります。気象庁は「爆弾低気圧」という言葉を使いません。使用を控える用語とされていて、天気予報では「急速に発達する低気圧」と言い換えられます。気象庁が「急速に発達する」と表現するのは、12時間で約10ヘクトパスカル、24時間で約20ヘクトパスカル以上下がる場合です。ですから、ニュースで「爆弾低気圧」と聞いても、気象庁の発表を見ると別の言葉になっています。混乱の原因はここにあります。そして中身の話をすると、この低気圧の怖さは風です。気圧が急に下がると、周りとの差が大きくなり、猛烈な風が吹きます。台風のような暴風が、冬に、しかも台風より広い範囲で起きます。さらに冬は、そこに雪と低温が加わります。暴風雪、高波、そして大規模な停電。この記事では、言葉の正確な意味と、実際に何に備えるかを整理します。
「爆弾低気圧が接近しています」
冬になると、ニュースやSNSでこの言葉を見かけます。いかにも危なそうな響きです。
ところが、気象庁の天気予報を見ると、どこにも「爆弾低気圧」と書いていません。代わりに「急速に発達する低気圧」と書いてあります。
同じものなのか、違うものなのか。ここが分からないままだと、情報を正しく受け取れません。
私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。北海道は、この低気圧の通り道です。実際に何が起きるかを含めて、整理して書きます。
結論|怖いのは雨や雪より、風です
先に結論を書きます。
爆弾低気圧で最初に警戒すべきなのは、風です。
雪の話に注目が集まりがちですが、この低気圧の本質は、急激に発達することで生まれる猛烈な風にあります。
そして、風の被害には特徴があります。
| 起きること | 中身 |
|---|---|
| 停電 | 電線が切れる、電柱が倒れる、木が倒れて電線を切る |
| 飛来物 | 看板・トタン・物干し竿・自転車が飛びます |
| 交通の停止 | 鉄道は風速の基準で運転を見合わせます。橋や高架は特に |
| 高波・高潮 | 海沿いでは、風が海面を持ち上げます |
| 吹雪 | 雪が降っていなくても、積もった雪が舞い上がります |
とくに冬の停電は、命に関わります。暖房が止まるからです。
この記事では、その理由と備えを書きます。
言葉の整理|気象庁は「爆弾低気圧」を使いません
まず、ここをはっきりさせます。
気象庁の立場
気象庁は「爆弾低気圧」を、使用を控える用語としています。
理由は説明されていませんが、「爆弾」という言葉が与える印象や、戦争を連想させる表現であることが背景にあると考えられています。ここは私の推測を含みますので、断定はしません。
いずれにしても、気象庁の予報や情報のなかに「爆弾低気圧」という言葉は出てきません。
では、何と言うのか
「急速に発達する低気圧」です。
天気予報でこの表現を聞いたら、報道が「爆弾低気圧」と呼ぶものと、ほぼ同じ状況だと考えてください。
| 誰が | どう呼ぶか |
|---|---|
| 気象庁 | 急速に発達する低気圧 |
| 報道・ニュース | 爆弾低気圧 |
| 研究の分野 | 爆弾低気圧(学術用語として使われています) |
「爆弾低気圧」は俗語ではありません。学術の世界では正式に使われている言葉です。気象庁が一般向けの発表で使わない、というだけです。
数字で見る定義
ここは少し専門的になりますが、押さえておくと理解が深まります。
世界気象機関の定義
世界気象機関による定義では、低気圧がある場所の緯度によって、基準が変わります。
計算の形は、24時間で「24×(その地点の緯度の正弦÷北緯60度の正弦)」ヘクトパスカル以上の低下となります。
数式が出てくると身構えますが、言いたいことは単純です。
| 場所 | 24時間での低下の基準 |
|---|---|
| 北緯60度(高緯度) | 24ヘクトパスカル以上 |
| 日本付近 | おおむね15〜20ヘクトパスカル以上 |
高緯度ほど、基準が厳しくなります。低気圧はもともと高緯度で発達しやすいので、同じ物差しで測ると不公平になるからです。
気象庁の「急速に発達する」の基準
一方、気象庁が「急速に発達する」と表現する目安は、次のとおりです。
| 時間 | 気圧の低下 |
|---|---|
| 12時間 | 約10ヘクトパスカル以上 |
| 24時間 | 約20ヘクトパスカル以上 |
厳密には、爆弾低気圧の定義とは一致しません。近い概念ですが、別の基準です。
ここを正確に知っておくと、「気象庁は急速に発達すると言っているのに、ニュースは爆弾低気圧と言っている」という食い違いに戸惑わずに済みます。
なぜ、急に発達すると危ないのか
ここが本質です。
気圧の差が、風を生みます
風は、気圧の高いところから低いところへ向かって吹きます。
そして気圧の差が大きいほど、風は強くなります。
低気圧の中心の気圧が急に下がると、まわりとの差が一気に開きます。その結果、猛烈な風が吹くのです。
天気図でいえば、等圧線の間隔が狭くなっている状態です。線が混んでいるほど、風が強いと考えてください。
台風との違い
暴風といえば台風です。しかし、性質が違います。
| 台風 | 急速に発達する低気圧 | |
|---|---|---|
| 種類 | 熱帯低気圧 | 温帯低気圧 |
| エネルギー源 | 暖かい海の水蒸気 | 暖かい空気と冷たい空気の温度差 |
| 時期 | 夏から秋 | 秋から春(とくに冬) |
| 強い風の範囲 | 中心の近く | 広い範囲。中心から離れても強い |
| 伴うもの | 大雨 | 雪・低温・吹雪 |
| 暴風域の発表 | あり | ありません |
ここで注目してほしいのが、下から3行目です。
台風は中心付近が最も強く、中心から離れれば弱まります。ところが温帯低気圧は、中心から数百キロ離れた場所でも猛烈な風が吹きます。
だから「低気圧の中心は遠いから大丈夫」という判断が、成り立ちません。
そして最後の行も重要です。温帯低気圧には「暴風域」という発表がありません。台風のように「暴風域に入る確率」を見て備えるという方法が使えないのです。
代わりに見るのは暴風警報・暴風雪警報です。台風の情報の見方は台風18号(ソウデル)の経過にも書いていますが、冬の低気圧は別の見方が必要になります。
冬に起きると、何が重なるのか
同じ強さの風でも、冬に吹くと被害が変わります。理由は3つあります。
①雪が加わる|暴風雪
強い風と雪が同時に起きると、暴風雪になります。
このとき危険なのは、視界がなくなることです。降っている雪だけでなく、地面に積もった雪が風で舞い上がります。これを地吹雪といいます。
空は晴れているのに、目の前が真っ白ということが起こります。
車の運転中にこれが起きると、前の車も、道路の端も見えません。停まれば後ろから追突され、進めば路外に落ちます。
②気温が低い|低体温症
風は、体感温度を大きく下げます。
気温が0度でも、強い風が吹けば体感はそれよりはるかに低くなります。濡れていれば、さらに下がります。
車が動かなくなったとき、あるいは停電で暖房が止まったとき。冬の低気圧では、そこから低体温症の危険が始まります。
③停電が、そのまま暖房の停止になる
これが、私がいちばん強調したい点です。
夏の停電と、冬の停電は、危険度がまったく違います。
夏なら、暑さは我慢できます。冬は、我慢すると命に関わります。
そして意外に知られていないのが、石油ストーブやファンヒーターの多くは、電気がないと使えないということです。点火にも、送風にも電気を使うからです。
いま、ご自宅に「電気を使わずに暖をとる手段」がありますか。ひとつもない、という家庭は珍しくありません。これは冬が来る前に確認しておくべきことです。
停電への備え全般は長期停電への備えにまとめました。
いつ、どこで起きやすいのか
時期
秋から春にかけて起きます。とくに冬です。
理由は、この低気圧が暖かい空気と冷たい空気の温度差をエネルギーにしているからです。
冬は、南の暖かい空気と北の冷たい空気の差がいちばん大きくなります。だから、冬にいちばん発達しやすいのです。
場所
日本付近では、いくつかの通り道があります。
| コース | 影響を受けやすい地域 |
|---|---|
| 日本海を北東へ進む | 北日本・日本海側。南から暖かい強風が入ります |
| 本州の南岸から東海上へ | 太平洋側。雪や大雨をもたらすことがあります |
| 北海道の東で急発達 | 北海道・東北。もっとも激しくなりやすい形です |
低気圧が日本海を進むときは、その南側に位置する地域に、南寄りの暖かく強い風が吹き込みます。
このとき、日本海側では雪ではなく雨になることがあります。そして気温が上がり、積もっていた雪が一気に溶けます。
これが、また別の問題を引き起こします。
融雪による災害
暖かい風と雨で、大量の雪が短時間に溶けます。
すると次のことが起きます。
| 起きること | 説明 |
|---|---|
| 川の増水 | 雨に、溶けた雪の水が加わります |
| なだれ | 雪が水を含んで重くなり、すべりやすくなります |
| 屋根からの落雪 | ゆるんだ雪が、まとめて落ちてきます |
| 浸水 | 排水溝が雪でふさがれ、水があふれます |
冬の大雨は、雨の量だけでは危険度が測れません。そこに雪解けの水が加わるからです。
風速の数字を、体感に置きかえる
予報では「最大風速25メートル」といった数字が出ます。この数字が、どれくらいのことなのかを知っておくと判断が変わります。
気象庁が示している「風の強さと吹き方」の目安を、要点だけまとめます。
| 風速の目安 | そのとき起きること |
|---|---|
| 10〜15メートル | 傘がさせない。取り付けの悪い看板が外れ始める |
| 15〜20メートル | 転倒する人が出る。ビニールハウスが壊れ始める |
| 20〜25メートル | しっかりつかまらないと立てない。屋根瓦や屋根板が飛ぶ |
| 25〜30メートル | 樹木が根こそぎ倒れる。走行中のトラックが横転する |
| 30メートル以上 | 屋外での行動は危険。電柱や街灯が倒れることがある |
ここで押さえてほしいのは、15メートルで人が転ぶということです。
15メートルという数字は、冬の低気圧では珍しくありません。つまり「よくある強さの風」で、すでに人は転びます。
そして最大風速と最大瞬間風速は別です。瞬間の風は、平均より1.5倍から2倍ほど強く吹きます。「最大風速20メートル」という予報なら、瞬間的には30メートルを超えることがあります。
予報の数字を見るときは、瞬間の風のほうで判断してください。被害を出すのは瞬間の風だからです。
交通は、どの段階で止まるのか
「電車が止まるかどうか」は、多くの人にとって最大の関心事だと思います。
鉄道
鉄道会社は、風速の基準で運転を止めます。
具体的な数値は会社や路線によって違いますが、一定の風速を超えると徐行、さらに超えると運転見合わせという段階を踏むのが一般的です。
とくに止まりやすいのは、次のような場所を通る路線です。
| 場所 | なぜ止まりやすいか |
|---|---|
| 海沿い | さえぎるものがなく、風がまともに当たります |
| 橋の上・高架 | 高いところほど風が強い |
| 鉄橋 | 横風を受けやすい構造です |
| 山あいの谷 | 地形で風が加速することがあります |
そして重要なのが、止まったあとです。
風が弱まっても、すぐには動きません。線路の点検をしてからでないと再開できないからです。飛んできたものが線路上にないか、確認する必要があります。
ですから「風がやんだからもう動くだろう」と駅で待つのは、あまり得策ではありません。
飛行機と船
飛行機は、横風に弱いです。滑走路に対して横から吹く風が強いと、着陸できません。
そして船は、最も早く止まります。フェリーや離島の航路は、警報が出る前の段階で欠航が決まることがあります。
離島にお住まいの方、あるいは離島へ行く予定のある方は、数日ぶんの余裕を持って行動してください。一度欠航が続くと、物資も届かなくなります。
高速道路
風による通行止めがあります。とくに橋の上や、海沿いの区間です。
そして冬は、雪による通行止めと重なります。風だけ、雪だけなら通れる状況でも、両方が重なると止まります。
仕事で外に出る方へ
ここは、書いておきたいことがあります。
暴風のなかで、屋外での作業を続けないでください。
とくに危険なのは、次のような場面です。
| 場面 | 危険 |
|---|---|
| 高所での作業 | 足場ごと倒れる。転落する |
| 屋根の上 | 風にあおられて落ちます。冬は凍っていて滑ります |
| クレーンなどの操作 | 荷が振られる。転倒する |
| ビニールハウスの補強 | 風が強まってからでは間に合いません |
| 海や川のそば | 波にさらわれます。近づかないでください |
「様子を見に行く」が、いちばん多い事故の原因です。
船が心配、ハウスが心配、田んぼの水が心配。その気持ちは分かりますが、暴風のなかで見に行っても、できることはありません。
備えは、風が強まる前に終わらせてください。強まってからは、家の中にいる。それだけです。
停電が長引いたときのこと
風による停電は、大雨の停電より長引くことがあります。
理由は、復旧作業そのものが風でできないからです。
電線の修理は、高所での作業になります。風が強いあいだは、作業員が上がれません。だから風がやむまで待つことになります。
そして倒木が道路をふさいでいれば、現場にたどり着けません。まず道路を開ける作業から始まります。
| 時間 | 想定しておくこと |
|---|---|
| 数時間 | 多くの停電はこの範囲です |
| 1日 | 暖房が止まった状態で1晩を越えます |
| 数日 | 広い範囲で倒木がある場合。冬は現実的にあり得ます |
「1晩を暖房なしで越えられるか」を、基準にしてください。
それができる用意があれば、たいていの停電は乗り切れます。逆にそれができないなら、いまが準備するときです。
何を見て、いつ動くか
実務の話をします。
見るべき情報
| 情報 | 意味すること |
|---|---|
| 暴風警報 | 重大な災害が起きるおそれのある風。外出を見合わせる段階 |
| 暴風雪警報 | 暴風に加えて、雪で視界が悪くなる。もっとも危険 |
| 波浪警報 | 海が荒れます。海沿いに近づかない |
| 大雪警報 | 雪の量が問題になる段階 |
| 高潮警報 | 海面が上昇します。沿岸の低い土地は浸水します |
| 各地の気象情報 | 気象台の解説文。ここに「急速に発達」と書かれます |
暴風雪警報が、いちばん重い意味を持ちます。風だけでも危険なところに、視界の問題が加わるからです。
いつ動くか
この低気圧の厄介なところは、発達が速いことです。
24時間で20ヘクトパスカル下がるということは、朝と夜で状況がまったく違うということです。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 2〜3日前 | 予定を組み替える。買い物を済ませる |
| 前日 | 外に置いてあるものを片づける。車の給油 |
| 当日の朝 | 警報を確認し、外出するかどうかを決める |
| 荒れている最中 | 建物の中から出ない |
前日の「外に置いてあるものを片づける」を、軽く見ないでください。
ゴミ箱、植木鉢、物干し竿、自転車、看板、スコップ。これらが飛んで、窓を割ります。
そして飛んでいったものは、よその家を壊します。自分の家の被害だけの問題ではありません。
停電したら、どうするか
冬の停電は、時間との勝負になります。
まず、暖かい場所を1つに絞る
家じゅうを暖めようとしないでください。不可能です。
家族が集まる部屋を1つ決めて、そこだけを暖かく保ちます。
| やること | 効果 |
|---|---|
| カーテンを閉める | 窓から熱が逃げます。いちばん効きます |
| 床に敷物を敷く | 床から冷えます。段ボールでも効果があります |
| ドアを閉め切る | 暖める空間を小さくする |
| 重ね着をする | 部屋を暖めるより、体を暖めるほうが確実です |
| 寝袋・毛布に入る | 体温を逃がさない |
暖房器具を買うより先に、いま家にあるもので体温を保つ方法を考えてください。そのほうが確実です。
やってはいけないこと
屋内で、換気せずに燃焼するものを使わないでください。カセットコンロ、炭、屋外用のバーナー。一酸化炭素中毒で亡くなる事故が、実際に起きています。一酸化炭素は無色無臭で、気づけません。
また、エンジンをかけた車の中で暖をとるのも危険です。雪がマフラーをふさぐと、排気ガスが車内に入ります。
どうしても車で暖をとる場合は、マフラーのまわりの雪を必ずどけて、こまめに確認してください。
家のまわりで、前日にやること
ここは具体的に書きます。すべて、風が強まる前でないとできません。
飛ぶものをなくす
| もの | どうするか |
|---|---|
| 物干し竿 | 外して、地面に置く。立てておくと飛びます |
| ゴミ箱・ポリバケツ | 屋内へ。中身が空だと特によく飛びます |
| 植木鉢・プランター | 地面に下ろす。高い場所に置かない |
| 自転車 | 倒しておく。立てたままだと倒れて壊れます |
| 雪かき道具 | 玄関の中へ。柄の長いものは飛びます |
| 簡易物置・カバー類 | ロープで固定する。中身を重くする |
ひとつでも残っていると、それが飛びます。そして飛んだものは、自分の家の窓か、よその家の窓に当たります。
窓を守る
窓が割れると、そこから風が入り込みます。
家の中に強い風が入ると、内側から屋根を押し上げる力が働きます。窓の破損が、家全体の被害につながることがあります。
雨戸やシャッターがあるなら、必ず閉めてください。ないなら、カーテンを閉めておくだけでも違います。ガラスが割れたときに、破片の飛散を少し抑えられます。
強風のときは、窓のそばに近づかないでください。様子を見ようとして窓辺に立つのが、いちばん危険です。
車
できれば、屋根のある場所へ移してください。
カーポートは、風で飛ぶことがあります。雪の重みには耐えても、横からの風には弱い構造のものがあります。
周囲に倒れそうな木や、飛びそうな看板がない場所を選んでください。そして給油しておいてください。停電するとガソリンスタンドも止まります。
連絡手段を、確保しておく
停電が長引くと、通信も影響を受けます。
携帯電話の基地局にも電源が必要です。非常用の電源はありますが、無限ではありません。停電が長引けば、電波が届かなくなる地域が出ます。
| 備え | 理由 |
|---|---|
| モバイルバッテリー | 充電できる時間は限られます。満充電にしておく |
| 電池式のラジオ | 通信が途絶えても、情報が入ります |
| 家族との集合場所の確認 | 連絡が取れない前提で決めておく |
| 紙のメモ | 連絡先を、スマートフォン以外にも持つ |
ラジオは、いまでも有効です。停電しても、通信が混雑しても、電池があれば聞けます。
ラジオの選び方は防災ラジオとスマートフォンの使い分けに書きました。
北海道から見ていて、思うこと
北海道では、この低気圧が毎年のように来ます。
そして毎回、同じ被害が出ます。
車で出かけて、地吹雪で動けなくなる。「これくらいなら行ける」と判断してしまうのです。
私が思うのは、雪に慣れていることが、必ずしも安全につながらないということです。
慣れているから、判断の基準が甘くなります。そして、暴風雪は慣れでどうにかなる相手ではありません。
視界がゼロになれば、運転技術は関係ありません。できることは、その場にいることだけになります。
だから、私が周りに伝えているのはこれだけです。暴風雪警報が出たら、車を出さない。
技術でも装備でもなく、出かけないという判断だけが確実です。
よくある質問
Q. 「爆弾低気圧」と「急速に発達する低気圧」は、同じものですか?
ほぼ同じ状況を指しますが、基準は厳密には一致しません。
爆弾低気圧は世界気象機関の定義に基づく学術的な言葉で、緯度によって基準が変わります。
気象庁の「急速に発達する」は、12時間で約10ヘクトパスカル、24時間で約20ヘクトパスカルという目安です。
実用上は、どちらも「風が非常に強くなる」という同じ意味に受け取ってかまいません。
Q. なぜ気象庁は「爆弾低気圧」と言わないのですか?
使用を控える用語とされているためです。
その理由について、私は断定できる資料を持っていません。言葉の印象に配慮したものと説明されることが多いですが、確認していない推測は書きません。
実務上、大事なのは「気象庁の発表では別の言葉になっている」と知っておくことです。
Q. 冬なのに「大雨警報」が出ることがあります。なぜですか?
急速に発達する低気圧が、暖かい空気を運んでくるからです。
低気圧が日本海を進むとき、その南側では南寄りの風が入ります。この風は暖かく湿っているので、雪ではなく雨を降らせます。
そして問題は、その雨が積もった雪の上に降ることです。雨そのものの量は多くなくても、雪が溶けた水が加わって、川が一気に増水します。
冬の大雨は、雨量計の数字だけでは危険度が分かりません。お住まいの地域に雪が積もっている場合は、とくに注意してください。
Q. 台風と、どちらが危険ですか?
比べる意味があまりありません。危険の種類が違うからです。
台風は中心付近の風がとくに強く、大雨を伴います。急速に発達する低気圧は、風の強い範囲が広く、雪と低温を伴います。
ただし「冬だから台風より安全」ということは、まったくありません。むしろ冬は、停電したときの危険が上がります。
Q. 暴風域がないなら、どこまで警戒すればいいですか?
お住まいの市町村に出ている警報を見てください。
温帯低気圧には暴風域の発表がないので、「中心からの距離」で判断することができません。
代わりに、暴風警報・暴風雪警報が出ているかどうかで判断します。中心が遠くても、警報が出ていれば危険です。
Q. 気圧が下がると、体調が悪くなります。関係ありますか?
気圧の変化で体調に影響を感じる方がいることは、広く知られています。頭痛や、古傷の痛み、めまいなどを訴える方がいます。
急速に発達する低気圧は、気圧の下がり方が大きく、しかも速いのが特徴です。ですから、影響を感じやすい条件ではあります。
ただし、症状の原因や対処については、私は判断できる立場にありません。つらい症状が続く場合や、いつもと違う痛みがある場合は、必ず医師にご相談ください。
防災の観点から言えることは、体調が優れないときに無理をして外へ出ないことです。暴風のなかでは、健康な人でも転倒します。
Q. 予報で「猛烈な風」と聞きました。どのくらいですか?
気象庁は、風の強さを言葉で段階分けしています。
おおまかには、「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」の順に強くなります。
「猛烈な風」は、いちばん上の段階です。屋外での行動が危険な水準だと考えてください。
この表現が出たら、数字を確認するまでもなく、外に出ないという判断で問題ありません。
Q. 洗濯物や自転車は、どうすればいいですか?
前日のうちに、屋内に入れてください。
自転車は倒しておく、あるいは壁際に寄せて固定する。物干し竿は必ず外してください。飛ぶと凶器になります。
ベランダの排水口も確認しておいてください。雪や落ち葉で詰まっていると、水があふれます。
Q. 車での外出中に、暴風雪になったらどうしますか?
安全に停められる場所を探して、そこにとどまってください。
路上で停まるのは危険です。コンビニ、道の駅、サービスエリアなど、建物のある場所を目指してください。
ただし視界がない状態で走り続けるのは、もっと危険です。近くに建物がなければ、路肩のできるだけ広い場所で、ハザードランプをつけて停まります。
そしてマフラーの雪をどけてください。これを忘れないでください。
まとめ|覚えておくのは3つです
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| 言葉 | 気象庁は「爆弾低気圧」を使わず、「急速に発達する低気圧」と言います |
| 定義 | 日本付近では、24時間でおおむね15〜20ヘクトパスカル以上の低下 |
| 気象庁の目安 | 12時間で約10、24時間で約20ヘクトパスカル以上 |
| いちばんの危険 | 風。そして、風による停電 |
| 台風との違い | 強い風の範囲が広い。暴風域の発表がない |
| 冬の上乗せ | 暴風雪・地吹雪・低体温症・融雪による災害 |
そして、今日できることを挙げます。
電気を使わない暖房手段が、家にあるかを確認してください。
石油ストーブでも、点火に電気を使う機種があります。説明書を見るか、コンセントを抜いて動くかを試してみてください。
ひとつもないなら、それが冬のいちばん大きな弱点です。そして、それは今のうちにしか埋められません。
爆弾低気圧という言葉は、たしかに大げさに聞こえます。しかし中身は、冬に台風並みの風が広い範囲で吹くという話です。
言葉の派手さではなく、風と停電に備える。それだけを覚えておいてください。
そしてもうひとつ。ニュースで「爆弾低気圧」と聞いたら、気象庁の警報を見に行く癖をつけてください。
言葉の強さで判断するのではなく、自分の市町村に暴風警報や暴風雪警報が出ているかどうかで判断する。これが、いちばん確実な受け取り方です。
低気圧は毎年来ます。そのたびに慌てないために、備えは冬の前に済ませておいてください。
【この記事について】
爆弾低気圧の定義および気象庁の用語の扱いは、公開されている気象解説資料をもとに整理しました。ここに挙げた数値は目安であり、実際の判断は個々の事例で異なります。また用語の運用は変更されることがあります。最新の内容は気象庁の公式サイトでご確認ください。警報・注意報の基準は市町村ごとに定められており、気象庁の「警報・注意報発表基準一覧表」で確認できます。体調に不安がある場合や、寒さで具合が悪くなった場合は、我慢せず医師にご相談ください。





