【この記事の要約】
停電したとき、車は貴重な情報源になります。カーラジオは大きなアンテナと安定した電源を持ち、家庭用のポータブルラジオより受信状況が良いことも珍しくありません。ただし守るべき条件が3つあります。バッテリー上がりを防ぐこと、エンジンをかけるなら排気の逃げ道を確保すること、そして燃料を切らさないことです。特に危険なのが一酸化炭素中毒です。JAFの実験では、雪に埋もれた車でエンジンをかけると22分ほどで車内の一酸化炭素が1000ppmに達しました。マフラー周辺を除雪した状態ではほぼ0ppmだったことも分かっています。この記事では、車を情報源として安全に使う方法を整理します。
結論:使えます。ただし3つの条件を守ってください
先に結論をお伝えします。停電中、車のラジオは十分に使えます。むしろ有力な選択肢です。
理由は3つあります。アンテナが大きく受信性能が高いこと、電源に余裕があること、そして近年の車載機はワイドFMに対応していることが多いことです。
ただし、次の3つを守ってください。
一つ目は、バッテリー上がりを防ぐこと。エンジンを止めたまま長時間使えば、車が動かせなくなります。
二つ目は、エンジンをかけるなら排気の逃げ道を確保すること。雪に埋もれた状態や閉め切った車庫では、一酸化炭素中毒の危険があります。
三つ目は、燃料を切らさないこと。災害時にガソリンスタンドは長蛇の列になります。
この3点さえ押さえておけば、車は心強い味方になります。
なぜ車が情報源として優秀なのか
意外に知られていない点がいくつかあります。順に挙げていきます。
アンテナが大きい
最も大きな理由がこれです。
車には、ロッドアンテナやガラスに埋め込まれたアンテナが備わっています。ポータブルラジオの小さなアンテナとは、受信性能が根本的に違います。
自宅の室内では入りにくい放送が、車の中ではきれいに聴けることがあります。特に鉄筋コンクリートの建物にお住まいなら、この差は大きく感じられるはずです。
電源に余裕がある
乾電池のように「あと何時間で切れるか」を気にする必要が、ある程度まで減ります。
車のバッテリーは、乾電池とは比べものにならない容量を持っています。エンジンをかければ発電もできます。
ただし無限ではありません。この点は後で詳しく触れます。
ワイドFMに対応していることが多い
近年の車載機は、ワイドFM(90.1〜95MHz)に対応しているものが多くあります。
民放AMラジオ47局のうち44局が2028年秋までにFM転換を目指しているなか、この点は重要です。
ただし古い車では非対応の場合があります。ご自分の車の周波数表示を確認してみてください。FMの上限が「90」で終わっていれば非対応です。
閉じた空間で落ち着いて聴ける
実務的な利点もあります。
停電した自宅は暗く、家族の不安な声も飛び交います。車内は静かで、放送に集中できます。
暖房や冷房も使えます。短時間であれば、体を休める場所としても機能します。
エンジンを止めたまま使う方法
はじめに、最も安全な使い方から説明していきます。
エンジンをかけなくても、カーラジオは使えます。鍵の位置をアクセサリー電源、いわゆるACCの位置にすれば動きます。
プッシュスタートの車であれば、ブレーキを踏まずにスタートボタンを1回押すとACCになります。もう一度押すとONになります。
この方法なら、排気ガスは出ません。一酸化炭素中毒の心配がなくなります。
どのくらい使えるのか
ここが気になるところだと思います。
一般に、カーオーディオの消費電力はそれほど大きくありません。エンジンを止めた状態でラジオだけを聴くなら、数時間は使えると言われています。
ただし、これは大まかな目安です。次の要素で大きく変わります。
| 要素 | 影響 |
|---|---|
| バッテリーの劣化 | 数年経ったバッテリーは容量が落ちている |
| 気温 | 低温では性能が下がる。冬は短くなる |
| 音量 | 大きいほど消費が増える |
| ほかの機器 | ライトやドライブレコーダーも電力を使う |
| 車種 | ACCで動く機器の範囲が異なる |
安全側で考えるなら、連続で1時間以上使わないことをおすすめします。
時間を決めて聴く
私がおすすめしたいのは、時間を区切る使い方です。
たとえば毎正時から15分だけ聴く。ニュースは定時に流れることが多いためです。
これなら1日に数回聴いても、バッテリーへの負担は限られます。
不安ならエンジンをかける
バッテリーが心配であれば、エンジンをかけながら聴くという選択肢もあります。この場合は発電されるため、バッテリーは減りません。
ただし、次に説明する一酸化炭素の危険があります。条件を必ず確認してください。
最も危険なのは一酸化炭素中毒
ここが、この記事で最も重要な部分です。
エンジンをかけると、排気ガスが出ます。この中に含まれる一酸化炭素は、無色無臭で気づけません。そして短時間で命に関わります。
雪に埋もれた車は特に危険です
JAF(日本自動車連盟)が行った実験の結果があります。
車体が雪に埋もれた状態でエンジンをかけると、次のように車内の一酸化炭素濃度が上昇しました。
| 経過時間 | 一酸化炭素濃度の目安 |
|---|---|
| 約1分24秒 | 50ppm前後 |
| 約16分 | 400ppm前後 |
| 約22分 | 1000ppm前後 |
わずか22分で、命に関わる水準に達しています。
一方、同じ実験でマフラー周辺の雪を取り除いた状態では、車内の一酸化炭素濃度はほぼ0ppmのまま推移したと報告されています。
この差は決定的です。マフラーの周りの雪をどけるという、それだけの行動でリスクは劇的に下がります。
冬の停電全般への備えは停電対策【冬編】2026年最新版|低体温症を防ぐ準備・グッズ・行動マニュアルを徹底解説にまとめています。
危険な状況を整理する
雪だけではありません。次の状況では、エンジンをかけないでください。
- 車体が雪に埋もれている、または降雪が続いている
- 閉め切ったガレージや車庫の中
- マフラーが水没している、または泥でふさがれている
- 周囲が壁や物で囲まれ、排気が滞留する場所
- マフラーに損傷がある
共通しているのは、排気の逃げ道がないことです。逆に言えば、排気が外気へ抜ける空間さえ確保できていれば、エンジンをかけても問題ありません。
判断に迷ったら、マフラーの排気口が見えているかを確認してください。見えていなければ、かけないでください。
最初の症状は眠気です
一酸化炭素中毒で最も恐ろしいのは、気づけないことです。
五感では察知できません。そして最初に現れる症状が眠気です。暖かい車内で眠気が来れば、多くの人は「疲れているのだろう」と思って眠ってしまいます。
これが致命的です。
詳しくは雪で車が埋まると一酸化炭素中毒に|マフラー除雪で濃度はほぼ0になるで解説しています。冬に車を使う可能性がある方は、あわせてお読みください。
バッテリー上がりを防ぐ
もうひとつの現実的なリスクです。
バッテリーが上がると、エンジンがかかりません。避難が必要になったときに動かせない、という事態を招きます。
予防の方法
- 連続使用を1時間以内にとどめる
- 使わないときは必ず電源を切る
- 数時間ごとに10分程度エンジンをかけて充電する(換気を確保できる場合のみ)
- ヘッドライトや室内灯を同時に使わない
- スマートフォンの充電と同時に行わない
3番目は有効ですが、一酸化炭素の条件を満たす場所でのみ行ってください。
ジャンプスターターを備えておく
バッテリーが上がったときに、自力でエンジンをかけられる機器があります。ポータブル型のジャンプスターターです。
手のひらに乗る大きさのものもあり、モバイルバッテリーを兼ねる製品もあります。車に積んでおくと安心です。
災害時は、救援を呼んでもすぐには来ません。自力で対処できる備えは価値があります。
バッテリーの状態を把握しておく
寿命は一般に3年から5年程度とされています。それを超えているなら、災害時の使用に耐えない可能性があります。
点検の機会に、状態を確認しておいてください。弱っているバッテリーは、思ったより早く上がります。
燃料の管理
見落とされがちですが、極めて重要です。
災害が起きると、ガソリンスタンドには長い列ができます。停電で給油機が動かない店舗も出ます。
つまり、災害が起きてからでは給油できません。
半分になったら給油する
私がおすすめしているのは、残量が半分になったら給油する習慣です。
満タンにこだわる必要はありませんが、常に半分以上を保っておけば、いざというときに数時間の暖房や情報収集がまかなえます。
特に冬季は、この習慣が命を守ることにつながります。
電気自動車の場合
電気自動車やハイブリッド車では、事情が異なります。
電気自動車は排気ガスが出ないため、一酸化炭素中毒の心配がありません。この点は大きな利点です。
一方で、充電が尽きれば動きません。停電中は充電もできません。日頃から残量に余裕を持たせておいてください。
ハイブリッド車は注意が必要です。停車中はエンジンが止まっていても、バッテリーが減れば自動的に始動します。静かなため気づきにくく、知らないうちに排気が始まっている可能性があります。
ハイブリッド車でも、マフラー周辺の除雪は必要だと考えてください。
受信状況をよくする工夫
車の中でも、場所によって受信状況は変わります。改善の方法を挙げます。
停める場所を選ぶ
電波は、遮蔽物に弱い性質があります。次のような場所では入りにくくなります。
- 立体駐車場や地下駐車場の中
- 高いビルに囲まれた場所
- 山や崖のすぐそば
- 高架下やトンネルの入り口付近
逆に、開けた場所や高台では受信しやすくなります。数十メートル移動するだけで、聴こえ方が変わることもあります。
入りが悪ければ、車を少し動かしてみてください。
アンテナの状態を確認する
ロッドアンテナが備わっている車では、伸ばしているかを確認してください。洗車のときに縮めたまま忘れている、ということがあります。
また、アンテナが折れていたり、根元が緩んでいたりすると受信性能が落ちます。点検の機会に見ておいてください。
AMとFMを切り替えてみる
同じ放送局でも、AMとワイドFMの両方で流れている場合があります。
片方でノイズが多くても、もう片方ならきれいに入ることがあります。切り替えて確かめる価値はあります。
一般に、建物に囲まれた場所ではFMのほうが有利です。逆に山を挟む場所ではAMのほうが届くことがあります。
車を「情報の拠点」として使う
もう一歩進んだ使い方を提案します。
停電が長引くとき、車を家族の情報拠点として位置づけるという考え方があります。
やり方
- 1日のうち、決まった時間に車へ行く(たとえば朝7時と夜7時)
- ラジオで最新の情報を確認する
- その間にスマートフォンを充電する
- 必要なら暖房や冷房で体を休める
- 得た情報を家族に伝える
この流れを習慣にすると、無駄がありません。都度エンジンをかけるより、バッテリーへの負担も抑えられます。
メモを取る
聴いた内容は、その場で紙に書いてください。記憶だけに頼ると、家族に伝えるときに抜けが出ます。
特に、給水の場所と時間、避難所の状況、復旧の見通しは正確に控えておきたい情報です。
ペンとメモ帳を車に置いておくと、この作業がすぐできます。スマートフォンで記録する方法もありますが、電池を消耗させたくない場面では紙が確実です。
停電下では、あとから確認する手段が限られます。聞いた瞬間に書き留める習慣を持ってください。
近隣と情報を共有する
得た情報は、近所の方にも伝えてください。特に高齢の単身世帯には、情報が届いていない可能性があります。
災害時の助け合いは、大がかりなものである必要はありません。「給水車が○時に来るそうです」と一言伝える。それだけで十分に価値があります。
車のラジオでできること、できないこと
期待の水準を正しく持っておきましょう。
| 項目 | 車のラジオ | 携帯ラジオ |
|---|---|---|
| 受信性能 | 高い。アンテナが大きい | 機種による |
| 電源 | 余裕がある | 乾電池に依存 |
| 持ち出し | できない | できる |
| 屋内での使用 | できない | できる |
| 避難先での使用 | 車で移動できる範囲のみ | どこでも |
| 危険性 | 一酸化炭素、バッテリー上がり | ほぼない |
最大の弱点は、車のところまで行かなければ使えないことです。
地震で駐車場までの道がふさがれている、津波の想定区域で車に近づけない、大雨で冠水している。こうした場面では使えません。
だから、携帯できるラジオも別に持っておく必要があります。
両方あるのが理想です
車のラジオと携帯ラジオは、補い合う関係です。
普段は携帯ラジオで情報を得て、電池が心配になったら車で聴く。あるいは、じっくり聴きたいときだけ車を使う。
この使い分けができれば、情報が途切れる場面はかなり減ります。スマートフォンとの併用については災害時、スマホでラジオは聴ける?仕組みと備え方を解説もあわせてご覧ください。
優先順位をつけるなら、まず携帯ラジオです。どこでも使えて、危険もないためです。車はその次に来る、強力な補助手段だと考えてください。
順番を逆にすると、車に近づけない場面で身動きが取れなくなります。
スマートフォンの充電にも使えます
車は、電源としても価値があります。
シガーソケットやUSB端子から、スマートフォンを充電できます。停電が長引くとき、これは大きな助けになります。
注意したい点
ただし、次の点に気をつけてください。
- エンジンを止めた状態での充電は、バッテリーを消耗させる
- 複数台を同時に充電すると負担が大きい
- 充電中は車から離れない
- 近所の方に貸す場合も、バッテリーの残量を意識する
最後の項目について補足します。災害時、車を持っている方が近隣の充電を引き受ける場面があります。助け合いとして価値のある行動です。
ただし、自分の車が動かなくなっては元も子もありません。無理のない範囲にとどめてください。
車中泊避難との関係
車を避難先として使う場合、ラジオは自然に手元にあります。
ただし車中泊には、別の注意点があります。
エコノミークラス症候群
狭い車内で同じ姿勢を続けると、血栓ができやすくなります。過去の災害でも、車中泊による健康被害が報告されています。
水分をこまめに取り、1時間に一度は体を動かしてください。可能であれば、車外に出て歩くことをおすすめします。
平らな場所を選ぶ
傾いた場所での車中泊は、体に負担がかかります。また、寝ている間に体がずり落ちて眠りが浅くなります。
可能な限り平坦な場所を選んでください。
換気を忘れない
窓を完全に閉め切ると、車内の空気が悪くなります。少し開けるか、換気の設定を使ってください。
ただし、防犯上の配慮も必要です。特に女性や子どもだけの場合は、周囲の状況を見て判断してください。
車中泊避難の詳細は【2026年版】車中泊避難に必要なもの完全リスト|防災士推奨グッズと注意点を徹底解説にまとめています。
車を使えない場面を知っておく
車に頼る前提を作ると、使えないときに困ります。想定しておくべき場面を挙げます。
地震の場合
駐車場までの経路がふさがれることがあります。ブロック塀の倒壊、電柱の傾き、建物からの落下物。徒歩でも通れない状況が起こりえます。
また、立体駐車場では機械が停電で動かず、車を出せないことがあります。マンションの機械式駐車場も同様です。
この場合、車は「あるのに使えない」状態になります。
津波の場合
沿岸部では、車に近づくこと自体が危険です。津波は想定より早く到達します。
「車を取りに戻る」という判断が、命を落とす原因になった例は数多く報告されています。高い場所へ逃げることを優先してください。
洪水・冠水の場合
水深が30センチを超えると、車のエンジンは止まる可能性があります。ドアも水圧で開かなくなります。
冠水した場所に停めた車は、そもそも動きません。マフラーが水没していれば、エンジンをかけること自体が危険です。
浸水想定区域にお住まいなら、事前に高台へ車を移動させる判断も必要になります。
大雪の場合
車が雪に埋もれていれば、掘り出す作業が必要です。除雪に数十分かかることもあります。
また、道路が通行止めになれば移動できません。この場合、車は情報源としてのみ機能します。
だからこそ二重の備えを
ここまで挙げたどの場面でも、屋内で使える携帯ラジオは機能します。
車は便利な選択肢ですが、唯一の手段にはしないでください。乾電池式のラジオを1台、必ず手元に置いておくことをおすすめします。
日頃からできる準備
災害が起きてから慌てないために、平常時にやっておくことを整理します。
| 項目 | やること | 頻度 |
|---|---|---|
| 燃料 | 残量半分で給油する習慣をつける | 常時 |
| バッテリー | 使用年数を確認する。3〜5年で交換を検討 | 年1回 |
| ワイドFM | 受信範囲が90MHzを超えるか確認 | 1回 |
| 周波数 | 地元局のAMとFMをメモして車に置く | 1回 |
| アンテナ | 伸びるか、緩みがないか点検 | 年1回 |
| ジャンプスターター | 車載し、充電状態を確認 | 半年に1回 |
| スコップ | 冬季は必ず積む | 季節ごと |
最後のスコップは、雪国以外の方にも考えていただきたい項目です。近年は普段雪の少ない地域でも、記録的な大雪が発生しています。
折りたたみ式なら場所を取りません。数千円で、一酸化炭素中毒を防ぐ手段が手に入ります。
季節による違い
車を使う際の注意点は、季節で変わります。
| 季節 | 注意点 |
|---|---|
| 夏 | 車内が高温になる。熱中症の危険。日陰に停める |
| 冬 | バッテリー性能が落ちる。雪でマフラーがふさがる |
| 梅雨・台風 | 冠水でマフラーが水没する。低地を避ける |
| 通年 | 燃料の残量。バッテリーの劣化 |
特に注意していただきたいのが、夏と冬です。
夏の車内は、外気温35度で最高57度に達するという実験結果があります。エアコンなしで長時間過ごすのは危険です。
冬は、暖房のためにエンジンをかけ続けたくなります。しかし雪が積もる状況では、一酸化炭素のリスクが跳ね上がります。
私が北海道で気をつけていること
私は札幌に住んでいます。冬に車を使う機会が多い土地です。
この地域で最も気をつけているのが、やはり一酸化炭素です。
雪は、想像以上の速さで車を埋めます。1時間に5センチの降雪でも、3時間で15センチです。地面近くにあるマフラーの排気口は、この程度でも十分にふさがれます。
さらに厄介なのが地吹雪です。降っていなくても、風で運ばれた雪が車体の風下側に吹きだまりを作ります。
2018年の経験から
2018年の胆振東部地震では、全道が停電するブラックアウトを経験しました。
あのとき、車を情報源や充電場所として使った方は多かったはずです。9月だったため、暖房の必要はありませんでした。
もしあれが真冬だったらと考えると、状況はまったく違ったでしょう。暖を取るためにエンジンをかけ続ける人が増え、事故のリスクも高まったはずです。
季節によって、同じ「車を使う」という行動の危険度が変わる。この認識を持っておいてほしいと思います。
雪国以外の方にこそ伝えたいこと
一酸化炭素中毒の話をすると、「うちは雪が降らないから関係ない」と思われるかもしれません。
しかし近年、普段は雪の少ない地域で記録的な大雪が発生しています。高速道路で数百台が立ち往生する事態も、繰り返し起きています。
そして被害が大きくなりやすいのは、むしろ雪に慣れていない地域です。備えがなく、知識もないためです。
雪国では、車にスコップを積むことが常識になっています。マフラーの除雪も、多くの人が知っています。
この知識が全国に広がってほしい。北海道に住む者として、そう考えています。
車は「動く防災設備」です
私は車を、家に次ぐ防災設備だと捉えています。
情報を得られ、電気があり、雨風をしのげ、移動もできる。これだけの機能を持つものは、ほかにありません。
ただし、使い方を誤れば命に関わります。だからこそ、正しい知識を持ったうえで活用してほしいと思っています。
エンジンをかけるなら、一酸化炭素を知っておいてください
この記事では、車を情報源として使う方法を書いてきました。最後に、いちばん大事な注意を書き添えます。
エンジンをかけたまま車内にとどまることは、条件がそろうと命に関わります。排気に含まれる一酸化炭素は、無色で無臭です。出ていることに気づけません。
2026年8月、千葉県の豪雨で停電した住宅で発電機を使った30代の男性が、一酸化炭素中毒で亡くなりました。雪の日だけの話ではなく、真夏の停電でも起きています。
発電機、炭、車のエンジン。共通する仕組みと、「窓を開ければ大丈夫」が成り立たない理由は災害時の一酸化炭素中毒とは?換気では防げない理由にまとめました。
よくある質問
Q. 停電中に車のラジオは使えますか
A. 使えます。むしろアンテナが大きく電源にも余裕があるため、家庭用の携帯ラジオより受信状況が良いことも珍しくありません。ただしバッテリー上がりと一酸化炭素中毒に注意が必要です。
Q. エンジンをかけずに聴けますか
A. 聴けます。鍵をアクセサリー電源(ACC)の位置にすれば動きます。プッシュスタートの車なら、ブレーキを踏まずにスタートボタンを1回押してください。この方法なら排気ガスが出ないため安全です。
Q. エンジンを止めたまま何時間くらい使えますか
A. 一般に数時間とされますが、バッテリーの劣化状況、気温、音量で大きく変わります。安全側で考えるなら、連続使用は1時間以内にとどめてください。時間を決めて聴くのが現実的です。
Q. エンジンをかけて聴くのは危険ですか
A. 状況によります。雪に埋もれている、閉め切った車庫の中、マフラーが水没しているといった場合は絶対に避けてください。排気の逃げ道が確保されていれば、エンジンをかけても問題ありません。
Q. 雪の日に気をつけることは何ですか
A. マフラー周辺の除雪です。JAFの実験では、雪に埋もれた状態でエンジンをかけると22分ほどで一酸化炭素が1000ppmに達しました。マフラー周辺を除雪した状態ではほぼ0ppmでした。降り続いているなら、こまめに除雪し直してください。
Q. バッテリーが上がったらどうすればよいですか
A. 災害時は救援がすぐに来ません。ポータブル型のジャンプスターターを車に積んでおくと、自力で対処できます。手のひらサイズでモバイルバッテリーを兼ねる製品もあります。
Q. カーラジオはワイドFMに対応していますか
A. 近年の車載機は対応していることが多いですが、古い車では非対応の場合があります。FMの周波数表示を確認してください。上限が「90」で終わっていれば非対応です。「95」や「108」まであれば対応しています。
Q. 燃料はどのくらい入れておくべきですか
A. 残量が半分になったら給油する習慣をおすすめします。災害時はガソリンスタンドに長い列ができ、停電で給油機が動かない店舗も出ます。常に半分以上あれば、数時間の情報収集や暖房がまかなえます。
Q. 電気自動車でも同じですか
A. 排気ガスが出ないため、一酸化炭素中毒の心配はありません。ただし充電が尽きれば動かず、停電中は充電もできません。ハイブリッド車は停車中でもバッテリーが減るとエンジンが自動始動するため、マフラー周辺の除雪が必要です。
Q. 受信状況が悪いときはどうすればよいですか
A. まず停める場所を変えてみてください。立体駐車場や地下、ビルに囲まれた場所では入りにくくなります。数十メートル移動するだけで変わることもあります。ロッドアンテナが縮んだままになっていないかも確認してください。
Q. 車を情報拠点にするとは、どういうことですか
A. 1日のうち決まった時間に車へ行き、ラジオで情報を確認し、その間にスマートフォンを充電するという運用です。都度エンジンをかけるより効率的で、バッテリーへの負担も抑えられます。聴いた内容は紙にメモして家族に伝えてください。
Q. 冠水した場所の車は使えますか
A. 使わないでください。水深30センチを超えるとエンジンが止まる可能性があり、マフラーが水没した状態でエンジンをかけるのは危険です。浸水想定区域にお住まいなら、事前に高台へ移動させる判断も必要です。
Q. 車があれば携帯ラジオは不要ですか
A. 不要にはなりません。地震で駐車場までの道がふさがれる、津波の想定区域で車に近づけない、冠水で使えないといった場面があります。持ち出せるラジオも別に用意してください。
まとめ
停電時に車のラジオを使う方法について、要点を整理します。
- 車は有力な情報源。アンテナが大きく受信性能が高い
- 近年の車載機はワイドFMに対応していることが多い
- エンジンを止め、ACCの位置にすれば排気ガスは出ない
- エンジン停止での連続使用は1時間以内が安全
- 雪に埋もれた状態でのエンジン始動は22分で1000ppmに達する
- マフラー周辺を除雪すれば一酸化炭素はほぼ0ppm
- 閉め切った車庫、マフラーの水没時も危険
- 燃料は残量半分で給油する習慣をつける
- ジャンプスターターを積んでおくと自力で対処できる
- 車に近づけない場面があるため、携帯ラジオも必要
車は、多くのご家庭にとって最大の「使える設備」です。にもかかわらず、防災の文脈で語られる機会は多くありません。
情報源として、電源として、そして一時的な避難場所として。使い方を知っておけば、選択肢が大きく広がります。
ただし、使い方を誤れば命に関わります。今日お伝えした3つの条件だけは、必ず覚えておいてください。
バッテリーを上げない。排気の逃げ道を確保する。燃料を切らさない。この3つです。
そして今日できることがひとつあります。次に車に乗るとき、FMの周波数表示を見てください。上限が「90」で終わっていないか、それだけの確認です。
あわせて燃料計も見ておきましょう。半分を切っていたら、そのまま給油してしまうのが確実です。


