【この記事の要約】
結論から言います。クマに遭遇したら、目を離さず、ゆっくり後ろへ下がってください。背を向けて走るのは最も危険です。人間より速いうえ、逃げるものを追う動きを引き出します。2025年度の人身被害は238人、うち死者13人で過去最多。出没件数は5万801件、捕獲数は1万4720頭でどちらも最多です。被害は10月に89人と突出し、9月から11月で161人。地域では秋田67人、岩手40人、福島24人と、東北6県で158人と6割を超えます。北海道のヒグマと本州のツキノワグマでは、危険の性質そのものが違います。この記事では、距離ごとの判断、鈴とスプレーの現実的な使い方、そして死んだふりが有効な条件をまとめます。
結論|やることは三つだけです
覚えることを減らします。とっさの場面で思い出せなければ、意味がありません。
一、走らない
これが最優先です。
クマは短い距離なら時速40キロを超えるとされます。オリンピックの短距離選手でも逃げ切れません。
そして、背を向けて走る動きは、追いかける行動を引き出します。逃げるものを追うのは、多くの動物に共通する反応です。
二、目を離さず、ゆっくり下がる
相手を視界に入れたまま、後ろへ下がります。
にらみつける必要はありません。ただ、動きを見ておくことが大事です。突然の変化に反応できます。
足元を確認せずに下がると転びます。木の根や石に注意してください。転倒は、そのまま攻撃を招きます。ゆっくりで構いません。
三、大声を出さない
これは、多くの方の印象と逆かもしれません。
遠くにいて、まだ気づかれていないなら、音を出して知らせるのは有効です。
けれど、すでに至近距離で向き合っているなら、大声は逆効果です。驚かせて、防御のための攻撃を引き出します。
この使い分けが、いちばん間違われやすい部分だと思います。
いま起きていること
数字を押さえておきます。判断の根拠になります。
2025年度は、すべての指標で過去最多でした
| 項目 | 2025年度 | それまでの最多 |
|---|---|---|
| 人身被害 | 238人 | 219人(2023年度) |
| 死者 | 13人 | 6人(2023年度) |
| 出没件数 | 5万801件 | — |
| 捕獲数 | 1万4720頭 | 統計開始以来で最多 |
※出没件数は、北海道(非公表)と、生息していないとされる九州・沖縄を除いた集計です。
注目すべきは死者数です。被害者数は219人から238人へ約9%の増加ですが、死者は6人から13人へ倍増しています。
10月が、突出しています
月ごとに見ると、はっきりした山があります。
10月だけで89人。そして9月から11月の3か月で161人と、年間の3分の2以上がこの期間に集中しています。
理由は冬眠です。冬を越すための脂肪をためようとして、活動範囲も時間も広がります。
だから、秋は別の季節だと考えてください。同じ山道でも、9月と6月ではまったく違います。
そして、東北に集中しています
都道府県別では、こうなります。
| 県 | 2025年度の人身被害 |
|---|---|
| 秋田 | 67人 |
| 岩手 | 40人 |
| 福島 | 24人 |
| 東北6県 合計 | 158人(全体の6割超) |
秋田県だけで、全国の4分の1を超えています。人口比で見ると、その差はさらに際立ちます。
逆に言えば、それ以外の地域では確率が大きく下がります。過度に恐れるより、自分の地域の頻度を知ることが先です。
ヒグマとツキノワグマは、別の相手です
ここを混同すると、対処を誤ります。
体格が違います
| ヒグマ | ツキノワグマ | |
|---|---|---|
| 生息 | 北海道 | 本州・四国 |
| 体重 | 成獣で300〜500キロ | おおむね50〜120キロ |
| 見分け | 全身が茶色から黒。非常に大きい | 胸に白い三日月の模様 |
| 性質 | 臆病だが攻撃性は高い | 基本的に臆病で人を避ける |
| 危険の型 | まれに捕食を目的とした襲撃がある | 驚かせたことによる防御の攻撃が中心 |
ヒグマは日本最大の陸上動物です。体重が5倍近く違えば、同じ対処が通用しないのは当然です。
九州にはいません
クマは、九州・沖縄には生息していないとされています。
四国では個体数が非常に少なく、扱いが本州とは異なります。
ですから、九州にお住まいなら、警戒の中心はイノシシになります。やるべきことが変わるので、まず自分の地域を確認してください。
北海道は、前提が違います
私が住んでいる北海道には、ヒグマが生息しています。
札幌のような大きな都市でも、市街地への出没があります。都会だから安全とは言えないのが、この地域の特徴です。
そして、ヒグマにはまれに人を餌として狙う個体がいます。この場合、身を守る姿勢を取るという方法は有効になりません。この違いは、あとで詳しく書きます。
距離ごとの、具体的な判断
ここからが実際の行動です。距離で答えが変わります。
遠くにいて、気づかれていない場合
最も良い状態です。相手はまだこちらを認識していません。
やることは一つ。静かに、来た道を戻ってください。
写真を撮ろうとしないでください。撮影のために近づいた事故が、実際に起きています。
中距離で、気づかれた場合
相手がこちらを見ています。ここが分かれ目です。
落ち着いて、静かに話しかけるように声を出してください。「人間である」と伝える意味があります。突然の大声ではありません。低く、穏やかな声です。
クマは目があまり良くありません。人か動物かを判断しかねているとき、声が助けになります。
そして、ゆっくり後退します。相手が去るなら、それで終わりです。
至近距離で、向き合ってしまった場合
いちばん危ない状態です。
走らない。背を向けない。目を離さない。この三つを守ってください。
大きく見せるために両手を上げるのは、有効とされています。ただし、急な動作は避けてください。
持ち物を投げつけないでください。刺激するだけです。ただし、荷物をその場に置くことで、相手の関心をそちらに向けられる場合があります。
突進してきた場合
クマの突進には、途中で止まる「ブラフチャージ」と呼ばれる威嚇があります。すべてが攻撃ではありません。
それでも、動かずに耐えるのは非常に難しいことです。
撃退スプレーがあるなら、ここで使います。目と鼻をめがけて、一気に全量を噴射してください。有効な距離は、製品にもよりますがおよそ7メートルから12メートルです。
鈴とスプレーの、現実的な話
道具について、正直に書きます。
鈴は「効かない」と言われることがあります
その指摘には、根拠があります。
沢の音や強い風があると、鈴の音は届きません。水の音は想像以上に大きく、数メートル先にも聞こえないことがあります。
そして、鈴の音に慣れてしまった個体がいるという報告もあります。人が来ても危険がないと学習すれば、音は意味を持たなくなります。
それでも、持つ価値はあります
ここは公平に書いておきます。
遭遇そのものを減らす効果は、認められています。問題は「鈴があるから安全だ」と考えることです。
ですから、鈴は持つ。けれど、それを安全の根拠にしない。これが現実的な扱いだと思います。
ホイッスルと、人の声のほうが確実です
鈴より大きく、はっきりした音が出ます。沢や風に負けにくい。
そして、いちばん確実なのは人と話しながら歩くことです。会話は不規則で、人間特有の音です。動物は避けます。
複数で行動する意味は、ここにもあります。
スプレーは、使い方を知らないと役に立ちません
三つだけ覚えてください。
一、すぐ抜ける場所に付ける。リュックの中では間に合いません。腰か肩のベルトです。
二、風向きを見る。向かい風で噴射すると、自分がまともに浴びます。
三、突進してきたときだけ使う。遠くの相手に向けても届かず、刺激するだけです。
そして、有効期限があります。買ったまま何年も放置していないか、一度確認してください。
死んだふりは、条件つきです
誤解が多い部分なので、分けて書きます。
まず、遭遇したときの行動ではありません
「クマに会ったら死んだふり」という覚え方は、危険です。
これは、攻撃を避けられない最終段階での防御姿勢として語られるものです。遭遇した時点で寝転ぶ話ではありません。
最初にやるべきは、目を離さずゆっくり下がることです。
防御の攻撃には、有効とされます
クマが身を守るために突進してきた場合、うつ伏せになり、両手で首の後ろを覆う姿勢が取られます。
リュックを背負ったままなら、背中を守る役に立ちます。急所は首と腹です。
相手が「脅威ではない」と判断すれば、離れていきます。声を出さず、じっと耐えることになります。
捕食を目的とした襲撃では、逆効果です
ここが重要です。
クマは死んだ動物も食べます。餌として狙われている場合、動かないことは何の防御にもなりません。
この場合は、抵抗したほうが生き延びる可能性が高いとされています。
見分けは難しいのですが、音もなく近づいてくる、執拗に追ってくる場合は、捕食の可能性を考えてください。驚いて突進してくる場合とは、動きが違います。
市街地に出た場合
山の話だけでは足りなくなっています。
2025年9月から、市街地で銃を使えるようになりました
改正鳥獣保護管理法が2025年9月1日に施行され、緊急銃猟という仕組みができました。
市町村長の判断と指示によって、委託されたハンターが銃を使えます。ただし条件が四つあります。
一、住居や公共の場所に侵入している、またはそのおそれがあること。
二、危険を防ぐために緊急の必要があること。
三、銃以外の方法では、迅速かつ確実な捕獲が難しいこと。
四、弾が住民に当たるおそれがないこと。
だから、住民は屋内に入ってください
四つ目の条件に注目してください。現場に人がいれば、撃てません。
出没が伝えられたら、屋内に入り、窓と戸を閉め、外に出ないでください。それが自分を守り、同時に行政の対応を可能にします。
見物に出るのは、対応そのものを止める行為になります。
建物に入られたら
追い出そうとしないでください。
別の部屋か屋外に移り、扉を閉めます。そして110番です。逃げ道は塞がないでください。相手が自分から出ていくのが、最も安全な結末です。
なぜ2025年度に、これほど増えたのか
原因が分かると、来年以降の見通しも立ちます。
一、木の実が不作だった年です
ブナやミズナラの実は、豊作の年と凶作の年がはっきり分かれます。数年に一度、ほとんど実らない年が来ます。
凶作の年の秋、クマは餌を求めて広い範囲を歩き回ります。そして、里に降りてきます。
つまり、被害は毎年一定ではありません。山の実りによって、年ごとに大きく振れます。この点は、天候によって変わる災害と似ています。
二、個体数そのものが増えています
2025年度の捕獲数は1万4720頭で、統計を取り始めてから最も多くなりました。
これだけ捕獲しても出没が減らないということは、生息数の水準が高いということです。
背景には、狩猟者の高齢化と減少があります。山に入って個体数を抑える人が減れば、数は戻ります。
三、人と山の境界が消えました
かつて集落と山のあいだには、里山という帯がありました。薪を取り、下草を刈り、畑を耕す。人の手が入ることで、動物が近づきにくい空間ができていました。
いま、その帯が管理されていません。手入れされない林、耕作をやめた畑、伸びたままの草。
クマにとっては、身を隠しながら人の生活圏まで来られる通路です。
四、人を恐れない個体が育っています
これが、いちばん深刻な変化かもしれません。
畑の作物や生ゴミを食べても、追い払われなかった。その経験を重ねた個体は、人を危険と見なさなくなります。
そして、人を恐れないクマは、市街地に入ってきます。ここまで来ると、駆除以外の選択肢がなくなります。
家のまわりから餌を消すことは、結局のところクマを守ることにもつながります。
被害に遭っているのは、どういう人か
統計から、自分の危険度を測れます。
山菜やきのこを採りに入った人が多い
人身被害の多くは、山菜採りやきのこ狩りの最中に起きています。
理由がはっきりしています。下を向いて、藪の中を、静かに、一人で移動するからです。
これは、クマに気づかれず近づいてしまう条件がすべて揃っています。そして、クマの側も夢中で餌を食べていて、人に気づいていません。
秋のきのこの時期と、クマが冬眠前に食べ歩く時期は、完全に重なります。人が最も山に入る時期と、クマが最も活発に動く時期が、そのまま一致しているということです。
しかも、山菜やきのこはクマの餌でもあります。同じ場所を、同じ目的で歩いていることになります。鉢合わせが起きるのは、偶然ではありません。
だから、山菜採りには特別な注意が要ります
やることは四つです。
一、一人で入らない。会話が最も確実な知らせになります。
二、こまめに音を出す。下を向いて集中している時間が長いので、意識して手を止めて音を出してください。
三、藪の奥に入り込まない。見通しの効かない場所は、鉢合わせの確率が跳ね上がります。
四、採った山菜をその場に広げない。においが呼びます。
民家の敷地内での被害も起きています
山に入らない人にも関係があります。
庭、畑、車庫、玄関先。朝や夕方に外へ出たところで鉢合わせる形です。
出没が伝えられている時期は、暗い時間に外へ出る前、まず窓から外を見てください。ライトで照らして、音を出してから出る。それだけで違います。
けがは、顔と頭に集中します
書きにくいことですが、備えの理由になるので記します。
クマの攻撃は、立ち上がって前足を振り下ろす形になります。そのため、顔、頭、首、腕に傷を負う例が多く報告されています。
死者が出る場合も、この部位の損傷が原因になります。
だから、防御姿勢では首の後ろを両手で覆います。うつ伏せになるのは、顔と腹を守るためです。理屈が分かっていれば、とっさに取れます。
出没情報を、どこで見るか
遭遇を減らすいちばん確実な方法です。
市町村の公式サイトが基本です
多くの自治体が、目撃情報を日付と場所つきで公開しています。地図に落としている市町村もあります。
探し方は簡単です。「市町村名 クマ 出没」で検索すれば、たいてい上位に出ます。
防災メールで届く地域もあります
自治体の防災情報メールに、クマの出没が含まれている地域があります。
すでに登録している方は、配信の設定を確認してください。登録していないなら、この機会に入れておく価値があります。大雨や避難情報も同じ経路で届きます。
登山口の掲示を、必ず見てください
山に入るなら、これがいちばん新しい情報です。
「今週、この登山道で目撃あり」と書かれていたら、コースを変えるか、日を改めてください。
天気予報を見てから山に入るのと、同じことです。情報があるのに見ないのが、いちばんもったいない。
見かけたら、必ず伝えてください
これが地域の役に立つ行動です。
危険が差し迫っているなら110番。そうでなければ市町村の担当課です。農林課、環境課、鳥獣対策の担当が置かれています。
伝えるのは四つだけです。いつ、どこで、大きさはどのくらいで、何をしていたか。
行政は、通報がなければ出没を把握できません。把握できなければ、警戒も対策も打てません。
家のまわりで、今日できること
費用がかからず、効果が大きい順に並べます。
| やること | なぜ効くのか | 費用 |
|---|---|---|
| 収穫しない柿や栗を落とす | 秋のクマを最も強く引き寄せます | 0円 |
| 生ゴミを屋外に置かない | においが遠くまで届きます | 0円 |
| ペットフードを屋内へ | 置きっぱなしが餌場になります | 0円 |
| 家のまわりの草を刈る | 隠れて近づける場所を消します | 手間のみ |
| コンポストの管理 | 強いにおいを出します | 0円 |
| 電気柵 | 畑を守る。補助のある自治体があります | 数万円〜 |
いちばん上の柿と栗が、群を抜いて効きます。秋に人里へ出るクマの多くが、これを目当てにしています。
ただし、一軒だけでは足りません
自分の家の柿を採っても、隣の家に放置された柿があれば、クマは来ます。
だから、この対策は地域でまとめて行うと効果が跳ね上がります。町内会や自主防災組織が動ける領域です。
組織の作り方は自主防災組織とは?にまとめました。災害のためだけの組織ではありません。
電気柵には補助がある場合があります
農地や家庭菜園を守る柵について、費用の一部を補助している市町村があります。
耐震改修の補助金と同じで、制度があっても申請しなければ受け取れません。そして多くの場合、工事の前に申請が必要です。
調べ方は補助金を自分の市区町村で調べる方法と同じ考え方でできます。市町村名と「鳥獣被害 補助」で検索するのが最短です。
車の中と、通勤通学の場面
山に入らない人にとっては、こちらのほうが現実的です。
車の中は、比較的安全です
クマを見かけたら、車内にいるならそのまま留まってください。窓を閉め、ドアをロックします。
降りて写真を撮る行為は、非常に危険です。車から降りた瞬間に、守るものがなくなります。
そして、クラクションを鳴らし続けないでください。驚いたクマが車に向かってくることがあります。離れるのが先です。
道路に出てきた場合は、止まって待つ
急ハンドルは避けてください。対向車線への飛び出しや横転のほうが、はるかに重い事故になります。
減速し、直進を保つ。相手が渡り終えるまで待つのが最も安全です。
通学路に出た場合
学校や自治体から連絡が来ます。集団登校、送迎、時間の変更といった対応が取られます。
家庭でできるのは、子どもに三つだけ伝えておくことです。
「走らない」「近づかない」「すぐ大人に言う」。
短い言葉でなければ、とっさに思い出せません。難しい説明は要りません。
子どもだけで過ごす時間の備えは子どもが留守番中に災害が起きたらにもまとめています。
誤解されやすい三つのこと
広く言われているが、正確ではないものを挙げます。
一、「クマは冬眠するから冬は安全」
これは、必ずしも正しくありません。
暖冬や餌の状況によっては、冬眠に入らない個体、あるいは途中で目を覚ます個体があります。穴持たずと呼ばれる状態です。
この状態のクマは空腹で、動きも読みにくい。冬だから絶対に出ないとは考えないでください。
二、「上り坂に逃げれば追ってこない」
下り坂に弱いという説を聞いたことがあるかもしれません。
そのような性質は確認されていません。クマは斜面を上下どちらにも速く移動します。
木に登るという方法も、ツキノワグマは木登りが得意です。確実な逃げ場にはなりません。
三、「クマ避けの音を大きく出せば安全」
音は、遠くにいる相手に知らせるためのものです。
すでに至近距離で向き合ってしまった場面では、大きな音は驚かせるだけで、逆効果になります。
距離によって使い分ける。ここを覚えておいてください。
備えるものを、優先順位で並べます
| もの | 使いどころ | 優先度 |
|---|---|---|
| ホイッスル | 鈴より届く。風や沢音に負けにくい | 高い |
| 撃退スプレー | 突進されたときの最後の手段 | 山に入るなら高い |
| ヘッドライト | 薄暗い時間に、先に気づける | 高い |
| 鈴 | 存在を知らせる。過信はしない | 中くらい |
| 携帯電話 | 通報に使う。圏外の確認を | 高い |
| リュック | 背中を守る役に立ちます | 中くらい |
ライトは両手が空く形が有利です。片手がふさがると、とっさの動作ができません。選び方は防災用ヘッドライトの選び方にまとめました。
スプレーを買うかどうかの判断
数千円から一万円ほどします。全員に必要なものではありません。
買う意味があるのは、次のいずれかに当てはまる方です。
一、秋に東北や北海道の山へ入る。
二、山菜やきのこを採りに、藪へ入る習慣がある。
三、出没が頻繁に伝えられる地域で、朝夕に屋外作業をする。
どれにも当てはまらないなら、まずは家のまわりの餌を消すことに手間をかけてください。そちらのほうが、確率を下げます。
よくある質問
Q. 子連れのクマを見たら
最も危険な状況です。母グマは子を守るために攻撃します。
子グマだけが見えたときは、近くに必ず母グマがいると考えてください。かわいいからと近づくのは、非常に危険です。
すぐに、静かにその場を離れてください。子と自分のあいだに入らないことも大事です。
Q. 音楽を聴きながら歩いてもいいですか
やめてください。
耳をふさぐと、相手の物音に気づけません。鉢合わせの多くは、お互いが気づかないまま近づいて起きています。
そして、音楽は外に漏れません。自分の存在を知らせる役には立ちません。
Q. 犬を連れているときは
リードを短く持ち、抱えられるなら抱えてください。
犬が吠えるとクマを刺激します。そして犬が向かっていった場合、興奮したクマが飼い主のほうへ来ることがあります。
Q. 秋以外は安全ですか
減るだけで、ゼロにはなりません。
春にも、山菜採りの時期の事故が起きています。冬眠から覚めた直後で、空腹の個体が動く時期です。
ただし優先順位をつけるなら、秋です。10月の89人という数字が、それを示しています。
Q. 遭遇した場所は、もう通らないほうがよいですか
しばらくは避けてください。
クマは行動範囲の中を繰り返し歩きます。餌がある場所なら、なおさら戻ってきます。一度見た場所は、数日から数週間、警戒すべき場所だと考えてください。
そして、その情報を市町村へ伝えてください。同じ場所で複数の通報があれば、行政は重点的に対応します。
Q. リュックを置いて逃げるという方法は
状況によります。
荷物を置くことで、相手の関心をそちらへ向けられる場合があります。とくに食べ物のにおいがある場合です。
ただし、投げつけないでください。刺激するだけです。そっと下に置いて、目を離さずに下がる。この形になります。
また、リュックは背中を守る役に立ちます。防御姿勢を取る場面では、背負ったままのほうが有利です。判断が難しいところですが、原則としては背負ったまま後退してください。
Q. 山に入らなければ大丈夫ですか
以前ほど、そうとは言えなくなっています。
出没は5万件を超え、市街地への侵入も報告されています。だから2025年に法改正が行われました。
ただし、地域差は非常に大きい。まず、お住まいの市町村の出没情報を一度見てください。
これから、どうなっていくのか
見通しを立てておくと、毎年の判断がしやすくなります。
被害は、年ごとに大きく振れます
2023年度が219人、2025年度が238人。その間の年は、これより少ない年もありました。
理由は、木の実の豊凶です。凶作の秋は跳ね上がり、豊作の秋は落ち着きます。
ですから、毎年秋に、その年の状況を一度確認してください。自治体や研究機関が、ブナの結実状況を公表しています。「県名 ブナ 豊凶」で調べられます。
市街地への出没は、増える方向にあります
人を恐れない個体が育ち、里山の管理が追いつかず、狩猟者は減っています。この三つが同時に進んでいるかぎり、傾向は変わりにくい。
2025年の法改正で市街地の銃猟が可能になったのは、そうした流れを受けたものです。
それでも、確率は地域で決まります
最後にもう一度書いておきます。
2025年度の238人のうち、158人が東北6県です。秋田だけで67人。
つまり、お住まいの地域によって、必要な備えはまったく違います。
年に数件も出没がない地域なら、柿を落とし、生ゴミを外に置かない。それで十分です。秋の東北や北海道で山に入るなら、ホイッスルとスプレーを持ち、単独行動を避ける意味があります。
この判断を自分でできることが、いちばん役に立ちます。
クマ以外の相手については、野生動物に遭遇したらで四種類を比べています。イノシシとは正解が真逆です。出没情報の探し方は出没情報の調べ方と通報先に、家のまわりの対策は野生動物を寄せつけない方法にまとめました。
あわせて、イノシシに市街地で遭遇したら、サルとシカの被害もご覧ください。相手によって、取るべき行動が変わります。
まとめ|秋の東北なら、備えの意味があります
最後に整理します。
覚えること
一、走らない。目を離さず、ゆっくり下がる。
二、至近距離では大声を出さない。遠くにいるときだけ音を出します。
三、鈴は持つが、それを安全の根拠にしない。ホイッスルと会話のほうが確実です。
四、死んだふりは最終手段。そして、捕食目的の襲撃では逆効果です。
五、市街地に出たら屋内へ。人がいると、行政は撃てません。
そして、確率で考えてください
年間238人という数字は、全国の人口に対して極めて小さい。その6割が東北6県に集中しています。
出没が年に数件の地域なら、家のまわりの餌を片づけるだけで足ります。秋の東北や北海道で山に入るなら、ホイッスルとスプレーを持つ意味があります。
この差を自分で判断できることが、いちばん役に立ちます。
不安をあおる情報は、いくらでも流れてきます。けれど、必要なのは自分の場所の数字です。市町村の出没情報を一度開けば、それが分かります。5分で済みます。
そして、秋になったら、庭の柿を落としてください。これが、この記事で紹介した中で最も費用対効果の高い対策です。
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップに、地域ごとのリスクは47都道府県の災害リスク一覧にまとめました。両手が空くライトの選び方は防災用ヘッドライトの選び方が参考になります。

