【この記事の要約】
北海道の地震は、大きく五つの場所で起きます。千島海溝のプレート境界、沈み込むプレートの内部、浦河沖・日高地方の深い場所、内陸の活断層、そして日本海側です。それぞれ揺れ方も、津波の有無も、備え方も違います。この記事では、地震調査研究推進本部と気象庁の公表資料をもとに、五つの震源域を整理しました。あわせて、札幌・千歳のすぐ東を通る石狩低地東縁断層帯についても、公表されている数値をそのまま紹介します。自分の住む地域がどの震源域の影響を受けるのかが分かれば、備える順番が決まります。
「北海道はどこで地震が起きるのか」。この質問に、私はひとことで答えられませんでした。
場所によって、答えがまったく違うからです。
釧路や根室なら、答えは「沖の海溝」です。札幌なら、答えは「足元と、少し離れた沖」です。函館や小樽なら、太平洋側とは別の話になります。
私は札幌に住んでいます。防災士として地域の備えを考えるとき、いつも最初に確認するのがこの「どこで起きるか」です。
震源の場所が変われば、備え方も変わります。津波を警戒すべきなのか、家具の固定を優先すべきなのか、停電の長期化を想定すべきなのか。すべて震源で決まります。
この記事では、公表されている資料にもとづいて、北海道の震源域を五つに整理しました。数字はすべて出典を明記します。
結論:北海道の地震は、五つの場所で起きています
先に答えを書きます。北海道の地震は、次の五つに分けて考えると整理できます。
| 震源域 | どこで起きるか | 主な特徴 |
|---|---|---|
| ① 千島海溝のプレート境界 | 根室沖・十勝沖の海底 | 規模が最大。津波を伴う |
| ② 沈み込むプレートの内部 | 陸の下の深い場所 | 広い範囲が揺れる |
| ③ 浦河沖・日高地方 | 深さ20〜40kmと深め | 地震の数が非常に多い |
| ④ 内陸の浅い地震 | 活断層・陸域の浅い場所 | 震源が近く、揺れが激しい |
| ⑤ 日本海側 | 積丹半島沖・北海道西方沖 | 知られていないが津波あり |
多くの方が思い浮かべるのは①だけです。しかし、実際に北海道で人が亡くなった地震には、②③④⑤のすべてが含まれています。
ひとつずつ見ていきます。
① 千島海溝のプレート境界|規模がいちばん大きい
北海道の東側の海底には、千島海溝という深い溝があります。ここで太平洋プレートが陸のプレートの下に沈み込んでいます。
この境界がずれると、マグニチュード8を超える地震が起きます。
公表されている確率と規模
地震調査研究推進本部(地震本部)は、領域ごとに長期評価を公表しています。
| 領域 | 想定される規模 | 30年以内の発生確率 |
|---|---|---|
| 根室沖 | M7.8〜8.5程度 | 90%程度 |
| 十勝沖 | M8.0〜8.6程度 | 20%程度 |
| 超巨大地震(17世紀型) | M8.8程度以上 | 7〜40% |
出典は地震本部の長期評価です。この確率は評価の基準日ごとに更新されます。最新の数値は地震本部のサイトでご確認ください。
目を引くのは根室沖の90%程度という数字です。これは全国の海溝型地震のなかでも、高い部類に入ります。
17世紀型の超巨大地震とは何か
「17世紀型」という言葉は聞き慣れないと思います。
北海道太平洋沿岸には、17世紀に起きた巨大津波の痕跡が、地層として残っています。海岸から数キロ内陸まで、砂が運ばれた跡が見つかっています。
これは、通常のプレート境界地震では説明できない規模の津波です。
地震本部は、この17世紀型の超巨大地震をM8.8程度以上、30年以内の発生確率を7〜40%と評価しています。
幅のある数字ですが、下限の7%でも決して低くはありません。
過去に実際に起きた地震
この領域では、繰り返し大きな地震が起きています。
| 発生年 | 名称 | 規模 | 被害 |
|---|---|---|---|
| 1843年 | 釧路・根室の地震 | M7.5 | 津波4〜5m、溺死46人、家屋破損76棟 |
| 1952年 | 十勝沖地震 | M8.2 | 死者・行方不明33人、住家全壊815棟 |
| 1968年 | 十勝沖地震 | M7.9 | 死者2人、負傷者133人、住家全壊27棟 |
| 1973年 | 根室半島沖地震 | M7.4 | 負傷者26人、住家全壊2棟 |
| 1993年 | 釧路沖地震 | M7.5 | 死者2人、負傷者966人、住家全壊53棟 |
| 1994年 | 北海道東方沖地震 | M8.2 | 負傷者436人、住家全壊61棟 |
| 2003年 | 十勝沖地震 | M8.0 | 死者1人、行方不明1人、負傷者849人、家屋全壊116棟 |
いずれも地震本部の公表資料によります。
約50年のあいだに、M7.4以上が6回。これが千島海溝という場所の実態です。
この領域に備えるなら、優先は津波です
釧路、根室、厚岸、浜中、広尾、えりも。太平洋沿岸にお住まいなら、最優先は津波からの避難です。
家具の固定も大事ですが、順番が違います。まず、津波避難場所への経路を確認してください。
この領域には、後発地震注意情報という制度も設けられています。詳しくは北海道・三陸沖後発地震注意情報の使い方にまとめました。
② 沈み込むプレートの内部|広い範囲が揺れます
プレート境界だけでなく、沈み込んでいくプレートそのものの内部でも地震が起きます。
これを「スラブ内地震」と呼びます。
震源が深いと、何が変わるのか
震源が深い地震は、揺れが広い範囲に届きます。
震源に近い場所の震度はそれほど大きくならなくても、遠く離れた地域まで揺れが伝わるという特徴があります。
1993年の釧路沖地震はこのタイプで、負傷者966人という大きな被害が出ました。
この地震の怖さは「範囲の広さ」です
沿岸だけでなく、内陸の都市も同時に揺れます。
広い範囲で停電や断水が同時に起きる可能性があります。支援が来るまでの時間が長くなることを前提に、備蓄を考えてください。
そして北海道の場合、支援が届くまでの距離が長いという事情があります。広大な面積に対して幹線道路が限られ、峠が通行止めになれば迂回に何時間もかかります。本州の目安より多めに備えておくという考え方が、私は現実的だと思っています。
③ 浦河沖・日高地方|日本でも指折りの地震多発地帯
ここは、あまり知られていません。しかし北海道でもっとも地震の数が多い場所のひとつです。
なぜ地震が多いのか
日高山脈のあたりは、地下の構造が非常に複雑です。プレートがぶつかり合い、押し曲げられている場所だからです。
地震本部は、この地域について次のように説明しています。
地下構造が複雑であるため、地震の深さを精度よく決めることは難しいのですが、通常の陸域の地震が発生する場所より深い場所(深さ20〜40km)で数多くの地震が発生している(地震本部「日高・十勝地域の地震活動の特徴」より)
深さ20〜40kmというのは、内陸の地震としてはかなり深い部類です。一般的な活断層の地震は、深さ10〜15km程度で起きます。
1982年浦河沖地震
1982年3月21日、浦河沖でM7.1の地震が起きました。浦河町で震度6を観測しています。
被害は、負傷者167人、住家全壊13棟。
注目すべきは、被害が浦河町だけにとどまらなかったことです。地震本部の資料には、苫小牧市や札幌市でも負傷者や家屋の破損が出たと記されています。
震源から札幌まで、直線でおよそ130km。それでも被害が出ました。
札幌に住む私が、この震源域を重く見る理由
札幌は千島海溝から遠く、津波の心配もほとんどありません。だから「札幌は地震が少ない」と思っている方に、何度か会ったことがあります。
それは正確ではありません。
1968年の十勝沖地震(M7.9)でも、札幌市周辺はおおむね震度4、局地的には震度5相当を観測しています。そして地盤の軟弱な地域や、新しく造成された団地で家屋に被害が出ました。
震源が遠くても、地盤が弱い場所では揺れが増幅されます。これが札幌のリスクです。
④ 内陸の浅い地震|震源が近いぶん、揺れが激しい
四つ目は、陸の下の浅い場所で起きる地震です。活断層による地震も、ここに含まれます。
2018年北海道胆振東部地震
記憶に新しい方も多いと思います。2018年9月6日、M6.7の地震が発生しました。
被害は、道内で死者43人、負傷者782人、住家全壊469棟です。
マグニチュードは6.7。千島海溝の地震と比べれば、はるかに小さい数字です。
それでも、これだけの犠牲が出ました。震源が浅く、真下だったからです。
そしてこの地震では、北海道全域が停電するブラックアウトが発生しました。詳しくは北海道胆振東部地震から学ぶことにまとめました。
石狩低地東縁断層帯|札幌・千歳のすぐ東
ここが、北海道内陸で最も注目されている断層帯です。
地震本部が公表している評価は、次のとおりです。
| 項目 | 主部 | 南部 |
|---|---|---|
| 想定される規模 | M7.9程度 | M7.7程度以上 |
| 断層の長さ | 約66km | 54km以上 |
| 30年以内の発生確率 | ほぼ0% | 0.2%以下 |
| 平均活動間隔 | 1000〜2000年程度 | 17000年程度以上 |
| 最新活動時期 | 1739年以後〜1885年 | 不明 |
通過する市町村も公表されています。
主部は、美唄市から岩見沢市、栗山町、長沼町、由仁町、千歳市を経て安平町まで。
南部は、千歳市から安平町、苫小牧市、厚真町を経て、日高町沖合の海域まで。
「ほぼ0%」をどう読むか
確率を見て、安心した方がいるかもしれません。ここは慎重に読んでください。
主部の「ほぼ0%」という数字は、最新の活動が1739年以後〜1885年と比較的新しく、平均活動間隔が1000〜2000年程度であることから計算されたものです。
つまり「直前に動いたばかりだから、当面の確率は低い」という意味です。断層が消えたわけではありません。
そして南部は、最新活動時期が「不明」です。いつ動いたか分かっていない断層の確率は、そもそも精度が高くありません。
もうひとつ大事な点があります。2018年の胆振東部地震は、既知の活断層が動いたものとして評価されていた地震ではありません。
確率の低い断層だけを見て安心するのは、危険な読み方だと私は考えています。
⑤ 日本海側|いちばん忘れられている震源域
最後は日本海側です。ここが一番、意識から抜け落ちています。
1940年 神威岬沖の地震
1940年、積丹半島の神威岬沖でM7.5の地震が起きました。
被害は、死者10名、家屋流失20棟です。
「家屋流失」という言葉に注目してください。津波です。地震本部の資料には「日本海沿岸を津波が襲い」と記されています。
1947年 北海道西方沖の地震
1947年には、北海道西方沖でM6.7の地震が発生し、これも津波を伴いました。
日本海の津波は、到達が早いという特徴があります
日本海側の地震では、震源から海岸までの距離が短いことが多くあります。
太平洋側のように、津波警報を聞いてから避難する時間が十分にあるとは限りません。
1993年の北海道南西沖地震では、奥尻島に地震発生から数分で津波が到達しました。
小樽、余市、積丹、留萌、稚内、江差、せたな。日本海側にお住まいなら、揺れたら即座に高台という行動が必要です。
津波の基本は津波から命を守る行動にまとめました。
揺れやすい地盤という、もうひとつの要素
震源域の話をしてきましたが、同じ地震でも、場所によって揺れの大きさは変わります。
理由は地盤です。
やわらかい地盤は、揺れを増幅します
固い岩盤の上と、やわらかい堆積層の上。同じ距離でも、揺れ方がまるで違います。
やわらかい地盤は、地震の波を増幅させます。ゆっくりとした大きな揺れになり、建物への負担が増えます。
1968年の十勝沖地震で、札幌市周辺の被害が「地盤のごく軟弱な地域や新しく造成された団地」に集中したのは、これが理由です。
北海道で注意したい地盤
北海道には、注意が必要な地盤がいくつかあります。
泥炭地です。石狩平野には広く分布しています。植物が分解しきらずに堆積した、水を多く含むやわらかい土です。
次に埋立地と造成地。もとが谷や沼だった場所を埋めた土地は、周囲より揺れやすいことがあります。
そして河川沿いの低地。砂と水を多く含み、液状化が起きることがあります。
自分の土地の地盤を調べる方法
難しく考える必要はありません。三つの方法があります。
ひとつめは、自治体のハザードマップです。揺れやすさマップや液状化危険度マップを公開している自治体があります。
ふたつめは、古い地図を見ることです。国土地理院のサイトでは、過去の空中写真や旧版地図が見られます。今は住宅地でも、昔は沼や田んぼだったと分かることがあります。
みっつめは、地名を見ることです。沼、沢、谷、川、蓮、深といった字が入る地名は、かつての地形を示していることがあります。
ただし地名だけで判断しないでください。あくまで手がかりのひとつです。
震源域別|今日からできる準備
ここまでの話を、行動に落とし込みます。
沿岸部にお住まいの方へ
優先順位は、はっきりしています。
一、津波避難場所を、経路つきで覚える。地図上の位置ではなく、実際に歩いてください。冬に歩くと、また違う発見があります。
二、非常持ち出し袋を玄関に置く。奥の押し入れでは間に合いません。
三、家族の集合場所を決める。連絡がつかない前提で決めてください。
津波は、警報より揺れが先に来ます。強い揺れを感じたら、警報を待たずに動いてください。
内陸にお住まいの方へ
一、寝室から倒れる家具をなくす。固定より確実なのは、置かないことです。
二、暖房の代替手段を用意する。石油ストーブ、カセットこんろ、防寒着。電気に依存しない手段が必要です。
三、ガラスの飛散対策をする。窓と食器棚。素足で歩けない部屋は、避難の妨げになります。
家具の固定については家具の転倒防止にまとめました。
どの地域でも共通してやること
水と食料を最低3日分。できれば7日分です。北海道は広く、支援が届くまでに時間がかかります。
携帯トイレを用意する。断水すると、水洗トイレは使えません。ここを軽く見る方が多い。
停電時の情報手段を決める。乾電池式のラジオ、モバイルバッテリー。スマホの電池が切れると、何も分からなくなります。
過去の地震が教えてくれること
数字を並べてきましたが、そこから読み取れることを書きます。
北海道では、数十年に一度、大きな地震が起きています
1952年、1968年、1973年、1982年、1993年、1994年、2003年、2018年。
この70年ほどで、被害を伴う地震が8回。平均すると10年に1回を超えるペースです。
「北海道は地震が少ない」という感覚は、統計と合いません。
被害の中身が、時代とともに変わっています
昔の地震では、津波による溺死と家屋の倒壊が中心でした。
近年は、負傷者の数が多いのが特徴です。1993年の釧路沖地震で966人、2003年の十勝沖地震で849人、2018年の胆振東部地震で782人。
建物が丈夫になった一方で、屋内の家具や落下物によるけがが残っているということです。
ここは、個人の備えで大きく減らせる部分です。
そして、停電の影響が年々大きくなっています
2018年のブラックアウトは、北海道全域が停電するという前例のない事態でした。
電気が止まると、水道のポンプが止まり、暖房が止まり、信号が消えます。現代の生活は、私たちが思う以上に電気に依存しています。
そして北海道の場合、そこに冬が重なります。
停電が復旧したあとにも注意が要ります。通電火災については停電復旧後にやることにまとめました。
冬に地震が起きたら、何が起きるか
北海道の地震を考えるとき、避けて通れない話です。
過去の大きな地震を振り返ると、1952年3月、1968年5月、1982年3月、1993年1月、2018年9月。冬から早春にかけての発生も、決して珍しくありません。
暖房が止まると、屋内でも危険です
まず起きるのが停電です。そして北海道の暖房は、ほとんどが電気に依存しています。
石油ファンヒーターも、温水パネルヒーターも、電気が必要です。灯油が満タンでも、コンセントが死ねば動きません。
断熱の良い家でも、暖房が止まれば室温は下がり続けます。氷点下の外気にさらされれば、屋内でも低体温症の危険があります。
冬の停電対策は停電対策【冬編】にまとめました。
水道管が凍結・破損します
暖房が止まると、住宅内の水道管が凍ります。凍った水は膨張し、管を内側から破裂させます。
復旧して水が来たとき、破損した管から水があふれる。これが二次被害になります。
長期の停電が見込まれるときは、水抜き(水落とし)を検討してください。北海道の住宅の多くには、その機能があります。
避難所までの道が、雪で塞がります
地震で建物が損傷し、避難所へ向かおうとしても、積雪と路面凍結が行く手を阻みます。
倒壊した家屋や、落ちた瓦が雪に埋もれて見えません。夜間なら、なおさらです。
そして車も使えないことがあります。道路の段差、信号の消灯、渋滞。徒歩で行ける距離に避難先があるかどうかが、冬は決定的に効きます。
だから、在宅避難できる備えが要ります
冬の北海道では、避難所へ行くこと自体が危険を伴います。
家が無事なら、家にとどまるほうが安全な場面があります。そのためには、家の中で数日過ごせるだけの備えが必要です。
暖房手段、燃料、水、食料、そして防寒着。この五つが揃っていれば、選択肢が生まれます。
停電が長引いたときの備えは停電長期化への備えにまとめました。
液状化という、もうひとつの被害
揺れが収まったあとに現れる被害があります。液状化です。
砂と水を多く含む地盤が、地震の揺れで一時的に液体のようになる現象です。
建物が傾き、地面から泥水が噴き出し、水道管やガス管が引きちぎられます。
建物そのものは壊れていないのに、傾いて住めなくなる。復旧に時間もお金もかかる、やっかいな被害です。
石狩平野の低地や、河川沿い、埋立地では起こりうる現象です。お住まいの自治体が液状化危険度マップを公開しているか、確認してみてください。
くわしくは液状化とは何かにまとめました。
地域別|あなたの街はどの震源域に関係するか
五つの震源域を、地域に当てはめます。
| 地域 | 主に警戒すべき震源域 | 最優先の備え |
|---|---|---|
| 釧路・根室・厚岸・浜中 | ① 千島海溝 | 津波避難経路の確認 |
| 帯広・十勝地方 | ① ② 千島海溝・深い地震 | 長期停電への備え |
| 浦河・様似・えりも・日高 | ③ 浦河沖 | 家具固定と津波避難 |
| 苫小牧・千歳・恵庭 | ③ ④ 浦河沖・断層帯 | 家具固定と液状化の確認 |
| 札幌・江別・岩見沢 | ② ③ ④ 深い地震・断層帯 | 家具固定と停電対策 |
| 小樽・余市・積丹・留萌 | ⑤ 日本海側 | 即時の高台避難 |
| 函館・渡島・檜山 | ① ⑤ 両方の海域 | 両側の津波想定を確認 |
| 旭川・上川・北見 | ② ④ 深い地震・内陸 | 冬季の停電対策 |
この表は、公表資料から私が整理したものです。実際の想定は自治体のハザードマップが基準になります。必ずお住まいの自治体のものを確認してください。
ハザードマップの読み方はハザードマップの見方・読み方にまとめました。
震源域が違えば、備える中身も変わります
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
津波が来る地域|備蓄より、まず経路
沿岸部では、備蓄の量より「どこへ、何分で逃げるか」が生死を分けます。
非常持ち出し袋を完璧に用意しても、玄関で探している数分が命取りになることがあります。
すぐつかめる場所に置き、迷わず走る。これが最優先です。
内陸の地域|まず家具、次に停電
津波の心配がない地域では、負傷の原因の多くが家具の転倒と落下物です。
そして北海道の場合、もうひとつ大きな問題があります。冬の停電です。
胆振東部地震のブラックアウトは9月でした。あれが1月だったらどうなっていたか。私はそこを何度も考えます。
暖房が止まったときの備えは停電でも使える暖房にまとめました。
すべての地域に共通すること
震源域が何であれ、揺れた直後にやることは同じです。
身を守る。火の始末は揺れが収まってから。ブレーカーを落として避難する。
この基本は変わりません。
やってはいけない誤解
取り違えやすい点を、はっきり書いておきます。
「確率が低いから安全」ではありません
石狩低地東縁断層帯の主部は「ほぼ0%」です。しかし2018年の胆振東部地震は、そうした評価の枠外で起きました。
確率は、備えを省く根拠にはなりません。備えの優先順位を決める材料として使ってください。
「マグニチュードが大きいほど危険」ではありません
胆振東部地震はM6.7で死者43人。1994年の北海道東方沖地震はM8.2で死者の記録がありません。
震源の深さと距離のほうが、被害を大きく左右します。
マグニチュードと震度の違いはマグニチュードと震度の違いにまとめました。
「札幌は地震が少ない」ではありません
札幌は震源になりにくい場所ですが、周囲の震源域すべてから揺れが届きます。
そして市内には泥炭地や埋立地など、揺れが増幅されやすい地盤があります。1968年の十勝沖地震で被害が出たのも、そうした場所でした。
「日本海側は津波が来ない」ではありません
1940年の神威岬沖では家屋が流失しています。そして日本海の津波は到達が早い。
太平洋側より、避難の猶予は短いと考えてください。
よくある質問
Q. 30年以内の発生確率は、どこで確認できますか
地震調査研究推進本部(地震本部)のサイトで公表されています。
この数値は評価の基準日ごとに更新されます。この記事の数字も、執筆時点で公表されていたものです。最新のものは地震本部でご確認ください。
Q. 根室沖の90%という数字は、いつ起きるという意味ですか
いいえ。「今後30年のあいだに起きる確率」を示したものです。明日かもしれませんし、29年後かもしれません。
時期を特定する情報ではない、という点は誤解されやすいところです。
Q. 札幌でも津波の心配はありますか
札幌市には海に面した地域があります。石狩湾に面した手稲区の一部などです。
市の中心部については、津波より揺れと停電への備えが優先されます。ただし、お住まいの区の想定は必ず札幌市のハザードマップでご確認ください。
Q. 活断層の真上に住んでいます。引っ越すべきですか
これは、私が答えを出せる質問ではありません。仕事、家族、資金。判断材料が防災だけではないからです。
できることを書きます。建物の耐震性を確認すること。そして寝室に倒れる家具を置かないこと。
耐震診断については耐震診断の受け方にまとめました。
Q. 後発地震注意情報が出たら、避難するのですか
避難指示ではありません。1週間程度、備えを高めて普段の生活を続けるという趣旨の情報です。
くわしくは北海道・三陸沖後発地震注意情報とはをご覧ください。
Q. 冬に地震が起きたら、何がいちばん危険ですか
暖房の停止です。北海道の冬に暖房が止まると、屋内でも低体温症の危険があります。
そして避難経路が雪で塞がれます。玄関前の除雪は、防災でもあります。
覚えておくのは、三つです
細かい地名や数字は、いざというとき思い出せません。だから絞ります。
一、自分の街がどの震源域かを知る
沿岸なら津波、内陸なら家具と停電。この一点が決まれば、備える順番が決まります。
二、確率は順番を決める材料であって、免罪符ではない
「ほぼ0%」の断層帯があっても、想定外の場所で地震は起きます。胆振東部地震がその実例です。
三、北海道の地震には、必ず冬がついてくる
これが、他の地域と決定的に違うところです。
揺れそのものより、そのあとの寒さで命が危なくなる。暖房、燃料、防寒着。北海道の地震対策は、ここまで含めて完成します。
備えの全体像は防災は何から始める?にまとめました。
この記事の出典について
数字を扱う記事なので、どこから引いたかを明記します。
震源域ごとの地震活動の特徴、過去の地震の規模と被害、活断層の長期評価は、いずれも地震調査研究推進本部(地震本部)が公表している資料によります。地域ごとの「地震活動の特徴」のページと、活断層・海溝型地震の長期評価のページです。
1982年浦河沖地震の詳細については、気象庁の調査報告が公開されています。
ひとつ、気をつけていただきたい点があります。長期評価の確率は、評価の基準日ごとに更新されます。この記事の数値は執筆時点で公表されていたものです。
そして、実際に備えるときの基準になるのは、お住まいの自治体が公表しているハザードマップと被害想定です。この記事は全体像を掴むためのものとして使ってください。
まとめ
北海道の地震は、千島海溝、沈み込むプレート内部、浦河沖、内陸の浅い地震、日本海側という五つの場所で起きています。
根室沖は30年以内に90%程度。17世紀型の超巨大地震はM8.8程度以上で7〜40%。石狩低地東縁断層帯はM7.9程度で確率はほぼ0%。いずれも地震本部の公表値です。
そして忘れられがちなのが日本海側です。1940年の神威岬沖では、津波で家屋が流失しています。
自分の街がどの震源域に関係するのかを知ること。そこから、備える順番が決まります。
まずひとつだけ。今日、お住まいの自治体のハザードマップを開いてください。それが最初の一歩です。


