【この記事の要約】
結論から言います。災害関連死は、遺族が申請しなければ認定されません。自動的には数えられないのです。そして法律に明確な認定基準はありません。市町村ごとに設けられた審査会が、医師と弁護士を交えて個別に判断します。参考にされてきたのが「長岡基準」で、災害から1週間以内なら関連死、1か月以内なら可能性が高く、6か月を超えると関連死ではない、という目安です。ただしこれは法的な基準ではありません。だから、同じような事情でも自治体によって判断が分かれます。新潟県中越地震では死者68人のうち52人、4分の3が関連死でした。この記事では、認定の仕組みと申請の実務をまとめます。
結論|三つ、知っておいてください
制度の話ですが、要点は単純です。
一、申請しないと、認定されません
行政が自動的に把握して認定してくれる仕組みではありません。遺族が市町村に申請するところから始まります。
知らないまま時間が過ぎ、受け取れるはずのものを受け取れなかったという事例があります。
二、明確な基準は、法律にありません
災害弔慰金の支給に関する法律には、「災害により死亡した者」としか書かれていません。
どこまでが「災害により」なのか。その線引きは、各市町村の審査会が判断します。
三、だから、判断が分かれます
似た事情でも、ある自治体では認定され、別の自治体では認定されないということが起こります。
これは制度の課題として、たびたび指摘されてきました。そして、だからこそ「申請してみる」ことに意味があります。
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災害関連死とは何か
言葉の意味を、はっきりさせておきます。
直接死との違い
| 直接死 | 災害関連死 | |
|---|---|---|
| 原因 | 建物の倒壊、津波、火災、土砂など | 避難生活での体調悪化、持病の悪化など |
| 時期 | 災害の当日が中心 | 数日から数か月後 |
| 認定 | 検視などで確認されます | 遺族の申請と、審査会の判断が必要 |
| 防げるか | 備えで減らせるが、限界がある | 防げる余地が大きい |
災害関連死は、一度は助かった命です。だからこそ、防ぐ対象になります。
具体的には、こうしたものです
一、避難所や車中泊での体調の悪化。寒さ、暑さ、不衛生、睡眠不足。
二、持病の悪化。薬が手に入らない、通院できない、透析が受けられない。
三、医療機関の被災による、治療の中断。
四、避難の移動そのものによる負担。特に高齢の方や、病院・施設からの移送です。
五、過労。復旧作業や、家族の世話による疲労の蓄積。
六、精神的な負担。自ら命を絶った場合も、認定された例があります。
過去の震災で、どれくらいの割合だったか
数字で見ると、この問題の大きさが分かります。
| 震災 | 直接死 | 災害関連死 | 関連死の割合 |
|---|---|---|---|
| 新潟県中越地震(2004年) | 16人 | 52人 | 死者68人の4分の3 |
| 熊本地震(2016年) | 50人 | 228人 | 約8割 |
| 能登半島地震(2024年) | 228人 | 470人 | 直接死の2倍超 |
| 東日本大震災(2011年) | — | 3,775人 | 阪神・淡路の直接死に匹敵する規模 |
※認定は続いており、数値は時点によって変わります。
近年の地震では、関連死のほうが多くなっています。建物が丈夫になり、津波の警報も届くようになった結果、直接死が減った。その一方で、避難生活の問題が残っているためです。
震災ごとの死因の違いは過去の震災は何が人の命を奪ったかにまとめました。
「長岡基準」という目安
認定の判断で、長く参考にされてきた考え方です。
時期による目安です
| 災害からの期間 | 扱い |
|---|---|
| 1週間以内 | 関連死と認められる |
| 1か月以内 | その可能性が高い |
| 1か月超〜6か月 | 可能性は低くなる |
| 6か月を超える | 関連死ではないとされる |
これは、阪神・淡路大震災のときに神戸市が作った内規を参考に、新潟県中越地震のあと長岡市がまとめたものです。
その後、国も参考例として他の自治体に紹介しました。そのため「長岡基準」という呼び名が広まっています。
ただし、法的な基準ではありません
ここが重要です。これは目安であって、法律で定められたものではありません。
ですから、6か月を超えていても認定された例があります。逆に、1か月以内でも認められないことがあります。
時期だけで諦めないでください。大事なのは、災害との因果関係を示せるかどうかです。
近年は、柔軟に運用される傾向があります
長期の避難が続く災害では、6か月という区切りが実情に合わないことが分かってきました。
原子力災害による避難のように、年単位で生活が戻らない場合があるためです。
実際、東日本大震災では、災害から長く経ってからの死亡が認定された例が数多くあります。
誰が、どう判断するのか
審査の仕組みを見ていきます。
市町村に設けられる審査会
認定を判断するのは、市町村(またはその委託を受けた組織)に設置される審査会です。
過去の例では、委員は4人から7人程度。医師が1人から4人、弁護士が1人から3人という構成でした。
医師が医学的な因果関係を見て、弁護士が法的な判断を担うという組み合わせです。
個別に、事情を見て判断されます
一律の点数表があるわけではありません。一件ずつ、資料をもとに検討されます。
見られるのは、おおむねこうした点です。
一、災害の前は、どういう健康状態だったか。
二、災害後、どこでどのように過ごしたか。避難所か、車中泊か、在宅か。
三、その環境が、健康にどう影響したと考えられるか。
四、医療が受けられていたか。
五、死亡までの経過。
だから、記録が効きます
これが、実務としていちばん大事な点です。
避難生活の記録が残っていれば、それがそのまま資料になります。
どこに何日いたか。寒かったか。眠れていたか。薬は飲めていたか。メモでも、写真でも構いません。
亡くなってから思い出すのは、簡単ではありません。だから、避難している最中に少しずつ書き留めておくことをおすすめします。
申請の手順
実際の流れです。
五つの段階があります
一、市町村の窓口に相談します。福祉、防災、あるいは災害の担当課です。「災害弔慰金の申請をしたい」と伝えれば通じます。
二、必要な書類を受け取ります。申請書のほか、死亡診断書、戸籍、住民票などが求められます。
三、資料を集めます。医療の記録、避難生活の状況が分かるもの。ここに時間がかかります。
四、提出します。
五、審査会で検討され、結果が通知されます。数か月かかることがあります。
用意しておくとよい資料
| 資料 | 何を示すか |
|---|---|
| 死亡診断書 | 死因と、亡くなった日 |
| 診療の記録・カルテ | 災害前後で状態がどう変わったか |
| お薬手帳 | 治療が途切れていないか |
| 避難先と期間が分かるもの | 避難所の名簿、罹災証明書など |
| 避難生活の記録・写真 | どういう環境だったか |
| 家族や周囲の証言 | 本人の様子の変化 |
すべてが揃わなくても、申請はできます。まず窓口に相談してください。
相談できる先があります
手続きは、遺族にとって負担の大きいものです。一人で抱えないでください。
一、市町村の窓口。まずここです。
二、弁護士会の無料相談。災害時には、被災者向けの相談窓口が設けられます。
三、社会福祉協議会。生活全般の相談ができます。
制度の全体像は災害弔慰金・障害見舞金・援護資金にまとめました。
認定されなかったとき
ここで諦める方が多いところです。
不服を申し立てられます
市町村の決定に納得できない場合、審査請求という手続きがあります。
そして、新しい資料が出てきた場合には、改めて申請できることもあります。
実際に、一度は認められなかったものが、あとから認定された例があります。
まず、理由を聞いてください
なぜ認められなかったのかを、書面で示してもらってください。
因果関係が不十分と判断されたのか。資料が足りなかったのか。理由が分かれば、次に何を補えばよいかが見えます。
弁護士に相談する価値があります
災害の関連死に取り組んでいる弁護士や、弁護士会の窓口があります。費用の心配があるなら、法テラスの制度も使えます。
制度の使い方を知っている人が入るだけで、結果が変わることがあります。
自治体によって、判断が分かれます
正直に申し上げておくべき部分です。
認定率に、差が出ています
同じ災害でも、市町村によって認定される割合が異なることが指摘されてきました。
審査会の構成、資料の集め方、判断の考え方。これらが自治体ごとに違うためです。
国も、事例集を作って共有するなどの取り組みを進めています。それでも、完全に揃うわけではありません。
だから、申請してみる意味があります
「うちは認められないだろう」と自己判断しないでください。判断するのは、審査会です。
申請そのものに費用はかかりません。そして、認定されれば災害弔慰金が支給されます。
期限があります
弔慰金の請求には期限が設けられていることがあります。災害から時間が経つと、受け付けてもらえなくなる可能性があります。
ですから、迷っているなら、早めに窓口へ相談してください。相談だけなら、いつでもできます。
認定された事例と、されにくい事例
実際の傾向を知っておくと、判断の材料になります。
認定されやすい方向
| 状況 | なぜ認められやすいか |
|---|---|
| 避難所や車中泊で過ごしていた | 環境の悪化が、健康への影響として説明しやすい |
| 持病があり、通院や投薬が途切れた | 治療の中断という、明確な変化があります |
| 病院や施設から移送された | 移動そのものが、体への負担になります |
| 断水・停電が長期化した地域にいた | 在宅でも、環境の悪化を示せます |
| 災害から間もない時期に亡くなった | 時間的な近さが、因果関係を支えます |
| 災害前は健康だった | 変化がはっきりします |
認定されにくい方向
一、災害の前から、状態が悪化し続けていた場合。災害がなくても同じ経過をたどったと判断されることがあります。
二、災害から長い時間が経っている場合。因果関係を示すのが難しくなります。
三、避難生活の状況を示す資料がない場合。どこで、どう過ごしていたかが分からないと、判断のしようがありません。
四、被災地から離れて、通常の生活に戻っていた場合。
ただし、いずれも「必ず認められない」わけではありません。個別の事情によります。
だから、資料の集め方が結果を左右します
ここが、この記事でいちばん実務的な部分です。
災害の前と後で、何がどう変わったか。これを示せるかどうかが、判断を分けます。
そのために効くのが、災害前の診療記録です。「以前は自分で歩けていた」「血圧は安定していた」という事実が、比較の基準になります。
かかりつけ医に相談すれば、意見書を書いてもらえることがあります。これは強い資料になります。
遺族の負担を、どう軽くするか
制度の話とは別に、申し上げておきたいことがあります。
手続きは、想像以上に重い作業です
家族を亡くした直後に、書類を集め、当時の状況を思い出し、文章にする。これは、簡単なことではありません。
そして、被災していれば自分自身の生活の再建も同時に進めなければなりません。家が壊れ、仕事が止まっているかもしれません。
だから、一人でやろうとしないでください。
頼れる先を並べます
一、市町村の窓口。手続きの案内をしてくれます。
二、弁護士会の無料相談。災害時には特別の窓口が設けられます。
三、法テラス。費用の面で不安がある場合に相談できます。
四、社会福祉協議会。生活全般の相談ができます。
五、家族や親族。資料集めだけでも分担してください。
まず、相談だけでも構いません
申請すると決めてから連絡する必要はありません。「こういう状況なのですが」と話すところから始めてください。
窓口は、そのための場所です。そして、話すことで整理がつくこともあります。
ほかにも使える支援があります
弔慰金だけではありません。
被災した世帯が使える主な制度
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 罹災証明書 | すべての支援の入口になります。まずこれを |
| 被災者生活再建支援金 | 住宅の被害の程度に応じて支給されます |
| 災害弔慰金 | 亡くなった方の遺族へ。関連死も対象です |
| 災害障害見舞金 | 重い障害が残った場合 |
| 災害援護資金 | 生活の再建のための貸付 |
| 自然災害債務整理ガイドライン | 住宅ローンを、破産によらず整理できます |
| 税や保険料の減免 | 申請により、負担が軽くなることがあります |
どれも、申請しなければ受け取れません。ここが共通しています。
まず罹災証明書を取ってください
多くの支援が、この証明書に記された被害の程度をもとに決まります。
そして、判定に納得できない場合は、再調査を依頼できます。一度目の結果で確定するわけではありません。
申請の方法と、再調査の頼み方は罹災証明書の申請方法にまとめました。
被災後の流れ全体を、先に知っておく
災害のあとには、やるべきことが順番に発生します。安全の確保、写真の記録、罹災証明書、保険の請求、片付け、再建。
この順番を知っているだけで、迷う時間が減ります。
時系列の全体像は被災した後にやることにまとめています。
そもそも、防ぐために
制度の話をしてきましたが、いちばんよいのは使わずに済むことです。
連鎖の起点は、トイレです
関連死につながる流れは、多くの場合ここから始まります。
トイレが使えない、あるいは並ぶ。だから水を飲まない。血が濃くなる。動かない。血栓ができる。
この連鎖は、携帯トイレがあれば二段目で断てます。必要数の目安は防災用携帯トイレの選び方にまとめました。
薬とお薬手帳が、次に効きます
持病の悪化は、関連死の大きな原因です。特に、災害直後の数日で影響が出ます。
お薬手帳を写真に撮って、スマートフォンに入れておいてください。いま1分でできます。
そして、眠れることです
床で寝ると、体が冷え、ほこりを吸い、眠れません。マット一枚で、体力の減り方が変わります。
耳栓とアイマスクも、軽くて場所を取りません。避難所は明るく、音が絶えない場所です。
具体的な防ぎ方は熊本地震と災害関連死にまとめました。
避難生活を、記録しておく
ここからは、いま避難している方や、これから避難する可能性のある方へ向けた話です。
記録は、二つの意味で役に立ちます
一つめ。支援を申請するときの資料になります。罹災証明書、保険、そして万一のときの関連死の認定。すべてで使えます。
二つめ。自分の状態を客観的に見られます。「三日眠れていない」と書いて初めて、危険に気づくことがあります。
書くのは、四つで足ります
| 記録すること | 例 |
|---|---|
| 日付と場所 | 「8月20日〜25日、○○小学校の体育館」 |
| 環境 | 「暖房なし、床で就寝、トイレは屋外」 |
| 体の状態 | 「眠れない、食欲がない、血圧の薬が切れた」 |
| 受けた医療 | 「○日に巡回の医師に相談」 |
丁寧に書く必要はありません。手帳の隅でも、スマートフォンのメモでも構いません。
そして、写真を撮ってください。撮影日時が自動で残るので、それ自体が記録になります。
高齢のご家族がいるなら、その方の分も
本人は書けないことが多いものです。そして、体調の変化を訴えません。
だから、まわりが見て記録してください。「食事の量が減った」「歩く距離が短くなった」。こうした変化が、あとで意味を持ちます。
そして何より、その変化に早く気づけば、手を打てます。記録は、防ぐためのものでもあります。
制度は、災害のたびに変わってきました
いまの仕組みは、過去の被害の上に立っています。
関連死という考え方の広がり
阪神・淡路大震災のとき、神戸市が内規を作りました。避難生活で亡くなった方をどう扱うかという問題に、初めて正面から向き合った形です。
新潟県中越地震のあと、長岡市がそれを参考に基準をまとめ、国も参考例として紹介しました。
東日本大震災では、原子力災害による長期の避難という、それまでにない状況が生まれました。6か月という区切りが実情に合わないことが明らかになります。
熊本地震で、関連死が直接死を大きく上回りました。これにより、避難所の環境そのものが防災の中心課題として扱われるようになります。
能登半島地震でも、同じ構図が繰り返されました。
それでも、課題は残っています
正直に申し上げます。自治体による判断のばらつきは、いまも指摘されています。
そして、遺族の負担が大きいという問題も解決していません。申請の主体が遺族である限り、この構造は変わりません。
国は事例集を作って共有を進めていますが、制度としての統一には至っていません。
だから、知っていることが力になります
制度が不完全であるほど、知っている人と知らない人の差が開きます。
この記事を読んだ方が、身近で困っている方に「申請できるらしいですよ」と伝えられれば、それだけで意味があります。
いま、5分でできること
この記事は制度の話でしたが、行動に落とします。
一、お薬手帳を写真に撮る。持病がある方は、これが最優先です。
二、かかりつけ医の名前と連絡先を、紙に控える。スマートフォンの電池が切れても分かるように。
三、携帯トイレの数を確認する。関連死の入口をふさぐ、最も効く備えです。
四、避難所で使うマットが家にあるか確認する。床で寝ない工夫です。
五、この記事の存在を、家族に伝える。知っている人が一人いれば足ります。
制度は、使わずに済むのがいちばんです。そのための備えが、結局はいちばん確実な対策になります。
よくある質問
Q. 亡くなってから、どれくらいの期間なら申請できますか
まず窓口に相談してください。期限の扱いは災害や自治体によって異なります。
時間が経っているからと諦める前に、電話一本で確認できます。相談に費用はかかりません。
Q. 直接の死因が持病でも、認定されますか
されることがあります。問われるのは、災害が悪化に影響したかどうかです。
もともと持病があった方が、避難生活で悪化して亡くなった。この場合、災害との因果関係が認められれば対象になります。
だから、災害の前はどういう状態だったかを示す資料が重要になります。
Q. 避難所ではなく、自宅で亡くなった場合は
在宅であっても、対象になりえます。場所ではなく、状況が問われます。
断水で衛生が保てなかった。停電で暖房が使えなかった。通院できなかった。これらは在宅でも起こります。
実際、能登半島地震では、断水が長期化した地域での在宅の状況が問題になりました。
Q. 自ら命を絶った場合も対象ですか
認定された例があります。災害による精神的な負担との因果関係が認められた場合です。
デリケートな問題であり、遺族にとって申請そのものが重い作業になります。だからこそ、一人で判断せず、窓口や弁護士に相談してください。
Q. 記録は、どの程度残せばよいですか
完璧である必要はありません。日付と、どこにいたか。それだけでも役に立ちます。
スマートフォンで、避難先の様子を撮っておくのも有効です。写真には日時が記録されます。
そして、これは自分自身のためにもなります。あとから支援を申請するときの資料になります。
Q. 弔慰金は、いくら支給されますか
生計を維持していた方が亡くなった場合と、それ以外で額が変わります。法律で上限が定められており、市町村が条例で定めます。
そして、この弔慰金には税金がかかりません。所得として扱われないためです。
金額の詳細と、障害見舞金・援護資金との違いは災害弔慰金・障害見舞金・援護資金にまとめました。
Q. 誰が申請できますか
遺族です。配偶者、子、父母、孫、祖父母などに順位が定められています。
同居していたかどうかや、生計を同じくしていたかが問われる場合があります。家族の形はさまざまですので、迷ったら窓口で確認してください。
Q. 生命保険とは、別に受け取れますか
別のものです。災害弔慰金は公的な制度で、民間の生命保険とは関係ありません。
ですから、保険金を受け取っていても、弔慰金の申請はできます。どちらか一方ということはありません。
火災保険や地震保険についても同様です。建物の損害に対する保険と、人の死に対する弔慰金は、まったく別の枠組みです。
Q. 災害の規模が小さくても、対象になりますか
制度が適用されるには、災害の規模に関する要件があります。一定の被害が生じた災害が対象です。
ただし、その判断は自治体が行います。自分で線を引かず、まず窓口に確認してください。
Q. 認定までに、どのくらいかかりますか
数か月かかることが一般的です。資料を集める期間と、審査会が開かれるまでの期間があるためです。
大きな災害では申請が集中し、さらに時間がかかることがあります。
その間、生活の再建は待ってくれません。だから、他の支援制度と並行して進めてください。弔慰金の結果を待つ必要はありません。
数えられていない死が、あります
最後に、この制度の限界について触れておきます。
申請されなければ、統計にも残りません
災害関連死の人数は、認定された数です。申請されなかったものは、どこにも記録されません。
つまり、実際に災害の影響で亡くなった方は、公表されている数より多い可能性があります。
遺族が制度を知らなかった。手続きの負担が大きすぎた。あるいは、遠慮した。こうした理由で、申請されないまま終わる例があります。
だから、伝えることに意味があります
身近で災害に遭われた方がいたら、「弔慰金の申請ができるそうです」と一言伝えてください。
詳しい制度を説明する必要はありません。「市役所の窓口で聞けるらしい」で十分です。
その一言が、届くはずのものを届かせることがあります。
そして、防ぐほうが先です
この記事は制度の話でしたが、本当に必要なのは、この制度を使わずに済むことです。
避難所の環境が整い、水を我慢せずに済み、眠れて、薬が手元にある。それだけで、防げる死があります。
行政の側でも、段ボールベッドや簡易トイレの備蓄、協定による調達が進んできました。過去の被害が、確実に仕組みを変えています。
そして個人の側でできることも、はっきりしています。携帯トイレ、常用薬とお薬手帳の写し、床で寝ないためのマット。この三つです。
Q. 認定の判断は、どこで確認できますか
国が、過去の認定事例をまとめた資料を公表しています。どういう状況が認められてきたかの参考になります。
そして、大きな災害のあとには、弁護士会などが事例を整理して公開することもあります。
ただし、これらは参考であって、自分の場合がどうなるかを決めるものではありません。最終的には、その市町村の審査会が判断します。
Q. 申請を代わりにやってもらえますか
弁護士に依頼すれば、手続きを進めてもらえます。資料の集め方や、因果関係の説明の組み立てを任せられます。
費用が心配な場合は、法テラスの制度が使えることがあります。収入などの要件があるため、まず相談してください。
そして、災害時には無料の相談会が開かれることが多くあります。弁護士会や自治体の広報を確認してください。
Q. 親族が離れて暮らしていました。状況が分かりません
分かる範囲で構いません。すべてを把握していなくても、申請はできます。
避難先が分からなければ、市町村に避難所の名簿が残っていることがあります。窓口で相談してください。
医療の記録は、かかりつけの医療機関に照会できます。遺族であれば、開示を求められる場合があります。
一人で調べようとせず、窓口の担当者に「何が必要ですか」と聞くところから始めてください。
Q. 施設に入所していた家族が亡くなりました
対象になりえます。施設が被災した、停電で空調が止まった、職員が足りず十分なケアができなかった。こうした事情は、判断の材料になります。
また、被災した施設から別の施設へ移送された場合、その移動自体が体への負担として評価されることがあります。
施設に、当時の状況が分かる記録が残っているはずです。まず、施設に相談してみてください。
まとめ
要点を並べます。
一、災害関連死は、遺族が申請しなければ認定されません。
二、法律に明確な認定基準はなく、市町村の審査会が個別に判断します。
三、審査会は医師と弁護士を中心に、4人から7人程度で構成されます。
四、長岡基準は目安であって、法的な基準ではありません。6か月を超えても認定された例があります。
五、避難生活の記録が、そのまま申請の資料になります。日付と場所を書き留めておいてください。
六、認定されなかったときも、不服の申し立てができます。
七、新潟県中越地震では死者68人のうち52人、熊本地震では約8割が関連死でした。いまや、直接死より多くなっています。
制度の話は、読んでいて気の重いものです。けれど、知らなかったために受け取れなかった、ということが実際に起きています。
そして、この制度が存在するということ自体が、「助かったあとにも人は亡くなる」という事実の裏返しです。
だから、いちばんよいのは使わずに済むことです。携帯トイレ、薬、眠れる環境。この三つを備えておいてください。
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップにまとめています。


