【この記事の要約】
結論から言います。野生動物に遭遇したときの正解は、相手によって真逆になります。クマは背を向けずにゆっくり後ろへ下がる。イノシシは物陰か高いところへ移る。サルは目を合わせない。シカは車の運転で身構える。「大声を出す」「走って逃げる」は、どの相手にもやってはいけません。2025年度のクマによる人身被害は238人、うち死者13人で過去最多です。出没件数は5万801件。そして2025年9月からは、市街地に出た場合に市町村長の判断で銃を使える緊急銃猟制度が始まりました。この記事は、動物別の正解と、遭遇する前にできることをまとめた入口です。
結論|相手を見分けてから動いてください
獣害の情報は「野生動物に注意」とひとくくりに語られがちです。けれど、種類ごとに正解が違います。
四種類を、行動で並べます
| 相手 | 遭遇したときの正解 | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| クマ | 目を離さず、ゆっくり後退する | 背を向けて走る/大声で威嚇する |
| イノシシ | 静かに物陰か高い場所へ移る | 走る/叫ぶ/棒や石で追い払う |
| サル | 目を合わせず、その場を離れる | 食べ物を見せる/歯を見せる |
| シカ | 車では減速する。歩行時は距離を取る | ライトで照らし続ける/急ハンドル |
共通するのは二つだけです。走って逃げないこと。そして、追い詰めないこと。
なぜ、走ってはいけないのか
理由は単純です。どの動物も、人間より速いからです。
クマは短い距離なら時速40キロを超えるとされます。イノシシも同じくらい速い。走って逃げ切れる相手ではありません。
そして、背を向けて走る動きは、相手にとって「追うべきもの」に見えます。逃げる動物を追う本能が働きます。
だから、走らないという判断が、いちばん最初に来ます。
そして、大声も逆効果になることがあります
これは意外に思われるかもしれません。
遠くにいる相手に人の存在を知らせるなら、音は有効です。問題は、すでに近くで鉢合わせしたときです。
至近距離での大声は、相手を驚かせ、防御のための攻撃を引き出します。とくにイノシシは、驚いて突進する形の事故が多く報告されています。
近づく前は音を出す。近づいてしまったら静かにする。この使い分けが要点です。
いま、何が起きているのか
数字を先に見ておきます。
クマの被害は、過去最多を更新しました
環境省の集計によると、2025年度のクマによる人身被害は238人、うち13人が亡くなっています。
それまで最も多かったのは2023年度で、被害219人・死者6人でした。死者数は倍以上になっています。
| 項目 | 2025年度 |
|---|---|
| 人身被害 | 238人(過去最多) |
| うち死者 | 13人 |
| 出没件数 | 5万801件 |
| 捕獲数 | 1万4720頭(統計開始以来最多) |
※出没件数は、北海道(非公表)と生息していないとされる九州・沖縄を除いた集計です。
被害は、季節と地域が偏っています
ここが備えの手がかりになります。
月別では、10月が89人と突出しています。冬眠の前に栄養をためようとして、活動が活発になるためです。9月から11月の3か月で161人と、全体の3分の2を超えます。
地域別では、秋田67人、岩手40人、福島24人。東北6県で158人と、全体の6割を超えています。
つまり、東北にお住まいの方の秋は、特別な警戒が要るということです。
イノシシは、農作物の被害が中心です
クマと違い、イノシシの問題はまず農業に出ます。
農林水産省の統計では、獣類による農作物被害額のうち、34.8%がイノシシによるものです。獣の中で最も大きい割合になります。
ただし近年は、市街地の住宅街に現れる例が各地で報告されています。川沿いや緑地を通って、人の生活圏に入ってくる形です。
2026年8月には、新潟県五泉市の住宅街で体長およそ1メートルのイノシシが目撃され、警察が警戒にあたりました。
2025年9月から、制度が変わりました
知っておく価値のある変更です。
市街地でも、銃を使えるようになりました
改正鳥獣保護管理法が2025年9月1日に施行され、「緊急銃猟」という仕組みができました。
それまでは、人がいる可能性のある場所での発砲は原則として認められていませんでした。市街地にクマが入っても、麻酔や追い払いで対応するしかなかったのです。
新しい制度では、市町村長の判断と指示によって、委託されたハンターが銃を使えます。
ただし、条件は四つあります
いつでも撃てるわけではありません。
一、住居や公共の場所に侵入している、または侵入するおそれがあること。
二、危険を防ぐために緊急の必要があること。
三、銃以外の方法では、迅速かつ確実な捕獲が難しいこと。
四、弾が住民に当たるおそれがないこと。
この四つ目の条件があるため、住宅が密集した場所では、実際には使えない場面が少なくありません。制度ができたからといって、すぐに撃ってもらえるわけではないのです。
この四つがすべて揃ったときに限られます。つまり、住宅が密集した場所ほど、四つ目の条件を満たしにくくなります。
私たちの側でやることは、変わりません
制度ができても、現場に人がいれば撃てません。
だから、出没が伝えられたら、まず屋内に入って離れること。これが行政の対応を助けることにもなります。
見物に出るのは、自分が危ないだけでなく、対応そのものを止めてしまいます。
相手別の、具体的な行動
それぞれの詳しい対応は個別の記事にまとめていますが、ここで要点だけ並べます。
クマ|距離で判断が変わります
遠くにいて、まだ気づかれていない場合。静かにその場を離れてください。刺激しないことが最優先です。
近距離で目が合った場合。目を離さず、ゆっくり後ろへ下がります。背中を見せないでください。
突進してきた場合。撃退スプレーがあれば、目と鼻をめがけて全量を噴射します。有効な距離はおよそ7メートルから12メートルです。
詳しくはクマに遭遇したらどうするかにまとめました。ヒグマとツキノワグマでは、危険の性質も違います。
イノシシ|隠れるのが正解です
イノシシは基本的に臆病で、人を避けます。事故の多くは、驚かせたことがきっかけです。
だから、静かに、物陰や高いところへ移ってください。塀の内側、車の中、階段の上。1メートルほど登れば、まず届きません。
棒や石で追い払おうとしないでください。牙で足をえぐられる事故が起きています。
詳しくはイノシシに市街地で遭遇したらにまとめました。
サル|目を合わせないでください
サルにとって、目を合わせることは威嚇の意味を持ちます。歯を見せるのも同じです。
そして、食べ物を持っていることが分かると、奪いに来ます。手に持ったものは、袋やかばんにしまってください。
シカ|危ないのは、主に車です
シカは人を襲う動物ではありません。問題は交通事故です。
個体数が増え、道路への飛び出しが各地で起きています。ライトに驚いて動きが止まる性質があるため、避けきれません。
サルとシカの詳細はサルとシカの被害にまとめました。
遭遇する前に、できること
ここがいちばん大事な部分です。遭遇してからでは、選べる手が限られます。
一、自分の地域の出没情報を見る
多くの自治体が、出没情報を地図や一覧で公開しています。防災メールで配信している市町村もあります。
調べ方と通報先は出没情報の調べ方と通報先にまとめました。
ハザードマップで自宅の水害リスクを調べるのと、考え方は同じです。自分の場所の危険を、数字と地図で知っておく。手順はハザードマップの見方と同じ発想です。
二、家のまわりから、餌になるものを消す
これが最も効果があります。
生ゴミ、収穫しない柿や栗、ペットフード、家庭菜園の残り。これらが、動物を人の生活圏に呼び込みます。
一度おいしい思いをした動物は、そこを餌場として覚えます。そして繰り返し来るようになります。
具体的な方法は野生動物を寄せつけない家まわりの対策にまとめました。
三、時間帯を避ける
多くの動物は、夜明け前と日没後に活発になります。
出没が伝えられている地域では、この時間帯の外出、とくに川沿い、林のそば、草の高い場所を避けてください。
四、音を出しながら歩く
山や林に入るときの基本です。相手に先に気づいてもらえば、向こうから離れていきます。
ただし、鈴だけに頼らないでください。沢の音や強い風があると、音は届きません。ホイッスルや、人と話しながら歩くほうが確実です。
なぜ、人の暮らす場所に出てくるのか
理由が分かると、対策の意味も分かります。
一、山と町のあいだが、消えました
かつて、集落と山のあいだには里山がありました。薪を取り、下草を刈り、田畑を耕す。人の手が入ることで、動物が近づきにくい帯ができていました。
いま、その帯が管理されなくなっています。手入れされない林、耕作をやめた畑、伸びたままの草。動物にとっては、身を隠しながら町まで来られる通路になります。
だから、市街地への出没は「山に餌がないから降りてくる」だけでは説明できません。来やすくなった、という側面が大きいのです。
二、数そのものが増えています
クマの捕獲数は2025年度に1万4720頭と、統計を取り始めてから最も多くなりました。これだけ捕っても出没が減らないということは、生息数の水準が高いということです。
シカとイノシシも同じ傾向にあります。狩猟者の高齢化と減少が背景にあると指摘されています。
三、木の実の不作が引き金になります
ブナやミズナラの実は、豊作の年と凶作の年がはっきり分かれます。
凶作の年の秋は、クマが広い範囲を歩き回ります。その結果、人の生活圏に出る回数が増えます。
2025年度に被害が過去最多となった背景にも、この要因が指摘されています。つまり、被害は毎年一定ではなく、年によって大きく振れます。
四、そして、人の側が餌を置いています
これが、私たちに直接関係する部分です。
収穫されない柿や栗、生ゴミ、屋外のペットフード。動物にとっては、山を歩き回るより効率のいい餌場です。
一度覚えた個体は、繰り返し来ます。そして人を怖がらなくなります。ここまで来ると、駆除以外の選択肢がなくなります。
寄せつけない工夫は、動物のためでもあります。
出会いやすい場所と時間
確率を下げる話です。
場所は、線でつながっています
動物は、身を隠せる場所を選んで移動します。だから、通り道はある程度決まっています。
| 場所 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 川沿い・河川敷 | 草が高く、市街地まで一本でつながっています |
| 林に接した住宅地 | 山からそのまま出てこられます |
| 耕作をやめた畑・空き地 | 草が伸び、隠れながら移動できます |
| 果樹のある庭 | 餌そのものがあります |
| ゴミの集積所 | においが遠くまで届きます |
| 登山道・林道 | 見通しが悪く、曲がり角で鉢合わせます |
自宅の周辺に、この条件がいくつあるかを見てください。三つ以上あるなら、出没情報を定期的に確認する価値があります。
時間は、朝と夕方です
多くの獣は薄明かりの時間に活発になります。夜明け前と、日没の前後です。
この時間は、人間の目も効きにくい。危険が重なる時間帯です。
出没が伝えられている地域では、この時間の散歩やジョギングのコースを、一時的に変えてください。川沿いを避けるだけでも違います。
見通しの悪い場所では、先に音を出す
鉢合わせの多くは、曲がり角、藪の陰、風下で起きます。
お互いに気づかないまま近づくのが、最も危ない形です。相手が先に気づけば、たいていは向こうが離れていきます。
だから、見通しの悪い場所に入る前に、手をたたく。声を出す。それだけで確率が下がります。
持っておくと役に立つもの
優先度をつけて並べます。
| もの | 効き方 | 優先度 |
|---|---|---|
| ホイッスル | 鈴より大きく、風や沢の音に負けにくい | 高い |
| 撃退スプレー | 最後の手段。7〜12メートルで有効 | 山に入るなら高い |
| 鈴 | 存在を知らせる。ただし過信しない | 中くらい |
| ライト | 薄暗い時間に、相手より先に気づける | 高い |
| 携帯電話 | 通報に使います。圏外の確認を | 高い |
| 音の出るアプリ・ラジオ | 手が空いているときの代用になります | 低い |
ライトの選び方は防災用ヘッドライトの選び方にまとめました。両手が空く形が、この場面では有利です。
鈴について、正直に書いておきます
鈴は「効かない」と言われることがあります。その指摘には、根拠があります。
沢の音や強い風があると、音は届きません。そして鈴の音に慣れてしまった個体がいるという報告もあります。
ただし、遭遇そのものを減らす効果は認められています。問題は、鈴だけに頼ることです。
ですから、鈴は持つ。けれど、それで安全になったとは考えない。これが現実的な扱い方だと思います。
スプレーは、使い方を知らないと意味がありません
撃退スプレーは、最後の手段です。
すぐ抜ける場所に付けてください。リュックの中では間に合いません。腰か、肩のベルトです。
そして、風向きに注意してください。向かい風で噴射すると、自分にかかります。
使うのは、相手が突進してきたときだけです。遠くにいる相手に向けても届きませんし、刺激するだけになります。
地域として、できること
個人の工夫には限界があります。
餌場をなくすのは、一軒だけでは足りません
自分の家の柿を採っても、隣の家に放置された柿があれば、動物は来ます。
だから、この対策は地域でまとめて行うと効果が跳ね上がります。草刈り、果樹の管理、ゴミの出し方。
自主防災組織や町内会が動ける領域です。仕組みは自主防災組織とは?にまとめました。
電気柵や防護柵には、補助がある場合があります
農地や家庭菜園を守る柵には、市町村が費用の一部を補助している例があります。
耐震改修の補助金と同じで、制度があっても、申請しなければ受け取れません。そして、多くの場合は工事の前に申請が必要です。
調べ方の考え方は補助金を自分の市区町村で調べる方法と同じです。市町村名と「鳥獣被害 補助」で検索するのが最短です。
目撃したら、必ず伝えてください
これが、いちばん地域の役に立つ行動です。
行政は、通報がなければ出没を把握できません。そして、把握できなければ警戒も対策も打てません。
「大したことではないから」と黙っていると、次の人が危ない目に遭います。
通報は、その場ですぐでなくて構いません。家に帰ってからでも、市町村の担当課に一報を入れてください。電話一本、数分で終わります。
そして、写真があれば添えてください。種類と大きさが分かると、行政の判断が変わります。ただし、撮るために近づかないでください。遠くからで十分です。
屋内に入られたら、どうするか
まれですが、実際に起きています。
建物に入られた場合は、逃げるが優先です
クマやイノシシが店舗や住宅に入る事例が報告されています。この状況では、追い出そうとしないでください。
やることは三つです。
一、別の部屋か屋外へ移り、扉を閉める。相手との間に、物理的な仕切りを作ります。
二、110番に通報する。建物内に入っている時点で、緊急銃猟の要件に近づきます。
三、逃げ道を塞がない。相手が出ていけるなら、それが最も安全な結末です。窓や戸を開けたまま、人が離れる形を作ります。
追い詰めることが、いちばん危険です
閉じ込められた動物は、出口を求めて暴れます。そこに人が立ちはだかると、攻撃が起きます。
建物を守ろうとして向かっていくのは、割に合いません。物は直せますが、けがは直らないことがあります。
車を運転しているときの判断
意外に、ここが最も遭遇しやすい場面です。
飛び出しは、急ハンドルで避けないでください
シカやイノシシが道路に出てくることがあります。とくに朝夕と、山あいの道です。
このとき、急ハンドルは対向車線への飛び出しや横転につながります。結果として、動物との衝突より重い事故になります。
原則は、ブレーキで減速し、直進を保つことです。
一頭見たら、続きがいると考えてください
シカは群れで動きます。一頭が渡ったあと、続けて出てくることが珍しくありません。
イノシシも、親のあとに子どもが並んで出てきます。一頭やり過ごしたあとが、いちばん危ない。
だから、見かけたらその先しばらくは速度を落としてください。
ぶつかってしまったら
まず、安全な場所に停めて、後続車に分かるようにしてください。三角表示板とハザードランプです。
そして、警察に連絡します。物損事故として扱われ、証明書がなければ車両保険の請求ができません。
動物には近づかないでください。生きている場合、興奮して攻撃してきます。
車の備えは車中泊避難に必要なものにまとめました。三角表示板やライトは、この場面でも使えます。
登山やキャンプに行くなら
普段は出会わない方も、この場面では確率が上がります。
食べ物の管理が、いちばん大事です
においは、想像よりはるかに遠くまで届きます。
テントの中に食料を置いて眠るのは避けてください。調理した場所と寝る場所は離す。ごみは密閉して持ち帰る。
これは自分のためだけではありません。人の食べ物を覚えた個体は、次の登山者を襲います。
入る前に、その山の情報を見てください
多くの自治体や山小屋が、直近の目撃情報を公開しています。登山口に掲示があることも多い。
「今週、この登山道で目撃あり」と書かれていたら、コースを変えるか、日を改めてください。
これは、天気予報を見てから山に入るのと同じことです。情報があるのに見ないのが、いちばんもったいない。
単独行動を避ける
複数で歩けば、自然と音が出ます。会話そのものが、最も確実な存在の知らせです。
そして、万一のときに通報できる人がいます。圏外の場所では、これが生死を分けます。
山の危険という点では、天気の急変も同じ性質を持ちます。晴れていても水が来る仕組みは鉄砲水は晴れていても来るにまとめました。
よくある質問
Q. 都市部に住んでいます。関係ありますか
関係がないとは言えなくなっています。
クマの出没は5万件を超え、市街地への侵入も報告されています。イノシシは住宅街に現れています。だから2025年に、市街地での銃猟を可能にする法改正が行われました。
ただし、頻度は地域によってまったく違います。まず、自分の市町村の出没情報を一度見てください。数件も出ていなければ、優先度は低くて構いません。
Q. 死んだふりは効きますか
条件つきです。そして、遭遇したときの行動ではありません。
死んだふりが語られるのは、攻撃を避けられない最終段階での防御姿勢としてです。クマが身を守るために突進してきた場合、うつ伏せになって首の後ろを手で覆い、急所を守る形が取られます。
一方、餌として狙われている場合は逆効果になります。クマは死んだ動物も食べるためです。
ですから、「クマに会ったら死んだふり」という覚え方は危険です。まずやるべきは、目を離さずゆっくり下がることです。
Q. 秋以外は安全ですか
被害が減るだけで、ゼロにはなりません。
クマの人身被害は9月から11月に集中しますが、春にも山菜採りの時期の事故が起きています。冬眠から覚めた直後で、空腹の個体が動く時期です。
イノシシとシカは、はっきりした季節の偏りがありません。市街地への出没は、通年で起こります。
ですから、秋だけ警戒すれば済むわけではありません。ただ、優先順位をつけるなら秋です。
Q. 音楽を聴きながら歩いても大丈夫ですか
やめてください。これは、はっきり申し上げます。
耳をふさぐと、相手の物音に気づけません。鉢合わせの多くは、お互いが気づかないまま近づいて起きています。
そして、音楽は外に漏れません。自分の存在を知らせる役には立ちません。
山や川沿いを歩くなら、耳は空けておいてください。
Q. 出没を見かけたら、どこに連絡しますか
危険が差し迫っているなら110番です。人の生活圏に出ている場合は、迷わず警察に連絡してください。
差し迫っていない目撃であれば、市町村の担当課です。農林課、環境課、鳥獣対策の担当が置かれています。
伝える内容は四つです。いつ、どこで、何を、何をしていたか。これだけで十分です。
Q. 犬の散歩中に出会ったら
犬を引き寄せて、抱えられるなら抱えてください。
犬が吠えると、相手を刺激します。そして犬が向かっていけば、興奮した動物が飼い主のほうへ来ることがあります。
リードは短く持ち、静かに離れてください。
Q. 子どもにはどう教えますか
短い言葉で三つだけ伝えてください。
「走らない」「近づかない」「すぐ大人に言う」。
写真を撮ろうとして近づく事故が起きています。とくに、めずらしさから動画を撮ろうとする例が報告されています。珍しいものを見たら離れる、という感覚を先に作っておくことが大切です。
子どもだけで留守番している時間の備えは子どもが留守番中に災害が起きたらにもまとめています。
都道府県で、警戒すべき相手が違います
最後に、地域ごとの見取り図を置いておきます。
| 地域 | 主に警戒する相手 | 特徴 |
|---|---|---|
| 北海道 | ヒグマ | 国内最大の陸上動物。攻撃性が高い個体がいます |
| 東北 | ツキノワグマ | 2025年度の人身被害の6割超が集中しました |
| 北陸・甲信越 | ツキノワグマ、イノシシ | 山あいの集落で出没が続いています |
| 関東 | イノシシ、サル、シカ | 都市近郊の緑地や川沿いに現れます |
| 中部・近畿 | シカ、イノシシ、サル | 農作物の被害と交通事故が中心です |
| 中国・四国 | イノシシ、シカ | クマは地域によって個体数が少なく、扱いが異なります |
| 九州 | イノシシ、シカ、サル | クマは生息していないとされています |
| 沖縄 | — | 本土と生息する動物が異なります |
クマがいない地域では、警戒の中心はイノシシになります。やることが変わるので、まず自分の地域を確認してください。
北海道は、別に考える必要があります
私が住んでいる北海道には、ヒグマが生息しています。本州のツキノワグマとは、体格も危険性も違います。
成獣で300キロを超える個体があり、まれに人を餌として狙う例が報告されています。この場合、身を守る姿勢を取ることは有効になりません。
札幌のような都市でも、市街地への出没があります。都会だから安全、とは言えないのが北海道です。
都道府県ごとのリスクは、災害と同じ考え方で見てください
地震、水害、雪害。どれも、住んでいる場所によって優先順位が変わります。獣害もまったく同じです。
地域ごとの災害リスクは47都道府県の災害リスク一覧にまとめました。自分の県で何を最も警戒すべきかを、先に決めておいてください。
この記事の位置づけ
ここまで、四種類の動物をまとめて扱いました。
詳しい話は、相手ごとに分けています
クマは距離ごとの判断が細かく、ヒグマとツキノワグマで前提も変わります。イノシシは市街地での動き方が中心になります。サルとシカは、被害の性質そのものが違います。
それぞれの記事で、具体的な手順を書いています。まずはご自身の地域に関わる相手から読んでください。
そして、いちばん確実なのは会わないことです
遭遇したときの正解を覚えるのは大事です。けれど、覚えた知識を使わずに済むほうが、はるかに良い。
家のまわりの餌を消す。出没情報を見る。時間帯を避ける。この三つは、今日から始められて、確率を確実に下げます。
まとめ|相手を知り、会わない工夫をする
最後に要点を整理します。
覚えておくこと
一、走らない。どの相手にも共通します。人間より速いためです。
二、至近距離で大声を出さない。驚かせると、防御の攻撃を招きます。
三、クマは目を離さず後退、イノシシは物陰か高い場所、サルは目を合わせない。
四、家のまわりの餌を消す。これが最も効果のある予防です。
五、出没情報を一度見ておく。自分の地域の頻度が分かります。
そして、これは防災と同じ構造です
自分の場所の危険を知り、起きる前に手を打ち、起きたときの行動を決めておく。地震や水害への備えと、まったく同じ順番です。
違うのは、相手が動くという点だけです。地震や台風は場所を選んで待つしかありませんが、野生動物はこちらの行動しだいで、出会う確率を下げられます。そこは、むしろ扱いやすい相手だと言えます。
最後に、一つだけ
出没のニュースを見ると、不安になると思います。けれど、数字を冷静に見てください。
2025年度のクマによる人身被害は238人。過去最多とはいえ、全国の人口に対する割合で言えば、極めて小さい数字です。そして、その6割が東北6県に集中しています。
過度に恐れる必要はありません。必要なのは、自分の地域の頻度を知り、それに見合った警戒をすることです。
出没が年に数件の地域なら、家のまわりの餌を片づけるだけで十分でしょう。秋の東北で山に入るなら、ホイッスルとスプレーを持つ意味があります。その差を、自分で判断できるようになることが、この記事の目的です。
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップに、災害の分類は災害の種類とは?にまとめました。

