【この記事の要約】
結論から言います。空気から水を作る装置は本物です。ただし「無限に水が作れる」のは、電気が来ている場所での話です。2026年8月、熊本県氷川町の避難所に、名古屋市名東区の企業が提供した装置が置かれました。県内の避難所に合わせて5台。令和8年熊本地震で7,300戸を超える断水が続いていた地域です。仕組みは除湿機に近く、空気を冷やして結露させ、その水を濾過して飲めるようにします。けれど弱点が三つあります。停電すれば止まること。気温18度を下回るか湿度30%を切ると効率が大きく落ちること。そして1台220万円ほどすること。家庭向けの販売は今年12月からの予定です。この記事では、この装置が誰の役に立つのかと、個人が水を確保する順番のどこに置くべきかをまとめます。
結論|避難所には効きます。家庭の備蓄の代わりにはなりません
最初に、いちばん大事なところを書いておきます。
三つの条件が揃ったときだけ、力を発揮します
一、電気が来ていること。これが絶対の条件です。
二、空気が暖かく、湿っていること。夏の日本は最適ですが、冬は違います。
三、長く水が要る状況であること。数日で復旧するなら、ペットボトルのほうが早い。
この三つが揃う場所とは、電気は復旧したのに水道だけが止まっている避難所です。熊本で使われたのは、まさにその状況でした。
だから、個人が最初に買うものではありません
はっきり書きます。この装置を買う前に、やるべきことが四つあります。
一、ペットボトルの水を家族の人数分そろえる。1人1日3リットル、最低3日分です。
二、携帯トイレを備える。断水で最初に困るのはトイレです。
三、風呂の残り湯をためておく習慣をつける。費用はゼロです。
四、給水所の場所と、水を運ぶ容器を用意する。
この四つが済んでいない段階で220万円の装置を検討するのは、順番が違います。備蓄の基本は防災用飲料水の選び方にまとめました。
熊本の避難所で、何が起きていたか
まず、装置が置かれた状況を押さえます。
7,300戸を超える断水が続いていました
2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方でマグニチュード7.1の地震が起きました。宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測しています。
気象庁はこれを「令和8年熊本地震」と命名しました。国内で震度7が観測されたのは、2024年の能登半島地震以来です。
この地震で、熊本県内では広い範囲の断水が発生しました。報道された時点で、7,300戸を超える世帯の水が止まったままです。避難所で生活する方は3,000人を超えていました。
地震そのものの経緯は令和8年熊本地震とは?にまとめています。
電気は戻り、水だけが戻らない期間があります
ここが要点です。
地震のあと、電気と水道では復旧の速さが違います。電気は架線をつなげば通りますが、水道は地中の管を掘って直さなければなりません。
そして水道は、浄水場が壊れると広い範囲が一度に止まります。熊本では浄水場が被災し、そこから水を送っていた地域全体に影響が出ました。
つまり、「コンセントは使えるのに、蛇口からは水が出ない」という期間が生まれます。これが数週間続くことがある。
この装置は、まさにその隙間を埋めるために持ち込まれました。
5台が、県内の避難所に置かれました
提供したのは、名古屋市名東区の企業「デポート」です。
8月6日、氷川町の避難所に設置されました。同社は熊本県内の避難所に、合わせて5台を提供しています。
装置には医療用の高性能フィルターが使われており、空気中の湿気を熱交換の技術で水に変えます。
価格は1台220万円ほど。そして、今年12月から家庭向けにも販売される予定と報じられています。
空気から水を作る仕組み
魔法ではありません。仕組みが分かると、限界も見えてきます。
やっていることは、除湿機とほぼ同じです
夏にエアコンを使うと、屋外のホースから水がぽたぽた落ちます。あれと同じ原理です。
手順にすると、こうなります。
一、外の空気を取り込む。
二、フィルターでほこりや汚れを取り除く。
三、空気を冷やす。冷えた板に空気を当てます。
四、水蒸気が水滴になる。結露です。
五、集めた水を濾過し、殺菌する。ここで飲める水になります。
この技術は大気水生成と呼ばれています。空気中の水分から飲料水を作る、という意味です。
なぜ、水が湧いてくるように見えるのか
空気には、意外なほど大量の水が含まれています。
気温30度、湿度70%の空気には、1立方メートルあたりおよそ21グラムの水蒸気があります。装置は大量の空気を通し続けるので、これを集めれば飲める量になる。
だから「無限に」という表現が出てきます。実際、空気が湿っているかぎり、原料が尽きることはありません。
けれど、ここに落とし穴があります。空気が乾いていれば、原料そのものが減るのです。
取り出した水は、そのままでは飲めません
結露した水は蒸留水に近く、ミネラルがほとんど含まれていません。
また、空気中のほこり、花粉、排気ガスの成分も一緒に取り込まれます。だから、フィルターと殺菌の工程が欠かせません。
熊本の装置に医療用の高性能フィルターが使われているのは、そのためです。つまり、フィルターの交換が必要な機械だということでもあります。
この点は、携帯浄水器と同じ考え方です。仕組みは携帯浄水器は防災に使えるかにまとめました。
弱点は、三つあります
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。
一、停電したら、止まります
「コンセントさえあれば無限に」という言葉は、裏を返せば「コンセントがなければゼロ」ということです。
そして災害では、電気が止まることが珍しくありません。
北海道胆振東部地震では、北海道のほぼ全域、最大およそ295万戸で電気が止まりました。日本で初めてのブラックアウトです。経緯は北海道胆振東部地震とは?にまとめました。
停電と断水が同時に起きたとき、この装置は動きません。そして、その組み合わせは十分に起こりえます。
ですから、家庭に置く場合はポータブル電源や発電機とセットで考える必要があります。ただし、冷却を伴う機械は消費電力が小さくありません。スマートフォンを充電するのとは、必要な電力の桁が違います。
停電が長引いたときの備えは停電が長引いたときの対策にまとめました。
二、寒く乾いた空気からは、ほとんど水が採れません
これが、日本で使ううえで最も大きな制約です。
結露を利用する方式の装置は、おおむね気温18度を下回るか、相対湿度が30%を切ると、効率が大きく落ちます。
理由は単純です。冷たく乾いた空気には、そもそも水蒸気が少ないからです。
日本の冬を思い浮かべてください。
| 季節と場所 | 装置にとっての条件 |
|---|---|
| 夏の九州・西日本 | 最適。高温で湿度も高い |
| 梅雨どきの本州 | 非常に良い条件 |
| 春・秋の平野部 | 実用になる |
| 冬の太平洋側 | 乾燥するため能力が落ちる |
| 冬の北海道・東北 | 低温と低湿度で、期待しにくい |
| 暖房の効いた室内 | 暖かくても乾いており、条件は良くない |
熊本の8月というのは、この装置にとって最も有利な条件です。だから活躍しました。
けれど、私が住む札幌で冬に断水が起きたとき、同じようには働きません。雪の多い地域では、水道管の凍結による断水が実際に起きています。対処は水道管が凍結したときの対処法にまとめました。
つまり、この装置は「どこでも使える万能の解決策」ではありません。季節と地域を選びます。
三、価格が、まだ高い
1台220万円ほど。これは、個人が防災のために買う金額ではありません。
同じ220万円を防災に使えるなら、優先すべきは建物の耐震改修です。
阪神・淡路大震災では、亡くなった方の77.0%が窒息・圧死でした。建物が保たなければ、水の心配をする段階まで生き残れません。補助金の調べ方は耐震診断・耐震改修の補助金にまとめました。
家庭向けの機種がどの価格帯で出るかは、まだ分かりません。12月の発表を待つ必要があります。
では、どこで役に立つのか
弱点を並べましたが、価値がないという話ではありません。
避難所には、はっきり効きます
理由が四つあります。
一、大人数が長期間、水を必要とします。ペットボトルの箱を運び続けるより、その場で作れるほうが合理的です。
二、避難所には電気が来ています。電気の復旧は水道より早いためです。
三、運搬の負担が減ります。道路が寸断されていれば、水の配送そのものが難しくなります。
四、ごみが出ません。被災地ではペットボトルのごみ処理も負担になります。
給水車から水をもらう方法は給水車・給水所の使い方にまとめましたが、そもそも運ばずに済むなら、それが最善です。
自治体と企業が、平時に置いておくものです
この装置の本当の使い道は、災害が起きてから買うものではなく、あらかじめ置いておくものだと考えています。
公民館、学校の体育館、福祉施設、病院。断水したときに人が集まる場所です。
とくに、透析を受けている方がいる医療機関や、高齢者の施設では意味が大きい。これらの施設は、水が止まると機能そのものが止まります。
企業であれば、従業員が帰宅できない場合の備えとして考える価値があります。
孤立する集落では、価値が上がります
能登半島地震では、道路が寸断されて2週間以上も孤立が続いた地区がありました。
支援物資が届かない場所では、その場で水を作れることの意味がまったく違ってきます。経緯は能登半島地震とは?にまとめました。
ただし、能登の地震は1月1日に起きました。冬です。この装置にとっては、最も条件の悪い季節でした。
技術に期待しつつ、条件を冷静に見る。この両方が必要だと思います。
個人が水を確保する順番
ここで、選択肢を並べて整理します。
| 方法 | 費用 | 強いところ | 弱いところ |
|---|---|---|---|
| ペットボトルの備蓄 | 数千円 | 停電しても使える。すぐ飲める | 置き場所を取る。運ぶのが重い |
| 風呂の水をためる | 0円 | トイレを流せる。量が多い | 飲めない |
| 携帯浄水器 | 数千円〜 | 電気が要らない。軽い | 元になる水が必要 |
| ウォーターサーバー | 月額制 | 普段も使える。備蓄になる | 停電すると出ない機種がある |
| 給水車・給水所 | 0円 | 量に困らない | 並ぶ。運ぶ。容器が要る |
| 大気水生成装置 | 220万円ほど | 元になる水が要らない | 電気が要る。季節に左右される |
並べると分かります。費用対効果でいえば、上の三つが圧倒的です。
だから、この順番で進めてください
一、ペットボトルの水を3日分。1人1日3リットルが目安です。4人家族なら36リットル。
二、可能なら1週間分に増やす。能登半島地震の断水は数か月に及びました。3日では足りない地域があります。
三、風呂の水を抜かない習慣をつける。トイレと洗い物に使えます。
四、携帯浄水器を一つ。川や湧き水を使える状況なら、これが効きます。
五、給水所の場所と、運ぶ容器を決めておく。10リットルを超えると、大人でも運べません。
買い足していく考え方はローリングストックとは?にまとめました。普段から使い、減ったら買い足す。これがいちばん続きます。
ウォーターサーバーを使っている方へ
すでにウォーターサーバーがある家庭は、それ自体が備蓄になっています。
ただし、確認してほしいことが一つあります。停電したとき、水が出る機種かどうかです。
電動ポンプで水を汲み上げる方式だと、停電で出なくなります。ボトルを外して直接注げるかどうかを、いま確かめておいてください。
詳しくは防災にウォーターサーバーは役立つかにまとめました。
買うかどうかを決める、三つの質問
家庭向けの販売が始まったときに、自分で判断できるようにしておきます。
質問一|停電しても動かせますか
これが最初の関門です。
持っているポータブル電源で動くかどうか、消費電力を必ず確認してください。冷却を行う機械は、消費電力が大きくなりがちです。
もし動かないなら、断水と停電が同時に起きる場面では役に立ちません。そして地震では、その組み合わせが普通です。
質問二|住んでいる地域の湿度で、実際に何リットル採れますか
カタログに書かれた生成量は、たいてい高温多湿の条件での数字です。
「1日30リットル」と書かれていても、それは気温30度、湿度80%といった条件での値であることが多い。冬の室内で同じ量が採れるとは限りません。
だから、確認すべきは「どの温度と湿度で、何リットルか」という書き方をしているかどうかです。
条件を明示している製品は、信頼できます。逆に、最大値だけを大きく書いている製品には注意してください。
質問三|同じ金額で、もっと効く対策はありませんか
これが、いちばん大事な質問です。
防災の予算は無限ではありません。だから、どこに使うかの判断が要ります。
過去の震災を見ると、命を奪ってきたのは建物の倒壊、津波、火災、そして避難生活での体調悪化でした。水が飲めずに亡くなった方が最多だった震災は、ありません。
死因の比較は過去の震災は何が人の命を奪ったかにまとめました。
耐震、家具の固定、携帯トイレ、常備薬。この四つが済んでいないなら、そちらが先です。
装置を待つ前に、家の中の水を数えてください
意外に思われるかもしれませんが、いまお住まいの家には、すでに水があります。
断水した瞬間に、家にある水
| 場所 | おおよその量 | 使い道 |
|---|---|---|
| 風呂の浴槽 | 150〜200リットル | トイレ、洗い物、体を拭く |
| 給湯器のタンク (貯湯式の場合) |
150〜460リットル | 非常用の取り出し口から使える機種があります |
| トイレのタンク | 1台あたり6〜8リットル | そのまま1回流せます |
| 製氷機の氷 | 数百グラム〜 | 解ければ飲めます |
| 冷蔵庫の飲み物 | 家庭による | 飲用 |
| 洗濯機に残った水 | 使用状況による | 洗剤が入っていなければ、掃除に |
合わせると、多くの家庭で数百リットルになります。これは、給水所に何往復もしなければ運べない量です。
ただし、条件があります
一、断水に気づいた瞬間に、水をためること。まだ出ているうちが勝負です。地震の直後、蛇口から出るなら、すぐ浴槽に張ってください。
二、貯湯式の給湯器かどうかを、いま確かめておくこと。取扱説明書に、非常用の水の取り出し方が書かれています。停電すると操作できない機種もあります。確認は給湯器が止まる冬にまとめました。
三、飲めるかどうかを区別すること。浴槽の水は飲めません。トイレを流す水です。
この確認は、今日5分で終わります
やることは三つだけです。
一、給湯器の側面を見て、貯湯式かどうかを確かめる。
二、浴槽の水を、いつも抜いているかどうかを見直す。小さなお子さんがいる家庭では危険なので、この場合は無理をしないでください。
三、ペットボトルの水が何本あるか、数える。
220万円の装置を検討するより、この5分のほうが、確実に効きます。
断水したときの手順は断水対策おすすめ完全ガイドにまとめました。
断水は、実際どのくらい続くのか
この装置が要るかどうかは、断水の長さで決まります。だから、過去の数字を見ておきます。
数日で終わるとは限りません
断水と聞くと、1日か2日で戻るものだと考える方が多いと思います。けれど、実際はそうなっていません。
| 災害 | 断水の規模と長さ |
|---|---|
| 阪神・淡路大震災 1995年 |
約130万戸。全面復旧まで約3か月 |
| 東日本大震災 2011年 |
約257万戸。地域によっては数か月 |
| 熊本地震 2016年 |
約45万戸。おおむね1か月ほどで復旧 |
| 北海道胆振東部地震 2018年 |
停電でポンプが止まり、断水した地域があった |
| 能登半島地震 2024年 |
約13万戸。一部の地区では数か月に及んだ |
| 令和8年熊本地震 2026年 |
浄水場の被災で広域が停止。8月中旬時点で7,300戸超が継続 |
単位が「日」ではなく「週」や「月」です。ここが、多くの方が思っているより重い部分だと思います。
なぜ、水道はこれほど時間がかかるのか
理由は三つあります。
一、管が地中にあります。どこが壊れたかを探すところから始まります。掘り返す作業も要ります。
二、道路が壊れていると、工事に入れません。能登では、まず道路を直すところからでした。
三、浄水場が壊れると、その先すべてが止まります。1か所の被災が、広い範囲に及びます。
電気の復旧は、架線をつなげば区間ごとに戻ります。水道には、その手軽さがありません。
だから、3日分では足りない地域があります
防災の教科書には「3日分」と書かれています。これは、支援が届き始めるまでの日数です。
けれど、支援が届くことと、蛇口から水が出ることは違います。給水所まで自分で取りに行ける状態が、数週間続くのです。
とくに、次のような方は1週間分を目安にしてください。
一、山あいや半島に住んでいる方。道路が1本しかない地域は、孤立します。
二、高層階に住んでいる方。給水所から10リットルを運んで階段を上がるのは、現実的ではありません。事情はマンションの断水は停電で起きるにまとめました。
三、高齢の方や小さな子どもがいる家庭。並んで運ぶ作業が、そのまま負担になります。
断水したときの動き方は断水したらどうする?にまとめました。
「無限に」という言葉を、どう受け止めるか
最後に、防災用品を選ぶときに効く話を書いておきます。
条件が省かれている言葉に、注意してください
「コンセントさえあれば無限に」という表現は、間違ってはいません。空気中の水分は尽きないからです。
けれど、この言葉には条件が含まれていません。どんな温度で、どんな湿度で、1時間あたり何リットルなのか。それが分からなければ、判断できません。
これは、この製品に限った話ではありません。防災用品の広告には、条件の書かれていない数字がよく出てきます。
「最大◯◯時間点灯」は、たいてい最も暗いモードでの数字です。
「◯◯人用・◯日分」は、1日に必要な量をどう見積もったかで変わります。
「大容量」は、何と比べて大きいのかが書かれていません。
見るべきは、条件つきの数字です
良い製品は、条件を隠しません。
「気温30度、湿度80%のとき、1日あたり◯リットル」と書いてある製品は信頼できます。条件を書くと数字は小さく見えますが、それでも書いている姿勢が大事です。
逆に、最大値だけを大きく載せ、条件を注釈の小さな文字に押し込んでいる製品には、慎重になってください。
この見方は、ほかの防災グッズにも使えます。考え方は防災グッズでいらなかったものにまとめました。
新しい技術ほど、冷静に見てください
新しい仕組みが出てくると、期待が先に立ちます。それ自体は悪いことではありません。
ただ、災害の備えで大事なのは「最悪の状況でも動くかどうか」です。
晴れた日に電気が来ていて、暖かく湿った空気がある。その条件で動くことは、確かめるまでもありません。
確かめるべきは逆です。停電して、寒くて、乾いていて、道路も塞がっている。そのときに何が使えるか。
その問いに対する答えは、いまのところ「棚に置いてあるペットボトルの水」です。地味ですが、これがいちばん確実です。
そのうえで、新しい技術が広がっていくことには期待しています。避難所の水が足りるようになれば、助かる命があります。
よくある質問
Q. 作られた水は、安全に飲めますか
適切に濾過と殺菌が行われていれば、飲めます。熊本の装置には医療用の高性能フィルターが使われています。
ただし、フィルターの交換を怠れば話は別です。空気中の汚れを集める機械なので、フィルターは必ず消耗します。
そして、作られた水にはミネラルがほとんど含まれません。短期間なら問題ありませんが、これだけで長く過ごす場合は食事から塩分とミネラルを補ってください。
Q. 汚れた空気の場所でも使えますか
火災の煙が漂う場所や、火山灰が降っている場所では避けてください。
フィルターがすぐ目詰まりしますし、取り込みたくないものまで水に入る可能性があります。
火山灰が降ったときの水道への影響は火山灰が降ったらどうする?にまとめました。
Q. 1日にどれくらい作れますか
機種によって大きく違います。家庭向けの小型機で1日あたり数リットル、大型の業務用では1日に数十リットルを作るものもあります。
繰り返しになりますが、これらはすべて条件つきの数字です。気温と湿度が下がれば、生成量も下がります。
大人1人が1日に必要な飲み水は、およそ2から3リットルです。家族4人なら1日10リットル前後。この量を安定して作れるかどうかが、判断の基準になります。
Q. 家庭用は、いつから買えますか
報道によれば、今年12月から家庭向けにも販売される予定です。
ただし、家庭向け機種の価格、生成量、消費電力は、現時点では公表されていません。この記事も、分かった時点で更新します。
Q. 除湿機の水を飲んでもいいですか
飲まないでください。これは、はっきりお伝えします。
家庭用の除湿機は、飲料水を作るための設計になっていません。タンクや配管に雑菌が繁殖しますし、濾過も殺菌も行われません。
原理は似ていても、飲めるようにするための工程がまったく違います。
ただし、トイレを流す水としてなら使えます。断水したとき、除湿機のタンクの水は捨てずに取っておいてください。
Q. 雨水を貯めるのと、どちらがよいですか
目的が違います。
雨水は、0円で大量に貯められるのが強みです。トイレや洗い物には十分に使えます。飲むには濾過と煮沸が必要です。
大気水生成装置は、雨が降らなくても作れるのが強みです。ただし電気が要ります。
家庭でまず考えるべきは、雨水タンクのほうです。費用が桁違いに安く、停電しても使えます。
Q. 冬の北海道では、まったく使えないのですか
使えないとまでは言えませんが、期待した量は採れません。
札幌の冬は、外気温が氷点下になり、空気も乾きます。結露を利用する方式にとって、最も不利な条件です。
暖房の効いた室内なら気温は上がりますが、暖房中の部屋はむしろ乾燥します。湿度30%を切ることも珍しくありません。
ですから、雪の多い地域にお住まいなら、この装置よりも備蓄と凍結対策を優先してください。冬の停電で暖房が止まると、水道管が凍って破裂します。そちらのほうが、はるかに現実的な危険です。
停電時の暖房は停電しても使える暖房はどれかにまとめました。
Q. ペットや植物に使っても大丈夫ですか
飲用として作られた水であれば、問題ありません。
ただし、断水が長引く場面では、ペットの飲み水も人間と同じだけ必要になります。体重10キロの犬でおおよそ1日1リットル前後が目安です。
家族の人数を数えるときは、ペットの分も足してください。備えはペットの災害避難にまとめました。
まとめ|技術には期待し、備蓄は自分でやる
最後に、この記事の要点をまとめます。
この装置について分かったこと
一、実際に被災地で使われています。令和8年熊本地震で、氷川町の避難所に置かれました。県内に5台です。
二、仕組みは除湿機に近い。空気を冷やして結露させ、濾過して飲めるようにします。
三、電気が絶対条件です。停電すれば止まります。
四、季節と地域を選びます。気温18度、湿度30%が、おおよその目安です。
五、1台220万円ほど。家庭向けは今年12月からの予定です。
私たちがやるべきこと
装置の発売を待つ必要は、まったくありません。
今日できるのは、水を3日分そろえることです。1人1日3リットル。スーパーで買えます。
そして、風呂の水を抜かずに寝てください。費用はかかりません。断水したとき、トイレを流せるかどうかで生活の質がまったく変わります。
この二つで、多くの断水はしのげます。
そして、水を買うのは今日でなくても構いませんが、今週のうちにしてください。災害が起きてからでは、店の棚から消えます。令和8年熊本地震のあとも、九州の店頭では水が品薄になりました。
備える人が多いほど、避難所に来る人が減ります。それは、本当に助けが必要な方に支援が回るということでもあります。自分のための備蓄が、地域のためにもなる。私は、そう考えています。
そのうえで、地域には期待しています
公平に書いておきます。私は、この技術に価値があると考えています。
避難所の水を、道路が寸断されても確保できる。これは、支援の仕組みとして大きな意味があります。
能登半島地震では、断水が長期化し、それが災害関連死につながりました。水が足りなければ、人はトイレを我慢し、水分を控え、体を壊します。その連鎖は災害関連死はどう認定されるのかにまとめました。
だから、自治体や施設がこうした装置を平時から備えることには、賛成です。
ただ、それと自分の家に3日分の水があるかどうかは、別の話です。
制度や技術が進むのを待つあいだも、断水は起こります。今日、水を買ってください。それがいちばん確実です。
何から始めるかで迷っている方は、防災は何から始める?最初にやること8ステップから順に進めてください。

