【この記事の要約】
家を失っても、住宅ローンは残ります。そのうえで新しい住まいの費用も必要になる。これが二重ローンの問題です。この状況に対して、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインという仕組みがあります。一定の条件を満たせば、ローンの減額や免除を受けられる可能性があります。最も知っておいていただきたいのは、自己破産とは違うという点です。信用情報機関に登録されません。いわゆるブラックリストに載らないのです。さらに、弁護士などの登録支援専門家による手続きの支援を、原則として無料で受けられます。最大500万円の現預金など、手元に残せる財産もあります。制度の中身を整理します。
結論:自己破産とは違います。信用情報に載りません
先に結論をお伝えします。
災害で住まいを失い、ローンの返済が難しくなった場合、債務の減額や免除を受けられる仕組みがあります。
正式には、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインといいます。被災ローン減免制度とも呼ばれます。
自己破産との3つの違い
| 比較 | このガイドライン | 自己破産 |
|---|---|---|
| 信用情報への登録 | 登録されない | 登録される |
| 手元に残せる財産 | 最大500万円の現預金など | 原則99万円まで |
| 専門家の費用 | 原則無料 | 自己負担 |
信用情報に登録されないという点は、非常に大きな意味を持ちます。
登録されれば、新たな借入やクレジットカードの利用が難しくなります。住まいを建て直すためのローンも組めません。
このガイドラインなら、その制約を受けずに再出発できます。
知られていないことが最大の問題です
この制度は、あまり知られていません。
「家を失ったうえにローンが残るのは仕方がない」と考えて、相談しないまま苦しんでいる方がいます。
使える可能性があるなら、まず相談してください。相談すること自体に費用はかかりません。
制度を知らずに自己破産を選んでしまえば、信用情報に記録が残ります。その差は、その後の何年にもわたって影響します。
選べたはずの道を、知らないまま失う。これが最も避けたい事態です。
どういう制度なのか
制度の成り立ちから説明していきます。背景を知ると、使い方も見えてきます。
この仕組みは、平成28年4月1日から運用が始まりました。
それ以前は、災害でローンの返済が困難になっても、自己破産以外に選択肢が乏しい状況でした。しかし自己破産をすれば、信用情報に登録され、その後の生活再建に支障が出ます。
そこで、災害という本人に責任のない事情に対して、別の道を用意したのがこのガイドラインです。
ここが制度の考え方の核心です。返せなくなった原因が、本人の浪費や経営判断の誤りではない。自然災害という、どうにもならない事情による。だから通常の債務整理とは違う扱いをする、という発想です。
負い目を感じる必要がないのは、このためです。
対象となる災害
平成27年9月2日以降に発生し、災害救助法が適用された自然災害が対象とされています。
地震、津波、台風、豪雨、噴火など、種類は問いません。
ご自身が被災した災害が該当するかは、金融機関や弁護士会で確認できます。
対象となる債務
住宅ローンだけではありません。
- 住宅ローン
- 事業に関するローン
- 自動車ローン
- 教育ローン
- クレジットカードの残債
災害の影響で返済が困難になった債務が対象になります。
手元に残せる財産
ここが、この制度の大きな特徴になります。
債務整理というと、財産をすべて失うと考えられがちです。しかし、このガイドラインでは一定の財産を残せます。
| 残せるもの | 目安 |
|---|---|
| 現預金 | 最大500万円 |
| 家財の地震保険金 | 最大250万円 |
| 被災者生活再建支援金 | 全額 |
| 災害弔慰金・災害障害見舞金 | 全額 |
| 義援金 | 全額 |
自己破産では、原則として99万円までしか残せません。その差は非常に大きなものです。
なぜ多く残せるのか
生活を再建するためです。
被災者生活再建支援金や義援金は、そもそも生活を立て直すために支給されたものです。それを債務の返済に充ててしまえば、制度の目的が果たせません。
だから、これらは手元に残せる設計になっています。
ただし条件があります
誰でも無条件に減免されるわけではありません。
収入や資産の状況、返済の見通しなどをもとに判断されます。すべての債権者の同意も必要になります。
該当するかどうかは、専門家と相談しながら確認していくことになります。
専門家の支援は無料です
専門的な手続きを一人で進めるのは、現実的に困難です。
そのため、弁護士などの登録支援専門家が支援する仕組みが用意されています。
国の補助により無料
この支援は、原則として無料で受けられます。国の補助によるものです。
通常、債務整理を弁護士に依頼すれば費用がかかります。しかしこの制度では、その負担がありません。
「弁護士に頼むお金がない」という理由で諦める必要はないのです。
どこに相談するか
| 窓口 | 内容 |
|---|---|
| 借入先の金融機関 | 手続きの入り口。まずここへ |
| 弁護士会 | 無料相談を実施していることが多い |
| ガイドラインの運営機関 | 制度の案内 |
| 自治体の相談窓口 | ほかの支援とあわせて相談できる |
最も多く借りている金融機関に、まず申し出るのが基本の流れです。
手続きの流れ
おおまかな流れを示します。
- 借入先の金融機関へ、制度を利用したい旨を申し出る
- 金融機関から同意を得る
- 登録支援専門家の委嘱を依頼する
- 専門家の支援を受けながら、書類を準備する
- 債権者へ調停条項案を提出する
- 債権者の同意を得る
- 簡易裁判所の特定調停を経て、成立する
専門的な用語が出てきますが、実務は専門家が支えてくれます。
時間はかかります
数か月を要するのが一般的です。
その間、生活の再建も同時に進めることになります。負担は小さくありませんが、専門家がついていることを忘れないでください。
返済を止めてよいわけではありません
注意していただきたい点です。
制度を使いたいと思っても、勝手に返済を止めないでください。金融機関との関係が悪化します。
まず相談し、指示を受けてから行動してください。
手続き中の生活
数か月かかる間、どう過ごすかも現実的な問題です。
収入が途絶えることがあります
勤め先が被災すれば、給与が減るか止まります。事業をされている方なら、売上そのものがなくなります。
この状態で従来どおりの返済を続けるのは困難です。だからこそ、早めの相談が必要になります。
当面の生活費を確保する
手続きの結論が出るまでの生活費が必要です。
生活福祉資金の特例貸付、災害援護資金といった制度があります。社会福祉協議会が窓口になることが多いので、相談してください。
また、失業した場合は雇用保険の給付を受けられる可能性があります。ハローワークで確認してください。
専門家との連絡を絶やさない
手続きが進んでいるかどうかは、外からは見えにくいものです。
不安になったら、遠慮なく専門家へ連絡してください。状況を聞くだけでも、気持ちの負担は変わります。
書類を整理しておく
手続きには、多くの書類が必要になります。
- 罹災証明書
- ローンの契約書、返済予定表
- 収入を示す書類
- 預貯金の残高が分かるもの
- 保険の証券
- 被害の写真
一か所にまとめておくと、そのつど探す手間が省けます。被災後は物が散乱しているため、この整理が意外に大変です。
この制度が使えない場合
公平にお伝えします。
すべての方が対象になるわけではありません。
返済を続けられる場合
収入や資産から見て、返済を続けられると判断されれば、減免の対象にはなりません。
制度の目的は、返済が困難な方を救うことにあります。
債権者の同意が得られない場合
この手続きには、債権者の同意が必要です。
同意が得られなければ、成立しません。ただし、その場合でも別の方法が検討されることになります。
ほかの方法もあります
ガイドラインが使えない場合でも、道が閉ざされるわけではありません。
- 金融機関との個別の返済条件の見直し
- 返済の一時的な猶予
- 期間の延長による毎月の負担軽減
- 災害援護資金などの貸付制度
- 従来の債務整理の手続き
選択肢は複数あります。一人で抱えず、相談してください。
ほかの金銭的な支援
債務整理だけが道ではありません。あわせて使える制度を整理します。
| 制度 | 内容 | 返済 |
|---|---|---|
| 被災者生活再建支援金 | 最大300万円の給付 | 不要 |
| 災害弔慰金 | 家族を亡くした場合の給付 | 不要 |
| 義援金 | 寄付の配分 | 不要 |
| 災害援護資金 | 生活再建のための貸付 | 必要 |
| 生活福祉資金の特例貸付 | 当面の生活費の貸付 | 必要 |
| 税・保険料の減免 | 負担を軽くする | — |
給付と貸付は、性質がまったく違います。混同しないでください。
貸付は返さなければなりません
当たり前のようですが、重要な点です。
被災直後は現金が必要になります。そのとき、貸付は助けになります。しかし、返済の義務は残ります。
すでにローンを抱えている状態で新たに借りれば、負担は増えます。借りる前に、返済の見通しを立ててください。
税や保険料の減免を忘れずに
見落とされやすい制度です。
- 所得税、住民税、固定資産税
- 国民健康保険料、国民年金保険料
- 介護保険料
- 公共料金
これらは、申し出なければ適用されません。黙っていると通常どおり請求されます。
罹災証明書を持って、それぞれの窓口へ相談してください。毎月の負担が変われば、家計の余裕も生まれます。
雑損控除という方法
災害で資産に損害を受けた場合、所得税の計算上、控除を受けられる仕組みがあります。
確定申告が必要になりますが、還付を受けられる可能性があります。税務署や税理士会の相談窓口で確認してください。
事業をされている場合
個人事業主や中小企業では、事情が異なります。
事業のローンも対象になります
このガイドラインは、住宅ローンだけの制度ではありません。事業に関する借入も対象になります。
店舗や工場が被災し、返済が困難になった場合も相談できます。
資金繰りの支援もあります
激甚災害に指定されれば、中小企業向けの信用保険の特例が適用されます。保証を受けやすくなり、新たな資金を借りやすくなります。
制度の仕組みは激甚災害とは?指定されても個人に給付はない|本激と局激の違いも解説で解説しています。
事業を続けるか、たたむか
重い判断です。
借入を増やして再建するか、いったん整理するか。この選択には、専門家の助言が欠かせません。
商工会議所、よろず支援拠点、中小企業診断士。相談できる窓口は複数あります。
従業員がいる場合
雇用を維持するための助成制度が用意されることがあります。
事業所が被災して営業できない場合、雇用調整助成金などが使えることがあります。労働局やハローワークに相談してください。
二重ローンという問題
ここであらためて、そもそも何が起きているのかを整理しておきます。
失った家のローンは消えません
建物が全壊しても、ローンの契約は残ります。
担保にしていた家がなくなっても、借りた事実は変わらないためです。
そのうえで、新しい住まいが必要になります。建て直すにも、借りるにも費用がかかります。
支援金だけでは足りません
被災者生活再建支援金の上限は300万円です。
家を建て直すには、これだけでは到底足りません。多くの場合、新たな借入が必要になります。
つまり、古いローンと新しいローンを同時に抱えることになるのです。
地震保険の重要性
この問題を軽くする手段が、地震保険です。
保険金が下りれば、残ったローンの返済に充てられます。地震による被害は火災保険では補償されないため、地震保険に入っていなければ受け取れません。
被災前にしかできない備えです。詳しくは地震保険とは?補償内容・保険料・加入の判断基準を徹底解説をご覧ください。
賃貸で暮らしていた場合
持ち家の話が続きましたが、賃貸にお住まいの方にも金銭の問題は生じます。
家賃はどうなるのか
建物が使えなくなった場合、家賃の扱いは契約と状況によって変わります。
住めない状態であれば、家賃の支払い義務がなくなる場合があります。ただし、判断が分かれることもあります。
大家さんや管理会社と、早めに話し合ってください。感情的にならず、事実にもとづいて進めることが大切です。
敷金と原状回復
災害による損傷は、借主の責任ではありません。
そのため、原状回復の義務を負わないのが一般的な考え方です。敷金についても、返還を求められる可能性があります。
判断に迷えば、弁護士会の無料相談を利用してください。
引っ越し費用の負担
住めなくなれば、別の住まいへ移ることになります。
この費用は原則として自己負担です。ただし、加算支援金の賃借にあたる50万円が対象になる可能性があります。
また、応急仮設住宅の賃貸型を利用できる場合もあります。窓口で確認してください。
家財の損害
建物は大家さんのものですが、家財は借主のものです。
家財保険に加入していれば、補償を受けられる可能性があります。賃貸契約の際に加入していることが多いので、証券を確認してください。
家計を立て直す順番
お金の問題は、順番を決めると整理しやすくなります。
手順1:入ってくるものを把握する
支援金、保険金、義援金、自治体独自の支援。それぞれいくら、いつ入るのかを確認します。
金額と時期が分かれば、資金の計画が立てられます。
手順2:減らせる支出を減らす
税や保険料の減免、公共料金の猶予。申し出れば軽くなるものを、すべて洗い出します。
この作業は地味ですが、毎月の負担に直結します。
手順3:借入の扱いを決める
ローンをどうするか。減免の対象になるか、条件の見直しで足りるか。
ここで専門家に相談してください。判断を先送りするほど、選択肢は狭まります。
手順4:住まいの方針を決める
建て直すか、補修か、賃貸か。ここまでの情報がそろって、はじめて現実的に判断できます。
逆に言えば、資金の見通しが立たないうちに住まいを決めないでください。
手順5:長期の生活設計を見直す
災害は、人生の計画を変えます。
教育費、老後の資金、仕事の続け方。すべてに影響します。落ち着いてから、あらためて考え直す時間を持ってください。
相談をためらわないでください
実務的な助言として、最も重要な部分です。
「返せなくなってから」では遅い
返済が滞ってから相談する方が多くいます。
しかし、滞納が続けば信用情報に記録されます。そうなってからでは、制度の利点である「登録されない」という効果が薄れます。
返済が難しくなりそうだと感じた時点で、相談してください。
金融機関は敵ではありません
相談すると不利になるのではないか、と心配される方がいます。
しかし、金融機関にとっても回収できないことは損失です。返済が続く道を一緒に探すほうが、双方にとって望ましい結果になります。
この制度は、金融機関側も理解している仕組みです。
一人で決めないでください
債務の問題は、家族にも言い出しにくいものです。
しかし、住まいと家計は家族全体の問題です。一人で抱え込めば、判断を誤ります。
そして、専門家に相談することを恥じる必要はまったくありません。制度は使うために作られています。
私が北海道で感じていること
私は札幌に住んでいます。2018年の胆振東部地震では、全道が停電するブラックアウトを経験しました。
お金の話は表に出にくい
被災後の報道では、避難所の様子や片付けが映されます。しかし、ローンや家計の話はほとんど出てきません。
個人の事情に踏み込む話題だからです。しかし、これこそが長く続く問題でもあります。
片付けは数か月で終わります。ローンは何十年も続きます。
知らないまま抱え込む方がいます
相談を受けていて感じるのは、制度の存在自体が知られていないことです。
「災害だから仕方がない」と諦めてしまう。あるいは「自己破産しかない」と思い込んでしまう。
どちらも、この制度を知っていれば避けられる誤解です。
寒冷地では住まいの再建費用が高い
北海道で家を建てるには、断熱や暖房の設備が必要です。そのぶん費用がかかります。
支援金の上限は全国一律です。しかし、必要な費用は地域によって違います。
寒冷地では、二重ローンの負担がより重くなりやすい。この点は意識しておくべきだと考えています。
備えとしての保険
この記事で扱ったのは、被災したあとの制度です。しかし本当に効くのは、被災前の備えです。
地震保険に入っているか。火災保険が風水害を対象にしているか。この2点を確認するだけで、将来の負担が変わります。
保険料は決して安くありません。しかし、二重ローンの重さと比べれば、判断は変わってくるはずです。
制度を知っていること自体が備えです
防災の備えというと、水や食料、持ち出し袋を思い浮かべます。
しかし、こうした制度を知っていることも立派な備えです。物ではないため実感しにくいのですが、被災後の生活を左右する力を持っています。
そして知識は、保管場所を取りません。今日読んだことを覚えておくだけで、将来の選択肢が増えます。
家族と共有してください
お金の話は、家族の間でも避けられがちです。
しかし、住宅ローンの残高、加入している保険、預貯金の状況。これらは家族で共有しておく価値があります。
災害では、家計を管理している人が動けなくなることもあります。誰か一人しか知らない状態は、それ自体が危うさを含んでいます。
相談先を控えておく
いざというときに、どこへ連絡すればよいか。これを事前に控えておくと動きが早くなります。
借入先の金融機関、加入している保険会社、地元の弁護士会。連絡先を紙に書いて、保険証券と一緒にしまっておいてください。
停電すれば、スマートフォンで調べることもできません。紙が確実です。
よくある質問
Q. 家が全壊してもローンは残りますか
A. 残ります。担保にしていた建物がなくなっても、借りた事実は変わりません。そのうえで新しい住まいの費用も必要になります。これが二重ローンの問題です。
Q. どんな制度が使えますか
A. 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインがあります。被災ローン減免制度とも呼ばれ、一定の条件を満たせば債務の減額や免除を受けられる可能性があります。
Q. 自己破産と何が違いますか
A. 3つの違いがあります。信用情報機関に登録されない、手元に残せる財産が多い、専門家の支援が原則無料である、という点です。特に信用情報に載らないため、その後の借入やクレジットカードの利用に支障が出ません。
Q. どのくらい財産を残せますか
A. 最大500万円の現預金、家財の地震保険金は最大250万円まで残せます。加えて被災者生活再建支援金、災害弔慰金、災害障害見舞金、義援金も手元に残せます。自己破産では原則99万円までなので、大きな差があります。
Q. 対象になる災害は何ですか
A. 平成27年9月2日以降に発生し、災害救助法が適用された自然災害が対象です。地震、津波、台風、豪雨、噴火など種類は問いません。該当するかは金融機関や弁護士会で確認できます。
Q. 住宅ローン以外も対象ですか
A. 対象です。事業に関するローン、自動車ローン、教育ローン、クレジットカードの残債なども、災害の影響で返済が困難になったものであれば含まれます。
Q. 弁護士費用はかかりますか
A. 原則として無料です。国の補助により、弁護士などの登録支援専門家による手続き支援を受けられます。費用が理由で諦める必要はありません。
Q. どこに相談すればよいですか
A. まず借入先の金融機関へ申し出るのが基本です。あわせて弁護士会の無料相談、ガイドラインの運営機関、自治体の相談窓口も利用できます。
Q. 手続きにはどのくらいかかりますか
A. 数か月を要するのが一般的です。金融機関への申し出、専門家の委嘱、書類の準備、債権者の同意、特定調停という流れで進みます。
Q. 相談する前に返済を止めてもよいですか
A. 止めないでください。勝手に返済を停止すると、金融機関との関係が悪化します。まず相談し、指示を受けてから行動してください。
Q. いつ相談すべきですか
A. 返済が難しくなりそうだと感じた時点です。滞納が続けば信用情報に記録され、この制度の利点である「登録されない」という効果が薄れます。早めに相談してください。
Q. 手続き中の生活費はどうしますか
A. 生活福祉資金の特例貸付や災害援護資金といった制度があります。社会福祉協議会が窓口になることが多いので相談してください。失業した場合は雇用保険の給付を受けられる可能性もあるため、ハローワークで確認してください。
Q. どんな書類が必要になりますか
A. 罹災証明書、ローンの契約書と返済予定表、収入を示す書類、預貯金の残高が分かるもの、保険の証券、被害の写真などです。被災後は物が散乱しているため、一か所にまとめておくと探す手間が省けます。
Q. 給付と貸付はどう違いますか
A. 給付は返済が不要で、貸付は返済が必要です。被災者生活再建支援金、災害弔慰金、義援金は給付です。災害援護資金や生活福祉資金の特例貸付は貸付になります。すでにローンを抱えている状態で借りれば負担は増えるため、返済の見通しを立ててから判断してください。
Q. 税や保険料は安くなりますか
A. 減免や猶予を相談できます。所得税、住民税、固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料、介護保険料、公共料金などが対象です。ただし申し出なければ適用されません。罹災証明書を持って各窓口へ相談してください。
Q. 確定申告で戻ってくるものはありますか
A. 雑損控除という仕組みがあります。災害で資産に損害を受けた場合、所得税の計算上の控除を受けられ、還付の可能性があります。確定申告が必要になるため、税務署や税理士会の相談窓口で確認してください。
Q. 事業のローンも相談できますか
A. できます。このガイドラインは住宅ローンだけの制度ではありません。店舗や工場が被災して返済が困難になった場合も対象です。あわせて、激甚災害に指定されれば中小企業向けの信用保険の特例も使えます。
Q. 賃貸に住んでいます。家賃はどうなりますか
A. 住めない状態であれば、支払い義務がなくなる場合があります。ただし判断が分かれることもあるため、大家さんや管理会社と早めに話し合ってください。災害による損傷は借主の責任ではないため、原状回復の義務は原則として負いません。
Q. 何から手をつければよいですか
A. まず入ってくるお金を把握し、次に減らせる支出を減らし、それから借入の扱いを決めます。この順番で情報がそろってから、住まいの方針を判断してください。資金の見通しが立たないうちに住まいを決めないことが大切です。
Q. この制度が使えなかったらどうなりますか
A. 別の道があります。返済条件の見直し、一時的な猶予、期間の延長による負担軽減、災害援護資金などの貸付、従来の債務整理の手続きなどです。一人で抱えず相談してください。
まとめ
災害でローンが残ったときの制度について、要点を整理します。
- 家が全壊してもローンは残る。これが二重ローンの問題
- 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインがある
- 平成28年4月1日から運用が始まった
- 平成27年9月2日以降の、災害救助法が適用された災害が対象
- 信用情報機関に登録されない。自己破産との最大の違い
- 最大500万円の現預金を手元に残せる
- 支援金、弔慰金、義援金は全額残せる
- 弁護士などの支援を原則無料で受けられる
- 住宅ローン以外の債務も対象になる
- まず借入先の金融機関へ申し出る
- 勝手に返済を止めない
- 返済が難しくなりそうな時点で相談する
- 使えない場合でも、別の選択肢がある
被災後の流れ全体は被災した後にやること全ガイド|時系列でわかる手続きと生活再建の順番にまとめています。
住まいの選択については応急仮設住宅と住宅の応急修理|原則どちらか一方、選び方の判断基準をご覧ください。
災害でローンが残ることは、本人の責任ではありません。だからこそ、救済の仕組みが用意されています。
今日できることをひとつ挙げます。ご自宅の住宅ローンの残高と、加入している保険の内容を確認してください。この2つが分かっていれば、いざというときに何が起きるかを見通せます。
残高は、返済予定表や金融機関のサイトで確認できます。保険は証券を見れば分かります。どちらも5分もかかりません。
そして、この記事に「そういう制度がある」ということだけでも覚えて帰ってください。細かい条件は、必要になったときに調べれば足ります。
存在を知らなければ、調べることすらできません。知っているかどうかが、その先を分けます。

