洪水法とは?水防法・河川法・流域治水関連法の仕組みと住民生活への影響を徹底解説【2026年最新版】
「洪水法って何?どんな法律なの?」「ハザードマップはどんな法律に基づいて作られているの?」「洪水に関する法律が変わったと聞いたけど、どう変わったの?」
このような疑問を持つ方が増えています。まず正確な知識としてお伝えします。日本には「洪水法」という名前の法律は存在しません。
「洪水法」という言葉は「洪水対策・水害対策に関係する複数の法律の総称」として、一般的・口語的に使われることがあります。
正式な法律名としては「水防法(すいぼうほう)」「河川法(かせんほう)」「特定都市河川浸水被害対策法」などが洪水対策の根幹を担う法律です。
洪水対策に関する法律を正しく理解することは「防災行動・避難計画・ハザードマップの活用」に直結します。
2021年には「流域治水関連法」として複数の法律が一括改正されました。
この改正は「ダムや堤防だけで洪水を防ぐ時代」から「流域全体で洪水リスクに対応する時代」への大転換を意味します。
住民・事業者・自治体それぞれの役割が明確化され、建物の建築・土地利用にも大きな影響を与えています。
この記事では以下の内容を、国土交通省・法務省・内閣府の公式法令資料をもとに徹底解説します。
- 「洪水法」という言葉が指す法律の全体像
- 水防法とは何か(洪水対策の基本法)
- 水防法の歴史と2021年以降の主な改正内容
- 水防法の主な規定と住民生活への影響
- 河川法とは何か(河川管理・洪水調節の基本法)
- 特定都市河川浸水被害対策法とは何か
- 2021年「流域治水関連法」の大改正の全体像
- ハザードマップの法的根拠
- 洪水関連法律が住民・不動産取引に与える影響
【情報の出典について】
本記事は水防法(昭和24年法律第193号)・河川法(昭和39年法律第167号)・特定都市河川浸水被害対策法(平成15年法律第77号)・流域治水関連法(令和3年法律第31号)・国土交通省「流域治水の推進」・国土交通省水管理・国土保全局「水防法の概要」等の公的法令資料にもとづいています。防災ベース編集部が法的内容をわかりやすく解説しました。実際の法律の適用については、専門家(弁護士・行政書士・自治体担当窓口)にご確認ください。
「洪水法」という言葉が指す法律の全体像
日本において「洪水対策に関係する主な法律」は複数存在します。これらは「洪水法」という単一の法律ではなく、それぞれ異なる目的・根拠で制定された独立した法律です。
| 法律名 | 制定年 | 主な目的・対象 |
|---|---|---|
| 水防法 | 昭和24年(1949年) | 洪水・高潮等による水害の防御と被害軽減。水防活動・洪水浸水想定区域の指定・避難確保計画の作成義務等 |
| 河川法 | 昭和39年(1964年) | 河川の管理・整備・保全。洪水調節施設(ダム・遊水地)の整備・河川区域の指定等 |
| 特定都市河川浸水被害対策法 | 平成15年(2003年) | 都市部の特定河川流域での浸水被害対策。流域水害対策計画の策定・雨水浸透阻害行為の規制・保全調整池の指定等 |
| 砂防法 | 明治30年(1897年) | 山地から流下する土砂による洪水・土石流被害の防止 |
| 土砂災害防止法 | 平成12年(2000年) | 土砂災害から住民の生命を守るための警戒区域の指定・情報提供・移転促進等 |
これらの法律の中で「洪水(河川氾濫・水害)対策の中心的な法律」は「水防法」と「河川法」の2つです。
特に水防法は「洪水・浸水から人命・財産を守るための直接的な法律」として重要です。以下でそれぞれを詳しく解説します。
水防法とは何か:洪水対策の基本法
水防法(すいぼうほう)は「洪水、津波、高潮に際し、水災を警戒し、防御し、及びこれによる被害を軽減し、もって公共の安全を保持することを目的とする」法律です(水防法第1条)。
正式名称は「水防法(昭和24年法律第193号)」です。
水防法は「洪水から命と財産を守るための最も基本的・直接的な法律」として、日本の洪水対策の根幹を担っています。
水防法が規定する主な内容の全体像
水防法は大きく分けて以下の内容を規定しています。
- 水防管理団体:水防活動を実施する主体(市区町村等)の指定と役割
- 水防計画:都道府県・水防管理団体が策定する洪水対策の計画
- 洪水浸水想定区域の指定:洪水が発生した際に浸水が想定される区域の指定と公表
- 高潮浸水想定区域の指定:高潮が発生した際に浸水が想定される区域の指定と公表
- 要配慮者利用施設における避難確保計画の作成義務:病院・老人ホームなどへの義務付け
- 地下街等における避難確保計画:地下街・地下駅などの管理者への義務付け
- 水防活動の実施:洪水・高潮の際に実施する水防(土嚢積みなど)の根拠規定
- 水位情報の周知:洪水予報河川・水位周知河川の指定と水位情報の提供義務
水防法の歴史と主な改正経緯
水防法は1949年(昭和24年)に制定されました。制定から70年以上が経過し、気候変動・都市化・超高齢社会への対応として複数回の重要な改正が行われてきました。
2001年改正:洪水浸水想定区域制度の導入
2001年(平成13年)の改正で「洪水浸水想定区域」の制度が水防法に導入されました。
これにより「一定規模の洪水が起きた場合に浸水が想定される区域」を国土交通大臣または都道府県知事が指定・公表する仕組みが作られました。この制度が「洪水ハザードマップ」の法的根拠となっています。
2005年改正:ハザードマップ配布の義務化
2005年(平成17年)の改正で「市区町村が洪水ハザードマップを住民に配布・公表すること」が義務化されました。
この改正以前は、ハザードマップの作成・配布は任意でした。しかし、この改正によって「全国の市区町村が洪水ハザードマップを住民に配布する義務」を負うようになりました。
2015年改正:浸水想定区域の拡大と避難確保計画の義務化
2015年(平成27年)の改正は水防法の中でも特に大規模な改正です。主な改正内容は以下の通りです。
- 洪水浸水想定区域の対象降雨基準の引き上げ:それまで「概ね100年に1度」の降雨が対象だったが、「想定し得る最大規模の降雨」(1,000年に1度規模)を対象とするよう変更。ハザードマップの浸水区域が大幅に拡大した
- 内水浸水想定区域の指定制度の創設:河川からの外水氾濫だけでなく、下水道・排水路の氾濫による「内水浸水」の想定区域も指定・公表できるようにした
- 高潮浸水想定区域制度の創設:台風による高潮の浸水想定区域の指定・公表を義務化
- 要配慮者利用施設(病院・老人ホーム等)における避難確保計画の作成義務化:洪水浸水想定区域内の病院・老人ホーム・保育園等に対し、避難確保計画の作成と市区町村への届け出を義務化
2017年改正:避難確保計画の義務対象施設の拡大
2017年(平成29年)の改正では「要配慮者利用施設の避難訓練の実施」が義務化されました。
さらに「地下街等(地下駅・地下街)の管理者への避難確保計画作成義務」も追加されました。2016年の台風10号による岩手県グループホーム水害(9名死亡)を受けた改正です。
2021年改正:流域治水関連法の一環として大改正
2021年(令和3年)の改正は「流域治水関連法(令和3年法律第31号)」として複数の法律を一括改正したものの一部です。
詳細は後述しますが、特に「避難確保計画の対象施設の大幅拡大」「不動産取引への水害リスク情報提供の義務化」などが盛り込まれました。
水防法の主要な規定:住民生活への直接的な影響
水防法の主要な規定が、私たちの日常生活・防災行動にどう影響するかを解説します。
①洪水浸水想定区域の指定(水防法第14条)
水防法第14条は「国土交通大臣または都道府県知事は、洪水予報河川等について、想定最大規模降雨に対応した洪水が発生した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定しなければならない」と規定しています。
この規定が「洪水ハザードマップの法的根拠」です。「想定最大規模降雨」とは「過去の観測史上最大規模・おおむね1,000年に1度程度の降雨」を意味します。
2015年の改正でこの基準が引き上げられた結果、全国各地のハザードマップが大幅に更新され「浸水区域が以前より広がった・浸水深が深くなった」という変化が生じました。
②洪水ハザードマップの住民への周知義務(水防法第15条)
水防法第15条は「市区町村の長は、洪水浸水想定区域の指定を踏まえ、洪水に関するハザードマップを作成し、住民に周知しなければならない」と規定しています。
これが「全国の市区町村が洪水ハザードマップを作成・配布する義務の根拠」です。
ハザードマップは「防災行政無線・全戸配布・自治体ウェブサイト」などで周知されることが義務付けられています。
「ハザードマップを見たことがない・受け取ったことがない」という方は、住所地の市区町村のウェブサイトで確認するか、役場の防災担当窓口に問い合わせてください。
③要配慮者利用施設における避難確保計画の作成義務(水防法第15条の3)
洪水浸水想定区域・土砂災害警戒区域内にある「要配慮者利用施設(病院・老人ホーム・保育所・幼稚園・小中学校等)」の管理者は「避難確保計画の作成・市区町村への届け出・避難訓練の実施」が義務付けられています。
2017年改正後は「毎年1回以上の避難訓練の実施」も義務になりました。2021年の流域治水関連法改正では「義務の対象施設の範囲が大幅に拡大」されました。
義務対象外の施設の管理者も「自主的な避難計画の策定」が強く推奨されています。
④水防団・消防機関による水防活動の根拠(水防法第17条〜)
洪水が発生・発生のおそれがある際に「水防団・消防団が実施する土嚢積み・水門操作・流木除去等の水防活動」の根拠規定が水防法に定められています。
水防活動は「水防管理団体(市区町村等)の長の指揮のもと」行われます。緊急時には水防管理団体の長が「民間の土地・建物・車両の使用を命じる権限(水防法第28条)」を持っています。
これは「洪水緊急時に、民有地への土嚢設置・資材搬入などを行う法的根拠」となります。
⑤不動産取引における水害リスク情報の説明義務(2020年改正:宅地建物取引業法との連動)
2020年(令和2年)8月から「宅地建物取引業者(不動産業者)は不動産売買・賃貸借の契約前に、対象物件のハザードマップ上の所在地を説明することが義務」となりました。
これは宅地建物取引業法施行規則の改正による変更です。「重要事項説明書にハザードマップの記載内容を記載・説明すること」が宅建業者に義務付けられました。
この改正により「不動産を購入・賃借する際に、洪水リスクの情報が契約前に必ず提供される」ようになりました。
物件の購入・賃借を検討する際には「重要事項説明書のハザードマップ関連記載を必ず確認する」ことが重要です。
河川法とは何か:洪水調節施設の整備を支える法律
河川法(昭和39年法律第167号)は「河川の管理・整備・保全に関する基本法」です。
洪水対策の観点では「ダム・遊水地・調節池などの洪水調節施設の整備」と「河川区域の管理」を規定する重要な法律です。
河川法が規定する主な内容
河川法は以下の主な内容を規定しています。
- 河川の分類:一級河川(国土交通大臣が管理)・二級河川(都道府県知事が管理)・準用河川(市町村長が管理)に分類
- 河川区域の指定:堤防・河道・河川敷などを「河川区域」として指定し、許可なく工作物を設置できないよう規制
- 河川整備計画:河川管理者が策定する「洪水調節施設の整備計画・護岸整備計画等」の根拠
- 洪水調節施設(ダム・遊水地等)の設置:治水目的のダム・遊水地・調節池の整備に関する権限・手続きの規定
- 河川の占用・工事許可:河川区域内での橋梁架設・取水設備設置等への許可制度
河川法における「一級河川」「二級河川」の違い
河川法では河川の規模・重要性に応じて管理主体が異なります。
| 河川の種類 | 指定基準 | 管理主体 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 一級河川 | 国土保全・国民経済上特に重要な水系(一級水系)に係る河川 | 国土交通大臣(実務は地方整備局) | 利根川・荒川・信濃川・木曽川・淀川など全国109水系 |
| 二級河川 | 一級水系以外で公共の利害に重要な関係がある水系に係る河川 | 都道府県知事 | 各都道府県の主要河川 |
| 準用河川 | 市町村長が指定した河川 | 市区町村長 | 各市区町村内の中小河川 |
| 普通河川(法定外河川) | 一・二級・準用河川以外の河川 | 市区町村(条例等による) | 農業用水路・小さな水路等 |
「どの河川がどの種類か」は、洪水被害が起きた際の責任主体・整備水準に関係します。
近くの河川の種類と管理者を事前に把握しておくことは、洪水被害が生じた際の対応(被害申告・要望等)にも役立ちます。
特定都市河川浸水被害対策法とは何か
特定都市河川浸水被害対策法(平成15年法律第77号)は「都市部の特定の河川流域における浸水被害対策を強化するための特別法」です。
一般に「特都法(とくとほう)」とも呼ばれます。
特定都市河川浸水被害対策法の背景と目的
2000年代初頭、東京・大阪などの大都市圏では「都市化による雨水流出量の増大→中小河川の頻繁な氾濫」という問題が深刻化していました。
特定都市河川浸水被害対策法は「都市化が著しく進んだ流域の特定河川(特定都市河川)を指定し、流域全体での対策を促進する」ことを目的に制定されました。
特定都市河川浸水被害対策法の主な内容
- 特定都市河川・特定都市河川流域の指定:浸水被害対策が特に必要な都市河川とその流域を国土交通大臣等が指定
- 流域水害対策計画の策定:指定された流域について、河川管理者・下水道管理者・都道府県・市区町村が連携して策定する洪水対策計画
- 雨水浸透阻害行為の規制:特定都市河川流域内で「一定規模以上の雨水の浸透を阻害する行為(土地の舗装・建築等)」を行う場合に許可を要する
- 保全調整池の指定:100m³以上の防災調整池のうち、浸水防止に重要なものを「保全調整池」として指定し、廃止・機能低下を規制
- 貯留浸透施設の整備促進:調整池・雨水浸透施設・地下貯留施設などの整備を促進するための規定
2021年改正で大幅拡充された特定都市河川法
2021年の流域治水関連法の改正で、特定都市河川浸水被害対策法は大幅に拡充されました。
改正前は「都市部の河川」が対象でしたが、改正後は「全国の河川」に対象が拡大されました。
都市部以外の中小都市・農村部の河川にも同法が適用できるようになりました。
2021年「流域治水関連法」の大改正:洪水対策の歴史的転換点
2021年(令和3年)4月に成立した「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(流域治水関連法・令和3年法律第31号)」は、日本の洪水対策の歴史上最大規模の法改正のひとつです。
流域治水関連法の背景:従来の洪水対策の限界
従来の洪水対策は「河川管理者(国・都道府県)がダム・堤防・調節池を整備して洪水を防ぐ」という「河川管理者主体の治水」でした。
しかし気候変動による「降雨量・降雨強度の増大」が進み「ダム・堤防だけでは対応しきれない洪水リスク」が現実になってきました。
また「人口減少・財政制約により、新規の大規模インフラ整備には限界がある」という事情もあります。
そこで「河川管理者だけでなく・流域のすべての関係者(自治体・企業・住民)が連携して洪水リスクに対応する」という「流域治水(りゅういきちすい)」の考え方に転換するため、2021年の大改正が行われました。
流域治水関連法で改正された法律
この法改正では1本の新法を制定し、同時に以下の既存法律が改正されました。
- 特定都市河川浸水被害対策法(大幅拡充)
- 水防法
- 河川法
- 下水道法
- 都市計画法
- 建築基準法
- 都市再生特別措置法
- 宅地造成等規制法(現在の盛土規制法)
- その他関連法
流域治水関連法の主な改正ポイント
①特定都市河川法の全国展開
前述のように、特定都市河川浸水被害対策法の適用対象が「都市部の河川」から「全国のすべての河川」に拡大されました。
これにより全国の河川で「流域水害対策計画の策定・雨水浸透阻害行為の規制・保全調整池の指定」が可能になりました。
②避難確保計画の作成義務対象施設の大幅拡大
水防法の改正により「避難確保計画の作成・訓練の実施が義務付けられる要配慮者利用施設の対象」が大幅に拡大されました。
改正前は「市区町村の地域防災計画に記載された施設」が対象でしたが、改正後は「洪水浸水想定区域・土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設全体」に拡大されました。
③浸水被害リスクを踏まえた土地利用誘導
都市計画法・都市再生特別措置法の改正により「浸水リスクの高い区域への新規開発・立地を抑制し、安全な高台・低リスク区域への移転・集約を促進する」仕組みが強化されました。
具体的には「浸水継続時間が長い地域(孤立リスクが高い地域)での住宅開発に対して一定の制限を加える」規定が設けられました。
④河川区域・遊水地区域での土地利用調整
河川法の改正により「遊水地として機能している土地(遊水地区域)」の土地利用を適切にコントロールする仕組みが整備されました。
洪水時に自然に水が溜まる低地・旧河道・遊水地としての機能を持つ土地を「流域治水のインフラ」として活用するための規定です。
⑤建築基準法改正:浸水継続時間が長い区域での建築制限
建築基準法の改正により「洪水が発生した場合に浸水継続時間が長い区域(孤立しやすい区域)」で建築物を建てる際には「浸水に配慮した構造・高さの確保」が求められるようになりました。
この改正は「浸水リスクの高い場所に建物を建てる際の規制の強化」を意味します。
ハザードマップの法的根拠と正しい使い方
洪水ハザードマップは「水防法に基づいて作成・周知が義務付けられた、行政の公式な防災情報」です。
ハザードマップの作成根拠
洪水ハザードマップの作成は以下の流れで行われます。
- 国土交通大臣または都道府県知事が「洪水浸水想定区域」を指定・公表(水防法第14条)
- 市区町村の長が「洪水浸水想定区域をもとにしたハザードマップ」を作成(水防法第15条)
- 市区町村の長が「避難場所・避難経路」等の防災情報とあわせてハザードマップを住民に周知(水防法第15条)
「想定最大規模降雨(1,000年に1度規模)」に基づいて作成されたハザードマップには「過去に被害を受けたことがない地区でも浸水想定区域になっている」という箇所が多数あります。
「ここは昔から水害がなかったから大丈夫」という認識は、現在のハザードマップには当てはまらない可能性があります。
内水浸水想定区域も確認する
2015年の水防法改正以降、洪水(外水氾濫)の浸水想定区域に加えて「内水浸水想定区域(下水道氾濫・排水路氾濫)」も指定・公表されるようになりました。
内水浸水想定区域は「川から離れた市街地・低地でも浸水するリスクを示す地図」です。
国土交通省「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」では、洪水・内水・高潮・津波・土砂災害の複数のハザードマップを重ね合わせて確認できます。
洪水関連法律が住民・不動産取引に与える影響
水防法・河川法・流域治水関連法の改正は、住民の日常生活・不動産取引に具体的な影響を与えています。
①不動産購入・賃借時の水害リスク情報の確認義務化
2020年8月から「宅地建物取引業者は不動産の売買・賃貸の重要事項説明でハザードマップの内容を説明する義務」を負うようになりました。
不動産契約の際には「重要事項説明書に記載されたハザードマップの内容」を必ず確認してください。
「説明を受けたが内容を理解していない」という場合は、担当者に改めて詳しい説明を求める権利があります。
②特定都市河川流域内での開発・宅地造成への規制
特定都市河川に指定された流域内で「一定規模以上の宅地造成・舗装・建築行為等」を行う場合は「都道府県知事の許可(雨水浸透阻害行為の許可)」が必要です。
これは「開発による雨水流出量の増大を抑制し、下流域の浸水被害悪化を防ぐ」ための規制です。
特定都市河川流域内で土地の開発・宅地造成を計画している方は、事前に都道府県または市区町村の担当窓口に確認してください。
③浸水リスクの高い土地での建築規制の強化
建築基準法の改正により「洪水が発生した際に孤立リスクが高い区域(浸水継続時間が長い区域)」では建築物の構造・高さへの要件が強化されました。
該当する区域かどうかは「市区町村の建築指導担当窓口」または「都道府県の都市計画担当窓口」に確認してください。
④水害ハザードマップが不動産価値に影響
ハザードマップの情報が不動産重要事項説明に組み込まれたことで「浸水リスクの高い区域の不動産は価値が下がる」という市場への影響も生じています。
不動産の売買・賃貸を検討する際は「ハザードマップ上のリスクと不動産価値の関係」を理解した上で判断することが重要です。
洪水に関する法律を防災に活かすための実践的な方法
水防法・河川法・流域治水関連法の知識を「日常の防災行動」に活かすための実践的な方法を解説します。
①市区町村の防災ウェブサイト・ハザードマップで法律の成果を確認する
水防法の義務化によって作成された洪水ハザードマップは、住んでいる市区町村のウェブサイトまたは「国土交通省ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)」で無料で閲覧できます。
洪水浸水想定区域・内水浸水想定区域・高潮浸水想定区域・土砂災害警戒区域を確認し「自宅のリスク」を把握してください。
②要配慮者施設(家族が入所・通所している場合)の避難確保計画を確認する
家族が老人ホーム・デイサービス・保育園などを利用している場合、その施設が水防法に基づく「避難確保計画」を策定しているかを確認することをおすすめします。
施設の管理者に「洪水時の避難確保計画が策定されているか・訓練を実施しているか」を問い合わせてください。
策定・訓練が行われていない施設については、市区町村の防災担当窓口に相談することもできます。
③地域の水防活動への参加
水防法に基づく「水防活動(消防団・水防団による水防訓練・土嚢積み訓練等)」が地域で実施されている場合、積極的に参加・見学することをおすすめします。
実際の水防活動を知ることで「土嚢の積み方・水防の判断基準」などの実践的な知識が身に付きます。
④河川法に基づく「河川整備計画」を確認する
近くの一級河川・二級河川の「河川整備計画(河川法に基づく計画)」は、国土交通省・都道府県のウェブサイトで公表されています。
「近くの川はいつまでにどのような整備がされる計画か」「将来的な浸水リスクがどう変化するか」を把握することが、長期的な防災計画に役立ちます。
まとめ:「洪水法」とは何か・私たちは何を知っておくべきか
この記事でお伝えした重要なポイントをまとめます。
- 「洪水法」という単一の法律は存在しない:洪水対策は「水防法・河川法・特定都市河川浸水被害対策法」などの複数の法律によって規律されている
- 水防法が洪水対策の中心的な法律:洪水ハザードマップの作成義務・要配慮者施設の避難確保計画義務・水防活動の根拠などを規定
- 2015年改正で「想定最大規模」が基準に:ハザードマップが「1,000年に1度」規模の降雨を基準に更新され、浸水想定区域が大幅に拡大した
- 2021年の流域治水関連法は歴史的大改正:「河川管理者だけが洪水を防ぐ時代」から「流域全体で洪水リスクに対応する時代」への転換。特定都市河川法の全国展開・建築規制の強化・開発規制の強化が行われた
- 不動産取引への影響:ハザードマップ情報の重要事項説明が義務化(2020年〜)。不動産購入・賃借時は必ずハザードマップの説明を確認する
- 住民への実践的影響:ハザードマップの確認・要配慮者施設の避難確保計画確認・特定都市河川流域内での開発規制の確認が重要
洪水に関する法律は「難しい法律用語の世界の話」ではありません。
「自宅のハザードマップはなぜ作られているのか」「なぜ近くの老人ホームは洪水訓練をしているのか」「なぜ重要事項説明にハザードマップの話が出るのか」という日常の疑問は、すべてこれらの法律に根拠があります。
洪水対策に関する法律の仕組みを知ることで、防災情報をより正確に読み解き・行動に結びつける力が高まります。
今後も洪水・水害から命と暮らしを守るための最新情報をお届けします。

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