【この記事の要約】
結論から言います。津波は、物では守れません。東日本大震災で亡くなった方の死因は、溺死が90.6%でした。耐震補強をしても、家具を固定しても、備蓄を積んでも、そこにいれば助かりません。生死を分けたのは、逃げたかどうか、その一点です。そして年齢が判明した方の65.2%が60歳以上。逃げ遅れが指摘されています。一方で、釜石市では学校にいた小中学生に犠牲者が出ませんでした。そこで教えられていたのが避難三原則です。想定にとらわれるな。最善をつくせ。率先避難者たれ。この記事では、何が生死を分けたのかをまとめます。
結論|備えの性質が、まったく違います
防災の記事は、たいてい「これを買いましょう」「これを固定しましょう」という話になります。津波だけは、そうではありません。
効くのは、三つだけです
一、そこが津波の来る場所かを、事前に知っておく。
二、どこへ、どう逃げるかを、事前に決めておく。
三、揺れたら、確かめずに逃げる。
これだけです。お金はかかりません。そして、これ以外はほとんど効きません。
なぜ、そう言い切れるのか
死因を見れば分かります。90.6%が溺死です。
建物が倒れて亡くなった方ではありません。火事で亡くなった方でもありません。水に飲まれて亡くなっています。
ですから、建物を強くしても、その場にいれば助かりません。備蓄があっても同じです。
「そこにいなかった」ことだけが、助かる条件でした。
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何が起きたのか
事実を確認します。
2011年3月11日、14時46分
マグニチュード9.0。日本の観測史上、最大の地震です。
震源は三陸沖。揺れは東日本の広い範囲に及び、そのあと巨大な津波が沿岸を襲いました。
亡くなった方の数
| 項目 | 数 |
|---|---|
| 死者・行方不明者(震災関連死を含む) | およそ22,230人 |
| 死者 | 19,775人 |
| 行方不明者 | 2,550人 |
| 震災関連死 | 3,775人 |
| 宮城県 | 死者10,365人/行方不明1,394人 |
| 岩手県 | 死者4,976人/行方不明1,205人 |
| 福島県 | 死者2,686人/行方不明226人 |
※集計の時点によって数値は変わります。行方不明者の届け出や関連死の認定が、いまも続いているためです。
死因は、溺死が90.6%
| 死因 | 割合 |
|---|---|
| 溺死 | 90.6% |
| 圧死・損傷死・その他 | 4.2% |
| 焼死 | 0.9% |
| 不詳 | 4.3% |
警察庁の検視結果によるものです。10人のうち9人が、水によって亡くなりました。
阪神・淡路大震災では窒息・圧死が77.0%、関東大震災では火災が約87%でした。同じ大地震でも、命の奪われ方はまったく違います。比較は過去の震災は何が人の命を奪ったかにまとめました。
65.2%が、60歳以上でした
年齢が判明した方のうち、3人に2人が60歳以上です。
高齢化の進んだ地域を、津波が襲いました。移動に時間のかかる方が、間に合わなかったということです。
これは、いまも各地に残る条件です。「自分は逃げられる」だけでなく、「近所のあの方は逃げられるか」を考える必要があります。
釜石で起きたこと
助かった側の記録から、学べることがあります。
学校にいた小中学生に、犠牲者が出ませんでした
岩手県釜石市では、学校の管理下にあった小中学生に犠牲者が出ませんでした。
町の大半が浸水した地区でも、小学校と中学校が連携して避難し、全員が助かっています。
これは「釜石の奇跡」と呼ばれました。ただし、当事者の方々は「奇跡ではない」と語っています。数年にわたる防災教育の結果だからです。
教えられていたのが、避難三原則です
群馬大学(当時)の片田敏孝教授が提唱した、三つの原則です。
第一、想定にとらわれるな。
第二、最善をつくせ。
第三、率先避難者たれ。
この三つが、どういう意味を持つのかを見ていきます。
一、想定にとらわれるな
ハザードマップは、あくまで予想です。そこに描かれた線の外なら安全、ということではありません。
実際、東日本大震災では想定を超える津波が来ました。ハザードマップで安全とされた場所も浸水しています。
だからといって、ハザードマップが無意味なわけではありません。「最低限ここまでは来る」という下限として使ってください。上限ではありません。
見方はハザードマップの見方にまとめました。
二、最善をつくせ
いったん避難した場所が、いちばん安全とは限りません。
そこに留まることに固執せず、より安全な場所へ移れないかを考え続ける。それが「最善をつくす」ということです。
釜石では、児童・生徒が避難した先からさらに高い場所へ、二度、三度と移動しています。そして、最初に避難した場所は浸水しました。
「避難所に着いたから終わり」ではありません。状況を見て、動き続けてください。
三、率先避難者たれ
これが、いちばん深い原則だと思っています。
人は、周りが動かないと動けません。「自分だけ逃げるのは大げさかもしれない」と考えてしまいます。
けれど、誰かが真っ先に逃げれば、それを見た人が続きます。
釜石では、中学生が走り出したのを見て、小学生が続き、それを見た大人が逃げました。率先して逃げることは、自分だけでなく、他人を助ける行為でもあるのです。
だから、恥ずかしがらずに逃げてください。空振りでも構いません。
「津波てんでんこ」の本当の意味
三陸地方に伝わる言葉です。誤解されやすいので、丁寧に説明します。
言葉の意味
「津波が来たら、てんでばらばらに、各自で高いところへ逃げろ」という教えです。
家族が一緒にいなくても、探しに行かず、まず自分の命を守れ、ということです。
冷たい言葉に聞こえますが、逆です
一見すると、自分だけ助かればいいという教えに見えます。けれど、そうではありません。
探しに戻った人が、津波に飲まれています。助けようとして、二人とも亡くなるということが、実際に何度も起きました。
だから、この言葉には前提があります。「相手も必ず逃げていると信じられること」です。
お互いが逃げると信じられるからこそ、探しに戻らずに済む。これは、家族の信頼を前提にした約束なのです。
だから、事前に話しておいてください
「もし津波が来たら、探さないで、それぞれ逃げよう」この一言を、家族で交わしておいてください。
そして、集合場所を決めておく。「あとでここで会おう」と決まっていれば、探しに行かずに済みます。
これが、この記事でお伝えしたい、いちばん具体的な行動です。
津波は、どういう力を持つのか
「波」という言葉から想像するものと、まったく違います。
50センチで、動けなくなります
膝より低い水位でも、流れがあれば、大人でも立っていられません。
水は重いのです。1立方メートルで1トンあります。それが速度を持って押してきます。
1メートルになれば、木造家屋が壊れ始めます。詳しくは津波は50センチでも危険にまとめました。
第一波が、いちばん大きいとは限りません
ここを誤解すると、命に関わります。
第二波、第三波のほうが大きいことがあります。そして、津波は何時間も繰り返し襲ってきます。
だから、一度引いたからといって戻らないでください。警報が解除されるまで、高い場所にいてください。
川を、さかのぼってきます
海から離れていても、安心できません。津波は、川を数キロさかのぼります。
川沿いの低地は、海岸から離れていても浸水します。逃げるときは、川から離れる方向へ。
引き波も、危険です
押し寄せるときだけでなく、引くときの流れも激しく、人や物を海へさらいます。
そして、引くときにはがれきを含んだ水になります。流されれば、それらに叩きつけられます。
どう逃げるのか
具体的な行動です。
遠くより、高く
これが原則です。水平に遠くへ走るより、垂直に高く上がるほうが速く安全になります。
高台があるなら、そこへ。なければ、鉄筋コンクリートの建物の上階へ。津波避難ビルに指定されている建物があります。
木造の2階では足りないことがあります。浸水の想定の深さを、必ず確認してください。
車は、原則として使わない
渋滞が起きます。そして、車の中で流された方が大勢います。
ただし、高台まで遠く、歩けない方がいる場合には、車を使う判断もあります。一律には言えません。
大事なのは、事前に決めておくことです。その場で迷うと、時間を失います。
警報を待たないでください
強い揺れを感じたら、それが合図です。
警報が出るまでに時間がかかることがあります。そして、最初に発表される予想の高さは、あとから引き上げられることがあります。
東日本大震災でも、当初の予想より実際の津波ははるかに大きくなりました。数字を待たずに、動いてください。
長い、ゆっくりした揺れにも注意
震度が小さくても、ゆっくりした揺れが長く続く地震では、大きな津波が来ることがあります。
「あまり揺れなかったから大丈夫」とは限りません。海の近くにいるなら、揺れの大小ではなく、揺れたという事実で動いてください。
あの日、何が判断を遅らせたのか
逃げなかった人が、怠けていたわけではありません。逃げにくくする力が、いくつも働いていました。
「ここまでは来ない」という経験
三陸沿岸は、過去にも何度も津波に襲われてきた地域です。だからこそ、経験がありました。
ところが、その経験が裏目に出ることがあります。「前回はここまでだった」という記憶が、判断の基準になってしまうのです。
そして、防潮堤がありました。「あれがあるから大丈夫」という安心も働きました。
備えがあることが、逃げない理由になる。これが、防災のいちばん難しいところです。
「大げさだと思われたくない」という気持ち
人は、まわりが動かないと動けません。自分だけ逃げるのは、周囲から浮くことだからです。
これは弱さではなく、人間に共通する性質です。集団の中では、多数派に合わせるほうが安全だと、脳が判断します。
だから、避難三原則の三つめが「率先避難者たれ」なのです。誰かが最初に動かなければ、全員が動けません。
この心の働きは防災心理学とは?にまとめました。知っておくだけで、自分の判断を疑えるようになります。
「何かを取りに戻る」
通帳、位牌、貴重品、そしてペット。取りに戻って亡くなった方がいます。
関東大震災でも、家財道具を運び出そうとしたことが被害を広げました。百年経っても、人の行動は変わっていません。
だからこそ、持ち出すものを、あらかじめ一か所にまとめておいてください。迷う時間も、戻る理由もなくなります。
誰かを助けに行った
これは、最も痛ましい理由です。
高齢の家族を迎えに行き、間に合わなかった方がいます。職務として避難を呼びかけ続け、自らが逃げ遅れた方もいます。
この人たちの行動を、責めることは誰にもできません。けれど、だからこそ「てんでんこ」という言葉が必要になります。
助けに行かなくて済むように、避難に支援が必要な人は、事前に地域で把握しておく。個人の判断に委ねない仕組みが要ります。
津波は、どこまで来たのか
数字で見ると、想像の枠が変わります。
浸水した範囲
| 起きたこと | 内容 |
|---|---|
| 津波の高さ | 場所によっては10メートルを超えました |
| 遡上(さかのぼった)高さ | 斜面を駆け上がり、さらに高い地点まで達しました |
| 浸水した範囲 | 海岸から数キロ内陸まで及んだ地域があります |
| 川の遡上 | 河川を数キロさかのぼりました |
| 到達までの時間 | 地域によって差があり、30分ほどで到達した場所もあります |
「30分あれば逃げられる」と思われるかもしれません。けれど、揺れが数分続き、状況を確かめ、家族に連絡し、持ち物をまとめていれば、それだけで過ぎます。
だから、揺れたらすぐ、が原則になります。
震災遺構として残されている場所があります
被災した建物の一部が、そのままの姿で保存されています。気仙沼、石巻、南三陸、陸前高田などに、震災遺構や伝承施設があります。
写真や数字では伝わらないものが、そこにあります。東北を訪れる機会があれば、一つ立ち寄ってみてください。
全国の防災に関する施設は防災センター 全国一覧にまとめました。
津波以外に起きたこと
この震災は、津波だけの災害ではありませんでした。
広域の停電と、燃料の不足
東北から関東にかけて、広範囲で停電しました。そして、ガソリンが手に入らなくなりました。
給油のために何時間も並ぶ状況が続き、車で避難することも、支援に向かうことも難しくなりました。
この経験から、車の燃料を半分以下にしないという備えが広まりました。満タンに近い状態を保つことが、そのまま非常用の電源にも移動手段にもなります。
計画停電と、物流の停止
電力が足りず、地域を区切って順番に停電させる措置が行われました。
そして、店から水、米、電池、トイレットペーパーが消えました。被災していない地域でも、物が買えなくなったのです。
これは、「被災地でなくても備蓄が要る」ということを示しています。
備蓄の考え方はローリングストックとは?にまとめました。
原子力災害による、長期の避難
福島第一原子力発電所の事故により、広い範囲で避難が必要になりました。
この避難は、数日で終わるものではありませんでした。何年にもわたって、家に戻れない状態が続いた地域があります。
防災の観点から言えることは、二つです。
一、避難が長期になる災害があるということ。数日分の備えでは足りない場面があります。
二、身分を証明するものと、記録が要るということ。保険証、通帳、権利証、写真。長期の避難では、これらが生活の再建に直結します。
帰宅困難という問題
首都圏では、交通機関が止まり、大量の人が帰れなくなりました。
歩いて帰ろうとした人で歩道があふれ、それ自体が危険になりました。
この経験から、「むやみに移動を開始しない」という考え方が定着しています。職場や学校にとどまり、混雑が収まってから動く。それが安全です。
だから、職場にも数日分の水と食料、そして歩ける靴を置いておいてください。
逃げたあとに、失われた命
津波を生き延びた方が、そのあとで亡くなっています。
震災関連死は3,775人
避難生活での体調の悪化、持病の悪化、精神的な負担。これらによって亡くなった方が、3,000人を超えています。
この数は、阪神・淡路大震災の直接死に匹敵する規模です。
そして、福島県では特に多くの関連死が認定されています。原子力災害による避難が長期化し、住み慣れた場所を離れる生活が続いたためです。
長期の避難が、体を蝕みます
避難所から仮設住宅へ、そして別の住まいへ。移動を繰り返すと、人とのつながりが切れます。
特に高齢の方にとって、顔なじみを失うことは、体調に直接影響します。
これは個人の備えだけでは防げない部分です。それでも、薬・お薬手帳・眼鏡・補聴器といった「その人固有のもの」を持ち出せるようにしておくことは、確実に効きます。
関連死の仕組みは過去の震災は何が人の命を奪ったかに、支援制度は災害弔慰金・障害見舞金・援護資金にまとめました。
この震災が変えた仕組み
失われた命の代わりに、いくつもの仕組みが生まれました。
津波警報の伝え方が変わりました
当初、津波の予想の高さが実際より小さく発表され、それを聞いて避難をやめた方がいました。
この反省から、いまは伝え方が変わっています。
巨大な津波が予想される場合には、数値ではなく「巨大」「高い」という言葉で伝えられます。数字を過小に受け取られないためです。
ですから、「巨大」と聞こえたら、それは最大級の警戒を意味します。数字を待たずに逃げてください。
緊急速報メールが普及しました
いま、携帯電話が一斉に鳴る仕組みが当たり前になっています。この普及が進んだのも、この震災以降です。
設定で切ってしまっている方がいます。一度、自分の端末の設定を確認してください。受信できる状態になっていますか。
避難の呼びかけ方も見直されました
警戒レベルという考え方が整理され、数字で行動が分かる形になっています。
そして2026年5月29日からは、防災気象情報の名称が変わりました。レベル4に「危険警報」が新設されています。
新しい名称は警戒レベルとは?1〜5の意味にまとめました。
学校での防災教育が広がりました
釜石の取り組みは、全国に知られることになりました。
「知識を教える」のではなく「動ける体を作る」教育です。くり返し避難することで、考える前に足が動くようにする。
これは家庭でも同じです。一度、家族で避難場所まで歩いてみてください。話し合うより、はるかに効きます。
沿岸に住んでいない方へ
それでも、この災害から取り出せるものがあります。
「率先避難者たれ」は、すべての災害で効きます
大雨のときも、土砂災害のときも、火事のときも、人は周りを見て動きます。
誰かが最初に動けば、続く人が出ます。あなたが最初に動くことで、助かる人がいます。
これは、津波に限った話ではありません。
「想定にとらわれるな」も同じです
洪水のハザードマップも、土砂災害の警戒区域も、予想であって保証ではありません。
実際、近年の豪雨では想定を超える浸水が各地で起きています。
「マップの色が付いていないから安全」ではなく、「ここまでは確実に来る」という下限として読んでください。
「てんでんこ」も、応用できます
家族が別々の場所にいるときに災害が起きたら、探しに行かない。これは、どの災害でも同じです。
大雨で道路が冠水しているときに、子どもを迎えに行って流された事例があります。学校や職場は、たいてい安全な場所です。
だから、「それぞれが安全な場所にいる」と信じられる約束を、事前にしておいてください。
15年が経って、いま考えること
私は北海道に住んでいて、あの日は大きな揺れを感じた側にいました。
記憶は、必ず薄れます
これは、責められることではありません。人は忘れるようにできています。忘れなければ、日常を送れないからです。
だからこそ、忘れることを前提にした仕組みが要ります。
3月11日、1月17日、9月1日、1月1日。日付が残されているのは、そのためです。
年に一度、思い出せば十分です
毎日備えを考える必要はありません。年に数回、点検する日を決めておけば足ります。
備蓄の期限を見る。避難場所を確認する。家族と話す。それだけで、備えは維持できます。
日付の使い方は防災用品点検の日は年4回にまとめました。
数字ではなく、行動を受け取ってください
22,230人という数字は、大きすぎて実感を持てません。それは、当然のことです。
けれど、「探しに戻らない」「率先して逃げる」「遠くより高く」という行動なら、今日から使えます。
亡くなった方から受け取れるものがあるとすれば、それは数字ではなく、この数語だと思っています。
今日できること
五つです。すべて無料でできます。
一、自宅と職場が浸水想定区域かを調べる。津波のハザードマップを、住所で確認してください。
二、逃げる場所を決める。高台か、津波避難ビルか。二つ以上あると安心です。
三、実際に歩いてみる。何分かかるか。夜でも歩けるか。
四、家族と「てんでんこ」の約束をする。探さない。それぞれ逃げる。あとでここで会う。
五、旅行先でも、一度確認する癖をつける。海沿いの宿に泊まったら、避難経路を見てください。
津波への備えの全体は津波への備えにまとめています。
よくある質問
Q. 内陸に住んでいます。関係ありますか
津波に関しては、直接の危険は小さくなります。ただし、この震災から学べることは津波だけではありません。
広範囲の停電、燃料の不足、物流の停止、通信の途絶。これらは内陸でも起きました。
そして、旅行や出張で海沿いにいることがあります。知識は、そのときに効きます。
Q. 高いビルの上なら安全ですか
鉄筋コンクリートで、十分な高さがあれば、有効な避難先になります。
ただし、浸水の深さの想定を超えないことが前提です。そして、揺れで建物が損傷している可能性もあります。
可能なら、建物より高台を選んでください。建物は「他に手段がないとき」の選択肢です。
Q. ペットはどうすればよいですか
連れて逃げてください。ただし、そのために時間を使いすぎないでください。
ふだんから、すぐに入れられるキャリーを、玄関の近くに置いておいてください。探している時間が、命取りになります。
避難先での扱いは自治体によって違います。事前に確認しておいてください。
Q. 「想定にとらわれるな」なら、ハザードマップは見なくてよいのですか
逆です。必ず見てください。
この原則は、「ハザードマップを信じるな」という意味ではありません。「そこまでしか来ないと思い込むな」という意味です。
見たうえで、「これより大きいこともある」と考える。これが正しい使い方です。
Q. 避難したのに何も起きませんでした。無駄でしたか
無駄ではありません。それが正解です。
避難は、外れることが前提の行動です。10回逃げて10回とも何も起きなくても、それは失敗ではありません。
むしろ、逃げた経験があることで、次も逃げられます。体が覚えます。
そして、あなたが逃げるのを見た誰かが、次に続くかもしれません。それが率先避難者ということです。
Q. 「巨大」という表現は、いつ使われるのですか
予想される津波が非常に高く、数値をそのまま出すと過小に受け取られるおそれがある場合です。
地震の規模がすぐには確定しないとき、最初の発表では正確な高さを出せません。そこで、数字ではなく最大級の言葉で伝える仕組みになっています。
「巨大」と聞いたら、とにかく高い場所へ逃げてください。あとから数値が示されます。
Q. 避難場所まで遠く、高齢の親が歩けません
それは、その場で解決できる問題ではありません。事前に決めておく必要があります。
考える順番は、こうです。
一、より近い避難先はないか。津波避難ビルや、近所の高い建物です。
二、車を使う判断をするのか。使うなら、誰が運転し、どの道を通るかまで決めておいてください。
三、地域に伝えてあるか。避難に支援が必要な方の名簿を作っている自治体があります。登録しておくと、地域の助けが届きやすくなります。
四、そもそも住む場所を変えられないか。厳しい選択ですが、根本的な解決になります。
住まいと災害リスクの関係は防災で選ぶ引っ越し先にまとめました。
Q. 職場が海の近くです。何をすべきですか
会社の避難計画を確認してください。そして、それが実際に機能するかを見てください。
「避難場所が決まっている」だけでは足りません。誰が判断し、誰が声をかけ、どの経路で行くのかまで決まっていますか。
そして、自分の判断で逃げてよいことを、あらかじめ確認しておいてください。許可を待つ時間が、命に関わります。
Q. 学校にいる子どもを、迎えに行くべきですか
原則として、行かないでください。学校は、たいてい安全な場所に建てられ、避難の計画も持っています。
迎えに行けば、あなた自身が危険な場所を移動することになります。そして、道路が混雑して、他の避難の妨げにもなります。
やるべきことは、事前の確認です。災害時に学校がどう対応するのか、引き渡しはどういう条件で行われるのかを聞いておいてください。
そのうえで、家族の約束を決めておきます。「学校にいるときは、迎えに行かない。落ち着いてから会う」。これも、てんでんこの一つの形です。
Q. 海水浴や釣りの最中に揺れたら
すぐ陸へ上がり、そのまま高い場所へ向かってください。持ち物は置いていって構いません。
海の中では、揺れを感じにくいことがあります。だから、まわりの人が動き出したら、理由を聞かずに一緒に動いてください。
そして、その海岸に着いたときに、逃げる方向を一度確認しておいてください。10秒で終わります。
過去の震災から学ぶ
同じ大地震でも、命の奪われ方は違います。自分の住む場所に近いものから読んでください。
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まとめ
要点を並べます。
一、死因の90.6%は溺死でした。つまり、津波は物では守れません。
二、年齢が判明した方の65.2%が60歳以上でした。逃げ遅れが指摘されています。
三、避難三原則。想定にとらわれるな。最善をつくせ。率先避難者たれ。
四、津波てんでんこは、信頼の約束です。探さないと決めておくこと。
五、50センチで動けなくなります。第二波以降が大きいこともあります。
六、遠くへ走るより、高い場所へ。警報の数字を待たずに動いてください。
七、津波を生き延びたあとにも、震災関連死で3,775人が亡くなっています。
この災害から取り出せる答えは、拍子抜けするほど単純です。逃げること。それだけです。
けれど、その単純なことが、いざというときにできません。だから、事前に決めておくのです。
今日、住所を地図に入れてください。そして家族に、「探さないで、それぞれ逃げよう」と伝えてください。5分で終わります。
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップにまとめています。


