脱出用ハンマーは合わせガラスを割れない|選び方と自分の車の窓の確かめ方

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【この記事の要約】
車の「脱出用ハンマー」が、各地で急に売れています。8月の千葉豪雨で、浸水した車の中に閉じ込められて亡くなる方が相次いだためです。福島県のスーパーでは販売数が去年の4倍ほど、カー用品店の全国の店舗では通常の16倍という報道もあります。ここでお伝えしたいのは、買う前と買った後に知っておいてほしい一点です。脱出用ハンマーは「合わせガラス」を割れません。フロントガラスは合わせガラスです。そして国土交通省によると、一部の車種ではドアの窓やリアガラスにも合わせガラスが使われています。つまり、ハンマーを積んでいても、自分の車の横の窓が割れない可能性があります。このため、自分の車のどの窓が割れるかを、先に確かめておくことが大切です。ハンマーには金づち型・ピック型・ポンチ型の3種類があり、使い方が違います。選ぶときはJISマーク(JIS D 5716)などを目安にし、シートベルトを外せなくても手が届く場所に置いてください。価格は3千円未満で、国土交通省は1台に1本の備え付けを呼びかけています。

9月に入って、脱出用ハンマーがよく売れています。

8月の千葉豪雨がきっかけです。浸水した道路で車が動けなくなり、車内に閉じ込められた方が亡くなりました。

私は札幌に住んでいて、防災士として活動しています。ハンマーが売れること自体は、よいことだと思っています。

ただ、ひとつ気がかりな点があります。買った方の多くが、「これで窓が割れる」と思っているのではないか、ということです。

目次

結論|ハンマーを買ったら、自分の車の「割れる窓」を確かめてください

先に、いちばん大事なことを書きます。

脱出用ハンマーで割れるのは「強化ガラス」だけです。「合わせガラス」は割れません。
フロントガラスは合わせガラスです。そして一部の車種では、ドアの窓やリアガラスにも合わせガラスが使われています。
ですからハンマーを積んだら、自分の車のどの窓が強化ガラスかを確かめ、その窓の近くに置いてください。

ハンマーを持っていることと、脱出できることは、同じではありません。

いざというときに叩いた窓が割れなければ、ほかの窓を探す時間はほとんど残っていません。確認は、水に浸かる前にしかできません。

何が起きて、売れているのか

報道で伝えられている数字を並べます。

報道 内容
福島県大玉村のスーパー 販売数が去年の4倍ほど
カー用品店の全国の店舗 通常の16倍の売れ行き
島根県松江市のホームセンター 売れ行きが去年の7倍
福島県内 購入が急増し、品薄に

いずれも、個別の店や企業の数字です。全国の販売数の統計ではありません。

ただ、離れた地域で同じように伸びていることから、水害で車に閉じ込められる危険が、広く意識されるようになったことは確かだと思います。

なぜ、車の中に閉じ込められるのか

国土交通省は、冠水した道路を走ったときに起きることを、次のように整理しています。

水の深さ 起きること
床面を超える 電気装置が壊れ、パワーウインドウや自動スライドドアが動かなくなるおそれ
吸気口・マフラーから浸水 エンジンが止まり、再始動できなくなるおそれ
ドアの下端にかかる 外の水圧で、内側からドアを開けにくくなる
ドアの高さの半分を超える 内側からは、ほぼ開けられなくなるおそれ
タイヤが完全に水没 車体が浮き、流されるおそれ

いちばん上の行に注目してください。

水が床面を超えただけで、パワーウインドウが動かなくなるおそれがあります。ボタンを押しても窓が下がらない。ドアは水圧で開かない。ここで、窓を割る道具が必要になります。

冠水した車の危険と脱出の流れは車が冠水したらどうする?水深30センチで止まり、ドアは水圧で開かない|脱出の手順に詳しく書きました。

割れるガラス、割れないガラス

ここが、この記事の中心です。

車の窓ガラスには、主に2つの種類があります。

強化ガラス 合わせガラス
つくり 1枚のガラスを熱して急に冷やし、強くしたもの 2枚のガラスの間に、樹脂の膜をはさんだもの
割れ方 全体が細かい粒になって崩れる ひびが入っても、膜が破片を留めて崩れない
脱出用ハンマー 割れます 割れません
主な場所 ドアの窓、リアガラス(多くの車種) フロントガラス。一部の車種ではドアの窓・リアガラスも

合わせガラスは、事故のときに乗っている人を守るためのガラスです。

ひびが入っても破片が飛び散らず、体が車外に投げ出されるのも防ぎます。その丈夫さが、水没したときには逆に脱出を妨げます。

フロントガラスを割ろうとしないでください

国土交通省の資料には、合わせガラスであるフロントガラスにハンマーを叩きつけ、ひびが入るだけで割れない様子が写真で示されています。

目の前にある大きな窓は、つい狙いたくなります。ですが、そこは割れません。水が迫るなかで時間を使うことになります。

狙うのは、横の窓か後ろの窓です。それも、自分の車で強化ガラスだと確かめてある窓です。

「横の窓なら割れる」とは限りません

ここを知らない方が多いと思います。

近年、車内を静かにする目的などで、ドアの窓にも合わせガラスを使う車種があります。

国土交通省も、「一部の車種では、ドアガラスやリアガラスにも合わせガラスが採用されていることがあります」と注意を呼びかけています。そしてハンマーを買う際は、販売店に確認するなどして、自分の車の合わせガラスの場所を確かめてほしいとしています。

自分の車の窓を、確かめる方法

確かめ方は、いくつかあります。確実な順に並べます。

方法 確実さ ひとこと
車の販売店・メーカーに聞く 高い 車種と年式を伝えれば、どの窓が合わせガラスか答えてもらえます
取扱説明書を見る 高い 非常時の脱出や、ガラスについての記載がある場合があります
窓を少し下げて、ガラスの縁を上から見る 中 2枚が貼り合わされて見えれば合わせガラスの可能性
ガラスの隅の刻印を見る 中 種類を示す記号が入っていることがあります。表記は規格やメーカーで違います

いちばん確実なのは、販売店に聞くことです。

車検や点検で販売店に行く機会があれば、「この車で、脱出用ハンマーで割れる窓はどれですか」と聞いてみてください。一言で済みます。

ガラスの縁を見る方法

ドアの窓を半分ほど下げると、ガラスの上の縁が見えます。

その断面を上からのぞいて、2枚のガラスが重なっているように見えれば、合わせガラスの可能性があります。1枚なら強化ガラスです。

ただし、見慣れていないと判断しにくいことがあります。迷ったら、販売店に確認してください。

刻印について

車の窓ガラスの隅には、小さな刻印が入っています。規格のマークや製造元などが書かれていて、ガラスの種類を示す記号が含まれていることがあります。

一般には、JISマークのそばに「L」を含む表示があれば合わせガラス、「T」を含む表示があれば強化ガラスとされることが多いようです。

ただし、表記は規格の種類やメーカーによって違います。海外の規格のマークでは、別の書き方になります。刻印だけで判断せず、販売店や取扱説明書での確認と組み合わせてください。

脱出用ハンマーの3つの種類

国土交通省は、脱出用ハンマーを3つの型に分けて紹介しています。型によって、使い方が違います。

型 使い方 特徴
金づち型 金づちのように握り、先端で窓を叩き割る シートベルトカッターと一体になった製品もあります
ピック型 アイスピックのように握り、窓に叩きつける 消火具や発炎筒と一体になった製品もあります
ポンチ型 先端を窓に押し当てると、中の突起が自動で飛び出して割る 振りかぶる必要がありません

どの型を選べばいいか

国土交通省は、「使いやすいものを」と呼びかけています。そのうえで、考え方を書きます。

こんな方に 向いている型 理由
力に自信がない方 ポンチ型 押し当てるだけで割れます。腕を振る力が要りません
車内が狭い、軽自動車 ポンチ型 振りかぶる空間がなくても使えます
シートベルトも切りたい 金づち型(カッター一体) 1本で2つの役割を持てます
すでに発炎筒と一緒に積みたい ピック型 一体型の製品があります

水の中では、腕を大きく振れません。

水が胸まで来ていれば、なおさらです。そういう場面を考えると、押し当てるだけで割れるポンチ型は、力の弱い方や高齢の方にとって有力な選択肢です。

ただし、どの型でも一度も手に取ったことがなければ、いざというときに使えません。買ったら、使い方の説明を一度読み、握り方を確かめてください。

選ぶときに見るもの

確認すること 理由
JISマーク(JIS D 5716)など、性能を示す表示 一定の試験に適合したことの目安になります
GSマーク ドイツの安全認証。これも目安のひとつです
先端にキャップなどがついている 保管中にけがをしない、ほかの物を傷つけないため
シートベルトカッターがついている 水に濡れたバックルが外れないときに役立ちます
固定するための台や留め具がある 走行中に転がっていかないように

国土交通省は、JISマークやGSマークなど性能を保証する表示がある製品、または販売店が推奨する製品を選ぶよう呼びかけています。

JIS D 5716は、「自動車用緊急脱出支援用具」についての規格です。この規格の試験に適合していることが確認された製品に、JISマークがつけられます。

値段について

国土交通省によると、脱出用ハンマーは自動車販売店、カー用品店、ホームセンター、通信販売などで、3千円未満程度で手に入ります。

高いものほど割れる、というものではありません。表示と使いやすさで選んでください。

品薄になっている店もあるようです。急いで表示のない安い品を選ぶより、少し待ってでも性能の表示がある製品を、というのが私の考えです。

どこに置くか|いちばん大事なのは、置き場所です

持っているだけでは、脱出できません。

国土交通省の目安は、「シートベルトが外れなくても手が届き、走行中の振動で床に転がらない場所」です。

置き場所 評価 ひとこと
運転席のドアポケット よい 座ったまま片手で取れます
頭上の手すり(アシストグリップ)付近 よい 固定具で留める製品があります
運転席と助手席の間の物入れ 中 ふたを開ける手間があります
グローブボックス 不向き 運転席から手が届きにくく、物に埋もれます
トランク 使えません 車内から取れません

「座ったまま、シートベルトをしたまま、片手で取れるか」を基準にしてください。

そして確かめた「割れる窓」の近くに置くと、なおよいです。運転席の窓が合わせガラスなら、後ろの席の窓を割ることになります。その場合、後ろの席の人にも手が届く場所を考えてください。

小さなお子さんがいる車では

国土交通省は、脱出用ハンマーを小さな子どもの手に触れさせないよう注意を呼びかけています。

先端がとがった道具です。キャップつきの製品を選び、子どもの手の届かない、けれど大人はすぐ取れる場所に置いてください。

使うとき|手順と注意

脱出の順番

国土交通省は、水没した車からの脱出を次の順番で示しています。

順 やること
1 水位が低いうちに、ドアを開けて脱出する
2 水圧などでドアが開かなければ、窓を開けて脱出する
3 ドアも窓も開かなければ、脱出用ハンマーで窓を割って脱出する
4 それでも出られなくても、あきらめない。車内と車外の水位が同じくらいになると、ドアが開く可能性が高まります

ハンマーは3番目です。

いちばん大切なのは1番目、水位が低いうちに出ることです。ハンマーは、それが間に合わなかったときの道具です。

割るときのコツ

コツ 内容
先端をガラスに垂直に当てる 斜めに当たると、力が逃げて割れにくくなります
強化ガラスの窓を狙う フロントガラスは割れません
窓枠に残ったガラス 角が丸い粒になるので、手で払い落とせます

国土交通省によると、強化ガラスが割れたあと窓枠に残る破片は角が丸くなっているため、けがをせずに手で払えます。ためらわずに払い、そこから出てください。

水が窓の高さまで来てから割ると

ここは注意が必要です。

国土交通省は、水面が窓の下の縁より上にある状態で窓を割ると、割れた破片が水と一緒に勢いよく車内へ流れ込むおそれがあるとしています。

だからこそ、早く判断することが大切です。水が窓の高さに来る前に、ドアか窓から出る。ハンマーを使う状況そのものを、できるだけ避けるのが本来の備えです。

ハンマーより前に、やってほしいこと

脱出用ハンマーは、最後の手段です。その前に、閉じ込められる状況を作らないことが先です。

やること 理由
冠水した道路に入らない 水深は見た目では分かりません
アンダーパスを通らない経路にする 周りより低く、短時間で深くなります
大雨の予報が出たら、車での移動を控える 移動しなければ、閉じ込められません
車を高い場所へ移しておく 浸水したあとに車を取りに行かないため
床まで水が来たら、すぐ車を離れる パワーウインドウが動くうちに

「前の車が通れたから」は、根拠になりません。

数分で水位は変わります。そして水の中に沈んだ道路の段差やくぼみは、見えません。

大雨の最中に車で動くかどうかの判断は大雨・土砂災害の警報が出たら逃げるべきか|夜に動く判断と、2階が安全にならない理由にも書きました。

シートベルトカッターも、同じくらい大切です

窓を割っても、シートベルトが外れなければ出られません。

水に浸かると、バックルのボタンが押しにくくなることがあります。体重がベルトにかかった状態では、なおさら外れにくくなります。

場面 カッターが役立つ理由
バックルが押せない ベルトそのものを切って外せます
車が傾いている 体重がかかり、ボタンを押しても外れにくい
後ろの席の子どものチャイルドシート 固定ベルトを切って、子どもを出せます

多くの金づち型のハンマーには、刃が奥に隠れたシートベルトカッターがついています。ベルトを溝に引っかけて引くだけで切れます。

ハンマーを選ぶときは、カッターがついているかも確かめてください。

同乗者がいるときに、決めておくこと

車に乗るのは、運転する人だけではありません。

家族で乗っているとき、誰がどう動くかを決めておくと、いざというときに迷いません。

決めておくこと 理由
ハンマーの場所を全員が知っている 運転席の人が動けないこともあります
どの窓から出るか 割れる窓が分かっていれば、全員がそこを目指せます
子どもを先に出す 自分でベルトを外せない、泳げないことがあります
高齢の家族を支える人 窓から体を出すのには力が要ります
車を出たら、高い所へ向かう 車の周りにとどまらない

「子どもを先に出す」を、強調しておきます。

チャイルドシートの子どもは、自分で抜け出せません。大人が先に外へ出てしまうと、車内に手が届かなくなることがあります。子どものベルトを外し、窓から先に出してから、大人が続いてください。

車を出たあと、どこへ行くか

車の周りにとどまらないでください。

流れがあれば、車ごと流されることがあります。近くの建物の2階など、高い場所へ移ってください。

それができず、水の流れも強いときは、車の屋根の上で救助を待つほうが安全な場合もあります。水の中を歩くと、見えない側溝やマンホールに落ちる危険があるためです。

「車を守る」より「自分が出る」

浸水しかけた車の中で、人がためらう理由のひとつは車そのものです。

「まだ動くかもしれない」「窓を割ったら修理代がかかる」。そう考えているうちに、水位は上がります。

窓は直せます。車は買い替えられます。命は戻りません。
床まで水が来た時点で、車は「移動の手段」ではなくなっています。そこから出ることだけを考えてください。

車の水没が保険でどう扱われるかは、契約の内容によって違います。ご自身の契約は、保険会社や代理店にご確認ください。ここで個別のことは申し上げられませんが、少なくとも「車が惜しいから残る」という判断だけは、しないでください。

年に一度、確かめてほしいこと

一度積んだら終わり、ではありません。

確認すること 理由
決めた場所に、まだあるか 掃除や荷物の出し入れで、いつのまにか移動しています
キャップや固定具が外れていないか 転がっていると、いざというとき見つかりません
家族が置き場所を知っているか 運転するのは、自分だけとは限りません
車を買い替えたら、窓の種類を確かめ直す 車種が変われば、割れる窓も変わります

「車を買い替えたら確かめ直す」を、強調しておきます。

前の車で割れた窓が、新しい車でも割れるとは限りません。ハンマーは新しい車に移しても、確認は移せません。

時期を決めておくと忘れません。車検や点検のとき、あるいは梅雨入り前がちょうどよいと思います。

水没までの時間は、思っているより短い

「水が来たら、そのとき考えればいい」と思われるかもしれません。

ですが、判断に使える時間はとても短いのです。

国土交通省の整理では、水が床面を超えた時点で、パワーウインドウが動かなくなるおそれがあります。ドアの下端にかかれば、ドアは開きにくくなります。

車の床からドアの下端までは、わずかな高さです。水が流れ込む道路では、その差はあっという間に埋まります。

だから、ハンマーの場所も、割れる窓も、出る順番も、水が来る前に決まっていなければなりません。水が来てから考える時間は、ほとんどありません。

ヘッドレストで代わりになりますか

「ヘッドレストの金属の棒で窓が割れる」という話を、聞いたことがあるかもしれません。

これは、あてにしないでください。

国土交通省は、車の窓ガラスは走行中の安全のために十分な強度があり、専用の道具を使わずに割ることは困難だとしています。そのうえで、「命綱」として1台に1本のハンマーの備え付けを呼びかけています。

ヘッドレストは車種によって外し方も形も違います。水が迫るなかで、外して、狙って、割れるかどうか分からない方法を試す余裕はありません。

買う前に、店で確かめるとよいこと

いま品薄の店もあります。棚にあったものをそのまま買う前に、次の点を見てください。

確かめること 見る場所
性能の表示があるか パッケージのJISマーク、GSマーク
どの型か 金づち型・ピック型・ポンチ型。使い方の図
シートベルトカッターの有無 刃が隠れている溝があるか
保管用のキャップや台 付属品の一覧
「合わせガラスは割れない」と書かれているか 注意書き。書いてある製品は、説明が丁寧な傾向があります

そしてカー用品店で買うなら、店員さんに車種を伝えて相談してください。国土交通省も、販売店に確認することを勧めています。

通信販売で買う場合は、商品説明に規格の表示があるかを確かめてください。表示がなく極端に安いものは、避けたほうが無難です。

車に一緒に積んでおきたいもの

脱出用ハンマーは、車の防災の一部です。大雨や大雪で車が動けなくなったときに備えて、ほかにも積んでおくと役立つものがあります。

もの 役割
脱出用ハンマー(ベルトカッター付き) 水没したときの脱出
モバイルバッテリー 足止めされたときの連絡手段
飲料水と携帯トイレ 渋滞や立ち往生での長時間の足止め
懐中電灯 夜間の脱出、周囲の確認
毛布・アルミシート 体温を保つ
雨具 車を離れて歩くとき

車に積む防災用品の全体は車に備える防災グッズにまとめています。

私が、この記事を書いた理由

脱出用ハンマーが売れているというニュースを見て、うれしい気持ちと、少し心配な気持ちの両方がありました。

うれしいのは、車に閉じ込められる危険が知られるようになったことです。

心配なのは、「ハンマーを買ったから大丈夫」で止まってしまうことです。

ハンマーは、割れる窓に、手が届く場所から、正しい向きで当てて、はじめて役に立ちます。そのどれかが欠けると、使えません。

そしていちばん見落とされるのが、自分の車の窓が割れるかどうかです。これは、買ったあとに車の前でしか確かめられません。

この記事を読んだ方が、次に車に乗るとき一度だけ窓を見てくれたら、それで十分だと思っています。

よくある質問

Q. 脱出用ハンマーがあれば、どの窓でも割れますか?

いいえ。割れるのは強化ガラスだけです。

フロントガラスは合わせガラスで、割れません。一部の車種では、ドアの窓やリアガラスにも合わせガラスが使われています。自分の車のどの窓が割れるかを、販売店や取扱説明書で確かめておいてください。

Q. 自分の車の窓が合わせガラスか、どうやって調べますか?

いちばん確実なのは、車の販売店に聞くことです。車種と年式を伝えれば分かります。

ほかに、取扱説明書を見る、窓を下げてガラスの縁を上から見る(2枚重なっていれば合わせガラスの可能性)、隅の刻印を見る、といった方法があります。刻印の表記は規格やメーカーで違うので、販売店での確認と組み合わせてください。

Q. 運転席の窓が合わせガラスでした。どうすればいいですか?

割れる窓がどこかを確かめ、そこから出る段取りを決めておいてください。

後ろの席の窓やリアガラスが強化ガラスであれば、そちらを割ることになります。ハンマーの置き場所も、その窓に届く位置を考えてください。

そして、ハンマーに頼る場面そのものを避けることが、いっそう大切になります。冠水した道路に入らない、床まで水が来たらすぐ車を離れる。これが先です。

Q. どの型を選べばいいですか?

使いやすいものを選んでください。

力に自信がない方や、車内が狭い方には、押し当てるだけで割れるポンチ型が扱いやすいと思います。シートベルトカッターが一体になった製品を選ぶと、1本で2つの役割を持てます。

いずれの型でも、JISマークなど性能の表示があるかを目安にしてください。

Q. 値段はどれくらいですか?

国土交通省によると、3千円未満程度で手に入ります。

高いほど割れる、というものではありません。性能の表示と、使いやすさで選んでください。

Q. 電気自動車やハイブリッド車でも同じですか?

窓ガラスの考え方は同じです。割れるのは強化ガラスで、合わせガラスは割れません。

そして国土交通省は、浸水でエンジンやモーターが止まって動けなくなる危険を、車の種類を問わず示しています。窓がどのガラスかは、車種ごとに確かめてください。

Q. 水没した車に閉じ込められたら、まず何をしますか?

水位が低いうちに、ドアを開けて出ます。開かなければ窓を開けて出ます。

それもできなければ、強化ガラスの窓をハンマーで割ります。それでも出られなくても、あきらめないでください。車内と車外の水位が同じくらいになると、ドアが開く可能性が高まります。

Q. ハンマーを買ったら、試しに割ってみるべきですか?

自分の車の窓で試す必要はありません。窓の修理が必要になります。

代わりに、握り方と、先端をガラスに垂直に当てる向きを、窓に触れる手前まで動かして確かめてください。ポンチ型なら、押し当てる位置と姿勢を一度とってみるだけでも違います。

そして割れる窓がどれかは、販売店での確認で知っておく。練習でガラスを割るより、この2つのほうが役に立ちます。

Q. 窓を割るとき、どこを狙えばいいですか?

国土交通省の資料では、先端をガラスに垂直にぶつけることが大切とされています。

そのうえで、ガラスの中央より端のほうが割れやすいという解説もあります。いずれにしても、割るのは強化ガラスの窓であることが前提です。

まとめ|買って、確かめて、手の届く所に置く

要点 内容
いま売れている理由 8月の千葉豪雨で、車内に閉じ込められる事故が相次いだため
いちばん大事なこと 合わせガラスは、脱出用ハンマーで割れません
割れない窓 フロントガラス。一部の車種ではドアの窓・リアガラスも
確かめ方 販売店に聞くのが確実。取扱説明書、ガラスの縁、刻印も手がかり
3つの型 金づち型、ピック型、押し当てるだけのポンチ型
選ぶ目安 JISマーク(JIS D 5716)など性能の表示、キャップ、ベルトカッター
置き場所 シートベルトをしたまま片手で取れる所。グローブボックスは不向き
使うとき 先端を垂直に当てる。水が窓の縁より上だと破片が流れ込む
その前に 冠水した道路に入らない。水位が低いうちに車を離れる
見直し 年に一度、そして車を買い替えたとき

脱出用ハンマーを買った方は、今度車に乗るとき、窓を半分下げてガラスの縁を見てみてください。

そして次に販売店へ行ったとき、「この車でハンマーで割れる窓はどれですか」と聞いてください。

その一言で、ハンマーは「持っている道具」から「使える道具」になります。

【出典】
国土交通省「脱出用ハンマーの種類・使用方法をまとめたビデオの概要―水没時における脱出用ハンマー使用方法の注意点について―」(冠水時の危険、脱出手順、ハンマーの3類型、合わせガラス、破砕時の注意、JIS D 5716、価格の目安、置き場所)
報道各社(福島テレビ、FNN、日本海テレビ、福島民友新聞)による販売状況の報道
ガラスの種類は車種・年式によって異なります。お使いの車については、販売店・メーカー・取扱説明書でご確認ください。

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9月1日は防災の日/8月30日〜9月5日は防災週間

1年に一度、備えを点検する日です。10分でできることから始めてください。

この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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