【この記事の要約】
レベル4氾濫危険警報は、川の水位が氾濫危険水位に達したときに発表される情報です。警戒レベル四に相当し、危険な場所にいる人が避難を終えているべき最終ラインを示します。この記事では、河川の氾濫に関する情報の四段階、それぞれが対応する水位、そして誰が発表しているのかを整理しました。あわせて、洪水予報が出る川は限られていること、対象外の中小河川では洪水キキクルを見る必要があること、雨が降っているのに水位が下がる危険な兆候、そして本流の水位が支流の氾濫を引き起こす仕組みについても扱います。秋雨前線と台風が重なる季節に、直接役立つ内容です。
結論からお伝えします。レベル4氾濫危険警報が出たら、それは避難の最終ラインです。
「危険」という言葉が入っているので、多くの方は「そろそろ準備しよう」と受け取ります。しかし、この情報の位置づけは違います。準備を始める段階ではなく、避難を終えているべき段階です。
私は防災士として大雨の日の判断について相談を受けることがありますが、この誤解はよくあります。氾濫注意、氾濫警戒、氾濫危険。言葉が似ているため、どれがどの段階なのかが分かりにくいのです。
この記事で、その順番をはっきりさせておきます。覚えるのは、四つの名前と、どれがレベル四かという一点だけです。
2026年5月に、名称が変わりました
本題の前に、名称を整理しておきます。ここを知らないと、報道と手元の資料が食い違って見えます。
2026年5月29日から、防災気象情報の名称が変わりました。レベルの数字が名称に入る形になり、それまで「氾濫危険情報」と呼ばれていたものが「レベル4氾濫危険警報」になっています。
| 2026年5月28日まで | 2026年5月29日から |
|---|---|
| 氾濫注意情報 | レベル2氾濫注意報 |
| 氾濫警戒情報・洪水警報 | レベル3氾濫警報 |
| 氾濫危険情報 | レベル4氾濫危険警報 |
| 氾濫発生情報・大雨特別警報(浸水害) | レベル5氾濫特別警報 |
| 土砂災害警戒情報 | レベル4土砂災害危険警報 |
変更点は二つあります。ひとつは、レベル4に「危険警報」という区分が新しく設けられたこと。従来は「情報」という名前で、警報より軽く聞こえる問題がありました。警報より危険警報のほうが上です。
もうひとつは、レベル5の氾濫特別警報が新設されたことです。旧制度では、河川の氾濫にレベル5相当の特別警報がありませんでした。警戒レベルそのものの考え方は災害の警戒レベルとは?レベル1〜5の一覧まとめをご覧ください。
この記事では、以下すべて新しい名称で書いています。
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氾濫の四段階
川の水位に応じて発表される情報は、四つあります。
| 情報の名前 | 警戒レベル | 対応する水位 | とるべき行動 |
|---|---|---|---|
| レベル2氾濫注意報 | レベル2相当 | 氾濫注意水位 | 避難先と経路を確認する |
| レベル3氾濫警報 | レベル3相当 | 避難判断水位 | 高齢者等は避難を開始する |
| レベル4氾濫危険警報 | レベル4相当 | 氾濫危険水位 | 危険な場所から全員が避難する |
| レベル5氾濫特別警報 | レベル5相当 | 氾濫が発生 | 命を守る最善の行動をとる |
並べてみると、順番がはっきりします。注意、警戒、危険、そして発生。言葉が強くなるほど、段階が上がります。
そして、いちばん大事なのは三番目です。レベル4氾濫危険警報が、避難完了の期限です。ここを過ぎると、次はレベル5氾濫特別警報、つまりすでに水があふれている段階になります。
レベル五を待ってはいけません
レベル5氾濫特別警報は、警戒レベル五に相当します。これは避難のタイミングではありません。すでに災害が起きている状態です。
この段階では、外に出ることそのものが危険になっています。水があふれていれば、道路と川の境目は見分けがつきません。側溝もマンホールも、水面の下です。レベル五を判断の基準にする計画は、計画として成立していません。
四つの水位
情報の背後には、水位の基準があります。こちらも四つです。
| 水位の名前 | 意味 |
|---|---|
| 水防団待機水位 | 水防団が待機を始める水位。住民への発表はない |
| 氾濫注意水位 | 水防活動が始まる。住民は情報に注意を向ける段階 |
| 避難判断水位 | 避難に時間がかかる人が動きはじめる水位 |
| 氾濫危険水位 | いつ氾濫が起きてもおかしくない水位 |
ここで、名前の意味に注目してください。避難判断水位という名前がついているのは、上から二番目です。
つまり、「避難を判断する」水位は、いちばん上ではありません。そこから、もう一段階上に氾濫危険水位があります。名前だけを見ると、避難判断水位で動けばよいように思えますが、そこは高齢の方などが動きはじめる段階です。
そして氾濫危険水位に達したとき、全員の避難が完了しているべきという設計になっています。
誰が発表しているのか
この情報は、二つの機関が共同で発表します。
国が管理する大きな河川については、国土交通省と気象庁が共同で発表します。都道府県が管理する河川については、都道府県と気象庁が共同で発表します。
なぜ共同なのか。理由があります。
気象庁は、雨を見る専門機関です。これからどれだけ降るかを予測できます。一方、その川がどれだけの水を流せるか、どの水位で危険になるかを知っているのは、河川を管理する側です。
雨の予測と、川の特性。この二つが組み合わさって、はじめて水位の見通しが立ちます。だから、どちらか一方では出せません。レベル4土砂災害危険警報が都道府県と気象庁の共同発表であるのと、同じ考え方です。仕組みはレベル4土砂災害危険警報とは?大雨警報との違いと避難の判断にまとめました。
すべての川に、洪水予報があるわけではありません
ここが、この記事でいちばん注意していただきたい点です。
洪水予報が発表されるのは、指定された河川だけです。流域の広さや、氾濫したときの被害の大きさをもとに選ばれています。
日本には無数の川があります。そのすべてに水位計を設置し、予報を出すことは現実的ではありません。ですから、あなたの家のそばを流れる小さな川には、洪水予報がない可能性が高いのです。
それ以外の川はどうなるのか
2026年5月29日の名称変更にあわせて、ここも仕組みが整理されました。
洪水予報河川以外の川については、レベル3大雨警報として発表されます。かつては「洪水警報」という名前の情報がありましたが、これは廃止されました。中小河川の氾濫リスクは、大雨警報のなかに統合されています。
つまり、大雨警報は「浸水のおそれ」と「中小河川の氾濫のおそれ」の両方を含む情報になりました。この整理によって、どちらの情報を見ればよいか迷う場面が減っています。変更の全体像は洪水警報は2026年5月に廃止|氾濫警報・氾濫危険警報への変更点にまとめました。
小さな川ほど、速く上がります
ただし、情報の枠組みが整理されても、川そのものの性質は変わりません。
大きな川は観測所も多く、水位が数字で分かります。ところが、家のすぐ裏を流れる小さな川については、細かい数字までは出てきません。そして、実際に人が亡くなるのは、その小さな川であることが少なくありません。
理由は速さです。小さな川ほど、水位が上がるのが速くなります。流域が狭いぶん、降った雨がすぐ集まるためです。大きな川なら数時間かかる上昇が、小さな川では数十分で起こります。
ですから、身近な小さい川については、数字を待つのではなく、雨の降り方そのもので判断してください。激しい雨が続いているなら、それだけで近づいてはいけない理由になります。
自分の家のそばの川が洪水予報河川かどうかは、都道府県や国土交通省のサイトで確認できます。平常時に一度調べておくと、大雨の日にどの情報を探せばよいかが分かります。
洪水キキクルで補う
では、情報のない川についてはどうすればよいのか。答えが、気象庁の危険度分布です。
洪水キキクルは、川の増水や氾濫の危険度を、地図の上に色で示すものです。水位計のない中小河川も対象に含まれています。
色は、危険度が上がるにつれて黄、赤、紫、黒と変化します。紫は警戒レベル四に相当します。この色になったら、レベル4氾濫危険警報が出ているのと同じ意味だと考えてください。
使い方は単純です。大雨のときに開いて、自分の家のそばの川の色を見る。市町村単位の情報より、はるかに自分に近い判断ができます。
あわせて、土砂災害の危険度も同じ仕組みで見られます。斜面の近くにお住まいなら、両方を確認してください。
川の水位を、自分で見る
情報を待つだけでなく、自分で数字を見る方法があります。
川の防災情報を使う
国土交通省が運営するサイトで、全国の観測所の水位が公開されています。地図から川を選ぶと、現在の水位と、四つの基準水位が図で示されます。
ここで見ていただきたいのが、上流の観測所です。自分の家に近い観測所だけでなく、その上流の数字を見てください。上流で水位が上がりはじめたら、下流の自分の場所は数十分から数時間後に上がります。
これは、情報が発表されるより前に危険を知る方法です。レベル4氾濫危険警報を待つのではなく、その手前で動けます。
ライブカメラを見る
多くの河川に、監視用のカメラが設置されています。映像は公開されており、誰でも見られます。
これが、川を見に行かないための道具です。様子が気になるから見に行く、という行動が毎年事故を生んでいます。画面で見れば、危険を冒す必要がありません。
量水標を覚えておく
川岸には、水位を示す目盛りの板が設置されていることがあります。量水標と呼ばれるものです。
平常時に一度見ておくと、報道で「何メートル」と聞いたときに、どれくらいの高さかが実感できます。数字を体感に変えておくという準備です。散歩のついでに、近くの橋から眺めてみてください。ふだんの水位を知っていれば、増えたときの異常さが分かります。
堤防は、どうやって壊れるのか
氾濫危険水位が「いつ氾濫してもおかしくない水位」だと書きました。では、堤防は具体的にどう壊れるのか。三つの形があります。
一、水が堤防を越える
最も多い形です。水位が堤防の高さを超え、あふれた水が反対側を削ります。削られた部分から崩れが広がり、やがて決壊に至ります。
越えた時点で終わりではなく、越えてから崩れるまでに時間があります。ただし、その時間は長くありません。
二、水が堤防にしみ込む
高い水位が長く続くと、水が堤防の内部にしみ込みます。土でできた堤防は、水を含むと弱くなります。
やがて、堤防の裏側から水が噴き出したり、土が流れ出したりします。そして崩れます。水が堤防を越えていなくても、決壊は起こりうるということです。
この形は、雨がやんだ後に起きることもあります。水位が下がりはじめても、堤防の中の水はすぐには抜けません。
三、流れが堤防を削る
川の流れそのものが、堤防の足元を削ります。カーブの外側では流れが強く、この現象が起きやすくなります。
三つのどれであっても、決壊した瞬間に、大量の水が一気に押し寄せます。じわじわ増えるのではありません。ですから、決壊してから逃げるのでは間に合いません。
水の深さと、できること
浸水したときに何ができるかは、深さで決まります。
| 水の深さ | 起きること |
|---|---|
| およそ30センチ | 車のエンジンが止まるおそれ。地下室や車のドアが開けにくくなる |
| およそ50センチ | 車が浮きはじめる。流れがあれば大人でも歩けない |
| およそ70センチ | ドアは水圧でほぼ開かない。歩行は不可能 |
| 1メートル以上 | 木造家屋の一階が水没。避難は困難 |
この表で驚かれるのは、数字の小ささだと思います。
膝までの深さで、車は動かなくなります。腰まで来れば、歩けません。「まだ膝までだから大丈夫」という判断が、いちばん危ないのです。
そして、流れがあれば話は変わります。同じ深さでも、流れている水のほうがはるかに危険です。足をすくわれれば、そこからは泳ぐしかありません。
地下と、アンダーパス
とくに危険なのが、周囲より低い場所です。
地下室、地下街、地下駐車場。水は低いところへ流れ込みます。そして、三十センチほどの水でも、水圧でドアが開かなくなります。閉じ込められます。
道路が線路や道の下をくぐるアンダーパスも同じです。外から見て深さが判断できず、進入した車が水没する事故が繰り返されています。雨の日は、アンダーパスを通らないと決めておいてください。
水位が下がったときの危険
ここは、知っておくと命を守れる知識です。
雨が降り続いているのに、川の水位が急に下がった。この状況は、安心材料ではありません。危険な兆候である場合があります。
理由は二つ考えられます。
ひとつは、上流のどこかで土砂が川をせき止めている可能性です。斜面が崩れて谷を埋めると、そこで水がたまります。下流では、流れてくる水が減ります。そして、せき止めが崩れたとき、たまった水と土砂が一気に押し寄せます。
もうひとつは、上流のどこかで堤防が決壊している可能性です。決壊した場所から水が抜ければ、下流の水位は下がります。しかし、その水はどこかへ流れ込んでいます。
どちらの場合も、水位の低下は良い知らせではありません。雨が続いているのに水が減ったら、上流で何かが起きたと考えてください。この現象は土石流の前ぶれとしても知られています。詳しくは土石流とは?前ぶれ・逃げる方向・危険な場所の調べ方をご覧ください。
本流の水位が、支流をあふれさせる
もうひとつ、見落とされやすい現象があります。
小さな川は、やがて大きな川に合流します。ところが、大きな川の水位が高いと、小さな川の水が流れ込めなくなります。
行き場を失った水は、合流点の手前でたまっていきます。そして、そこであふれます。この現象は、過去の水害でも実際に起きています。
この現象が厄介なのは、小さな川の流域に、たいして雨が降っていなくても起こることです。上流の広い範囲に降った雨が本流の水位を上げ、その影響が支流に及びます。
ですから、支流のそばにお住まいの方は、本流の水位も見てください。自分の家の周りの雨だけでは、判断できません。
内水氾濫は、洪水予報の対象外です
洪水予報は、川の水があふれることを対象にしています。ところが、浸水の原因はそれだけではありません。
内水氾濫は、排水が追いつかずに市街地が水につかる現象です。下水道や側溝の能力を超える雨が降ると、行き場のない水が地表にあふれます。
これは、川から離れた場所でも起こります。そして、川の水位とは関係なく発生します。ですから、洪水予報を見ていても気づけません。
内水氾濫については、洪水キキクルの浸水に関する表示や、大雨警報が判断の材料になります。洪水の種類については洪水の種類を徹底解説にまとめました。
秋の雨の季節に向けて
八月の下旬から十月にかけては、秋雨前線が停滞する季節です。そして、台風のシーズンとも重なります。
この時期に危険が高まるのは、台風が前線に大量の水蒸気を送り込むためです。前線が動かないので、同じ場所に雨が降り続きます。同じ場所に降り続く仕組みは線状降水帯とゲリラ豪雨は何が違う?で扱っています。
そして、秋にはもうひとつ条件があります。夏の雨と台風で、地盤がすでに水を含んでいます。川の水位も、平常時より高い状態から始まります。同じ雨量でも、意味が変わります。
ですから、この季節の判断は前倒しにしてください。レベル3氾濫警報の段階で、動く準備を整えておく。そして、レベル4氾濫危険警報が出たら、そこが期限です。
浸水想定区域を、先に見ておく
ここまでの情報は、すべて「いま起きていること」を伝えるものです。これに対して、「起きたらどうなるか」を先に知る方法があります。
ハザードマップに示された、洪水の浸水想定区域です。
三つの数字を確認する
一、浸水の深さ。色分けされています。自宅が何メートルの想定かを確認してください。この数字が、二階へ上がれば足りるのか、それとも家を出るしかないのかを決めます。
二、浸水が続く時間。意外と見落とされますが、重要です。数時間で引く場所と、数日間水につかったままになる場所があります。長く続く場所では、上の階に残っても救助を待つことになります。その間の水と食料が必要になります。
三、家屋倒壊等氾濫想定区域。これは、水の勢いで建物そのものが流されたり、川岸が削られたりするおそれのある範囲です。この区域にある場合、上の階へ上がるという選択肢が成り立ちません。必ず、その場を離れる必要があります。
三つ目は、名前が長く、地図の凡例でも目立たないことが多いのですが、行動を根本から変える情報です。自宅がこの区域に入っていないかは、必ず確認してください。
地図の読み方はハザードマップの見方・読み方を徹底解説にまとめました。
大雨の日にやること
一、日没の三時間前に判断する。過去の水害では、夜間から未明にかけて被害が集中しています。暗くなってからの避難は、それ自体が危険です。
二、洪水キキクルを開く。市町村単位の情報ではなく、自分の場所の色を見ます。紫になったら、指示を待つ必要はありません。
三、上流の雨を見る。自分の頭上の空ではなく、川をさかのぼった先の空です。雨雲の動きは、無料で確認できます。
四、川を見に行かない。毎年、繰り返されている事故です。増水した川の岸は足元が崩れやすく、視界も悪くなっています。水位は、インターネットで確認できます。川の防災 完全ガイドもあわせてご覧ください。
五、垂直避難という選択肢を持つ。外がすでに危険なら、無理に移動するより建物の高い階へ上がるほうが安全な場合があります。ただし、これは水があふれる前に判断できなかったときの次善の策です。そして、家屋倒壊等氾濫想定区域では成り立ちません。
六、貴重品と薬を上の階へ上げる。避難する場合も、家に残る場合も同じです。通帳、印鑑、常備薬、そして充電したモバイルバッテリー。浸水してから取りに下りるのは、非常に危険です。時間があるうちに、まとめて上へ運んでおいてください。
劣化しているなら、モバイルバッテリーを買い替えてください。
避難のタイミングを、先に決めておく
ここまで情報の読み方を説明してきましたが、いちばん効くのは、判断の基準を平常時に決めておくことです。
雨の夜に、四つの情報の順番を思い出し、キキクルを開き、上流の水位を確認し、そのうえで家族を説得する。これを、その場でやるのは無理があります。
四つを紙に書く
一、動きはじめる条件。「レベル3氾濫警報が出たら」「洪水キキクルが赤になったら」「日没の三時間前に大雨警報が出ていたら」。条件を一つに絞らず、どれか一つでも当てはまったら動く、という形にしておくと確実です。
二、避難先。浸水想定区域の外にある場所を選びます。指定避難所が想定区域の中にある例もあるため、必ず確認してください。複数持っておくのが安全です。
三、経路。アンダーパス、川沿いの道、冠水しやすい交差点。避けるべき場所に印をつけます。最短経路が最善とは限りません。
四、誰が何を持つか。持ち出し袋の担当、子どもや高齢の家族に付き添う担当。役割を決めておくと、出発が速くなります。
この四つを書き出したものが、いわゆるマイ・タイムラインです。市町村が様式を配布していることも多いので、探してみてください。書けないところが、そのまま準備の足りていないところです。
空振りを許す取り決めをする
最後にもうひとつ。家族のなかで、「空振りでも責めない」という取り決めをしておいてください。
早めに避難して何も起きなかったとき、「無駄だった」という空気が生まれると、次から動きにくくなります。避難の判断は、当たり外れで評価するものではありません。
失うのは一晩の不便、守るのは命。この比較を、家族で共有しておいてください。
よくある質問
レベル4氾濫危険警報とレベル3氾濫警報は、どちらが上ですか
レベル4氾濫危険警報のほうが上です。順番は、レベル2氾濫注意報、レベル3氾濫警報、レベル4氾濫危険警報、レベル5氾濫特別警報です。「警戒」より「危険」が上だと覚えてください。そして、レベル4氾濫危険警報が警戒レベル四に相当し、避難を終えているべき段階です。
避難判断水位に達したら避難すべきですか
避難に時間がかかる方は、その段階で動いてください。名前に「避難判断」とありますが、これは警戒レベル三に相当する水位です。全員の避難完了が求められるのは、その上の氾濫危険水位です。ただし、余裕を持って早く動くこと自体は、まったく問題ありません。
家のそばの川に洪水予報がありません
洪水予報が発表される川は限られています。その場合は、洪水キキクルを使ってください。水位計のない中小河川も対象に含まれています。そして、小さな川ほど水位の上昇が速いという点にも注意してください。数十分で状況が変わります。
雨がやんだのに水位が上がるのはなぜですか
上流に降った雨が、時間をかけて流れてくるためです。自分の場所で雨がやんでも、川の水位はその後に上がります。大きな川ほど、この時間差が長くなります。雨がやんだから安全、という判断はできません。
水位が下がったら安心してよいですか
いいえ。雨が降り続いているのに水位が下がったときは、危険な兆候です。上流で土砂が川をせき止めているか、堤防が決壊している可能性があります。せき止めが崩れれば、大量の水と土砂が一気に押し寄せます。
川から離れていれば安全ですか
いいえ。内水氾濫は、川から離れた市街地でも起こります。排水が追いつかずに、地表に水があふれる現象です。洪水予報の対象外なので、別の情報で判断する必要があります。ハザードマップには内水の浸水想定が示されていることもあります。地図の読み方はハザードマップの見方・読み方を徹底解説をご覧ください。
マンションの高層階なら関係ありませんか
浸水そのものの危険は低くなります。ただし、一階部分が浸水すれば電気設備が停止し、停電と断水が起こります。エレベーターも止まります。孤立への備えという意味では、高層階こそ備蓄が必要です。断水時の対応はマンションの断水対策にまとめています。
堤防があるから安心ではないのですか
堤防は、想定された規模の洪水を防ぐために作られています。その想定を超える雨が降れば、水は越えます。そして、越えなくても内部に水がしみ込んで決壊することがあります。近年の水害では、整備された堤防を持つ川でも決壊が起きています。堤防は安全を保証するものではなく、被害を減らすための設備だと理解してください。
ダムがあれば洪水は防げますか
ダムには、洪水を一時的にためて下流への流量を抑える機能があります。ただし、容量には限りがあります。ためきれなくなると、流入した分を放流せざるを得ません。これを緊急放流と呼びます。実施される場合は事前に知らされますが、下流の水位は急激に上がります。ダムのある川の下流にお住まいなら、この情報にも注意してください。
夜にレベル4氾濫危険警報が出たらどうすればよいですか
すでに外が危険であれば、無理に移動しないでください。建物の高い階へ上がる垂直避難に切り替えます。浸水想定の深さより高い階へ、そして可能なら斜面や川から遠い側の部屋へ。ただし、これは次善の策です。だからこそ、暗くなる前に判断するという原則が重要になります。日没の三時間前を判断の時刻に決めておいてください。
近所の人が避難していないと、動きにくいのですが
よく分かります。ただ、誰も動かない状況で全員が様子を見るという展開が、被害を大きくしてきました。逆に、最初の一人が動くと、周りも動きます。声をかけながら出るだけでも、地域全体の行動が変わります。恥ずかしいことではありません。
情報はどこで確認できますか
気象庁のサイトで、洪水予報と危険度分布の両方が確認できます。国土交通省が運営する川の防災情報では、全国の観測所の水位が見られます。上流の観測所の水位を見ておくと、下流での上昇を先読みできます。大雨の予報が出たら、これらのページを開いておいてください。
まとめ
レベル4氾濫危険警報について、整理します。
川の水位に応じて発表される情報は四つあります。レベル2氾濫注意報、レベル3氾濫警報、レベル4氾濫危険警報、レベル5氾濫特別警報。それぞれ、警戒レベルの二、三、四、五に相当します。
レベル4氾濫危険警報が、避難完了の期限です。準備を始める段階ではありません。ここを過ぎると、次はすでに水があふれている段階になります。
水位の基準も四つあります。水防団待機水位、氾濫注意水位、避難判断水位、氾濫危険水位。「避難判断水位」という名前がついているのは上から二番目で、そこは高齢の方などが動きはじめる段階です。名前に惑わされないでください。
これらの情報は、国土交通省または都道府県が、気象庁と共同で発表します。雨の予測と川の特性、両方が必要だからです。
そして、洪水予報が出る川は限られています。家のそばの小さな川には、情報がないかもしれません。その場合は、洪水キキクルで自分の場所の色を見てください。紫になったら、レベル四相当です。
雨が降り続いているのに水位が下がったら、それは危険な兆候です。上流でせき止めか決壊が起きている可能性があります。
本流の水位が高いと、支流の水が流れ込めずに合流点の手前であふれます。支流のそばにお住まいなら、本流の水位も見てください。
最後にひとつ。この記事の情報を、雨の夜に読むことにならないよう願っています。四つの名前と、どれがレベル四かという一点だけ、いま覚えておいてください。そして家族に伝えてください。それだけで、その夜の判断が速くなります。
もうひとつ、この分野の情報について感じていることを書かせてください。
洪水の情報は、年々きめ細かくなっています。四段階の予報があり、水位が公開され、危険度が色で示され、ライブカメラまで見られます。ここまで揃っている国は、多くありません。
それでも、水害で亡くなる方が減りきらないのはなぜか。理由のひとつは、情報が増えたぶん、どれを見ればよいか分からなくなっていることだと思います。
注意報、警報、特別警報。氾濫注意、氾濫警戒、氾濫危険、氾濫発生。警戒レベル一から五。キキクルの色。水位の名前。全部を覚えるのは、専門家でなければ難しい。
だから私は、覚えることを絞ってお伝えしています。レベル四が期限。キキクルが紫なら動く。暗くなる前に決める。この三つだけです。
細かい違いは、後から知れば十分です。まず、この三つを家族で共有してください。知識の量ではなく、いざというときに思い出せるかどうかが、結果を分けます。
大雨・洪水の全体像
大雨と洪水の全体像は大雨・洪水の完全ガイドにまとめました。水は三方向から来ます。川からあふれる外水氾濫、排水が追いつかない内水氾濫、そして高潮。「川から離れているから安全」は成り立ちません。本流の水位で支流があふれるバックウォーター現象や、浸水3メートルで垂直避難が成り立たなくなる理由も扱っています。



