【この記事の要約】
住宅火災の出火原因は、こんろが1位、次いで電気機器、たばこ、配線器具と続きます。電気機器と配線器具を合わせると、電気に関わる火災が上位を占めていることになります。そして電気火災には、他の原因にない性質があります。使っていないときにも起きるということです。差しっぱなしのプラグにほこりがたまり、湿気を吸って発火する。これがトラッキング現象です。冷蔵庫の裏、洗濯機の裏、ベッドの脇。ふだん目にしない場所ほど危険が育ちます。この記事では、電気火災が起きる仕組みと、今日できる点検、そして冬に増える暖房器具とリチウムイオン電池の扱いをまとめます。
火事の原因と聞いて、多くの方が思い浮かべるのはたばこやこんろだと思います。
実際、それは正しい。ただ、そこに並ぶもうひとつの原因が見落とされています。
電気です。
結論|電気火災は、使っていなくても起きます
先に、この記事でいちばん伝えたいことを書きます。
たばこもこんろも、人がその場で何かをしているときに火が出ます。だから、注意すれば防げます。消し忘れないこと、離れないこと。
電気火災は違います。
誰もいない部屋で、何もしていないのに火が出ます。差しっぱなしのプラグが、何年もかけて危険を育てているからです。
だから対策も違います。気をつけるのではなく、点検するしかありません。
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数字で見る、出火の原因
総務省消防庁の統計を見ます。
令和5年中の出火件数は3万8,672件。原因の内訳では、たばこが3,498件で最多、次いでたき火が3,473件、こんろが2,838件と続きます。
ただし、これは林野火災なども含めた全火災の数字です。
住宅火災に限ると、順番が変わります
住宅火災にかぎると、こんろが1位。そして2位が電気機器、3位がたばこ、4位が配線器具です。
ここに注目してください。2位と4位が、どちらも電気に関わるものです。
電気機器とは、家電やその内部で起きる出火。配線器具とは、コンセント、プラグ、延長コードといった配線まわりです。この二つを合わせると、住宅火災のかなりの部分を占めることになります。
なお、こんろの火災は全火災の7.3%を占め、そのうち「放置する、忘れる」が1,169件と最も多くなっています。ガスこんろによるものが2,396件です。
トラッキング現象とは何か
電気火災のなかで、もっとも知られていない、そしてもっとも防ぎやすいのがこれです。
ほこりと湿気で、火が出ます
仕組みを順に説明します。
一、プラグを長期間差したままにする。コンセントとプラグのあいだに、わずかな隙間ができます。
二、そこにほこりがたまる。掃除機をかけても、この隙間には届きません。
三、ほこりが湿気を吸う。梅雨時や、水回りの近くではとくに起こりやすくなります。
四、微小な放電が始まる。湿ったほこりを通じて、プラグの二本の金属のあいだにわずかな電流が流れます。
五、放電が繰り返され、絶縁体が炭化する。電気の通り道ができていきます。
六、発火する。
この過程に、人の操作はいっさい関わりません。スイッチが入っていなくても、プラグが差さっていれば起こります。
危ないのは、見えない場所です
この現象が起きやすい場所には、共通点があります。ふだん目にしないこと。そして動かさないことです。
| 場所 | なぜ危険か |
|---|---|
| 冷蔵庫の裏 | 何年も動かさない。ほこりがたまり放題になる |
| 洗濯機の裏 | ほこりに加えて、湿気が多い。条件が二つそろう |
| テレビ台の裏 | 配線が集中し、抜き差ししない |
| ベッドや家具の裏 | 目に入らず、掃除が届かない |
| 水槽や加湿器の近く | 常に湿度が高い |
| キッチンの足元 | 油を含んだほこりがつきやすい |
逆に言えば、よく抜き差しするプラグでは起こりにくいということです。掃除機やドライヤーのプラグで火が出たという話を聞かないのは、そのためです。
配線の扱いで、やってはいけないこと
コードそのものが原因になることもあります。
束ねたまま使う
延長コードを、巻いたまま使っていませんか。
コードには電流が流れると熱が発生します。伸ばしていれば逃げていく熱が、束ねていると内側にこもります。被覆が溶け、発火につながります。
とくに、消費電力の大きい家電で使うときは危険です。
踏む、挟む、家具の下敷きにする
コードの内部は、細い銅線の束です。踏まれたり折れ曲がったりを繰り返すと、少しずつ断線していきます。
断線しかけた部分は抵抗が大きくなり、そこで発熱します。外から見て無傷でも、内部で進行します。
ドアの隙間を通す、カーペットの下に敷く、家具の脚で踏む。どれも避けてください。
たこ足配線で、容量を超える
延長コードやテーブルタップには、使える電力の上限が書かれています。多くは1500ワットです。
問題は、消費電力の大きい家電を重ねたときです。電子レンジ、電気ケトル、ドライヤー、暖房器具。これらは単体で1000ワットを超えることがあります。
二つ挿しただけで上限を超えることがあります。そのとき、コードは発熱します。
古いものを使い続ける
延長コードやテーブルタップにも寿命があります。目安として3年から5年程度とされることが多く、それを過ぎたものは内部で劣化が進んでいる可能性があります。
差し込みがゆるくなった、変色している、熱を持つ。こうした変化があれば、迷わず交換してください。
冬に増える危険
電気火災は、寒い季節に増えます。暖房器具を使うからです。
電気ストーブは、火が見えないぶん油断されます
石油ストーブと違って炎が出ないため、安全だと思われがちです。
しかし発熱体は高温になります。洗濯物、カーテン、布団、衣類。触れれば燃えます。
とくに危ないのが、就寝中です。寝返りで布団がずれ、ストーブに触れる。この形の火災が起きています。
寝るときは消してください。タイマーで切れる設定にするか、消してから寝る。この一手だけで、多くが防げます。
電気毛布とこたつ
内部にヒーター線が通っています。折り曲げたまま長期間保管すると、線が断線しかけます。
季節の初めに出したら、広げて、焦げや変色がないかを見てください。異臭がしたら使わないでください。
地震のあとの、通電火災
これは別の形の電気火災です。
停電のあと電気が復旧したとき、倒れた電気ストーブが可燃物に触れたまま通電する。あるいは水につかった家電が内部で短絡して発火する。
誰もいない部屋で火が出ます。
防ぎ方は決まっています。避難するときは、時間があればブレーカーを落とす。停電中は、電気ストーブなどのプラグを抜いておく。手順は停電復旧後にやること|通電火災を防ぐブレーカー操作の順番にまとめました。
リチウムイオン電池という新しい火種
近年、増えているのがこの形です。
モバイルバッテリー、ポータブル電源、電動アシスト自転車、掃除機、電子たばこ。身のまわりのほとんどの充電式機器に入っています。
いちど発火すると、消えにくい
リチウムイオン電池の発火には、厄介な性質があります。内部で連鎖的に反応が進むため、水をかけても止まりにくいのです。
そして、激しく燃え、有毒なガスが出ます。
危ないのは、この四つ
一、強い衝撃を与える。落とした、ぶつけた、圧迫した。外から見て無傷でも、内部が損傷していることがあります。
二、膨らんでいるのに使い続ける。これは内部でガスが発生しているしるしです。膨らんだら、ただちに使用をやめてください。
三、高温の場所に置く。真夏の車内、暖房器具のそば、直射日光の当たる窓辺。
四、認証のない安価な製品を使う。保護回路が省かれている場合があります。
防災用品としての注意
ここに、ひとつ矛盾があります。
防災のために備えたモバイルバッテリーが、火種になり得るということです。
だから、次の二つを守ってください。半年に一度は状態を確認し、充電しておくこと。そして膨らんでいたら、迷わず処分すること。
処分は、自治体の指示に従ってください。普通ごみに混ぜると、収集車やごみ処理施設で火災が起きます。実際に、これが原因の火災が各地で発生しています。
選び方は防災用モバイルバッテリーの選び方とポータブル電源の選び方にまとめました。
今日できる点検
電気火災は、点検でしか防げません。そして点検は、30分あればできます。
順番に見てください
一、冷蔵庫と洗濯機の裏。動かせるなら動かして、プラグを抜き、乾いた布でほこりを拭いてください。濡れた布は使わないでください。
二、テレビ台と、家具の裏の配線。ほこりの塊がないか。コードが家具で踏まれていないか。
三、延長コードとテーブルタップ。変色、ひび、差し込みのゆるみ。触って熱を持っていたら、すぐ抜いてください。
四、束ねたまま使っているコードを、伸ばす。
五、使っていない機器のプラグを抜く。何年も差しっぱなしのものが、必ずいくつか見つかります。
六、モバイルバッテリーが膨らんでいないか。
あわせて確認したいもの
住宅用火災警報器です。設置は義務化されていますが、電池切れや、本体そのものの寿命が見落とされがちです。
本体の交換の目安はおおむね10年とされています。設置してから10年以上経っているなら、ボタンを押して作動を確かめてください。
詳しくは火事から身を守る方法|初期消火の限界・煙からの逃げ方・住宅用火災警報器の交換時期にまとめています。
点検した日を、記録してください
点検は、やったかどうかを忘れます。だから記録が要ります。
方法は何でも構いません。カレンダーに丸をつける。スマートフォンのメモに日付を残す。火災警報器の本体に、油性ペンで点検日を書いてしまうのがいちばん確実です。
そして、次にやる日を決めてしまってください。年に2回。防災の日と、暖房を出す秋。この2回で十分です。
引っ越したときは、必ず確認を
新しい住まいでは、前の住人がどう使っていたか分かりません。
火災警報器がついているか。ついているなら、いつ設置されたものか。本体に製造年が書かれていることが多いので、確認してください。
賃貸の場合、設置の義務は原則として所有者側にあります。ただし作動しないまま放置されていることがあります。入居時にボタンを押して確かめ、鳴らなければ管理会社へ連絡してください。
コンセントの数が足りない家は、危険が増えます
古い住宅ほど、コンセントの数が少なく作られています。その結果、延長コードとたこ足配線に頼ることになります。
これは、住んでいる人の不注意ではなく、住まいの構造の問題です。使う家電の数が、建てられた当時の想定を超えているだけです。
対策としては、消費電力の大きい家電は、壁のコンセントから直接とることです。電子レンジ、電気ケトル、暖房器具。これらを延長コードで使わないだけで、危険はかなり減ります。
それでも火が出たら
電気火災には、消し方に固有の注意があります。
まず、電気を止める
可能なら、ブレーカーを落としてください。電気が流れ続けているかぎり、火は供給を受け続けます。
水をかけないでください
これが最大の注意点です。
通電したまま水をかけると、感電します。水は電気を通します。消そうとした人が倒れれば、被害は倍になります。
使うなら電気火災に対応した消火器です。多くの住宅用消火器は対応していますが、表示を確認しておいてください。
消せる範囲を、超えないでください
初期消火が可能なのは、炎が天井に届く前までと言われます。
それを超えたら、消火は諦めてください。やることは三つです。逃げる、知らせる、119番。
逃げ方と煙への対処は火事から身を守る方法に、有毒ガスについては災害時の一酸化炭素中毒にまとめました。
火災警報器を、どこに何台つけるか
電気火災の怖さは、気づいたときには手遅れになりやすいことです。誰も見ていない場所で始まるからです。
だから、機械に気づかせる必要があります。
設置は義務です
住宅用火災警報器の設置は、すべての住宅で義務づけられています。新築も既存の住宅も対象です。
ただし、義務なのは設置であって、維持ではありません。ここに落とし穴があります。つけたきり、10年以上放置されている家がたくさんあります。
優先順位は、寝室から
設置が必要な場所は、市町村の条例で定められています。共通しているのは次の考え方です。
一、寝室。これが最優先です。理由は単純で、寝ているあいだは煙に気づけないからです。火災で亡くなる方の多くが逃げ遅れであり、その多くが就寝中に起きています。
二、階段。2階以上に寝室がある場合、その階の階段にも必要です。煙は階段を通って上に昇ります。階段が煙で埋まれば、降りられなくなります。
三、台所。条例で義務づけている市町村があります。義務でなくても、つける価値があります。
煙式と熱式の違い
二つの種類があります。
煙式は、煙を感知します。火災の初期に反応するため、住宅では基本的にこちらを使います。
熱式は、温度の上昇を感知します。煙や湯気が多く出る台所など、煙式では誤作動しやすい場所に向いています。
電気火災には、煙式が有効です。炎が上がる前に、被覆が焦げる段階で煙が出るからです。
10年経ったら、本体を替えてください
ここが、いちばん見落とされます。
電池を交換すれば使い続けられる、と思われがちです。しかし本体そのものに寿命があり、交換の目安はおおむね10年とされています。
内部の感知部分が劣化し、いざというときに反応しないことがあります。
確かめ方は簡単です。本体のボタンを押すか、ひもを引くと、点検の音が鳴ります。鳴らなければ、電池切れか本体の寿命です。
設置した年を、本体に書いておいてください。油性ペンで日付を書くだけです。10年後の自分が助かります。
消火器と、初期消火の限界
消せるかどうかの判断には、はっきりした線があります。
天井に届いたら、諦めてください
初期消火が可能なのは、炎が天井に届く前までとされています。
そこを超えたら、消火は無理です。やることは三つ。逃げる、周囲に知らせる、119番。この順です。
財産を守ろうとして命を失う。これが、火災でくり返されてきたことです。
消火器の使い方は、三動作です
使ったことがない方がほとんどだと思います。手順は単純です。
一、黄色い安全ピンを引き抜く。
二、ホースを外して、火元に向ける。炎ではなく、燃えているものの根元に向けます。
三、レバーを強く握る。
放射できる時間は、住宅用でおおむね15秒前後です。思ったより短いと考えてください。だから、迷っている時間はありません。
そして、必ず背中側に逃げ道を確保してから使ってください。火元と出口のあいだに立つと、退路を失います。
電気火災に対応しているか、確認を
消火器には適応する火災の種類が表示されています。普通火災、油火災、電気火災の三つです。
住宅用の多くは三つとも対応していますが、表示を一度確認しておいてください。
そして、消火器にも使用期限があります。住宅用はおおむね5年程度が目安です。古い消火器は、内部の腐食で破裂した事故も起きています。
もらい火では、賠償されないことがあります
ここは、知らない方が多い点です。
失火責任法という法律
日本には「失火ノ責任ニ関スル法律」という明治時代からの法律があります。内容はこうです。
火事を出した人に重大な過失がないかぎり、損害賠償の責任を負わない。
つまり、隣の家から出た火で自分の家が焼けても、相手に賠償を求められないことがあります。
木造家屋が密集していた時代に、失火者の負担が過大になるのを避けるために作られた法律だとされています。
だから、自分の火災保険が要ります
この法律があるため、自分の家を守るのは、自分が入っている火災保険だけという状況が生まれます。
そして賃貸の場合は、もうひとつあります。借家人賠償責任保険です。自分の過失で借りている部屋を焼いてしまった場合、大家さんへの賠償が必要になります。
賃貸での責任の範囲は賃貸住宅で災害が起きたときの原状回復義務に、保険全般は地震保険とは?火災保険との違いにまとめました。
なお、地震が原因の火災は、火災保険では補償されません。地震保険の領域になります。ここも間違えやすい点です。
集合住宅で気をつけること
マンションやアパートには、戸建てと違う事情があります。
逃げ道が限られます
階段が煙で埋まれば、そこで終わりです。ベランダの避難用の仕切り板と、避難はしごの位置を確認しておいてください。
仕切り板は蹴破れる構造になっていますが、前に物を置いていると使えません。物置やエアコンの室外機で塞いでいる部屋を、よく見かけます。
共用部に物を置かない
廊下や階段は、避難経路です。自転車や段ボールを置くと、逃げるときの障害になり、燃えるものが増えます。
上の階からの水にも備える
消火活動が行われれば、大量の水が使われます。火が出たのが上の階でも、下の階が水浸しになります。
家財の補償があるかどうか、契約を確認しておいてください。
季節ごとに、増える原因が変わります
| 時期 | 増える原因 | やること |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | たき火、枯れ草への引火 | 風の強い日に火を使わない |
| 梅雨(6〜7月) | トラッキング現象 | 湿気が上がる前にプラグのほこりを取る |
| 夏(7〜9月) | リチウムイオン電池、エアコンの配線 | 高温の場所に電池を置かない |
| 秋(10〜11月) | 暖房器具の出し始め | 出したら、コードの傷みを確認してから使う |
| 冬(12〜2月) | 電気ストーブ、電気毛布、こたつ | 寝るときは消す。就寝中の火災が多い |
秋の点検が、いちばん効きます。暖房器具をしまっていた期間に、ほこりがたまり、コードが折れ曲がったままになっているからです。
毎年11月には、秋季全国火災予防運動が行われます。この時期を、家の点検日にあててください。
子どもと高齢の方がいる家庭で
お子さんには、触らせないことより教えること
コンセントに物を差し込む事故が起きています。カバーで物理的に防ぐことが第一ですが、年齢が上がれば「なぜ危ないか」を伝えるほうが確実になります。
お子さんが留守番をする機会があるなら、火が出たら消そうとせず、外に出て大人を呼ぶと決めておいてください。子どもが留守番中に地震が起きたらもあわせてご覧ください。
高齢の方は、逃げ遅れやすい
火災で亡くなる方は、高齢の方に偏っています。気づくのが遅れ、動くのにも時間がかかるためです。
できることは二つあります。警報器を確実に働く状態にしておくこと。そして寝室から玄関までの経路に、物を置かないこと。
離れて暮らしているなら、帰省したときに警報器のボタンを押してみてください。これだけで確認になります。
なぜ、火事では煙で亡くなるのか
火災で亡くなる原因は、焼死だけではありません。煙による窒息と、有毒ガスの吸入が大きな割合を占めます。
煙は、驚くほど速く上がります
煙が上へ広がる速さは、人が階段を駆け上がるより速いとされています。横に広がる速さは人の歩行程度ですが、縦方向はまったく違います。
つまり、2階で火が出たら、3階へ逃げるという判断は成り立ちません。煙が先に着きます。逃げるなら下です。
一酸化炭素だけではありません
現代の住宅には、化学繊維のカーペット、ウレタンのソファ、塩化ビニルの内装材が使われています。
これらが燃えると、一酸化炭素に加えて、シアン化水素などの有毒なガスが発生します。数回吸っただけで意識を失うことがあります。
だから「煙を吸わない」ことが、消火より優先されます。
姿勢を低く、口を覆って
煙は上にたまるため、床に近いほど空気が残っています。姿勢を低くして進んでください。
口と鼻は、ハンカチやタオルで覆います。濡らせるなら濡らしたほうが有効です。ただし、濡らすために時間をかけないでください。
そして息を止めて走り抜けるのは、距離が短い場合だけにしてください。途中で息が続かなくなれば、その場で大量に吸うことになります。
詳しい逃げ方は火事から身を守る方法に、有毒ガスの性質は災害時の一酸化炭素中毒にまとめました。
電気を止める練習をしてください
電気火災では、ブレーカーを落とすことが最初の対処になります。
場所を知っていますか
これが、意外に答えられません。玄関の上、洗面所、廊下の天井近く。家によって違います。
暗闇のなかで、手探りで届く場所かどうか。一度、確かめてみてください。踏み台が必要なら、その踏み台がどこにあるかも含めて。
落とす順番があります
復旧のときの順番は決まっています。アンペアブレーカー、漏電ブレーカー、そして安全ブレーカーの順で入れます。落とすときは、その逆です。
詳しい手順は停電復旧後にやること|通電火災を防ぐブレーカー操作の順番にまとめました。
家族全員が知っている状態に
火が出たとき、そこにいるのが自分とはかぎりません。家族の誰が家にいても、ブレーカーを落とせる状態にしておいてください。
これは訓練の題材にもなります。防災訓練の種類とやり方に、家庭で5分からできる方法をまとめました。
そろえるもの|電気火災への備え
| もの | 選ぶ基準 | 詳しく |
|---|---|---|
| 住宅用火災警報器 | 本体の交換目安はおおむね10年。電池だけでなく本体の寿命がある。寝室と階段が優先 | 火事から身を守る方法 |
| 住宅用消火器 | 電気火災に対応しているか表示を確認。使用期限があります | 同上 |
| ほこり防止のコンセントカバー | 差しっぱなしのプラグに。隙間をふさぐ形状のもの | — |
| 新しい電源タップ | 3年から5年で交換。上限のワット数の表示があるものを | — |
| 感震ブレーカー | 揺れを感知して自動で電気を止めます。通電火災の対策として効果が大きい | 停電復旧後にやること |
| モバイルバッテリー | 認証のある製品を。半年に一度、状態を確認して充電する | モバイルバッテリーの選び方 |
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップにまとめました。
よくある質問
トラッキング現象とは何ですか
コンセントとプラグの隙間にたまったほこりが湿気を吸い、微小な放電を繰り返して発火する現象です。人が操作していなくても起こり、スイッチが入っていなくてもプラグが差さっていれば発生します。
どこのコンセントが危ないですか
ふだん目にしない場所です。冷蔵庫の裏、洗濯機の裏、テレビ台の裏、ベッドや家具の裏。とくに洗濯機の裏は、ほこりと湿気の条件が両方そろいます。
延長コードは束ねて使ってもよいですか
いけません。電流が流れると熱が発生し、束ねていると内側にこもります。被覆が溶けて発火につながります。伸ばして使ってください。
たこ足配線はどこまで大丈夫ですか
差し口の数ではなく、合計のワット数で判断してください。多くの電源タップの上限は1500ワットです。電子レンジやドライヤー、暖房器具は単体で1000ワットを超えることがあり、二つ挿すだけで超えます。
電源タップに寿命はありますか
あります。目安は3年から5年程度とされます。差し込みがゆるい、変色している、熱を持つ。こうした変化があれば交換してください。
電気ストーブは安全ではないのですか
炎は出ませんが、発熱体は高温になります。洗濯物やカーテン、布団が触れれば燃えます。就寝中の火災が起きているため、寝るときは消してください。
モバイルバッテリーが膨らんでいます
ただちに使用をやめてください。内部でガスが発生しているしるしです。普通ごみに混ぜず、自治体の指示に従って処分してください。収集車やごみ処理施設での火災の原因になっています。
電気火災に水をかけてもよいですか
いけません。通電したまま水をかけると感電します。まずブレーカーを落とし、電気火災に対応した消火器を使ってください。
住宅用火災警報器は、いつ交換しますか
本体の交換の目安は、おおむね10年です。電池を替えれば済むと思われがちですが、本体そのものに寿命があります。設置から10年経っていたら交換を検討してください。
感震ブレーカーは必要ですか
通電火災の対策として効果があります。揺れを感知して自動的に電気を止める装置です。とくに、避難時にブレーカーを落とす余裕がない場合に働きます。
点検はどのくらいの頻度でやればよいですか
年に2回で十分です。防災の日と、暖房を出す秋。この2回を点検日にすると忘れにくくなります。
まとめ
要点を整理します。
住宅火災の原因は、こんろが1位、次いで電気機器、たばこ、配線器具です。2位と4位が、どちらも電気に関わるものです。
電気火災は、使っていなくても起きます。差しっぱなしのプラグにほこりがたまり、湿気を吸って発火する。これがトラッキング現象です。
危ないのは、見えない場所です。冷蔵庫の裏、洗濯機の裏、家具の裏。掃除が届かず、何年も動かさない場所ほど危険が育ちます。
コードは、束ねない、踏まない、古いまま使わない。上限のワット数を超えないこと。
冬は暖房器具に注意してください。電気ストーブは炎が出ないぶん油断されます。寝るときは消す。それだけで多くが防げます。
水はかけないでください。まずブレーカー、そして電気火災対応の消火器です。
最後に、この記事でいちばん伝えたかったことを書きます。
たばこもこんろも、注意すれば防げます。しかし電気火災は、注意では防げません。誰も見ていない場所で、何年もかけて育つからです。
防げるのは、点検だけです。そして点検は、今日30分あればできます。
冷蔵庫の裏を、のぞいてみてください。
火災報知設備を手がける企業については能美防災とは?にまとめました。
保険は、見直せていますか
火災保険は2022年10月から最長5年に短縮され、更新の時期を迎える人が増えています。2024年10月には参考純率が全国平均で過去最大の13%引き上げとなり、水災料率は1等地から5等地の5区分に細分化されました。
確認すべきは三つ。水災補償を外していないか、家財の契約があるか、免責金額はいくらか。「保険に入っていたのに出なかった」の多くは、このどれかが原因です。手順は火災保険の見直し方にまとめました。


