防災訓練の種類とやり方|家庭で5分からできる訓練と形骸化させない工夫

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【この記事の要約】
防災訓練には大きく分けて避難訓練、初期消火訓練、救出救護訓練、通報訓練、避難所運営訓練、図上訓練などがあります。ただし種類を覚えることより大切なのは、自分に必要な訓練を選ぶことです。家庭なら、家具の下敷きにならない動線の確認と、家族の安否確認の練習。学校なら引き渡し訓練。職場なら帰宅困難への対応です。訓練でよくある失敗は、決められた手順をなぞるだけで終わることです。訓練の価値は、うまくいかない点を見つけることにあります。この記事では、訓練の種類と目的、家庭で15分からできる進め方、学校と職場それぞれの押さえどころ、そして形骸化させないための工夫を整理します。

目次

結論:訓練は「できないこと」を見つけるために行う

先に結論をお伝えします。防災訓練の目的は、手順を正しくこなすことではありません。

うまくいかない点を見つけることです。ここを取り違えると、訓練は形だけのものになります。

たとえば避難訓練で、全員が整然と避難できたとします。一見すると成功です。しかし、そこから得られる学びはほとんどありません。

一方、「非常用持ち出し袋が重くて階段を降りられなかった」「電話がつながらず家族と連絡が取れなかった」という結果が出たなら、それは大きな収穫です。本番の前に問題が見つかったのですから。

訓練は、失敗してよい唯一の機会です。この前提で読み進めてください。

防災訓練の主な種類

まず全体像を整理します。訓練にはいくつかの型があり、目的が異なります。

種類 内容 主な実施主体
避難訓練 安全な場所へ移動する手順を確認する 学校、職場、地域、家庭
初期消火訓練 消火器や屋内消火栓の使い方を練習する 職場、地域、消防署
通報訓練 119番へ的確に情報を伝える練習をする 職場、学校
救出救護訓練 下敷きになった人の救出、応急手当を学ぶ 地域、自主防災組織
避難所運営訓練 受付、居住区割り、物資配分などを模擬的に行う 自治体、自主防災組織
図上訓練 地図を使って机上で被害と対応を想定する 自治体、企業、地域
引き渡し訓練 保護者が児童生徒を引き取る手順を確認する 学校、幼稚園、保育園
安否確認訓練 離れた家族や社員の無事を確認する 家庭、企業
宿泊訓練 避難所や自宅で一晩過ごしてみる 地域、家庭

この中で、多くの人が経験しているのは避難訓練でしょう。学校で毎年行われるためです。

しかし実際の災害で問われるのは、むしろ安否確認や在宅避難の力です。訓練の機会が少ない領域ほど、備えが手薄になります。

訓練は3つの層で考える

整理の仕方として、私は次の3層で考えることをおすすめしています。

守る対象 代表的な訓練
自助 自分と家族 身を守る動作、避難経路の確認、安否確認
共助 近所や地域 救出救護、初期消火、避難所運営
公助 行政による支援 総合防災訓練、災害対策本部の運営

優先すべきは自助です。自分が無事でなければ、人を助けることもできません。阪神・淡路大震災では、生き埋めになった人の多くが家族や近隣住民によって救出されたことが知られています。公助が届くまでには時間がかかるという前提が要ります。

地域の訓練に参加する前に、まず家庭でできる訓練から始めてください。

家庭でできる防災訓練

ここが本題です。家庭での訓練は、15分から始められます。

訓練1:身を守る動作をやってみる

地震が起きた瞬間、何をするか。頭で分かっていても、体は動きません。

だから、実際にやってみます。家族に「地震です」と声をかけてもらい、その場で身を守る動作を取ってください。

  • 丈夫な机の下に入り、脚をしっかり握る
  • 机がなければ、頭を守って低い姿勢を取る
  • 窓やガラスから離れる
  • 倒れそうな家具の近くから離れる

やってみると、いくつか気づくことがあります。机の下に物が詰まっていて入れない。ダイニングテーブルが軽すぎて頼りにならない。寝室には隠れる場所がない。

これらは、やってみないと分かりません。所要時間は5分です。

訓練2:真っ暗な中で移動する

停電を想定した訓練です。夜、部屋の明かりを消して、玄関まで移動してみてください。

懐中電灯がどこにあるか、すぐ手に取れるか。廊下に物が置かれていないか。階段は安全に降りられるか。

実際の地震では、床にガラスや落下物が散乱します。靴やスリッパが枕元にあるかどうかも確認してください。

訓練3:安否確認をやってみる

災害用伝言ダイヤル171は、毎月1日と15日などに体験利用ができます。防災週間や防災とボランティア週間にも体験期間が設けられます。

家族で実際に録音と再生をやってみてください。手順が思ったより多いことに気づくはずです。

携帯電話会社の災害用伝言板も、同様に体験できます。あわせて試しておくと安心です。

詳しい使い方は171の使い方を完全解説|災害用伝言ダイヤルで家族の安否を確認する方法にまとめています。

訓練4:非常持ち出し袋を背負って歩く

これは効果が大きい訓練です。詰めた袋を実際に背負い、家の中や近所を歩いてみてください。

重すぎて持てない、肩が痛い、階段を降りられない。こうした問題は、背負って初めて分かります。

目安は、成人男性で15キロ以内、女性で10キロ以内です。持ち出せない荷物は、ないのと同じだと考えてください。

訓練5:避難所まで歩く

地図で調べるだけでは足りません。実際に歩いてください。

途中にブロック塀があるか。アンダーパスを通るか。川を渡るか。夜は街灯があるか。これらは歩かないと分かりません。

できれば昼と夜の両方、そして雨の日にも歩いてみると、見え方が変わります。

訓練6:一晩、電気を使わずに過ごす

やや本格的な訓練です。週末の夜、ブレーカーを落として過ごしてみてください。

明かりは足りるか。スマートフォンの充電はもつか。冷蔵庫の中身はどうするか。食事は作れるか。トイレは流せるか。

一晩やってみると、備えの穴が一気に見えます。家族で取り組めば、共通の理解も生まれます。

なお、医療機器を使っている方がいる場合や、真夏・真冬は避けてください。無理のない範囲で行うことが前提です。

災害の種類ごとに訓練の中身が変わります

ひとくちに防災訓練と言っても、想定する災害によって取るべき行動はまったく違います。ここを混同すると、危険な行動を練習してしまいます。

災害 訓練で確認すること 避けるべき行動
地震 まず身を守る。揺れが収まってから移動する 揺れている最中に外へ飛び出す
津波 とにかく高い場所へ。距離より高さ 荷物を取りに戻る
洪水 浸水前に移動する。無理なら上階へ 冠水した道を歩く
土砂災害 斜面から離れる。早い段階で避難 雨が強まってから移動する
火災 低い姿勢で煙を避けて逃げる 煙の中を立って歩く
台風 接近前に移動を終える 暴風域で外出する

特に注意していただきたいのが、地震と火災の違いです。

地震の訓練では「揺れが収まるまで動かない」と教わります。しかし火災では、一刻も早くその場を離れる必要があります。正反対です。

訓練のときは、どの災害を想定しているかを最初に明確にしてください。曖昧なまま実施すると、行動の理由が身につきません。

複合災害という視点

実際の災害では、複数が同時に起きます。地震のあとに火災が発生し、津波が来る。台風で停電し、断水も重なる。

訓練でも、この視点を入れると質が上がります。「地震で揺れが収まった。次に何を確認するか」という形で、段階を追って考えてみてください。

地震のあとに確認すべきは、火の元、家族の安否、建物の損傷、避難の要否です。この順番を体で覚えておくと、本番で迷いません。

訓練を形だけにしないための工夫

訓練が形骸化する原因は、いくつかの共通点があります。避け方を挙げます。

抜き打ちで行う

日時を事前に決めた訓練は、準備された状態で実施されます。それでは実態が分かりません。

家庭であれば、家族に予告せず「地震です」と声をかけてみてください。反応の差が見えます。

職場や学校では、安全面の配慮が必要なため完全な抜き打ちは難しいでしょう。それでも、時間帯を伏せるだけで違います。

あえて悪い条件を設定する

訓練はたいてい、晴れた日の昼間に行われます。しかし災害がその時間に起きるとは限りません。

夜間だったら。雨だったら。家族の誰かが不在だったら。エレベーターが止まっていたら。こうした条件を加えると、訓練の質が上がります。

役割を固定しない

毎回同じ人が同じ役をやると、その人が不在のときに動けなくなります。

家庭でも同じです。いつも父親が非常持ち出し袋を持つ想定にしていると、父親が出張中の地震に対応できません。

誰が欠けても回るように、役割を入れ替えて試してください。

終わったら必ず振り返る

訓練の価値は、この振り返りにあると言っても過言ではありません。

「うまくいかなかったこと」を3つ挙げてください。そして、そのうち1つだけでも改善してください。

すべてを直そうとすると続きません。1回の訓練で1つ改善すれば十分です。

学校での防災訓練

お子さんがいるご家庭では、学校の訓練にも関わりがあります。

引き渡し訓練には参加してください

引き渡し訓練は、災害時に保護者が学校まで子どもを迎えに行く手順を確認するものです。

この訓練は、できるだけ参加していただきたいと思っています。理由は3つあります。

一つ目は、経路の確認です。職場から学校まで、徒歩でどれくらいかかるかを知っておく必要があります。公共交通機関が止まる前提です。

二つ目は、手続きの理解です。引き渡しには本人確認が伴います。誰が迎えに行けるか、代理人の登録は済んでいるかを確認しておいてください。

三つ目は、待機の想定です。保護者が到着するまで、子どもは学校で待ちます。何時間かかるかによって、必要な備えが変わります。

家庭で決めておくこと

  • 誰が迎えに行くか。第1候補と第2候補を決める
  • 連絡が取れないとき、子どもはどう行動するか
  • 学校から自宅までの安全な経路
  • 兄弟が別の学校にいる場合、どちらを先に迎えるか

特に最後の項目は、共働きのご家庭で問題になりやすい点です。事前に決めておかないと、当日に迷います。

子どもへの伝え方

訓練を怖い体験にしないでください。恐怖を植えつけると、いざというときに固まってしまいます。

「上手にできたね」と結果をほめるより、「机の下に入れたのはなぜ良かったと思う」と理由を聞くほうが記憶に残ります。

家に帰ってから「今日どんな訓練をしたの」と聞くだけでも復習になります。

職場での防災訓練

企業の防災訓練は、家庭とは目的が異なります。

帰宅困難への対応が中心になります

都市部では、大地震のあとにむやみに移動しないことが求められています。一斉に帰宅すると、道路が混雑し、救助活動の妨げになるためです。

そのため、職場にとどまる前提の備えが必要になります。訓練でも、この視点が欠かせません。

  • 社内に何日分の備蓄があるか
  • 従業員が滞在できるスペースがあるか
  • 安否確認システムが機能するか
  • 誰が指揮を取るか。責任者が不在の場合はどうするか
  • 取引先や顧客への連絡をどうするか

安否確認訓練は年に複数回

安否確認の仕組みは、導入しただけでは機能しません。従業員が使い方を覚えていなければ、回答率が上がらないためです。

年に1回ではなく、複数回実施することをおすすめします。回答率を測定し、低ければ原因を探ってください。

図上訓練という選択肢

全員を動かす訓練は、時間もコストもかかります。実施の頻度を上げにくいのが実情です。

その点、図上訓練は会議室で実施できます。地図と付箋があれば始められます。

被害の想定を示し、参加者がどう判断するかを議論する形式です。移動を伴わないため、短時間で実施できます。

実動訓練と図上訓練を組み合わせると、限られた時間で効果を上げられます。

配慮が必要な家族がいる場合の訓練

標準的な訓練の想定は、健康な大人が自力で動けることを前提にしています。しかし実際には、そうでない方が多くいます。

高齢の家族がいる場合

まず確認したいのが、移動にかかる時間です。避難所まで健康な大人で10分の距離が、30分以上かかることもあります。

訓練では、実際に一緒に歩いてみてください。途中に休める場所があるか、手すりのない階段はないかを確かめます。

そのうえで、避難を始めるタイミングを早めに設定してください。警戒レベル3の「高齢者等避難」は、まさにそのための情報です。

また、常備薬とお薬手帳を持ち出す手順も訓練に含めてください。置き場所を家族全員が知っていることが前提になります。

障害のある家族がいる場合

必要な支援は人によって大きく異なります。一般的な手順をそのまま当てはめることはできません。

市区町村には避難行動要支援者名簿という仕組みがあります。登録しておくと、地域の支援につながる場合があります。

まずは自治体の福祉担当課に相談し、個別避難計画の作成が可能かを確認してください。訓練も、その計画に沿って行うのが現実的です。

乳幼児がいる場合

抱っこやベビーカーでの移動は、想像以上に体力を使います。荷物も増えます。

訓練では、子どもを抱いた状態で非常持ち出し袋を背負えるかを確認してください。両立できないなら、荷物を減らすか、リュック型の抱っこ紐を検討する必要があります。

液体ミルクやおむつは代替が効きません。優先して持ち出す物として決めておいてください。

ペットがいる場合

環境省は、災害時のペットの扱いを原則として同行避難としています。ただし、避難所で人と同じ空間に入れるとは限りません。

訓練では、キャリーケースに入れる練習をしておいてください。普段から慣れていないと、緊急時に入ってくれません。

また、受け入れ可能な避難所かどうかを事前に確認しておく必要があります。自治体によって対応が異なります。

地域の防災訓練に参加する

自治体や自主防災組織が実施する訓練は、家庭では体験できない内容が含まれます。

特に価値が高い体験

体験 得られるもの
起震車 震度6強や7の揺れがどのようなものかを知る
煙体験ハウス 煙の中で視界が失われる状況を知る
消火器の実践 実際に噴射し、放射時間の短さを知る
応急手当 止血や搬送の方法を身につける
心肺蘇生とAED 胸骨圧迫の強さと、AEDの操作を覚える
簡易担架の作成 毛布と棒で人を運ぶ方法を知る

消火器の訓練で多くの人が驚くのが、放射時間の短さです。一般的な消火器は15秒程度で空になります。

この事実を知っているかどうかで、初期消火の判断が変わります。迷っている時間はないということです。

参加のきっかけがない場合

地域の訓練に参加したことがない方は多いと思います。町内会に入っていない、案内が来ない、といった事情もあるでしょう。

その場合は、市区町村の防災担当課や消防署に直接問い合わせてください。個人でも参加できる訓練やイベントが案内されます。

防災週間や防災とボランティア週間の時期は、特に機会が多くなります。

図上訓練のやり方

体を動かす訓練だけが訓練ではありません。机の上でできる図上訓練は、家庭でも取り入れられます。

準備するものは、住んでいる地域の地図と付箋、ペンだけです。ハザードマップを印刷したものが最適です。

進め方の例

  1. 災害の想定を決める(例:平日の午後2時に震度6強)
  2. そのとき家族がどこにいるかを地図に書き込む
  3. それぞれが自宅へ向かう経路を線で引く
  4. 途中の危険箇所に付箋を貼る
  5. 合流できない場合にどうするかを話し合う

この作業をやってみると、いくつも問題が見つかります。子どもの学校が川の向こう側にある。配偶者の職場から自宅まで徒歩5時間かかる。祖父母の家が土砂災害警戒区域にある。

移動を伴わないため、雨の日でも夜でもできます。所要時間は30分ほどです。

時間帯を変えて何度かやる

平日の昼、平日の夜、休日。この3パターンで想定すると、必要な備えが見えてきます。

平日の昼は家族がばらばらです。夜は全員が自宅にいる可能性が高くなります。休日は外出中かもしれません。

それぞれで答えが変わります。ひとつの想定だけで満足しないでください。

訓練で使う道具を確認しておく

訓練の機会に、道具が実際に使えるかも確かめてください。しまい込んだままの道具は、いざというとき動かないことがあります。

道具 確認すること
懐中電灯・ランタン 点灯するか。電池が液漏れしていないか
防災ラジオ 受信できるか。手回し充電が機能するか
モバイルバッテリー 実際に充電できるか。膨らんでいないか
カセットこんろ 点火するか。ボンベの製造年月は7年以内か
消火器 使用期限内か。圧力計の針が緑の範囲か
ヘルメット サイズが合うか。劣化していないか
笛(ホイッスル) すぐ手に取れる場所にあるか

特に見落とされやすいのが、防災ラジオと手回し充電です。半年も放置すると内蔵電池が劣化し、回しても充電できないことがあります。

笛も重要です。がれきの下敷きになったとき、声を出し続けるのは体力的に不可能です。笛があれば、少ない力で長く音を出せます。

訓練の頻度をどう決めるか

訓練は続けなければ意味がありません。ただし、頻繁すぎても負担になります。

私がおすすめしている目安は次のとおりです。

訓練 頻度の目安
身を守る動作 年2回。3月と9月
安否確認(171など) 年2回。体験利用日に合わせる
非常持ち出し袋を背負う 年2回。季節の入れ替え時
避難経路を歩く 年1回。引っ越したら必ず
電気を使わず一晩過ごす 年1回程度
地域の訓練に参加 年1回
救命講習の再受講 2〜3年に1回

防災の日と防災週間、そして防災とボランティア週間である1月中旬を軸にすると、自然と年2回のリズムが作れます。

訓練でよくある誤解

最後に、私が気になっている誤解をいくつか挙げます。

「訓練どおりに動けば助かる」わけではない

訓練は想定に基づいて作られます。しかし実際の災害は、想定どおりには起きません。

大切なのは、手順を覚えることではなく、判断の基準を身につけることです。「なぜこの行動を取るのか」を理解していれば、想定外の状況でも応用が効きます。

「防災訓練は年配の人がやるもの」ではない

地域の訓練は、参加者の年齢層が高いことが少なくありません。そのため、若い方が参加しづらい空気があるかもしれません。

しかし実際の災害では、体力のある世代が救助の中心になります。むしろ若い方にこそ参加していただきたいと思っています。

「一度やれば覚えている」わけではない

技能は使わなければ衰えます。特に胸骨圧迫やAEDの操作は、数年経つと手順があやふやになります。

知識は読めば戻りますが、体で覚えたことは繰り返さないと戻りません。だから定期的な訓練が必要なのです。

私が訓練で大切にしていること

私は北海道の札幌に住んでいます。2018年の胆振東部地震では、全道が停電するブラックアウトを経験しました。

あのとき感じたのは、訓練で想定していなかったことばかり起きるという事実です。

信号が消えた交差点をどう渡るか。レジが動かない店で何ができるか。情報が入らない中でどう判断するか。どれも、それまでの訓練では扱っていませんでした。

その経験から、私は訓練の目的を「答えを覚えること」から「考える癖をつけること」へ切り替えました。

手順書どおりに動く練習より、「もし停電したら」「もし家族が別々の場所にいたら」と問いを立てる習慣のほうが、実際には役に立ちます。

完璧を目指さない

訓練は、時間も手間もかかります。だからこそ、完璧を目指すと続きません。

今年は机の下に入る練習だけ。来年は避難経路を歩く。それでいいと私は考えています。

やらないことに比べれば、5分の訓練にも大きな価値があります。年に一度でも続けていれば、10年で10回の積み重ねになります。

もうひとつ意識しているのが、訓練を家族の会話のきっかけにすることです。訓練そのものより、その後に交わす「あのとき困ったね」という会話に意味があると感じています。

備えは、話題にのぼらなくなった時点で止まります。年に何回か思い出す仕組みとして、訓練を役立てていただければと思います。

よくある質問

Q. 防災訓練にはどんな種類がありますか

A. 避難訓練、初期消火訓練、通報訓練、救出救護訓練、避難所運営訓練、図上訓練、引き渡し訓練、安否確認訓練などがあります。ただし種類を覚えることより、自分に必要な訓練を選ぶことが大切です。

Q. 家庭ではどんな訓練から始めればよいですか

A. 身を守る動作の練習からです。家族に声をかけてもらい、その場で机の下に入るなどの動作を取ってみてください。5分で終わります。机の下に物が詰まっているなど、実際にやらないと分からない問題が見つかります。

Q. 訓練の頻度はどれくらいが適切ですか

A. 身を守る動作と安否確認は年2回、避難経路の確認は年1回が目安です。防災の日である9月1日と、防災とボランティア週間の1月中旬を軸にすると、自然なリズムが作れます。

Q. 訓練が形だけになってしまいます

A. 予告なしで実施する、夜間や雨天という悪い条件を設定する、役割を固定しない。この3つが有効です。そして必ず振り返り、うまくいかなかった点を1つだけ改善してください。

Q. 引き渡し訓練には参加すべきですか

A. 参加をおすすめします。職場から学校までの徒歩の所要時間、本人確認の手続き、代理人の登録状況を確認できます。本番で初めて手順を知るのでは、混乱を招きます。

Q. 消火器の訓練で知っておくべきことは何ですか

A. 放射時間の短さです。一般的な消火器は15秒程度で空になります。この事実を知っていると、迷っている時間がないと判断できます。天井まで火が回ったら消火をあきらめて避難する、という判断も重要です。

Q. 一人暮らしでも訓練は必要ですか

A. 必要です。むしろ、助けてくれる人が同居していない分、自分で動ける準備が重要になります。特に安否を知らせる相手を決め、その人との連絡方法を試しておいてください。

Q. 職場の訓練で何を重視すべきですか

A. 帰宅困難への対応です。都市部では災害時にむやみに移動しないことが求められます。職場にとどまる前提で、備蓄の量、滞在スペース、安否確認の仕組みを確認してください。

Q. 地域の訓練に参加したいのですが案内が来ません

A. 市区町村の防災担当課、または消防署に直接問い合わせてください。町内会に入っていなくても参加できる訓練やイベントがあります。防災週間の時期は特に機会が多くなります。

Q. 図上訓練は家庭でもできますか

A. できます。地図と付箋があれば始められます。災害の想定を決め、そのとき家族がどこにいるかを書き込み、自宅までの経路を線で引いてください。30分ほどで、川を渡る必要がある、徒歩5時間かかるといった問題が見えてきます。

Q. 高齢の家族がいる場合、何を変えるべきですか

A. 移動にかかる時間を実際に計ってみてください。健康な大人で10分の距離が30分以上かかることもあります。そのうえで、避難を始めるタイミングを早めに設定します。警戒レベル3の「高齢者等避難」が出た段階での行動が基本です。

Q. 訓練どおりに動けば助かりますか

A. 訓練は想定に基づくもので、実際の災害は想定どおりには起きません。手順を暗記するより、なぜその行動を取るのかという理由を理解しておいてください。理由が分かっていれば、想定外の状況でも応用できます。

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まとめ

防災訓練について、要点を整理します。

  • 訓練の目的は手順の再現ではなく、できないことを見つけること
  • 避難、初期消火、通報、救出救護、図上訓練など種類は多い
  • 自助・共助・公助の3層で考え、まず自助から始める
  • 家庭では身を守る動作の練習が最初の一歩。5分で終わる
  • 非常持ち出し袋は実際に背負って重さを確かめる
  • 避難経路は昼と夜の両方で歩いてみる
  • 形骸化を防ぐには、予告なし・悪条件・役割の入れ替えが有効
  • 終わったら必ず振り返り、1つだけ改善する
  • 学校の引き渡し訓練には参加し、迎えに行く人を決めておく
  • 消火器の放射時間は15秒程度。迷う時間はない

防災訓練と聞くと、大がかりなものを想像するかもしれません。しかし家庭でできることは、5分から始められます。

今日、家族に「地震です」と声をかけてみてください。それも立派な訓練です。そこで見つかった問題こそが、次に備えるべきことを教えてくれます。

そして、9月1日の防災の日と、8月30日から9月5日までの防災週間は、その絶好の機会です。全国で訓練やイベントが行われ、家庭でも取り組みやすい空気があります。

この時期を毎年の区切りとして使えば、訓練は意識せずとも習慣になっていきます。カレンダーに印をつけておくだけでも効果があります。今年の防災週間に、まず1つだけ実行してみてください。机の下に入る練習でも、非常持ち出し袋を背負うことでも構いません。

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この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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