【この記事の要約】
警察庁の統計では、令和六年に水難で亡くなった中学生以下は二十八人。そのうち十八人、六十四・三パーセントが河川でした。海の五人の三倍以上です。行為別では、水遊びが十五人で五十三・六パーセント。泳ぐつもりのない子どもが、川で亡くなっています。この記事では、川が海と決定的に違う五つの点を整理しました。流れがあること、川底が平らでないこと、水温が低いこと、上流の雨で増水すること、そして監視員がいないことです。あわせて、危険な地形の見分け方、堰の下がなぜ特別に危ないのか、流されたときに海とは違う姿勢をとる理由、そして川遊びの前に家族で決めておくことをまとめました。
結論からお伝えします。子どもにとって、川は海より危険です。
これは印象の話ではありません。統計がはっきり示しています。それなのに、多くの方の感覚は逆です。海は広くて深くて怖い、川は浅くて狭くて安心。この感覚と、実際の数字が食い違っています。
私は防災士として、夏になると水辺の相談を受けることがあります。「海は心配だから川にしました」という話を聞くことがありますが、そのたびに、少し立ち止まっていただきたいと思っています。川を選んだ時点で、リスクが下がったわけではありません。危険の種類が変わっただけです。
そして川の危険は、海より見えにくい。この記事では、その見えにくさの正体を順に説明していきます。
統計が示していること
まず、数字から入ります。警察庁が公表している「令和六年における水難の概況等」から引用します。
令和六年に水難で亡くなった方と行方不明の方は、全体で八百十六人でした。そのうち中学生以下は二十八人です。
| 場所 | 中学生以下の死者・行方不明者 | 構成比 |
|---|---|---|
| 河川 | 18人 | 64.3% |
| 海 | 5人 | 17.9% |
| 用水路 | 3人 | 10.7% |
| プール | 1人 | 3.6% |
| その他 | 1人 | 3.6% |
河川が六割を超え、海の三倍以上です。
興味深いのは、大人を含めた全体では結果が逆になることです。全体の八百十六人では、海が三百七十二人で四十五・六パーセント、河川が二百八十八人で三十五・三パーセント。海の方が多くなります。
つまり、大人は海で、子どもは川で亡くなっているということです。大人は釣りや作業で海に出ます。子どもは、家族と川に行きます。行動範囲の違いが、そのまま数字に出ています。
何をしていたかも見ておきます。中学生以下で亡くなった二十八人のうち、水遊び中が十五人で五十三・六パーセント。水泳中は三人です。泳ぐつもりのない子どもが、水辺で遊んでいて亡くなっています。
この点は重要です。「泳がせないから大丈夫」という判断が成り立たないことを意味しているからです。水難事故全体の統計については海難事故・水難事故はなぜ起きる?にまとめました。
川が海と違う五つの点
なぜ川で子どもが亡くなるのか。海との違いを、五つに整理します。
一、流れがある
最も基本的で、最も見落とされる点です。海にも流れはありますが、川では常に一方向へ水が動いています。
ここで多くの方が誤解しているのが、人が流れに耐えられる限界の低さです。
膝ほどの深さでも、流れが速ければ立っていられなくなります。水深と流速の組み合わせで決まるため、一概には言えませんが、腰の深さで流れがあれば、大人でも足をすくわれます。子どもなら、もっと浅い場所で同じことが起きます。
そして、一度足をすくわれると、そこからは泳ぐしかありません。「立てる深さ」と「安全な深さ」は違います。
二、川底が平らでない
砂浜は、沖へ向かってなだらかに深くなります。ところが川底は、まったく違う形をしています。
岩があり、えぐれがあり、砂が積もった浅瀬のすぐ隣に、深い淵があります。一歩踏み出した先が、急に胸まで来る。これが川の地形です。
しかも、水面からは見えません。流れがあると水面が波立ち、底の様子が分かりにくくなります。透明度が高い川でも、光の屈折で実際より浅く見えます。
子どもの場合、身長が低いぶん、この落差が致命的になります。大人の膝の深さは、小学生の腰の深さです。
三、水温が低い
真夏でも、川の水は冷たいものです。山からの水、湧き水、日陰の区間。場所によっては、二十度を下回ります。
冷たい水に急に入ると、思わず息を吸い込む反応が起きることがあります。水中でこれが起きれば、水を吸い込みます。
また、体温が奪われると、手足の動きが鈍くなります。本人は「疲れた」としか感じませんが、実際には体が動かなくなっています。泳げる子でも、冷たい水では泳げなくなるということです。
川の中でも、場所によって水温が急に変わります。日なたの浅瀬から、日陰の深みへ移動した瞬間に、体が動かなくなることがあります。
四、上流の雨で増水する
これが、川に固有の、最も危険な性質です。
自分がいる場所が晴れていても、川は増水します。数十キロ上流で降った雨が、時間をおいて流れてくるからです。
空を見上げても分かりません。天気予報を見ていても、自分の場所の予報しか見ていなければ気づけません。見るべきなのは、上流の空です。
増水は、思っているより急に起こります。数十分で水位が大きく上がることがあります。そして、増水する前には兆候があります。
水が濁りはじめる。木の葉や枝が流れてくる。流れの音が大きくなる。水温が急に下がる。水位がじわじわ上がる。これらのどれかに気づいたら、その時点で川から上がってください。迷う理由はありません。
五、監視員がいない
開設された海水浴場には、監視員がいます。遊泳区域が示され、旗で状況が知らされます。
川には、原則としてありません。誰も見ていません。異変が起きても、気づくのは同行者だけです。そして、その同行者が助けに入って、二人目の事故になります。
これは、川で遊んではいけないという意味ではありません。安全を確保する役割を、自分たちで引き受ける必要があるという意味です。
五つの違いを並べる
| 川 | 海(開設された海水浴場) | |
|---|---|---|
| 流れ | 常に一方向へ流れる | 波と局所的な流れ |
| 底の形 | 凹凸が大きく、急に深くなる | 比較的なだらかに深くなる |
| 水温 | 低い。場所によって急に変わる | 夏場は比較的高く、安定している |
| 水位の変化 | 上流の雨や放流で急に上がる | 潮の満ち引きで緩やかに変わる |
| 監視 | 原則いない | 監視員がいる |
| 区域の表示 | 原則ない | ブイや旗で示される |
| 子どもの死者(令和6年) | 18人 | 5人 |
この表を眺めると、「海は怖くて川は安心」という感覚がどこから来ているかが見えてきます。川は、狭くて、向こう岸が見えて、浅く見えるからです。視覚的な情報が、安心の材料になっています。
ところが、危険を決めているのは見た目ではありません。流れ、底の形、水温、そして水位の変化。この四つは、いずれも目で見て判断しにくいものです。見えるものが安心を与え、見えないものが危険をつくる。川の事故が繰り返される構造は、ここにあります。
危険な場所を見分ける
川には、地形によって特に危険な場所があります。知っておくと、遊ぶ場所を選べます。
カーブの外側
川が曲がっているところでは、外側に流れが集中します。その結果、外側は深くえぐれ、流れも速くなっています。内側は砂が積もって浅く、流れもゆるやかです。
遊ぶなら内側、避けるべきは外側。これは覚えておく価値のある原則で、上流から地形を見れば判断できます。
堰や堰堤の下
ここは、川で最も危険な場所のひとつです。
段差から水が落ちると、その下で水が巻き込むような流れができることがあります。表面では下流へ流れているように見えるのに、水中では上流へ、つまり段差の方へ引き戻す流れが生まれます。
この流れに捕まると、泳いでも泳いでも、落下地点へ戻されます。浮力があっても抜け出せません。見た目には、水が白く泡立っているだけで、穏やかにすら見えることがあります。
小さな段差でも起こります。「この程度の落差なら大丈夫だろう」という判断が通用しない場所です。堰や堰堤の下流側には、近づかないでください。
倒木や枝が沈んでいる場所
水中の倒木、張り出した木の根、金網や柵。こうしたものがあると、水は通り抜けますが、体は引っかかります。
そして、流れの力で体が押しつけられ、自力では抜け出せなくなります。水面下で起きるため、外から見えません。上から見ると、水がなめらかに流れているだけに見えることもあります。水面が静かな場所ほど、水中に何かがある可能性を疑ってください。洪水の後は、それまでなかった倒木やごみが沈んでいることもあります。
岩の下流
大きな岩の下流側には、渦ができます。ゆるやかに見えますが、水が回っているため、思うように移動できないことがあります。休憩する場所として選ばれやすい場所でもあるので、注意が必要です。
中州
川の中にできた砂や石の島です。バーベキューやキャンプの場所として選ばれることがありますが、増水すると逃げ場がなくなります。
気づいたときには、渡ってきた浅瀬がすでに深くなっている。これが中州の孤立です。過去に、繰り返し起きてきた事故の形です。しかも、荷物やテントを残していくことを惜しんで判断が遅れると、逃げ道が完全になくなります。中州にいるなら、荷物は捨てるものと決めておいてください。
ダムの下流
ダムのある川では、放流によって水位が急に上がることがあります。放流の前にはサイレンや警報が鳴り、看板で知らせが出ています。
サイレンが鳴ったら、理由を考えずに川から上がってください。放流による増水は、雨とは無関係に、晴れた日にも起こります。
出発前と現地で確認できる情報
川の状態は、行ってみないと分からない、というものではありません。事前に、かなりの部分を調べられます。
雨雲の動きを、上流で見る
気象庁の雨雲の動きを見られるページや、各種の天気アプリで、雨雲の位置と移動が確認できます。ここで見るべきなのは、自分がいる場所ではありません。地図をさかのぼって、川の上流にあたる山側です。
川にいる間も、休憩のたびに確認する習慣をつけてください。数十分前まで晴れていた上流に、雨雲がかかっていることがあります。
川の水位を見る
国土交通省が運営する川の防災情報のサイトでは、全国の観測所の水位を見ることができます。上流に観測所があれば、そこの水位が上がりはじめたかどうかを確認できます。
これは、目の前の川がまだ変化していない段階で、先の状況を知る方法です。上流の数字が動いたら、下流の自分の場所は数十分後に動きます。
ダムの放流情報
ダムのある川では、放流の予定や実施が公表されていることがあります。管理する事業者のサイトや、自治体の防災情報で確認できます。
そして現地では、サイレンと警報看板です。サイレンが鳴ったら、理由を考えずに上がってください。晴れた日にも放流はあります。
その川の事故の履歴
「川の名前 水難事故」で検索すると、過去の事故が出てくることがあります。同じ場所で繰り返し起きている川は、実際にあります。地形の条件が変わらないからです。
自治体が危険箇所を示している場合もあります。出かける先が決まったら、一度調べておくと、現地での見え方が変わります。
季節と時間帯
水難事故には、時期の偏りがあります。
言うまでもなく、夏に集中します。七月から八月、とくに学校が休みに入り、お盆の帰省と重なる時期です。人が水辺に集まるのですから、当然といえば当然です。
ただ、時間帯には、少し考えるべき傾向があります。午後に事故が起きやすいということです。
理由は、いくつも重なっています。午前中から遊んでいれば、体力が落ちています。日射で体温が上がり、判断力も鈍ります。昼食で飲酒していれば、なおさらです。そして、夏の午後は大気が不安定になり、上流で雷雨が発生しやすい時間帯でもあります。
つまり、人の側の条件と、川の側の条件が、同じ時間帯に同時に悪化します。午後にかけて注意を強めるのは、理にかなっています。
もうひとつ。切り上げる時間を先に決めておくことをおすすめします。事故は、「もう少しだけ」と延ばした先で起きています。時間で区切っておけば、その判断をその場でしなくて済みます。
大人の水難も、川で起きています
ここまで子どもの話を中心にしてきましたが、川で亡くなっているのは子どもだけではありません。
令和六年に河川で亡くなった方は、全体で二百八十八人です。中学生以下は十八人ですから、残りの二百七十人は大人です。
大人が川で亡くなる場面は、レジャーとは限りません。統計全体で最も多い行為は魚とり・釣りで、百九十一人にのぼります。川釣りも、そこに含まれます。
また、作業中に亡くなった方が六十五人、通行中が四十一人います。農作業で用水路に近づく、増水した川を見に行く、といった場面です。
とくに、大雨のときに川や水路の様子を見に行って亡くなるという事故は、毎年のように繰り返されています。田畑や水路が気になる気持ちは分かりますが、増水した川の岸は、足元が崩れやすく、視界も悪くなっています。
ご高齢の家族がいる方には、この点をお伝えいただきたいと思います。統計では、六十五歳以上の方は水難に遭った五百九十九人のうち四百二十九人が亡くなっています。私が計算すると七十一・六パーセントです。助かる確率が、ほかの年齢層より大きく下がります。
流されたときの姿勢は、海と違います
ここは、多くの方が知らない重要な点です。
海で溺れたときは、あおむけになって大の字に広がり、浮いて待つのが基本です。ところが、川では姿勢が変わります。
川で流されたときは、あおむけになり、足を下流に向けて、足先を水面近くに上げます。ひざを軽く曲げ、腕は体の横で水をかいて体勢を保ちます。
理由は、障害物です。川には岩があります。流れに乗ったまま頭から進めば、岩に頭をぶつけます。足を下流に向けておけば、岩が来ても足で受け止められます。足はぶつけても死にませんが、頭はそうではありません。
この姿勢のまま、流れがゆるやかになる場所を探し、斜め下流方向へ泳いで岸に近づきます。上流へ向かって泳いではいけません。流れには勝てません。
そして、立ち上がろうとしないでください。流れのなかで足を底につこうとすると、岩の隙間に足が挟まることがあります。挟まったまま流れに押されると、上半身が水中に倒れ込みます。浅い場所でも起こる、川に固有の危険です。水深が十分に浅くなり、流れがゆるんでから立ってください。
助けに行かないでください
子どもが流されたとき、大人は必ず飛び込みます。それが自然な反応です。
しかし、統計は残酷な事実を示しています。令和六年に、水難救助活動中に亡くなった方は十四人。そのうち二人は中学生以下です。子どもが、誰かを助けようとして亡くなっています。
流れのなかでの救助は、専門の訓練を受けた人でも難しい行為です。溺れている人はパニックの状態にあり、近づいた人にしがみつきます。悪意ではなく、呼吸を求める反射です。結果として、二人とも流されます。
やるべきことは、四つです。
飛び込まない。まずこれです。
浮くものを投げる。クーラーボックス、ペットボトル、空のポリタンク、リュック。浮くものなら何でもかまいません。溺れている人に必要なのは、引き上げる人ではなく、つかまるものです。
一一九番に通報する。川であれば一一九番です。海なら海上保安庁の一一八番になります。
下流へ先回りする。岸を走って下流へ移動し、流れがゆるむ場所で待ち構えます。木の枝やロープを差し出せる位置につきます。川では、追いかけるより先回りする方が有効です。
この四つを、川に着く前に家族で共有しておいてください。事故が起きた瞬間に考えるのは不可能です。
川遊びの前に決めておくこと
ここまでの内容を、行動の形にまとめます。
一、ライフジャケットを着せる。川では、これがほぼすべてです。流れに勝てなくても、浮いていれば呼吸ができます。呼吸ができれば時間ができ、時間ができれば救助が間に合います。泳げる子でも着せてください。泳力と、流れに勝てるかは別の話です。選び方はライフジャケットの選び方にまとめました。
二、上流の天気を確認する。自分がいる場所ではなく、川の上流の空です。出発前に確認し、川にいる間も気にかけます。雨雲の動きは、スマートフォンで確認できます。
三、遊ぶ範囲を目印で決める。「あの岩まで」「この石より下流には行かない」。目に見えるもので決めます。数字ではなく目印にするのがコツです。
四、見る役を決める。「みんなで見ている」は、誰も見ていないのと同じです。時間を区切って交代制にします。とくにバーベキューをするときは、調理をしている人は見ていません。
五、飲酒したら水に入らない。判断力が落ち、体温調節も乱れます。大人が飲むなら、その日は水に入らないと決めてください。警察庁も、飲酒したときは海や河川に入らないよう呼びかけています。
六、流されたときの手順を口に出す。飛び込まない、浮くものを投げる、一一九番、下流へ先回り。出発前に声に出して共有します。
川に着いてからの五分間
決めごとを、現地での手順に落としておきます。荷物を下ろしてから遊びはじめるまでの、五分間です。
一、川全体を上流から下流まで眺める。どこが速いか、どこが深そうか、下流に堰や落差はないか。とくに下流の確認を忘れないでください。流されたら、そちらへ行くからです。遊ぶ場所のすぐ下流に堰があるなら、そこは選ばない方がよい場所です。
二、逃げ道を確認する。増水したときに、どこから岸に上がって、どこへ避難するか。斜面を登れるか、道はあるか。中州にいるなら、渡ってきた場所以外に出口があるか。
三、遊ぶ範囲を目印で決める。「あの岩と、あの木の間」というように、上流側と下流側の両方を決めます。川では、下流側の線が特に重要です。
四、ライフジャケットを着せ、確認する。股ベルトを留め、肩を上へ引っ張って、頭が抜けないかを確かめます。
五、手順を声に出す。誰が見る役か。増水の兆しがあったらどうするか。流されたら、飛び込まずに浮くものを投げて一一九番、そして下流へ先回り。この三つを、遊びはじめる前に共有します。
五分です。一日のうちのわずかな時間で、事故につながる経路のほとんどをふさげます。
浅瀬で遊ぶだけでも同じです
「深いところには行かせないから」という前提でも、この手順は省略しないでください。統計では、中学生以下で亡くなった二十八人のうち、水遊び中が十五人でした。泳ぐつもりのなかった子どもが、半数以上を占めています。
浅瀬で足を滑らせる。転んだ拍子に流れに乗る。石を取ろうとして深みに踏み込む。事故は、そういう形で始まります。深さを制限することは有効ですが、それだけで完結する対策ではありません。
よくある質問
浅い川なら子どもだけで遊ばせてもよいですか
おすすめしません。川底は平らではなく、浅瀬のすぐ隣が深いことがあります。また、上流の雨で急に増水します。警察庁も、子ども一人では水遊びをさせず、保護する責任のある人が付き添って目を離さないよう呼びかけています。浅さは、安全の根拠になりません。
川で泳げれば安全ですか
泳力は助けになりますが、条件が変われば意味を失います。流れには競泳の選手でも逆らえませんし、冷たい水では手足が動かなくなります。統計でも、中学生以下で亡くなった方の半数以上は水遊び中であり、水泳中ではありません。泳ぐ能力ではなく、浮いていられるかどうかが分かれ目です。
晴れているのに増水することがありますか
あります。数十キロ上流で降った雨が、時間をおいて流れてきます。また、ダムのある川では放流によって水位が上がります。自分の頭上の空だけを見ていては気づけません。上流の雨雲と、放流のサイレンに注意してください。
中州でバーベキューをしても大丈夫ですか
避けてください。増水すると、渡ってきた浅瀬が先に深くなり、逃げ道がなくなります。荷物を残していくことを惜しんで判断が遅れると、取り残されます。中州は、増水したときに最も逃げにくい場所です。
浮き輪があれば川でも安心ですか
安心とはいえません。浮き輪は流れに乗って下流へ運ばれます。方向を制御できず、岩や堰に向かっていくこともあります。また、子どもが下から抜け落ちることもあります。浮き輪は遊具、ライフジャケットは安全装備です。役割が違います。
川に落ちたら、まず何をすればよいですか
あおむけになり、足を下流に向けて、足先を水面近くに上げてください。頭を守るためです。そのうえで、流れがゆるむ場所を探し、斜め下流に向かって岸へ近づきます。立ち上がろうとしないでください。足が岩の隙間に挟まると、流れに押されて上半身が水中に倒れます。
用水路も危険ですか
危険です。統計では、用水路で亡くなった方が令和元年の五十七人から令和六年の百人へと増えています。中学生以下でも三人が亡くなっています。用水路はレジャーの場ではなく、生活圏の中にあります。柵がなく、深さがあり、流れも速い。通学路や散歩道の脇にある水路も、危険な場所です。
サンダルと靴、どちらがよいですか
かかとが固定されるものを選んでください。ビーチサンダルは、水中で簡単に脱げます。脱げた瞬間に足の裏を切り、その痛みで動けなくなることがあります。川底には、割れたガラスや鋭い石があります。かかとにストラップのあるサンダルか、濡れてもよい運動靴が適しています。脱げにくい履物は、流されたときに足を守る役にも立ちます。
子どもが流されたのを見つけたら、まず何をすればよいですか
順番があります。まず大声で人を集め、次に浮くものを投げ、そして一一九番へ通報し、岸を走って下流へ先回りします。この間、水には入らないでください。川では、流されている本人より、岸を走る人の方が速く移動できます。追いつくのではなく、待ち構える。これが川での救助の原則です。木の枝やロープなど、差し出せるものを手に持って先回りしてください。
川の防災という点では、ほかに知っておくことはありますか
大雨のときの氾濫や、川沿いの土砂災害も、同じ川の危険です。川の防災 完全ガイドで全体像を扱っています。また、上流で土砂が川をせき止め、それが決壊して一気に流れ出す現象もあります。詳しくは土石流とは?をご覧ください。雨が降り続いているのに川の水位が急に下がったときは、上流でせき止めが起きている危険な兆候です。
まとめ
川の水難事故について、押さえておきたい点を整理します。
令和六年に水難で亡くなった中学生以下は二十八人。そのうち十八人、六十四・三パーセントが河川でした。海の五人の三倍以上です。行為別では水遊びが十五人で、五十三・六パーセントを占めます。泳ぐつもりのない子どもが亡くなっています。
川が海と違うのは、五つの点です。流れがあること。川底が平らでなく、浅瀬の隣が急に深いこと。水温が低く、体が動かなくなること。上流の雨で、晴れていても増水すること。そして、監視員がいないことです。
危険な地形は、カーブの外側、堰や堰堤の下流側、倒木や柵のある場所、岩の下流、そして中州です。とくに堰の下では、表面と水中で流れの向きが違い、浮力があっても抜け出せないことがあります。
流されたときは、海とは姿勢が変わります。あおむけで、足を下流に向けて、足先を水面近くに上げます。岩から頭を守るためです。立ち上がろうとしないでください。
誰かが流されても、飛び込まないでください。浮くものを投げ、一一九番へ通報し、岸を走って下流へ先回りします。追いかけるより、先回りです。
そして、いちばん効くのはライフジャケットです。流れには勝てませんが、浮いていられれば呼吸ができます。呼吸ができれば、時間ができます。
最後にひとつ。川へ出かける前に、上流の天気を確認してください。見上げる空ではなく、地図の上の、川をさかのぼった先の空です。この一手間が、増水に巻き込まれる経路をひとつ確実に消します。
川遊びをやめましょう、という話をしたいのではありません。川は、子どもにとって得がたい遊び場です。石を積み、生きものを探し、流れに足を浸す。その体験には、代わりがありません。
ただ、川は海のように誰かが安全を用意してくれる場所ではないというだけです。監視員も、遊泳区域の表示も、旗もありません。その役割を、その日は自分たちで引き受ける。そう捉えていただければと思います。引き受けると決めてしまえば、やることはこの記事に書いた程度のことです。ライフジャケットを着せ、上流の空を見て、範囲を決め、見る役を決める。それだけで、統計の中に入らずに済む可能性は大きく上がります。

