【この記事の要約】
地震で亡くなる原因の8割近くは、建物と家具の下敷きです。だから備えの最優先は、非常食ではなく建物そのものになります。そして自分の家が危ないかどうかは、建築年でおおよそ判断できます。境目は二つ。昭和56年(1981年)6月1日と、平成12年(2000年)6月1日です。前者より古ければ旧耐震、後者より古い木造なら、現在の基準を満たしていない可能性があります。耐震診断には多くの自治体が補助を出しており、たとえば東京都小平市は診断費用の4分の3で上限15万円、千葉県浦安市は10分の9で上限12万円です。この記事では、二つの境目の意味、診断と改修の費用、補助金で失敗しない申請の順番をまとめます。
防災の記事を書いていて、いちばん歯がゆく感じることがあります。
もっとも効く対策が、もっとも語られないということです。
非常食も、持ち出し袋も、必要です。しかし数字を見るかぎり、命を分けているのは建物です。
結論|建築年で、やるべきことが決まります
先に結論を書きます。
自宅がいつ建てられたかを調べてください。境目は二つあります。
| 建築年 | 区分 | やるべきこと |
|---|---|---|
| 昭和56年5月31日以前 | 旧耐震 | 耐震診断を強くおすすめします |
| 昭和56年6月1日〜 平成12年5月31日 |
新耐震だが 木造は2000年基準前 |
木造なら診断を検討してください |
| 平成12年6月1日以降 | 現行基準 | 家具の固定を優先 |
この二つの日付が、この記事の中心です。順に説明します。
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なぜ建物が最優先なのか
数字から入ります。
1995年の阪神・淡路大震災で亡くなった方の死因は、窒息・圧死が4,224人で77.0%を占めました。そして94.3%の方が、地震が起きたその日のうちに亡くなっています。
この二つが意味することは、はっきりしています。
備えは、揺れる前にしか効きません。揺れてから身を守る動作をするのでは間に合わず、救助が本格化する前に決着がついています。
だから順番は、建物、家具、そのあとに備蓄になります。地震全体の話は地震の完全ガイドにまとめました。
一つめの境目|昭和56年6月1日
この日に、建築基準法の耐震基準が大きく変わりました。新耐震基準と呼ばれます。
何が変わったのか
おおまかに言えば、想定する地震の強さが引き上げられました。
それまでの基準は、震度5程度の揺れで倒れないことを目安にしていました。新耐震では、震度6強から7程度の揺れでも倒壊しないことが求められるようになります。
この差は、実際の被害に現れました。阪神・淡路大震災では、旧耐震の建物に被害が集中しています。それが、この基準が重視される理由です。
注意|「建てられた日」ではありません
ここが間違えやすい点です。
基準になるのは、建築確認を受けた日です。着工や完成の日ではありません。
昭和56年6月以降に完成した家でも、確認申請がその前なら旧耐震です。逆もあります。
確かめるには、建築確認済証か検査済証を見てください。手元になければ、自治体の建築指導課で台帳を照会できることがあります。
二つめの境目|平成12年6月1日
こちらは、あまり知られていません。しかし木造住宅では、決定的に重要です。
木造の基準が、さらに厳しくなりました
平成12年(2000年)に、木造住宅について基準が改正されました。2000年基準と呼ばれます。
主な変更は三つです。
一、地盤調査が実質的に必要になりました。それまでは、地盤の強さを確かめないまま基礎を決めることができました。
二、柱や筋交いの接合部に、金物の仕様が定められました。それ以前は、接合方法が施工者の判断に委ねられる部分がありました。強い揺れで、柱が土台から抜けてしまう例があります。
三、耐力壁の配置のバランスが規定されました。壁の量が足りていても、偏っていればねじれて壊れます。
だから、新耐震でも安心とはかぎりません
昭和56年6月から平成12年5月までに建てられた木造住宅は、新耐震基準ではあるものの、2000年基準は満たしていません。
実際、多くの自治体がこの期間の木造住宅も補助の対象に含めています。たとえば東京都小平市は、旧耐震に加えて「昭和56年6月1日から平成12年5月31日以前の2階建て以下かつ在来軸組工法の木造住宅」を耐震診断の補助対象としています。
行政が対象に含めているという事実が、この期間の住宅に不安が残ることを示しています。
耐震診断とは、何をするのか
専門家が建物を調べ、地震に対してどれだけ耐えられるかを数値で評価するものです。
調べる内容
建物の形と壁の配置。耐力壁がどれだけあり、どう配置されているか。
接合部。柱と土台、柱と梁がどうつながっているか。金物が使われているか。
基礎。鉄筋が入っているか、ひび割れがないか。
劣化の状況。シロアリの被害、木材の腐り、雨漏りの跡。どれだけ良い設計でも、木が傷んでいれば強度は落ちます。
地盤。柔らかい地盤では揺れが増幅されます。
結果は数値で出ます
木造住宅の場合、上部構造評点という数値で示されるのが一般的です。1.0を基準として、それを下回るほど倒壊の危険が高いと評価されます。
この数字が出ることに意味があります。「なんとなく古いから不安」という状態から、「どこが、どれだけ足りないか」に変わるからです。
建物のどこが弱いのか
診断の結果を読むとき、何を見ているのかが分かっていると理解が早くなります。
壁の量が足りない
木造住宅で地震に耐えるのは、主に耐力壁です。柱と柱のあいだに筋交いを入れたり、構造用の板を張ったりした壁を指します。
この壁の量が不足していると、建物はねじれて倒れます。古い家に多いのが、南側に大きな窓を並べた間取りです。日当たりはよいのですが、壁がその面だけ極端に少なくなります。
壁の配置が偏っている
量が足りていても、偏っていれば同じことです。
南に窓、北に壁。この形だと、揺れたときに建物がねじれます。2000年基準で配置のバランスが規定されたのは、この問題があったからです。
接合部が抜ける
柱と土台、柱と梁のつなぎ目です。
古い住宅では、柱を土台に差し込んでいるだけという場合があります。上下に激しく揺さぶられると、柱が土台から抜けます。そうなれば、壁がいくらあっても意味がありません。
2000年基準で金物の仕様が定められたのは、ここを止めるためです。
基礎に鉄筋が入っていない
昭和の途中まで、鉄筋の入っていない基礎(無筋基礎)が使われていました。コンクリートは押される力には強いのですが、引っ張られる力には弱い。鉄筋がないと、地震でひび割れて崩れます。
基礎の補強は費用がかさむ工事ですが、ここが弱いと上を強くしても効きません。
そして、劣化
設計がどれだけ良くても、木が傷んでいれば意味がありません。
シロアリ、雨漏りによる腐り、湿気。床下と屋根裏は、外から見えないぶん進行しています。診断で床下に潜るのは、このためです。
工事は、全部やる必要はありません
耐震改修と聞くと、家を建て直すような規模を想像される方がいます。そうではありません。
部分的な補強という選択
予算に限りがあるなら、効果の大きい部分から順にという考え方ができます。
壁を数か所足す。金物で接合部を締める。これだけで評点が上がることがあります。
診断を受ければ、どこを直せばどれだけ上がるかが数値で分かります。その上で、予算に合わせて優先順位をつけられます。
寝室だけを守るという方法
建物全体の補強が難しい場合、一部屋だけを強くするという考え方もあります。
建物が壊れても、その空間だけは潰れないようにする。就寝中に被災する確率が高いことを考えると、寝室を選ぶのが合理的です。
費用は全体の改修よりはるかに抑えられます。自治体によっては、この種の対策にも補助を出しています。
家具の固定は、工事より先です
これは何度でも書きます。建物が耐えても、家具が倒れれば人は死にます。
そして家具の固定は、数千円で、今日できます。診断の予約を取るより早い。順番としては、こちらが先です。
いつ相談すればよいか
家を買うとき
中古住宅を検討しているなら、建築年は最初に確認すべき項目です。
旧耐震の物件は価格が抑えられていることがありますが、改修費を上乗せして考える必要があります。診断済みかどうか、耐震基準適合証明があるかも確認してください。
リフォームを考えているとき
ここが最大の機会です。
水回りの改修や間取りの変更で壁を壊すなら、そのときに耐震補強を一緒にやるのが、いちばん安く済みます。あとから同じ壁をもう一度壊すのは、無駄になります。
リフォームの相談をする段階で、耐震診断も同時に検討したいと伝えてください。
相続や実家のこと
離れて暮らすご両親の家が古い場合です。
本人は「これまで大丈夫だった」と考えていることが多いと思います。しかし建物は年々弱くなります。
いきなり工事の話をすると身構えられるので、まず診断だけを提案するのが現実的です。補助を使えば自己負担は数万円です。結果を見てから考えればよい、という持ちかけ方なら通りやすくなります。
費用と補助金|実際の金額
ここがいちばん知りたいところだと思います。
補助制度は、自治体ごとに違います
金額も条件も、市区町村によって異なります。実例を二つ挙げます。
| 自治体 | 診断の補助 | 対象 |
|---|---|---|
| 東京都小平市 | 診断費用(税抜)の4分の3、上限15万円 | 旧耐震、および昭和56年6月〜平成12年5月の2階建て以下・在来軸組工法 |
| 千葉県浦安市 | 10分の9、上限12万円 | 昭和56年5月31日以前に着工された木造住宅 |
補助率と上限から逆算すると、木造住宅の耐震診断そのものは十数万円規模だと分かります。そして補助を使えば、自己負担は数万円に収まることになります。
改修の補助は、項目ごとに分かれます
浦安市の例で見ると、耐震改修の補助は三つに分かれています。
| 項目 | 補助率 | 限度額 |
|---|---|---|
| 補強設計 | 2分の1 | 4万円 |
| 工事監理 | 2分の1 | 6万円 |
| 工事費 | 2分の1 | 110万円(市民税非課税世帯等は130万円) |
ここから分かることが二つあります。
一、設計と監理も補助の対象です。工事だけではありません。
二、限度額110万円が2分の1ということは、220万円規模の工事まで想定されているということです。改修は、それなりの金額になります。
ただし、必要な工事は建物によってまったく違います。壁を数か所足すだけで評点が上がることもあれば、基礎からやり直す判断になることもあります。診断を受けなければ、金額の話は始まりません。
補助金で失敗しないための、たった一つの原則
これだけは、必ず守ってください。
交付決定を受ける前に、契約も着工もしないでください。
小平市が示している流れは、次のとおりです。
事前相談 → 診断機関に依頼 → 補助金交付申請書を提出 → 交付決定 → 耐震診断を実施 → 完了報告 → 交付額の確定 → 請求 → 受領
注目していただきたいのは、「交付決定」が「実施」より前にあることです。
先に工事を始めてしまうと、補助の対象外になります。これは多くの補助金に共通する原則で、あとから遡って申請することはできません。
業者から「先に工事を進めましょう、補助金は後から出ます」と言われたら、いったん止めて自治体に確認してください。
そして、業者選びにも注意が必要です
災害のあとには、必ず不安を利用する業者が現れます。
突然訪問してきて「無料で診断します」と言う。そして高額な工事を勧める。この形が繰り返されています。
自治体は、登録された診断士や事業者の名簿を持っていることがあります。まず窓口に相談してください。訪問販売の被害を防ぐ、いちばん確実な方法です。
災害後の修理業者トラブルについては台風で被災した後にやること|修理業者トラブルの防ぎ方にまとめました。
減税という、もう一つの制度
補助金のほかに、税の優遇があります。
一定の要件を満たす耐震改修を行った場合、所得税の控除や固定資産税の減額を受けられる制度があります。
要件や期間は改正されることがあるため、工事を計画する段階で、自治体の窓口か税務署に確認してください。補助金と併用できる場合があります。
賃貸とマンションの場合
賃貸にお住まいなら
建物の耐震性は、借主には動かせません。できることは二つです。
一、建築年を知っておく。不動産会社に聞けば分かります。旧耐震なら、それを前提に備えを厚くします。
二、家具の固定をする。壁に穴を開けない方法があります。突っ張り棒と粘着マットを上下で併用する形なら、賃貸でも実行できます。
方法は突っ張り棒で地震対策|家具転倒防止の選び方・取り付け方にまとめました。
分譲マンションなら
専有部分と共用部分で、扱いが違います。建物の構造は共用部分にあたるため、個人では決められません。
耐震診断や改修は、管理組合の決議事項になります。まずは管理組合に、診断を受けたことがあるかを確認してください。
マンション特有の事情はマンションの断水は停電で起きるにもまとめています。
診断まで手が回らない方へ
耐震診断は、時間もお金もかかります。すぐには動けない事情もあると思います。
その場合でも、効果の大きい対策から順にやってください。
一、寝室の家具を固定する。寝ているあいだは身を守る動作ができません。枕元に倒れてくるものがないか、今日確かめてください。
二、ガラスの飛散を防ぐ。窓と食器棚にフィルムを貼る。足を切れば逃げられません。
三、枕元に靴とライトを置く。お金がかかりません。
四、寝る場所を変える。建物のなかでも、比較的壊れにくい場所があります。1階より2階、広い部屋より狭い部屋、壁の多い場所。これは費用ゼロでできる耐震対策です。
家具の固定については地震の家具固定・転倒防止は本当に必要?もご覧ください。
建築年を調べる、具体的な方法
ここが最初の一歩なので、手段を並べておきます。
手元の書類から
建築確認済証、検査済証。これがいちばん確実です。家を建てたとき、あるいは買ったときの書類一式に入っています。
登記事項証明書。建物の登記には新築の年月が記載されています。法務局で取得でき、オンラインでも請求できます。
売買契約書や重要事項説明書。中古で購入した場合、こちらに記載があります。
書類が見つからない場合
自治体の建築指導課で、建築計画概要書の閲覧を請求できます。建築確認の記録が台帳として残っているためです。
ただし古いものは保存期間の関係で残っていないことがあります。その場合は、固定資産税の課税台帳から建築年を確認できることがあります。資産税を扱う部署に問い合わせてください。
賃貸なら
不動産会社か管理会社に聞けば分かります。重要事項説明書にも記載されています。入居時の書類を確認してみてください。
診断を受けた人が、次にすること
結果が出たあとの流れも書いておきます。
評点をどう読むか
木造住宅では上部構造評点が示されます。1.0を基準として、下回るほど倒壊の危険が高いという評価です。
数値が低かったからといって、すぐに家を出る必要はありません。ただし、その事実を前提に生活を組み直す価値はあります。
補強計画を立てる
診断を行った事業者から、どこをどう補強すれば評点がいくつまで上がるかの提案を受けられることが一般的です。
ここで大事なのは、複数の案を出してもらうことです。予算に応じて、何をどこまでやるかは変わります。
そして補強設計にも補助が出ます。浦安市の例では、補強設計が2分の1で限度額4万円、工事監理が2分の1で限度額6万円でした。設計段階から制度を使えます。
工事をしないという選択も、選択です
診断の結果を受けて、工事をしない判断もあり得ます。それでも診断には意味があります。
どの部屋が比較的安全か。どこで寝るべきか。家具をどう配置すべきか。これらは、数値を知って初めて判断できます。
そして、建て替えや住み替えを考える時期の材料にもなります。
地域によって、事情が違います
最後に、住んでいる場所による違いを補足します。
雪の多い地域
屋根に雪が積もった状態で地震が来ると、建物にかかる重さが増します。耐震の計算では、この積雪も考慮されます。
そして雪国では、1階を車庫にした建物が多くあります。壁の少ない階が下にあると、そこに力が集中します。
活断層の近く
内陸の地震は、震源が浅く、緊急地震速報が間に合いません。備えは、揺れる前に終わっている必要があります。
自宅の近くに活断層があるかは無料で調べる方法で確認できます。全国のSランク一覧は活断層Sランク一覧にまとめました。
柔らかい地盤の土地
同じ地震でも、地盤が柔らかいと揺れが増幅されます。埋め立て地や、かつて川や沼だった土地では、液状化の危険もあります。
土地の来歴は、古い地図や地名から推し量れることがあります。液状化とは?もあわせてご覧ください。
調べる順番
今日から進めるなら、この順です。
一、建築年を確認する。建築確認済証、検査済証、登記事項証明書。賃貸なら不動産会社へ。
二、自治体の補助制度を調べる。「お住まいの市区町村名+耐震診断+補助」で検索すれば、たいてい出てきます。
三、窓口に相談する。対象になるか、登録事業者はどこかを聞きます。この段階では費用はかかりません。
四、申請してから、診断を受ける。順番を逆にしないでください。
あわせて、自宅の地盤と災害リスクも確認しておくと判断が立てやすくなります。ハザードマップの見方と自宅の近くに活断層はある?をご覧ください。
地震保険との関係
耐震と保険は、別々に語られがちですが、つながっています。
耐震性能で、保険料が下がります
地震保険には、建物の耐震性能に応じた割引制度があります。
代表的なものが四つあります。建築年割引(昭和56年6月1日以降の建物)、耐震診断割引、耐震等級割引、免震建築物割引です。
つまり、耐震診断を受けて基準を満たしていることが確認できれば、保険料が安くなる可能性があります。診断の費用が、長い目で見れば回収されることもあります。
割引は重複して使えないのが原則です。どれが適用できるかは、保険会社に確認してください。地震保険の仕組みは地震保険とは?火災保険との違いにまとめました。
そして、保険では建て直せません
ここは誤解されやすい点です。
地震保険は、火災保険の保険金額の30%から50%の範囲でしか契約できません。建物を元どおりにする金額は、原則として出ません。
これは制度の欠陥ではなく、生活の再建を支えるための保険という位置づけだからです。
だから、保険は「壊れたあと」、耐震は「壊れないため」という役割の違いになります。両方が要ります。
数字を、自分の家に当てはめる
最後に、判断の材料を整理します。
| 状況 | 優先してやること | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 旧耐震の持ち家 | 耐震診断 | 補助を使えば自己負担 数万円 |
| 1981年6月〜2000年5月の木造 | 診断の検討。自治体が対象にしているか確認 | 同上 |
| 2000年6月以降 | 家具の固定とガラス対策 | 数千円〜数万円 |
| 賃貸 | 建築年の確認と家具の固定 | 数千円〜 |
| 分譲マンション | 管理組合に診断の有無を確認 | 個人負担なし |
| 予算が厳しい | 寝室の家具固定、寝る場所の変更 | ほぼ0円 |
どの行にいても、やることはあります。診断が難しくても、寝室を見直すことはできます。
よくある誤解
「これまで地震で壊れなかったから大丈夫」
その建物が経験した揺れが、想定される最大の揺れとはかぎりません。
そして、建物は揺れるたびに少しずつ傷んでいきます。接合部がゆるみ、壁にひびが入る。次の地震に、同じ強さで耐えられる保証はありません。
「見た目がしっかりしているから大丈夫」
耐震性を決めるのは、壁の量と配置、接合部、基礎です。外観の立派さとは関係ありません。
むしろ重い瓦屋根の家は、頭が重いぶん揺れに弱くなります。立派に見える家が、構造的には不利ということが起こります。
「新築だから何もしなくてよい」
建物は現行基準を満たしていても、家具は別です。
建物が無事でも、家具が倒れて下敷きになれば結果は同じです。新築でこそ、家具の固定を最初にやってください。
「工事が高いから無理」
診断だけなら、補助を使って自己負担は数万円です。そして診断を受けたからといって、工事をする義務はありません。
危険な箇所が分かれば、寝る場所を変える、家具の配置を変えるといった費用のかからない対策が選べます。
よくある質問
旧耐震と新耐震の境目はいつですか
昭和56年(1981年)6月1日です。これより前に建築確認を受けた建物が旧耐震にあたります。完成した日ではなく、確認申請の日が基準である点に注意してください。
2000年基準とは何ですか
平成12年(2000年)6月1日に施行された、木造住宅についての基準の改正です。地盤調査、接合部の金物、耐力壁の配置バランスが規定されました。新耐震であっても、これより古い木造は現在の基準を満たしていない可能性があります。
耐震診断はいくらかかりますか
自治体の補助の上限額から逆算すると、木造住宅では十数万円規模です。補助を使えば自己負担は数万円に収まることが多くなります。ただし建物の規模や状態で変わるため、見積もりを取ってください。
補助金はどこの自治体にもありますか
多くの市区町村が制度を持っていますが、金額も条件も異なります。小平市は診断費用の4分の3で上限15万円、浦安市は10分の9で上限12万円というように差があります。お住まいの自治体の窓口で確認してください。
工事を先に始めてもよいですか
いけません。交付決定を受ける前に契約や着工をすると、補助の対象外になります。あとから遡って申請することはできません。
訪問してきた業者に診断を頼んでよいですか
いったん止めて、自治体の窓口に相談してください。登録された事業者の名簿を持っている自治体があります。「無料で診断します」と言って高額な工事を勧める手口が繰り返されています。
賃貸なので建物は変えられません
できることは二つあります。建築年を知って備えを厚くすること。そして家具を固定すること。壁に穴を開けない方法があるため、賃貸でも実行できます。
マンションでも診断できますか
建物の構造は共用部分にあたるため、個人では決められません。耐震診断や改修は管理組合の決議事項になります。まず管理組合に確認してください。
診断でどんな数値が出ますか
木造住宅では上部構造評点という数値で示されるのが一般的です。1.0を基準に、下回るほど倒壊の危険が高いと評価されます。「どこが、どれだけ足りないか」が分かることに意味があります。
お金がありません。何もできませんか
できます。寝室の家具を固定する。ガラスに飛散防止フィルムを貼る。枕元に靴を置く。寝る場所を変える。この四つは、費用がほとんどかからず、効果が大きい対策です。
耐震・制震・免震は何が違いますか
耐震は、壁や柱を強くして揺れに耐える方法です。住宅ではこれが基本になります。
制震は、建物の中に揺れを吸収する装置を入れて、揺れそのものを小さくする方法です。免震は、建物と地面のあいだに層を設けて、揺れを伝わりにくくする方法です。
制震と免震は費用が大きくなるため、既存の木造住宅では耐震補強が現実的な選択になります。
診断はどのくらい時間がかかりますか
現地の調査そのものは、規模にもよりますが半日から1日程度です。ただし、申請から結果が出るまでには、自治体の手続きを含めて数週間から数か月かかることがあります。思い立ったら早めに動いてください。
診断に立ち会う必要はありますか
基本的に立ち会いが必要です。床下や天井裏を見るため、点検口を開ける必要があります。家の中に入っての調査になります。
耐震補強で保険料は安くなりますか
地震保険には耐震性能に応じた割引があります。建築年割引、耐震診断割引、耐震等級割引、免震建築物割引の四つが代表的です。診断で基準を満たしていることが確認できれば、割引の対象になる可能性があります。詳しくは保険会社にご確認ください。
実家が古いのですが、親を説得できません
いきなり工事の話をすると身構えられます。まず診断だけを提案してください。補助を使えば自己負担は数万円で、受けたからといって工事の義務はありません。「結果を見てから考えればいい」という持ちかけ方が現実的です。
診断結果が悪かったら、住み続けられませんか
そんなことはありません。数値を知ったうえで、寝る場所を変える、家具の配置を変えるといった対策が取れます。工事をしなくても、できることは残っています。
住まいを守る、8つの記事
家の防災は、選ぶ・強くする・守る・備えるの順で考えると迷いません。
まとめ
要点を整理します。
地震の死因の8割近くは、建物と家具の下敷きです。だから優先順位は、建物、家具、備蓄の順になります。
境目は二つ。昭和56年6月1日と、平成12年6月1日です。前者より古ければ旧耐震。後者より古い木造なら、現在の基準を満たしていない可能性があります。
基準は建築確認を受けた日です。完成した日ではありません。
診断には補助があります。小平市は4分の3で上限15万円、浦安市は10分の9で上限12万円。自己負担は数万円に収まることが多くなります。
交付決定の前に、契約も着工もしないでください。これを守らないと、補助が受けられません。
最後に、ひとつだけ。
耐震診断は、受けたからといって工事をしなければならないものではありません。数値を知るだけでも意味があります。
危険が分かれば、寝る場所を変えられます。家具の配置も変えられます。工事をしなくても、できることが見えてきます。
まずは、建築確認済証を探すところから。今日できるのは、そこまでで十分です。
保険は、見直せていますか
火災保険は2022年10月から最長5年に短縮され、更新の時期を迎える人が増えています。2024年10月には参考純率が全国平均で過去最大の13%引き上げとなり、水災料率は1等地から5等地の5区分に細分化されました。
確認すべきは三つ。水災補償を外していないか、家財の契約があるか、免責金額はいくらか。「保険に入っていたのに出なかった」の多くは、このどれかが原因です。手順は火災保険の見直し方にまとめました。


