【この記事の要約】
結論から言います。能登半島地震が突きつけたのは、「助けはすぐに来ない」という現実です。2024年1月1日16時10分、マグニチュード7.6、最大震度7。道路が土砂崩れと隆起で寸断され、多くの集落が孤立しました。解消までに2週間以上かかった地区があります。断水は6県38事業者で最大およそ13.6万戸にのぼり、復旧が長期化しました。そして災害関連死470人は、直接死228人の2倍を超えています。元日の夕方、真冬。多くの人が帰省先や旅行先にいました。「3日分の備蓄」では足りない地域があるということを、この地震は示しています。
結論|3日分では、足りませんでした
防災の備蓄は「最低3日分、できれば1週間」と言われます。能登では、その「できれば」のほうが必要でした。
なぜ、そうなったのか
理由は、地形です。半島は、外とつながる道が限られています。
その細い道が、土砂崩れと地面の隆起で断たれました。支援の車両が入れず、住民も出られません。
海からの支援も、簡単ではありませんでした。港も隆起や損傷で使えなくなっていたためです。
だから、こう考えてください
自分の住む場所が、どれくらい「入りにくい」場所かを考えてください。
山あい、半島、島、川を渡らないと入れない地区。こうした場所では、備蓄の日数を長く取る必要があります。
逆に、幹線道路が複数通る平地の市街地なら、支援は比較的早く届きます。同じ「3日分」という言葉が、場所によってまったく違う意味を持ちます。
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何が起きたのか
事実を確認します。
2024年1月1日、16時10分
マグニチュード7.6。最大震度7。石川県能登地方を震源とする地震です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 直接死 | 228人 |
| 災害関連死 | 3県で計470人(直接死の2倍超) |
| 全壊した家屋 | 8,027棟 |
| 断水 | 6県38事業者で最大およそ13.6万戸 |
| 地盤の隆起 | 輪島市西部で最大4メートル程度 |
※認定と集計は続いており、数値は時点によって変わります。
関連死が、直接死の2倍を超えました
これが、この地震の最も重い事実です。
地震そのもので亡くなった方より、そのあとで亡くなった方のほうが、2倍以上多い。
熊本地震でも、直接死50人に対して関連死218人という同じ構図が起きました。近年の地震は、「助かったあと」に命が失われています。
震災ごとの死因の違いは過去の震災は何が人の命を奪ったかにまとめました。
孤立|道が、なくなりました
この地震を象徴する言葉です。
何が道を塞いだのか
一、土砂崩れ。山を削って通した道に、斜面が崩れ落ちました。
二、地面の隆起と沈下。道路そのものが持ち上がり、段差ができました。
三、橋の損傷。渡れなくなった場所があります。
四、建物の倒壊。倒れた家が、道路を塞ぎました。
そして、迂回路がありません。半島の集落へ通じる道は、多くが一本道です。
解消までに、2週間以上かかりました
発生直後には多数の地区が孤立し、1月中旬になっても、8地区143人が孤立した状態にありました。
つまり、2週間以上、外から支援が届かない場所があったということです。
ヘリコプターによる物資輸送も行われましたが、天候に左右され、運べる量にも限りがあります。
「取り残される」ことを前提に考える
この経験から言えることは、はっきりしています。
自分の地域が、道路の寸断で孤立しうるかを考えてください。
判断の材料は三つです。入ってくる道は何本あるか。その道は山や崖の下を通っていないか。橋を渡るか。
一本道なら、備蓄を1週間から10日分にしてください。これは大げさな数字ではありません。
断水|水は、いちばん遅く戻ります
能登では、断水が長期化しました。
13.6万戸が断水しました
浄水場や主要な送水管が壊れ、6県38の水道事業者で、最大およそ13.6万戸が断水しています。
そして、復旧に長い時間がかかりました。地域によっては、数か月にわたって水が使えない状態が続いています。
なぜ、水は遅いのか
理由があります。
一、地面の下にあるからです。どこが壊れているか、掘らないと分かりません。
二、一か所直しても、次が漏れます。管は網の目のようにつながっています。
三、地盤が動いた場所では、管ごとずれています。部分的な修理では済みません。
四、道路が使えないと、工事車両も入れません。孤立と、同じ問題です。
下水も、同時に止まります
見落とされやすい点です。水が出ても、下水道が壊れていれば流せません。
トイレを流すと、下水があふれます。自分の家だけの問題では済みません。
だから、携帯トイレが要ります。水の備蓄より、こちらのほうが先に必要になることがあります。
必要な数の目安は防災用携帯トイレの選び方に、断水中の生活は給水車・給水所の使い方にまとめました。
関連死は、なぜこれほど多かったのか
470人という数字の中身を見ていきます。
避難が、長く、遠くなりました
地元の避難所が使えず、県外や、遠く離れた市へ避難した方が大勢いました。いわゆる二次避難です。
安全な建物で過ごせる利点はあります。けれど、住み慣れた土地と人から切り離されます。
特に高齢の方にとって、顔なじみを失うことは、体調に直接響きます。話し相手がいない、通っていた病院が遠い、自分の役割がない。
断水が、生活を削り続けました
水が出ない期間が数か月に及んだ地域があります。これは、想像以上に体力を奪います。
手を洗えない、風呂に入れない、洗濯ができない、トイレを我慢する。ひとつひとつは小さくても、積み重なれば体調を壊します。
そして衛生状態の悪化は、感染症につながります。避難所での集団感染は、実際に起きています。
寒さが、体力を奪いました
1月から3月にかけての北陸です。暖房が不十分な環境で、長い期間を過ごすことになりました。
体が冷えると、血圧が上がります。心臓や血管の持病がある方にとって、これは直接の危険です。
防げた部分が、確かにあります
すべてが個人の備えで防げるとは申しません。けれど、いくつかは確実に効きます。
一、携帯トイレがあれば、水分を控えずに済みます。
二、常用薬とお薬手帳の写しがあれば、治療が途切れません。
三、寝袋とマットがあれば、床からの冷えを断てます。
四、眼鏡や補聴器の予備があれば、判断力と会話が保たれます。
どれも、避難所には用意されていません。自分で持ち出すしかないものです。
持ち出し袋の中身は非常持ち出し袋の中身にまとめました。
半島・島・山あいに共通する条件
能登の教訓は、能登だけのものではありません。
同じ条件を持つ場所は、日本中にあります
| 条件 | 何が起きるか |
|---|---|
| 入る道が1本しかない | 塞がれば、外との行き来が絶たれます |
| 道が山の斜面の下を通る | 土砂崩れで塞がりやすい |
| 橋を渡って入る | 橋が落ちれば、迂回できません |
| 港が唯一の出入口 | 隆起や津波で使えなくなることがあります |
| 高齢化が進んでいる | 避難にも復旧にも時間がかかります |
| 近くに大きな病院がない | けが人や急病人の搬送が難しい |
| 消防・行政の人数が少ない | 初動に限りがあります |
三つ以上当てはまるなら、備蓄は1週間以上を目安にしてください。
都市部でも、孤立は起きます
意外に思われるかもしれません。けれど、都市にも同じ構造があります。
高層マンションの上階は、エレベーターが止まれば孤立します。階段で水を運べない方にとっては、道が塞がれたのと同じです。
そして、橋を渡らないと出られない地区は、都市部にも存在します。川に囲まれた地域では、橋が使えなければ動けません。
マンション特有の問題はマンションの断水は停電で起きるにまとめました。
もし、孤立してしまったら
備えたうえで、それでも取り残されたときの話です。
まず、状況を伝えてください
「ここに何人いて、何が必要か」を外へ伝えることが最優先です。伝わらなければ、支援の計画に入りません。
携帯電話が使えるなら、電話よりメッセージのほうがつながりやすいことがあります。回線が混み合うためです。
通じないときは、電波の届く高い場所を探してください。ただし、余震と土砂崩れに注意して。
次に、人数と体調を把握する
近所で集まり、誰がどこにいて、誰の具合が悪いかを把握してください。
特に、持病のある方、透析や在宅酸素が必要な方、乳児と妊婦。この方々は、優先して搬送してもらう必要があります。
名簿を作り、ヘリコプターや救助が来たときに、すぐ渡せるようにしておいてください。
そして、資源を分け合う
水、食料、燃料、電池。個々の家で抱えるより、集めて管理したほうが長くもちます。
特に燃料は、暖を取る場所を一か所にまとめると効率が上がります。公民館や集会所です。
この判断は、日ごろの人間関係がないとできません。近所づきあいが、災害時に最も効く備えである理由がここにあります。
助けが来るまでの目安
正直に申し上げます。孤立した地域への到達には、数日から2週間かかることがあります。
能登では、実際にそうでした。だから、「3日耐えれば来る」と思わないでください。
そして、最初に届くのは水と食料です。暖房、風呂、洗濯、通信は、そのあとになります。
元日だった、ということ
日付が、被害の形を変えました。
ふだんと違う場所にいた人が大勢いました
帰省、旅行、初詣。1月1日の夕方は、人が最も移動している時間帯のひとつです。
自分の家ではない場所で被災すると、こうなります。
逃げる場所を知りません。土地勘がありません。
備蓄がありません。持ち物は旅行の荷物だけです。
薬を持っていないことがあります。数日分しか持ち歩いていません。
だから、行った先でも確認してください
実家に着いたら、旅館に入ったら、10秒でいいので確認する癖をつけてください。
一、避難場所はどこか。宿なら、館内の表示に書いてあります。
二、海が近いか。高台はどちらか。
三、非常口はどこか。
そして、常用薬は多めに持って出かけてください。これが、旅先での最大の備えです。
行政も、休みでした
元日です。役所も、店も、多くが閉まっていました。
職員が集まるまでに時間がかかり、店の在庫も動かせません。「困ったら買えばいい」が通用しない日でした。
災害は、平日の昼間を選んで来てくれません。年末年始、連休、深夜。そのときに何が使えないかを考えてください。
真冬だった、ということ
もうひとつの条件です。
暖房が止まると、命に関わります
停電し、灯油やガスの供給も止まりました。雪の降る地域で、暖房が使えない状態です。
体温が下がり続けると、判断力が落ち、やがて動けなくなります。低体温症です。
そして、避難所も寒い。体育館の床は、体温を奪います。
冬の備えは、夏とは別に必要です
一、寝袋か、厚手の毛布。掛けるものより、まず敷くものを。
二、カセットこんろとボンベ。ただし、必ず換気を。
三、使い捨てカイロ。軽く、長くもち、電気が要りません。
四、着られる防寒具。ダウン、帽子、手袋、厚手の靴下。
冬の停電への備えは停電対策【冬編】に、換気をせずに燃焼器具を使う危険は災害時の一酸化炭素中毒とは?にまとめました。
建物と、地面に起きたこと
被害の中身を見ていきます。
古い木造家屋が、多く倒れました
能登の集落には、古くからの木造家屋が多く残っていました。
そして、この地域では2020年ごろから地震活動が活発になっており、その前に受けた揺れで建物が傷んでいた可能性も指摘されています。
一度の大きな揺れだけでなく、繰り返しの揺れが建物を弱らせます。熊本地震で震度7が二度起きたときも、同じことが問題になりました。
建物の強さの確かめ方は耐震診断と補助金にまとめました。
地面が、4メートル持ち上がりました
輪島市の西部では、最大4メートル程度の隆起が確認されています。
海底だった場所が陸になり、漁港が使えなくなりました。船を出せず、支援も受け入れられません。
地面が動くというのは、建物だけでなく、道も港も水道も一緒にずれるということです。
液状化も起きました
震源から離れた地域でも、地盤が液状化し、家が傾く被害が出ています。
砂の地盤で地下水位が高い場所では、揺れによって地面が液体のようになります。建物が無事でも、傾けば住めません。
そして、液状化は重要事項説明の義務がありません。自分で調べる必要があります。
仕組みは液状化とは?に、調べ方は防災で選ぶ引っ越し先にまとめました。
水が出ない生活を、具体的に想像する
数か月の断水がどういうものか、想像しにくいと思います。分解してみます。
1日に使う水の内訳
| 用途 | ふだんの量の目安 | 断水時にどうするか |
|---|---|---|
| トイレ | 1回あたり数リットル | 携帯トイレ。水は使いません |
| 風呂・シャワー | 最も多く使います | 体拭きシート、ドライシャンプー |
| 洗濯 | 1回あたり数十リットル | コインランドリー、または我慢 |
| 炊事 | 洗い物を含めて相当量 | ラップを皿にかける。使い捨て食器 |
| 手洗い・洗面 | こまめに使います | ウェットティッシュ、アルコール |
| 飲み水 | 1人1日3リットル | ここだけは代えがききません |
飲み水以外は、工夫で減らせます。そして、減らす工夫を知っていれば、備蓄の量も現実的になります。
ラップと使い捨て食器が効きます
皿にラップをかけて使えば、食後はラップを捨てるだけで、皿を洗わずに済みます。
これは、水の節約として非常に効果が大きい方法です。ラップは多めに備えておいてください。
そして、ラップは他の用途にも使えます。体に巻けば保温になり、けがの応急手当にも使えます。
給水所へ行くときの現実
水は重いのです。1リットルで1キロ。20リットルのタンクは20キロになります。
これを、毎日運ぶことになります。高齢の方や、体力のない方には、それ自体が大きな負担です。
だから、キャリーカートか、リュック型の給水袋があると助かります。手で提げるより、背負うほうが楽です。
運び方と、給水所での実際は給水車・給水所の使い方にまとめました。
復旧には、順番があります
何がいつ戻るのかを知っておくと、備えの優先順位が決まります。
おおまかな順番
一、道路の啓開。まず、緊急車両が通れる幅を確保します。
二、電気。比較的早く戻ります。ただし電柱が倒れていれば時間がかかります。
三、通信。電気が戻れば、基地局も動き出します。
四、水道。地面の下を直すため、時間がかかります。
五、ガス。一軒ずつ安全を確認する必要があり、最も遅くなります。
六、下水道。これも長引きます。水が出ても流せない期間があります。
この順番を知っていれば、「電気が戻ったから、もうすぐ水も」とは考えなくなります。
だから、電気の備えより水の備えが多く要ります
意外に思われるかもしれません。けれど、復旧の早さが違うのです。
ポータブル電源があれば、数日をしのげます。しかし、水は買い置きの量しかありません。
もちろん電気も大事です。優先順位をつけるなら、水とトイレが先だということです。
この地震のあと、変わりつつあること
課題として認識されたことがあります。
上下水道の耐震化
能登の断水の長期化を受けて、水道管の耐震化を進める必要性が改めて指摘されています。
ただし、全国の水道管は膨大な長さがあり、更新には長い年月と費用がかかります。すぐには終わりません。
つまり、当面は「断水は長引くもの」という前提で備えるしかないということです。
孤立集落への対応
道路が塞がれた地域へ、どう物資を届けるか。ヘリコプター、船、ドローン。いくつもの手段が試されました。
それでも、天候に左右され、量にも限りがあります。この制約は、簡単には解消しません。
二次避難という考え方
被災地を離れ、遠方の宿泊施設などへ移る避難の形が、能登では大規模に行われました。
安全と衛生は確保されます。一方で、地域のつながりが切れるという課題も明らかになりました。
正解はまだありません。けれど、「避難所にとどまる」以外の選択肢があることは、知っておいてよいと思います。
津波も、来ていました
倒壊と孤立の印象が強い地震ですが、津波も発生しています。
揺れてすぐ、到達しました
震源が陸に近かったため、津波の到達までの時間が、極端に短くなりました。
遠くの海で起きた地震なら、数十分の猶予があります。けれど、近くで起きれば数分です。
この場合、警報を待っていては間に合いません。揺れた時点で動く必要があります。
「揺れたら逃げる」が、そのまま答えです
東日本大震災の教訓として広まった「警報を待たない」という原則が、ここでも効きました。
海の近くにいて、強い揺れを感じたら、それだけで避難の理由になります。確かめる時間はありません。
津波の性質と逃げ方は東日本大震災とは?と津波への備えにまとめました。
火災も起きました
輪島市の朝市通りでは、地震のあとに大規模な火災が発生しています。
木造の建物が密集し、道が狭く、水道が断たれ、消火ができない。関東大震災とまったく同じ構造です。
100年前の教訓が、いまも有効であることを示しています。詳しくは関東大震災とは?にまとめました。
前ぶれは、あったのか
この地震には、特徴的な経緯があります。
数年前から、地震活動が続いていました
能登地方では、2020年ごろから地震活動が活発な状態が続いていました。
2023年5月にも、最大震度6強の地震が起きています。つまり、住民は何度も揺れを経験していたのです。
それが、油断につながった面もあります
くり返し揺れても、大きな被害は出ませんでした。その経験が、「今回も大丈夫だろう」という判断を生みます。
これは、東日本大震災の沿岸部でも起きたことです。過去の経験が、次の判断の基準になってしまう。
そして、繰り返しの揺れは、建物を確実に弱らせていました。見た目には分からなくても、内部の接合部が傷んでいきます。
群発する地震があったら
もし自分の住む地域で地震が続いたら、それを「慣れる」機会ではなく「点検する」機会にしてください。
一、建物にひびが入っていないか見る。特に基礎と、壁の角。
二、家具の固定を確かめる。揺れで緩んでいることがあります。
三、備蓄を点検する。
四、より大きな地震が来る可能性を、否定しない。
気象庁は、地震活動が活発な地域について情報を出しています。ただし、次の地震を予知するものではありません。
地震の評価の仕組みは地震本部とは?にまとめました。
この地震から、何を持ち帰るか
五つに絞ります。
一、備蓄の日数を、地形で決めてください。一本道の地域なら1週間から10日分です。
二、水とトイレを最優先に。食料より先に困ります。
三、季節を想定してください。真冬に被災したら何が要るか。
四、帰省先と旅行先でも、避難場所を確認してください。
五、助けが来ない時間を、耐えられるようにしてください。これがすべての結論です。
よくある質問
Q. 1週間分の備蓄は、どのくらいの量になりますか
水だけで、1人1日3リットル×7日=21リットルです。2リットルのペットボトルで11本ほど。4人家族なら、その4倍になります。
置き場所に困る量です。だから、一か所にまとめず、分散させてください。押し入れ、床下、車の中、玄関。
食料は、ふだん食べるものを多めに買い、古いものから使うやり方が現実的です。方法はローリングストックとは?にまとめました。
Q. 孤立しやすい地域かどうか、どう調べますか
地図を開いて、自分の家から出る道を数えてください。これがいちばん簡単です。
そして、その道が山の斜面の下を通っていないか、橋を渡らないかを見てください。
自治体によっては、孤立するおそれのある集落を把握し、公表しています。役場の防災担当に聞けば教えてもらえます。
Q. 高齢の親が、能登のような地域に住んでいます
備蓄を、こちらから送ってください。本人は「大丈夫」と言いますが、実際には足りていないことが多いものです。
特に、水、携帯トイレ、カセットボンベ、常用薬。この四つです。
そして、連絡が取れないときにどうするかを、事前に決めておいてください。電話は、まずつながりません。
Q. 支援に行きたいのですが
すぐには行かないでください。道路が限られている地域では、支援に向かう車が渋滞を作り、緊急車両を妨げます。
能登でも、「今は来ないでほしい」という発信が行われました。
できることは、お金を送ることと、受け入れの態勢が整ってから行くことです。ボランティアは、自治体の受付を通してください。
Q. 二次避難は、したほうがよいのですか
一律には言えません。体調や年齢、家族の状況によって、答えが変わります。
判断の材料は三つです。
一、そこにとどまって、健康を保てるか。寒さ、衛生、食事、睡眠。持病があるなら、なおさらです。
二、戻ってくる見込みがあるか。移った先から、家の様子を見に来られる距離か。
三、家族と離れることになるか。ばらばらになると、判断も生活も難しくなります。
迷ったら、体調を優先してください。関連死は、我慢を重ねた先に起きています。
Q. 家が傾きましたが、住めますか
自己判断で住み続けないでください。まず応急危険度判定を受けてください。
建物に赤・黄・緑の紙が貼られます。赤は危険、黄は要注意、緑は調査済みです。
これは無料で、被災地では自治体が実施します。そして、この判定は罹災証明書の被害認定とは別のものです。両方が必要になります。
手続きは罹災証明書の申請方法にまとめました。
Q. 冬に停電したら、車で暖を取ってよいですか
条件付きで可能です。ただし、必ず守ることがあります。
マフラーのまわりの雪を、こまめに取り除いてください。雪で塞がれると、排気ガスが車内に入り、一酸化炭素中毒を起こします。
実際に、雪に埋まった車内で亡くなる事故が毎年起きています。眠っているあいだに進むため、気づけません。
そして、長時間同じ姿勢でいないでください。エコノミークラス症候群の危険があります。
仕組みは災害時の一酸化炭素中毒とは?にまとめました。
Q. 集落に若い人が少なく、備えを進められません
まず、行政に頼ってください。多くの自治体が、備蓄品の補助や、防災用品の配布を行っています。
そして、個々の家で全部そろえようとしないでください。公民館や集会所に、共同で備えるほうが現実的です。
水、燃料、カセットこんろ、発電機、毛布。集まる場所に置いておけば、その場所が避難先にもなります。
離れて暮らすご家族がいるなら、年に一度、備蓄を送るという形が続けやすいと思います。本人は遠慮しますが、届いたものは使われます。
Q. 帰省するとき、何を持っていけばよいですか
荷物を増やす必要はありません。三つで足ります。
一、常用薬を、日数より多めに。帰れなくなる可能性を考えてください。
二、モバイルバッテリー。連絡と情報の手段を保ちます。
三、履き慣れた靴。革靴やサンダルでは、がれきの上を歩けません。
そして、着いたら避難場所を家族に聞いてください。それだけで、10秒の備えになります。
Q. 備蓄を1週間分に増やすと、置き場所がありません
一か所にまとめようとするから、入らないのです。分散させてください。
水は、押し入れの下段、床下収納、車のトランク、玄関の靴箱の上。2リットルのボトルを数本ずつ置けば、驚くほど収まります。
そして、車に積んでおく分は、そのまま車中泊の備えにもなります。二重に役立ちます。
食料は、専用のものを買い足すより、ふだんの食品を多めに置くほうが場所を取りません。棚の奥に押し込まず、手前から使ってください。
やり方はローリングストックとは?にまとめました。
過去の震災から学ぶ
同じ大地震でも、命の奪われ方は違います。自分の住む場所に近いものから読んでください。
- 死因で比べる|震災ごとに、人は違う理由で亡くなっています
- 関東大震災(1923年)|死者10万5千人のうち9万1千人が火災
- 阪神・淡路大震災(1995年)|77.0%が窒息・圧死。助けたのは近所の人でした
- 東日本大震災(2011年)|死因の90.6%は溺死。物では守れません
- 熊本地震(2016年)|震度7が二度。約8割が災害関連死
- 北海道胆振東部地震(2018年)|日本初のブラックアウトで295万戸が停電
- 能登半島地震(2024年)|この記事
1月1日の地震でした。冬の被災で何が起きるかは停電対策【冬編】と水道管が凍結したときの対処法にまとめています。
まとめ
要点を並べます。
一、2024年1月1日16時10分、マグニチュード7.6、最大震度7。
二、災害関連死470人は、直接死228人の2倍を超えました。助かったあとに、より多くの命が失われています。
三、土砂崩れと地面の隆起で道路が寸断され、2週間以上にわたって孤立した地区がありました。
四、断水は6県38事業者で最大およそ13.6万戸にのぼりました。水と下水の復旧は、いちばん遅くなります。
五、元日の夕方で、真冬でした。行政も店も動きにくく、帰省や旅行でふだんと違う場所にいた人が大勢いました。
六、輪島市西部では、地面が最大4メートル程度隆起しました。
七、だから、備蓄の日数は「何日分」ではなく、住んでいる場所の地形で決めてください。一本道の地域なら、1週間から10日分です。
この地震が教えたのは、「誰かが助けに来る」という前提が成り立たない場所がある、ということです。
それは、能登だけの話ではありません。日本の多くの地域が、同じ条件を持っています。
今日、地図を開いて、自分の家から出る道を数えてみてください。それが1本なら、備蓄を増やす理由があります。
備え全体の順番は防災は何から始める?最初にやること8ステップにまとめています。

