【この記事の要約】
台風の「強さ」と「大きさ」は、別々の物差しです。強さは中心付近の最大風速で決まり、強い・非常に強い・猛烈なの三段階。大きさは風速15メートル毎秒以上の範囲の半径で決まり、大型・超大型の二段階です。だから「小さくて猛烈な台風」も「大型だが強さの表現がつかない台風」も存在します。そして予報円が示しているのは勢力ではなく予想の不確かさで、中心が入る確率は70%。円が大きいときほど、端に来る前提で準備してください。この記事では、風速ごとに何が起きるかを数値で示しながら、進路予想図に出てくる用語をひとつずつ解きほぐします。
台風のニュースには、独特の言葉が並びます。
非常に強い。大型。予報円。暴風警戒域。それぞれ意味が決まっているのですが、似ているせいで混ざりやすい。
この記事では、そこを整理します。読み終えたあと、天気予報の画面から読み取れる情報が増えるはずです。
結論|強さと大きさは、別々に見てください
先に結論です。
強さは、中心付近の風の速さ。大きさは、風が及ぶ範囲の広さ。この二つは連動しません。
だから、次のような台風がありえます。
小さくて猛烈な台風。中心付近の風は極めて強いが、影響する範囲は狭い。進路上にいれば大変な脅威ですが、少し外れれば影響は限られます。
大型だが、強さの表現がつかない台風。中心の風は33メートル毎秒に届かないのに、風の範囲が500キロを超える。中心から遠くても風が吹き、そして雨は広い範囲に長く降り続きます。
ニュースで「大型で非常に強い台風」と聞いたら、二つの情報が並んでいるのだと考えてください。
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強さは、最大風速で決まります
三段階しかありません
| 階級 | 中心付近の最大風速 |
|---|---|
| (表現なし) | 33メートル毎秒未満 |
| 強い | 33メートル毎秒以上、44メートル毎秒未満 |
| 非常に強い | 44メートル毎秒以上、54メートル毎秒未満 |
| 猛烈な | 54メートル毎秒以上 |
気づいていただきたいのは、いちばん上の行です。
33メートル毎秒に届かない台風には、強さの表現がつきません。ニュースでも、ただ「台風◯号」と呼ばれます。
しかし、これを安全だと受け取らないでください。強さの階級は風だけを見た指標で、雨の量はまったく考慮されていません。強さの表現がつかない台風が、記録的な大雨を降らせることは珍しくありません。
最大風速と、最大瞬間風速は違います
ここも混同されやすい点です。
最大風速とは、10分間の平均風速のうち最大のものです。階級を決めるのは、こちらです。
最大瞬間風速とは、3秒間の平均で見た瞬間的な最大値です。こちらは、最大風速のおおむね1.5倍から2倍程度になります。
実務的にはこう考えてください。被害を出すのは、瞬間の突風です。「最大風速40メートル」と聞いたら、瞬間的には60メートルを超えることがあると考えて備えるほうが安全です。
風速ごとに、何が起きるのか
数字だけでは実感がわきません。気象庁が示している目安を整理します。
| 風速 | 起きること |
|---|---|
| 10〜15メートル毎秒 | 樹木全体が揺れる。傘がさせない |
| 15〜20メートル毎秒 | 風に向かって歩けない。転倒する人が出る |
| 20〜25メートル毎秒 | しっかり身体を確保しないと転倒する。屋根瓦や屋根の板が飛び始める |
| 25〜30メートル毎秒 | 立っていられない。看板やトタン板が外れ始める |
| 30〜35メートル毎秒 | 屋根が飛ばされる。電柱や街灯が倒れることがある |
| 35〜40メートル毎秒 | 多くの樹木が倒れる。ブロック塀が倒壊する |
| 40メートル毎秒以上 | 走行中のトラックが横転する |
この表を見ると、階級の「強い」に届く33メートル毎秒が、どれほどの状態かが分かると思います。屋根が飛び、電柱が倒れる領域です。
そして、15メートル毎秒で、もう歩けません。「避難は風が強くなる前に」と言われるのは、こういう理由です。暴風のなかを移動することは、できません。
大きさは、風の範囲で決まります
基準は、風速15メートル毎秒
大きさの階級は、風速15メートル毎秒以上の風が吹いている範囲、つまり強風域の半径で決まります。
| 階級 | 強風域の半径 |
|---|---|
| (表現なし) | 500キロ未満 |
| 大型(大きい) | 500キロ以上、800キロ未満 |
| 超大型(非常に大きい) | 800キロ以上 |
500キロという距離を、地図で思い浮かべてください。東京から大阪までがおよそ400キロ台です。それを半径として持つのが、大型の台風です。
直径にすればおよそ1000キロ以上。本州がすっぽり入る規模だと考えてください。
大きさが意味するのは、時間の長さでもあります
見落とされやすい点を書きます。
台風が大きいということは、影響を受ける時間が長いということでもあります。
同じ速さで進む台風でも、風域が広ければ、風が吹き始めてから抜けるまでに長い時間がかかります。雨も、長く降り続きます。
そして、雨は時間をかけて土に染み込みます。総雨量が増えれば、土砂災害と河川の氾濫の危険が上がります。大型の台風で警戒すべきなのは、瞬間的な風よりも、積み重なる雨量のほうです。
どちらを優先して見るべきか
実務的な答えを書きます。自分の位置によって変わります。
台風の進路上、あるいはすぐ近くにいるなら、強さを見てください。中心付近の風を直接受けることになります。
進路から離れているなら、大きさのほうが重要です。大型の台風は、中心が数百キロ先にあっても、こちらに強い風と雨を送り込みます。
そして、どちらの場合も雨の情報は別に確認してください。強さも大きさも、雨量を表す指標ではありません。
気圧との関係は台風のhPaとは?1013hPaが基準、低いほど強い理由にまとめました。中心気圧が低いほど強い傾向はありますが、階級を決めているのは風速です。
進路予想図の用語を、ひとつずつ
ここから、あの図の読み方に入ります。
予報円|中心が入る確率は70%
白い破線の円です。その時刻に台風の中心が入ると予想される範囲を示しています。
そして重要なのが、この確率です。70%。ここから二つのことが言えます。
一、円の中のどこに来てもおかしくありません。円の中心を結んだ線を進路だと思っている方が多いのですが、あれは予想の中央値にすぎません。
二、10回に3回は円の外に出ます。予報が外れることは、想定の範囲内です。
円が大きいのは、勢力が強いという意味ではありません
ここが最大の誤解です。
予報円の大きさが表しているのは、予想の不確かさです。台風の勢力とも、風域の広さとも関係ありません。
先の時刻ほど円が大きくなるのは、時間が延びるほど進路の予想が難しくなるからです。つまり円の大きさの変化そのものが、予報の限界を表しています。
では、どう行動に結びつけるか。答えは決まっています。円が大きいときは、円の端に来る前提で準備してください。
「うちは円の端だから、たぶん外れる」。この読み方が、いちばん危険です。端も中心も、来る可能性という点では地続きです。
暴風警戒域|これから暴風になるかもしれない範囲
予報円を包む、赤い実線の領域です。
台風がその予報円の中のどこに進んでも、暴風域に入るおそれがある範囲を示しています。いま暴風が吹いている範囲ではありません。
予報円が大きければ、暴風警戒域も広くなります。この二つは連動しています。
暴風域と強風域|いま吹いている風
こちらは現在の状況を示しています。
暴風域は、風速25メートル毎秒以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲。図では赤い円で描かれます。
強風域は、風速15メートル毎秒以上の範囲。図では黄色い円です。大きさの階級を決めているのは、この強風域の半径です。
まとめると、こう区別します
| 用語 | 予想か現在か | 意味 |
|---|---|---|
| 予報円 | 予想 | 中心が入ると予想される範囲。確率70% |
| 暴風警戒域 | 予想 | 暴風域に入るおそれがある範囲 |
| 暴風域 | 現在 | 風速25メートル毎秒以上の範囲 |
| 強風域 | 現在 | 風速15メートル毎秒以上の範囲 |
予想の話をしているのか、いまの話をしているのか。これを区別できれば、進路予想図は読めたも同然です。
進行方向の右側が危険半円です
もうひとつ、図から読み取れることがあります。
台風の風は、反時計回りに中心へ吹き込んでいます。そこに、台風自体が移動する速度が加わります。
進行方向の右側では、この二つが同じ向きになって足し算されます。左側では、向きが逆になるため引き算です。
結果として、進行方向に対して右半分では、風が強くなります。これを危険半円、左側を可航半円と呼びます。
日本付近を北上する台風なら、東側にあたる地域が危険半円です。中心からの距離が同じでも、東と西では受ける風が違います。
台風が速く進むほど、この差は大きくなります。秋の台風は偏西風に乗って速度を上げるため、右側の風がとくに強まります。
進路予報は、どこまで信じられるか
5日先まで発表されています
気象庁は、台風の進路を5日先まで発表しています。ただし、先の時刻ほど予報円は大きくなります。
遠い予報は「進路」ではなく「可能性の幅」として読んでください。5日先の図を見て「うちは外れている」と判断するのは早すぎます。
更新されることを前提に
台風情報は3時間おきに、接近すれば1時間おきに更新されます。一度見て終わりにしないでください。
とくに秋の台風は、予想より早く来る方向に外れることがあります。上空の偏西風に乗ると、急に速度を上げるためです。備える時間が短くなる側に外れるのが、この季節の特徴です。
数字を、行動に変える
ここまでの内容を、実際の判断に落とし込みます。
強さの階級を見たら、風速の表を思い出してください。「非常に強い」なら44メートル毎秒以上。屋根が飛び、トラックが横転する領域です。
大きさを見たら、影響する時間を考えてください。大型なら、長時間の雨を覚悟します。総雨量が土砂災害と氾濫を呼びます。
予報円を見たら、端に来る前提で動いてください。そして円が大きいうちは、判断を保留せず、来る前提で準備を進めます。
危険半円にいるなら、風への備えを厚くしてください。
そして共通して、15メートル毎秒を超えると歩けなくなることを覚えておいてください。避難は、それより前に終えるということです。
時系列での備え方は台風の完全ガイドに、避難の判断基準は警戒レベルとは?1から5の意味と取るべき行動にまとめました。
同じ台風でも、場所によって風は変わります
発表される風速は、あくまで台風そのものの数値です。自分のいる場所で実際に吹く風は、地形と建物によって変わります。
強くなる場所
海に面した場所。海の上には風をさえぎるものがありません。陸に上がってすぐの場所では、ほぼそのままの風を受けます。
高い階。地面に近いほど摩擦で風は弱まります。逆に言えば、高層階ほど強い風が吹きます。同じ建物でも、1階と20階では体感がまったく違います。ベランダのものは必ず室内へ入れてください。
ビルとビルのあいだ。広い場所を流れてきた風が狭い隙間に入ると、速度が上がります。いわゆるビル風です。普段は静かな路地が、台風のときだけ危険になることがあります。
山を越えて吹き下ろす場所。山を越えた風が斜面を駆け下りるとき、加速することがあります。地域によって独特の呼び名がついている風は、たいていこの型です。
弱くなる場所
逆に、周囲に建物が密集している市街地の低層部や、森に囲まれた土地では、風は弱まります。
ただし、弱まるのは風だけです。雨は同じように降ります。「うちは風が当たらないから大丈夫」という判断は、水の危険を見落とします。
風の被害を減らす、具体的な手順
数値を知ったら、次は行動です。順番に書きます。
前日までに|飛ぶものをなくす
風で人が亡くなる原因の多くは、飛来物です。だから対策の中心は「飛ばさないこと」になります。
屋外にあるものを、すべて確認してください。植木鉢、物干し竿、自転車、ごみ箱、傘立て、子どもの遊具、屋外用の椅子。重いから大丈夫、という判断はしないでください。風速30メートル毎秒を超えると、屋根そのものが飛びます。
室内に入らないものは、倒しておくか、固定してください。自転車は倒しておくほうが安全です。
前日までに|家の弱いところを見る
次のものは、風の被害が出やすい部分です。
カーポートとテラスの屋根。面積が大きく、風を受けやすい構造です。ボルトのゆるみがないか確認してください。
アンテナ。倒れると、屋根を傷めます。
雨どい。詰まっていると、大雨のときに水があふれます。落ち葉の季節は、とくに確認する価値があります。
エアコンの室外機。転倒防止の固定がされているかを見てください。
これらは、風が吹き始めてからでは手を出せません。点検は晴れた日にするものです。
当日|窓の守り方
優先順位をはっきり書きます。
一、雨戸やシャッターがあるなら、閉める。これがいちばん確実です。
二、カーテンを閉める。割れたときに、ガラスの飛散を抑えます。厚手のカーテンなら、なお効果があります。
三、窓から離れる。できれば窓のない部屋、あるいは建物の中心側の部屋で過ごしてください。
養生テープについては、効果がないわけではありませんが、優先順位は上の三つより下です。テープが抑えるのは飛び散り方であって、割れることそのものではありません。窓が割れる原因のほとんどは風圧ではなく飛来物だからです。
そして、気圧差を逃がすために窓を少し開けるというのは誤りです。風が室内に入ると、内側から屋根や壁を押し上げる力が働きます。窓は閉めてください。
当日|外に出ない
風速15メートル毎秒で、風に向かって歩けなくなります。20メートル毎秒を超えると、しっかり身体を支えないと転倒します。
この段階では、避難という選択肢自体がなくなります。だから、避難するなら風が強まる前です。
そして、様子を見に行かないでください。川、海、田んぼ、水路。毎年、これで命を落とす方がいます。
暴風域に入る前後の時間の使い方
台風が近づく数時間は、やることが決まっています。
入る前の数時間
スマートフォンとモバイルバッテリーを満充電にする。停電すれば充電できません。
浴槽に水をためる。断水したときにトイレを流すのに使えます。
冷蔵庫を強めに設定し、開ける回数を減らす。停電したときに、庫内の温度が上がりにくくなります。
懐中電灯とラジオを手元に置く。暗くなってから探すことになりません。
貴重品と薬をまとめておく。避難することになった場合に、そのまま持ち出せます。
暴風域にいるあいだ
やることは、ほとんどありません。それが正解です。
窓から離れ、情報を確認し、待つ。この時間に外へ出る用事は、ひとつもありません。
停電したら、ブレーカーの扱いに注意してください。復旧したときの通電火災を防ぐ手順は停電復旧後にやることにまとめました。
抜けたあと
台風の目に入っただけかもしれません。風が急に弱まり、空が明るくなっても、すぐに外へ出ないでください。目が抜けると、それまでとは逆向きの暴風が来ます。
完全に抜けたことを情報で確認してから、被害の確認に移ってください。そして、屋根には登らないでください。被災後の二次被害でもっとも多いもののひとつです。台風で被災した後にやることにまとめました。
学校や仕事の判断について
実際に多くの方が悩むのが、この点です。
暴風警報が出れば休校になる地域が多いのですが、基準は自治体や学校によって違います。朝の何時時点で出ているかで決まる場合もあります。事前に確認しておいてください。
仕事については、判断が難しいところです。ただ、数字は次のことを示しています。風速20メートル毎秒を超えると、歩くだけで転倒します。25メートル毎秒では立っていられません。
その状況で移動することは、通勤ではなく危険行為です。電車が止まり、帰宅できなくなる可能性も高くなります。前日のうちに、判断を相談しておいてください。
飛行機や新幹線の運休基準は台風で飛行機が欠航、遅延する基準にまとめました。
台風の一生を、数値で追う
階級は、台風の一生のなかで変わっていきます。その流れを知っておくと、報道の変化が読めます。
発生|熱帯低気圧から台風へ
南の海で雲の塊が渦を巻き始めます。この段階では熱帯低気圧です。
中心付近の最大風速が、およそ17.2メートル毎秒に達した時点で、台風と呼ばれるようになります。この瞬間に番号がつきます。
この数値は、風速34ノットという国際的な基準に対応しています。境目の詳細は台風の定義とは?気象庁の基準と熱帯低気圧との違いにまとめました。
発達|暖かい海の上で強くなる
台風は、海面から蒸発する水蒸気を燃料にしています。海面水温がおおむね26度から27度以上の海域にいるかぎり、補給を受け続けられます。
この段階で、中心気圧が下がり、最大風速が上がります。強さの階級がつくのは、ここからです。そして風の吹く範囲も広がり、大きさの階級が変わることもあります。
最盛期|目がはっきりする
よく発達した台風には、中心に目ができます。衛星画像で目がくっきり見えるのは、勢力が強いしるしです。
逆に、目がぼやけてきたり、見えなくなったりしたら、それは衰え始めた合図になります。
衰退|燃料が切れる
弱まる理由は三つです。
冷たい海に出る。水温が下がれば、水蒸気の供給が減ります。北上するほど、この影響を受けます。
陸に上がる。海がなければ燃料そのものがありません。加えて、地表との摩擦が風を弱めます。上陸した台風が急速に衰えるのは、このためです。
上空の風に引き裂かれる。高さによって風向きが大きく違う場所に入ると、台風の構造が保てなくなります。
そして、温帯低気圧へ
日本付近まで来ると、多くの台風は温帯低気圧に変わります。
これは弱まったという意味ではありません。暖かい空気だけでできていた構造が、冷たい空気を取り込んだ構造に変わったということです。
そして温帯低気圧になると、強い風の範囲がむしろ広がることがあります。中心から離れた場所で風が強まり、雨の範囲も広くなる。発表を聞いて警戒を解くのは、危険な受け取り方です。
なぜ、気圧ではなく風速で階級を決めるのか
素朴な疑問だと思います。中心気圧のほうが、ニュースでよく聞く数字だからです。
理由は単純で、被害を出すのは気圧ではなく風だからです。
気圧が低いこと自体が、直接ものを壊すわけではありません。低い気圧は「強い風が吹きやすい状態」を示す間接的な指標です。
実際、中心気圧と最大風速の関係は、台風によって少しずつ異なります。同じ950ヘクトパスカルでも、風速が違うことがあります。だから、被害に直結する風速のほうを基準にしているわけです。
とはいえ、気圧が有用な指標であることに変わりはありません。とくに高潮を考えるときは、気圧そのものが効いてきます。気圧が1ヘクトパスカル下がると海面がおよそ1センチ上がるためです。詳しくは台風のhPaとは?と台風で危険なのは風より水にまとめました。
数値が更新される、そのタイミング
台風情報がいつ出るかを知っておくと、確認の習慣がつくります。
通常は3時間おきに、台風の位置や強さの情報が発表されます。
日本に接近して警戒が必要な段階になると、1時間おきに切り替わります。
この切り替わり自体が、気象庁が警戒段階に入ったという合図だと考えてください。情報の頻度が上がったら、自分の備えも段階を上げるときです。
そして、秋の台風は予想より早く来る方向に外れることがあります。上空の偏西風に乗ると急に速度を上げるためです。備える時間が短くなる側に外れるのが、この季節の特徴だと覚えておいてください。
風速を、身近な速さに置き換える
メートル毎秒という単位は、日常では使いません。だから数字を見ても、危険が実感しにくいのだと思います。
時速に直すには、3.6を掛けます。この換算をしておくと、印象がまるで変わります。
| 風速 | 時速 | 意味 |
|---|---|---|
| 15メートル毎秒 | 約54キロ | 強風域の基準。歩けなくなる |
| 25メートル毎秒 | 約90キロ | 暴風域の基準。立っていられない |
| 33メートル毎秒 | 約119キロ | 「強い」台風の下限 |
| 44メートル毎秒 | 約158キロ | 「非常に強い」台風の下限 |
| 54メートル毎秒 | 約194キロ | 「猛烈な」台風の下限 |
言い換えると、こうです。
暴風域とは、時速90キロで空気がぶつかってくる場所のことです。高速道路を走る車と同じ速さの風が、体に当たり続けます。
そして「猛烈な」台風の中心付近は、時速194キロ。新幹線に近い速さの空気が、屋根や壁を叩きます。屋根が飛び、トラックが横転するのは、当然の結果だと分かると思います。
この換算を覚えておくと、数字を見た瞬間に、外へ出てはいけないことが直感で分かるようになります。
数字を追うための道具
この記事は情報の読み方が主題ですが、読むためには情報が届いている必要があります。
| もの | 選ぶ基準 | 詳しく |
|---|---|---|
| 電池式ラジオ | 停電すれば、スマホは使えなくなります。ワイドFM対応だと聴ける局が増える | 災害時のスマホとラジオ |
| モバイルバッテリー | 台風情報は1時間おきに更新されます。追い続けるには電源が要ります。20,000mAh級で4回分ほど | モバイルバッテリーの選び方 |
| ポータブル電源 | 停電が数日に及ぶ想定なら。何を動かしたいかを先に決める | ポータブル電源の選び方 |
| 風速計 | 必須ではありませんが、数字を体感と結びつけるのに役立ちます | — |
台風全体の備えは台風の完全ガイド、水の被害への備えは台風で危険なのは風より水にまとめました。
よくある質問
「猛烈な台風」と「非常に強い台風」はどちらが危険ですか
階級としては猛烈なが上です。最大風速54メートル毎秒以上が猛烈な、44メートル毎秒以上54メートル毎秒未満が非常に強い、となります。ただしこれは風だけの指標なので、雨の危険度は別に確認してください。
予報円が小さいほど安全ということですか
いいえ。予報円の大きさは予想の確からしさを示すもので、勢力とは無関係です。円が小さいのは進路の予想が定まっているという意味であり、被害が小さいという意味ではありません。
大型の台風と猛烈な台風、どちらの言葉を優先すべきですか
自分の位置によります。進路上なら強さ、離れているなら大きさを優先してください。どちらの場合も、雨の情報は別に見る必要があります。
強さの表現がついていない台風は、安全ですか
安全ではありません。最大風速が33メートル毎秒未満というだけで、雨量は考慮されていません。階級のつかない台風が記録的な大雨を降らせることは、たびたび起きています。
最大瞬間風速は、最大風速のどれくらいですか
おおむね1.5倍から2倍程度とされています。被害を出すのは瞬間の突風なので、こちらを想定して備えるほうが安全です。
暴風域と暴風警戒域は何が違いますか
暴風域は、いま吹いている風の範囲。暴風警戒域は、これから暴風域に入るおそれがある範囲です。現在の話か、予想の話かという違いになります。
台風の中心が予報円から外れることはありますか
あります。予報円に中心が入る確率は70%なので、10回に3回は外れる計算です。
危険半円はどちら側ですか
台風の進行方向に対して右側です。日本付近を北上する台風なら東側にあたります。風の向きと進行速度が同じ方向になるため、風が強まります。
中心気圧が低いほど危険ですか
強さと相関はありますが、階級を決めているのは気圧ではなく最大風速です。気圧の意味はhPaの記事で詳しく説明しています。
台風が温帯低気圧に変わったら安全ですか
いいえ。性質が変わったという発表であって、弱まったという意味ではありません。温帯低気圧になると、強い風の範囲がむしろ広がることがあります。
台風と呼ばれるのは、風速がいくつからですか
中心付近の最大風速がおよそ17.2メートル毎秒に達した時点からです。それ未満は熱帯低気圧と呼ばれます。
台風情報は、どのくらいの頻度で更新されますか
通常は3時間おき、日本に接近して警戒が必要な段階になると1時間おきに切り替わります。この切り替わり自体が、警戒段階に入ったという合図です。
衛星画像で目がはっきり見えるのは、何を意味しますか
勢力が強いしるしです。逆に目がぼやけたり見えなくなったりしたら、衰え始めた合図になります。
風速をキロメートル毎時に直すには、どうしますか
3.6を掛けてください。暴風域の基準である25メートル毎秒は時速約90キロ、「猛烈な」台風の下限である54メートル毎秒は時速約194キロになります。高速道路を走る車と同じ速さの空気が、体や建物に当たり続けると考えてください。
台風の番号と名前は、どういう関係ですか
番号は、その年に発生した順に日本が独自につけるものです。名前は、あらかじめ用意された140個のアジア名が順番に使われます。つまり同じ台風に、番号と名前の二つが並行して存在します。由来は台風の名前はどう決まる?にまとめました。
まとめ
要点を整理します。
強さは中心付近の最大風速。強い・非常に強い・猛烈なの三段階で、33メートル毎秒未満には表現がつきません。ただし、それは安全という意味ではありません。
大きさは強風域の半径。500キロ以上が大型、800キロ以上が超大型。大きいほど、影響を受ける時間が長くなります。
予報円は勢力ではなく、予想の不確かさを表します。中心が入る確率は70%。円が大きいときは、端に来る前提で準備してください。
予想の話か、現在の話か。予報円と暴風警戒域は予想、暴風域と強風域は現在です。
そして、風速15メートル毎秒を超えると歩けません。避難はそれより前に終える。これが、数字から導かれるいちばん実用的な結論です。
台風は、来ることが前もって分かる災害です。数字を読めれば、動く時刻を自分で決められます。どうか、その時間を使ってください。

