【この記事の要約】
トリプル台風とは、3つの台風が同時に存在している状態を指す言い方です。2026年8月5日、台風15号(チャンホン)が発生し、すでにあった台風13号(ドルフィン)・台風14号(クジラ)と合わせて3つが同時に存在する状況になりました。この状態が警戒を要する理由は3つあります。進路の予想が難しくなること、備えを使い切ったところに次が来ること、そして関心が分散して警戒が薄れることです。台風どうしが近づくと「藤原の効果」で互いの動きが乱れ、予想が外れやすくなります。この記事では、トリプル台風の意味と発生の仕組み、藤原の効果の6つのパターン、そして3つ同時のときに何を優先して備えるべきかを、防災士の立場から整理します。
【追記:2026年8月12日20時30分時点】3つとも終わり、4つめが生まれました
この記事は8月5日に公開し、9日・10日・11日に更新してきました。同時に存在していた3つの台風は、すべて決着しています。13号は8月11日9時に熱帯低気圧へ。15号は8月11日20時ごろ、茨城県南部に上陸しました、12日9時に日本海で熱帯低気圧へ。16号もまもなく熱帯低気圧に変わる見込みです。3つのうち、日本に上陸したのは15号だけでした。そして8月12日9時、小笠原近海で台風17号(ナンカー)が発生しました。大きさは大型で、17号としては統計史上3番目に早い発生です。
2026年8月12日20時30分時点の結果
| 台風 | たどった経過 | 日本への影響 |
|---|---|---|
| 13号(ドルフィン) | 華中を進んで衰弱。11日9時に熱帯低気圧へ | なし |
| 15号(チャンホン) | 11日20時ごろ茨城県南部へ上陸。本州を横断し、12日9時に日本海で熱帯低気圧へ | 関東から東海、北陸で大雨と暴風 |
| 16号(ペイロー) | 一貫して東へ。まもなく熱帯低気圧へ | なし |
この1週間で起きたことを、あらためて振り返ります。1つは日本に届かないまま消え、1つは離れていき、1つだけが上陸しました。
3つ同時と聞いたときには身構えたくなりますが、実際に備えが必要だったのは15号だけでした。数の多さは、危険の大きさを表しません。この記事で繰り返しお伝えしてきたことが、そのまま結果に出た形です。
そして、4つめが発生しました
台風17号については、台風17号(ナンカー)の進路と、予報円が大きいときの判断にくわしくまとめました。大型と強いの違い、予報円の読み方、お盆の移動をどう考えるかを扱っています。
8月12日9時、小笠原近海で台風17号(ナンカー)が発生しました。中心気圧994ヘクトパスカル、最大風速18メートル。大きさは大型です。17号としては、統計史上3番目に早い発生になります。
13日15時には小笠原近海を北寄りに進み、15日から17日にかけて日本の東を北上する見込みとされています。ただし予報円が大きく、本州方面に近づかない可能性もあります。
2026年は、記録的なペースの年です
ひとつ、この夏を象徴する数字をお伝えします。
1951年からの統計で、1月から8月まで毎月台風が発生した年は、1965年、2015年、そして2026年の3回だけです。今年は、それだけ途切れなく台風が生まれ続けている年になります。
ですから、備えを片づけてしまわないでください。ひとつ去っても、次が来ます。持ち出し袋、備蓄、そして避難の判断基準。この夏はまだ終わっていません。
お盆の移動を予定している方へ
17号の進路はまだ不確かですが、お盆の期間と重なる可能性があります。帰省や旅行の予定がある方は、次の三つを確認してください。
一、出発前と当日の朝、両方で最新の進路を見る。予報は時間が近づくほど精度が上がります。
二、交通機関の運行情報を確認する。計画運休が早めに発表されることがあります。
三、行き先の海と川の状況を確認する。台風が離れていても、うねりは届きます。海に入る予定があるなら「お盆は溺れるから泳ぐな」は迷信?をご覧ください。台風15号が残したうねりも、しばらく残ります。
ここから下は、2026年8月5日の公開時点で書いた内容です。最新の状況は上の追記をご覧ください。
結論:3つ同時のときは「予想が外れる前提」で早めに動く
先に結論をお伝えします。トリプル台風のときに最も大切なのは、進路予想を信じきらないことです。
台風が単独であれば、予想の精度は年々上がっています。しかし複数が接近して互いに影響し合うと、その精度は落ちます。予報円が大きくなり、日ごとに進路が変わることも珍しくありません。
だからこそ、次の3つを守ってください。
一つ目は、備えを前倒しすること。「進路が定まってから」では遅くなります。
二つ目は、備蓄を使い切らないこと。1つ目が過ぎても、2つ目・3つ目が控えています。
三つ目は、情報を毎日更新すること。3日前の予想は、もう古い可能性があります。
この3つさえ押さえておけば、トリプル台風は必要以上に恐れるべき状況ではありません。落ち着いて順番に進めてください。
トリプル台風とは何か
まずは言葉の整理からです。
トリプル台風とは、3つの台風が同時に存在している状態を指す表現です。気象庁が定めた正式な用語ではありません。報道やメディアで使われる呼び方です。
同じように、2つ同時なら「ダブル台風」と呼ばれます。数が増えれば「クアドラプル」と呼ばれることもありますが、一般的ではありません。
ここで大切なのは、トリプル台風という言葉自体に危険度の定義がないという点です。3つあっても、すべて日本から遠ければ影響はありません。逆に1つでも直撃すれば、被害は甚大になります。
数の多さそのものに驚くのではなく、それぞれがどこへ向かうのかを見てください。私がこの記事で最も伝えたいのは、この視点です。
珍しい現象ではない
3つ同時と聞くと異常事態のように感じるかもしれません。しかし、統計的にはそれほど珍しいことではありません。
台風は年間を通じて発生しますが、夏から秋にかけて最も多くなります。8月は平年で5個から6個ほど発生する月です。1か月に5個以上発生すれば、期間が重なって同時に複数存在する場面は自然に生まれます。
つまり、トリプル台風は季節的に起こりうる現象です。異常気象の証拠として受け取る必要はありません。
ただし、備えるべき対象が同時に3つあるという事実は変わりません。そこは冷静に受け止めてください。
2026年8月5日時点の3つの台風
実際の状況を整理します。数字は発表時点のものです。最新情報は必ず気象庁の発表をご確認ください。
| 台風 | 国際名 | 状況 | 日本への影響 |
|---|---|---|---|
| 台風13号 | ドルフィン | 大型で非常に強い。中心気圧945ヘクトパスカル、最大風速45メートル | 沖縄地方へ接近する見込み |
| 台風14号 | クジラ | 8月5日3時に南シナ海で発生 | 直接の影響はない見通し |
| 台風15号 | チャンホン | 大型。8月5日15時にウェーク島近海で発生。中心気圧998ヘクトパスカル | 今後の進路次第で影響の可能性 |
この表を見ると、3つの性格がまったく違うことが分かります。
台風13号は、すでに非常に強い勢力を持っています。8月5日21時の時点で日本の南にあり、西へ毎時20キロで進んでいました。最大瞬間風速は60メートルに達しています。7日21時には那覇市の北西およそ80キロに達する見込みとされています。
この勢力が沖縄に近づけば、建物への被害が出る水準です。3つのうち、最も警戒すべきはこの台風です。
台風14号は南シナ海で発生し、フィリピンのルソン島方面へ向かっています。日本から離れており、直接の影響は見込まれていません。
台風15号は発生したばかりで、勢力はまだ強くありません。ただし大型で、今後日本の東の海上を進む見通しです。進路によっては、お盆の時期の天気に影響する可能性が指摘されています。
3つを同じ重みで見ない
ここが重要な判断です。3つあるからといって、3つとも同じように警戒する必要はありません。
沖縄にお住まいなら、いま最優先すべきは台風13号です。本州にお住まいなら、当面の生活への影響は小さく、台風15号の動きを追いながら準備を進める段階です。
自分の地域にとってどれが脅威かを見極めてください。3つすべてを追いかけるより、1つに集中したほうが行動は明確になります。
なぜ同時に複数の台風が発生するのか
仕組みを知っておくと、状況の理解が深まります。
台風は、海面水温がおおむね27度以上の熱帯の海で生まれます。暖かい海から大量の水蒸気が供給され、上昇気流が発生し、渦を巻きながら発達していきます。
夏になると、この条件を満たす海域が太平洋の広い範囲に広がります。条件のよい場所が広ければ、あちこちで同時に渦が生まれます。これが複数同時発生の基本的な理由です。
モンスーントラフという舞台
もう少し踏み込みます。
夏の太平洋には、東西に長く伸びた低圧の帯ができます。モンスーントラフと呼ばれるものです。北からの風と南からの風がぶつかり、渦が生まれやすい環境になっています。
この帯に沿って、東から西へ、あるいは西から東へと、いくつもの渦が並ぶことがあります。ちょうど、長い畑に同じ作物が点々と育つようなイメージです。
ひとつが台風に育つ条件が整っているとき、隣の渦も同じ条件下にあります。だから同時期に複数が生まれます。
偏西風の位置も関係する
台風がどこへ進むかは、周囲の風に流されて決まります。特に太平洋高気圧の縁を回る流れと、上空の偏西風が大きく影響します。
夏は太平洋高気圧が日本付近に張り出し、その縁に沿って台風が北上します。高気圧の勢力が強い年と弱い年で、台風の進路の傾向は変わります。
複数の台風があると、この流れ自体が乱されます。ここから、次の話につながります。
藤原の効果とは何か
トリプル台風で最も重要な概念が、藤原の効果です。
2つの台風がおよそ1000キロ以内に接近すると、互いの風の場が干渉し合います。その結果、2つは共通の中心のまわりを反時計回りに回るような動きを見せることがあります。
この現象は、日本の気象学者である藤原咲平が1920年代に水槽の実験で示したことにちなんで名づけられました。日本人の名前がついた、数少ない気象用語のひとつです。
なお、必ずこの動きになるわけではありません。距離、勢力差、周囲の風の状況によって、結果は変わります。
6つのパターン
藤原の効果は、いくつかの型に整理して紹介されることがあります。一般に挙げられるのは次の6つです。
| 型 | 動きの特徴 |
|---|---|
| 相寄り型 | 2つが互いに近づき、最終的にひとつにまとまる |
| 指向型 | 一方が他方の進路を導くように動く |
| 追従型 | 一方が先行し、もう一方が後を追う |
| 時間待ち型 | 一方が停滞し、他方が離れてから動き出す |
| 同行型 | 2つが並んで同じ方向へ進む |
| 離反型 | 近づいたあと、互いに離れていく |
この表を暗記する必要はありません。知っておいてほしいのは、これだけ多様な動きがありうるということです。
言い換えれば、台風どうしが近ければ、進路の予想は格段に難しくなります。
勢力差があると振り回される
ひとつ補足します。2つの勢力に大きな差があるとき、小さいほうが大きいほうに引っ張られる傾向があります。
強い台風は周囲の空気を大きく動かします。その流れの中に弱い台風が入れば、流されるように動きます。
逆に、勢力が近い2つが接近すると、互いに影響し合って複雑な軌跡を描きます。予想が最も外れやすいのは、この場合です。
トリプル台風が本当に怖い3つの理由
では、なぜ警戒が必要なのか。私は次の3点だと考えています。
理由1:進路予想の精度が下がる
ここまで説明したとおりです。台風どうしが干渉すると、予報円は大きくなり、日ごとに予想が変わります。
単独の台風であれば、3日先の予想でもある程度の信頼が置けます。しかし複数が絡むと、翌日には大きく変わっていることがあります。
「予想が変わった」ことに驚かないでください。それは予報が間違っていたのではなく、そもそも難しい状況だということです。
理由2:備えを使い切ったところに次が来る
これが最も実害につながる点です。
1つ目の台風で停電に備え、水をため、食料を消費したとします。過ぎ去って安心した数日後、2つ目が接近する。このとき、手元の備蓄は減っています。
さらに悪いことに、店頭の商品も品薄になっています。多くの人が同じタイミングで買いに走るためです。
電池、飲料水、カセットボンベ、モバイルバッテリー。こうしたものは、1つ目が過ぎた直後こそ補充しにくくなります。
理由3:関心が分散して警戒が薄れる
見落とされやすい点です。
台風が3つあると、報道は3つを扱います。情報が分散し、自分にとって本当に危険なものが埋もれます。
また「今回は逸れた」という経験が続くと、次への警戒が緩みます。3つのうち2つが影響しなかったとき、3つ目への構えが甘くなるのは自然な心理です。
しかし台風は、前の2つの結果とは無関係に来ます。毎回、その台風だけを見て判断してください。
3つ同時のときに何を優先すべきか
具体的な行動に落とし込みます。
優先順位1:自分の地域に最も近いものを特定する
まず、3つのうちどれが自分に関係するかを見極めてください。気象庁の台風情報のページで、それぞれの予想進路を確認できます。
役に立つのが「暴風域に入る確率」です。都道府県ごとに、今後72時間以内に暴風域に入る確率が示されます。数字で示されるため、判断しやすい情報です。
確率が上がってきたら、その台風があなたにとっての主役です。
優先順位2:備蓄を「3回分」で考える
通常、備蓄は3日分が目安とされます。しかしトリプル台風の期間は、この考え方を修正してください。
1つ目で使う分、2つ目で使う分、そして万一の長期停電に備える分。この3段構えです。
| 品目 | 通常時の目安 | トリプル台風時の考え方 |
|---|---|---|
| 飲料水 | 1人1日3リットル×3日 | 使った分をその都度買い足す |
| カセットボンベ | 1人1週間6本程度 | 1つ目が過ぎたら即補充する |
| 電池・充電 | 満充電を維持 | 停電が解消したらすぐ充電し直す |
| 食料 | 3日分 | 調理不要のものを優先して残す |
| 現金 | 数万円 | 停電でカードが使えない前提で用意 |
大切なのは、1つ目が過ぎた直後に補充することです。安心して先延ばしにすると、2つ目の直前には店頭から消えています。
優先順位3:屋外の片づけは早めに一度で済ませる
飛ばされそうな物の片づけは、1つ目の前に済ませてください。そして2つ目が去るまで、出しっぱなしにしないことです。
植木鉢、物干し竿、自転車、ゴミ箱、屋外の椅子。これらは何度も出し入れするより、期間中はしまっておくほうが確実です。
雨戸やシャッターも同じです。閉めたままにしておけば、急な接近にも対応できます。
優先順位4:連休や旅行の予定を早めに判断する
お盆や連休と重なる場合、交通機関への影響が大きくなります。
飛行機や新幹線は、台風の接近が見込まれると事前に運休を決めることがあります。判断を待つより、早めに変更や払い戻しを検討したほうが選択肢は多く残ります。
特に、台風が3つあるときは影響期間が長引きます。「1日ずらせば大丈夫」と考えていたら、次の台風にかかることもあります。
台風の「大きさ」と「強さ」は別の指標
ニュースで「大型の台風15号」と聞いて、危険な台風だと受け取った方もいるかもしれません。ここは誤解しやすいところなので、整理しておきます。
気象庁は、台風の大きさと強さを別々の基準で表現しています。
| 区分 | 基準となるもの | 階級 |
|---|---|---|
| 大きさ | 風速15メートル以上の範囲の半径 | 大型、超大型 |
| 強さ | 中心付近の最大風速 | 強い、非常に強い、猛烈な |
つまり「大型」は、影響の及ぶ範囲が広いことを意味します。中心の風が強いかどうかは別の話です。
2026年8月5日に発生した台風15号は「大型」でしたが、中心気圧は998ヘクトパスカル、最大風速は18メートルでした。範囲は広くても、勢力そのものはまだ強くない段階です。
一方、台風13号は「大型で非常に強い」と表現されていました。範囲が広く、かつ中心の風も猛烈だという意味です。中心気圧945ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートルという数値がそれを示しています。
階級がつかない台風もある
補足すると、大きさや強さの階級は、基準に達しなければ表現されません。「台風15号」とだけ呼ばれる場合は、いずれの階級にも当てはまらない状態です。
階級がつかないから安全というわけではありません。発達しながら接近することは頻繁にあります。発生直後の勢力で判断せず、予想される勢力を見てください。
3つ同時のときの時系列の考え方
備えは、いつ何をするかを決めておくと動きやすくなります。目安を示します。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 発生の報道を見たとき | 3つのうちどれが自分の地域に関係するか確認する |
| 接近の5日前 | 備蓄の在庫を数える。不足分を買い出す |
| 3日前 | 予定の変更を判断する。交通機関の情報を確認 |
| 2日前 | 屋外の片づけ。雨戸やシャッターの点検 |
| 前日 | 浴槽に水をためる。充電を満タンにする |
| 当日の朝 | 避難の要否を判断。必要なら明るいうちに移動 |
| 通過の翌日 | 使った備蓄を補充。次の台風の位置を確認 |
最後の行が、トリプル台風ならではの項目です。通常であれば台風が過ぎれば一段落ですが、3つあるときは次の準備の初日になります。
この表を家族で共有しておくと、判断のたびに相談する手間が減ります。
情報の見方で気をつけたいこと
トリプル台風のときこそ、情報の読み方が問われます。
予報円は「中心が入る範囲」
台風の進路予想図に描かれる白い円は、台風の中心がその中に入る確率がおよそ70パーセントであることを示します。
よくある誤解が、円の外なら安全だという読み方です。そうではありません。中心が円の端にあれば、円の外にも強風域や雨雲は広がります。
また、円が大きいほど予想が難しい状況を意味します。トリプル台風のときは、この円が大きくなりがちです。
「逸れた」は安心の根拠にならない
中心が離れていても、雨雲は台風の東側に強く発達することが多くあります。台風本体が遠くても、大雨になることは珍しくありません。
特に、台風が南にあって湿った空気を送り込む形になると、遠く離れた地域で記録的な大雨が降ることがあります。
進路図の線だけを見て判断せず、自分の地域の雨や風の予報も必ず確認してください。
SNSの情報は発信時刻を見る
台風が複数あると、どの台風の話なのか分かりにくい投稿が増えます。古い進路図が新しい情報として拡散されることもあります。
気象庁の発表は3時間ごと、接近時には1時間ごとに更新されます。SNSで見かけた情報は、必ず公式の最新発表と照らし合わせてください。発信された日時と、どの台風についての情報かを確認する。この二つを習慣にするだけで、誤った情報に振り回されることはほぼなくなります。
避難の判断をどう下すか
最後に、避難についてお伝えします。
台風の場合、地震と違って予測できる時間があります。これは大きな利点です。明るいうちに、風が強まる前に動けます。
目安として、暴風域に入る見込みの時刻から逆算し、その6時間前には行動を終えてください。暴風の中を移動するのは、避難ではなく危険な外出です。
特に注意していただきたいのが、高齢の家族がいる場合です。警戒レベル3の「高齢者等避難」が出た段階で動き始めてください。この情報は、まさにそのために用意されています。
在宅避難という選択
頑丈な建物にお住まいで、浸水や土砂災害の想定区域外であれば、自宅にとどまる判断も有効です。
その場合は、窓から離れた部屋で過ごしてください。飛来物によるガラスの破損が、屋内での主な負傷原因です。
ハザードマップで自宅の位置を確認しておけば、この判断は事前に決められます。台風が来てから調べるのでは間に合いません。
あわせて確認したいのが、避難先までの経路です。自宅が安全でも、そこへ至る道が冠水しやすい場所を通るなら、早い段階で移動する必要があります。距離ではなく、道の危険度で判断してください。
なお、複数の台風が続く時期は、避難所が開設されたままになることもあります。1つ目で開設された避難所が、2つ目までそのまま運営されるケースです。開設状況は自治体の発表で確認できます。
連続して台風が来たときに起きること
1つ目と2つ目の間隔が短いと、単独では起きない問題が生まれます。実際の被害の形として知っておいてください。
地盤が水を含んだままになる
最も危険なのがこれです。1回目の雨で山の斜面や堤防が水を吸い込みます。乾く前に2回目が降れば、同じ雨量でも崩れやすくなります。
土砂災害の警戒情報は、こうした土壌の水分量も加味して発表されます。1回目より少ない雨で警戒情報が出ることがあるのは、このためです。
「前回は大丈夫だったから今回も」という判断が、最も危ういのはこの場面です。
河川の水位が下がりきらない
大きな河川では、上流に降った雨が下流に到達するまで時間がかかります。1回目の増水が引かないうちに2回目の雨が加われば、水位はより高くなります。
自分の地域で雨が降っていなくても、上流の状況次第で河川は増水します。川の近くにお住まいなら、上流域の雨量にも目を向けてください。
復旧作業の途中で次が来る
屋根の一部が破損した、塀が傾いた、樹木が倒れた。こうした被害は、すぐには直せません。業者の手配にも時間がかかります。
その状態で次の台風を迎えると、被害が拡大します。応急処置だけでも先に済ませておいてください。ブルーシートと土のう袋があると、当座はしのげます。
停電が長引きやすくなる
電力の復旧作業は、天候が回復してから行われます。次の台風が近づけば、作業は中断されます。
1回目の停電が2日で復旧するはずだったのに、2回目の接近で1週間に延びる。こうした事態は実際に起こります。
停電が続く前提での備えを、複数台風のときは特に意識してください。
私が北海道から見ていること
私は札幌に住んでいます。北海道は台風の影響が比較的少ない地域とされてきました。
しかし2016年には、1週間のうちに3つの台風が北海道に上陸するという事態が起きました。さらに別の台風の影響も重なり、河川の氾濫や道路の寸断が広範囲で発生しています。
あのとき痛感したのは、「うちの地域は台風が来ない」という前提の危うさです。備えがない地域ほど、被害は大きくなります。
複数の台風が続けて来るという事態は、実際に起こりうる。私はそう考えて備えるようにしています。
また、北海道では台風がやや弱まってから到達することが多く、「台風は大したことがない」という感覚を持つ方も少なくありません。しかし2016年の事例では、農地の冠水や道路の寸断が長期間続きました。勢力が落ちていても、地域の弱い部分を突かれれば被害は大きくなります。
影響が少ない地域こそ準備を
台風の常襲地帯では、住宅の構造も、住民の意識も、台風を前提に作られています。雨戸があり、水の確保も習慣になっています。
一方、影響の少ない地域では、そうした前提がありません。同じ勢力の台風が来ても、被害の出方は変わります。
トリプル台風のニュースを見たら、自分の地域が普段どうであるかにかかわらず、一度備えを見直してみてください。
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よくある質問
Q. トリプル台風は異常気象なのですか
A. 異常気象と断定することはできません。8月は平年でも5個から6個の台風が発生する月です。発生時期が重なれば、3つが同時に存在する状況は自然に生まれます。数の多さより、それぞれの進路と勢力を見て判断してください。
Q. 3つあると、どれか1つは必ず日本に来ますか
A. そうとは限りません。3つとも日本から離れた場所を進むこともあれば、1つだけが接近することもあります。実際、2026年8月の台風14号は南シナ海で発生し、日本への直接の影響はない見通しとされています。
Q. 藤原の効果が起きると、台風は必ず合体しますか
A. 合体するとは限りません。互いに回りながら離れていくこともあれば、一方が他方を導くように進むこともあります。合体するのは6つのパターンのうち相寄り型と呼ばれる場合で、必ずそうなるわけではありません。
Q. 進路予想が毎日変わるのですが、信頼できないのでしょうか
A. 予報が不正確なのではなく、予想が難しい状況だということです。台風どうしが影響し合うと、進路の不確実性が高まります。だからこそ、予想が変わることを前提に、余裕を持った備えをしてください。
Q. どの台風を優先して警戒すればよいですか
A. 気象庁が発表する「暴風域に入る確率」を都道府県ごとに確認してください。数字で示されるため、判断しやすい情報です。確率が上がってきた台風が、あなたにとって警戒すべき対象です。
Q. 1つ目が過ぎたら、備蓄は買い足すべきですか
A. 必ず買い足してください。1つ目が過ぎた直後は、多くの人が油断する時期です。しかし2つ目が接近する前に店頭は品薄になります。使った分をその日のうちに補充する習慣が、最も確実です。
Q. 台風が3つあると、雨の量も3倍になりますか
A. 単純に3倍にはなりません。ただし、地面が水を含んだ状態で次の雨が降ると、土砂災害や河川の氾濫の危険は高まります。同じ雨量でも、1回目より2回目のほうが危険だと考えてください。
Q. 旅行の予定はいつ判断すればよいですか
A. 早めの判断をおすすめします。航空会社は接近が見込まれる段階で事前に運休を決めることがあります。また、1日ずらしても次の台風にかかる可能性があります。予定の変更が可能かどうかを、早い段階で確認しておいてください。
Q. 台風の名前はどのように決まっているのですか
A. 台風委員会に加盟する14の国と地域が、それぞれ10個ずつ提案した合計140個の名前を、発生順に繰り返し使用しています。ドルフィン、クジラ、チャンホンといった名前も、この一覧から順に付けられたものです。
Q. 「大型」と聞いたら危険な台風だと考えるべきですか
A. 大型は影響範囲が広いことを示す表現で、中心の風の強さとは別の指標です。強さは「強い」「非常に強い」「猛烈な」で表されます。「大型で非常に強い」が、範囲も広く勢力も強い状態です。両方の表現を確認してください。
Q. 台風が過ぎた翌日でも危険はありますか
A. あります。地盤が水を含んだ状態が続き、河川の水位もすぐには下がりません。土砂災害は雨がやんだあとに発生することもあります。複数の台風が続く時期は、通過後も数日は警戒を続けてください。
Q. 停電に備えて、まず何を用意すべきですか
A. 明かりと連絡手段です。懐中電灯やランタン、そしてモバイルバッテリーを最優先で確保してください。次に、水と調理不要の食料です。冷蔵庫が止まる前提で、常温で食べられるものを残しておくと安心です。
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まとめ
トリプル台風について、要点を整理します。
- トリプル台風は3つの台風が同時に存在する状態を指す言い方で、正式な気象用語ではない
- 8月は平年で5〜6個発生するため、同時に複数存在すること自体は珍しくない
- 2026年8月5日時点では、台風13号・14号・15号の3つが存在した
- 数の多さではなく、それぞれの進路と勢力を見て判断する
- 台風どうしが1000キロ以内に近づくと藤原の効果で動きが乱れる
- 藤原の効果には相寄り型・指向型・追従型など複数のパターンがある
- 複数が絡むと進路予想の精度が落ち、予報円は大きくなる
- 1つ目で備蓄を使い切ると、2つ目の前に補充できなくなる
- 屋外の片づけは期間中まとめて済ませておく
- 避難は暴風域に入る6時間前までに終える
3つあるという事実に驚くより、自分の地域にとってどれが脅威かを見極めてください。情報を絞れば、やるべきことは明確になります。
そして、1つ目が過ぎたあとの補充を忘れないでください。トリプル台風で本当に危ないのは、風の強さそのものよりも、2つ目や3つ目に向かうときの油断だと私は考えています。無事に過ぎた日の夕方こそ、次の準備を始める日です。

