雪下ろしの事故は年100人以上|死者の8割が高齢者、守るのは命綱・2人以上・はしごの固定

雪下ろしの事故は年100人以上

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【この記事の要約】
冬の災害で人が亡くなる原因の最上位は、雪そのものではなく「雪下ろし」です。国土交通省によると、豪雪地帯では年間1,000件以上の事故が起き、100人以上が亡くなる年があります。雪による人的被害のおよそ9割が、除雪中の事故です。そして亡くなった方の約8割が65歳以上で、屋根からの転落が最も多い形です。危険なのは高い屋根だけではありません。1階の屋根や、雪が積もって高さの差がなくなった場所でも亡くなっています。この記事では、事故がどう起きるのか、そして「命綱・2人以上・はしごの固定」という3つの基本を、具体的な手順としてお伝えします。屋根に上がらずに済ませる方法も整理しました。いちばん安全なのは、自分で上がらないことです。

こんにちは。防災ベーシックのたにです。札幌で防災士として活動しています。

札幌でも、毎年のように雪下ろしの事故が報じられます。そのたびに感じるのは、亡くなるのは「無茶をした人」ではないということです。

毎年やっている人、慣れている人、近所で頼りにされている人。そういう方が落ちています。

目次

結論|守るのは3つだけです

一、命綱とヘルメットをつける
二、一人で作業しない。必ず誰かに見ていてもらう
三、はしごは固定する。足場は先に確かめる
この3つで、事故の型のほとんどを防げます。

逆に言えば、亡くなった方の多くは、この3つのどれかが欠けていました。

とくに「一人で作業していた」は、事故の発見が遅れる原因になります。落ちた時点では助かる状態でも、誰にも気づかれないまま雪の中で体温を失います。

数字で見る、雪下ろしの危険

項目 内容
事故の件数 豪雪地帯で年間1,000件以上。多い年は100人以上が亡くなります
除雪中の割合 雪による人的被害の、およそ9割が除雪作業中の事故
年齢 亡くなった方の約8割が65歳以上
最も多い形 屋根からの転落
そのほかの形 屋根からの落雪に埋まる、水路への転落、除雪機による事故、はしごからの転落

「9割が除雪中」という数字を、もう一度見てください。

大雪の被害というと、家がつぶれる、車が立ち往生する、といった場面を思い浮かべます。ですが実際に人が亡くなっているのは、そのほとんどが雪を片づけている最中です。

なぜ高齢の方に集中するのか

理由は3つあります。

理由 中身
やる人がその人しかいない 子や孫が離れて暮らし、家に残っているのが高齢の方だけという家が増えました
体のほうが先に変わる 同じ作業でも、バランスを崩したときに踏みとどまる力が落ちています
経験があるほど、危険が見えにくい 「何十年もやってきた」という自信が、確認を省かせます

3つめが、いちばん厄介です。

慣れは技術ですが、同時に油断でもあります。毎年やっている人ほど、命綱をつけません。「これまで落ちなかった」は、落ちない根拠になりません。

事故はこう起きる|5つの型

型① 屋根の端から落ちる

いちばん多い形です。雪が積もった屋根では、屋根の端がどこなのか分かりません。

雪をどけながら後ろへ下がり、そのまま端を越える。「落ちた」というより「踏み外した」に近い形で起きます。

型② 雪と一緒に滑り落ちる

屋根の雪は、下のほうが融けて水の層になっていることがあります。

そこに乗ると、雪の塊ごと滑ります。本人の足元は動いていないのに、足場ごと落ちていきます。

型③ 落雪に埋まる

屋根の下で作業していて、上から雪が落ちてくる形です。

屋根から落ちる雪は、想像よりはるかに重い。1立方メートルの雪は、しまった状態で300キロを超えることがあります。埋まれば自力では出られません。

型④ はしごから落ちる

上り下りの途中、あるいは屋根に移る瞬間です。

固定していないはしごは、雪の上で滑ります。とくに下端が雪に刺さっているだけの状態は危険です。体重をかけた瞬間に沈み、傾きます。

型⑤ 水路に落ちる

雪を捨てに行った先での事故です。

流雪溝や用水路は、雪で縁が分からなくなっています。落ちると水流に押され、雪の下に入ってしまいます。

屋根に上がる前に、決めておくこと

確認 内容
一人ではないか 見ている人がいない日は、やらない。これが最も効きます
天候はどうか 降雪中、強風、視界が悪い日は中止。晴れていても風の強い日は危険です
体調はどうか 寝不足、飲酒の翌日、風邪ぎみの日はやめてください
連絡手段はあるか 携帯電話を体に着ける。上着のポケットではなく、内側に
時間帯 明るいうちに。夕方から始めない

「今日はやめる」という判断が、いちばん強い安全対策です。

雪は逃げません。明日、誰かと一緒にやれるなら、明日にしてください。

装備|何を身につけるか

装備 役割
命綱(安全帯・ハーネス) 落ちても途中で止まります。アンカーを先に取り付けておくことが前提です
ヘルメット 落下時の頭部の損傷を防ぎます。落雪からも守ります
すべりにくい長靴 金具やスパイクのついたもの。屋根の上では靴底の差が大きく出ます
手袋 ぬれにくいもの。手がかじかむと、つかむ力が落ちます
携帯電話 身につける。落ちたあとに自分で助けを呼べる唯一の手段です

命綱は「つけている」だけでは足りません

命綱は、何に結ぶかで安全性が決まります。

アンテナ、煙突、雪止め金具。これらは人の体重を支える前提で作られていません。屋根の反対側に回して固定する、専用のアンカーを取り付けるなど、支点そのものが確実であることが条件です。

家を建てたときや屋根を葺き替えたときに、アンカーをつけられるか業者に相談しておくと、毎年の作業が変わります。

作業中に守ること

場面 守ること
屋根に上がったら まず屋根の端の位置を確認する。目印になる棒を立てておくと確実です
雪を落とす向き 人の通り道、出入口の上には落とさない。下に誰もいないことを確認してから
全部を落としきらない 屋根に20センチほど残す。屋根材を傷めず、滑り落ちを防ぎます
休憩 30分ごとに下りて休む。疲れは判断を鈍らせます
下にいる人 屋根の真下に立たない。声をかけ合う

「全部を落としきらない」は、意外に知られていません。

屋根の面が出るまで削ると、屋根材やトタンを傷つけます。そして残った氷の上は、たいへん滑ります。雪の層を少し残すほうが、安全でもあり、家のためにもなります。

落とした雪を、どこに置くか

屋根の雪を下ろすと、家のまわりに雪の山ができます。これが次の危険になります。

起きること 対処
窓や出入口をふさぐ 非常時に逃げられなくなります。出入口の前には置かない
換気口や給排気口をふさぐ 一酸化炭素中毒の原因になります。給湯器のまわりは必ず空けてください
雪の山が高くなる 山が屋根に届くと、そこから人が上り下りできてしまい、子どもの事故につながります
隣家へ流れる 境界に寄せると、近所とのもめ事になります

給湯器やボイラーの給排気口が雪でふさがれる事故は、毎年起きています。屋根の雪下ろしのあとは、必ず家のまわりを一周して確認してください。

屋根に上がらずに済ませる方法

いちばん安全なのは、上がらないことです。選択肢を挙げます。

方法 向き・不向き
業者に頼む 最も安全。費用はかかりますが、命綱と保険を持った人が上がります
雪下ろし道具(長い柄のスノーダンプ、雪庇落とし) 地上から届く範囲を落とせます。平屋や下屋には有効です
融雪装置・屋根融雪 導入費と電気・灯油代がかかりますが、作業そのものが不要になります
落雪屋根に改修 屋根の形を変え、雪が自然に落ちるようにします。落雪先の土地が要ります
自治体の支援を使う 高齢者や障害のある方の世帯に、費用の助成や、支援員の派遣を行う市町村があります

自治体の支援は、申請しないと受けられません

多くの市町村に、高齢者世帯の除雪支援があります。費用の一部を助成する形、ボランティアや支援員を派遣する形など、地域によって違います。

ただし、どれも申請が要ります。雪が降ってからでは間に合わないこともあるので、秋のうちに役場の窓口へ問い合わせておくのが確実です。

制度の調べ方は、お住まいの市町村の「除雪」「雪対策」のページか、福祉の窓口で確認できます。

離れて暮らす家族ができること

この記事を読んでいる方の中には、雪国の実家を心配している方もいると思います。

「危ないからやめて」と言うだけでは、たいてい止まりません。雪を放置すれば家が傷むことを、親のほうがよく知っているからです。

伝え方 なぜ効くか
「やめて」ではなく「一人ではやらないで」 作業そのものを否定しないので、受け入れられやすい
業者や支援制度を、こちらで調べて伝える 代わりの手段があれば、断る理由が減ります
命綱とヘルメットを送る 買うのをためらう道具ほど、贈られると使われます
作業する日に電話をする約束をする 見ている人がいない問題を、遠くからでも減らせます

「今日やるなら、始める前と終わったあとに電話して」という約束は、実際に効きます。連絡が途絶えたときに、すぐ気づけるからです。

もし落ちてしまったら

見つけた人がやること

順番 やること
1 119番通報。場所と、雪に埋まっているかどうかを伝える
2 埋まっている場合は、顔のまわりから掘る。呼吸の確保が最優先です
3 むやみに動かさない。頭や背中を打っている可能性があります
4 体を冷やさないよう、毛布などをかける
5 反応がなく、呼吸がなければ胸骨圧迫を開始する

雪に埋まった人を助けるとき、最初に掘るのは顔のまわりです。体全体を掘り出すより先に、口と鼻の空間を作ってください。

低体温症への対応は低体温症の3段階|軽度・中等度・高度の見分け方と、急に温めてはいけない理由に詳しく書きました。強く温めるとかえって危険になる段階があります。

助けに行く人も危険です

落雪に埋まった人を助けようとして、二次災害に巻き込まれる事故があります。

同じ屋根から、続けて雪が落ちることがあります。屋根の下に入る前に、上の状態を見てください。そして、必ず誰かに知らせてから動いてください。

雪下ろしはいつ必要になるか

「どのくらい積もったら下ろすのか」という問いには、一律の答えがありません。建物によって耐えられる重さが違うからです。

目安 考え方
建物の設計 建てたときに、その地域の積雪量で計算されています。新しい家ほど余裕があります
雪の重さ 新雪と、しまった雪では重さが何倍も違います。深さだけでは判断できません
雨が降ったあと 雪が水を含み、一気に重くなります。危険が増す場面です
家のきしみ 建具が開きにくい、天井が鳴るといった変化は、荷重がかかっている合図です

「雨が降ったあと」を覚えておいてください。

積もった雪に雨がしみ込むと、同じ深さでも重さが大きく増します。屋根への負担も、滑り落ちの危険も、このときに跳ね上がります。

除雪機を使うときの注意

屋根ではありませんが、除雪機の事故も毎年起きています。

やってはいけないこと 理由
詰まった雪を手で取る エンジンを止めても、たまった力で刃が急に動くことがあります
安全装置を固定する 手を離せば止まる仕組みを殺すと、機械だけが動き続けます
後進時に後ろを見ない 壁と機械の間に挟まれる事故が起きています
人がいる方へ雪を飛ばす 石や氷が混ざると、凶器になります

詰まりを取るときは、必ずエンジンを止め、付属の棒を使ってください。

除雪機の扱いは除雪機の詰まりは棒で取る|10月に一度動かす、手を入れる事故はこう起きるにまとめています。

雪の重さを、数字で知っておく

雪下ろしの危険を実感するには、重さを知るのがいちばん早いです。

雪の状態 1立方メートルあたりの重さ 感じ方
降ったばかりの新雪 50〜150キロ程度 軽く、スコップですくえます
数日たってしまった雪 200〜300キロ程度 持ち上げるのがつらくなります
春先のざらめ雪・水を含んだ雪 400〜500キロ程度 同じ体積でも、新雪の数倍の重さです

屋根の上に1メートルの雪が積もっていたとします。

10畳ほどの広さ(およそ16平方メートル)で考えると、しまった雪なら3トンから5トンに達します。軽自動車が数台、屋根に載っている状態です。

この重さのものを、人が手で動かしています。それが雪下ろしという作業です。

スコップ1杯の重さ

スコップ1杯の雪は、しまった状態で5キロから10キロになります。

これを何百回も持ち上げて放る。作業そのものが、かなりの重労働です。途中で息が上がり、判断が鈍っていくのは当然のことです。

体への負担|落ちなくても危険です

雪下ろしの危険は、転落だけではありません。作業中に倒れる方がいます。

起きること なぜ起きるか
血圧の急上昇 寒さで血管が縮み、重いものを持つことで、さらに血圧が上がります
心筋梗塞・脳卒中 寒さと力仕事が重なる場面は、心臓と血管に大きな負担がかかります
かくれ脱水 寒くても汗をかきます。のどが渇きにくいため、気づかないまま脱水が進みます
疲労による転落 疲れると足元の確認が雑になり、転落の危険が上がります

暖かい室内から、いきなり寒い屋外で力仕事を始める。これは、体にとってヒートショックと同じ構図です。

詳しくは冬の血圧は寒さで上がる|家庭135/85と、災害で薬が切れる問題に書きました。

作業の前に、軽く体を動かして温めてください。そして作業中も水分をとってください。
冬は、のどの渇きを感じにくくなります。渇く前に飲むのが正しい飲み方です。

雪庇(せっぴ)に気をつける

屋根の端から、雪がひさしのように張り出したものを雪庇といいます。

これが危ないのは、下に屋根がないのに、雪が屋根の続きのように見える点です。

危険 内容
踏み抜く 屋根だと思って乗ると、そこは空中です。雪ごと落ちます
落下する 自然に崩れ落ち、下にいた人を巻き込みます
隣家へ落ちる 境界をまたいで落ちると、被害を与えることがあります

屋根の端に目印の棒を立てておくと、どこまでが屋根なのかが分かります。これは雪が積もる前、秋のうちにやっておく作業です。

道具の選び方

道具 使いどころ
雪切り(スノーカッター) 固まった雪を四角く切り分けます。切ってから落とすと、体への負担が減ります
スノーダンプ 下ろした雪を運ぶ道具。屋根の上より、地上での運搬に向きます
長い柄の雪下ろし道具 地上から屋根の雪を引き下ろせます。上がらずに済む範囲が増えます
アルミのスコップ 軽く扱いやすい。固い雪には向きません
プラスチックのスコップ 屋根材を傷めにくい。固い氷は割れません

金属のスコップで屋根を削ると、屋根材やトタンを傷つけます。傷がつくと、そこから錆びて雨漏りの原因になります。屋根の上では、力任せに削らないでください。

作業の段取り

順番 やること
前日まで 手伝ってくれる人を決める。天気を確認する。道具を点検する
当日の朝 体調を確認。食事をとる。家族に「今日やる」と伝える
開始前 はしごを固定。命綱の支点を作る。下の人と合図を決める
作業中 30分ごとに休む。水分をとる。屋根の端を意識し続ける
終了後 給排気口と出入口の雪をどける。家族に終わったことを伝える

「終わったことを伝える」まで含めて、一つの作業です。

連絡がないことが、異変に気づく唯一の手がかりになる場合があります。始めたときと終わったときの2回、必ず連絡してください。

事故が起きやすい時期と時間

条件 なぜ危ないか
大雪のあと、晴れた日 一斉に作業が始まります。気温が上がり、雪が滑りやすくなっています
雨のあと 雪が水を含んで重くなり、屋根の上で滑りやすくなります
午後から夕方 疲れがたまり、気温が下がって足元が凍り始めます
年末年始 帰省などで人手があるように見えて、実際は慣れない人が作業することがあります

「大雪のあとの晴れた日」は、いちばん事故が集中する場面です。

雪がやんで安心し、日差しで気持ちも軽くなります。ですが屋根の上では、その日差しが雪を融かし、滑りやすくしています。

寒波の予測は2週間前から出ています。寒波は2週間前から予告されています|早期天候情報の見方と、4段階での備え方を使えば、作業する日を前もって決めておけます。

秋のうちにやっておくこと

雪下ろしの安全対策は、雪が降る前に決まります。

時期 やること
10月 命綱の支点(アンカー)を取り付けられるか、業者に相談する
10月 市町村の除雪支援制度を、窓口で確認する。申請が要る場合は手続きを
11月 屋根の端に目印の棒を立てる。はしごと道具を点検する
11月 業者に見積もりを頼む。大雪のあとでは予約が取れません
12月まで 誰と作業するかを決めておく。一人でやらない体制を作る

雪が降ってからでは、どれも間に合いません。

とくに業者と自治体の支援は、大雪の直後に申し込む人が集中します。秋のうちに動いた人だけが、冬に選択肢を持てます。

地域によって、雪下ろしの前提が違います

同じ「雪国」でも、事情はかなり違います。

地域の型 特徴 気をつける点
北海道(札幌など) 気温が低く、雪が乾いて軽い。落雪式の屋根が多い 落雪の下に人や車を置かないこと。屋根に上がる機会は比較的少なめです
北陸・東北の日本海側 湿って重い雪が、まとまって降ります 屋根への荷重が大きく、雪下ろしの回数が増えます
山沿いの豪雪地帯 一晩で1メートル近く積もることがあります 除雪が追いつかず、孤立する前提の備えが要ります
ふだん雪が少ない地域 屋根が雪の重さを想定していない場合があります 少ない積雪でも危険。道具も経験もないまま作業しないこと

いちばん危ないのは、最後の「ふだん雪が少ない地域」です。

大雪が数年に一度しか来ないため、屋根の設計も、住む人の経験も、雪を前提にしていません。それなのに、いざ積もると自分で上がってしまいます。

関東や西日本で記録的な大雪が降ったあと、慣れない方の転落事故が起きるのは、この理由によります。

雪下ろしを頼むときの注意

業者に頼む場合も、押さえておく点があります。

確認 理由
保険に入っているか 作業中の事故や、屋根を傷めた場合の備えです
見積もりを先に出すか 作業後に高額を請求されるもめ事を防げます
作業の範囲 屋根だけか、下ろした雪の片づけまで含むかで、金額が変わります
急に訪ねてきた業者 大雪のあとには、飛び込みの勧誘が増えます。その場で契約しないでください

災害のあとに訪問してくる業者との契約は、慎重に。これは台風被害のあとと同じ構図です。台風で被災した後にやること|屋根に登らない理由と修理業者トラブルの防ぎ方に、見分け方を書きました。

近所どうしでできること

雪下ろしは、一軒だけの問題になりにくい作業です。

やり方 効果
作業する日を近所で合わせる お互いが見える状態で作業できます。何かあれば気づけます
高齢の世帯に声をかける 「今日は誰かいますか」の一言で、一人作業を減らせます
雪捨て場を共有する 置き場のもめ事が減ります
連絡先を交換しておく 倒れているのを見つけたときに、家族へすぐ連絡できます

阪神・淡路大震災で、生き埋めになった人の約8割を助けたのは、家族と近所の人でした。

雪も同じです。いちばん早く気づけるのは、隣にいる人です。

よくある質問

Q. 1階の屋根なら、落ちても大丈夫ではないですか

大丈夫ではありません。

2メートル程度の高さでも、打ちどころが悪ければ命に関わります。まして下が固く締まった雪や氷なら、衝撃はさらに大きくなります。

低い屋根ほど「これくらいなら」と油断が生まれます。高さではなく、命綱の有無で考えてください。

Q. 業者に頼むと、いくらくらいかかりますか

地域、屋根の広さ、雪の量で大きく変わります。相場を一律にお伝えすることはできません。

目安を知りたい場合は、秋のうちに複数の業者へ見積もりを頼むのが確実です。大雪のあとは依頼が集中し、来てもらえないことがあります。

Q. 雪止め金具があれば、雪下ろしは不要ですか

不要にはなりません。

雪止めは、雪が一度に落ちるのを防ぐものです。屋根に雪を留める仕組みなので、積もる量そのものは減りません。むしろ荷重は残り続けます。

Q. 屋根の雪が自然に落ちるのを待ってはいけませんか

落雪式の屋根であれば、それが前提の設計です。ただし、落ちる先に人が通る場所があるなら危険です。

自然に落ちる雪は、いつ落ちるか選べません。玄関の上、駐車場、通学路に面した側は、とくに注意してください。

Q. 命綱はどこで買えますか

ホームセンターや作業用品店で扱っています。雪下ろし用として売られているものもあります。

大切なのは、ロープよりも「何に結ぶか」です。支点を確保できないなら、命綱を買っても機能しません。屋根にアンカーを取り付けられるか、先に確認してください。

Q. 命綱をつけると動きにくく、かえって危なくないですか

動きにくいのは事実です。ロープが引っかかる、長さが足りない、といった不便があります。

ただし落ちたときに止まるかどうかは、その不便と釣り合いません。長さを調整できる器具を使い、支点の位置を工夫すれば、不便はかなり減ります。

どうしても使いにくいと感じるなら、それは支点の位置が悪いことが多いです。屋根の棟をまたいで反対側に固定するなど、動く範囲の中心に支点を置いてください。

Q. 屋根の雪は、放っておくと家がつぶれますか

積雪量が設計の想定を超えれば、その危険はあります。

ただし、どの家も同じではありません。建てた年、地域の想定積雪量、屋根の形で変わります。

建具が開きにくい、天井や柱が鳴る、といった変化が出たら、荷重がかかっている合図です。その場合は自分で上がらず、業者か市町村へ相談してください。

Q. 雪を道路に出してはいけませんか

いけません。道路に雪を出すと、交通の妨げになり、事故の原因になります。

多くの自治体で、道路への雪出しは禁止されています。雪捨て場の場所を、あらかじめ確認しておいてください。

Q. 一人暮らしですが、どうすればよいですか

自分で上がらない方法を選んでください。

業者への依頼、市町村の支援制度、地域の助け合い。どれも事前の手続きや相談が要ります。雪が積もってから探し始めると、間に合いません。

それでも自分でやるしかない場合は、必ず誰かに電話で伝えてから始めてください。作業の前と後に連絡する相手を、一人決めておくだけでも違います。

私が札幌で見てきたこと

札幌は、屋根から雪を下ろす機会が比較的少ない街です。落雪式の屋根が多く、雪も乾いて軽いためです。

それでも事故は起きます。多いのは、下ろす作業そのものより「落ちた雪の始末」です。

屋根から落ちた雪は、地面で固まって山になります。それを崩して運ぶ作業が、毎日のように続きます。腰を痛める方、無理をして倒れる方が出るのは、この段階です。

そしてもうひとつ、玄関前の雪です。朝、出かける前に急いで片づけようとして、暖かい室内から薄着のまま出る。ここで血圧が上がります。

雪かきは、急いでやらないでください。時間に追われた除雪が、いちばん体に負担をかけます。
15分早く起きるほうが、安全対策として確実です。

雪道での転倒については雪道で滑るのは新雪ではなく磨かれた氷|白線の上が危ない3つの理由にまとめています。

雪下ろしは、家を守るための作業です。ですが、家を守って人が亡くなっては意味がありません。

屋根が傷んだら直せます。直せないのは、人のほうです。どちらを優先するかを、作業の前に一度考えてみてください。

Q. 雪下ろしに適した時間帯はありますか

午前中です。体力があり、気温が上がる前で雪が滑りにくく、日が高いので足元がよく見えます。

避けたいのは夕方からです。疲れがたまっている時間で、気温が下がって屋根が凍り始め、暗くなれば屋根の端も見えなくなります。「あと少しだから」と続けた先で事故が起きます。

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まとめ

要点 内容
危険の大きさ 豪雪地帯で年間1,000件以上の事故。100人以上が亡くなる年もあります
割合 雪による人的被害の約9割が除雪中。死者の約8割が65歳以上
3つの基本 命綱とヘルメット、一人で作業しない、はしごの固定
作業中 屋根の端に目印。雪は20センチ残す。真下に人を立たせない
下ろしたあと 給排気口と出入口が雪でふさがれていないか確認する
いちばん安全な方法 自分で上がらないこと。業者と自治体の支援を秋のうちに調べておく
家族ができること 「やめて」ではなく「一人でやらないで」。作業日の前後に電話する約束を

雪下ろしは、雪国では暮らしの一部です。やめろと言われてやめられる作業ではありません。

だからこの記事では、「やるな」とは書きませんでした。やるなら、一人でやらないでください。それだけで、助かる可能性が大きく変わります。

【出典】
国土交通省「雪下ろし安全10箇条」(事故件数、死者数、65歳以上の割合、作業時の注意)/内閣府 防災情報のページ(雪害による人的被害の内訳)/消防庁(応急手当の要領)
建物が耐えられる積雪量は、家ごとに異なります。判断に迷う場合は、施工した業者やお住まいの市町村にご相談ください。支援制度の有無と内容も、市町村によって異なります。

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この記事を書いた人

北海道札幌市在住の防災・サバイバル情報発信者です。2018年の北海道胆振東部地震を機に「誰でも今日から始められる防災」をモットーに活動を開始し、実際に試した防災グッズのレビューや家族構成別の備え方をわかりやすくお伝えしています。実践的で信頼できる情報を提供できるよう、がんばっています!

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